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肝性脳症を呈した常染色体優性遺伝多発生嚢胞腎の1例

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Academic year: 2021

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はじめに 常染色体優性遺伝多発性囊胞腎( : )は加齢とともに腎の 囊胞の数と大きさが増大し 多くの症例が中高齢で末期腎 不全に陥る遺伝性腎疾患である。また 多彩な腎外合併症 がみられ とりわけ脳動脈瘤は患者の生命予後に関連する ため注目されているのに対し 肝囊胞は頻度は高いもの の 多くは無症状で一般に肝不全に陥ることはなく 軽 視されがちである。今回われわれは 肝性脳症を呈した興 味ある の 例を経験したので報告する。 症 例 患 者: 歳 女性 主 訴:全身 怠感 傾眠 家 族 歴:叔 が 慢 性 腎 不 全 で 死 亡。従 兄 弟 人 が 既往歴: 年( 歳)痔核で手術 現病歴: 歳頃より高血圧にて近医に通院していた。 年に肝腫大を認め 腹部超音波にて肝 両腎に多発 囊胞を認め と診断された。その後腹部膨満感が 出現し 次第に増強するため ミノサイクリンによる囊胞 鳥取大学医学部第 内科 うえます内科小児科クリニック 日野病院 (平成 年 月 日受理)

症 例

肝性脳症を呈した常染色体優性遺伝多発性

囊胞腎の 例

宗 村 千 潮

野口圭太郎

山 本

村 脇 義 和

上 桝 次 郎

五 代 和 紀

- - ( ) - : / ; / ; μ / -; : -: ( )

(2)

-化療法 目的にて 年 月 日当科紹介入院となっ た。主な検査成績は以下の通りであった。 / / / / / γ- / 。腹 部 では肝は著明に腫大し ほとんど多発囊胞で占めら れており また両腎も腫大し 囊胞が多発していた。非囊 胞部より得られた肝生検では軽度の胆管拡張を認めるのみ で 線維化などは観察されなかった( )。腎および肝 囊胞に対して それぞれ 個( 排液量 ) 個 ( 排液量 )穿刺排液し ミノサイクリンの注入を 行った。以後外来通院していたが 囊胞 化療法後縮小し ていた肝 腎の容積も再び増大し 腎機能は徐々に低下し た。 年 月より全身 怠感が出現し 年 月 日意識レベルの低下 傾眠傾向が出現し 当科再入院と なった。 入 院 時 現 症:身 長 体 重 。血 圧 / 脈拍 / ・整。意識レベルはやや低下し傾眠傾 向であった。 血あり 黄疸なし。胸部異常なし。腹部は 膨隆し 正中線上に肝を 横指触知。下肢に浮腫を認め た。 検 査 所 見( ): / / と 腎 不全を認めた。肝機能成績では およびト ランスアミナーゼは正常範囲であったが / γ- / と軽度上昇し また テストでも 軽度の異常がみられた。 臨床経過:入院時より傾眠傾向であったが 月 日 より羽ばたき振戦が出現した。このときの血中アンモニア は μ / と上昇しており 脳波は徐波で三相波を認め たため肝性脳症と えた。その後も高アンモニア血症は続 き 肝性脳症はⅠ∼Ⅲ°のままであった。 月 日に血中 アンモニアは μ / まで上昇し昏睡状態となった。慢 性腎不全を基礎に肝性脳症が増悪したと え 血液透析を 施行するとともにラクツロースを投与し アミノレバンの 点滴を併用したところ アンモニア値の低下とともに 月 日に覚醒した。その後はラクツロースの継続にて肝性 脳症は消失し 血中アンモニア値も正常範囲を維持した。 月 日に施行した腹部血管造影では 門脈は本幹 左 右枝は正常で ∼ 岐以降の末梢枝は狭小化し 脾腎

Light microscopic findings of a liver biopsy specimen showed mild dilatation of the bile duct,but hepatic fibrosis was not observed. a:HE stain ×40 b:silver stain ×40 CV;central vein BD;bile duct

Urinalysis sg 1.010 pH 7.5 protein (+)0.67g/日 occult blood (+) Peripheral blood WBC 4,800/μl RBC 268×10/μl Hb 8.0g/dl Ht 24.1% Plt 15.5×10/l Coagulation PT 75% APTT 34.2s Fbg 284mg/dl HPT 80% Chemistry Na 142mEq/l K 6.1mEq/l Cl 113mEq/l BUN 77mg/dl Cr 9.0mg/dl UA 6.8mg/dl Ca 8.8mg/dl P 4.1mg/dl TP 6.6g/dl Alb 3.9g/dl T. Bil 0.3mg/dl D. Bil 0.1mg/dl GOT 17IU/l GPT 12IU/l ALP 347IU/l LAP 187IU/l γ-GTP 77IU/l ChE 63IU/l LDH 210IU/l NH3 238μg/dl Glu 80mg/dl ICGR 15% ICGK 0.11 Serology HBsAg (−) HCV-Ab (−) βMG 18.61mg/l Al 66μg/l

(3)

シャントを認めた( )。また 下大静脈造影では下大 静脈は肝門部で狭小化し 側副血行が発達していた( )。門脈造影下 では 脾腎シャントより造影された下 大静脈が肝 の囊胞により圧迫されていることが判明し た( )。以上より 本症例では 肝全体を占める多発 囊胞による門脈末梢の圧迫に伴い門脈圧が亢進し その結 果 脾腎シャントが形成され 高アンモニア血症が生じ 肝性脳症を誘発したと推測した。その後 ラクツロースを 減量した際に再び高アンモニア血症 脳症を起こしたが ラクツロースの増量にて改善し 月 日に退院し外来 加療となった。 察 は種々の腎外病変を伴うことが知られており 特に肝囊胞は 以上の高い合併率 であるが 腎と異な り 感染や悪性疾患の合併がない限り肝不全に陥ることは なく 重篤な合併症をきたさないため一般に軽視されが ちである。近年の本邦における肝囊胞に由来する重篤な合 併症の報告 をみると いずれも囊胞による門脈 胆道 系の圧迫により食道静脈瘤 肝性脳症 閉塞性黄疸をきた している。また 単発性の肝囊胞でも脈管 胆管への圧迫 のため 閉塞性黄疸 や門脈圧亢進症 の報告もあり 多発性の肝囊胞を伴った ではこれら合併症の頻 度は当然高くなるものと理解される。 本症例では 腎不全とともに脾腎シャントの存在が高ア ンモニア血症の原因と えられる。シャントの形成に関し ては下大静脈の肝静脈部で狭小化を認めたことより 肝静 Portography via the superior mesenteric artery demonstrated

that the main trunk and first branches of the portal vein were intact(white arrows), while the terminal branch after the second branch had narrowed due to compression by multiple liver cysts. The inferior vena cava(IVC)(black arrow) was enhanced via a spleno-renal shunt(△)

IVC was narrow(△)and collateral veins had developed (black arrows).

The enhanced IVC(white arrow)was compressed by liver cysts. The liver was occupied by small and large cysts with limited hepatic parenchyma remaining.

(4)

脈流出障害による門脈圧亢進と 多発囊胞自体により門脈 末梢が圧迫されたための門脈圧亢進が えられる。 年第 回入院時の腹部 では脾周囲に発達した血管が存 在し この時点から門脈圧亢進状態があることが示された が 肝組織像では中心静脈周囲の線維化は認められなかっ た。肝静脈流出障害の場合 早期より中心静脈周囲の線維 化が認められることが知られている 。したがって 本 例の門脈圧亢進は肝全体を占める多発囊胞により門脈末梢 が圧迫されたためと えられた。また 本例では肝性脳症 が発症する以前に肝囊胞に対してミノサイクリンによる囊 胞 化療法を実施しているが 同治療が門脈圧亢進を助長 した可能性については 上記の通り 化療法施行時にすで に門脈圧亢進状態にあったこと 同治療の 年後に肝性脳 症が発症していることより関連はないと える。肝囊胞に 対するミノサイクリンによる治療はこれまで多数報告され ているが われわれが検索しえた限りでは治療後に門脈圧 亢進をきたした症例はなかった。 治療としてバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術( - : )による脾腎シャントの閉鎖も検討したが これに より新たなシャント 特に食道静脈瘤を形成する可能性が 高いこと また ラクツロースの内服で高アンモニア血 症 肝性脳症が改善したことより シャントの閉鎖は行わ なかった。また 下大静脈の狭窄についてはステントの挿 入も検討したが 周囲が囊胞のため ステント挿入により 囊胞が破裂する危険性があること 下大静脈造影にて早期 に心臓が造影されたことより 狭窄部の血流は比較的保た れていること 血液透析導入および睡眠時の下肢挙上によ り下肢の浮腫が改善したことより ステント挿入は施行し なかった。また 肝部 切除および開窓術により門脈圧が 低下するとの報告があるが 保存的治療により肝性脳 症が改善していたため それ以上の治療は今回は行わな かった。 近年 症例で多発肝囊胞により門脈圧亢進 肝性脳症をきたした症例に対する や短絡路温存 門脈大循環 流術 により症状が改善したとの報告例が あり 本例でも今後 肝性脳症のコントロールが悪化した 際には比較的侵襲の少ないこれらの治療を 慮する必要が ある。 結 語 肝性脳症を呈した の 例を報告した。肝の多 発囊胞による門脈末梢の圧迫のため 門脈圧亢進をきたし て脾腎シャントを形成し 高アンモニア血症 肝性脳症を 起こしたものと えられた。 文 献 : ; ( ): -; ( ): -; ( ): -斉間恵樹 鈴木祐介 吉本恵子 中村雄二 宗像昭夫 肝 囊胞合併症が死因と関連した常染色体優性遺伝囊胞腎の 透析例 日腎会誌 ; ( ): -倉岡節夫 山際岩雄 永江宣明 鷲尾正明 閉塞性黄疸を 呈した多発性肝腎囊胞症の 例 日外会誌 ; ( ): -田中昌 野沢靖美 小島原将博 橘 芳郎 門脈圧亢進 症状を呈した の 例 最新医学 ; ( ): -曽根秀尚 片桐有一 倉沢和成 長瀬克郎 丸山大司 山 田和彦 岡田洋一 小田切治世 坂東 正 小林孝夫 透 析 中 黄 疸 を 合 併 し た 多 発 性 囊 胞 症 の 例 日 消 病 会 誌 ; ( ): 芳野 友野 勤 山崎弘子 森脇和久 早川昌志 長 花晴樹 花房 博 難波経雄 重井 博 により を呈し 急性 型肝炎を 合併した慢性 腎 不 全 の 例 日 消 病 会 誌 ; ( ): 小野重明 大 敬 小原勝敏 正木盛夫 鈴木 秀 折 笠和栄 大久保義光 岩崎勝利 三橋彦也 佐川恵一 関 本静一 森藤隆夫 粕川禮司 寺西 寧 井上 仁 元木 良一 の食道静脈瘤に 化療法を施行し た 例 日消病会誌 ; ( ): 石 野 田 吉 弘 永 山 一 成 木 佐 貫 博 人 石 川 智 信 岡 本 剛 重平正 文 北 村 亨 林 克 裕 中 村 東 樹 丸 山 俊 博 津田和矩 肝性脳症を起こした肝 変を伴う多発性肝 腎囊胞症の一例 臨床と研究 ; ( ): -佐藤朱美 曽根正好 若井幸子 望月俊雄 原 陽子 荒 井純子 佐中 孜 二瓶 宏 下 浮腫及び食道静脈瘤を 伴った多発肝腎囊 胞 症 の 一 例 日 腎 会 誌 ; ( ): 前原孝光 本滋彦 村弘人 釜田秀明 波多野剛之 青木一郎 肝管内へ発育し閉塞性黄疸を呈した肝囊胞の 例 外科 ; ( ): -荒川敏之 山本貞博 竹重言人 非肝 変性門脈圧亢進症

(5)

として発症した肝囊胞症の 症例 肝・胆・膵 ; ( ): -; ( ): -: ; ( ): -; : -; ( ): -; ( ): -宮本兼玄 山田幹二 石田真実子 石田貴之 城下弘一 桜井哲男 上田峻弘 久保 三 乳原善文 常染色体優性 遺伝性多発性囊胞腎に対し腎動脈塞栓術を施行後 門脈大 循環短絡による肝性脳症が顕在化した 例 日本透析医会 誌 ; ( ):

参照

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