博 士 ( 工 学 ) 小 笠 原 公 洋
学 位 論 文 題 名
2 点流入型配水管網における貯留施設の 運用と設計に関する基礎的研究
学位論文内容の要旨
水道 水の 基本 三要 素で あ る水 量、 水圧 、水 質の 安定 的、 且つ、安全な供給に対して根源 的 な役 割を 果た す貯 留施 設 を複 数配 備す る多 点流 入型 管網 の導入は、都市上水道の配水施 設 の運 用・ 設計 にお いて 重 要な 検討 項目 のー つで ある 。将 来にわたり増大する需要水量と そ の偏 在化 によ って 不確 定 に弓fき起こされる局所的な水 圧不足や貯留施設の容量不足とい っ た問 題に 対処 する 方策 と して 、一 つの 配水 区域 内に 複数 の貯留施設を設けて流入点にお け る供 給水量・水圧を調整する柔軟な運用方式が考えられ る。本論文では、二つの配水池を も つ2配 水池 系並 びに ーつ の配 水池 に高 架夕 ンク が付 加 され た高 架夕 ンク 系管 網の ニっを 対 象と して 、従 来の 単点 流 入型 管網 と比 較対 照さ せな がら 、ま ずは これ ら2点 流入 型管網 の 流況 を支配する水理的諸特性を明らかにし、 次いで配 水池・高架夕ンク等の貯留施設の 設 計 と 運 用 管 理 の 両 面 に 関 す る 指 針 を 提 示 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 論 文 は6章 で 構 成 さ れ て いる 。第1章 は序 論で あ り、 本研 究の 背景 と意 義、 目的 を述 べ て いる 。
第2章 では 、ま ず、 需要 水量 の時 刻的 変動 によ って 変 化す る貯 留施 設の 水位 、管 網内の 流 量と 水圧 の状 態を 解析 す る方 法と して 非定 常シ ミュ レー ション法を解説している。次い で 、管 網解 析の 基礎 式か ら 得ら れる2配水池系管網と高架 夕ンク系管網の定性的な性質と、
シ ミュ レーション実験から得られる水位・水圧・流量の値 を総合して、次のような水理的特 性 を明 らか にし てい る。 @2配 水池 系管 網で は、 送水 流 量の 配分 比率 が両 配水 池の 水位関 係 を決 定づ ける 。◎ 両配 水 池間 の水 位差 が配 水流 量に 影響 を及ぼし、高需要時は、両池の 配 水流 量の 差は 小さ いが 、 低需 要時 には その 差が 大き くな り、管網内の流況が大きく変わ る 。◎ 配水 池水 位を 上昇 ・ 下降 させ たと きの 節点 水圧 の増 減量は配水池の水位変化よりも 小 さく なる 。@2配水 池系 管網 は需 要水 量の 場所 的分 布 には 影響 され にく いも のの 、節点 水 圧を 増加 させ る上 では 有 効性 が低 い。 他方 、@ 高架 夕ン ク系管網では、外部から直接送 水 流量 がな く昼 夜の 需要 水 量の 変動 を利 用し て貯 留と 配水 が繰り返される。◎配水池と高 架 夕ン ク間 の水 位差 は、 夕 ンク にお ける 流出 ・流 入に よる 水位変化速度が配水池のそれよ り も大 きい こと によ って 生 じる 。◎ 高架 夕ン クの 増圧 効果 は、高架夕ンクにおける低需要 時 の貯 留分 が高 需要 時に 配 水さ れ、 配水 池か ら速 距離 輸送 される流量が減少することによ っ ても たら され る。 @夜 間 の低 需要 時で も、 管網 下流 部ほ ど損失水頭が大きくなり、高架 夕 ンク の最 高水 位は 相当 に 低く なる 。◎ 高架 夕ン ク系 管網 では、管網下流部の高架夕ンク ほ ど 小 容 量 か つ 低 所 に 設 置 す る こ と が で き 、 周 縁 部 の 水 圧 を 上 昇 さ せ る 効 果 が 高い 。 第3章 で は 、2配 水 池 系 管網 にお ける ニつ の配 水 池の 、高 架夕 ンク 系管 網に おけ る増 設
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夕ンクの必要容量並びに設置高さの算定方法について述べている。2配水池系管網では、
送水流量が両配水池の水位関係と必要容量を支配し、送水流量の大きい配水池の水位は高 く、必要容量が小さくなる一方で、送水流量の小さい配水池水位は低く、必要容量が大き くなる。採用すべき設置高さと必要容量は、配水流量比と表面積比を組み合わせた非定常 シミュレーション結果に基づいて、節点水圧と地勢的制約を満足するものの中から選ばれ る。他方、単点流入型管網に高架タンクを増設する場合は、タンクの設置場所と表面積に よって設置高さと必要容量が決まるので、その大きさは、設置場所と表面積を組み合わせ た非定常シミュレーション結果に基づぃて決定される。さらに、高架夕ンクの消火用水量 に対する予備容量の決定にあたっては、消火用水量が配水池とタンクに配分されることを 考慮すべきこと、また、小容量の高架夕ンクを複数分散配置することによって容量の大き い ー つ の タ ン ク と 同 等 以 上 の 増 圧 効 果 が 得 ら れ る こ と を 示 し た 。 第4章では、2点流入型配水管網の貯留施設の運用管理で必要となる状態推定方法を提 示している。まず、配水池水位と節点水圧を算出するためには、配水池回りの連続方程式 に加えて、管網内部の流況を規定している節点方程式に相当する関係式が不可欠であるこ とを指摘し、配水流量と節点水圧の推定式をもってこれに充てることを提案し、その原形 式と作成手順を示した。次いで、実測可能量である総配水流量と貯留施設間の水位差を低 位側配水流量あるいはタンク流量に結びっけてその推定式を、また、総配水流量と配貯留 施設間水位差を高位側配水池水位と当該節点間の損失水頭に結びっけて節点水圧の推定式 を得た。両式をA市の実際の2配水池系管網に適用し、管網内の需要水量が時刻的に一定 比率で変化することを前提として作成された推定式でも、ほぼ妥当な結果が得られること を確認した。一方、高架夕ンク系管網では、夜間と昼間の水位差が大きく異なり、需要水 量の大きさによって各推定式を使い分けるならば、実用上妥当な精度でタンク水位と節点 水圧を推定できる。
第5章では、第4章で提示した2点流入型管網の配水流量と節点水圧の推定式を用い、
将来時刻の総配水流量の予測値に基づいて配水池水位と節点水圧を適正に維持するための 送水流量調整法を提示している。総需要水量の予測値に誤差がないときは、シミュレーシ ヨン結果を真値とした場合と比較して、2配水池系管網では、配水流量の予測誤差は送水 流量を基準にして数%であり、配水池水位、節点水圧の予測誤差はたかだか数cm程度で あった。他方、高架夕ンク系管網では、節点水圧の予測誤差が2配水池系管網に比べて大 きくなるものの、実用上からは許容できる範囲にあった。なお、火災などでタンク表面積 が小さいために、突発的に低下した節点水圧を配水池の送水流量調整によって回復させる ことは難しいので、夕ンクに付随するバルブ操作でタンク流出量を制限してタンク水位を 高 く保 持し 、水 圧が 最低 とな る時 間帯 にバ ルブ を全開する運用で対処するとよい。
第6章は結論であり、本研究の成果を要約するとともに、今後の研究課題を挙げている。
以上のように本論文では、2点流入型配水管網の水理的諸特性を明らかにするとともに 管網内の状態推定式を提示し、これらを2配水池系管網と高架夕ンク系管網に適用して、
そ の 貯 留 施 設 の 設 計 指 針 と 運 用 方 策 に つ い て 有 用 な 知 見 を 得 て い る 。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 高桑哲男 副査 教授 渡辺義公 副査 教授 眞柄泰基 副査 教授 板倉忠興 副査 助教授 船水尚行
学 位 論 文 題 名
2 点流入型配水管網における貯留施設の 運用と設計に関する基礎的研究
都市上水道の水量・水圧管理に おいて、将来にわたり増大する需要水量とその偏在化 及び管路施設の老朽化によって引 き起こされる水圧不足や貯留施設の容量不足といった 問題に対処する方策のーっとして 、一つの配水区域内に複数の貯留施設を設けた多点流 入型管網とし、供給水量・供給水 圧を調整する柔軟な運用方式が考えられる。本論文で は、その水理的挙動に関して未解 明な点が多い多点流入型管網として、二っの配水池を もつ2配水 池系 並び にーつの配水池に高架タ ンクが付加された高架タンク系管網のニつ を取 り上 げ 、従 来の 単点流入型管網と比較対照しながら、まずはこれら2点流入型管網 の流況を支配する水理的諸特性を 明らかにし、次いで配水池・高架タンク等の貯留施設 の 設 計 と 運 用 管 理 の 両 面 に 関 す る 指 針 を 提 示 す る こ と を 目 的 と し て い る 。 論文は6章で構成されている。
第 1章 は 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 と 意 義 、 目 的 を 述 べ て い る 。 第2章で は、 まず 、需要水量の時刻的変動 とともに変化する貯留施設の水位、配水流 量と管網内の水圧状況を算出する ための非定常シミュレーション法を解説している。次 いで 、管 網 解析 の基 礎式から得られる2配水 池系管網と高架タンク系管網の定性的な性 質と、シミュレーション実験から 得られる水位・水圧・流量の値を総合して、次のよう な水 理的 特 性を 明ら かにした。@2配水池系 管網では、送水流量の配分比率が両配水池 の水位関係を決める。◎高需要時 は両池の配水流量比率がほぼ一定となる。他方、@高 架タンク系管網では、タンク設置 場所が配水池とタンクの水位関係を決める。◎管網下 流部にタンクを設置するほど、低 いタンク水位で高い水圧上昇効果が得られる。◎高需 要時には、タンク分担流量が大き く、配水流量とタンクの流量配分比率は一定にならな い。@夜間貯留時に配水池と高架 タンクの水位差を大きくしても、昼間配水される水量 は増加しない。また、@両系に共 通して、ニっの貯留施設問の水位差は、一日のうちで
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高需要時・低 需要時・需要急増期の三っについて異なった変化パター ンを示す。◎配水 池 また は高 架タ ンク水位が上昇したときの節点水 圧上昇量は、管網内損失水頭の1次変 化量で近似表 現できる。
第3章 では 、2配水 池系 管 網に おけ るニ つの配水池と、高架タンク系管網に おける増 設 タン クに つい て、その必要容量並びに設置高さ の算定方法を明らかにしている。2配 水池系管網で は、送水流量が両配水池の水位関係と必要容量を決める ので、採用すべき 設置高さと必 要容量は、送水流量比と表面積比を組み合わせた非定常 シミュレーション 結果に基づい て、許容節点水圧と地勢的制約を満足するものの中から 選ぱれる。他方、
単点流入型管 網に高架タンクを増設する場合は、タンクの設置場所と 表面積によって設 置高さと必要 容量が決まるので、その大きさは設置場所と表面積を組 み合わせた非定常 シミュレーシ ョン結果に基づいて決定される。管網下流部の高架タン クほど、小容量か つ 低所 に設 置す るこ とが で き、 周縁 部の 水圧を上昇させる効果が高いことを 示した。
第4章 では 、2点流 入型 配 水管 網の 貯留 施設の運用管理で必要となる状態推 定法を提 示している。 まず、配水池水位と節点水圧を算出するためには、配水 池周りの連続方程 式に加えて、 管網内部の流況を規定している節点方程式に相当する関 係式が不可欠であ ることを指摘 し、配水流量と節点水圧の推定式をもってこれに充てる ことを提案して、
その原形式と 作成手順を示した。次いで、予測可能な総配水流量と実 測で得られる貯留 施設の水位、 配水流量、節点水圧を結びっけて表現される配水流量と 節点水圧の推定式 をA市の2配 水池 系管 網に 適 用し 、そ の妥 当性を確認した。ー方、高架タンク 系管網で は、夜間と昼 間の水位差が大きく異なり、需要水量の大きさによって 各推定式を使い分 け るな らば 、実 用上 妥当 な 精度 でタ ンク 水位と節点水圧が推定できることを 示した。
第5章 では 、将来時 刻の総配水流量の予測値に基づぃて配水池水位と節点水 圧を適正 に維持するた めの運用方策を検討するときに採用すべきシミュレーシ ョン法を提案して い る。 この 方法 には、2点流入型管網の貯留施設で行われる送水流量調整、バ ルブ操作 といった制御 手段を組み込むことができるとともに、将来時点の貯留 施設の水位状況と 節 点水 圧を 推定 できる。2配水池系管網では配水池水位が低下した場合の送水 流量調整 例を、また、 高架タンク系管網では火災の発生で突発的に低下した節 点水圧を配水池の 送水流量調整 とタンクに付随するバルブ操作で回復させる運用例を取 り上げ、提案した シミュレーシ ョン法の有用性を確認している。
第6章 は結 諭で、本 研究の成果を要約するとともに、今後の研究課題を挙げ ている。
こ れを要するに、著者は2点流入型配水管網の水理的諸特性を明らかに するとともに 管網内の状態推定法を提示し、これらを2配水池系管網と高架タンク系管網に適用して、
その貯留施設の設計指針と運用方策にっいて有用な知見 を得ており、都市上水道工学に 貢献するところが大きい。
よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認める。
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