九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
放射性廃棄物地層処分障壁材中の核種の移行に関す る研究
出光, 一哉
https://doi.org/10.11501/3065612
出版情報:Kyushu University, 1992, 博士(工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
第4章 コンクリート中の核種の移行に関する研究
4 . 1節 緒言
コンクリートは、 低コスト材料であり、 入手、 取り扱いが容易で、 非常に 安定な材料である。 また、 放射線による性能低下が少なく、 機械的強度にも 優れており、 廃棄物の高密度装荷が可能な材料であり、 固化体材料, 間隙の 充填材, 埋設施設の構造材などに利用されることが考えられる。 更に、 コン クリートは、 低レベル放射性廃棄物の貯蔵処分施設で放射性核種の漏出防止 の工学バリアとして最も有効な材料である。
第1章で述べたように、 コンクリートは処分場掘削の際の岩盤の緩みを補 強するため、 また初期に止水を行うためのグラウト材として用いられる。 グ ラウトを施さない無垢の花両岩では透水係数が10-12m/sで、あるが
、
耐硫化物 セメントとシリカフュームと可塑材を含むグラウトを用いた場合、 その透水 係数が10・15mjsまで下がるという報告もある(51)。高レベル放射性廃棄物処分の安全評価においては、 グラウト材の核種移行 のバリアとしての効果は保守的に無視されているが、 低レベル廃棄物の固化 体としても用いられるコンクリートは高い核種保持能力を持っている(52)。
これまで、 放射性廃棄物に関連するコンクリ-トの研究は、 低レベル固化 体からの浸出(53)(54) 粉末コンクリ-ト試料への収着挙動(55)(56), コンクリ-
トの化学的安定性などが中心となっており(57)(58)、 コンクリ-ト中での核種の 拡散や透過についての報告は少ない。 しかしながら、 放射性核種の封じ込め
の観点から考えると、 実際のコンクリ-ト中での核種の移行挙動がコンクリ ートの性能評価として重要である。
そこで本研究では、 核種移行の遅延効果が大きい優れたコンクリートを見 い出すため、 骨材あるいは混和材の異なる6種類のコンクリートを使用し核 種の浸入実験および収着実験を行った。 トレーサーとして、 廃棄物処分上重 要な核種である135CS、90Srと化学的特性が同じでγ線放出核種である134Cs、
85Sr、化学的性質がpHにより著しく変化する元素である60COを用いた。
56
4.2節
実験方法4.2. 1 コンクリ-ト試料
試料は、 セメントとしてボルトランドセメントを使用し、 骨材として砕砂 あるいは人造エメリーを使用した。 また、 これに混和材を添加したコンクリ ートも試料とした。 コンクリート試料のモルタル配合比等を表4.1に、 セメ ント、 骨材、 混和材の化学組成を表4.2に示す。 骨材の最大寸法は5mm以 下であり、 その多くは0.3から0.8mmであった。 一般に、 骨材が5mm以下の ものはモルタルと呼ばれるが、 ここでは廃棄物固化体について慣用的に用い られているコンクリートと呼ぶ。 これらのコンクリートは打設後、 温度200C、
湿度80%以上で24時間、 その後200Cの水中で2 8日間養生された(59)。
表4.1 コンクリート試料のモルタル混合比等
コンクリートの種類
骨材 砕砂 エメリー
(Aggregate )
混和材 なし ベストン シリカフ なし ベストン シリカフ
(Admixture)
ューム ューム水(wt% )
12.8 12.6 10.9 11.1 10.9 9.4
セ メント
29 28.5 28.6 29.6 29.1 29.1
粉砕砂
29.2 28.7 28.8
ー ー ー海砂
29 28.5 28.5
ー ー ーエメリー ー ー ー
59.3 58.2 58.3
ベストン ー
1.7
ー ー1.8
ーシリカフユーム ー ー
2.9
『 ー2.9
水/セ メ
0.44 0.44 0.38 0.38 0.37 0.32
ント比
密度
2.441 2.433 2.439 2.65 2.665 2.67
L
103kg/m3空隙率%
10.7 9.4 6.7 6.9 7.6 5.7
ー
比表面積
2.4 5.1 2 3.3 2.5 0.77
L_!!l2/g
表4.2 セメント、 骨材、 混和材の化学組成
\
ボルトランドセメントセメント 砕砂 骨材エメリー ベストン混和材シリカフューム- A1203
5.2 23
-30 2.06 0.3
Si02
22.0 95-50 25 - 35 84.5 94.0
CaO
64.2 0.1 - 1.8 3. 1 2 0.2
M
g
O1.4 25 - 36.5 1.88 0.5
Fe203
3.1 4.96
MnO
0.2
Cロ03
3.0 - 3.23
Na20
0.6 0.2 0.4
K20
0.2 0.1 0.8
FeO
0.8 0.3
S03
1.6
C
1.0
Ignition loss
0.9 1.49 2.0
コンクリートの密度ρは、 砕砂系のコンクリ-トで約2.438g/cm3であり、 エ メリ一系では約2.662g/cm3である。 混和材の有無による差はあまり認められ ない。 空隙率Eは、 砕砂系のコンクリートでは混和材により大きく変化する が、 エメリ一系については殆 ど違いがない(約0.067) 。
砕砂系コンクリートのBET比表面積は2.0�5.1m2/gの範囲で、 混和材に ベストンを加えたものが最大であり、 エメリ一系コンクリートの比表面積は O.8'"'--3.3m2/gの範囲で、 シリカフュームを加えたとき最小となった。
4.2.2 放射性核種を含む溶液の調整
塩化セシウム、 塩化ストロンチウム、 塩化コバルトの0.5N塩酸溶液(放射 能強度各10μCi/cc)をO.lccずつ採取し、 脱イオン水を用いて20ccに稀釈 した。 この時、 O.lN硝酸およびO.lN水酸化ナトリウムを用いてpHを7付近 に調整した。 134CSの半減期は2年、 主なγ線は 、 569.3
keV
(15
.4 3%)、604.7keV(97.6%)、 795. 85keV( 85.4%)、 85Srの半減期は6 5目、 主なγ線は、
514.0keV(98.0%
)、 60COの半減期は5.3年、 主なγ線は、 1173keV(99 .9%)及58
ぴ1333keV(99.98%)である。
4.2.3 拡散実験
拡散実験 のフローシート を図4.1に示す。
あらかじめ試料は、 40mmX 40mm X 100mm のサイズで作製さ れており、
これを高速カッターで10mmX10mmX25mmに切り出した。 次に試料の一面 を除き、 エポキシ樹脂で被覆した。 この時、 試料と樹脂が密着するように減 圧して硬化させた。 樹脂 の硬化後、 接触面となる試料面を平滑にした。 その 後、蒸留水に浸し、 減圧して空隙を蒸留水で満たし、 実験試料とした。
実験装置の概略を図4.2に示す。 実験試料とトレーサー を含む溶液20cc をポリエチレン容器に入れ、 これを恒温槽にセットし、 一定期間接触撹枠し、
放射性核種を拡散浸入させた。
接触が終了した試料を、 8 0番エメリー紙を用いてO.10�O.60mmの間隔で 研磨を行った。 この研磨紙を6cm四方に薄く折り畳み、 検出窓から1 cm の 位置に固定して、 γ線強度を測定した。 測定には、 SEIKO EG&G製Ge半導 桝食出器を使用した。 各深さでのγ線強度を浸入深さ方向に対してプロット
し、濃度プロファイルを求めた。
実験は全て、 接触温度300C 接触期間7日で、行った。 トレーサ-濃度は、
134Cs、85Sr、60Coともに約2kBq/ccとした。 実験前のpHは7に調整した。
R. 1. 溶液調整 コンクリート試料作成
10X 10X25 mm
コンクリート試料と
R. 1. 溶液の接触
(3
OoC、7日間)
試料研磨
(0.05�0.6mmきざみ)
γ線スペクトルの測定
濃度分布の決定
図4.1 拡散実験のフローシート
図4.2 実験装置の概略図
60
恒温槽
R. I. 溶;夜
コンクリート
4.2.4 バッチ法による収着実験
各コンクリート試料に対する核種の収着係数をバッチ法により測定した。
実験のフローシートを図4.3に示す。
各コンクリートを粉砕しふるいにかけて、 メッシュ32
---60(0.4---0.8mm)の
コンクリート粉末を得た。 この粉末1 gを計量し、 拡散実験に用いたR. 1.溶液30ccとポリエチレン容器に入れ、 これを恒温槽にセットし、 3 OoCで7 日間接触させ、 放射性核種を収着させた。
接触終了後、 溶液とコンクリートを分離するため、 まず遠心分離器によっ て2000 gで2 0分間分離した後、 上澄み液を孔径0.025μmのフィルターで漉
過した。
この漉過液をγ線測定し核種の定量を行い、 原液との濃度変化から収着量 を求めた。
R. 1. 溶液調整 コンクリート試料作成 粉末メッシュ32---60
コンクリート試料と R. 1. 溶液の接触
(3 0 oC、 7日間)
溶液とコンクリートの分離 遠心分離(2000g、 20分間)
漉遇( 0.025μm)
溶液のγ線スペクトル測
収着係数の決定
図4.3 バッチ法収着実験のフローシート
-
4.3節 実験結果
4.3.1 濃度プロファイル
セシウム、 ストロンチウム、 コバルトの各試料における 濃度プロファイル を、 それぞれ、 図4 .4 、 図4 .5、 図4 .6に示す。 いずれの図でも、 横軸は 試料表面からの浸入深さ(mm)であり、 縦軸はコンクリート単位体積当り の放射能強度(cps/mmりである。
いずれのプロファイルにおいても、 深さ 0.3mm付近で 濃度プロファイル の傾向が変化していた。 それより浅い部分では 濃度の減少が大きく、 深い部 分では 濃度の減少が緩慢になっていた。 測定は深さ5mm程度まで行ったが、
2mm 以上の深さでは殆ど核種は検出されなかった。 ストロンチウム、 コバ ルトに関しては、 骨材、 混和材の添加による影響はあまり認められなかった が、 セシウムについては砕砂系コンクリートの方が全体的に 濃度が高かった。
4.3 .2 各コンクリート試験体の収着係数
表4.3及び図4.7、 図4.8に各 コンクリート試験体の収着係数と体積収 着係数を示す。 Srの収着係数はコンクリートの種類によらず小さい。 Csの収 着係数は砕砂系とエメリ一系コンクリートで約1桁の違いがみられた。
表4.3各コンクリート試験体の収着係数(m3jkg)と体積収着係数(Ka=Kdρ)
Concrete cs
Sr Co
Kd X 103 Ka Kd X
103Ka KdX 103 Ka
Sand
9.58 23.4 3.38 8.25 10.4 25.3
Sand
8.35 20.3 1.36 3.31 16.5 40.
1Beston
Sand
7.32 17.9 1.51 3.68 12.9 31.5
Silicafume
�
ery1.32 3.5 0.7 1.855 5.15 13.6
Emery
0.72 1.9 0.92 2.45 5.35 14.3
Beston
ドー-
Emery
0.59 1.6 1.05 2.8 16.2 43.3
�
ilicafume62
-
10 1
-0ーSand
-0検Sand Beston
foothl
Sand Silicafume 圃・- Emeryベ掛Emery Beston
叫'f�::::::::' Emery Silicafume
QO 10 ・2
。問
同
-d
d.-H
10.3 0
Depth
(mm)
2
図4.4 コンクリート中のセシウムの濃度分布
10 1
-
Sand Silicafume 圃・- Emery
制欝柑Emery Beston Emery Silicafume
…0・. Sand Beston -0- Sand
nu 《Ud宅・・
10 -2
FEEBas
coZ伺』】FEOυzoQ』ω 司dnU 4E,
2
Depth (mm)
。
コンクリート中のストロンチウムの濃度分布
64
図4.5
:
E100
ω 色
。
c ..
2 10 ・ t
c 』 申dz o U E 0
0 っ
o
10
-Q
10.3
。
図4.6
Depth
(mm)
-0- Sand
ペコーSand Beston Sand Silicafume 圃.回Emery
間畿蝿Emery Beston
Ç;};z,:" Emery Silicafume
嬢
コンクリート中のコバルトの濃度分布
65
2
-
図 Sand
臼 Sand Beston ロ Sand Silicafume
• Emery
自 Emery Beston 図 Emery Silicafume
20
10
(OGEυ)万一¥
Cs Sr Co
図4.7 各コンクリート試験体の収着係数
。
図 Sand
臼 Sand Beston ロ Sand Silicafume
• Emery
m
Emery Beston
図Emery Silicafume50
40
30
20
10 (Eω\Eυ)ωx
mv mu
。
Co
各コンクリート試験体の遅延係数66
Cs Sr
図4.8-
4.4節 考察
4.4.1 コ ンクリートの構造
コ ン クリート中の核 種の拡 散係 数について考 察するため、 まず、コ ンクリ ートの構造 について知る必要がある。
セメントは、 表4.2に示すように様々な化学成分を含んで、いる。 しかしな がら、 それらが単体で、水と反応するのではなく、 複雑な化合物を形成しては じめて水和反応を起こして硬化体となる(60)(61)。 代表的なセメ ン ト構成化合物 を以下に示す。
3CaO・Si02
(略号C3S) 45 ---- 65
wt%2CaO・Si02 C2S) 10 ---- 30
wt%3CaO・A1203 C3A) 5 ---- 15
wt%4CaO・A1203・Fe203 C4AF) 5 ---- 12
wt%CaS04 く5
wt%ボルトラ ンドセメ ン ト の70%以上を占める珪酸カルシウムC3S (アリツ ト)とC2S (ベリット)の水和反応は以下の通りである(60)。
2C3S + 6H20→C3S2児+ 3Ca(OH)2 2C2S + 4H20→C3SiH3 + Ca(OH)2
ここで、C3S 2胞は水和生成物で、 実際には測定法によりC1.6SH1.7のよ うに整 数比とはならないが、 近似的に上式のように表される。 このC3S2H3という水 和生成物は天然に存在するトベルモライト(Tobermorite)という鉱物に共通す る点があることからトベル モライトゲルまたはトベルモライト類似相と呼ば れている。 トベルモライト ゲルはコロイド状の大きさの微細結品である。 上 述の水和反応では、 固相の体積 は増加し、 全体の体積は減少する。 このとき、
珪酸カルシウムはトベルモライトゲルに変化し 、C3S (アリット )とC2S (ベ リット)から溶け出したイオ ン がセメ ン ト粒子聞に生成物 (Ca(OH)2) をつ くる。 全体の体積が減少す るため、セメ ン トペーストは硬化収縮を起こすが、
コンクリートでは強さの発現により変位量は小さく、空隙 (毛細管空隙)が 形成される。 混和材として加えたシリカフュームは、 副産物として生成した 水酸化カルシウムと反応しトベルモライトゲルを形成しコ ン クリートの水密 性 を 増 加 さ せる(62)。
-
ポjレトランドセメント中でアルミナ化合物(C3A,C4AF)は最初に硫酸カルシ ウム(石膏)と反応する。
C3A
+3CaS04
+32H20 → C3A .3CaS04・32H20 C3AF
+3CaS04
+32H20 → C3AF. 3CaS04・32H20
この生成物はエト リンジャイト (ettr ingite)とい う鉱物と一致する。 セメント 中の石膏が上記反応で消費されてしまうとアルミナ化合物(C3A)は以下の水 和反応を起こす。
2C3A
+6H20
+C3AF. 3CaS04・32H20 → 3[C3A.CaS04・12H20]
C3A
+Ca(OH)2
+12H20→ C3A. Ca(OH)2・12H20
C4AFも同じ作用を受ける。 セメント中に石膏が無いとアルミナ化合物は急激 に水和反応を起こし固まってしまう。 エトリンジャイトは比重が1.7と低いた
め生成に伴い膨張し亀裂を発生させることもある。
このようにしてできた水和生成物は、 極めて微細で一様な性質を持ち、 堅 く付着したセメントゲルとなっている。 セメントペーストは、 練り混ぜ、てか らしばらく経つとセメント粒子の網状組織ができる。 この時、 セメント粒子 間の間隙には連続的に毛細管水が存在するが、 セメント粒子表面の水和生成 物の成長とともに毛細管水隙は非連続状態となって硬化体となる。 従って、
水セメント比が小さくなると、 硬化体の中の毛細管水隙の量が減るにつれ透 水量も徐々に減少する。 本実験に用いた試料には、 水密性を向上させる目的 で更にシリカ質混和材(ベストン、 シリカフユーム)を混入している。 以下 のような水和反応(63)により毛細管水が消費され、 水密性の高いセメントペー ストとなっている。
Si02
+xCa(OH)2
+yH20→CxSHy Si02
+2H20→Si(OH)4
A1203
+3Ca(OH)2
+3H20→C3AH6 A1203
+3H20→2AI(OH)3
Fe203
+3Ca(OH)2
+3H20→C3FH6 Fe203
+H20→2FeOOH
コンクリートは、 セメント 骨材および混和材よりなる材料であり、 本質 的に 二つの多孔質相の混合物と考 え られる。 一つは連続相のセメントペース
68
トであり、 もう一つは粒子相の骨材である。 骨材は周囲をセメントぺースト で覆われている。 コンクリートには、拡散経路となりうる特有な微細構造(骨 材とセメントペースト接合面の亀裂、 内部応力等による亀裂、気泡等の空隙) がある。 大別すると長く結合して網状組織となっている亀裂(フイツシャ-) とセメントぺースト中に存在する毛細管空隙である。
各コンクリート試験体のSEM観察写真を図4.9に示す。 いずれの写真で も幅数μmの亀裂が観察される。 亀裂はセメントペースト中及びセメントペ ースト/骨材界面に多く見られる。 これらの亀裂はセメント部分の乾燥過程 においてセメント部分が収縮することによって発生したものと思われる。 こ れに対して、 骨材の方には亀裂はあまり観察されなかった。 表4.1に示した ようにコンクリートの空隙率は数%あるが、 SEM写真にみられる亀裂の体 積は試験体の数%あるようには見えない。 したがって、 多くの空隙は毛細管 空隙であると考えられる。 コンクリ-ト表面のSEM観察により亀裂は確認で きるが、 毛細管空隙は確認できない。 そこで、 水銀圧入法により毛細管空隙 の寸法分布を調べた。 測定結果を図4.1 0に示す。 図の縦軸は空隙のふるい 上分布(横軸の空隙径以上の空隙が占める体積)を表しており、 曲線の傾き の最も大きい部分の示す径の空隙が最も存在割合の多い空隙である。 各コン クリート試験体において、 最も存在割合の多い空隙径は約300Aであった。 径 が数μmのものは空隙全体の約l割を占めるにすぎない。 また、 空隙の全体 積から求めた空隙率は、 砕砂系コンクリートで7---9%、 エメリ一系コンク リートで4---5%であり、 表4.1に示したアルキメデス法によって測定した 空隙率とよい一致を示した。
4.4.2 コンクリート中の拡散モデル
(1)
コンクリート中の核種の拡散経路動水勾配が無視できる場合のコンクリ-ト中での移動は、 従来単純な一次 元拡散モデルで説明されてきた(64 )(65)( 66)(67)。 しかしながら、 これらの文献に 報告されている核種の濃度分布も、 今回得られた結果と同様に、 表面付近で 急な濃度勾配と深い部分で緩やかな濃度勾配を持っていた。 従来の解析では、
渡度分布を表面付近と深い部分に分け、 それぞれ独立にフイツテイングを行
小Y九トfLHH 1ン F
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40
0 10・3
-0ーSand
…臼叩Sand Beston Sand Silicafume
→・トEmery
斗議トEmery Beston Emery Silicafume 230 ~mu
p-- υ
、ー'
g
。 200 〉
。〉
申d伺
g
コ 10 υ10・2 10・1 100 10 1
Pore size
(μm)
図4.1 0 水銀圧入法によって測定した各コンクリート試験体 の空隙の孔径分布
71
って2つの拡散係数を導き、 単に空隙構造の異なる早い拡散と遅い拡散とし て扱っていた。 しかし、 それではそれぞれの拡散係数の意味を説明していな い。本研究では、 それぞれの拡散係数を以下のようなモデルを考え説明した。
前節で述べたように、 コンクリートには大きく2つの拡散経路が考えられ る。 一つはSEMによって観察できる幅数μmの亀裂部分であり、 もう一つ は水銀圧入法によって測定できるセメントペースト中の毛細管空隙である。
そこで、 本研究では、 多結晶金属における粒界拡散モデル(68)(69)を参考にして 図4 .1 1に示すような拡散経路を考えた。 均一な幅(2a)の亀裂が試験体表面 に垂直に等間隔(2b)ではいっており、 それ以外の部分は毛細管空隙を含むコ ンクリートマトリックスであるとした。 亀裂の中心を原点とし、 深さ方向に y軸、 表面方向にx軸をとった。 Dfa、 Dmaは各拡散経路でのみかけの拡散係 数を表している。
図4 .1 1 コンクリート中の拡散経路の摸式図
72
コンクリートマトリックス中での拡散
(2)
拡散方程式を解く前に、 コンクリートマトリックス中の拡散について考察
しておく。
収着が起きる多孔質媒体中の拡散方程式は、 通常、 以下のように表される。
ε笠=εD どζ -
p�q
at aX2 I at
( 4-1 )
ここで、 εは空隙率、Cは溶液中の核種濃度、 Dは拡散経路の曲りやくぴれ を考慮した拡散係数、 ρは密度(gjcc)、 qは収着した核種の濃度(moljg)を表
している。収着した核種の濃度が溶液中の核種濃度と線型の関係があれば、
q=KdC
(4・1)式は以下のように変形される。
ac _ r-. a2c _ TT 1 ac
ε 一一 =εD 一一 一 P Kd 二 一
at aX2 I a
(ε+ P Kd)笠=εDどE
at aX2
ac _
D
a2c _ 1\ a2c dt - Rd孟
2 -.LJa
瓦ERd=ε+Kdp
(4申2)
(4-3) (4-4)
(4-5) (4-6)
ここで、Daはみかけの拡散係数と呼ばれ濃度分布の変化を代表する拡散係数
である。
(4-5)式から、 見かけの拡散係数は収着係数が大きいほど小さく
なることが分かる。
しかしながら、 本研究で得られた濃度分布は、 (4-5)式から予想、さ れる 傾向とは違う傾向を示している。 図4.4に示したセシウムの濃度分布につい てみると、砕砂系コンクリートの方がエメリ一系コンクリートよりも約l桁 濃度が高いにもかかわらず、 濃度分布の勾配は大きく違わない。 収着量の多 い砕砂系コンクリートに方がみかけの拡散は遅くなるはずであるが、 図から は逆に僅かに早くなっているようにみえる。 これは、 コンクリートマトリッ クス中の核種の拡散が単純な多孔質媒体中の拡散ではないことを示している。
このような拡散を説明するモデルとして核種の表面拡散がある。 表面拡散 は収着した核種が収着された状態で拡散するもので、 表面濃度の勾配を駆動 力とした拡散である。表面拡散におけるFickの法則は以下の式で表される(40)o
Fs=ーDs(Cs) VCs (4-7)
E F E+笠 三 =εp Dp V2 Cp
+V(Ds { Cs) V Cs)
òt dt
t' t' t' \ �\ � I ., I( 4-8 )
ここで、Fsは表面拡散の流束、Ds(Cs)は表面拡散係数、Csは収着した核種の 単位体積当りの濃度、εpはマトリックス中の自由水の占める空隙率、Cpは 自由水中の核種の濃度である。収着濃度を溶液中の濃度の関数fで表せば、
Cs
=�Cp) (4-9)
ðCs
_ç'òC
ðt �説 (4-10)
v
Cs
= fV Cp ( 4-11 )
r' = d
�Cs)
d
Cp (4-12)
という関係式が求められる。よって、(4-8)式は以下のように書き替えら れる。
(εp+ キ = V{(εルs(cp )t')V Cp } (4-13 )
ここで、表面拡散係数が濃度に依存せず\収着が線型(Cs = KaCp)とすれば、
òCー っ
V'"'P = D免VL.Cn
òt
... 1:'Da =εpDp + DsKa
(4-14 )
εp
+Ka (4-15)
となる。ここで、Ka=ρKdである。表面拡散が自由空隙水中の拡散より十分 に早く(εpDpくくDsKa)、収着が大きい(εpくくKa)とき、 (4-15)式は、
Da三Ds
(4-16)
となり、みかけの拡散係数は 表面拡散係数と等しくなる。このとき、みかけ の拡散係数は収着係数に依存しない。
コンクリートマトリックス中の毛細管空隙は、最大存在割合が300A程度 と径が小さく、曲りやくびれも大きいものと思われる。したがって、自由な 空隙水は分断され、表面拡散の方が早くなっているものと考えられる。
(3) 拡散方程式とその解
コンクリートマトリックス、亀裂、での拡散係数を、それぞれ、Dm" Dfと すれば、それぞ、れの媒体内で次のような連続の式が成立する。
74
主旦=
DsV2Cm
at
aCf 一 Df
( a2Cf
+a2cf )
b三I
x
I� a(4-17)
| 司 司 I I x I
� aat . - \ aX2 ay2 J
I I(4-18)
ここで、Cmはコンクリートマトリックス内にある空隙水中の放射性核種の 濃度、Cfは亀裂中にある空隙水中の放射性核種の濃度で、é fは亀裂内部の 空隙率である。 (4-18)式において、亀裂内にはほとんど充填物がないとす
ると、 Ë fキlであるから、
aCf = Df
(色+立f)
at
�\ ax2 ay2 J I x I
� a初期条件と境界条件はそれぞれ、
C (x, y, 0) = 0
C (x, 0, t) = Co H( t) ,
H(t) :ヘピサイド関数C(∞,∞, t)
=0 (4-20)
また、コンクリートマトリックスと亀裂 間の境界条件を考えて、 境界でそれぞれ の空隙水中の濃度が等しいとすると、Cf= Cm I x I
= a( 4-21 ) さらに、境界において、亀裂側のX方向 への流束とコンクリートマトリックス空 隙側で、のX方向への流束を等しいとおく
と
aCf
_ 1"'\ V _'"'a Cm
D
f てよU入 =DmKctPm
て一。x I x I =
a(4-22)
(4-19)
e
X a
亀裂内で、の核種の濃度分布は、x�こ対して偶関数であり、亀裂中央で濃度勾 配がゼロと予想される。そこで、Cfを次のように仮定する。
Cf (x, y, t) = Cfo (y, t) +すCf2 (y, t)
(4・23)式を(4-22)式に代入すると、
(4-23)
ðCm
a Df Cf2 = DmKlPm 五旦
また(4-23)式を(4-19)式に代入して、
主f = Dfど豆+ DfCι
ðt
昼ðy2
晶 日=D f 芝生+Dm�Pm ðCm
�
ðy2 a ðx
両辺にaをかけると、
(4-24)
(4-25)
岨 =Dfa2(a Cf1 + DmKdPm
�与 I
x 1= adt
�ðy2
'" �I ' " dX I I(4-26)
(4-26)式において、左辺は単位深さ当りの亀裂内の濃度(aC f)の時間 変化、右辺第l項は亀裂内のy方向への拡散による核種の収支、第2項はコ
ンクリートマトリックスへの核種の拡散を表している。(4-25)式において、
x=aではCf=Cmであるので、
主旦=Dfど主旦+
Dm�Prrl笠旦
ðt
�ðy 2 a ðx I x I = a ( 4-27)
ここで、(4-17 )式の両辺にDf/ Dmをかけると、
Df 笠旦=DfどCm -+- nr ð2Cm b三
I x l
�a
Dm ðt
�ðx2
�ðy2
I I(4-28)
この式を、(4-27)式に代入して、
(h 」 ー 1) u ) AF ' 一旦=a Df一 什 一旦- Dm�Pm ð c
一旦 I x
1= aDm J ot
�
ðx2
... "1 '"ax
I I(4四29)。
ここでDf)>Dmならば、左辺のo内のlは無視できる。両辺をKdρmで割り、
a Dfa ðCm ー」
土土一一
一一 =a Ufa
= ;:} Dçna2Cm ----=- ー ニニ
_ー Um
D�aCm 一一一 Dm ðt
U4ðx
:乙ðx Dfa = Df
I x 1= a
(4-30)
Pm Kd (4-31)
(4-17)式、(4-30)式及び境界条件(4-20)式を用いると、任意の時問、
任意の位置における放射性核種の濃度は次式のように表すことが出来る。
手 =
erfc(11)
+l I
坐eXD( - �)
erfcfl (と+豆斗1
にo
\2/ 2ぽよσ3/ 2
...\ 4σ/ l 2γ ß JJ (4-32)
と= -X-a η -VDm t =
.ß = 企 ,
�= a Dfa
'
'1 必F'r 必訂 Dm (4-33)
(4-32)式において、右辺第一項は試料表面からコンクリートマトリック76
スへ直接拡散した核種の濃度分布を表し、 第二項は亀裂を介した拡散の寄与 を表している。
y方向(深さ方向)の濃度分布は、CをX方向にaからbまで平均して得られる。
ここで、bは亀裂のインターバルの1/2である。つまり、本実験における実際 の解析解は次式で表される。
5匂(収y)凶=吋e訂rf
叫 '
c, (立引斗)ド+η必訂 i
血叫1ω2幻J
b
而 よ σ(j3β \ 4σJ l J. \ 4 I 2 \2日(は4申34) ここで、b:>aとしたOまた、x=笠二よ
(4-35)
である。この解析解は、Dm、a Dfa、bをパラメータとする関数である04.4.3 拡散係数の比較
(4-35
)式を用いて、Dm'\ aDfa、bをパラメータとして最適化を行った。得られた結果を図4.4---4.6に実線で示す。
得られた拡散係数と亀裂間隔bを表4.4に示す。ここで、亀裂中の拡散係 数については、パラメータがaDfaの積の形をしており分離できないため、S
EM観察結果によって得た亀裂幅からaを1μmとして求めた。
表4. 4 各コンクリート試験体中の拡散係数(m2/s)と亀裂間隔2b (Dfの算出には亀裂の幅を2μm(a=lμm)を用いた。)
cs
Sr Co
Concrete Dfa Dm b Dfa Dm b Dfa Dm
X
1012
X1015 (mm
X1012
X1015 (mm)
X1012
X1015 (m2/s) (m2/s) (m2/s) (m2/s) (m2/s) (m2/s)
Sand
84 0.3 10 5 3 20 5
Sand
50 30 4 5 5 3 20
Beston 5
Sand
4 0. 5
65 10
Silicafume 7
5
』ー
L Emery 20 5 0.
510
52 30 10
Emery
30 5 1.2 20 5 4 50
8Beston
ト圃『
Emery
10 5
8 520
5Silicafume
‘ー-
b
(mm)
3
3 3 1.2 I
3
図4.1 2に得られた拡散係数を示す。 コンクリートマトリックス中の拡散 係数はコンクリートの種類、 核種によらずほぽ同じ値4---1 0 X 1 0
-15 m 2 / Sを示し
ている(砕砂・ ベストンを除く) 0 Shimookaら(70)も同様な実験を行い、 おそ い拡散係数が核種によらず、10・14m2/s程度で、あると報告している。 核種の収着 係数が大きく異なるにもかかわらず拡散係数がほぼ同じ値であることから、コンクリートマトリックス中の拡散は表面拡散であると考えられる。 低レベ ル放射性廃棄物のコンクリート固化体の浸出において、 Cs、 Coの浸出は拡散 律則であるこ とが知られており(71)(72)(73)、 そのときの拡散係数は0.6---2X10・
14m2fs程度で代表されている。 これはコンクリートから溶液への浸出反応が コンクリートマトリックス中の拡散によるものであることを示している。
一方、 亀裂中の見かけの拡散係数は10-11 m2/s程度となった。 砕砂・ ベスト ンコンクリートでの早い拡散は試験体の亀裂構造が他の 試験体と大きくこと なっていたためと思われる。
得られた亀裂中のみかけの拡散係数から、 (3 -31)式を用いて亀裂中の拡散 係数と 、 下式を用いて実効拡散係数を算出し、 図4 . 1 3に示した。
De=εDf=盆Df
(4-36)
ここで、 εは試験体全体に対する亀裂の占める割合であり、 a/bで求められる。
得られた亀裂中の拡散係数は10-9---10-11 m 2/ sであり、 SrとCsがほぼ同じ値で、
Coはそれらよりも若干早かった。 Csの自由水中の拡散係数のNernst-Einstein の式による計算値は2X10・9m2/Sとなり(旬、 これから、 亀裂の幾何学因子( ò
/
r 2)は0.01からl程度であることが分 かる。 ただし、 Cs、 Coについては収 着係数を大きく見積もっている可能性があるので、 実際の幾何学因子は0.1程
度と 思われる。また、得られた実効拡散係数はCs、 Coについては10・12---10-13m2/s程度で、あ り、Srについては10・14m2/S程度であった 。 Atkinsonら(67)が透過法によって測 定したCsの実効拡散係数は1.8 X 10-12m2/sで、あり、 本研究によって得られた値 はこれに近い。 Srの実効拡散係数は透過法では測定できなかった。 本実験に
よって求められたSrの実効拡散係数はCsに比べ約2桁小さい。 したがって、
Atkinsonらの実験では、 測定するために十分な量の核種が透過で、きなかった ものと 思われる。
78
10・8
主tn
1040Q
3
1012c
。 10・13
(/) なコ=
。 10・14
‘ 事・:各
10・15
Sand
。
;:\.
。
8
•
を来 期
Sand Beston
Sand
。 ロ
・:・ーー
織
Emery
Silicafume
Dfa Cs Dfa Sr Dfa Co
8
<.合
• Dm Cs
機 Dm Sr
・;:;:: DmCo
機 軍-主
Emery Beston
Emery Silicafume
図4.1 2亀裂中のみかけの拡散係数(Dfa)とコンクリート
10・8
10・9
.... 圃‘、
れ、U j 、、3
10・10 ε
、、-
4c -d
。 10・11
。
W』φ 。-
10・12
。 C 。
u) 10・13
時Hコ-
。 10・14
10・15
マトリックス中の拡散係数(Dm)
f弘
@ 欝
!内鼻・
襲
Sand
t.
.A.
@
漉 鐙
命
。:.お
鍛 畿
Sand Beston
Sand
品
@ 盤
φ
態
Emery
Silicafume
.糸.
•
お
@ 緩
Emery Beston
桑4・ • Df Cs
畿 Df Sr
A DfCo
議
@ De Cs
鶴 De Sr
白�;: :�: De Co
議
Emery Silicafume
図4.1 3 亀裂中の拡散係数と実効拡散係数
ここで、 Atkinsonら(67)は透過法によってみかけの拡散係数を同時に求め、
1 X 10-11m2/sという値を報告している。 これは、 従来のモデルで考えると非
常 に 奇妙 な 現象である。 収着を起こす 1 次
元
の多 孔 質 媒 体の透過を表 す 解析解 は 以 下のよう になる(1 9)。
Qt=
De包t -包1 Cl-
�手
上三 回i d
- Dan ア刊
1 6 n2 :i n
�\ 12 J (4田37)
ここで、 Qtは時間t迄に試料単位 面積 当りを透過してきた核種の量、 Clは拡散 源側の溶液中の核種濃度、 lは試料の長さ、 αは容量因子(ε+ρK d)であ る。 この 式 は 十 分 に長い時間では右 辺 第 3 項が無視でき、 以下のよう に書 き 換えられる。
Qt
=De � 1 \ t
_6Da
_/2) J
(4-38)
この式を用 い、 定常状態のQtの時間変化からDeが、 下図のように定常状態の 傾 きをx 軸 に 降 ろした 切 片からDaが求められる。
。
七
Atkinsonら(67)が求めたみかけの拡散係数は実効拡散係数よりも早く、 容量因 子が0.17程度となる。 これはコンクリートの空隙率程度であり、 ほとんど収
着 を 受 けてい
ないことを 意 味し、収
着 を 受けるコンクリ
ート 中 の拡散
を説 明 できない。80
この現象のlつの説明は、 本研究のモデルのように拡散経路を2つ考え、
早い拡散の経路で、ある亀裂の占める体積(空隙)が全空隙率に比して少ない
こ とである。 これによって、 容量因子は収着係数と密度の積となる。
しかしながら、0.17という容量因子は表4.3に示す値(砕砂系コンクリー ト: 18---24、 エメリ一系コンクリー ト: 1.6---3.5)に比べて小さすぎる。
拡散係数全体について、 骨材の相違、 混和材の有無あるいは相違による大 きな影響は認められなかった。 骨材による影響が認められなかったのは、 骨 材よりもむしろセメントペー ストの部分を核種が拡散しているためと考えら れる。混和材による効果が見られなかったのは、 混和材の添加量が数%と少 ないためであると考えられる。
4.4.4 コンクリー トへの核種の収着
透過法によって得られるCsの早いみ かけの拡散係数はコンクリー トへの 核 種の収着を考えることによって説明される。 Csのセメントに対する収着係数 は他の核種に 比べ小さい(74)。 アクチニドの収着係数が1 ---100m3/kgであるの に比べ、CsはO.OOlm3fkg 程度の収着係数しか持たない。 Atkinsonら(65) (67)はセ メントへのCsの収着は弱い可逆吸着(Langmuir)で、あるとしている。
Csは低レ
ベル廃棄物固化セメントの浸出率測定の代表核種であり、 セメントに種々の 混和材を入れることでその浸出を抑えようという試みがなさ れてきた。 Csに 対しては主にシリカ質の混和材が効果的とされている(75)。 これは、 アルカリ であるCsがシリカと反応を起こすためであり、 その反応が大き過ぎるとコン クリー
トそのものを破壊 する程である( アルカリ/骨材反応) (76)。 つまり、セメント そのものにはCsを収着させる能力が僅かし かなく、 測定されている 収着係数が主に骨材としてまぜ、たシリカ質に対するものであることを意味し ているo Hìetanenら(55)やJakubickら(56)はオートラジオグラフによる測定で、
Cs
が主にシリカ質骨材に収着していることを示した。 また、 多くの収着試験は、固体に対して多い溶液を用いている。 このとき、 Csが他の競合イオン(Ca等) と置換しでも競合イオンを収容する大きな液体が存在するが、 コンクリート 亀裂中を拡散しているときには、 競合イオンを押し出すに十分な液体が存在
していないものと思われる。 したがって、 コンクリートに対するCsの収着係
数は、実際のセメントペーストに対する収着係数よりも過大に(約l桁)評 価されている可能性がある。
これに対して、 SrはCaとのイオン交換によって収着される(65)と考えられて おり、 オートラジオグラフ観察によってもセメントペーストに多く収着する ことが知られている(55)(56)0 Srは、 pH7前後ではSr2+として安定であるが、
pHが大きくなるにつれOH-の影響を受けSr(O町2,SrOH+を生成する。 Sr(O町2 は溶解度が大きいため、 容易に溶解する。 また、 炭酸ガスが豊富な条件では、
C032-の影響で、SrC03が生成するが、 本研究では、 Srは脱イオン水で稀釈され ており、 大気との平衡状態では溶液中には約10-5M程度であり、 この程度の 炭酸ガス濃度では極くわず、かなSrの濃度減少が予想されるだけである。 従っ てSrは、 コンクリート中ではS r2+として存在すると考えられる。
Coは、 pHの変化とともに化学形を変える。
コンクリート中の水溶液のp Hは、 セメントの硬化反応の際に生成するCa(OH)2のため、 11---13程度と報 告されている(77)が、 (実験後の浸入溶液のpHは11前後であった。)このp H域ではCoは主にCO(OH)2となり、 溶解度が中性pH7付近に比べ著しく減 少する(78)。従いコンクリート中で、のCoは、 Co(O町2となって化学的な吸着作 用を受けていると予想される。4.5節 結言
処分孔の補強材料、 止水用 グラウトとして用いられるコンクリート中のセ シウム、 ストロンチウム、 コバルトの拡散係数を浸入実験によって測定した。
また、 これらの核種のコンクリートへの収着係数もパッチ法によって測定し た。骨材として砕砂およびエメリ一、 止水性能を増すための混和材としてベ ストンまたはシリカフュームを含む6種のコンクリートについて試験した。
コンクリート中でのこれらの放射性核種の濃度分布は表面付近で急な勾配、
深い部分で緩やかな勾配を持つ。この濃度分布は均質な媒体中での拡散では 説明できないため、 コンクリート中に観察された幅数μmの亀裂とコンクリ
ートマトリックスからなる拡散経路を持つモデルを用いて解析した。
解析の結果、 コンクリートマトリックス中の拡散係数は、 いずれの核種に 対しでも、 どのコンクリート試験体についてもほぼ同じ値4---10XI0・15m2jsを
82
示している(砕砂・ ベストンコンクリートを除く)。
収着係数の異なる核種に対しでほぼ同じ拡散係数が得られることから、 拡 散は収着による遅延の効果を受けておらず、 コンクリートマトリックス中の 核種の拡散は収着した核種がそのまま拡散する、 いわゆる、 表面拡散である と考えられる。 水銀圧入法によって測定した コンクリートマトリックス中の 空隙径は約300Aに最大存在割合をもっ。 コンクリートマトリックス中のこ れらの空隙は毛細管空隙であり、 その経路の曲りやくびれが大きく、 連続し た自由な水を含む空隙が分断されるために表面拡散によって律則されるもの
と考えられる。
一方、 亀裂中のみかけの拡散係数は10・11 m2/s程度となり、 コンクリ-ト中 の骨材, 混和材の相違による拡散への影響は認められなかった。 骨材による 影響が認められなかったのは、 骨材よりもむしろセメントペーストの部分に ある亀裂を核種が拡散しているためと考えられる。 混和材による効果が見ら れなかったのは、 混和材の添加量が数%と少ないためであると考えられる。
自由水中の核種の拡散係数の理論値を用いて計算した亀裂の形状因子は約O.
1であった。 また、 亀裂の占める体積割合から求めた実効拡散係数はセシウ ム、 コバルトに対して10・12--.,10・13m2/s程度で、あり、 ストロンチウムについて は10-1切りs程度であった。
第5章花両岩中へのウランの収着に関する研究
5 . 1節 緒言
地層処分された高レベル放射性廃棄物は多くのバリアで固まれ、 廃棄物 からの核種の移行が抑制される。 しかしながら、 放射性核種の中には非常 に半減期の長いアクチニド等の核種も含まれており、 これらの漏出を工学 ノミリアだけで抑えることは不可能である。 したがって、 長半減期の核種の 移行抑制は必然的に地層に頼ることとなる。
実際の地層中の核種の移行については、 原位置試験(79)や計算機シミュレ ーションが行われている。 実験室規模の研究も数多く行われているが、 シ ミュレーションに用いるモデル、 パラメータの値等に多くの不確かさが残
っている。 地層中の核種の移行挙動は、 pH、 Eh、 地下水組成、 岩石の 特性等、多くのパラメータに依存する。 これらのパラメータは処分地によ って異なり、 核種の移行挙動を予測するためには、 収着係数や遅延係数が これらのパラメータにどのように依存するかを知る必要がある。
収着係数を測定する方法にはバッチ法とカラム法の2つがある。 前者は 岩石等による核種の収着係数を比較的速やかに知るのに適しており、 後者 は収着係数だけでなく水理学的特性やその他の因子に依存した条件での核 種移行評価が可能である。 本研究では、 高レベル廃棄物に含まれる代表的 アクチニドであるウランを対象に、 処分場候補地層の一つである花筒岩に 対する収着についてバッチ法及びカラム法で試験研究した。 得られた収着 係数と溶液中のウランの化学種の計算評価に基づき、 収着機構について検 討した。
また、 単に岩石表面への収着だ、けで、なく岩石内部への拡散によっても遅 延が起こることが知られ(80)ており、 岩石内部へのマトリックス拡散につい ても知識を得ることが重要で、ある。 バッチ法においては、 岩石内部へのマ
トリックス拡散係数も同時に求めた。
84
5.2節 バッチ法によるウランの収着試験 5.2.1試験
(1)花両岩試料
花岡岩は、 石英、 正長石、 斜長石及び有色鉱物(雲母など)を主成分と
する深成岩の一種で、 有白質粗粒完品質岩である。 本試験で試料として 用 いた花両岩は、 茨城県笠間市稲田産の花商岩で、 比較的黒雲母のような有 色鉱物を多く含む花両岩で ある。 試料として用いた花両岩の 鉱物 組成を表
5.1に、 化学組成を表 5.2に示す。
表 5.1 稲田花両岩の鉱物組成
主成分鉱物 重量割合(w t %)
石英 Si02
4 8
斜長石 (N a,Ca)Al1-2Si3-208
2 4
カリ長石 KAlSi308
2 3
副成分鉱物
5
黒雲母 K(Mg,Fe )3A12Si3010(OH)2 磁鉄鉱 Fe304
角閃石 Nao・l(恥19,Ca,Fe,AI)(AI,Si)4011(OH)2 黄鉄鉱 FeS2
ジルコン ZrSi04 くさび石CaTiSiOs
リン灰石Cas(P04)3(OH,F) 緑柱石 Be3A12Si6018
表 5.2 稲田花両岩の平均化学組成
組成 重量比(w t %) 組成 重量比(w t %)
Si02 6
9.1 7
Ti020.3 9
A1203 1 5.0 0
FeO2.4 8
Fe203 1 .0 5
CaO3.1 5
MgO
1 . 1 5
Na203.4 5
K20 3.0 1
P20S0.3 1
MnO
岡町同.
0.1 0
ioo..".
&0(+) 0.7 1
H20(ー)0.30
(2)ウラン溶液の調製
酸化ウラン (U02+x)粉末を7 0 0 OCで4時間熔焼しU308にした後、5 7 3.
5 m gを秤量し、 濃硝酸10 c cを混ぜ、て加熱溶解した。 これを蒸留水で 希釈し原液とした。 試験に用いたウラン溶液 はこの原液を元に所定の濃度、
pHに調製した。 pHの調整には0.1 Nの硝酸または水酸化ナトリウム溶 液を用い、 炭酸濃度調整には0.1 Mの炭酸ナトリウム溶液を用いた。
(3)試験手順
試験手順を図5.1に示す。 花商岩試料を粉砕し、 粒径を32�60メッ シュにそろえたものを収着試験に用いた。 この粉末試料は、 試験に供する 前に、 微粉末を取り除くため蒸留水でよく洗浄した。 この花筒岩 粉末1 g をウラン溶液30 c cとテフロンまたはガラス容器に入れて約1週間混合 接触させた。 接触終了後、 液を取りだし、 4000rpmで、20分間遠心分離し、
その上澄み液を採取しpH及びウラン濃度の分析を行った。 分析に際して は微粉末の影響を調べるため、 上澄み液をフィルターで漉過したものにつ いても測定を行った。
ウラン溶液の調製
接触(約1週間)
遠心分離(200伽pm、 20分間)
ウラン濃度の分析
図5 . 1バッチ試験のフローシート
86
ウランの分析にはフリオリメータを用いた。 上澄み液1mlを白金皿上
で乾固し、 融斉rj(Na2C03:K2C03:NaF: LiF=9:9:
2:0.04) 2 gを加え溶融させたoJ定時間溶融後冷却し、 ぺレットを作成した。
フルオリメータは、 このペレットに365 n mの紫外線をあて、 発生する蛍光の強度からウラン量を定量 できる。 本試験においては10-8�10・4Mのウラン濃度を測定できた。
ウランの収着係数は、 岩石との接触前の濃度Coと接触後の平衡濃度Cfか ら以下の式で計算される。
Kd
= { Co - Cf)
V - qB (Cf)
m
Cf (5-1)
ここで、 mは岩石粉末の重量、 Vはウラン溶液の液量である。 また、 試験 容器にもわずかながらウランが収着するため、 事前に容器への収着量qBの
ウラン濃度依存性を測定しておき、 収着係数の補正を行った。
試験パラメータを表5.3に示す。 pH、 炭酸濃度、 全ウラン濃度を試験 パラメータとして試験を行った。 これとは別に花商岩構成鉱物毎に収着試 験を行った。
項目 岩石試料
pH
温度 ウラン濃度(M) 炭酸濃度(mM) 溶液量(m1 )
期間(日)
回-
表5.3試験パラメータ
内容
稲田花筒岩(32�60メッシュ) 黒雲母、 カリ長石、 曹長石、 石英
2�6.7 5�1 0 3 OOC
3.2
X10・7M�4.8
X1
0-6M� 1.0
X10・5M O、 0.05、 0.2、 0.3、 1.0、 5.0、 7.5、 10.0
3
0 7下線をヲ|いた数値は他のパラメータを変動させた時に固定した値である。
5.2.2
結果稲田花商岩へのウランの収着係数のpH依存性を図5.2に示す。 ウラン の収着係数は中性付近にピークを持ち、 10----100ml!g程度の値を持つ。
"ho hh h、
E
、ー圃,
て¥3
103
o unfiltered ム 0.2凶n filtered
102 �
A
OO�
。
1001
U:
0.0048mM
C:
0.3mM
。
。
。。
2
4 6 810
pH
図5.2 稲田花両岩へのウランの収着係数のpH依存性
稲田花両岩へのウランの収着係数の 炭酸濃度依存性を図5.3に示す。 ウ ランの収着係数は炭酸濃度の増加と共に単調に減少し、 約10mMの炭酸 濃度で収着係数は約1/100低下し、 1 ml/g程度となる。
図5.4に、 稲田花両岩へのウランの収着係数のウラン濃度依存性を示す。
収着係数はウラン濃度の増加と共に減少する傾向がみられる。
図5.5には、 花両 岩構成鉱物である黒雲母(Biotite)、 カリ長石(K
Feldsper)、 曹長石(Albite)、 石英(Quartz)に対するウランの収着係数を示す。
黒雲母に対する収着係数が最も大きく、 他の鉱物への収着係数はほぼ同じ であった。 いずれの鉱物への収着も中 性付近で最大となった。 黒雲母に対
してのみ漉過の効果が確認された。
88
unfiltered 0.2μm filtered U: 0.0048mM pH: 6.75 O
A ム
。 102
ら
101 (窃孟E)明MX
ム 0
G
100
0 10
HC03
(mM)
稲田花岡岩へのウランの収着係数の炭酸濃度依存性
8 6
4 2
図5.3
unfiltered 0.2μm filtered C: 0.3 mM pH: 6.75 O
A 103
も
au d
も�
め も も
、、、旬
E 102
3 �
10-7 10
U Concentration
(M)
稲田花岡岩へのウランの収着係数のウラン濃度依存性
10-5 101
10-8
図5.4
----
..
A Biotite
• unfiltered 企0.2μm
・0.025μm
史
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• -
103
102
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5 6 4
3
pH
花岡岩構成鉱物に対するウランの収着係数のpH依存性 図5.5
90
5.2.3 考察
( 1 )ウランの収着係数の鉱物依存性
図5.5に示さ れる ように、 花両岩構成鉱物である黒雲母(Biotite)、 カ リ長石(K-Feldsper)、 曹長石(Albite)、 石英(Qu紅tz)に対するウランの収着係 数は、 いずれも中性付近 にピークを持ち、 pH4またはpH8付 近でピー ク値の1/10程度にまで減少する傾向を示す。 このことから、 各鉱物へのウ ランの収着のpH依存性は鉱物の特性ではなく溶液の特性に依存している と考えられる。 つまり、 各鉱物へのウランの収着は、 ウランの特別な化学 形のものが大きく関与しており、 その化学種のpH依存性が収着係数に表 れているものと考え られる。 ウランの化学形と収着係数の関係については 次の項で述べる。
収着係数の大きさは、 黒雲母に対する収着係数が最も大きく、 他の鉱物 の収着係数はほぼ同じ程度の値を示している。 これ は各鉱物の表面特性に 影響を受けているものと考えられる。 表5.4に各鉱物のBET比表面積の 測定値及び文献値(81)と収着係数のピーク値を示す。 黒雲母以外の鉱物の比 表面積は測定値も文献値もほぼ同じオーダーであるが、 黒雲母はそれらよ
し
表5.4 花岡岩構成鉱物のBET比表面積と収着係数
ピーク 鉱物 収着係数-
(mljg)
里 骨母-;r;; �
I (pH7. 6)
20 (pH7.0)
50 (pH7.9)
石英
50 (pH6.4)ム
測定値 (粒径0.25---
O.5mm)
0.29
ー
ー
一
BET比表面積
(m2jg)
文献値(81 )
測定値 (粒径44---
(粒径<0.25mm)
63μm)
ー
14
0.26 4.2
0.14 2.9
0.47 2.8
一一一ー..L
一
一
ー
一
り約l桁比表面積が大きい と思われる。 試験に用いた長石、 石英粉末の比 表面積は測定できないほど小さかった。 し たがって、 各鉱物に対するウラ ンの収着係数は鉱物の比表面積に依存しているものと考えられる。 Allardら (81 )は、 ネプツニウム とアメリシウムに対する 収着係数は鉱物の比表面積と 相関すると報告している。 黒雲母に対する最大 収着量は、 ウランの平衡濃 度1 X 10・6Mのときに1 X 10-7mol/gと 計算され る。 黒雲母の比表面積 O.29m2fgを用い ると、 ウラン一分子が占める面積は4 nm2となり、 ほぼ全表 面を埋め尽くしているように見える。 この説明について は、 花両岩へのウ
ランの収着モデルの項で述べる。
(2)ウランの化学形と 収着係数のpH依存性 との関係
前項においてウランの収着のpH依存性が溶液中のウランの化学形に よ るとした。 ここでは、 熱力学的データを用いた数値 計算を行い、 溶液中の ウランの化学形を推定し、 収着係数との相関について検討した。
ウランの熱力学的データについては多くの研究者が 報告しているが、 こ れらのデータを使用する際には各データ聞の整合性に注意する必要が ある (82)。整合性のとれていない データセットを用いた場合、 計算結果に大きな 誤差を生むことにな る。 最近、 OECD/NEAにおいて地層処分に重要 となる元素に 関して 熱力学データベースを構築する作業が進み、 ウランに 関しては整合性のある 熱力学データベースが公表されている (83)。 このデー タベースを使用し、 熱力学計算コードPhreeqe(84)を用いてウランの化学形の 計算を行った。 熱力学計算コードPhreeqeは米国地質調査所で開発された溶 液系の平衡計算コードで、 電気的中性、電子保存
、
質量保存、鉱物平衡、質量作用の式を連立させ解くこ とにより、 溶液中の化学種毎の平衡濃度を 求めることができる。
計算に使用したウランの熱力学定数の組を表5.5に示す。 この中で、 水 酸化ウラニルの反応定数が 10gKくー10.3 となっているが、 Si1va(85)はこの 平衡定数として、10gK==ー11.5 という値を求めた。 本解析にはこのデータ
を用いた。
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