漢字教材用データベース作成 に向けて

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漢字教材用データベース作成 に向けて

加藤扶久 美 ・岩本 阿 由美 ・遠藤祥子 0小 西香 織 ・横堀慶 子

要 旨

日本語学習者 が漢字 を体系的 に学習す るためには,既 存の漢字用 テキス トだけで は十分 とは言 えない。

筆者 らは,漢 字 プ ロジェク トを立 ち上 げ,本 学 の 日本語学習者 (漢字 圏 ・非漢字 圏)が ,各 々の能力 とニ ーズに 合 った漢字学習 がで きるよ うに,漢 字教材用 デー タベー ス作成 を 目指 してい る。本稿 では,本 学 の漢字学習 の現状 と問題点,本 プロジェク トで 目指す もの,さ らにデータベース作成 に関す る中間報告 と今後の課題 と展望 につ いて 述 べ る。

キーワー ド】 データベース,漢 字教材,漢 字圏,非 漢字圏

1 は じめ に

富 山大学留学生 セ ンターにおいて外国人留学生 に対す る日本語教育 を行 うために, 日本語研修 コース (以下,「研修 コース」 と略す)と 日本語課外補講 (以下,「課外補講」 と略す)の 2つ の コースを開設 している。文法 を中心 と した総合 的な 日本語能力 を体系的に身 につ けさせ るために,初 級 クラスにおい ては両 コース とも 『みんなの 日本語初級 I, Ⅱ 』 (以下,『みんな I, Ⅱ』 と略す)を ,中 級 クラスにお いては,研 修 コースで 『文化 中級 日本語 I, Ⅱ 』 (以下,『文化 中級 I, Ⅱ 』 と略す)を ,課 外補講 で

『現代 日本語 コース中級 I, Ⅱ』 (以下,『CM」 I, Ⅱ 』 と略す)を メイ ンテキス トと して使用 している。

ところが, これ らのテキス トに出て くる漢字 を含 めて体系的に漢字学習す るための適切な ものがない ので,漢 字 圏 と非漢字 圏それぞれの外国人 日本語学習者 のニーズにあった漢字教材を作 るために,漢 字 教材用データベース作成を試みることにな り,平 成15年 3月 に漢字 プロジェク トを立 ち上 げた。 メ ンバー は岩本阿 由美,遠 藤祥子,加 藤扶久美,小 西香織,横 堀慶子で,技 術サポー トとして後藤寛樹が加 わ り データベースの雛形 を作成 した。

本稿では,留 学生が漢字 を学ぶ際の問題点 と本 プロジェク トの 目指す ところを明 らかに してか ら, こ れ までのデータベース作成過程及 び問題点, さ らに今後 の課題 と展望 につ いて述べ るものである。

1.1 漢 字 学 習 の 現 状

漢字 クラスの受講生 につ いては,漢 字 圏 ・非漢字 圏の違 いだけでな く,そ の漢字能力 は多様で, これ まで教育 を受 けてきた教育機関や使用 テキス トによる学習漢字の違 い も少な くない (加納 ・阪井 2003)。

本学 において も, さまざまな背景 を持つ学習者 のニーズに応 え られ るよ うに,研 修 コースと課外補講 のそれぞれの コースで漢字学習 に取 り組んでいるところである。

研修 コースの漢字学習 においては,漢 字圏 と非漢字 圏の学習者 が同 じクラスで同 じテキス トを使 って 学 んでい る。初級 クラスで 『Basic Kanji Book VOl.1』 (以下,『BKB l』 と略す)を 使用 し, 2日 に 1課 進 めて きてい るが, コース修 了時 に17課までの193字,18課 までの205字,19課 までの217字と, 期 に よ って学 習漢字数 に変 化 がでて きて い る。 初 中級 クラスで は, 1日 1課 で進 め,『 Basic Kanji Book Vol.2』 (以下,『BKB 2』 と略す)の 31課 までの357字を学習 した期 もあ る。 中級 クラスで は

『Intermediate Kanji Book VOl.1』(以下,『IKB l』 と略す)の 5課 までの104字, 9課 までの200字 を学習 した期 があ る。 中上級 クラス と上級 クラスでは,特 に漢字 クラスを設 けず に読解 の授業等で語彙

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の中に出て くる漢字 を,そ の読み方,意 味 ,用 法 とともに学習 している。

課外補講 においては,漢 字 クラスを週 に 1コ マ開講 してお り,毎 期 10人か ら20人の漢字学習 を希望す る学生 が受講 しているが,漢 字習得段階は様 々である。初回の授業でプ レースメン トテス トを実施 して, レベルの近 い学生 を グループに分 け,さ らに漢字圏 と非漢字圏のグループに分 けて,そ れぞれの レベル に合わせた指導 を している。漢字 圏の学習者 に対 しては 『漢字 の道』 を使用 して,中 国,台 湾,韓 国で 使用 されてい る漢字 との比較 を し,書 き方 ・意味の違 いを確認 した上 で,漢 字 の読 み方 を中心 に した指 導 を してい る。非漢字 圏の学習者 に対 しては 『BKBl, 2』 と 『IKB l, 2』 を使用 してい るが,期

によ って,分 け られたグル早プ内で多少 の レベル差 が生 じた り,グ ループの数 によ って教師が直接指導 できる時間 に差異が出て くることもある。定着 のために毎回確認 テス トを行 っているが, 自宅 での復習 と練習 に委 ね るところが大 きい。

1.2 留 学 生 が 漢 字 を 学 ぶ 際 の 問 題 点

非漢字 圏の学習者 が初 めて漢字 を学ぶ際 には 『BKBl』 を使用 して効果 をあげて いるが,メ イ ンテ キス トの 『みんな I, Ⅱ 』 の中で使 われている漢字 が考慮 されていない。 また,既 習漢字 を繰 り返 して スパ イラル的 に指導す ることができれば,漢 字習得 にプラスにな る。既習者 につ いては,そ れぞれの既 習 テキス トや習得環境 が異 な るために,そ の漢字力 の判定が難 しいので,プ レースメ ン トテス トの基準 作 りも課題 であ る。

漢字 圏の学習者 に対 しては,読 み方 を中心 に した指導 がな されているが,簡 体字 や繁体字 しか知 らな い学習者 にその違 いは示せていない。 また,非 漢字 圏学習者用 の漢字 テキス トを余儀 な く使用 している のが現状 であ る

漢字学習 は時間的 に制約 のある授業活動 の中だけでは十分 ではない。個人差 を考慮 した,学 習者主体 の 自立学習 に効率的 に使 え る教材や,様 々な専門分野 の語彙 を取 り扱 った教材が待 ち望 まれている状況 である。

1.3 本 プ ロ ジ ェク トで 目指 す も の

漢字学習 は漢字 テキス トだけによる ものではないので,メ イ ンテキス トとの連動 を考 えた,体 系化 さ れた教材 を作 る必要性 があ る。

さまざまな漢字能力 を持 った学習者 が,そ のニーズに合 った学習 ができるよ うにす るためには,漢 字 教材用 データベース作成 が最適 であると考 え られ る。 データベースを使 うことによって,教 師 は教材及 び練習 問題 や試験 問題 の作成 をす ることがで き,学 習者 は授業 の予習;復 習及 び独習 に利用す ることが できるよ うにな る。

太 田 ・他 (2002)は ,上 級漢字学習者 を指導す るために,学 習漢字 (日本語能力試験 2級 レベル)を データベース化 し,そ れ と連動 させて学習者 の知識 の差 を埋 めるための予習 シー ト,授 業 で使用す る間 題 シー トや小 テス トな ど具体的な教材作成 に取 り組んでいる。

本 プロ ジェク トにおいては,初 級基本漢字 か ら上級 レベルの漢字 までを網羅 し,全 ての レベルで,教 師 と学習者 がそれぞれのニーズに合わせて利用 で きる漢字教材用 データベースの作成 を 目指す ものであ る。

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2   デ ータベース

2 . 1   漢字データベース (漢字 DB) 図 1 は漢字D B の カー ドの例である。

1 割曜: ロハ1 日B □ C

I由■由1由III自

一 ン 一 ン

・・ 一一 .一音 ︲︲

常用漢宇表 2 級

漢宇 テキス 図 B‖B‐

□ IКBl‐

□ IKB2 1図漢字の道

①常用漢字表

② l級漢字表

1945鋼

2036字 (第 1水 準漢字 じめる=し まる

3 5 課

□DI‐□E□ F□ E ttH‐□I もんがまえ :目■日■‐日'日 │口│口│■●口│‐│‐□‐

(1)見 出 し漢字 (2094字)

漢字DBは 常用漢字表 にある漢字 1945字 (学習漢字 1006字を含 む)と , 日本語能力試験 1級 の出題基 準 にある漢字2036字 (1級 漢字表 には第 2水 準漢字 までを含 む)と ,常 用漢字表 にはないが人名,地 名 によ く使 われ る漢字 につ いて,『外国人留学生 の 日本語能力 の標準 と測定 (試案)に 関す る調査研究 に つ いて』 にある55字を網羅 した2094字で構成 されてい る。

③外国人留学生の日本語能力の標準 と測定 (試案)

1926字,第 2水 準漢字 110字 ) に関す る調査研究 について 55字

常用漢字表,能 力試験 出題基準の漢字表 にある漢字 は,そ れぞれチ ェックボ ックスにチ ェックを入れ ((1)‑2,(1)‑4),それ以外 は 「その他」 ((1)‑5)とした。能力試験 出題基準 にあ る漢字 は該 当す る級 を入 力 した。 また,学 習漢字 は学年別漢字配 当表 に基づ き,そ の漢字 を学習す る学年 を入力 し,そ れ以外 は

一般」 とした ((1)‑3)。

今後 は,漢 字 圏の学習者への配慮 と して簡体字 と繁体字 を示 し,一 日で対照 できるよ うにす ることも 考えている。

(2)通 し番号

見 出 し漢字 の通 し番号 は,漢 字DB,語 彙DB共 通 の ものを使用 し,両 者 を連動 して利用 で きるよ うに す るものである。

(3)字 体

見 出 し漢字 の字体 は教科書体 と した。手書 きに近 い教科書体 と対照で きるよ うに,明 朝体 もその下 に 示 した。

(4)画 数

『日本語大辞典』 にあ る総画数 を入力 した6

図 1 漢 字DB

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(5)読 み

常用漢字表 を もとに音読 み,訓 1読みを入力 した。音読 み,訓 読 みのいずれか一方 のみの もの もある。

読 みは太字,送 り仮名 は標準で入力 した。読 み と送 り仮名の境 目に 「一」 を入れた らどうか とい う考 え もあったが,検 索 に支障が出る可能性があるので入れないことにした。漢字部分の読みが同 じものは 「、」, 違 うものは改行 して入力 した。

頻度 が少 ない読 みにつ いて,( )に 入れ ることも検討 したが,上 級 レベルの学習者 が本 デニタベー スを利用す ることも想定 しているので,特 に示 さな くて もよい とい う結論 に至 った。

また,仮 名が読 めない学習者 に対す るフォロー として, ローマ字で読 みを示す とい うことも考えたが, 漢字 を学習す る前 に仮名 は習得 していると見 な して,入 れない ことに した。

常用漢字表以外 の漢字 につ いては,現 在 の ところ能力試験 出題基準 の漢字表 にあ る読 みのみ入力 して あるが,こ れだけでは不十分であると考 え られ る。今後,語 彙 DBと 照 らし合 わせて読 みを追加す るこ とが課題 と して挙 げ られ る。

(6)ピ ンイ ン

中国語 を母語 とす る学習者 は漢字 か ら大体 の意味を理解す ることができ,非 漢字圏の学習者 よ り有利 な面 はあるが,漢 字 の読 みにおいては中国語 の発音が影響 し,か え って困難 を感 じる場合 もある。 その ような中国語話者 が独習す る時,漢 字 の読 みを素早 く調べ られ るよ うに,中 国語 (北京語)の 発音 を基 に した ピンイ ン (中国式 ローマ字つづ り)か ら漢字が検索できるよ うに, この フィール ドを作成 した。

ピンイ ン入力 につ いては 『中国人 のための漢字読 み方ハ ン ドブ ック』 を参考 に したが,四 声 (中国語 の 4つ の声調)の 示 し方 につ いては,中 国語 を入力す る場合 に多 くとられている方法 (アル フアベ ツ ト の後 に数字 で入 れ る)を 採用 した。 また,[y]の 音 を表す 「u」 に関 して は,入 力 の便宜上,学 習者 が 使 っている以下 のよ うな方法 を取 り入れた。

①u→ v     tt nu→ nv

②山→ ve, ue   tt nue→nve,nue

(「ve」,「ue」いずれ も使用 されていることか ら,併 記 した)

また,「畑」や 「塀」など国字 にはピンイ ンがないため,「国字」 と入れてある。現代中国語 に取 り入 れ られている国字や発音が不明の ものについては,今 後,中 国語話者を対象に調査 し,で きるだけピン インを入れていきたい。

(7)部 首

漢字 を回頭 で説明す るとき,「 『てへん』 に 『て ら』 (持)」の よ うに字形 を表す ことがある。 そ こで, 一般的によ く知 られている部首 とその名称 については知 っておいたほうがよいと考え,部 首のフィール ドを作 った。名称か ら検索す る可能性 は低 い と判断 し,一 般的な名称 のみ入力 しては どうか, とい う考 え もあ ったが',情

報 として知 らせ る意味で,す べての正式名称 を入力す ることに した。

辞書 によって部首 の立 て方 や名称 が異 な るため,基 準 とな る ものを決 めるにあた っては,い くつかの 国語辞典や漢字辞典を検討 した。 その結果,見 出 し漢字 がすべて出ていること,部 首名が出ていること, 漢字 が探 しやす い ことな どか ら,『 日本語大辞典』 を基準 とす ることに決 めた。

ただ,『IKB l』 では,「字形 のみか らで も漢字が引けるよ うに見 出 しを立 ててあ り,見 出 しの中には, 字源的 に意味を表すいわゆ る部首 とは異 な る形 の もの も含 まれている」 と,字 形索 引の前書 きに もあ る よ うに,康 熙字典を基 に している 『日本語大辞典』 とは部首 の立て方 が違 ってい る。異 な るテキス トを

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使 って きた学習者 に混乱 を与 えないよ うに;部 首 フィール ドに複数 の名称 を書 き込 め るように し, 1段 目に 『日本語大辞典』の部首名を, 2段 目に 『IKB l』 の字形索引用部首 リス トの中で 『日本語大辞典』

と異 な る部首名 を入力す ることに した。 そのほか,「方」 (ほうへん,か たへん)な ど名称 が複数 出て き た ものは両方 あげておいたが,「 しん に ょう」,「 しんに ゅう」 は,「 しんに ゅう」 に統一 した。 また,同

じ名称で異 な る部首 を示す場合 は,「ひへん (火)」「ひへん (日)」のよ うに入力 した。

『日本語大辞典』 と 『IKB l』 における部首の違 いの例

翼拙1暮1漢1字 1騨壽:華

ゆきが まえ ぎ ょうにんべん

か た な ころ もへん

きへん

まが りがわ しんにゅう

ちか ら つきへん

す ん しょうへん

く ち しょう

上 の表 1に あ るよ うに,「術」 「初」 「相」 「巡」 「勝」 「将」 な どは 『IKB l』 の部首 の立 て方 の方 が 学習者 にとってはわか りやす い と思 われ る。「召」 は全体 を部首 と捉 え,「紹」 「昭」「沼」 な どの漢字の 構成要素 と して とらえている。

(8)字 形パ ター ン

部首 の知識がな くて も字形の特徴 か ら漢字 が検索で きるよ うに,字 形パ ター ンを設 けた。左右 (A, B)上 下 (D, E),た れ (G),か まえ (H),に ょう (I),全 体 (J)の Aか らJに 大別 した。特徴 的なのは Cと Fで あ る。 「畑」 の よ うに,学 習者 が Aか Bか 迷 った場合, どち らか らも検索で きるよ う にCと い うパ ター ンを設 け,「窓」 のよ うにDか Eで 迷 った場合のためにFを 設 けた。

それぞれの漢字 の字形パ ター ンの決定 にあた っては,部 首 にとらわれず,学 習者が選ぶ可能性が高い ものを選んだ。

(9)漢 字 テキス ト

研修 コースと課外補講の漢字 クラスで使用 されているテキス ト (『BKBl,2』 IKB l,2』 『漢字の 道』)に ついて,見 出 しの漢字が どのテキス ト, どの課 に提出されているかを示 した。『BKB』 はVOl.

1か らVol.2に かけて一続 きの課構成になっているため,ひ とつにまとめてある。 『IKB l,2』 でコ ラム欄 と復習ページに提出されているものについては,そ れぞれ 「コ 1」,「Rl」 のように入力 した。

2.2 語 彙 デ ー タベ ー ス (語彙 DB)

語彙DBに ついては現在 も入力作業を進めなが ら,対 象語彙や入力項 目等の詳細について検討 してい るところであるも ここでは現時点でのデータベース作成の方法を記す。図 2は 語彙DBの カー ドの例で ある。

表 1

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図 2 語 彙DB (1)対 象語彙

語彙DB作 成 の対象 と したのは,研 修 コース と課外補講 の初級 および中級 クラスで使用 している以下6 冊 のメイ ンテキス トの索 引等か ら抽 出 した,漢 字 を含 む語,表 現文型,連 語,接 辞 な どである。

① 『みんな I, Ⅱ』の 「索引」

② 『文化中級 I, Ⅱ』の 「各課索引」

③ 『CMJI, Ⅱ 』の語彙 リス ト

①では文単位で挙げられているもの (「。」や 「?」 で終わっているもの)を 除いた。 また,③ の語彙 リス トとは,「会話 ノー ト」の 「VOcabulary list」や 「読む練習」の 「単語表」など,読 みと英訳をつ けてある語彙 リス トを指す。

現在の作業段階では,テ キス トでは平仮名表記であって も日常的に漢字で表記 されることが多いも の も抽出 してある。 これをどのように扱 うか,ま た,そ の他固有名詞や合成語の扱いなどについて も, 検討を重ねているところである。

また,② には 『文化初級 日本語 I, Ⅱ』(以下,『文化初級 I, Ⅱ』 と略す)で 既出の語彙は提出され ていないため,『文化中級 I, Ⅱ』 に出て くる漢字を含む語彙を全てカバーできないのではないか とい うことが考え られた。 しか し,『文化初級 I, Ⅱ』索引と 『みんな I, Ⅱ』索引を照合 したところ,大 部分 は重な ってお り,『文化初級 I, Ⅱ』 に しかない語 はほとん どが合成語か人名 ・地名な どの固有名 詞であることが分か った。合成語の場合は,分 ければ 『みんな I, Ⅱ』に提出されているもの も多いこ となどか ら,総 合的に考えて,現 段階では 『文化初級 I, Ⅱ』索引の語彙は今回のデータベース作成の 対象か ら外す こととした。

(2)入 力項 目

データベTス 作成作業の過程で必要な情報 も含めて,現 在のところ,以 下の情報をまとめてデータ ベTス 化 している。今後, さらに入力情報を追加または集約 して,作 成方法を検討 していきたい。

①見出 し語

い形容詞は言い切 りの形,な 形容詞は語幹,動 詞については辞書形で示 した。 したがって,ま す形で 表示 されている 『みんな I, Ⅱ』索引の動詞 も辞書形 に変換 した。 また,表 現文型や連語,接 辞なども 見出 し語 とし,そ れ らの被接続部分 は 「ん」で表示 した。

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②ス、りがな

カタカナ表記 の部分 や平仮名表記の部分 も含 めて平仮名で遮、りがなを入れた。 また,見 出 し語で 「〜」

を使用 している部分 はそのまま 「〜」 を用 いた。

③英訳

索 引等 に英訳 がある ものは,そ れを入 れたが,『CMJI, Ⅱ 』 の英訳 は本文 の文脈 に合 わせた意味で あ り,一 般 的意味ではない ものがあ るので,そ のまま採用 で きない場合がある。 また,索 引等 に英訳が ない ものにう いて は辞書 を参考 に入れ ることにな るが,詳 しくは今後の検討課題 としたい。

④見 出 し漢字 と通 し番号

見 出 し語 に含 まれ る漢字 を 1字 ずつ示 した。 また,通 し番号 は漢字DBと 同 じである。

⑤ チ ェック項 目

以下 に該 当す る場合,各 欄 にチ ェックを入れた。

「固有名詞」 :固 有名詞 に分類 で きるもの。 テキス トの索引等 に分類 がある場合 は,そ れ に拠 る。

表記」 :テ キス トでは平仮名表記で, 日常的 には漢字表記 され ることが多 い と思 われ るもの。

語以外」 :表 現文型や接辞 な ど,単 独 の 自立語以外 の もの。

「その他」 :見 出 し語 につ いて,次 のよ うな付属情報 がある もの。詳 しくは備考欄 に記 した。

。 「す る」をつ けて動詞 になる。

・な形容詞 として使われ る。

・ 「に」 をつけて副詞 として使 われ る。

・な形容詞であるが,名 詞 に続 く場合 は 「〜の」 とい う接続の形を とる場合がある。

これ らの見 出 し語 に関す る付属情報 につ いて は,そ れぞれの用法 で初 めて提 出 されている課 が備考欄 に記入 してある。 また,見 出 し語 が接辞 の場合 は,テ キス ト中のそれを含 んだ派生語 とその語 の初 出課 が入 れてある。

3 漢 字 ク イ ズ

漢字 プ ロジェク トと して,富 山大学留学生 セ ンター 「日本語学習支援 サイ トRAICHO」 の漢字 クイ ズの作成 ①のため,『BKBl, 2』 第 4課 か ら 8課 ,25課 か ら30課の問題 を試作 し0,「RAICHO」 プロ ジェク トで取 りま とめた問題文 と選択肢 のチ ェックを行 った。

WEB問 題 作 成 ツー ル (http://www.iwai¨h.ed.jp/〜irie/jttvascript/webquiz/)を利 用 し, 漢 字 の

「読 み方」 ・ 「書 き方」 の四択 問題 を試作 した。『BKBl, 2』 の第 1課 か ら45課まで 3課 ごとに計 15 レベルを設定 し,各 レベルで 「読 み方」 ・ 「書 き方」,そ れぞれ10間が出題 され るよ うにな ってい る。

それぞれの レベル には全部 で45問前後の問題が準備 されている3こ こか ら10間が ランダムに出題 され る よ うにな っているので,再 度 同 じレベルの問題 を解 く場合,全 く同 じ内容で出題 され ることはない。 ま た,『BKBl, 2』 を使用 してい る学習者 がそれぞれの段階で独習で きるよ うに,未 習漢字 にはあゝりが なを,難 しい と思 われ る語彙 には英訳 を付 けた。

問題 のチ ェ ックに際 して,次 の 3点 が問題 とな った。 1つ 目は,「書 き」 クイズが書 くことを確認す るための クイズであるに もかかわ らず,選 択 問題 とせ ざるをえなか った点 ③である。 2つ 目は,非 漢字 圏の学習者 が きちん と字形 を覚えているか確認す るために,現 実 にはない漢字 も選択肢 に入 れ るのが望 ま しか ったが,そ れを実現 しようとす ると選択肢 をすべて画像化す る必要があるため今 回は実現で きな か った とい う点である。

一‑28‑一

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3つ 目は文脈 か ら漢字 を選 びやす くす るか否か とい う点が問題 にな ぅた。 まった く漢字 だけを問 うの であれば,文 章の中で漢字 を問 う意味 もな く,文 脈か ら選 びやす くす る必要 もない。 しか し,あ る語力ヽ ある程度決 ま った文脈 の中で使 われ ることが多いのであれば,そ の文脈の中でその語 を覚 えてい くこと には意味があるとい う考 えか ら,無 理 にわか りに くい文脈 の中で漢字 を問 うよ うな ことは しなか った。

正 しくない選択肢 は,「形 の似 てい る もの」,「読 みの似 てい る もの」,「意味が似 てい る もの」 な ど, い くつかの観点か ら作成 した6特 に 「読 み方」 の問題 では,中 国語、韓国語 な どの漢字 の発音 の影響か ら間違 って選 びそ うな読 み方 を入れた り,「撥音」,「促音」,「濁音」 な ど学習者 に とって聞 き取 りが困 難 な ものを選択肢 に入 れた りす ることによ って,学 習者 の気付 きに繋 が るよ うに した。

下の図 3は 漢字 クイズの例 である。

RAI17 H●く日本語自己学習(Ser―stu」血 くむ∴暮│´,I

か ん じ ク イ ズ   レ ベ J レ3 ‑ 2 ただしい か んじを えらんでくださしヽ Choose the appropriate Kanil

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4 今 後 の 課 題 と展 望

本 データベニスは漢字DBと 語彙DBの いずれ も作成 の途上 にあ り,試 用版完成 さえ も,ま だ手 の届 く 範囲にはない。実際 に学習者 や教師が活用す るまでには,利 用方法 を説明 したマニ ュアルの作成 も当然 必要である。 また,試 用版 について もその評価 を踏 まえて さ らに改訂 を重ねてい くことにな る。未 だ数 歩踏 み出 した ところであ り,課 題 山積 の状態ではあるが,以 下,今 後本 データベースが果たす役割の可 能性 とその展望 につ いて述べ る。

まず,本 漢字DBは ,初 級基本漢字 か ら上級 レベルの漢字 までを網羅 してお り,プ レースメ ン トテス トか ら最終評価 まで, コース全般 で使用す る教材作成への活用 を視野 に入 れている。 しか し,本 データ ベースが実際の学習活動で具体的 にどのよ うに活用 で きるかは, これか らの検討課題であ る。本大学 の

1与ギ●1111(T〜わ〕

●電語

(む1潮』‐

r電 話

r中 古

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漢字 クラスの使用 テキス トも含 めて市販 の漢字 テキス トで想定 されてい る練習 について;認 知心理学的 見地 か らの分析 もすで に行 われている (小林 1998,1999)ように, これまで行 われて きた学習活動 を再 検討 し,学 習者 が必要 とす る漢字運用能力 を獲得す るための効果的な学習活動 を設計 してい くことが求 め られ る。

学習者 の漢字学習 の主 た る目的で ある読解 のための漢字 の運用能力獲得 (小林 1998)に は辞書検索 能力を身 につけ,語 構成 についての認識 を深める必要がある (カイザー 1998)。今後 さらに本 データベー スの整備,情 報 の強化 をすれば,辞 書検索能力 向上 につなが る入門 レベルか らの教室活動設計や教材作 成への活用 を考 え ることが出来 る。 その際,現 在 ほ とん どの学習者 に とって身近 にな った電子辞書 によ

る検索 を前提 と した教室活動 も考 えてい く必要 があるであろ う。

また,専 門分野 に役立つ漢字 の効率 的な学習 を進 め るためには,初 級 か ら上級への段階的漢字学習だ けでな く,専 門書読解 のための漢字 を早 くか ら取 り入 れた学習 も必要である。理工系分野での学習漢字 の選定 な ど既 に進 んでい る (武田 1998)も の もあるが,本 セ ンターの場合,研 修 コースの学習者 の専 攻分野 として多 い薬学分野 の語彙学習 のための漢字 の選定が まず求 め られ る。

漢字教育 については,書 字教育一つ取 ってもその必要性 についての論議は未だ定まっていない (り‖瀬 1988, 玉村 1993,市 川 1998,和 田 2002な ど)よ うに,学 習 目標や具体的学習活動 も多様なものが考えられる。

E―ラーニ ングサイ トなどさまざまなメディアを利用 した漢字学習が可能 になっている現在, 日本語学習者を とりまく人 間的 0社 会 的環境 も含めて学習環境を幅広 くとらえ直す必要がある (市川 1998)。それを踏 ま えて どのよ うに学習者 の漢字学習 を支援 してい くか,ま た,そ の中で本データベースが どのような役割 を果 たせ るか,今 後の検討 を重ねていきたい。

(1)漢 字 クイズ作成 の と りまとめを後藤が行 った。

(2)4課 か ら 8課 は 1人 1課 ,25課 か ら30課は岩本 が担 当 した。

(3)WEB問 題作成 ツールでは解答入力式 の問題 も作成 で きるが, コ ンピュータ上 ではかな漢字変換 が利用 できる ので,解 答入力式 では変換候補 を正 しく選択で きるか どうかを確認す るのみになるため,選 択問題 とした。

参 考 文 献

(1)市 川伸一 (1998)「認知心理学 と日本語教育」『平成10年度 日本語教育学会秋季大会予稿集』pp.17‑22 (2)伊 藤早苗 ・鈴木正子 (2001)「日本語学習者 の漢字辞書別使用 ス トラテ ジー ー初級者 と上級者 の事例研究 ―」

『北海道大学留学生 セ ンター紀要』第5号,pp.64‑86

(3)太 田 亨 0藤 田佐和子 ・中村朱美 (2002)「上級漢字教材作成 プロジェク トについて」『金沢大学留学生 セ ンター 紀要』第5号,pp.69‑96

に)カ イザー シュテ フ ァン (1998)「『非漢字 圏 =悲 観事 圏』脱却への道 一漢字教育 か ら語彙教育ヘ ー」 『平成10年 度 日本語教育学会秋季大会予稿集』pp.25‑31

5)加 納千恵子 ・酒井 たか子 (2003)「漢字処理能力測定 テス トの開発」『筑波大学留学生 セ ンター 日 本語教育論 集』第18号,pp.59‑80

(6)川 瀬生郎 (1988)「日本語教育 における漢字」『漢字講座 12 漢 字教育』 明治書院,pp.273‑296

(η 後 藤寛樹 ・深澤 のぞみ ・濱 田美和 (2002)「コンピュー タ用語 のデータベース作成 と特徴 の分析 ―留学生 の情 報活用能力 の養成 を 目指 して 下」『富 山大学留学生 セ ンター紀要』創刊号,pp.3‑14

(3 小 林 由子 (1998)「漢字授業 における漢字学習 一認知心理学的モデルによる検討 一」´『北海道大学留学生 セ ンター 蒲己募喜』 舅与21チ, pp.88‑102

D ) 小 林 由子 ( 1 9 9 9 ) 「漢字教材 における漢字読 み練習 の分析 一入 門期 における教材 の検討 ―」『日本語教育方法研 究会誌』V o l . 6 , N o , 1 , p p . 1 6 ‑ 1 7

a O   武 田明子 ・入戸野修 ( 1 9 9 7 ) 「初級 日本語 を学ぶための理工系研究留学生 のための漢字教授方法 の提案」『平成

―‑30‑―

(10)

9年度 日本語教育学会秋季大会予稿集』pp.155‑160

GD 玉 村文郎 (1993)「日本語教育 における漢字 一その特質 と教育 ―」『日本語教育』80号,pp.1‑14

00 濱 田美和 ・後藤寛樹 0深 澤 のぞみ (2004)「日本語学習支援 サイ トの役割 と効果 一大学 における総合 的 日本語 学習支援体制 の構築 とサイ トの開設 ―」『富 山大学留学生 セ ンター紀要』第3号,pp.1‑14

αЭ 藤 井涼子 (1997)「漢字教育」『日本語教育』94号,pp.85‑90

00 和 田衣世 (2002)「中国人学習者 向け漢字教材 の必要性 につ いて」『北海道大学留学生 セ ンター紀要』第2号, pp.88‑92

参 考 資 料 (1)梅 悼忠夫他監修 (1989)『 日本語大辞典』講談社

(2)大 越美恵子 ・高橋美和子編 (2002)『中国人 のための漢字読 み方ハ ン ドブ ック』 ス リーエーネ ッ トワーク 侶)外 国人 の 日本語能力 に関す る調査研究協力者 (1982)「『外国人留学生 の 日本語能力 の標準 と測定 (試案)に 関

す る調査研究 につ いて』 の報告」文化庁

(4)加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 0石 井恵里子 (1999)『Basic Kanji Book Vol.1』第 3版 ,凡 人社 151 加納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (1999)『Basic Kanji Book Vol.2』第 3版 ,凡 人社 (6)加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (2001)『Intermediate Kanji Book Vol.1』第 3版 ,凡 人社  加 納千恵子 ・清水百合 ・竹 中弘子 ・石井恵里子 (2001)『Intermediate Kanji Book Vol.2』凡人社

は)国 際交流基金 ・日本 国際教育協会 (1994)『日本語能力試験 出題基準』凡人社 (9)ス リーエーネ ッ トワー ク (1998)『みんなの 日本語初級 I』 ス リーエーネ ッ トワー ク 00 ス リーエーネ ッ トワー ク (19981『みんなの 日本語初級 Ⅱ』 ス リーエーネ ッ トワー ク aD 豊 田豊子 (1990)『漢字 の道』凡人社

Ca 内 閣 (1981)「常用漢字表」 内閣告示第一号

αЭ 名 古屋大学 日本語教育研究 グループ (1998)『現代 日本語 コTス 中級 I』 名古屋大学 出版会 uO 名 古屋大学 日本語教育研究 グループ (1999)『現代 日本語 コース中級 Ⅱ』名古屋大学 出版会 D 文 化外 国語専 門学校 日本語科 (1991)『文化初級 日本語 I』 凡人社

αO 文 化外国語専 門学校 日本語科 (1995)『文化初級 日本語 Ⅱ』凡人社 l171 文化外国語専門学校 日本語課程 (1999)『文化 中級 日本語 Ⅱ』凡人社 O, 文 化外国語専 門学校 日本語課程 (1999)『文化 中級 日本語 Ⅱ』凡人社

09 文 部省 (1993)「小学校学習指導要領」『小学校学習指導書 国 語編』 ぎ ょうせ い

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参照

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