57 原 著 〔東女医大誌 第63巻 第3号頁277∼285平成5年3月〕
肝硬変症における胃潰瘍発症の成因に関する臨床病理学的検討
東京女子医科大学 消化器内科学教室(主任:小幡 裕教授) チ バ モト コ千 葉 素 子
(受付 平成4年11月20日) Tlle Study of tlle Clinical Pathology of Gasthc Ulcer in Ljver Cirrhosis Motoko CHIBA Department of Medicine, Inst量tute of Gastroenterology, Tokyo Women,s Medical College The high incidence of gastric mucosal changes in liver cirrhosis(LC)is well known. Gastric ulcers (GU)in LC not infrequently cause upper gastrointestlnal bleeding. Gastric mucosal blood flow and gastric mucosal hexosamine levels, as mucosal defensive factors, and serum pepsinogen 1(PG1)levels, as an aggressive factor, were examined to investigate causation factors. In LC with atrophic gastritis(LC−AG)group, CHILD B and C liver dysfunction were more frequently seen than CHILD A, and the incidence of gastric ulcer located in the angular and antral portion was quite high. Mucosal hexosamine levels in the LC・GU group were significantly lower than in the L,C・AG group(p<0.01).02 saturation in the blood flow in the antral and body portions in cases in the LC・GU group was significantly lower than in the LC−AG group(p<0.05). The serum PGI levels of the LC・GU group were sign孟ficantly higher than in the LGAG group(pく0.01). This s亡udy suggests that deteriorat三〇n of defensive factors w量th relatively increased aggressive factors in the gastric mucosal barrier contribute to gastric ulcer formation in liver cirrhosis. 緒 言 肝硬変症に胃粘膜病変の多いことは古くより知 られている,現在では,消化性潰瘍は肝硬変症に おける上部消化管出血の原因として,重要な病変 とされている.しかし,肝硬変症における潰瘍発 症の機序に関しては,未だ不明な点が多く残され ている.著者はこの発症の成因を明らかにする目 的で胃潰瘍合併肝硬変症について肝予備能,食道 静脈瘤の程度,併存した潰瘍の部位,個数につい て検索した.その結果について,胃粘膜防御因子 の胃粘膜血流および粘膜ヘキソサミン,攻撃因子 として胃液分泌能を反映するとされている血清ペ プシノーゲソの測定を行い,この双方より検討を 行ったので報告する. 対象および方法 1.胃潰瘍合併肝硬変(以下LC・GU群)につい ての検討 対象は1985年より1992年6,月まで当科で外来経 過観察中溶よび入院中であった症例で,血液・生 化学検査,画像診断,腹腔鏡・肝生検で肝硬変と 診断され,かつ上部消化管内視鏡検査で消化性潰 瘍と診断された98例である.平均年齢は60.4歳, 男女比は4.16:1であった.肝予備能については, CHILD分類の臨床病期より. 沒「した.消化性潰 瘍はその発生部位,時相,個数について検討した. 2.肝硬変症(以下LC群)の内視鏡的胃粘膜萎 縮境界の検討 対象は1990年より1992年まで当科で上部消化管 内視鏡検査を施行された肝硬変症例のうち,胃の萎縮性変化のみを認める群(以下LC−AG群)95例 である.木村・竹本ら1》の分類による内視鏡的胃粘 膜萎縮境界により,各年代別に萎縮の程度を検討 し,control群における頻度と比較した. control 群は内視鏡検査で胃に萎縮性の変化(atrophic gastritis)のみを認める胃炎群(以下AG群)313 例とした.また,統計学的処理はκ2検定を行い, 危険率1%以下を有意とした. 3.胃粘膜内ヘキソサミンの検討 対象はLC・AG群18例, LC−GU群は1.の対象 98例中6例を含む7例でcontrol群は内視鏡で経 過観察されている慢性胃潰瘍(以下GU群)8例, AG群10例である.平均年齢はLC−AG群61.6歳, LC−GU群59.3歳, GU群50.9歳, AG群62.0歳で あった.それぞれの胃の萎縮の程度として萎縮境 界をみると,LC・AG群で萎縮の軽度のもの5例, 中等度以上のもの10例,同様にLC−GU群では軽 度のもの3例,中等度以上4例,GU群では2例, 4例,AG群では1例,8丁目あり, LC−GU群の 萎縮の程度は絶群と差を認めなかった.患者の同 意を得た上で,内視鏡直視下田生検により,前庭 部小半,胃体下部小雪の2ヵ所で胃粘膜を採取し た.胃粘膜組織中のヘキソサミンの定量はNeu・ hausらの方法を応用した桶谷らの方法で測定し た.胃粘膜中のヘキソサミン量は生検組織の乾繰 重量1mg当りの量で表した. 4.胃粘膜血流の検討 対象は肝癌合併例を含むLGAG群25例, LC− GU群は1.の対象98例中の22例である.平均年齢 はLC−AG群61.1歳, LC−GU群61.7歳であった. それぞれの萎縮境界はLC−AG群では萎縮の軽度 のもの8例,中等度以上のもの17例,LC−GU群で は軽度のもの6例,中等度以上のもの16例であり, LC−GU群での萎縮の程度はLC・AG群と比較し, 差を認めなかった.測定は早朝空腹時,内視鏡検 査下に行い,測定部位は胃前庭部大子および小円, 胃体中部大攣および小轡の計4点とした.胃粘膜 血流の測定装置は住友電工社製の組織反射スペク トル解析装置TS・200を用い,胃粘膜血液量の指標 であるIHB,粘膜内血液ヘモグロビン酸素飽和度 ISO2を測定した. LC−GU群は肝予備能および食 道静脈瘤の程度により分類し,LC−AG群との比較 検討を行った.肝予備能はCHILD分類により分 類し,食道静脈瘤は食道胃静脈瘤内視鏡所見記載 基準(199!)に従って形態Fにより分類した. 5.胃粘膜の攻撃因子の検討 対象はLC−AG群17例, LC・GU群は1.の対象 98例中12例を含む16例であり,control群は同年 齢層のAG群73例, GU群34例である.平均年齢は LC・AG群64.9歳, LC−GU群64.1歳, AG群57.8 歳,GU群58.1歳であった.それぞれの胃の萎縮境 界はLC・AG群では萎縮の軽度のものは6例,萎 縮の中等度以上のものは11例,LC・GU群では萎縮 の少ないものは8例,萎縮の中等度以上のものは 7例,AG群では28例,45例, GU群では15例,17 例であり,LC−GU群とGU群に比較し, LC−AG 群,AG群では萎縮が中等度以上のものが多く認 められた. 攻撃因子として胃液分泌能と相関が高いとされ ている2)血清ペプシノーゲン1(以下PG1)につい て,RIA BEAD法を用いて測定した. なお,上記項目3,4,5に関する統計学的処 理はF検定で母分散に有意差がないことを確認 後,student’一t検定を用いて行い,危険率5%以下 を有意とした. 結 果 1.LC・GU群についての検討(Table 1−2b, Fig,1) 1)LC・GU群の統計的成績(Table 1) LC・GU群98例の肝予備能をみると臨床病期で は,病期IIが39例(39.8%)と最も多く,次いで 病期IIIが31例(31.6%)と多かった. CHILD分類 では,Bが34.7%と多く,Cは27.6%,Aは16.3% であった.成因についてみると,ウイルス性のう ちC型肝炎ウイルスによるものが43.9%,非B非 C型によるもの16.3%,B型によるもの7.1%,ア ルコール性8.2%であった.静脈瘤の形態(F)で は,F1が56,0%と最も多く,次いでF2が35.2%と 多く認めた.胃潰瘍のstage別では活動期潰瘍が 20例(20.4%),治癒期27例(27.6%),潰瘍搬痕 51例(52.0%)であった.潰瘍の病巣数では,1 個のもの71例(72.4%),2∼3個のもの21例
Table l Cases of liver cirrhosis with gastric ulcers (n=98) Mean age 60.4y.o. M:F=4.16:1 Etiology of LC Viral B C NBNC Alcoholic Autoimmune Unkown 7(7.1%) 43(43.9%) 16(16.3%) 8(8.2%) 1(1.0%) 23(23.5%) CHILD’s classi丘cation A B C Unknown Clinical stage I II III Unknown 16(16.3%) 34(34.7%) 27(27,6%) 21(21.4%) 7(7.1%) 39(39,8%) 31(31.6%) 21(21.4%) Esophageal varices Form R・C F1 51(56.0%) F1−2 4( 4.4%) F2 32(35.2%) F3 4(4.4%) (十) 32(33.0%) (一) 65(67.0%) Gastric ulcers Stage Active 20(2G.4%) Healing 27(27.6%) Healed 51(52,0%) Number of u亘cers 1 71(72.4%) 2∼3 21(21.4%) 4∼ 6(6.1%) (21.4%),4個以上6例(6.1%)であった. 2)LC・GU群の消化性潰瘍の発生部位(Fig.1, Table 2a, b) 潰瘍の発生部位(Fig.1, Table 2a)では,胃 角部に49.2%と最も多く,次いで前庭部に23.4% Table 2 Location of the ulcers in LC−GU group (n=98,128focuses) a Location No. of focuses Antrum `ngular region kower and middle body tpper body and cardiac region 30(23.4%) U3(49.2%) Q0(15.6%) P5(11.7%) Tota1 128(100%) b Location No, of focuses Lesser curvature `nterior wall oosterior wall freater curvature 87(68.0%) P6(12.5%) P9(14.8%) U(4.7%) Total 128(100%) と胃角から前庭部で全体の72.6%を占めていた. 体下部より体上部にかけての部位および噴門部で は少なかった.また,発生部位を小攣,大町,前 壁,後壁に分けて検討すると(Table 2b),小働こ 68.0%と多く発生していた. 2.内視鏡的萎縮境界の比較(Fig.2,3) control群における年代順の萎縮型の頻度では 1 1 1 1 Body 1 l llP陀pyl。rお I Antrum l Angulus lI Lower ll Middle 1 Upper l Cardia 1 1 Anterbr wa腫 △ oo △ o
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△OO
I O △ △ Q O o 1 噛 一 一 一 一 幽 1 △ △△ 「△ 「△oo
盾 △△△ oo 「△△ OO 「△△ oo △△ oo △ O △△ O o Lesserbロrvature △△ △△△ oo △ o △△ △△△ oo o △△ △△△ oo △ △△ △△△ oo o △△ △△△ oo△△△ oo Q △△△ oO 一 一 一 △oo
△△ o △ △ △ o O △△ o △ O o Posterior △ △ wa臆 △ 嚇 一 ω ■ 冒 一冒 _ _ _ 冒 一 一 冒 一 胃 r 一 冒 ” 冒 冒 一 , 罷 一 璽OO
△ O Greater ○ curvature 一 一 一 一 一 一 一 一 璽 一 層 一 一 一 r 一 , 一 〔:::::器「} Fig.1 Location and form of the ulcers in LC−GU group(n=98,128 focuses)o・1〔o.5%} 20∼29years(n=22) M:F=2:9 (Av. 25.7y.o.) C−1,2 (95.5%) Hexosamine μ91m1 80 30∼39years(n=31) M;F=14:17 (Av. 35.Oy.o.) C・寓2 (645%) C−3 (258%) 0・1 〔9翻 40∼49years(n冒41) 解=F寵22:19 (A》.44.9y.o.) C・で,2 i48β%) C・3 i34.1%) O・1 i122%) 8=lil:繍 50【げ59yea陪(n=80) M:F=39=41 (Av.55.2y.o、) C−1,2 (425%) C−3 (}63%) o・毛 (皿5%) 0・2 (ロ5%} 0・3〔1ユ%} Or4〔22%} 60 40 20 0 60∼69years(n=92) M:F器5,=4甚 (A》.64.5y,o.) C・1,2 (304%〉 C−3 (174%) o・1 〔1ヨD%} 0・2 {272%} O・3 {嘱1 7〔レ)79years(n=47) M:F記23:24 (A》.74.Oy.o.) C・1,2 (τ49%) C−3 128%) 0−1 (213%) 0−2 (2ア7%) O・3 〔213%) 04〔2」%〕 (鴇。。認贈£猫離。鴛r}鴇ぎ芋t“。1。9ソ・) Fig.2 Endoscopic atrophic border in control 9「oup C:closed type,0:.open type。 4〔卜}49years(n=10) M:F=3:2 (Av,45.1y.o・) C。1,2 (90%) 0・1 〔10%) 5〔ンー》59years(n=28) M=F=17=耗 (Av,55.3y.o.) C・1,2 (536%) C−3 {143%} o・1 (レ2 (IO了%)(214%) 60∼69years(n冨41) M:F=22=19 (A》.63.5y.o.) C・1,2 i46.3%) Cg3 i17.1%) ◎・1 o9鯛 0.2 i145%1 0−3 O・ 0−3〔7.3%) 0・4〔49%〕 ㎞門 SD ホ
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n=18 Fig.4 AG, GU, LC−AG and LC−GU group 70∼79years(n=16) M:F=5:3 (Av.72.6y,o.) C−1,2 (688%) C−3 〔125%} 0−1 (188%) (鴇。。鐸憶欝濤謝繍門出洋々雛3) Fig.3 Endoscopic atrophic border in LC−AG 9「oup C:closed type,0:0pen type. (Fig.2),萎縮の少ない。−1, c−2の割合は,30∼39 歳では64.5%であるが40∼49歳では48.8%と減少 していた.また,LC−AG群における萎縮型をみる と(Fig.3),萎縮の少ないC−1, G2の割合は 40∼49歳では90%,50∼59歳では53.6%とcon− trol群の同年代と比較し軽度なものが多かった. 次にcontrol群(最低40歳,最高70歳)において 年代別に萎縮型の頻度を比較したところ,萎縮の n二8 コ ド むドお n=1。 @ *銘芝1::l AG GU LC・AG UンGU AG GU LC・AG L㏄U 32.26 3434 32.97 22,31 31.㏄ 33.Ol 39.2 19.23 駄81 1生儲 11.95 11.19 、 12.24 1253 23.99 10、02 Antrum Body Gastric mucosal hexosamine content in 軽いものの割合は高年代群ほど減少しており,統 計学的に有意(p<0.01)であった.また,LC−AG 群(最低40歳,最高70歳)において年代別に萎縮 型の頻度を比較すると,同様に萎縮の少ない型の 割合は年代別に減少してお「り,統計学的に有意 (p〈0.01)であった.また,control群とLGAG群で萎縮型の頻度を比較すると,50∼59歳と
70∼79歳においてLC−AG群ではcontrol群に比 べ,萎縮の軽度のものの割合が多く認められ,有 意(p〈0.01)であった. 3.正C−GU群における胃粘膜内ヘキソサミン の検討(Fig.4) 胃粘膜ヘキソサミソ濃度(μg/ml)は胃体下部小 攣でLC−GU群では19.23±10.02で, LC−AG群 39.2±23.99,GU群33.01±12.53, AG群31.83± 12.24に比較し,有意なヘキソサミンの低値を認 め,前庭部小攣ではしC−GU群は22.31±11.19で あり,LC−AG群32.97±11.95, GU群34.34± 14.04,AG群32.26±9.81に比較し低翼の傾向で あった. 4.L、C・GU群とL、C・AG群における粘膜血流 の検討(Fig.5−9) 1)肝障害の程度(CHILD分類)による血行動 態の検討 肝障害の程度はCHILD A, CHILD B, Cの2 群に分けて検討した.LC−GU群のうちCHILD AISO⊇ lHB 140 120 100 80 60 40 20
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I l{ 1{ { ,{ し ロ 。鮒]鵬 (CHILO A).劉…
〔C肌D助 *P<O.05 o G噂鵡じ閥四a匙鵬 Le細rc㎜㎞ G鱒。…a鵬 臨rc…at鎚 L_触㎝_」 LG繍i・剛yJ Fig.5 Blood volume(IHB)and O2 saturation (ISO2)of the gastric mucosa in LC・GU group and LGAG group classified by the grade of liver dysfunction(CHILD’S CIassification) lSO2 旧B 140 120 100 80 60 40 20 宮} /{ { } {{A
l{ し ロ 。鷹臥嘱 (CH匹DA) し ロ .鰹]IHB .(CH阻A) 串pく0.05 o G髄旧t膨。回va鵬 L㎜rc…㎜ 鰍α㎝va鵬 ㎞rcロva㎞℃ LA煎㎜一 LG麟i。㎞iソ」 Fig.7 Blood volume(IHB)and O2 saturation (ISO2)of the gastric mucosa in LC−GU group and LC−AG group classified py the grade of liver dysfunction(CHILD’S Classification) ISO2 IHB 140 120 100 80 60 40 20 0 王/ {l/
ll {,{ ロ 。鮒]鵠 (C卜鳳DB,C) し ね認]…
〔㈱aω *pく0.05 G繍O劇a㎞e ㎞C…a㎞e αuater c貨vaヒu曜e L鰯r c㎜t鵬 LA伽m一 LG。面。励」 Fig.6 Blood volume(IHB)and O2 saturation (ISO2)of the gastric mucosa in LC・GU group and LC−AG group classified by the grade of liver dysfunction(CHILD’S CIassification) に分類されるもの(以下LC−GU(A)群)では, Lc−AG(A)群に比較し(Fig.5), Iso2値は前庭 部大晦でLC−GU(A)群32.46±4.49であり, LG AG(A)群40,37±4.75に比べ有意(p<0。01)に低下していた.胃体部小一ではLGGU(A)群
31.38±1.83であり,LC−AG(A)群43.78±8.51 に比較し有意(p〈0.05)に低下しており,体部大 骨でもLC−GU(A)群33.3±3.92でLGAG(A) 群38。9±8.90に比べ低値の傾向であった.LC・GU (A)群とLc−AG(B, c>群の間では(Fig.6), ISO2値は前庭部小轡でLC−GU(A)群30.38± 4.20,LC−AG(B, C)群36.09±5.30であり,体 部小攣でLC−GU(A)群31.38±1.83, LC−AG(B, C)群35.8±6.38とLC−AG(B, C)群に比べ, LC−GU(A)群において有意な差をもって低下し ていた.またIHB値は前庭部小攣でLC−AG(B, C)群50.93±12.95に比べ,LC−GU(A)群73.08± 12.90で有意に高値を示し,体部大攣ではしC−AG (B,C)群72.55±21.15に比べ, LC・GU(A)群 92.43±21.86と高値の傾向を示した.LGGU(B, C)群とLC−AG(A)群を比較すると(Fig.7), ISO2値は前庭部大州でLC−GU(B, C)群34.66± 4.66,LGAG(A)群40.37±4.75,体部小野では しC−GU(B, C)群36.11±5.55, LC−AG(A)群 43.78±8.51とLC−GU(B, C)におい噛てLC−AG .(A)に比較し有意に低回を示した.体部大攣では ISO2値はLC・GU(B, C)群33.19±7.01であり, LC・AG(A)群38.94±8.90に比べ低い傾向を認め た.IHB値は前庭外廻攣でLC−AG(A)群50.93± 12.95に比べ,LC・GU(B, C)群63.63±19.32と 有意差をもって増加していた. 2)食道静脈瘤の程度による血行動態の検討 胃粘膜血流を食道静脈瘤の形態Fにより,F1と F2, F3の2群に分類し検討した. LC・GUのうち F1の静脈瘤を認めるもの(以下LC−GU(F1)群) としC・AG(F1)群では(Fig.8), ISO2は前庭部 大攣でLGGU(F1)群31.33±2.88であり,LC−AG (F1)群40.24±6.07に比べ有意(p<0.05)に低値 であり,前庭部小攣ではしC−GU(F1)群32.18±ISO2 1需 120 100 .80 60 40 20 { 証 }
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(F ●Lσ・ 〔F ■しC一 * { 疇 (F= 壮 { 社 }} *P〈 〔F:F、,F、)1 11脇 (F=Fl) に姻n… (F=F1) o ホネー「
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n冨83 “置34 噂=16 n=17 80 **P〈O.01 60 40 20 o おゆむ ゆ り ゆむ ゆ し ぶり 一蝋r…一 LGast薩。 body」 Fig。9 Blood volume(IHB)and O2 saturation (ISO2)of th母gastric mucosa in LGGU group and LC−AG group classified by the grade.of eso− phagea正varices 2.31であり,LC・AG(F1)群37.91±9.08に比べ低 回の傾向であった.LC・GU(F2, F3)群とLC・AG (F1)群の間では(Fig.9), Iso,は前庭部大攣で LC−GU(F2, F3)群34.39±4.73, LC・AG(F1) 群40.24±6。07,.胃体部大汗では32.21±6.13, 37.63±6.21,胃体部小声では34.6±5.03,40。43± 8.3と前庭部小攣を除いた部位でLC・GU(F2, F3) 群でLGAG(F1)に比較し,有意差をもって低下 していた.また,IHBは前庭部小攣でLC−AG(F1) 群54.12±14,51に比べ,LC−GU(F2, F3)群 70.95±16.90で有意差をもって増加していた. AG GU LC辱AG LC・GU 監an餐:::こ:l ll::ll:; Fig.10 Serum pepsinogen l in AG, GU, LGAG and. LC・GU group 5.胃粘膜の攻撃因子の検討(Fig.10) 血清PG1(ng/ml)はしC−GU群では54.1±16.1 であり,LC・AG群33.9±21.9に比し,有意(p〈 0.01)に高値を認めた.一方,LC−GU群ではcon− tro1群のAG群54.8±26.5, GU群55.2±20.1に 比較すると明らかな差はなかった. 考 察 肝硬変症に胃粘膜病変の多いことは古くより知 られている.横田ら3)は肝硬変における消化性潰 瘍合併率は14.3%と報告しており,他の報告でも 17.3∼20.0%4)5)とされている.一方,五ノ井6)によれば,一般人口の胃潰瘍合併率は,40歳以上
3.839%,総人口では2.031%と述べており,肝硬 変症における潰瘍の合併は高率であると考えられ る. , 肝硬変症における上部消化管出血の原因のうち 頻度の高いものとして,Teresら7)は食道静脈瘤破 裂,急性胃粘膜病変,消化性潰瘍を指摘している. 他の報告8)でも同様どされており,肝硬変症にお ける消化性潰瘍は重要な合併症と考えられる. 肝硬変症における消化性潰瘍の発現の機序につ いて,SwisherらP)は諸家の報告をまとめ,以下の ように述べている.①胆汁酸の塩の欠如による胃 液中和作用の低下,②アルコールによる胃酸分泌充進,③アルコールの胃十二指腸粘膜に対する直 接障害,④門脈圧二進による胃腸管のうっ血,⑤ 栄養障害と血清蛋白の変化,⑥ステロイド代謝の 変化,⑦精神身体障害,等とされているが,現在 でも未だ解明されていない.粘膜病変の発症に関 しては,これらの因子のいくつかが組み合わさり 発現すると考えられるが,その成因として,原疾 患である肝硬変症による血行動態の変化が胃粘膜 の微小循環系に影響を及ぼしていることが重要な 因子であることが推測される.この点より著者は 肝硬変症における胃潰瘍発症について,胃粘膜防 御因子である胃粘膜血流を中心に,粘膜ヘキソサ ミン,攻撃因子として胃液分泌能を反映するとさ れている血清ペプシノーゲンより検討を行った. 胃潰瘍合併肝硬変症(以下LC−GU群)98例の検 討では,肝予備能でみると,臨床病期II, III例, CHILD分類ではB, C例を多く認めた.中山ら5) によると,胃・十二指腸病変を有する肝硬変症群 では病変を認めない群に比較し,肝予備能の指標 としてICGRmaxは有意に二値であり,血清アル ブミンも有意に二値であったとしており,肝機能 の低下と胃潰瘍発生の関係が示唆される. また,この潰瘍の発生部位について検討すると, LC−GU群では胃角部が最も多く,次に幽門前庭部 を含む前庭部に多く,胃角部より幽門前庭部に発 生した胃潰瘍は全体の72.6%と高率であった.一 方,胃体中部および体上部から噴門部では少な かった.一般の胃潰瘍の発生部位について広瀬 ら1ωによると,高齢者を対象とした発生部位につ いて,幽門前庭部10.5%,胃角部32.2コ口あり, 胃角部より高位のものが全体の57.3%を占めると している.著者の検討ではしC−GU群では通常の 潰瘍に比較し,高位潰瘍は少ないと考えられた. 胃潰瘍合併肝硬変症について佐藤11)も,胃角部か ら前庭部の潰瘍が多くを占め,高位潰瘍は少ない とし,著者の結果と同じであった.一方,前田12)に よると,肝硬変に胃潰瘍を合併した群での潰瘍発 生部位は胃体部で66.7%と最も多く認めたとして おり,今回の著者の成績とは異なる結果であった.
肝硬変症の腺萎縮境界について検討すると
(Fig.2,3), control群とLC−AG群の全体での比 較では各々の胃粘膜萎縮型の占める割合に違いは なかった.次に,contro1群とLC−AG群ではとも に萎縮の軽い型の占める割合は年代順に減少して いた.しかし,LC・AG群ではcontrol群に比べ, 萎縮の軽度のものの割合が多く,特に50歳代と70 歳代ではcontro1群に比較し,有意に多かった.広 瀬13)によると,control群に比較すると,限局性胃 病変を認めない肝硬変患者では,有意差はないが 萎縮の少ないC−1,C−2の割合が多い傾向にあり, さらに胃生検組織による検討でも,萎縮は軽度の ものを多く認めたとしている.本研究においても, LC−AG群ではcontrol群に比べ,萎縮は軽度の例 が多いことが示された. 次に防御因子である粘膜ヘキソサミンについて 検討すると,LC−GU群では平均年齢をほぼ一致さ せたLC−AG群, GU群に比較し,胃体下部小攣で 有意に二値を認め,前庭部小舌でも,低値の傾向 であった.加藤ら’4)によっても,肝硬変症例のう ち,粘膜病変合併群では非合併群に比し胃粘膜内 ヘキソサミンは有意に二値としている.肝硬変症 における,胃粘膜ヘキソサミンの二値については, 肝硬変症による胃粘膜微小循環の低下に基づく粘 液細胞への酸素の供給不全,肝機能低下による代 謝障害による細胞障害等の機序により,その産生 が低下していると考えられる. 次に粘膜血流より検討すると,肝硬変症におけ る胃粘膜血流について,足立15)は,胃体部では粘膜 血流のうっ滞とhypoxiaの状態にあり,前庭部で はischemic stateにあることを指摘している.今 回の著者の成績では,粘膜内酸素飽和度の指標で あるISO2はCHILD分類によりしC・GU(A)群と LC−AG(A)群で比較すると, LC−GU(A)群で 前庭部および胃体部で低値を認めた.足立の検討 では,LC−AG群ではcontrolに比較し,粘膜血流 のうっ滞とhypoxiaのあることが示されたが,以 上の結果よりLC−GU群ではさらにhypoxiaの状 態が進行している可能性が示唆される.次に静脈瘤の形態FについてLC−AG群とLC−GU群を比
べると,井戸ら16)は門脈圧充進と食道静脈瘤の程 度は,食道静脈瘤の内視鏡所見との対比により門 脈圧はFO, F1, F2およびF3の順に上昇すると報告している.今回測定した同程度の門脈圧月計状 態と考えられる,LC・AG(F1)群とLC−GU(F1) 群との比較では,特に前庭部において,LC・GU (F1)におけるISO2の低下を認め,低02状態にあ ることが考えられた.このような微小循環系にお ける低02血症によって粘膜のhypoxiaが平ぎ起 こされ,粘膜防御機能が脆弱化し,これによる胃 粘膜障害を発現させる可能性が示唆される.以上 より,肝硬変症における胃潰瘍発生には防御因子 の低下が関与していることが考えられる. 次に攻撃因子について血清PG1より検討する. 上村17)によると,血清PG1値はLC−AG群では対 照群に比較し,有意に低値であったとしており, 広瀬も同様に下値の傾向とし,また胃液のペプシ ン活性はLC・AG群で有意に三値であったとして いる.著者の成績でも,Fig.10に示すように, LC−AG群ではcontrol群であるAG群と比較し, 萎縮境界はC−1,G2と萎縮の軽度なものが多かっ たにも関わらず,有意に低値であった.一方,LG GU群ではこのしC−AG群に比べ,有意に高値で
あった.LC−GU群とGU群との間には明らかな
差を認めなかった.以上より,肝硬変症における 攻撃因子について血清PG1値より考えると, PG1 の低下を認めるが,LC・GU群ではしC−AG群に比 較し高値の状態となっており,これよりしC・GU 群では胃潰瘍非合併群に比較して,PG1が比較的 高値を示していたことになる,また,LCにおける 胃粘膜萎縮がcontrol群に比べ軽度であるのに血 清PG1が野芝である理由として,肝硬変における 胃粘膜血流低下による主細胞の機能低下が考えら れる. 以上より肝硬変症における胃潰瘍発生の原因と しては,基礎疾患による,背景胃粘膜の防御因子 の低下があって,これに攻撃因子が関与して発症 したと考えられる.そして,一方で胃粘膜血流測 定の結果より前庭部および胃体部の小弓での低酸 素状態が想定される結果が得られており,下部に おける防御因子の低下を引き起こし潰瘍発生の一 因となっていると考えられた. 本研究において,LCでの胃潰瘍発生部位は胃 角から前庭部に多く認められた.この結果と同部 位における胃粘膜血流がLC−GU群で低下してい ること,また,血清ペプシノーゲソぽLC−GU群で はLGAG群に比べ有意に高値であることより, LC−GUでは同部位において防御因子と攻撃因子 とのバランスが潰瘍発生側に傾いていると考えら れ,このことにより,通常の潰瘍の発生部位と異 なる部位に多くみられたと考えられる. 結 論 肝硬変症例における胃潰瘍合併について以下の 結果を得た. 1.肝硬変症における胃潰瘍合併はCHILD A に比べ,CHILD B, Cにより多く認められた. 2.胃潰瘍合併肝硬変症における野洲の発生部 位は,胃角から胃前庭部に多く認められた. 3.肝硬変症における内視鏡的胃粘膜萎縮型は 萎縮性胃炎のみを認める対照群と比較し,軽度で あった. 4.胃粘膜防御因子としての胃粘膜ヘキソサミ ンはLC−GU群でLC−AG群に比べ,有意に二値で あった. 5.胃粘膜血流測定よりLC・GU群においては, 前庭部と胃体部小攣でLGAGに比べ, ISO2の低 下とIHBの増加を認め,低酸素状態であること が示唆された. 6.攻撃因子として,胃液分泌能と相関が高いとされる,血清ペプシノーゲンはLC・GU群では
しC−AG群に比較し,有意に高値であり,LC・GU群 における攻撃因子の関与が考えられた. 肝硬変症に合併する胃潰瘍の発生原因について 胃粘膜血流を中心に防御因子,攻撃因子の双方よ り検討を行った.その結果,肝硬変症に合併する 胃潰瘍が胃角から前庭部に多い原因として,同部 位における防御因子の低下と攻撃因子の比較的増 加による,アンバランスがその発生に関与してい ると考えられた. 稿を終えるにあたり,御指導,御校閲を賜りました 消化器内科小幡 裕教授に深謝いたします.また,終 始御指導御教授頂きました光永 篤先生をはじめ内 視鏡室の先生方,医局員各位,また御指導御境域をい ただきました黒川きみえ名誉教授に感謝いたします.本文の要旨は第34回日本消化器病学会大会(宇都 宮)において発表した.. 文 献 1)、Kimura K, Takemoto T:Anl endoscopic rec− ognition of atrophic border and s三gnificance in chronic gastritis. Endoscopy 3:87−97, 1969 2)Samlo仔IM, Secrist DM, Passano JRE:A study of the re玉ationship between serum group Ipepsinogen levels and gastric acid secretion. Gastroenterology 69:1196−1200,1975 3)横田ユキ子,丸山正隆,田宮 誠ほか:肝硬変と 消化性潰瘍の合併.日消病会誌 73:544−553, 1976 4)志沢喜久,河野 誠,葛西 登ほか:肝硬変症合 併消化性潰瘍の臨床的検討.Prog Digest Endosc 28:127−130, 1986 5)中山雅樹,菊地英亮,松村雅彦ほか:肝硬変症に おける胃・十二指腸粘膜病変の検討,Gastroenter・ ol Endosc 31:357−363,1989 6)五ノ井哲朗:胃・十二指腸の臨床.pp27−38,新興医 学出版社,東京(1979) 7)Teres J, Bordas JM, Bru C et al: Upper gastrointestinal bleeding in cirrhosis:Clinical and endoscopic correlations. Gut 17:37−40, 1976 8)Fainer DC, Ha亜sted JA;Sources of upper alimentary tract hemorrhage in cirrhosis of the liver. JAMA 157:413,1955 9)Swisher PW, Baker AL, Bennett DH:Pep− tic ulcer in laennecs cirrhosis. Am J Dig Dis 22:291−294, 1955 10)広瀬はるみ,光永 篤,平田文子ほか:高齢者胃 潰瘍に関する臨床的検討.消内視鏡の進歩 27: 141−144, 1985 11)佐藤俊一:肝疾患における消化管病変の頻度・病 態・治療.臨床成人病 20:2079−2084,1990 12)前田利宗:肝硬変症における胃潰瘍発生機序につ いての研究,とくに胃粘膜血流を中心に.福岡医