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博 士 ( 理 学 ) 高 梅

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 高 梅    良      学 位 論 文 題名

    Petrological Study of the Historic Eruptions of     Hokkaido‑Komagatake Volcano : Implications for Structure and Processes of Mushy Magma Chambers

( 北 海 道駒0岳 歴史 時代 噴火の 岩石 学的 研究 :   マ ッ シ ュ 状 マ グ マ 溜 り の 構 造と プ ロ セス )

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  北 海 道 駒 ケ 岳 火 山 ( 以 下, 駒0岳 と 呼 ぶ ) は 約5000年 の休 止期間 をお いて 17世 紀 に 活 動 を 再 開 し ,1640年 ,1694年 ,1856年 , およ び1929年 に 火 砕 流 を伴 うプ リニ ー式 噴火 を,1942年に マグマ水蒸気噴火を起こしている.このよ うな 活火 山に おい てマ グマ 系の 現状 を明らかにすることは必要不可欠である.

そし て現 状を 知る には ,マ グマ 系の 初期状態からの時間変化を明らかにする必 要が ある .そ こで 駒ケ 岳の 歴史 時代 の噴 火活 動が 始まっ た1640年 以降の5回の マ グ マ 噴 火 に っ い て 岩 石 学 的 な 検 討 を 行 い , マ グ マ 系の 現 状 を 推 定 し た .   歴史時代噴火の本質物質は白色軽石(Si02ニニ59.8〜62.4 wt.%),スコリア (Si02=57.4〜58.9 wt.%),灰色軽石(Si02=58.2〜60.5 wt.%),縞状軽石に分類 され る. 全て のプ リニ ー式 噴火 にお いて,より苦鉄質な噴出物から順に噴出し てい るが ,噴 出物 の大 部分 は珪 長質 な白色軽石からなる.全ての本質物質は斑 晶鉱物として多い順に斜長石,斜方輝石,単斜輝石,Feー恥酸化物を含んでいる.

白色軽石は非常に斑晶に富むが(24〜52voL%),スコ.リアは無斑品質である(く7 volI% ) . 灰 色 軽 石 は そ れら の 中 間 的 な 斑 晶 量 を示 す(20〜33vol.% ),

  本 質物 質の 岩石 学的 な特 徴は タイ プによって異なる.斑晶鉱物のコア組成は 本質 物質 のタ イプ によ らず ほば 同じ である.しかし累帯構造は本質物質のタイ プに よっ て異 なる .白 色軽 石中 の斑 晶はほとんど累帯構造を示さないが,灰色 軽石 やス コリ アに は顕 著な 逆累 帯構 造を示す斑晶が多数認められる.また全岩 組成 やガ ラス 組成 にお いて ,本 質物 質は全体として一本の直線的なトレンドを 示 し , 灰 色 軽 石 は 白 色 軽 石 と ス コ リ ア の 中 間 的 な 組 成 を 示 す .   こ れ ら の 岩 石 学的 特徴 は, 灰色 軽石 が斑 晶に 富み 珪長 質な 白色軽 石マ グマ

(WPマグ マ) と無 斑晶 質で 苦鉄 質な スコ リア マグ マ(Sマグ マ) の混合によっ て形 成さ れた こと を示 して いる .さ らに灰色軽石は1640年噴火では噴出してい な く ,1694年 噴 火か ら噴 出し てい る. この こと から ,別 々に 存在し てい たWP

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マグ マ とSマグ マ が1640年噴 火 後に 成 層 マグ マ溜りを 形成し,そ のマグマ 溜り 中 で マ グ マ 混 合 が 起 こ り , 混 合 マ グ マ が 形 成 さ れ た と 考 え ら れ る .   成 層 マ グ マ 溜 り を 形 成 して い るWPマ グマ ,Sマ グマ , 混 合マ グ マ には そ れ ぞれ時間 変化が認 められる. 白色軽石 の斑晶量 は1640年噴火 では24〜42 vol.% であ る が,1694年 以 降の 噴 火で は 急 増し36〜52 vol.%となる .ー方1694年噴 火か ら1942年噴火 までは斑 晶量にほ とんど変 化は認め られない, また石基 ガラ ス組 成 は徐 々 にSi02に富む ように変 化する. このよう な白色軽石 の時間変 化は WPマグマの 結晶化で は説明でき なく,内側はよルメルトに富み(斑晶量:25〜40 vol.%),外側がより斑晶に富む(斑晶量:>40 vol.%),斑晶量に関して不均質な 珪長 質 マグ マ 溜りの存 在が考え られる. このよう な構造に伴 って,外 側ほどよ り分 化 した メ ルトを持 っていた .このよ うなマグ マ溜りから1640年噴火で は内 側の 比 較的 メ ルトに富 むマグマ が選択的 に噴出し ,斑晶に富 むマグマ だけが出 残っ た と考 え ら れる . そ して1694年 以降 の 噴 火で は この 非 常 に斑 晶 に富 むWP マグマが噴出している.

  一方,灰 色軽石と スコリアの 岩石学的 な特徴の 時間変化 から,Sマグマと混合 マグ マ の時 間 変化が明 らかとな った.灰 色軽石の ガラス組成 は徐々に 苦鉄質に なる 傾 向が あ る.また1929年の灰色 軽石中に はそれ以 前の噴火と は異なり ,苦 鉄質 な 組成 を 持つ斜長 石が認め られる. これらの ことは混合 マグマが 時間とと もに 苦 鉄質 に なってい ったこと を示して いる.一 方,スコリ アは徐々 に斑晶量 が増 え る. ま た全岩組 成は徐々 に珪長質 になって いき,灰色 軽石の組 成領域に 近づ ぃ てい く . この こ と はSマ グ マ が徐 々 に珪長 質になって いったこ とを示し てい る .こ の よ うなSマ グ マと 混 合 マグ マ の 時間 変 化は , こ の2つの マ グマが 徐々 に 混合 し ていった ことを示 している .そして1929年以降の噴 火ではス コリ アが 噴 出し て い ない こ と から ,1929年噴 火 前にはほ とんどSマグ マが残っ てい なかったと考えられる.

  以 上 の よ う に ,1640年 噴 火 後にWPマ グ マ とSマグ マ は成 層 マ グマ 溜 りを 形 成し , これ ら の マグ マ は 時間 と とも に 変 化し て いっ た . 珪長 質 なWPマ グマは 非常 に 斑晶 に 富 むた め に ,無 斑 晶質 なSマ グマよ りも密度が 大きかっ た.その ためこの 成層マグ マ溜りは上 部により 苦鉄質なSマグマや .混合マグマが存在し てい た と考 え られる. このよう な成層マ グマ溜り から噴火が 始まるこ とによっ て, よ り苦 鉄 質 なマ グ マ から 噴 出す る 噴 火推移 になった. またSマグ マの影響 は時 間 とと も に小さく なる傾向 があり, 最新のマ グマ噴火で ある1942年噴 火で は, 灰 色軽 石 や縞状軽 石もほと んど噴出 しなかっ た.そのた め,現在 は混合マ グマ が ほと ん ど 残っ て い なく , 非常 に 斑 晶に 富 み, 粘 性 の高 いWPマ グ マだけ が残っていると考えられる.

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学位論文審査の要旨 主査   教授   中川光弘 副査   教授   藤野清志 副査   教授   岡田   弘

副 査    助 教 授    新 井 田 清 信 副 査    助 教 授 、 中 村 美 千 彦      (東北大学大学院理学研究科)

     学位論文題名

    Petrological Study of the Historic Eruptions of     Hokkaido‑Komagatake Volcano : Implications for Structure and Processes of Mushy Magma Chambers      ( 北 海 道 駒 ケ 岳 歴 史 時 代 噴 火 の 岩 石 学 的 研 究 :      マ ッ シ ュ 状 マ グ マ 溜 り の 構 造 と プ ロ セ ス )

   北海道駒0 岳(以下,駒0 岳と呼ぶ)は爆発的なプリニー式噴火を繰り返す,

日本で有数の活火山である.このような活火山においてマグマ系の現状を明ら かにすることは,将来の噴火予測をする上で必要不可欠である.そしてマグマ 系の現状を知るためには,マグマ系の初期状態からの時間変化を明らかにする 必要がある.そこで本研究では駒ケ岳の歴史時代の噴火活動が始まった1640 年 以降 の5 回の マグ マ噴 火(1640 年,1694 年 , 1856 年 , 1929 年, 1942 年)に っいて詳細な岩石学的検討を行い,マグマ系の現状を明らかにした.またこの 研究では,マグマ溜りの構造として最近になって重視されてきた,結晶に富ん だ マ ッ シ ュ 状 マ グ マ 溜 り の 構 造 と 変 遷 に つ い て の 議 論 も 行 っ た .    本研究では,まず詳細な野外調査に基づく高密度なサンプリングを行った.

そして噴出物の特徴からタイプ分けを行い,噴火推移の復元や噴出物の岩石学

的特徴の時間変化についての議論を行った.それを基にマグマ系の変遷を明ら

かにした.歴史時代噴火のマグマ系の初期状態として,1640 年噴火以前は珪長

質な白色軽石マグマ(WP マグマ)と苦鉄質なスコリアマグマ(S マグマ)が異

なるマグマ溜り内に存在していた.珪長質な WP マグマは多量の斑晶鉱物を含

んでおり,マッシュ状である,この WP マグマは内側がよルメルトに富み,外

側がより斑晶に富んでいた,一方S マグマは無斑品質である. 1640 年噴火では

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SマグマがWPマ グマに注入し,噴火が開始した,この噴火によって,WPマグ マは内側のメル卜に富む部分が噴出し,斑晶に富むマグマだけが残った.1640 年噴 火後に,出 残った斑晶に富むWPマグマとSマグマは成層マグマ溜りを形 成し た.WPマグマ は非常に斑晶鉱物に富むためにSマグマよりも密度が大き かっ た.そのた めに,苦鉄質なSマグマが珪長質なWPマグマの上部に位置す るという,現在まで多くの火山で考えられてきた成層マグマ溜りとは逆の組成 累帯構造を示した,このような構造の成層マグマ溜りから噴火が開始すること によって,より苦鉄質なマグマから順に噴出するという噴火推移になった.そ して1694年以降の噴火では苦鉄質マグマの注入なしに噴火が開始した.噴火を 繰り返すにっれて,苦鉄質了グマの影響が徐々に減少し,現在は粘性の高いWP マグマだけが残っている.そのため,地下深部からの新たな苦鉄質マグマの注 入がなければ,今後はマグマ噴火を起こすことができないことが示唆される・

  このように著者は,時間軸に沿って,詳細で高密度な岩石学的検討を行った.

そしてそれに基づぃて,駒0岳のマグマの変遷を明らかにし,マグマ系の現状 を示した,これによって,将来のマグマ噴火の可能性について大きな制約を示 した.このことは将来の大規模噴火が危惧されていた駒0岳において,非常に 重要な成果である,また,これまでにマッシュ状マグマ溜りの構造や変遷を明 らかにした例はなく,著者は新知見を示した.特に,駒ケ岳の成層マグマ溜り が多くの火山とは逆の組成累帯構造を示したことを明らかにした.これは,活 火山における噴火予測や噴火推移の予測を行う上で非常に重要な事例である.

  以上のように,著者は駒0岳の歴史時代噴火について,詳細な岩石学的検討 を行うことによって,中・長期的な噴火予測に対する新知見を得た.またこの 研究は,最近になって重要視されてきた,結晶に富むマッシュ状マグマ溜りの 構 造 と そ の 時 間 変 化 を 天 然 の 事 例 か ら 解 析 し た 点 で 画 期 的 で あ る .   よって著者は,北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格があると認 める.

参照

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