論文
中小企業税制における租税特別措置のあり方
井藤 哉
名古屋経済大学経営学部准教授Ⅰ はじめに
中小企業1は、わが国の雇用の大半を担っており、地域経済を支える基盤となっている。多種多様な中小企業が 存するが、その多くは財務基盤が脆弱であり、大企業との間には競争力に相当の格差があると考えられる。このよ うな現状を鑑みて、中小企業に対しては、大企業とは異なる税制上の特例措置により優遇されている。 現行の法人税法には、「中小企業税制」という概念はなく、また、実定法上も規定はないものの、上記の理由から 講じられている中小企業に対する税制上の特例措置を中小企業税制とみなすこともできよう2。 なかでも租税特別措置3は、「公平・中立・簡素」という租税原則の例外として、政策目的を実現するために措置 される制度である。適用対象者や業種・規模が限定され、また既得権益化されることにより税負担の公平性を損な っている。問題なのは、これが特定の産業や業種に偏り、しかも特定の企業に集中して特権的優遇税制になってお り、企業活動や業種に対し税制の中立性を阻害しているとの指摘4がある。また、近年では、適用要件が多様化し ており、簡素な税制とは言い難い。 本稿では、財務省の「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」(以下、「適用実態調査報告書」とい う)により公表されている資料を礎として、租税特別措置の利用状況等を明らかにするとともに、中小企業税制に おける租税特別措置のあり方について考察する5。Ⅱ 中小企業税制の概要
1 法人税法等の本則に基づく措置 現行の中小企業税制としては、法人税法等の本則に基づく措置と、租税特別措置法等に基づく措置が設けられて いる。法人税法等の本則に基づく措置として、⑴貸倒引当金(法人税法第52 条)、⑵欠損金の繰越控除(法人税法 第57 条)、⑶中小法人の軽減税率(法人税法第 66 条)、⑷特定同族会社の留保金課税の停止措置(法人税法第 67 条)、⑸欠損金の繰戻還付(法人税法第 80 条)、⑹法人事業税の税率(外形標準課税)等があげられる。その概要 は、以下のとおりである。 ⑴ 貸倒引当金 中小法人の場合には、貸倒引当金の損金算入について、繰入限度額まで損金算入が可能とされている。 ⑵ 欠損金の繰越控除 中小法人の場合には、欠損金の繰越控除について、所得金額の全額まで損金算入が可能とされている。 ⑶ 中小法人の軽減税率 法人税の基本税率は23.4%6であるが、資本金1 億円以下の中小法人の年 800 万円以下の所得について、19%の 軽減税率が定められている。 ⑷ 特定同族会社の留保金課税の停止措置 資本金1 億円以下の同族会社には、特定同族会社の留保金課税制度が不適用とされている。 ⑸ 欠損金の繰戻還付 欠損金がある場合に、前事業年度の所得に繰戻し、既に納めた法人税から欠損金の分だけ還付できる。 ⑹ 法人事業税の税率 資本金1 億円超の法人に適用されている法人事業税の外形標準課税について、中小法人には付加価値割及び資本 割は課税されず所得割のみ課税されている。2 租税特別措置法等に基づく措置 他方、租税特別措置法等に基づく措置として、⑴中小企業者等の法人税率の特例(租税特別措置法第42 条の 3 の2)、⑵中小企業投資促進税制(租税特別措置法第 42 条の 6)、⑶商業・サービス業・農林水産業活性化税制(租 税特別措置法第42 条の 12 の 3)、⑷、交際費等の損金算入の特例(租税特別措置法第 61 条の 4)、⑸中小企業等の 貸倒引当金の特例(租税特別措置法第57 条の 9)、⑹中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特 例(租税特別措置法第67 条の 5)、⑺経営力向上設備等に係る固定資産税の特例(地方税法附則第 15 条第 43 項) 等があげられる。その概要は、以下のとおりである。 ⑴ 中小企業者等の法人税率の特例 既述のとおり、軽減税率(19%)が定められているが、さらに、租税特別措置として時限的に 15%にまで税率が 引き下げられている。 ⑵ 中小企業投資促進税制 機械装置等を取得した場合に、特別償却又は税額控除を受けることができる。生産性向上の要件を満たす設備に ついては上乗せの優遇措置を受けることができる。 ⑶ 商業・サービス業・農林水産業活性化税制 商工会議所等の経営改善指導を受けて器具備品等を取得した場合に、特別償却又は税額控除ができる。 ⑷ 交際費等の損金算入の特例 大法人については、接待飲食費の50%相当額を超える交際費等の額が損金不算入とされているのに対し、中小法 人の場合には、同措置のほか、年800 万円の定額控除限度額が設けられている。 ⑸ 中小企業等の貸倒引当金の特例 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の繰入限度額の計算上、選択により実績繰入率に代えて法定繰入率を用いて 計算することができる。 ⑹ 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 30 万円未満の設備を取得した場合に、取得価額の全額を損金に算入することができる。 ⑺ 経営力向上設備等に係る固定資産税の特例 経営力向上設備等に該当する機械装置等を取得や製作等した場合に、固定資産税が3 年間にわたって 2 分の 1 に 軽減される。 以上が税制上の特例措置であるが、近年、租税特別措置については、適用実態調査報告書により適用件数、適用 額等が公表されている。そこで次節では、適用実態調査報告書を資料として、租税特別措置の利用状況等を明らか にするとともに分析検討したい7。
Ⅲ 適用実態調査報告書の分析
1 適用実態調査報告書の概要 租税特別措置に関し、適用の状況の透明化を図るとともに、適宜、適切な見直しを推進し、もって国民が納得で きる公平で透明性の高い税制の確立に寄与する目的から、いわゆる「租税特別措置の適用状況の透明化等に関する 法律」(以下、「租特透明化法」という)が制定された。 租特透明化法により、法人税の確定申告書を提出する際、租税特別措置のうち税額又は所得の金額を減少させる 規定等を適用する場合には、適用額明細書を提出する必要がある。その結果、適用実態調査報告書が会計年度ごと に作成され、翌年の通常国会に提出されることとなる。平成23 年度分から国会に提出されており、平成 28 年度ま で6 年分が財務省ホームページにて公表されている。 「適用実態調査報告書」では、「適用実態調査の結果の概要」と「適用実態調査の結果に関する報告」に大別でき る。その総説ともいえる「適用実態調査の結果の概要」は、「適用法人数等」、「資本金階級・所得階級別の適用件数 及び適用法人数」、「業種別の適用件数及び適用法人数」、「法人税関係特別措置の種類ごとの適用状況」及び「個別 措置の適用概況一覧」の5 つから構成されている。そして詳細まで触れている「適用実態調査の結果に関する報告」 は、「法人税関係特別措置の概要及び適用件数・適用法人数・適用総額(総括表)」、「業種別・資本金階級別適用件 数及び適用額」、「業種別・所得階級別適用件数及び適用額」及び「法人税関係特別措置別高額適用額」の4 つから 構成されている。 2 適用実態調査の結果の概要の分析 まず、「適用実態調査の結果の概要」から「資本金階級・所得階級別の適用件数及び適用法人数」を資料として、適用実態調査の開始から資本金階級別に適用法人数を示すと、図表1 のようである。 図表 1 資本金階級別の適用法人数 適用法人数 資本金階級 23 年度 24 年度 25 年度 26 年度 27 年度 28 年度 1,000 万円以下 728,952 761,001 812,538 879,589 914,609 962,937 3,000 万円以下 116,306 118,094 122,162 127,786 128,806 130,856 5,000 万円以下 41,828 42,453 43,962 45,538 46,344 46,968 1 億円以下 24,991 25,598 27,047 28,654 29,586 30,552 3 億円以下 2,474 2,433 2,808 3,679 3,587 3,475 5 億円以下 1,103 1,127 1,405 2,005 2,050 1,954 10 億円以下 798 826 978 1,189 1,205 1,177 100 億円以下 2,152 2,270 2,588 3,127 3,044 3,031 100 億円超 657 703 748 864 878 866 連結法人 456 586 764 912 1,009 1,081 合計 919,717 955,091 1,015,000 1,093,343 1,131,118 1,182,897 (出所)租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(2015~2018)より筆者作成。 適用実態調査の開始から、ほぼ全ての資本金階級で適用法人数は年々増加していることがわかる。では、適用割 合を知るための母数となる申告法人数は、どのように変化しているのであろうか。国税庁における「会社標本調査」 の調査結果から申告法人数を抽出し、一例として、安倍政権が税制改革を決定できる平成 25(2013)年度と平成 28(2016)年度を比較して示すと、図表 2 のようである。 図表 2 資本金階級別の適用割合 平成25(2013)年度 平成28(2016)年度 資本金階級 適用法人数 申告法人数 適用割合 適用法人数 申告法人数 適用割合 1,000 万円以下 812,538 2,210,388 36.8% 962,937 2,289,937 42.1% 5,000 万円以下 166,124 305,032 54.5% 177,824 298,956 59.5% 1 億円以下 27,047 47,485 57.0% 30,552 49,846 61.3% 5 億円以下 4,213 14,554 28.9% 5,429 13,046 41.6% 10 億円以下 978 1,797 54.4% 1,177 1,680 70.1% 10 億円超 3,336 5,084 65.6% 3,897 5,015 77.7% 連結法人 764 11,563 6.6% 1,081 13,553 8.0% 合計 1,015,000 2,595,903 39.1% 1,182,897 2,672,033 44.3% (出所)租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(2018 年)、 会社標本調査結果(2018 年)から筆者作成。 適用法人数でみると、すべての資本金階級において適用法人が増加しており、法人全体では、ここ4 年間で適用 割合が39.1%から 44.3%へと 5.2 ポイント上昇したことがわかる。申告法人数でみると、資本金階級が 1,000 万円 以下の法人の増加が際立っていることがわかる。適用割合でみると、平成25、28 年度ともに、資本金階級 10 億円 超の法人の適用割合が最も高い。一方、適用割合が低いものとして、連結法人を除くと資本金階級5 億円以下、次 いで1,000 万円以下となっている。理由としては、資本金階級 5 億円以下については、中堅企業8向けの租税特別 措置が効果的に講じられていないこと、資本金階級1,000 万円以下については、中小企業は赤字法人が多いことが 考えられる。 なお、会社標本調査では、資本金階級が3,000 万円、3 億円という区分は存在しないため、図表 1 と同様の区分 では分析できなかった。資本金3 億円以下という指標は、中小企業基本法で使用されているため、会社標本調査に おいても区分してよいのではないだろうか。 次に、「法人税関係特別措置の種類ごとの適用状況」を資料として、適用実態調査の開始から法人税関係特別措置
の主な種類ごとの適用状況を示すと、図表3 のようである。 図表 3 法人税関係特別措置の主な種類ごとの適用状況 種類 法人税率の特例 税額控除 特別償却 準備金等 23 年度 措置数 2 13 31 13 適用件数 677,767 35,364 28,491 11,585 適用額 24,028 億円 3,577 億円 4,244 億円 13,465 億円 24 年度 措置数 2 16 33 13 適用件数 704,725 40,177 32,790 11,481 適用額 25,573 億円 4,203 億円 5,167 億円 9,100 億円 25 年度 措置数 2 16 27 13 適用件数 744,720 56,575 44,391 11,099 適用額 27,678 億円 7,152 億円 9,948 億円 8,499 億円 26 年度 措置数 2 18 28 15 適用件数 793,567 138,616 66,993 10,909 適用額 29,841 億円 10,751 億円 18,576 億円 12,177 億円 27 年度 措置数 2 16 28 15 適用件数 843,511 154,086 73,463 11,790 適用額 32,272 億円 10,563 億円 23,619 億円 9,428 億円 28 年度 措置数 2 16 26 15 適用件数 888,808 162,268 68,087 12,773 適用額 34,412 億円 10,481 億円 17,869 億円 8,212 億円 (出所)租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(2015~2018 年)より筆者作成。 適用実態調査の開始から、措置数はそれほど増減がないものの適用件数、適用額が大幅に増えていることがわか る。ただ、適用額の内容は、法人税関係特別措置の種類によってそれぞれ異なる。例えば、法人税率の特例につい ては対象となる所得金額、税額控除については税額控除額、特別償却については特別償却限度額等、準備金につい ては積立額のうち損金算入額を示している。詳細は、後述する「業種別・資本金階級別適用件数及び適用額」を資 料に分析したい。 次に、「個別措置の適用概況一覧」を資料としたい。適用件数の少ない措置を見てみると、平成28 年度までの直 近3 年間にわたり適用件数が各年 3 件以内の措置は 26 件存在し、うち、3 年間適用ゼロの措置は 9 件である。ま た、個別措置ごとに高額適用額上位10 社の適用額や適用割合も公表されており、平成 28 年度までの直近 3 年間の うち、単年度でも高額適用上位10 社の適用割合が 80%を超えた措置は 28 件存在し、うち、99%を超えた措置は 7 件である。 3 適用実態調査の結果に関する報告の分析 次に、「適用実態調査の結果に関する報告」のうち、「業種別・資本金階級別適用件数及び適用額」では、措置を ①「法人税率の特例」、②「税額控除」、③「特別償却」、④「準備金等」、⑤「土地税制」及び⑥「その他の特別措 置」の6 種類に区分し、個別措置ごとに業種別・資本金階級別に適用件数及び適用額を公表している。具体的には、 「法人税率の特例」は、「中小企業者等の法人税率の特例」(Ⅱ2⑴参照)と「特定の医療法人の法人税率の特例」 からなる措置数2 である(図表 3 参照)。 そこで、中小企業に馴染みのある措置として、「準備金等」から⑦「中小企業等の貸倒引当金の特例 9」(Ⅱ2⑸ 参照)と、「その他の特別措置」から⑧「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例10」(Ⅱ2 ⑹参照)を抽出し、8 種類に細分化したうえで、適用件数、適用額を企業規模別に分類集計して分析した。 企業規模別区分は、資本階級別区分とし、①資本金1,000 万円以下、②3,000 万円以下、③5,000 万円以下、④1 億円以下、⑤3 億円以下、⑥5 億円以下、⑦10 億円以下、⑧100 億円以下、⑨100 億円超の 9 区分に分類集計した。 これら個別措置による適用額に適用法人税率を乗じて「減税相当額」に換算して試算した。減税相当額への換算 は、租税特別措置の種類ごとに次のようにして換算した11。
① 軽減税率が適用される「法人税率の特例」には、法人税法上の19%と租税特別措置法の特例税率 15%との 差である4%を乗じて「減税相当額」に換算した。 ② 試験研究費その他の「税額控除」は、適用額を「減税相当額」とした。 ③ 上記以外の「特別償却」、「準備金等」、「土地税制」、「その他の特別措置」、「貸倒引当金の特例」及び「少額 減価償却資産」の6 種類の適用額については、それぞれの適用額に平成 28 年度における普通法人税率 23.4% を乗じて「減税相当額」に換算した。 これら個別措置による適用額を「減税相当額」に換算して試算した結果を明らかにし、その適用実態を分析検討 した。平成28 年度分の単体・連結法人の合計を、租税特別措置の種類別による資本金階級別の適用状況を図示す ると、図表4 のようである。 図表 4 租税特別措置の種類別による資本金階級別の適用状況 No 租税特別措置の種類 換算税率 (%) 1,000 万円以下 適用件数 適用額(千円) 減税相当額(千円) ① 法人税率の特例 4.0 725,976 2,475,121,599 99,004,864 ② 税額控除 - 100,462 60,343,192 60,343,192 ③ 特別償却 23.4 36,421 608,166,612 142,310,987 ④ 準備金等 23.4 2,987 21,747,126 5,088,827 ⑤ 土地税制 23.4 2,360 143,748,456 33,637,139 ⑥ その他の特別措置 23.4 149,703 197,343,192 46,178,307 ⑦ 貸倒引当金の特例 23.4 3,894 7,264,593 1,699,915 ⑧ 少額減価償却資産 23.4 402,243 195,089,686 45,650,987 合計 1,424,046 3,708,824,456 433,914,218 No 3,000 万円以下 5,000 万円以下 適用件数 適用額 減税相当額 適用件数 適用額 減税相当額 ① 100,879 563,584,982 22,543,399 36,442 225,744,000 9,029,760 ② 29,784 43,985,064 43,985,064 10,387 34,145,986 34,145,986 ③ 16,166 377,998,935 88,451,751 8,522 261,327,251 61,150,577 ④ 317 3,681,445 861,458 108 1,707,514 399,558 ⑤ 758 54,076,466 12,653,893 434 43,720,751 10,230,656 ⑥ 23,000 30,190,115 7,064,487 7,332 9,539,612 2,232,269 ⑦ 1,359 1,985,287 464,557 730 710,650 166,292 ⑧ 66,667 49,095,351 11,488,312 2,720 23,558,841 5,512,769 合計 238,930 1,124,597,645 187,512,921 88,655 600,454,605 122,867,867 No 1 億円以下 3 億円以下 適用件数 適用額 減税相当額 適用件数 適用額 減税相当額 ① 23,368 160,982,902 6,439,316 758 5,006,497 200,260 ② 10,501 71,178,994 71,178,994 2,707 23,442,195 23,442,195 ③ 6,324 327,834,215 76,713,206 276 20,586,531 4,817,248 ④ 94 1,704,155 398,772 38 634,978 148,585 ⑤ 423 72,641,107 16,998,019 102 18,029,410 4,218,882 ⑥ 4,054 186,987,681 43,755,117 538 22,057,439 5,161,441 ⑦ 820 1,761,212 412,124 770 8,924,946 2,088,437 ⑧ 15,334 18,708,864 4,377,874 328 248,290 58,100 合計 60,918 841,799,130 220,273,423 5,517 98,930,286 40,135,148
No 5 億円以下 10 億円以下 適用件数 適用額 減税相当額 適用件数 適用額 減税相当額 ① 222 1,604,908 64,196 336 2,575,841 103,034 ② 2,118 28,697,276 28,697,276 1,112 19,285,371 19,285,371 ③ 148 13,280,772 3,107,701 50 5,004,043 1,170,946 ④ 15 354,507 82,955 20 1,104,914 258,550 ⑤ 66 11,587,536 2,711,483 39 6,690,134 1,565,491 ⑥ 313 37,673,294 8,815,551 220 13,187,891 3,085,966 ⑦ 243 8,039,142 1,881,159 361 39,257,321 9,186,213 ⑧ 100 107,466 25,147 138 195,021 45,635 合計 3,225 101,344,901 45,385,468 2,276 87,300,536 34,701,206 No 100 億円以下 100 億円超 適用件数 適用額 減税相当額 適用件数 適用額 減税相当額 ① 751 5,844,059 233,762 96 762,899 30,516 ② 3,636 126,332,743 126,332,743 1,561 640,719,053 640,719,053 ③ 91 21,686,231 5,074,578 89 151,033,794 35,341,908 ④ 47 11,439,344 2,676,806 92 317,641,443 74,328,098 ⑤ 221 126,073,918 29,501,297 297 382,920,893 89,603,489 ⑥ 844 252,242,666 59,024,784 688 849,984,053 198,896,268 ⑦ 773 220,683,592 51,639,961 105 172,534,429 40,373,056 ⑧ 323 619,708 145,012 32 45,505 10,648 合計 6,686 764,922,261 274,628,943 2,960 2,515,642,069 1,079,303,036 No 租税特別措置の種類 換算税率 (%) 合計 適用件数 適用額(千円) 減税相当額(千円) ① 法人税率の特例 4.0 888,808 3,441,227,692 137,649,108 ② 税額控除 - 162,268 1,048,129,936 1,048,129,936 ③ 特別償却 23.4 68,087 1,786,918,434 418,138,914 ④ 準備金等 23.4 3,718 360,015,441 84,243,613 ⑤ 土地税制 23.4 4,700 859,488,707 201,120,357 ⑥ その他の特別措置 23.4 186,692 1,599,205,975 374,214,198 ⑦ 貸倒引当金の特例 23.4 9,055 461,161,177 107,911,715 ⑧ 少額減価償却資産 23.4 509,885 287,668,736 67,314,484 合計 1,833,213 9,843,816,098 2,438,722,326 (出所)租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(2018 年)より筆者作成。 また、図表4 から資本金階級別の租税特別措置適用による減税相当額の利用実態をグラフ化してまとめると、図 表5 のようである。 試算によれば、平成28 年度の租税特別措置適用による減税相当総額は 2 兆 4,387 億円にのぼる。これは、法人 税収10 兆 3,289 億円のおよそ 2 割に相当する。また、資本金 10 億円超の法人の 8 割弱が何らかの租税特別措置を 適用し、減税相当総額の半分以上を占めている12。全体では、減税相当総額の約43.0%が②税額控除であるものの、 資本金階級1,000 万円以下の法人に限れば、減税相当額のうち、①法人税率の特例と③特別償却で半分以上を占め ることとなる。 最後に、「法人税関係特別措置別高額適用額」を資料としたい。特定の企業等に適用が偏ることへの批判もあると ころから、個別措置ごとに高額適用額上位 10 社の適用額が公表されている。しかし、上位適用社は法人コード番 号による「匿名」で具体的な法人名は直ちに確認はできない。個別措置ごとの適用額を法人コード番号別に集計す ることで高額適用法人を推察できるにとどまる。このことは、租特透明化法の立法趣旨に反するのではないかとの
指摘13もあるところである。 図表 5 資本金階級別の租税特別措置適用による減税相当額の利用実態 資本金 階級 1,000 万円 以下 3,000 万円 以下 5,000 万円 以下 1 億円 以下 3 億円 以下 5 億円 以下 10 億円 以下 100 億円 以下 100 億円 超 合計 減税 相当額 (億円) 4,339 1,875 1,228 2,202 401 453 347 2,746 10,793 24,387 (出所)租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書(2018 年)より筆者作成。
Ⅳ おわりに
近年の中小企業税制における租税特別措置の内容については、中小企業投資促進税制(Ⅱ2⑵参照)、商業・サー ビス業・農林水産業活性化税制(Ⅱ2⑶参照)に代表されるように、攻めの姿勢を後押しする支援に重点が置かれ ていると思われる。また、これらについては、改組されながらも適用期限が延長されており、実質的な延長に等し い。確かに、資金不足のために必要な設備投資が困難な中小企業が多い現状に鑑みると、企業の競争力の強化に資 する設備投資については、投下資本の早期回収を支援するための特別償却等の措置が必要との考え方14もある。実 際、特別償却の減税相当総額のうち、34.0%は資本金 1,000 万円以下の法人が占めている(図表 4 参照)。 他方、そもそも中小企業は赤字法人が多く、税制上の特例措置が設備投資のインセンティブとなりにくい側面も あるため、補助金制度等を含む多方面的な観点からの施策を検討しながら、あくまでも特例的に許容され、適用期 限通りに廃止されるべきとの考え方15もある。 いずれにせよ、中小企業に対する特例措置といえども、租税原則の例外であることに変わりはないため、適用期 限が到来すれば、政策目的は達成できたのか、税収減を是認するだけの効果があったのか、慢性化による効果の逓 減は見られたのか等、より厳格に検証すべきであろう。そのためにも、経営力向上設備等に係る固定資産税の特例 (Ⅱ2⑺参照)等、租特透明化法の対象外の措置も存在することから、少なくとも法人税関係については特例措置 の全体を把握できるよう改善が必要であろう。 参考文献 坂本雅士「税制改正大綱を評価する」『税研』193 号(2017 年) 土居丈朗「中堅企業支援税制の展望」『税研』166 号(2012 年) 富岡幸雄「租税特別措置による優遇税制の検証(上)」『税務弘報』10 月号(2015 年) 富岡幸雄「租税特別措置による優遇税制の検証(下)」『税務弘報』11 月号(2015 年) 成宮哲也「中小法人の定義及び範囲」『税務会計研究』第28 号(2017 年) 日本税理士会連合会税制審議会「中小法人の範囲と税制のあり方について-平成 27 年度諮問に対する答申-」 (2016 年) 国税庁 HP「国税庁統計情報」 https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/tokei.htm (億円)財務省 HP「租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書」 https://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/stm_report/index.htm 注 1 一般に、企業規模(資本要件としての資本金、人的要件としての常時雇用従業員)の小さな企業が中小企業とい われ(中小企業基本法第 2 条)、中小企業の用語は大企業との対比で使われる。本稿では、中小企業と中小法人 を同一のものとして扱っている。 2 日本税理士会連合会税制審議会「中小法人の範囲と税制のあり方について-平成 27 年度諮問に対する答申-」 (2016 年)1 頁参照。これは、中小企業税制を個々の中小企業向け特例措置を束ねたものとするアプローチとい える。一方で、統一的に定義された中小企業向け特例措置をパッケージとして捉えるアプローチも考えられ得る が、現在の中小企業向け特例措置は、前者のアプローチによるものであると考えるほうが適当であると思われる (成宮哲也「中小法人の定義及び範囲」『税務会計研究』第28 号(2017 年)12 頁参照)。 3 租税特別措置とは、特定の政策目標のため、一定の要件を満たした企業などを対象に税金を減らしたり免除した りする特別な制度をいう。投資を促すための研究開発税制、中小企業に限定して優遇する中小企業投資促進税制 のほか、特定の地域に適用する特区税制も租税特別措置にあたる。2015 年度に法人に適用された租特は 83 項目 174 万件。113 万法人が利用した。中小企業で活用する例が多い。2~3 年など期限を区切った措置として施行さ れ、必要に応じて延長、拡充されてきた(2017 年 12 月 6 日付日本経済新聞参照)。 4 富岡幸雄「租税特別措置による優遇税制の検証(下)」『税務弘報』11 月号(2015 年)51 頁参照。 5 本稿は、井藤哉「租税特別措置に係る適用実態調査及び政策評価の点検結果の考察」中小企業会計学会第 6 回全 国大会の自由論題報告の内容に加筆修正を行い、とりまとめたものである。 6 平成 30 年 4 月 1 日以後開始事業年度については、23.2%となる。 7 恒常的である法人税法等の本則に基づく措置については、井藤哉「中小企業税制のあり方について」『経済経営 論集』第25 巻第 1 号(2017 年)を参照されたし。 8 中堅企業は、わが国の法令では明確には定義されたものは存在しない。一般には、資本金が 1 億円を超え 10 億 円以下の企業が該当するとされる(土居丈朗「中堅企業支援税制の展望」『税研』166 号(2012 年)62 頁参照)。 9 中小企業等の貸倒引当金の特例は、適用総数の 0.5%、適用総額の 4.7%であった。 10 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例は、適用総数の 27.8%、適用総額の 2.9%であっ た。 11 富岡幸雄「租税特別措置による優遇税制の検証(上)」『税務弘報』10 月号(2015 年)108 頁参照。 12 日本の上場企業の税負担が軽くなっている。企業が世界で支払った税金が税引き前利益に占める比率を示す「税 負担率」が、2017 年度は 24.9%と 2008 年のリーマン・ショック以降で最低だった。日本経済新聞が負担率を継 続比較できる金融除く上場企業約3,500 社を対象に集計したところ、2017 年度の税負担率(加重平均)は 5 年 前から約19 ポイント下がった。税引き前利益は 53 兆円弱と 2016 年度より 18%増えた一方で、税負担は 13 兆 円強と1%減った(2018 年 7 月 19 日付日本経済新聞参照)。 13 富岡・前掲(注 4)57 頁参照。 14 日本税理士会連合会・前掲(注 2)8~9 頁参照。 15 坂本雅士「税制改正大綱を評価する」『税研』193 号(2017 年)63 頁参照。