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自分を表現するための漢字を増やす 藤田 百子

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Academic year: 2021

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実 践 紹 介

63 1.はじめに

 平成26年度「国語に関する世論調査」の調査によると,日常生活において手書きをす る機会が「あまりない」と回答した者は20

.

9

%

,「ない」と回答した者が6

.

4

%

もいるな ど,日常生活において「手書き」による「書く」言語行動は減ってきている。留学生の言 語行動も,

SNS

によるやり取りが主流となっており日本語を手で「書く」ことより「打 つ」ことのほうが,彼ら自身を表現したい日本語を発信できるかもしれない。しかし,教 室活動においては,「手書き」による「書く」が主流であり,担当した漢字クラスでは,

テスト,課題などすべて手書きである。一方でこのコースの授業を自ら選択し,履修する 学習者は,同レベルだけでも毎学期100名以上いる。「手書き」であっても,漢字学習の ニーズがあることが推測される。また同レベルの漢字クラスを数年担当していて,「話せ るけど書けない」という学習者の履修が年々増加していることを実感する。そして彼らか らの「漢字が書けるようになりたい」という声を繰り返し聞いている。そこで,本コース では,漢字が書けるようになることで,より豊かに自身が表現できるようになるというこ とを,目標の一つに掲げ実践を考えた。なお,本コースは,同一科目,同一シラバスのク ラスが複数設置されているコースであり,シラバスや活動課題は科目のコーディネーター が作成していることを先に述べておく。

2.授業の概要と流れ 2-1.教科書を中心とした活動

 以下は,2019年度春学期に実施した授業のスケジュールを一部抜粋したものである。

授業は以下のように,教科書(『

INTERMEDIATE KANJIBOOK

漢字1000

plus VOL.

1』凡 人社)を使った授業を中心に,小テスト,活動という流れを15週間繰り返す。まず,教 科書に沿って,テキスト各課の学習目標が達成されるよう漢字の読み書きや用法の確認と いった基本的な漢字指導に時間をかけた。本コースは中上級レベルの学習者を対象として いるが,先にも述べたように「話せるけど書けない」学習者,「書けるけど話せない」学 習者が混在しており,どうやって書き方や読み方,使い方を覚えるのかという漢字学習の ストラテジーを獲得している学習者も多くない。そのストラテジーを獲得するためにも,

教室での基本的な漢字指導は,その後の「活動冊子を使った活動」を充実させるためには 必要な時間であると考える。そして「使える漢字語彙」を増やすために,漢字語彙の用法 早稲田日本語教育実践研究 第 8 号

自分を表現するための漢字を増やす

藤田 百子

  科目名:漢字 4

  レベル:初級 1・2 /中級 3・ 4 ・5 /上級 6・7・8   履修者数:23 名

(2)

早稲田日本語教育実践研究 第 8 号/ 2020 / 63―64

64

に関するインプットを増やした。具体的には,導入した漢字の使用例を示し,学習者はそ の漢字語彙を使った例文を書くという練習をピアで実施した。出来上がった例文は板書し てもらい,漢字語彙の意味や用法を全体で再度共有することを繰り返し実施した。また,

板書している際には,書き方や語形についても個々に指導するように努めた。ピアで実施 し,板書された漢字を共有することで,自分では思いつかない漢字語彙の使い方に触れる ことができ,その結果漢字語彙のインプットとアウトプットの量を増やすことにつながっ ていた。

2-1.活動冊子を中心とした活動

 基本的な漢字学習を十分に実施後,翌週はさらに「使う」ことに時間をかけた。前週で の「使う」との違いは,学習者自身の文脈で「使う」という点にある。そのために『活動 冊子』を活用した。学期予定にあるように,本コースは教科書での指導と『活動冊子』を 使用した活動が組み合わされた内容となっている。『活動冊子』では,1)教科書で学習し た漢字を使った語彙マップ作成,2)漢字を使った作文,という二つの活動を実施する。

語彙マップの作成では,できる限り学習者自身の言葉を紡ぎだしてもらいたいと考えてい たが,実際に出来上がった語彙マップは,教室で習った漢字を使うことだけに終始したも のであったり,同じようなもの,つまり学習者自身の言葉ではない語彙マップが多く見ら れた。そこで筆者自身で語彙マップを作り,筆者自身がなぜこの言葉を連想したのかとい う点を詳しく説明するようにした。また短作文については,毎回数名の作文を紹介した。

その結果,語彙マップについては期待するほどの変化は見られなかったが,短作文につ いては短いながらも学習者自身の体験や考えがよくわかる作文が多くみられるようになっ た。「クラスメイトと内容を共有する」ということが,自身の文脈で漢字を使ってみると いう動機付けにつながったと思われる。

3.今後の課題

 15週を通して,基本的な漢字学習と自分の文脈で漢字を使う活動を繰り返すという流 れで実践を実施した。しかし,学習した漢字は使えるが,学習したことのない漢字は使え ないという様子も見られた。今後は自律的な漢字学習のストラテジーを獲得するための方 向性を,基本的な漢字学習の中でより具体的に示していくことも必要であると考える。

(ふじた ももこ,早稲田大学日本語教育研究センター)

表 1 2019 年度春学期 学期予定(抜粋)

授業 小テスト 活動冊子を使った活動

第4週 Lesson 2 Lesson 1 ② 語彙マップ①提出

第5週 Lesson 2 Lesson 2 ① 短作文①教室活動

第6週 Lesson 1, 2 復習 Lesson 2 ②  短作文①提出

参照

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