博 士 ( 工 学 ) 白 石 真 一
学 位 論 文 題 名
適 応 ラ テ イ ス フ イ ル 夕 実 現 の た め の ア ー キ テ ク チ ャ 設 計 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
本 論文 は ,適 応ラ テイ スフ イル タの 効果 的ハ ード ウェ ア実現のためのアーキ テク チャ 設 計に 関す る研 究成 果を まと めた もの であ る.
適 応フイルタ、は,フイルタ係数を調整するこ とによルフイルタ特性を自動的 にコ ント ロ ール する こと がで きる ため ,処 理対 象と して いる信号に関する先見 的情 報が 十 分で ない 場合 や, 信号 の統 計的 性質 が時 間と 共に変化するような場 合に も利用可能であり,幅広い分野で応用されて いる.例えば,システム同定,
適応 予測 器 ,適 応エ コー キャ ンセ ラ, 適応 ノイ ズキ ャン セラ,適応等価器等へ の応 用が 可 能で あり ,近 年の 移動 体通 信シ ステ ムの 急速 な発展等により,その 重要 度は 増 して いる .
こ のよ う な適 応フ イル タの 中で も, 適応 ラテ イス フイ ルタは,係数感度や安 定性 の面 で 望ま しい 性質 を持 ち, また ,ジ ョイ ント プロ セスを用いた高精度等 価器 やノ イ ズキ ャン セラ 等の 設計 にお いて 優れ た性 能を 発揮することが知られ てお り, そ の実 用的 価値 は高 い. 一方 で, 適応 ラテ イス フイルタは,同一形状 の 区 間 で 構 成 さ れ る モ ジ ュ ー ル 構造 を持 っ ため ,VLSI実 現に 向く とぃ う側 面 も併 せ持 っ てい る. この よう な適 応ラ テイ スフ イル タの 特徴から,同フイルタ のハ ード ウ ェア 実現 を目 指し たア ーキ テク チャ 設計 に対 する取り組みが数多く な さ れ て い る . 特 に , 一 般 的 な 積 和 演 算 器 に 代 え てCORDICア ル ゴ リ ズ ム に 基 づ く 算 術 演 算 器(CORDICプ ロ セ ッ サ ) を 用 い る こ と に よ り ,フ イル タの モ ジュ ール 構 造を 活か して 実現 する こと が可 能で あり ,種 々のフイルタアーキテ クチ ャが 提 案さ れて いる .
本 論文 で は, 様々 な適 応ラ テイ スフ イル タの アー キテ クチャが提案されてい る中 ,よ り 高度 なフ イル タリ ング アル ゴリ ズム を対 象と したアーキテクチャの 提案 を行 っ てい る. 既存 の適 応ラ テイ スフ イル タア ーキ テクチャが,自己回帰 (AR)モ デ ル に 基 づ く ラ テ イ ス フ イル タの 実 現を 目的 とし てい るの に対 し, 本 論 文 で は , よ り 高 度 な フ イ ル タ リ ン グ が 可 能 な 自 己 回 帰 移 動 平 均(ARMA)モ デル に基 づ くフ イル タを 対象 とし ,こ れを 効果 的に ハー ドウェア実現するため ―869―
のアーキテクチャを導出している.本論文では,信号分析を目的としたARMA ラテ イス フイ ルタ および信号合成のためのARMAラテイスフイルタのアーキ テク チャ を提 案し ているが,いずれも,CORDICプロセッサを利用した単純 な 構 造 を 持 っ た め , 効 果 的 な ハ ー ド ウ ェ ア 実 現 が 期 待 で き る .
本論文では,まず第2章で,提案手法において算術演算器の実現に用いる
CORDIC
アルゴリズムについて説明を行う.第3章では,既に提案されているCORDIC
ア ルゴ リズ ムを用いたARラテイスフイルタの実現法について,特に 構造が単純でハードウェア実現に向く手法を取り上げ,それらの概要と特徴に つい て説 明を 行な う.第4章では,第3章で取り上げたARラテイスフイルタ の実 現手 法をARMA
型のフイルタに適用した場合の問題を指摘し,これを解 決 する こと によ り,CORDIC
ア ルゴ リズ ムに 基づ くARMA
ラテ イス フイ ルタ のアーキテクチャを導出する.ここで導出されるフイルタアーキテクチャは・簡略 化さ れた
CORDIC
プ口セッサと加算器から構成されるため,構造が単純 であ ると ぃう 利点 を持つ.第5章では,第4章で導出した信号分析フイルタ のためのアーキテクチャを,信号合成フイルタのアーキテクチャに変換する手 法を提案する.このような変換手法は,信号分析後の合成が必要となる分野,例えば音声分析・合成等において有用である.第6章では,本論文で導出した フイルタアーキテクチャに対して,パイプライン処理を導入する.ここで得ら れるパイプラインアーキテクチャは,フイルタを構成するCORDICプロセッサ 内部におぃてもパイプライン処理を行なうことが可能であり,高いスループッ トを達成することができる.第7章では,第4章で提案した手法によるフイ´レ タの実現精度について考察を行ない,構造の単純さを保ったまま,実現精度を 向上させる手法を提案する.最後に第8章において,本研究の成果について要 約し,論文全体のまとめとする.
以上 を要 約す ると ,本 論文 は,
CORDIC
ア ルゴ リズ ムに基 づく 適応ARMA
ラテイスフイルタのアーキテクチャについて提案を行なっている.提案するフイ ルタ アー キテ クチ ャは,CORDICプロセッサを利用した単純な構造を持った め,ハードウェア上での効果的実現が期待できる.学 位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 教授 助教授
北島 栃内 青木 長谷山
学 位 論 文 題 名
秀夫 香次 由直 美紀
適 応ラテイ スフイル夕実現のための アー キテク チャ設計に関する研究
著者は,適応ラテイスフイルタのハードウェアの新しいアーキテクチャを提案した.
適応フイルタは,フイルタ係数を調整することによルフイルタ特性を自動的にコン トロールすることができるため,処理対象信号に関する先見的情報が十分でない場合,
及び,信号の統計的性質が時間と共に変化するような場合に有用であり,幅広い分野 で応用されている.著者は,適応フイルタの中でも,適応ラテイスフイルタが係数感度 や安定性その実用的価値は高いこと,及び,同フイルタは,同一形状の区間で構成さ れる ことに注目し た.更に,一般的な積和演算器に代えてCORDICアルゴリ ズムに 基づく算術演算器(CORDICプ ロセッサ)を用いることにより,フイルタのモジュー ル構造を生かす方式を前進させることを目指した.
著者は,より高度なフイルタリングアルゴリズムを対象としたアーキテクチャの提 案を行った.既存の適応ラテイスフイルタアーキテクチャが,自己回帰(AR)モデル に基づくラテイスフイルタの実現を目的としているのに対し,より高度なフイルタリ ング が可能な自己 回帰移動平均(ARMA)モデルに基づくフイルタを対象とし ,これ を効果的にハードウェア実現するためのアーキテクチャを導出した.信号分析,信号 合成いずれも,CORDICプロセッサを利用した単純な構造を持っため,効果的なハー ドウェア実現が期待できる.
各章における著者の記述は以下の通りである.研究全体の位置付けを第1章で行つ た.続いてARラテイスフイルタの実現法について,特に構造が単純でハードウェア 実現に向く手法を取り上げ,それらの概要と特徴について説明を行った.第4章では,
第3章 で 取り 上げ たARラテ イス フイ ル タの 実現 手法 を,ARMA型の フイ ルタ に適 用す る場合の問題 を指摘し,これを解決することにより,CORDICアルゴリ ズムに
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基づくARMAラ テイスフイルタのアーキテクチャを導出した.このフイ ルタアーキ テクチャは, 簡略化されたCORDICプロセッサと加算器から構成される ため,構造 が単純であるとぃう利点を持つ.第5章では,第4章で導出した信号分析フイルタの ためのアーキテクチャを,信号合成フイルタのアーキテクチャに変換する手法を提案 した.このような変換手法は,信号分析後の合成が必要となる分野,例えば音声分析・
合成等において有用であると述べた.第6章では,著者が導出したフイルタアーキテ クチャに対して,パイプライン処理を導入した.ここで得られるパイプラインアーキ テクチャは. フイルタを構成するCORDICプロセッサ内部においてもパ イプライン 処理を行なうことが可能であり,高いスループットを達成することができるとした.
第7章では,第4章で提案した手法によるフイルタの処理精度について 考察を行な い,構造の単純さを保ったまま,精度を向上させる手法を提案した.第8章には,論 文全体の総括を行った.
著者は論文全体を通じて,研究領域の現状の分析,新規提案内容の記述,有効性の 主 張 , 研 究 領 域 に お け る 位 置 付 け を 正 確 に 行 っ た と 判 定 す る . 以 上 を 要 約 す る と , 著 者 はCORDICアル ゴリ ズム に基 づく 適応ARMAラテ イス フイルタの新たなアーキテクチャを提案し,それが単純な構造をもつことを示した.
本研究を通じての,情報メデイア工学,大規模集積回路工学への貢献が大きいので,
著 者 は 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の 認 め る .
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