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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士( 生 命 科 学 )    森    勝 弘

学 位 論 文 題 名

Study on the novel Neu2 Sialidase inhibitor      (新規 Neu2 シアリダーゼ阻害剤に関する研究)

学位論文内容の要旨

    シ ア リ ダ ー ゼ 阻 害 剤 と し て 知 ら れ て い る 化 合 物 は

N‑acetyl‑2,3‑dehydro‑2‑deoxy‑neuraminicacidくDAN心 に 代 表 さ れ る よ う な 低 分 子 化 合 物 が 主 流 で あ り 、 そ の 作 用 メ カ ニ ズ ム と し て は 、 本 来 の 基 質 で あ る シ ア ル 酸 の構 造 を 模 す こと に よ っ て 酵 素 の 基 質 結 合 ク レ バ ス を 占 有 し 、 本 来 の 基 質 の 侵 入 あ る い は 、 酵素 の 触 媒 活 性の を 阻 害 し て い る も の と 考 え ら れ て い る 。  こ の 時 、 阻 害 剤 は 酵 素 活 性 中心 と し て 重 要で あ る こ と が 知 ら れ る 、 い く っ か の ア ミ ノ 酸 と 疏 水 結 合 や 水 素 結 合 を 形 成 し て 基 質結 合 ク レ バ スに よ り 安 定 に 居 座 る こ と が 、 よ り 強 い 阻 害 活 性 を 発 揮 す る 上 で 求 め ら れ る 。  幅 広 い 生物 種 に お い て 、 シ ア リ ダ ー ゼ は ロ シ ー ト で 形 成 さ れ た6つ の ド メ イ ン が プ ロ ペ ラ 状 に 集 合 し た 特 徴 的 な 構 造 を 持 っ こ と がX線 解 析 に よ っ て 明 ら か に な っ て い る 。  一 方 で 、 酵 素 の 内 部 に 存 在 す る 活 性 中 心 の ア ミ ノ 酸 は あ る 程 度 保 存 さ れ て い る も の の 、 種 に よ っ て は 特定 の 阻 害 剤 と相 互 作 用 す る た め の ア ミ ノ 酸 が 存 在 し な い 場 合 も あ り 、 基 質 結 合 ク レ バ ス そ のも の の 構 造 が異 な る こ と に よ っ て 、 幅 広 い 生 物 種 に お い て 普 遍 的 に 強 い 阻 害 活 性 を 発 揮 で きる シ ア リ ダ ーゼ 阻 害 剤 の 開 発 は 難 し い も の と 考 え ら れ る 。 そ の た め 、 構 造 生 物 的 な 方 法 に より 、 特 定 の 生物 種 に 特 化 し た シ ア リ ダ ー ゼ 阻 害 剤 の 開 発 な ど が 、 た と え ば イ ン フ ル エ ン ザ のノ イ ラ ミ ニ ダー ゼ 阻 害 剤 な ど を 中 心 に 精 力 的 に 行 わ れ て い る 。 特 定 の 生 物 に 特 化 し た 阻 害 とい う 観 点 で は、

一 方 で 、 抗 体 の 利 用 が 考 え ら れ る 。 抗 体 は 非 常 に 種 選 択 性 が 高 く 、 同 時 に 非常 に 高 い 親 和性 で 結 合 が で き る こ と が 知 ら れ て い る蛋 白 質 で あ る。  幅 広 い生 物 種 の シ アリ ダ ー ゼ に おい て 、 高 い 阻 害 活 性 を 引 き 起 こ す こ と の で き る 標 的 部 位 が シ ア リ ダ ー ゼ 上 の ど こ かに 存 在 す れ ぱ今 後 の シ ア リ ダ ー ゼ 阻 害 剤 開 発 に お い て 非 常 に 有 用 な 知 見 と な る と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら 、 こ れ ま で に シ ア リ ダ ー ゼ を 阻 害 す る よ う な 抗 体 が 樹 立 さ れ た こ と は な く、 ま た 効 率 的に 酵 素 阻 害 に っ な が る よ う な 特 定 の エ ピ ト ー プ の 同 定 も 報 告 さ れ て い な ぃ 。     哺 乳 動 物 に はNeu1、Neu2、Neu3、Neu4の4つ の シ ア リ ダ ー ゼ が 知 ら れ て い る が 、 筆 者 は 、 こ の う ち 、 細 胞 質 シ ア リ ダ ー ゼ と し て 同 定 さ れ て い るNeu2の 組 み 換 え タ ン パ ク 質 を マ ウ ス あ る い は ラ ッ ト に 免 疫 し 、 得 ら れ た モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 を 丹 念 に ス クリ ー ニ ン グ する こ と に よ り 、 非 常 に 高 い シ ア リ ダ ー ゼ 阻 害 活 性 を 有 す るNeu2抗 体 を 複 数 ク ロ ー ン 樹 立 す る こ と に 成 功 し た 。  こ れ ら は 非 常 に 高 い ア フ イ ニ テ ィ ー でNeu2に 結 合 し 、 ほ ぼ 完 全 に シ ア リ ダ ー ゼ 活 性 を 阻 害 す る 。 こ う い っ た 背 景 か ら 、 抗 体 の よ う な 分 子 が な ぜ 、こ の よ う な 高い 阻 害 活 性 を 有 す る の か に 興 味 を も ち 、 解 析 を 進 め た 。  異 な る 動 物 種 のNeu2聞 で ド メ イ ン シ ャ フ リ ン グ を 行 な い 、 エ ピ ト ー プ 解 析 を 行 っ た 結 果 、 こ れ ら 複 数 の 抗 体 はい ず れ もa1と よ ぱ れ る 、 基 質 侵 入 側 に 突 き 出 たaヘ リ ッ ク ス ル ー プ に 結 合 し て い る こ と を 明 ら か に し た 。 ま

ー1095−

(2)

たalを 単 独 で 認 識 し て い る 抗 体 間 の 比 較 で は 、 ア フ イ ニ テ ィ ー が 高 い ほ ど 、 シ ア リ ダ ー ゼ 阻 害 活 性 の 高 い こ と も 明 ら か に し た 。  興 味 深 い こ と に 、alの 配 列 を 有 す る 直 線 上 の ペ プ チ ド に は こ れ ら 抗 体 は 結 合 し な い こ と 、01の 配 列 を 有 す る 合 成 ペ プ チ ド の 免 疫 も 試 み た も の の 、 こ れ ら 被 免 疫 動 物 か ら はNeu2阻 害 活 性 の あ る 抗 体 は 得 ら れ な か っ た こ と か ら 、 我 々 の 樹 立 し た 抗 体 は01の な ん ら か の 立 体 構 造 を 認 識 し て い る こ と 、 ま た 、 そ の こ と が 酵 素 阻 害 に は 重 要 で あ る も の と 考 え ら れ た 。 ま た 変 異 体 を 用 い た 解 析 か ら 、 少 な く と もN末 端 側 か ら 42、43、45番 目 の ア ミ ノ 酸 が エ ピ ト ー プ に 含 ま れ て い る こ と も 明 ら か に し た 。  既 に 報 告 さ れ て い るX線 構 造 解 析 の 結 果 か ら はalは 動 く ル ー プ で あ る こ と が 知 ら れ て い る 。 興 味 深 い こ と に 、Neu2の 酵 素 活 性 中 心 を 構 成 す る ア ミ ノ 酸 は そ の ほ と ん ど が 分 子 内 部 に 存 在 す る が 、 シ ア リ ダ ー ゼ 活 性 触 媒 の 責 任 残 基 と さ れ て い るAsp46は 唯 一 こ の 可 動 ル ー プ で あ るalに 存 在 し て お り 、 し か も エ ピ ト ー プ と な っ て い る42、43、45番 目 の ア ミ ノ 酸 残 基 に 近 接 し て い る こ と か ら 、 抗 体 はalル ー プ 、 な か で もAsp46周 辺 を 含 む エ ピ ト ー プ に 結 合 し 、 触 媒 機 能 に な ん ら か の 影 響 を 与 え る こ と に よ ル シ ア リ ダ ー ゼ 活 性 を 阻 害 し て い る も の と 考 え ら れ た 。     通 常 、 抗 体 の よ う な 嵩 高 い 分 子 は 、 低 分 子 阻 害 剤 の よ う に 、 酵 素 活 性 中 心 内 部 に ま で 接 触 で き な い も の の 、 酵 素 活 性 に 重 要 な ア ミ ノ 酸 を 含 むalを 標 的 と す る こ と に 、 触 媒 機 能 に 影 響 を 与 え て い る と い う メ カ ニ ズ ム が 本 研 究 に よ り 提 唱 さ れ た 。

―1096―

(3)

学位論文審査の要旨 主査 副査

副査 副査

教授 教授 講師 講師

有賀 木原 佐々 米田

学 位 論 文 題 名

寛 芳 章 雄 貴 之     宏

Study on the novel Neu2 Sialidase inhibitor      (新規Neu2 シアリダーゼ阻害剤に関する研究)

博士学位論文審査等の結果について(報告)

動物細胞によって生 産された組み換え糖夕ンパク 質は近年、様々な疾患の治療薬として開発 が進 められている。CHO (Chinese Hamster Ovary)細胞は、高いタンパク質 生産性や、その扱い やす さゆ え、本目的に世界 的に広く用いられている。こ れまでの研究からCHO細胞に よって生産 されたタンバク質に付加し ているN結合型糖鎖の構造は 、ヒト体内で自然に生産さ れるタンバク 質に 見ら れる糖鎖と共通の 構造を多く有していることが 知られている。たとえばN結 合複合型糖 鎖 の非 還元 末 端側 はbi、triあ るい はtetra−antennaryの分 岐 構造 をと るが 、そ こにはGalロ 1,4GlcNAC糖鎖がみられ、さらにその 末端に存在するシアル酸によ って保護されている。  この ような糖鎖 の生合成過程に何らかの問 題が生じると、糖夕ンパク質 医薬品の糖鎖構造が不均一と なり、その 生物活性に大きな影響を与 えることが知られている。特 に薬物動態については大きな 影響を受け ることが知られており、末 端のシアル酸あるいはガラク トースが切断された糖夕ンパ ク質は、肝 臓に存在するアシアロ糖夕 ンバク質受容体(ASGPR)あるいはマンノースノGlcNAC受容体 を介した経 路によって血中から積極的 に取り除かれてしまう。っま り安定した体内動態を有する

―1097―

(4)

糖 夕 ン バ ク 質 医 薬 品 を 生 産 す る た め に は 、 シ ア ル酸 付 加 数 を 十分 か つ 均 一 な状 態 で 保 持 した ま ま の 生 産 を 行 う 必 要 が あ る 。 実 際 にCHO細 胞 を 用 い た 糖 夕 ン パ ク 質 医 薬 品 の製 造 は 、 発 現遺 伝 子 を 安 定 に 組 み 込 ん だ タ ン パ ク 質 発 現CHO細 胞 を パ イ オ リ ア ク タ ー で 連 続 的 に培 養 し て 行 われ る が 、 培 養 期 間 が 長 く な る ほ ど 高 い 生 産 力 価 が 得 ら れ る一 方 で 、 増 加し て く る 死 細胞 よ り 漏 出 した 細 胞 質 シ ア リ ダ ー ゼ(Neu2シ ア リ ダ ー ゼ ) の 影 響 に よ り 、N型 糖 鎖 非 還 元末 端 か ら の シア ル 酸 の 切 断が 起 こ る こ と が 問 題 と な っ て い る 。 こ の 課 題 解 決 のた め 、 培 養 期間 の 短 縮 、 培養 条 件 最 適 化、 宿 主 改 良 な ど 様 々 な 取 り 組 み が 行 わ れ て き た が 、 本 質 的 か つ 画 期 的 な 解 決 策 は 見 つ か っ て い な い 。   著 者 は 、 こ れ を 解 決 す る 方 法 と し て 、 チ ャ イ ニ ー ズ ハ ム ス タ ー 由 来 のNeu2シ ア リ ダ ー ゼ を阻 害 す る 抗 体 を 樹 立 し 、 こ れ を 培 地 添 加 物 し て 用 いる こ と に よ り、 糖 夕 ン パ ク質 の 培 養 生 産に お い てNeu2シ ア リ ダ ー ゼ の 活 性 を 長 期 間 に 渡 っ て 阻 害 し 、 シ ア ル 酸 付 加 数 を 損 な う こ と な く 有 用 糖 夕 ン バ ク 質 医 薬 品 を 生 産 す る 方 法 を 確 立 し た 。 また 樹 立 抗 体 の詳 細 な 解 析 によ り 、Neu2シ ア リ ダ ー ゼ の 阻 害 に 重 要 な タ ン パ ク 質 ド メ イ ン を 同 定 した 。 本 知 見 は、 本 抗 体 が これ ま で に 知 られ る シ ア リ ダ ー ゼ 阻 害 剤 と は 異 な る 新 し い 阻 害 メ カ ニ ズム を 持 っ て いる こ と を 示 唆し て お り 、 幅広 い 生 命 現 象 に 関 わ っ て い る シ ア リ ダ ー ゼ の 特 異 的 阻 害 剤 開 発 に 展 開 で き る 新 し い 知 見 で あ る と 考 え て い る 。

よ っ て著 者 は , 北 海道 大 学 博 士 (生 命 科 学 ) の 学位 を 授 与 され る資格 あるも のと 認める 。

―1098―

参照

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