Title
女性生殖器癌における血管新生とその臨床的意義( 内容の要
旨(Summary) )
Author(s)
坂口, 英樹
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第437号
Issue Date
2000-03-24
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14698
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 坂 口 英 樹(岐阜県) 博 士(医学) 甲第 437 号 平成12 年 3 月 24 日 学位規則第4条第1項該当 女性生殖器癌における血管新生とその臨床的意義 (主査)教授 玉
舎
輝
彦
(副査)教授 高 見 剛 教授 岡 野 幸 雄 論 文 内 容 の 要 旨 血管新生とは既存の血管から新たに血管が生じる現象をいう。そのうち生理的に起こる活動的な血管新生は, 胎生期以外では創傷治癒や子宮内隠卵胞などの一定の時期に限られ,その毛細血管内皮細胞のターンオーバは 著しく速い。一方,それ以外の臓器における血管内皮細胞のターンオーバは一般的に月や年単位でかなり遅いQ ところで,腫瘍における血管内皮細胞のターンオーバは腫瘍径が2mm以上になると著しく速くなり,血管新 生が活性化され,腫瘍の増殖進展に働く。また,腫瘍における新生血管の特徴は周細胞が欠如し・新生血管の基 底膜の器質化が充分ではないので,腫瘍細胞が血管内へ侵入しやすく,腫瘍内の微小血管の密度が高ければ高い 程,腫瘍細胞は浸潤転移しやすい。したがって,腫瘍における血管新生の特徴を知ることは重要な臨床的意義が ある。そこで,女性生殖器癌すなわち子宮頚癌,卵巣癌,子宮内膜癌における血管新生因子,すなわちチミジンフォスフォリラpゼでもあるplatelet-derived
endothelialcellgrowth factor(PD-ECGF)やvascularendothelialgrowth factor(VEGF)の発現や機能の特徴を検討し・また以前から報告してきたbasic fibr。blastgrowthfactor(bFGF)の成績も考慮して,癌種による血管新生の特徴を解析したo 研究方法 1)すべての患者から組織の採取およびその組織の研究への利用に対するインフォームドコンセントを得た0 2)子宮頚癌,卵巣癌,子宮内膜癌におけるPD-ECGFおよびVEGFの発現の局在および血管新生との関連を知る ために,抗ヒトVEGF抗体,抗ヒトPD-ECGF抗体,(血管内皮細胞に特異的な)抗第Ⅷ因子関連抗原抗体を用 いてLSAB法にて免疫染色をおこなった。毛細血管細胞数(MVC)は光学顕微鏡下に観察し,200倍における 5視野の平均の値とした。 3)VEGFのアイソフォームの発現をウエスタンプロット法にて検討した。子宮頚癌,卵巣癌・子宮内膜癌の組 織をHG緩衝液中でホモゲナイズした懸濁液を遠沈し,上清を試料とした。試料の蛋白濃度はt Bradford法で 測定した。15∼100〟gの蛋白を含む各試料25FLlを試料緩衝液25FLlに加え,7・5%SDS-PAGEにて得られたゲ ル上のバンドを電気的にニトロセルロース膜に移行させた。一次抗体として抗ヒトVEGF抗体.二次抗体とし てペルオキシダーゼ標識特異抗体を用いた。特異的バンドは蛍光を発光させオートラディオグラムを行った。 4)PD-ECGFおよびVEGFの蛋白発現の検討において子宮頚癌,卵巣癌,子宮内膜癌の組織をHG緩衝液中でホ モゲナイズした懸濁液を遠沈し,上清を試料とした。試料の蛋白濃度はBradford法で測定したo PD-ECGFの 発現量は,Nishida,etal.の方法,VEGFの発現量は,HumanVEGF Assay Kit-IBLを用いてELISAにて 測定した。 5)PD-ECGFおよびVEGFの遺伝子発現の検討において子宮頚癌,卵巣癌,子宮内膜癌の組織より・グアニジンー ァシドフェノール法にて総RNAを抽出した。総RNA3FLgでreversetranscriptionを行い,PCRのテンプレー トを得た。PCRは,総容量100JLlで施行した0なお,目的遺伝子のPCRのためのプライマー(オリゴマー) の塩基配列は,すでに明らかにされた各々のcDNAの塩基配列[PD-ECGFcDNA,VEGFcDNA, glyceraldehyde-3-phosphatedehydrogenase(GAPDA)cDNA]によって設定した0電気泳動で分離された ァガロース内のPCR産物をキャビラリー・トランスファーでImmobilon-S transfermembrane上に移行させ, ビオチン化ブロープとハイプリダイゼーションし,蛍光を発光させ,オートラディオグラムを行った○検出し た特異的バンドの強さをデンシトメータで測定した。 6)PD-ECGFおよびVEGFの蛋白およびmRNAの発現量はt同一組織の3カ所からそれぞれ3回ずつ測定し・そ
ー37-の平均と標準偏差を算出した。各組織型および臨床進行期間の有意差検定はStudent'st-teStによりp<0・05を 有意差ありと判定した。MVCとPD-ECGFおよびVEGFの発現量との相関はSpearman's correlation c。efficientを剛、て解析した。生存率はカプランマイヤー法で算出しlog-rank testで有意差を検定した○ 結 果 1)子宮頚癌における血管新生因子‥子宮頚癌原発巣におけるPD-ECGFの発現(mRNA,蛋白)は癌組織のM vD(毛細血管密度)を示すMVCと有意に相関した。また,腺癌よりも扁平上皮癌に優位に発現した。子宮頚 癌(扁平上皮癌)原発巣において低値群(<1ng/mg蛋白)と比べ高値群(>2・5ng/mg蛋白)では術後2年 までの予後は有意に悪かった。さらに,一般にリンパ節転移がある子宮頚癌の予後は不良であるが,子宮頭痛 Ⅱb期のリンパ節転移がある症例で,転移リンパ節でのPD-ECGFの発現量が10ng/mg蛋白以上の症例の術後 2年までの予後は,10ng/mg蛋白未満の症例に比して有意に悪かった。子宮頚癌原発巣におけるVEGFの発現 は癌組織のMVCと相関したが,臨床予後とは相関しなかった。VEGFのアイソフォームのうち主にVEGFl佑と vEGF.21およびそのmRNAが発現し,蛋白とmRNAの発現量は良く一致していた。また,扁平上皮癌よりも腺 癌に優位に発現するものがあった。 したがって,子宮頚癌の血管新生能を知る上で,PD-ECGFの発現の高低は良いインディケ一夕一になると推 察される。抗癌剤の5,-deoxy-5-fluorouridine(5,-DFUR)はPD-ECGF(チミジンホスフォリラーゼ)により 活性型5-fl。OrOuraCilに変換され,治療効果を発揮すると推察されるので,高PD-ECGFを示す子宮頚癌の発育 抑制やそこでの血管新生の抑制には5,-DFURが有用である可能性がある。 2)卵巣癌における血管新生因子‥卵巣癌におけるVEGFの発現は組織型による差はないが正常卵巣より高値を 示し,低値群(<0.9ng/mg蛋白)と比べ高値群(>1.2ng/mg蛋白)では術後2年までの予後は有意に悪かっ た。PD-ECGFとそのmRNAの発現は組織型による差はないが正常卵巣より高値であり,一部の症例で著しく 高値で,また進展と関与する札Ⅳ期に高値がみられるが,全体として臨床進行期とは相関しなかった0 したがって,VEGFの高値が予後を悪化していることから卵巣癌の血管新生の抑制にはVEGFの抗体やVEGF 受容休の抗体を含めたVEGFのシグナル伝達路の阻害剤が奏効すると推察される。 3)子宮内膜癌における血管新生因子:子宮内膜癌においてはVEGFは,アイソフォームのうちVEGFl伍と VEGF121およびそれらのmRNAが主に発現し,VEGFの発現は正常子宮内膜から分化型子宮内膜腺癌,中∼低 分化型子宮内膜癌へと分化度が低下するにしたがい低下傾向にあり,さらに正常子宮内膜から子宮内膜癌Ⅰ執 Ⅲ期,札Ⅳ期へと進行するにしたがい低下傾向を示した。正常子宮内膜と比べ,分化型内膜腺癌ではPD-E CGF蛋白の発現は増加するが,子宮内膜癌においてPD-ECGFおよびそのmRNAの発現は分化型子宮内膜腺癌 より,中∼債分化型子宮内膜腺癌へと低下し,子宮内膜癌Ⅰ期とくらべ,Ⅱ期,Ⅲ,Ⅳ期へと低下した。また, 筋層浸潤のとき蛋白発現が高くなる場合があった。一方,bFGFは逆に癌の進行とともに発現がアップレギュ レートされ,子宮内膜癌の臨床予後と相関すると報告してきた。高分化型子宮内膜癌細胞Ishikawa細胞にお けるVEGFはアイソフォームのうちVEGF165とVEGF121およびそれらのmRNAが主に発現し,それらの発現は ェストラジオールー17βにて一過性に増加し,プロゲステロンはその増加を半分程度抑制した。月経周期にお ける子宮内膜PDTECGFmRNAの発現変化は血中エストラジオーJV-17βの値の変化と逆パターンに近くなり, PD_ECGFの発現変化は血中プロゲステロン値の変化と類似した。PD-ECGF蛋白の変化はそのmRNA値の変 化の2-3日の遅れであったことから,PD-ECGFの発現は性ステロイドにより調節されていることが推察される。 したがって,bFGFは子宮内膜癌の増殖進展に関わる血管新生能を知る上で良いインディケ一夕一になると推 察される。また高分化型子宮内膜癌は,正常性ステロイド調節機構が一部残っていることが考えられることか ら,性ステロイド関連抗癌剤が抗癌,抗血管新生に有用であると考えられる。