博 士 ( 医 学 ) 黒 川 貴 則
学 位論文題名
Overexpression of hypoxla‐induCible‐faCtorla(H工F‐la) inoeSOphagealSquamouSCellCarClnomaCOrrelateSWith lymphnodemetaStaSiSandpathologiCStage
( 食道扁平上 皮癌にお けるhypoxia―inducible−factorln(HIF,1Q)の 高 発 現 は , リ ン パ 節 転 移 の 有 無 お よ び 病 理 学 的 病 期 と 相 関 す る )
学位論文内容の要旨
目的
食 道 癌 は 予後 不 良な 癌 で ある . 外科 手 術 を施 行 さ れた 患 者の5年 生 存 率は3領 域 リン パ節 廓 清と化学 療法や放 射線療法 の併用に も関わらず いまだ500/0未 満である ,食道癌 で はり ン バ節 転 移 の存 在 が最 も 重 要な 予後規 定因子とさ れるが, 最新の画 像診断を 用いて も術前にり ンバ節転 移が存在 するか否 かを決定 すること は困難であることからりンノヾ節 転移の存在,即ち予後を予測するマ一カーの開発が望まれている.
hypoxia‑inducible−factorlQ(HIFー1a)は腫瘍細胞が低酸素環境下に順応する際に,中心的 な 役 割 を 果 た すこ と が知 ら れ てい る120 kDaの 核 夕 ンパ ク であ る .HIFーl01のC末端 は p300と 結 合し ,p300/CBP‑ HIF‑la複合 体 がVEGFを 含 む 低酸 素 応答 遺 伝 子の 転 写 を活 性 化さ せ ,腫 瘍 の 低酸 素 環境 へ の 順応 を可能 とする.本 研究はHIF‑1aの 発現が食 道癌の予 後にいかなる影響を及ぽすかを目的として行った.
材料と方法
本研 究 で は, 外 科 的切 除 で得 ら れ た食 道 扁平 上 皮 癌130症 例の 摘出標本 をモノク ロナ ー ル 抗HIF‑18抗 体で 免 疫染 色 し ,そのimmunoreactivityと病理組 織学的因 子との相関 を 検 討 す るこ と を 目的 と した . 対 象は1989年 から1999年 の10年 間に 根 治 的食 道 切除 術 と 3領域 リ ンバ 節 廓 清を 施 行し た 食 道原発扁 平上皮癌 患者130例であ る,在院 死症例は 除外 し た . 病 理 組 織 学 的 進 行 度 はUICCのTNM分 類 を 用 い て 評 価 し た .HIF‑1a夕 ン バ ク の immunoreactivityは 文献上の基 準を参照 し,核或 いは細胞 質が染色されている癌細胞数を ス コア化した .Negative;染色を 認めないもの,1+;1%未満の細胞において核が染色される も の ,2+;1%以 上10%未 満 の 核が 染 色 され る ,或 いiま 薄 く細 胞 質が 染 色 され る もの , 3+;100/0以上50%未満の核が染色される,或いは明確に細胞質が染色されるもの,4十;50% 以 上 の 核が 染 色 され る ,あ る い は濃 く 細胞 質 が 染色 さ れる も の とし 測 定 した .HIF‑1a
3+以 上をHIF‑1a高 発 現 群と 定 義し た .HIF‑1a発 現 と病 理 組織 学 的 因子 と の相 関iまX゜ test或いはFisher stestを用いて解析した.累積生存率は,KaplanーMeier法を用い,有意 差はlog―rank testで判定を行った,単変量及び多変量解析はCox proportional hazard model を用いた.全ての解析でPく0.05を有意差ありとした
結果
患 者 の 内 訳 は ,男 性113例, 女 性17例 で, 平 均 年齢 は63歳 で あっ た .81例(62u/o)が 比較的早期の病期であった.66例(51%)にりンバ節転移を認め,22例(17%)に遠隔リンバ 節 転移 を 認 めた . 手 術時 に 遠隔 他 臓 器転 移は認 めなかっ た,52例に 補助療法 を施行し て い る . 化 学 療 法 が12例 , 放 射 線 療 法 が18例 , 化 学 療 法 と 放 射 線 療 法 の 併 用 が22例 で あ る . 平 均follow up期間 は29カ 月 であ っ た .HIF‑la negativeは42例 ,1+は15例 ,2+
は33例 ,3+は30例 ,4+は10例 と3+以 上 のHIF‑1Q高 発 現 群 は40例 で あ っ た , 高 発 現 群 は , 病 理 組 織 学 的 病 期 が 進 行 す る に つ れ 頻 度 が 増 し た . 高 発 現 群 は , 腫 瘍 深 達 度 (P=0.0186),リ ンパ節転移(P=0.0035),遠隔転 移(P=0.0320),pTNM stage(P=0.0019),リ ン バ管 侵 襲(P=0.0492),切除 断端陽性(P=0.0156)と相関を 示した,5年 生存率は ,50.4% で あっ た ,HIF‑1aの高発 現群は低 発現群と 比較して有 意に予後 不良であ った(P=0.0007).
単変量解析では,深達度(Pく0.0001),遠隔転移(P=0.0002),1」ンバ節転移(Pく0.0001), リン バ管侵襲(P=0.0021),切除断端陽性(Pく0.0001),HIF‑1aの高発現(P=O.O011)が予後と 相関 した.多変 量解析では,深達度(P=0.0091),リンノヾ節転移(P=0.0003),切除断端陽性 (P=0.0375)が 独立し た予後規 定因子で あったが ,HIF‑1血の高発 現は独立 した予後 規定因 子 で な か っ た . 補 助療 法 を 受け た 患者 の う ちHIF‑1a高発 現 群 はHIF‑1aの 低発 現 群に 比 較して予後不良であった(P=0.0464).
考察
多くの固 形腫瘍は部 位により 低酸素環 境下にさ らされて いるが,血管新生がなければ,
血管から の酸素やグ ルコース を含めた栄養素の供給に制限があるため,腫瘍は数ITirri2以 上に 増 大す る こ とは で きな い とさ れている .一方, 癌細胞増 殖は血管新 生よりも 速いべ ース で 進む た め ,組 織 は一 段 と低 酸素環境 下にさら されるが 腫瘍はこれ らの状況 を乗越 えるため に低酸素環 境下に順 応しよう とする.
低酸 素 環 境に 順 応 する 上 で重 要 な 因子 と なるHIF‑1aの高 発 現は , 腫 瘍深 達 度 ,リ ン バ 節 転移 , 遠 隔転 移 ,pTNM stage, リン パ 管侵 襲 , 切除 断 端 陽性 と 相関 を 示 した . ま た ,HIF‑1Q高 発 現群 はHIF‑1aの 低 発現 群 に 比較 し て予 後 不 良で あ った . 一 般に 低 酸素 は抗 癌 剤の 薬 理 効果 を 抑制 し ,ま た腫瘍に 対する放 射線治療 の効果を阻 害するこ とが知 られ て いる . 実 際, 子 宮頸 癌 や頭 頚部癌に おいて, 処置前に 酸素レベル を測定す ること で放射線 感受性と放 射線治療 による予 後を予測 しうると 報告されており今回の検討でも,
補 助 療法 を 施 行し た 食道 扁 平 上皮 癌 患 者のHIF‑1a高 発 現 群はHIF‑1a低 発 現 群に 比 較し て予後不 良であった .
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結語
HIF
‐1a高発現はりンノヾ節転移のマーカーとなり,また有カな予後予測因子になり得る可 能性が示唆された.学位論文審査の要旨
Overexpression of hypoxia‑inducible‑factor l a (HIF‑1 a ) . . in oesophageal squamous cell carcinoma correlates with lymph node metastasis and pathologic stage
( 食道扁平上 皮癌における
hypoxia‑inducible‑factorlQ(HIF‑1n
)の 高 発現は,リ .ンパ節転 移の有無お よび病理学 的病期と相関する)食道癌は予後不良な癌である,外科手術を施行された患者の5年生存率は,
3
領域リンバ節廓清と化学療法や放射線療法の併用にも関わらず,未だ50%未 満である.hypoxia‑inducible‑factorla(HIF‑1a)は,腫瘍細胞が低酸素環境下に 順応する際に,中心的な役割を果たすことが知られている.申請者は食道扁平 上皮癌の予後,臨床病理学的因子とHIF‑1a
の関係を明らかにする事を目的と し,免疫組織学的手法を用いて検討した.対象は過去10年に,根治的食道切除術を施行した食道原発扁平上皮癌患者
130
例で あ る. 在 院死 症 例は 除 外し た .病 理組織学的 進行度はUICC
のTNM
分類を用いて評価した.抗HIFー1ば抗体を用い,HIF‑1a
の染色は,核或いは 細胞質が染色されている癌細胞数を計測し分類した.Negative;染色を認めな いもの,1十;1
%未満の細胞において核が染色されるもの,2+;1%以上10%未 満の核が染色される,或いは薄く細胞質が染色されるもの,3十;10%以上50% 未満の核が染色される,或いは明確に細胞質が染色されるもの,4十;50
%以上 の 核 が染 色 され る ,或 い は 濃く 細 胞質 が染 色されるも のとし測定 した.HIF‑1a3
十以上をHIF‑1a
高発現群と定義した.HIF‑1a
発現と病理組織学的因 子との相関はX2 test
或いはFisher stestを用いて解析した,累積生存率は,Kaplan
―Meier法を用い,有意差はlog
ーrank testで判定を行った.単変量及 び多変量解析はCox proportional hazard modelを用いた,全ての解析で,P敬俊 之 弘紘 木田 藤 吉 秋 加 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副
く0‑05を有意差ありとした
結 果 と し て
HIF‑la negative
は42
例 ,1
十 は15
例 ,2
十 は33
例 ,3+
は30
例,4+
は10
例 で あっ た .HIF‑1Q
高発現 群は40
例であ った,高発 現群は,病理組織学的病期が進行するにっれ頻度が増した.高発現群は,腫瘍深達度