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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究題目

2017年 度 修 士 論 文 ■ 修 士 研 究 題 目

ListofM.A. Theses/Projects 2017-2018

大学院総合国際学研究科博士前期課程

氏 名 指 導 教 員 備 考

言語文化専攻文学■文化学研究コース

ボ ル ジ エ ル デ ィ ー

柴 田 勝 ニ

夏 目 漱 石 の 初 期 作 品 に お け る 女 性 像 分 析 一 作 者 の 鏡 像 に 現 れ る

死 」 一

地域国際専攻地域研究コース

ノヘン ス ン ヒ 米 谷 匡 史 戦 後 日 本 人 の 朝 鮮 認 識 一 日 本 朝 鮮 研 究 所 の 活 動 を 中 心 に 一 * キ ム イ ン へ 米 谷 匡 史 金 泰 雲 『朝 鮮 詩 集 』 研 究 一 李 光 洙 の 詩 を 中 心 に 一 *

地域国際専攻国際社会コース

岩 瀬 み ゆ き 米 谷 匡 史 戦 時 期 の 野 上 弥 生 子 一 近 代 主 義 • 女 性 • 植 民 地 一 *

地域国際専攻国際日本コース

嶋 田 莉 子

ス ト ー リ ー 付 ア ニ メ ー シ ョ ン を 用 い た 漢 字 記 憶 識 別 の 効 果 に 関 す る 研 究非 漢 字 圏 学 習 者 に 対 し て

ジ ョ ケ イ

初 中 級 中 国 語 母 語 話 者 を 対 象 と し た 海 外 日 本 語 教 育 現 場 の 反 転 授 業 の 試 み福 州 大 学 の 「総 合 日 本 語 」 科 目 を 例 と し て

白 木 美 依 谷 ロ 龍 子

談 話 に お け る 語 彙 表 現 の 選 択 と 読 み 手 の 既 有 知 識 日 本 語 と ド イ ツ 語 を 例 に

*

谷 ロ 龍 子

中 国 日 系 企 業 に お け る 異 文 化 間 コ ン フ リ ク ト と 解 決 方 略現 地 社 員 の ラ イ フ ス ト ー リ ー . イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 中 心 に

*

マ イ オ ー ネ ブ イ ン

ツ ァ

谷 ロ 龍 子

イ タ リ ア 語 母 語 話 者 向 け の 音 声 教 材 (試 用 版 ) の 開 発 と そ の 使 用 に 関 す る 実 践 報 告ア ク セ ン ト 指 導 を 中 心 に

*

ア ハ マ ド カ リ ー ム

エ ズ エ ル デ イ ン 谷 ロ 龍 子

ア ラ ビ ア 語 を 母 語 と す る エ ジ プ ト 人 日 本 語 学 習 者 の 発 話 に お け る

の だ 」 の 習 得 研 究

*

マ ー シ ャ ル に お け る 日 本 語 学 習 者 の ビ リ ー フB A L L Iと メ タ フ ァ 一 分 析 を 応 用 し た 言 語 学 習 ビ リ ー フ 調 査 か ら

*

鈴 木 智 美 感 」 の 形 式 的 特 徴 と 意 味 . 用 法 に 関 す る 包 括 的 考 察 *

キ ン コ ウ カ 鈴 木 智 美

中 国 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 の オ ノ マ ト ぺ の 習 得 状 況中 国 の 大 学 に お け る 高 学 年 学 習 者 を 対 象 に

*

才 ウ テ ン リ ン 鈴 木 智 美

中 国 語 を 母 語 と す る 日 本 語 学 習 者 の プ ロ ソ デ ィ • シ ャ ド ー イ ン グ が ア ク セ ン ト の 産 出 改 善 に 及 ぼ す 効 果

*

ス リ ラ ン カ に お け る 日 本 語 教 師 の 教 育 観中 等 教 育 機 関 の 教 師 の 語 り か ら の 考 察

(2)

外 国 人 留 学 生 の 精 神 的 健 康 に 及 ぼ す ア ル バ イ ト 活 動 の 影 響中 華 系 私 費 留 学 生 に お け る ア ル バ イ ト 活 動 の イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を 中 心 に

中 井 陽 子

職 場 に お け る 異 文 化 適 応 に 影 響 を 与 え る 要 因 の 分 析南 米 出 身 稼 ぎ 労 働 者 と 日 本 人 上 司 へ の イ ン タ ビ ュ ー 調 査 を も と に

*

高 田 光 嗣 中 井 陽 子

レ ベ ル 差 の あ る 日 本 語 ク ラ ス に お け る ピ ア . ラ ー ニ ン グ の 授 業 デ ザ イ ン

*

梶 大 介 と 梶 満 里 子 の パ タ ヤ 自 立 運 動 の 研 究生 活 記 録 の 読 解 と 思 想 の 考 察

リ ョ ウ ゲ ン バ イ セ イ

日 本 在 住 中 国 人 女 性 の 子 育 て に 関 す る 知 識国 際 結 婚 女 性 を 中 心 に し た ラ イ フ ヒ ス ト リ ー 分 析 か ら

藤 森 弘 子

ベ ト ナ ム 人 日 本 語 学 習 者 と 日 本 語 母 語 話 者 に よ る 二 者 間 会 話 の 会 話 分 析参 加 の 対 等 性 の 観 点 か ら

藤 森 弘 子

中 国 語 母 語 話 者 の 日 本 語 学 習 者 に お け る 「き っ と 」 と 「必 ず 」 の習 得 に 関 す る 一 考 察

*

藤 森 弘 子 日 本 語 と 中 国 語 に お け る 「視 点 」 を 表 す 言 語 形 成 ラ ー ソ ン ベ ン ジ ャ ミ ン

ッ プ

藤 森 弘 子

タ ン デ ム 学 習 に 対 す る ビ リ ー フ に 関 す る 一 考 察

*

楠 本 徹 也

と り た て 助 詞 に 関 す る 一 考 察中 国 人 日 本 語 学 習 者 の 使 用 実 態 を 通 して

*

キ ョ ウ ウ ン 楠 本 徹 也 呼 称 に お け る 日 中 対 照 及 び 待 遇 機 能 *

テ ン イ チ 複 合 辞 の 一 語 性 に つ い て生 成 文 法 の ア プ ロ ー チ か ら *

サ イ ア イ レ ン 早 津 美 恵 子

漫 画 作 品 に お け る 日 本 語 オ ノ マ ト ぺ の 形 態 上 の 特 徴 と そ の 中 国 語 訳 に つ い て

*

デ ナ ザ レ フ イ ゲ イ ラ

早 津 美 恵 子

日 本 語 の 「役 割 語 」 が ブ ラ ジ ル . ポ ル ト ガ ル 語 に ど の よ う に 翻 訳 さ れ る か

*

チ ン レ イ テ イ 柴 田 勝 ニ 漱 石 文 学 に お け る 家 族 関 係 *

ユ フ ア ン 柴 田 勝 ニ 大 岡 文 学 に 表 れ る 闘 争 と 悲 劇そ の 相 対 的 存 在 を 廻 っ て *

モ ク ゾ ン 柴 田 勝 ニ

漱 石 前 期 作 品 に お け る 現 実 世 界 と 「彼 岸 的 世 界 」 『草 枕 』 ま で の 作 品 を 中 心 に

*

柴 田 勝 ニ 三 島 文 学 に お け る 二 重 性 と 芸 術 性 の 関 係天 皇 観 を め ぐ る

コ ウ 卜 ウ 卜 ウ 柴 田 勝 ニ 村 上 春 樹 作 品 に お け る 動 物 の 表 象鼠 、 羊 と 象 を 中 心 に * ア ン ト ネ ッ ラ モ ル

柴 田 勝 ニ

戦 後 詩 誌 に お け る 「櫂 」 と 詩 人 茨 木 の り 子戦 争 か ら 造 形 さ れ た 女 性 詩 人

*

チ ョ ウ ョ ウ コ 依 集 院 郁 子

日 本 人 は ど の よ う に ユ ー モ ア を 語 る か わ た し の ち ょ っ と 面 白 い 話 コ ン テ ス ト 」 を も と に

*

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究題目

ハ ク ヨ ウ 「さ せ ら れ る 」 述 語 文 の 意 味 と 構 文人 主 語 を 中 心 に *

キ ュ ウ ケ ン シ ュ ン 海 野 多 枝

第 二 言 語 不 安 か ら 見 た 遠 隔 外 国 語 教 育台 湾 の 仮 想 教 室 型 授 業 を 対 象 に

*

才 ウ タ ン タ ン 藤 村 知 子

中 日 大 学 生 に よ る 依 頼 メ ー ル の 機 能 的 要 素 の 相 違 点評 価 か ら 見 た 丁 寧 さ と 要 素 の 有 無 • 提 示 順 の 関 係 に つ い て

*

ソ ン ル イ 村 尾 誠 一

平 安 朝 に お け る 隠 遁 思 想 の 受 容 と 変 容都 良 香 • 紀 長 谷 雄 と 橘 在 列 を 中 心 に

*

* については、p. 1 4 8 以降に修士論文要旨を掲載

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2017年 度 修 士 論 文 ■ 修 士 研 究 要 旨

Abstracts ofM.A. Theses/Projects 2017-2018

韓 昇 憙 (ハ ン ス ン ヒ )「戦後日本人の朝鮮認識一日本朝鮮研究所の活動を中心に一」

本論文では、戦後に日本人のみの民間研究団体として朝鮮に対する植民地支配責任を提 起 し た 日 本 朝 鮮 研 究 所 (1961 — 8 4 ) の朝鮮認識の意義と限界を検討した。特に、6 0 年代に 日朝友好運動のための実践的歴史学をめざした日本朝鮮研究所が、 どのような過程を経て 7 0 年代に在日朝鮮人の権利獲得運動に邁進する運動団体となっていくのかについて考察し た。 日朝友好運動の理論化を研究活動の目標とした日本朝鮮研究所は、戦後日本で初めて 北朝鮮の学者たちと学術交流を行う成果を出した。 一方、 日本朝鮮研究所は東アジア冷戦 が激化するにつれて日朝友好運動の性格と役割をめぐって日本共産党と対立することもあ った。共産党を支持した所員たちが研究所を離れた後、 日 本 朝 鮮 研究所は所員の「差別発 言」問題についての部落解放同盟の糾弾に対応するなかで在日朝鮮人差別の現実を直視し、

日朝友好運動から在日朝鮮人の権利獲得運動へ活動の重点を移し、研究団体から生活密着 型の運動団体に変貌していく。

金 忍 惠 (キ ム イ ン へ )「金 素 雲 『朝鮮詩集』研究一李光洙の詩を中心に一」

本研究は日本植民地期という特殊な時代に生きていた金素雲の生涯と作品を通して当時 の朝鮮人文学者が抱えていた歴史的状況を調べるとともに、韓国で代表的な親日文学者と して知られる一方、詩人としては比較的評価されていない李光洙の詩が金素雲が翻訳した

『朝鮮詩集』 に収録されている意味を探った。 そして、金素雲訳の李光洙詩とその原詩、

金 時 鐘 の 『再訳朝鮮詩集』 を対照する作業を行い、金素雲の翻訳技法とその差異について 考察した。

『朝鮮詩集』 は金素雲も認めたように、単 純 に 他 の 詩 人 の 詩 を 翻 訳 し た 「翻訳詩集」 で はなく、金 自 身 が 創 作 し た 「金素雲詩集」 というべきものであることが分かった。 日本で は 「名訳」 として認められている反面、韓 国 で は そ の 詩 集 が 発 刊 さ れ た 「植民地時代」 と いう特殊な時代背景により、それほど評価されていない傾向があった。 しかし、 これはお そ ら く 「時代背景」 の問題だけではなく、金 素 雲 の 翻 訳 が あ ま り に も 「日本風」であるこ

とも一つの要因になったと考えられる。

岩 瀬 み ゆ き (イ ワ セ ミ ユ キ )「戦時期の野上弥生子一近代主義■女性■植民地一」

本稿は、1 9 3 0 年 代 半 ば か ら 1 9 5 0 年代前半までの野上弥生子のテクストを近代主義、 ジ エンダー、植民地主義の観点から解釈しなおし、戦時期と戦後における作家の精神の連続 性を明らかにすることを目的とする。序章では問いの設定、先行研究、分析対象と構成を 提示した。第 1 章では戦時期の言説と作家活動を検討した。第 2 章は女性をめぐる言説に 焦点を当てた。第 3 章では、植民地旅行記を分析し、野上の意識に内在化された植民地主

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究要旨

義を明らかにした。 終章では戦後に発表された連作小説について論じつつ、全体の議論を 総括した。 野上の基本的な閨心は、 日本社会が封建性から脱却し、欧米に倣って合理性と 科学性に基づく近代社会が形成されることにあった。 そうした観点から、戦時期には戦時 体制への女性の参与が説かれ、戦後には社会の民主化が論じられた。 野上の近代主義的な 発想は、近代化の使命の肯定につながり、内面化された植民地主義は戦後に継承された。

白 木 美 依 (シ ロ キ ミ エ )「談話における語彙表現の選択と読み手の既有知識一日本語と ドイツ語を例に一」

本論文では、 日本語とドイツ語の書き言葉の談話における語彙表現の選択について、語 彙カテゴリーレベルの観点から分析した。分析にあたっては、想定される読み手層の既有 知識量の多寡と、書き手が選ぶ語彙表現の傾向の対応に注目した。データは、 ウェブ上で 公開されている、特定の商品の紹介記事を用い、語 レ ベ ル と 意 味 レ ベ ル (句 • 文 • 談 話 の レベル)で整理した。 日本語とドイツ語の比較対照からは、個別言語に特有の語彙表現傾 向のパターンがあるかどうかを探った。調査の結果、 日本語では、文章のメイントピック と上下関係にある語彙より部分全体関係にある語彙のほうが、読者層に応じた語彙表現の 異なりが見られた。 一方、 ドイツ語ではその傾向があまり見られなかった。 また、 日本語 では、読者層に応じた語彙の使い分けがない場合に、7 種類の方法で情報の補足が行われて いたが、 ドイツ語で見られた方法は3 種類であった。

保 彤 (ホ 卜 )「中国日系企業における異文化間コンフリクトと解決方略一現地社員のラ イフス!— リーインタビュー調査を中心に一」

本研究では、 中国における日系企業で勤める中国人社員に対するライフストーリーイン タビューにより、在中日系企業における異文化間コンフリクトの種類、生じる場面および 対応行動を分析した。 その結果、親日的であるとされている大連日系企業においても中国 人社員と日本人社員のビジネスコミュニケーションには常にコンフリクトが生じ、 「日本人 社員から指示を受ける場面」 「日本人社員に報告する場面」 「日本人社員に提案する場面」

などの八つの場面に、「言語問題」「日本人社員との人間関係」「中国社会と日本社会の相違」

などの八つの種類の問題に関してコンフリクトが生じていることが分かった。 中国人社員 は以上のコンフリクトが生じた際、 「回避」が最も使われ、 「協調」が 2 番目に多く使われ ていることも明らかになった。 この調査結果により、本研究は言語と非言語の二つの面か

ら解決方略を提案し、 ビジネス日本語教育への示唆を示した。

マ イ オ 一 ネ ヴ イ ン チ エ ン ツ ァ 「イタリア語母語話者向けの音声教材(試用版)の開発と その使用に関する実践報告一アクセント指導を中心に一」

イタリアの日本語教育では音声教育が重視されていない傾向がある。 そこで本研究では イタリア人向けに日本語のアクセント指導用の遠隔教材を開発、来日経験のないイタリア

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人 日 本 語 学 習 者 (1 6 名)に使用してもらい、一連の実践について報告した。教材使用前、使 用直後と一か月後のテストの結果を見るとアクセントの向上に一定の効果が見られたこと がわかった。 さらに、イタリア人学習者に正しい音声で発話をすることを意識させ、音声 教育の重要性を認識させることにも成功したと言える。

ア ハ マ ド カ リ ー ム 「アラビア語を母語とするエジプト人日本語学習者の発話における「の だ」の習得研究」

本稿はアラビア語を母語とするエジプト人日本語学習者を対象にし、 「のだ」の習得状況 を考察することを目的にしている。 「のだ」 という文末表現は日本語教育では初級レベルの 段階で教える項目であるが使用頻度が少ないという現状がある。本研究では、エジプト人 日 本 語 学 習 者 の 「のだ」 の習得状況を包括的に考察するために、学 習 者 の 「のだ」 に対す る知識、学習者の使用状況、学習者の使用意識という三つのアプローチからそれぞれ談話 完成タスク、 自由会話、アンケート調査の方法により分析を行った。 考察を通して、エジ ブ ト 人 日 本 語 学 習 者 は 「のだ」の使用を重視しておらず、 「のだ」 を使用せずにその他の表 現やストラテジーを使用しつつ、 コミュニケーションを取っていることが判明した。

土 屋 雪 子 (ツ チ ヤ ユ キ コ )「マ一シャルにおける日本語学習者のビリーフ一B A L L Iとメ

タファー分析を応用した言語学習ビリーフ調査から一」

本論文では,マ ー シ ャ ル 諸 島 共 和 国 (マーシャル) における日本語学習者のビリーフを 明らかにすること, 日本語学習者のビリーフが,国の特性にどのように結びついているの かを明らかにすること, 日本語教育の発展の可能性について指摘し,現状における課題点 に対して提言することの3 点を目的とし,現 地 でB A L L Iとメタファーを用いてビリーフ調 査を行った。BALLI調査の結果, 日本語学習者の一般的なビリーフは, 自信と誇り,強い 内発的動機づけがあること,またメタファー調査の結果,難しい,楽しい,不確実コント ロール,内発的動機づけ,正の感情エンゲージメントといった概念が明らかになった。以 上から, より個々に対応できる学習環境づくり,学習者が達成感や満足度を得られるよう な活動を行うこと,マーシャルの学習者に合った音声教材の開発,文字教育の指針作り,

学習者の自己形成に寄与できるような日本語教育を考えることの必要性が明らかになった。

泉 大 輔 (イ ズ ミ ダ イ ス ケ )「『惑』の形式的特徴と意味■用法に関する包括的考察」

本研究では、現 代 日 本 語 に お け る 「感 」 という形式を取り上げ、 コーパスなどの実例に 基づき、その形式的な特徴を明らかにした上で、形式と意味との対応閨係を明らかにする ことを目的としている。形式的特徴に間して、何 も 前 接 し な い 「感 」 は共起する述語に制 約があること、 「感 」が合成語の後部要素としてふるまう場合は従来的な漢語語基以外にも 多様な要素が前接すること、モ ダ リ テ ィ 形 式 を 含 む 文 な ど が 「という」 を 介 さ ず に 「感 」 に直接前接することなどが明らかになった。 また、先行研究の意味記述によると、 「感」 に

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究要旨

は ① 「強く深い心の動き」 と ② 「物事に接したときに生じる心の動き」 という大きく 2 つ の意味があると考えられ、後 者 は さ ら に 「気持ち」 あ る い は 「感じ」 に言い換えられる場 合がある。 この他に、③ 「感覚的な尺度に基づいて測った程度」 という意味を表す実例が あることを指摘し、上 記 の 3 つの意味とそれぞれ対応する形式について記述している。

金 香 花 (キ ン コ ウ 力 )「中国語を母語とする日本語学習者のオノマ卜べの習得状況一中 国の大学における高学年学習者を対象に一」

本研究の目的は、 中国語を母語とする日本語学習者がオノマトぺを理解する際に、何を 手掛かりとして、 どのように理解しているのかを明らかにすることである。

先行研究を検討した結果、オノマトペの難しさを指摘している研究や、学習者のために 基本オノマトペの選定を試みている研究などは多く行われているが、学習者が何を手がか りとして、 どのようにオノマトペを理解しているのかに閨する研究は、管見の限り見当た らなかった。

そこで本研究では、 中国の大学における中国語を母語とする高学年日本語学習者を対象 に、アンケート調査とインタビュー調査を通じて、その具体的な理解プロセスを調べた。

その結果、学習者は主にオノマトペに含まれるある音から、音の似ている中国語の象声 詞を手掛かりにしたり、ある音から別の日本語の語や中国語の語を連想したり、音に対し て抱くイメージから、対象物や対象物の状態などを連想して意味を推測していることが分 かった。

王 添 霖 (オ ウ テ ン リ ン )「中国語を母語とする日本語学習者のプロソディ■シャド一イ ングがアクセントの産出改善に及ぼす効果」

本研究の目的は、プロソディ•シャド一^イング練習が中国語を母語とする日本語学習者 のアクセント改善にもたらす効果を検証することである。

先行研究では、 シャド一^イング練習が日本語の学習者のアクセントの改善に対する効果 があると論じてきたが、ほとんどの研究のシャドーイング練習の実施時間が1 学 期 間 か ら 1 年間までとなり、 シャドーイング練習がアクセントの改善の主な原因だと考え難いと思わ れる。 ま た 短 期 的 (1 0 日間) な研究では、毎日の練習内容とテスト材料の内容が同一であ ることが見られ、他の文脈においても、改善が見られるかどうかは考えにくいと思われる ため、本研究ではシャドーイングの練習用材料とテスト用材料をそれぞれ作り、1 0 名の中 国語日本語学習者を対象に、5 日間のシャドーイング練習を実施した。結果、プ ロ ソ デ ィ , シャドーイング練習はある程度の聞き取り能力のある学習者にとってアクセントの改善効 果があるとわかった。

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村 川 永 (ム ラ カ ワ ハ ル カ )「職場における異文化適応に影響を与える要因の分析一南米 出身稼ぎ労働者と日本人上司へのインタビュ一調査をも

とに一」

本研究は、 日本語能力の高くない南米出身出稼ぎ労働者が職場においてどのように異文 化に適応しているのか、また、適応に影響を与える要因は何かを主にインタビュー調査に よって明らかにし、質的に分析することを目的とする。調査協力者は南米出身出稼ぎ労働 者 2 名とそれぞれの日本人上司である。分析の結果、彼らの真面目に仕事に取り組む姿勢、

ホスト側である日本人の外国人に対する態度などが南米出身出稼ぎ労働者の適応に影響を 与えていること、 日本人も外国人と接することを通して異文化に適応するようになり、そ れが外国人側の適応を促進していることが明らかになった。 また、母文化で築いてきたア イデンテイテイと異文化環境下での自分自身のあり方との乖離は適応の阻害要因になるも のの、異文化環境に留まる必要性がある場合、南米出身出稼ぎ労働者は何とか日本に適応 する方法を模索するということも判明した。

高 田 光 嗣 (タ カ ダ コ ウ ジ )「レベル差のある日本語クラスにおけるピア■ラーニングの 授業デザイン」

本研究では、 日本語能力のレベル差のあるクラスにおいて、 ピア.ラーニングのジグソ 一法を応用した授業をデザイン•実践し、そこから得られたデータの分析によって、ピ ア • ラーニングがレベル差に起因する諸問題の解消に有効であることの実証を試みた。 日本語 学校の中級後半クラスの学生1 3 人を対象にピア.ラーニングを実施し、2 つのグループか ら得られた会話データ、授業後アンケート、 フォローアップ•インタビューの内容を分析 した。分析の結果、1 つのグループではグループ内の全ての学生が積極的に発話し、協働が 促進されていた。 しかし、 もう一方のグループでは協働がうまく促進されなかったという 結果が得られた。その要因を考察すると、協働が促進されるためには、 レベル差に配慮し た活動を設定するだけでなく、 「他者への発話の促し方」 「進行調整の方法」 「教師の介入」

という3 つの点から適切に授業をデザインする必要があるということが分かった。

胡 娜 (コ ナ )「中国語母語話者の日本語学習者における「きっと」 と 「必ず」の習得に 関する一考察」

本稿では、調査紙調査によって、 中国語母語話者の日本語学習者における「きっと」 「必 ず」 の習得実態を考察し、 中間言語の発達という視点から、 日本語母語話者と比較しなが ら、「きっと」「必ず」の使用傾向を、習熟度別、学習環境別に分析してきた。調査の結果、

日本語学習者の産出を分析したところ、 日 本 語 学 習 者 は 「きっと」 「必ず」の使い分けにお いては、特に文末の共起制限がある用法で日本語母語話者と異なる産出傾向が観察された。

また、学習者の習得に影響を及ぼす要因を分析したところ、 中 国 語 「一定」 からの影響、

また学習環境および日本語習熟度からの影響が見られた。 さらに、調査は短文作成問題と

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究要旨

選択式問題という2 種類のタスクを実施したが、 タスク形式の違いによって正誤率のずれ が現れている。最後に、結果や考察から考えられる日本語教育への示唆にも言及した。

ラ 一 ソ ン ベ ン ジ ャ ミ ン フ ィ リ ッ プ 「タンデム学習に対するビリーフに関する一考察」

本研究ではタンデム学習に対するビリーフを把握するためのアンケート調査を作成し、

実施した。 調査の対象は東京外国語大学でL E T Sという学生団体によって行われてい るタンデム学習の参加者である。この調査は全3 回、2 学期にかけて行い、そ し て 延 べ 178 の回答を得た。LE TSの参加者は通常TU FSで日本語を学習している外国人学生(JL) と

TU FSで外国語を専攻している日本人学生(JS) である。

J LJ Sの回答者は両方ンデム学習でスピーキング.リスニングというスキルを上達さ せられるという期待を抱いた参加者は多く、 ライティング•リーディングというスキルを 上達させられる期待を抱いた参加者達は少なかった。互いの学習を支援する志向も、そし て自律的な態度も示した。少数の回答者は教室外での学習の有効性に対して疑問を表した。

タンデム学習に閨するビリーフの項目に加えて、筆者は自己能力評価とタンデム学習で の学習目的の項目も調査票に入れた。 自己能力評価と学習目的を比べると、 関連性が殆ど 見られなかった。一方で、 タンデム学習に対する期待とタンデム学習での学習目的の閨連 性が強かった。

姫 子 云 (キ シ ウ ン )「とりたて助詞に関する一考察一中国人日本語学習者の使用実態を 通して一」

本研究では、 日本語におけるとりたて助詞「だけ、ばかり、 しか、 も、 まで、 さえ、で も、 くらい、など、 こそ、 は」 を研究対象とし、 中国人日本語学習者がこれらのとりたて 助詞をどの程度に習得しているかをアンケートで調査した。 アンケートは中国国内の中国 人 学 生 8 5 人に実施し、彼らが日本語のとりたて助詞の使用においてどのように間違えやす いかを調べ、その原因を分析した。 また、 中国での日本語教科書におけるとりたて助詞の 扱われ方を検証し、誤用との関連を考察した。調査の結果、和らげのモ、極限のデモ、ダ ケ ナ ラ /ダ ケ デ モ 、格 助 詞 と の 接 続 (例 :買い物ニデモ) において正答率が低かった。 こ れらは中国語との構造的•意味的違い、 日本語学習での未習などが原因と考えられる。 そ れゆえに、 中国人日本語学習者に中国語と日本語の差異を認識させ、 どのようにして中国 人日本語学習者に対する日本語教育に導入させていけばいいかを考えていくことが肝要で ある。

喬 雲 (キ ヨ ウ ウ ン )「呼称における日中対照及び待遇機能」

本研究では、中 国 人 日 本 語 学 習 者 (以 下 「学習者」) を対象とし、 日本人との接触場面に おいて呼称に関してどのような誤用が現れるのか、そしてその誤用は母語とどのような関

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わりがあるのかを分析し考察する。研究方法は、 日本語における呼称の使われ方について 学習者が正しく知っているか調べるため3 8 名の中国人対象者にアンケート調査を行った。

アンケート調査を分析した結果、被験者の日本語呼称の使用について正用率は高い、 あ るいは、彼らの日本語呼称の使用傾向が日本人母語話者に近いことが分かった。そして日 本語の学習年数が多くなるにつれて、正用率も高くなる。しかし3 7 % の被験者が日本人母 語話者に呼ばれた時に違和感を覚えた、あるいは失礼な感じがしたことがあると答えてい る。 そ し て 6 1 % の被験者が日本語の呼称の使い方について困ることがあると答えている。

その原因について分析する。

顧 天 一 (コ テ ン イ チ )「複合辞の一語性について一生成文法のアプロ一チから一」

( 1 ) の 下 線 部 の 「に従って」は、従来の日本語研究では複合接続助詞として分析されるこ とが多い。

( 1 ) 時代が発展するに従って、生活が豊かになった。

しかし、複合接続助詞として分析すると、2 つの欠点が出てしまう。 (2 ) と (3 ) に示し ているように、まず、 「『に従って』構文ではガノ交替が起こり得る」、それから、 「『に従っ て』 の 直 前 に 『の』が入る」、 こ の 2 つの事実については説明できない。

( 2 ) 時 代 (が • の )発展するに従って、生活が豊かになった。

( 3 ) 時代が発展するのに従って、生活が豊かになった。

一方、筆 者 の 提 案 す る 空 代 名 詞 「叫 に よ っ て 、 「に従って」 をめぐる文法現象をうまく 説明できるようになる。

( 4 ) 時代が発展する叫に従って、生活が豊かになった。

「に従って」 の直前に空代名詞を設ければ、な ぜ 「発展する」が連体形で来ているかはも ちろん、空代名詞によって連体修飾を成すため、ガノ交替も説明できるようになる。

蔡 愛 蓮 (サ イ ア イ レ ン )「漫画作品における日本語オノマ卜ぺの形態上の特徴とその中 国語訳について」

日本語非母語話者が日本の漫画ストーリーを翻訳する際に、様々な障害にぶつかるが、

その中でも一番問題となっているのは絵と台詞とは別に漫画背景に現れる擬音語や擬態語 などのオノマトぺをいかに理解することである。本研究は品詞分類や句構造などの中国語 文法を取り入れ、統語的機能の着眼点を用い、擬音語と擬態語の中国語訳手法を分析し、

拘束型形態素、一単語、句 、文の四つの言語単位での対応が可能だと解明した。 品詞性の 観点から、 中 国 語 オ ノ マ ト ペ に 当 た る 「象声詞」での対応以外に、様態副詞の役割を担う オノマトペをその語が修飾する動詞や動詞句、副詞の修飾受ける形容詞や形容詞句に翻訳 することができる。擬態語は単語以外に、句での対応が多く、様々な句構造のうち、動作 や状態とそれらがどのように行われているかの両方を描写できる述語補語構造及び偏正構 造の動詞句•形容詞句は原文擬態語の持つ意味性質を一番再現できると主張する。

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究要旨

デ ナ ザ レ フ イ ゲ イ ラ フ ラ ブ イ オ 「日 本 語 の 「役割語」がブラジル■ポルトガル語に どのように翻訳されるか」

本研究はブラジル•ポルトガル語へ直接に翻訳された日本の人気少年漫画の作品を分析 データとし、 日 本 語 の 「役割語」がブラジル.ポルトガル語への翻訳に対応されているか どうかを考察し、更に、その対応が具体的にどのような手法のもとで行われているかを分 析した。

「役割語」 の分析を行うために、原作に見られる全キャラクターのセリフ及び原作のセ リフに相当する翻訳作品のセリフが収集され、データベースが作られた。データの考察か ら、対 応 さ れ て い る と 見 ら れ た 「役割語」 の 種 類 は 「田舎ことば」、 「異人ことば」、 「男こ とば」、 「女 こ と ば (おネエことば)」であり、 日 本 語 の 「役割語」がブラジル.ポルトガル 語の翻訳に様々な語彙的や文法的な特徴などによって対応されていることが明らかにされ た。

今後の課題として、ブ ラ ジ ル •ポ ル ト ガ ル 語 へ の 翻 訳 に 見 ら れ る 「役割語」 の対応の様 相をより体系的に考察するために、更に幅広いジャンルの作品を対象とする調査が必要と

される。

陳 麗 婷 (チ ン レ イ テ イ )「漱石文学における家族関係」

周知のように、漱石は両親に縁の薄かった作家である。 しかし、その作品に現れる家族 に対する閨心が同時代の作家と比べると圧倒的に高い。 その里子時代の家庭生活に対する 実 体 験 が 『道草』 に描かれており、 ほかの作品にも、登場する主人公たちと家族との閨係 は、作品の主題と深く閨連し、大きく機能している。 したがって、漱石の作品における家 族閨係を探求することは、漱石文学を正確に理解する上での重要な鍵であると考えられる。

漱石が作品に取り扱ったのは、 日 本 の 近 代 化 の 中 で 「家族」が変わっている時代である。

本論は漱石の作品に描かれる家族閨係を親子関係、兄弟閨係、夫婦関係に分け、漱石のく 家 > の実体験を繫ぎながら、 当時の家制度を踏み、漱 石 の <家 >に 対 す る 認 識 、その描か れた家族関係に表現したいものを探求した。

李 侑 桓 (イ ユ フ ァ ン )「大岡文学に表れる闘争と悲劇一その相対的存在を廻って一」

本論文では、戦後派作家大岡昇平の作品の中で表れる日常と非日常の側面においての分 析を通して、作者と作中の人物が持っ特性と思想にっいて一っの解釈を引き出すことを目 標にしている。 これまでの戦後小説に対する分析から離れて、大岡が持っ特性を既存の日 本文学における私小説的特徴とフランスの心理主義文学的叙述法から受け継がれたもので あるとし、特に注目する部分として作中で描かれた舞台の反転と思想的対立から起因する 作家の一貫した主題を調べ、そこから表れる文学的思想と作者の根本的姿勢に対する考察 を行う。本稿では戦争を描いた作品と日常における人間の心理とその推移を描いた作品に ついての分析を進め、 同時にその文学観形成に多大な影響を与えたフランスの作家スタン

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ダールとの関連性を論じ、作家の独特な文体と執拗に明晰を追求する叙述法から読み取れ る明瞭さとあいまいさ、 日常性と非日常性の閨係に対する定義を行うことにしている。

李 黙 存 (リ モ ク ゾ ン )「漱石前期作品における現実世界と「彼岸的世界」一 『草枕』ま での作品を中心に一」

漱石の前期創作には現実世界を捉え、現実と向き合おうとする志向を表す作品と、現実 世界の反対側にある幻想的で生き得ないゆえの「彼岸的世界」 を描く作品という二つの傾 向のせめぎ合いが見られる。留 学 以 前 の 創 作 に 描 か れ る 「仙郷」 は 「彼岸的世界」 の表現 である。 しかし単なる現実世界からの脱却と「我」 という自己意識から解放する脱俗への 憧れではなく、現実的認識の一面も表している。留学を境に漱石の現実志向が強まる。現 実 世 界 を 捉 え る 「写生」は、 「我」の意識を中心とする特徴の背後に『文学論』 との繫がり がある。諧謔的な写生文は人物を国家の寓意を担わせて登場する現実志向が強い一方、脱 俗的傾向も見られる。 ほ ぼ 同 期 の 『草枕』 の 「非人情」 は 「我」からの解放であり、脱俗 的 な 「彼岸的世界」 を描く作品であるが、最後に連載終了後の現実志向を表す書簡と同じ 傾向が見られ、『草枕』 は 「彼岸的世界」 を描く最後の作品になる。

黄 棠 棠 (コ ウ ト ウ ト ウ )「村上春樹作品における動物の表象一鼠、羊と象を中心に一」

本論は三章に分けて村上春樹作品における「鼠」、 「羊」 と 「象」の表象を考察した。

第一章では、 「鼠」 の名前を持たないことから始まり、動 物 と し て の 「鼠」の名前の由来 を日本古典文学の説話を考察した。 そして村上春樹の鼠三部作を取り上げ、大江健三郎の

『万延元年のフットボール』 と比較し、 「鼠」は 「僕」の 6 0 年代への情念の担い手である と論じてみた。

第 二 章 は 「羊」 に関する先行論分析し、その宗教性と時代性に注目した。最 後 は 『羊を めぐる冒険』 と 『ダ ン ス .ダ ン ス .ダ ン ス 』 を取り上げ、 「羊」が情報のメタファーである と考察した。

第三章では、 「象」 の 「思想」、 「国家の論理」 と 「情報」である表象の分析で始まる。 そ の 後 は 『踊る小人』、『象の消滅』 と 『世界の終わりとハードボイルド.ワンダーランド』

に着目し、情 報 社 会 に 置 か れ る 個 人 の 「自我」 の生き方を主題として論述してみた。

ア ン ト ネ ッ ラ モ ル ジ ッ ロ 「戦後詩誌における「櫂」 と詩人茨木のり子一戦争から造形さ れた女性詩人一」

日本の詩は二十世紀にわたって大きく変わってきた。特に、第二次世界大戦後に書かれ た詩が特別な形をとっており、 当時の出来事の反映として見なすことができる。戦争の敗 北によってその世代の詩人たちの間に異なっている反応があった。人間に対して反発的な 気持ちを覚え始めた詩人とともに、詩を通して戦争の酷さを乗り越えられることを信じて いた詩人もいた。戦後詩壇の特徴の中で詩誌の創刊はその一つである。 日本では戦後中に

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究要旨

もっと も 評 判 に な っ た 詩 誌 は 「荒地」、 「列島」、 「櫂 」である。本 論 文 で は 「櫂 」 という詩 誌の発展と特徴に注目されながら、戦後における詩人茨木のり子の活動と詩作が紹介され ている。特に、『櫂』詩誌と茨木のり子の閨わりに目を向けながら、戦争の体験はどういう 風に茨木のり子の詩作法に影響を与えたのかということが勉強されている。

張 洋 子 (チ ョ ウ ヨ ウ コ )「日本人はどのようにユーモアを語るか一『わたしのちょっと 面白い話コンテス卜』 をもとに一」

文化に閨わらず、人が気持ちよく交流する際に使われる手段の1 っとしてユーモアが挙 げられる。本研究は、異種の組み合せによる不適合が笑いを生起させると指摘している「不 適合理論」 を取り上げながら、 「わたしのちょっと面白い話コンテスト」の中から抽出した 日本人による220作品を分析データとし、話 の 「対象」、 「形式」、 「構造」及 び 「言語的特 徴」 にっいて分析を行った。

その結果、 「対象」 において、他人を笑う話がもっとも多く、 「形式」 において、96.82%

が個人の経験談などが見られる「ナラティブ」 の形式となっていることが分かった。 また、

「ナラティブ形式」の作品の構造を分析した結果、パンチラインで話を終わらせる作品が 非常に少なく、その代わりに、パンチラインが終わった後でも情報を続けて提供している 作品が多いことが分かった。最後に、不 適 合 を 予告する重要な役割を果たす「たら」 と、

聞き手に未知の情報を認識させようという話し手の心的態度を反映した「のだ」が、 日本 語母語話者がユーモアを語る際に目立っ言語的特徴であることが明らかになった。

左 白 楊 (サ ハ ク ヨ ウ )「『させられる』述語文の意味と構文一人主語を中心に一」

従来、 「させられる」述語文の使役受動文を中心として主に被役と誘発という2 っの意味 があると指摘されてきた。 しかしながら、 「させられる」述語文のほかのタイプの文の意味 及び構文特徴にっいては、 ほとんど明らかにされていない。

本 研 究 はB CC W Jから抽出したデータのうち、人 主 語 の 「させられる」述語文を対象と する。 「させられる」形 を 「させる」 と 「られる」が組み合わされたものだと考え、 「させ

られる」述語文タイプの異なる意味、異なる構文を分析した。

具体的には、 「させられる」述語文を大きく使役受身、使役可能、尊敬に分類した。 この 3 っの大きなタイプを3 大分類と呼んでいる。 さらに、下位の分類として、使役受身を強制 の 受 身 、許可•放任の受身及び原因の受身に、使役可能に強制の可能、許可•放任の可能、

放置の可能に、尊敬に強制の尊敬及び二重尊敬に細分類し、全 部 で 8 っの細かいサブタイ プを立てた。

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邱 顯 峻 (キ ュ ウ ケ ン シ ュ ン )「第二言語不安から見た遠隔外国語教育一台湾の仮想教室 型授業を対象に一」

学習者にとって、オンラインと教室という2 つの授業環境において不安の度合いは異な るか一これが、本研究の最大の焦点である。 したがって、本稿の目的は、教育環境の違いを 不安の側面から捉え、教室と遠隔教育における不安の実態を明らかにすることにある。

本稿では、台湾の遠隔外国語教育を経験する学習者と教師109名を対象に、不安の実態 を実証的に分析した。結果、学習者の不安は教室および遠隔という2 つの教育環境によっ て異なり、遠隔教育環境には教室より低いレベルの不安を感じると考察できた。 さらに、

そ の 要 因 に 「他者との閨連」 というキーワードが1 つ決定的な要素であると論じられた。

これまでは、遠隔教育はその利便性に注目が集まっており、習得に閨する討論はほとん ど見られない。本稿では、不安の観点から遠隔教育における第二言語の習得にかかわる利 点を論じた。 これは、学習者が教育環境を選択する際に考慮すべき1 つ有益な情報となり

うると考えられる。そしてまた、本研究の意義でもある。

汪 丹 丹 (オ ウ タ ン タ ン )「中日大学生による依頼メールの機能的要素の相違点一評価か らみた丁寧さと、要素の有無■提示順の関係について一」

本研究は、面識がない目上の相手にメールで依頼を行うことを取り上げ、 中国人日本語 学習者と日本語母語話者各々が書いたメールの文章を「機能的要素」 という観点から分析 することにより、それがメールの丁寧さやメールの文章構造にどのように影響するのか、

また、 中国人日本語学習者と日本語母語話者による違いを明らかにし、 日本語教育におけ る依頼メールの書き方指導の際の注意点を導いた。 これまであまり取り上げられてこなか っ た 「恐縮表明」 と 「自己紹介」、 「依頼予告」 と い う 「機能的要素」 に注目し、調査結果 を分析したところ、中日協力者の使用意識については、共 に 「『恐縮表明』か ら 『自己紹介』

のほうが丁寧」 という回答が最も多かったが、使用実態には相違が見られた。 また、 「依頼 予告」 についても書いた方がいいとの回答が多かった反面、実際に書いた人数は少なく、

これらの点をメールの書き方指導の際の注意点として導くことができた。

孫 蕊 (ソ ン ル イ )「平安朝における隠遁思想の受容と変容一都良香■紀長谷雄と橘在列 を中心に一」

本稿では、都良香•紀長谷雄•橘在列という平安初期から平安中期まで三人の官僚文人 の詩文を、時代背景をあわせて考察し、彼らの隠逸志向に閨するいくつかの問題を検討し た。 日本の隠逸思想は中国から受容した後、 日本の特有な風土と当時代特定の政治背景と を融合し、その自国性と特定政治性が反映されていると思われる。本論は、序章では、 中 国隠逸思想の歴史的な流れおよび平安朝における中国隠逸思想の受容について概説した。

第一章では、良 香の神仙•隠逸思想に注目し、彼 の 詩 文 が 中 国 の 「山水記」• 「名山記」 さ らに老荘思想との関連性を考察し検討したのである。第二章では、長谷雄が生きていた時

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< 彙報>2017年度修士論文•修士研究要旨

代の政治状況を合わせて、詩人と官吏としての長谷雄における身分的な二重構造からその 隠逸志向に対する心の葛藤を分析してみた。第三章では、橘在列の境遇と当時摂閨政治と いう社会状況を考察しつつ、『扶桑集』 における橘在列•源英明の一連の唱和詩を中心にし て、その詩境に現れた隠逸志向が如何なるものかを明らかにしようとした。終章では検討 してきたところを纏めたうえで、平安朝隠逸思想における後世への影響と、今後の課題に ついても展望してみたのである。

参照

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