0.2 0.1
。 1
T=3000C
• W: {100}く001>
企B: {110}く112>
• C: {121}く丘1>
• S: {123}く634>
10 1∞ 1∞o
time (sec)
図6・7 付加的圧延材の各方位の占有率と焼鈍時間の関係
6-3-2 結晶粒内のひずみの評価
1∞00
再結晶粒の成長過程を明らかにするには、 粒界移動の駆動力となる粒内のひ ずみを評価する必要がある。 これまで、 SEM-EBSP法を用いたひずみの評価 法にはIQ(Image Quality)値の大小を利用した研究(53)があるが、IQ値はビー ム電流量の低下、 ビーム焦点のずれおよび酸化皮膜の付着等の影響を受けるの で、 IQ値の大小でひずみを評価するには問題があるという報告(97)もなされて
いる。 また、 結晶方位によってもIQ値が変化することから統一的な解釈は困 難である。 そこで本研究では、 測定点聞の方位差でひずみを評価した。 これは、
結晶粒内にひずみが蓄積している場合、 同じ結晶粒内でも方位に微小な変化が 生じるため、 この微小方位差を基にひずみを評価できると考えられるからであ る。
図6・8に部分焼鈍材と付加的圧延材の圧延面IPF(Inverse Pole Figure)マッ プを示す。 また、 マップ内には測定点聞の方位差が10'-"'-150未満のものを細線 で、 150以上を太線で線を引いた。 ここで細線は、 同一結晶粒内ではひずみも しくは亜粒界を、 異なる結晶粒問では小角粒界を表すことになる。 一方、 太線 は150以上の角度差を有する粒界を表す。 図6-8(a)より、 部分焼鈍材では粒内 にひずみがほとんどない立方体、 B、 CおよびS等の方位を有する再結晶粒と 粒内にひずみを有する冷間圧延組織が混在していることが分かる。 この結果は、
部分焼鈍によって生じる再結晶において、 立方体方位粒が他方位粒に比べて特 別な優位性をもたないことを示している。 図6・8-(b)の 付加的圧延材の結果で は、 約20%程度の軽圧延を施しているので、 部分焼鈍材に比べて細線の量が多 くなっていることが確認できる。 また、 立方体方位粒は、 周りの結晶粒と比べ ると粒内の細線の量が少なく、 ひずみ量も他方位粒よりも少ないことが分かる。
この結晶方位によるひずみの差は粒成長の駆動力として作用すると考えられる。
また、 図6-7の潜伏期は、 このひずみが回復するのに要する時間に相当すると 考えられる。
ところで、 田上ら(98)は高純度アルミニウム単結晶の引張試験を行い、 <001>
方位を応力軸とする単結晶の変形応力は、 その他の方位の単結晶よりも小さい ことを示した。 この結果より、 彼らは交差すべりを起こすことにより変形中に 導入された転位が過度に集積しないためと結論している。 これが、 本研究で立
80
-方体方位粒にひずみが蓄積しにくいことの原因の一つであると考えられる。
一一
1
"�15 一一15
v� 50μm
一一
l
V�15 一一 15
v�
50μm
図6・8 部分焼鈍材と付加的圧延材の粒内のひずみ分布 (a)部分焼鈍材(b)付加的圧延材
6・3・3
立方体方位粒の成長に及ぼす粒界性格の効果
本研究で用いた高純度アルミニウム箔は、 主方位が立方体(W)、 B、 C およ びS方位であることが、 前節までの結晶方位解析により明らかになった。 した がって、 W方位粒の成長過程を解析するには、 前節で検討した粒内のひずみの
評価に加えて、W方位粒と各方位粒聞の粒界性格を解析することが重要である。
そこで、 まず各結品の理想方位間で形成されうる粒界について理論的な粒界性 格解析を行った。 解析には第2章2・5節で説明した Euler 角を用いた粒界性格 解析 のプログラムを用いた。 例えば、 W方位と B方位の問で形成されうる粒 界性格を解析す る場合 、 片側の結晶を W方位の(100)[001]とし、 B方位の {110}< 112>となる 48種類の方位との問で形成される粒界性格をそれぞれの Euler 角を用いて解析した。 また、 C 方位は{121}< 111>となる 48種類、 S方 位は{123}<634>となる96種類の方位を用いて行った。
図 6-9 に 解析結果を示す。 W方位粒と B方位粒の聞の粒界は、 ランダム粒 界の割合が高くなるが、 W方位粒とC、 S方位粒の問では対応粒界の割合が高 くなることが明らかになった。 また、 他方位粒問では、 小角粒界も存在する可
能性があることが分かった。
W-B
ー'
--, 、、
白山idellce国強干
、
w-c
W-S
-..._-ー
ー� ー , ,
B-B 1..0... ... 岨adal'Y -・5
---- .,.,....--ー 、、
、
B-C
、 1
、
B-S 、 、
明-_齢
、-�-C-C
a咽-- ー-�- ,
C-S
S-S
--。 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0
Fracti.on
図6-9 各理想方位問で形成される粒界性格の割合
図6-10は、 理想方位で形成される対応粒界の2;値分布である。 この図では、
立方体方位粒と B、 C およびS方位粒間で形成される対応粒界とその他の方位 粒間で形成される対応粒界を分離して 示 した。 これによると、 全体的に2;7対
82
-応粒界の割合が高く、 立方体方位粒と他方位粒の聞の粒界もJ;7対応粒界にな る可能性が高いことが明らかになった。 したがって、 理想方位問で形成される 対応粒界ではJ;7対応粒界が存在する可能性が高くなり、 これまで報告された 結果(96)と対応している。
0.25
0.20
8 0.15 壱cd よ 0.10
0.05
0.00
3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27
Sigma Value
図6-10 各理想方位問で形成される対応粒界のJ;値分布
そこで、 実際の試料を用いて立方体方位粒の成長に及ぼす粒界性格の効果を 検討するため、 部分焼鈍材と付加的圧延材の熱処理後の粒界性格分布を調べた。
図6・11に部分焼鈍材を3000C -1min と300t -60min で熱処理を施した試料の
粒界性格分布を示す。 300t・1min の試料では立方体方位粒の周りをランダム 粒界が占め る割合が多い。 これは、 粒成長初期においてランダム粒界、 すなわ ち大角粒界の移動が起きているためである。 また、 60min の熱処理を施した試 料でも立方体方位粒の周りはランダム粒界の占める割合が多く、 一次再結晶が ランダム粒界の移動によって起こった結果を示したものである。 図6-12に付 加的圧延材を3000C -1min と3000C・5min で熱処理を施した試料の粒界性格分 布を示す。 この結果からも、 部分焼鈍材と同様に立方体方位粒の周りはランダ
ム粒界で占められていることが明らかになった。 3000C・5min の熱処理を施し
た試料では、 立方体方位粒の占有率が90%以上になっているが、 残った他方位 粒との界面はL5やL13対応粒界が存在していた。
50μm 150μm
ー_ Lowangle
boundary
Random boundary
Coincidence boundary
図6・11 部分焼鈍材-3000C熱処理材の粒界性格分布(a) 1min (b) 60min
50μm 150μm
ゆ町ud
引mh'm
Random bound但γ
Coincidenω boundary
図ふ12 付加的圧延材・3000C熱処理材の粒界性格分布(a) 1min (b) 5min
-
84-しかし、 各試料の立方体方位と他方位粒との粒界に、 これまで報告(96)されて きた<111>軸40。回転関係にあるI;7対応粒界はほとんど確認できなかった。 逆 に、 ランダム粒界の存在頻度が高く、 対応粒界の頻度は理想方位から予想され る数よりも著しく少なかった。 したがって、 本研究で用いた高純度アルミニウ ム箔の立方体方位粒の成長はI;7対応粒界等の特別な粒界の移動ではなく、 大 角粒界の移動によって起こることが明らかとなった。
以上の結果をもとに、 各製造工程における高純度アルミニウム箔の立方体方 位粒成長過程を要約する。
[冷間圧延] :強加工により B、 CおよびS方位を主方位とする戸方位群を有 する圧延集合組織を形成する。 それに加えて、 立方体方位粒の核も少数ではあ るが生成する。
[部分焼鈍] :冷問圧延で生成した立方体方位粒の成長とともに立方体方位粒 の新たな核生成が起きる。
[付加的圧延] :立方体方位粒以外の B、 CおよびS方位粒にひずみを蓄積さ せる。
[最終焼鈍] :立方体方位粒は周りのひずみを駆動力とし、 大角粒界の移動に よって、 急速に粗大化する。
6・4 結言
電解コンデンサ用高純度アルミニウム箔の立方体集合組織形成過程を明らか にするために、 粒内のひずみと粒界性格分布に着目してSEM-EBSP法を利用 して検討を行った結果、 以下の結論を得た。
(1) 箔の製造工程で部分焼鈍と付加的圧延を加えることによって立方体方位
粒の占有率が急激に上昇することが確認された。 これは、 付加的圧延によ って立方体方位粒以外の結晶粒にひずみを導入し、 そのひずみエネルギー を駆動力として立方体方位粒の成長が急速に進行するためであると考えら れる。
(2) 立方体方位粒の成長における粒界性格の効果につい て検討した結果、
次再結晶段階では立方体方位粒の周りはランダム粒界の存在確率が高かっ た。 したがって、 立方体方位粒の成長は大角粒界の移動により起こり、 特
別な対応粒界の関与は少ないといえる。
-
86-7・1 緒言