Title
CCD microscopeを用いた体外循環中−逆行性脳灌流時を中
心とした−脳微小循環の評価( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
古澤, 泰伸
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第1358号
Issue Date
2003-03-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14930
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氏 名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 貞 古 澤
泰
伸(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 1358 号 平成15 年 3 月13 日 学位規則第4条第2項該当 CCD microscopeを用いた体外循環中一逆行性脳濯流時を中心とした一 脳微小循環の評価 (主査)教授鹿
瀬 (副査)教授 森 田 啓 之 教授 坂 井 昇論文内容の要旨
背景と目的 弓部大動脈癌に対する手術の際,脳合併症を皐り少なくするには,体外循環中のより安全な脳保護を目的とし た潜流方法の確立が重要な要素である。低体温下に循環停止法,選択的脳分離体外循環法および逆行性脳潜流法 などの種々の潜流方法が応用されている。今回,脳の微小循環をcharge-COupleddevicemicroscope(以下CCD生体顕微鏡)を用いて直接観察し,順行嘩,循環停止および逆行性脳港流時の微小循環からみた脳連流法の
相違を明らかにすることを,本研究の目的とした。 対象と方法 動物はブタを用いた(n=6)。気管切開部より挿管し,全身麻酔下ド調節呼吸とした。側頭骨を開窓し硬膜を 切除した後,needletypeのCCD生体顕微鏡を脳表面に固定設置し,脳表の細動静脈を直接観察した0脳温およ び頚動静脈圧を測定し,脳潜流圧は頚動静脈圧差から算出した。鼠径動脈と右心房より上・下大静脈へカニュー レを挿入し,奇静脈を結紫後,対外循環を開始した。体外循環中のポンプ流量は60ml/min/kgで脳温を20℃ま で冷却した後,循環停止とした。逆行性脳潜流は上大静脈送血および下大静脈,大動脈切開部からの脱血により施行した。脳表面に当てたCCD生体顕微鏡を,明瞭な細動静脈の像を認めた時点で固定し,直接順行性・循環
停止,逆行性脳連流中の脳微少循環を以下の点に留意して喝察,解析した。1.脳表面の動静脈の観察:順行性
潜流から逆行性潜流への変換時の血流方向の変化と逆行性濯流時の脳湾流圧の上昇を観察した。2.脳表面の動 静脈径の観察:脳表面の動静脈径は,コンビュ.タに取り込み,解析ソフトNIHimageを用い計測した。 結果 脳表面細動静脈の血管径の順行性脳潜流時,循環停止時および逆行性脳潜流時の一連の変化: 細動脈はいずれも循環停止で血管は虚脱した。逆行性湾流時の送血量を最大ポンプ流量60ml/min/kgまで増加させた最終の状態では,逆行性港流である逆向きの血流が発現しなかった細動脈は完全に虚脱したままで,重
た逆向きの血流が発現した細動脈も順行性時の血管径には至らなかった。細静脈は逆向きの血流の有無に関わら
ず,いずれも流量を増加させるに従いすべての細静脈は緊満し潜流圧10mmHg以上でそれらの血管径は順行性 脳潜流時より拡大した。 脳表面細動静脈の逆行性脳湾流時の血流の一連の変化:順行性脳潜流時,観察された細動静脈の血流は,すづて「様に均一で良好であったが,逆行性脳湾流時,脳嘩
流圧の増加に伴う脳表の細動静脈の変化には3つのタイプがあった。タイプ1;均一な逆行性血流が認やられた。
循環停止にすると紬動静脈の血流は停止し,細動静脈ともに血管の虚脱を認めた。逆行性脳港流にし,送血量を 徐々に増加させ脳連流圧を上昇させると,細静脈は徐々に緊満した逆向きの血流が一部から認められるようにな り,細動脈の逆向きの血流も,細静脈の逆向きの血流が認められたはぼその直後より認め,更なる脳裡流圧の上 昇に伴いすべての可視範囲の細静脈に逆向きの血流が起こり20mmHg以上の潜流圧でほぼ均一な血流の流れと なった。タイプ2;不均一な逆行性血流しか認められなかった。逆行性脳潜流にし,送血量を徐々に増加させ脳港流圧を上昇させると,細静脈は徐々に緊満した逆向きの血流が一部から認められたが,脳潜流圧を上昇させて も可視範囲の他の細静脈に逆向きの血流が認められず,不均一なままであった。最大連流量としても潅流圧は20 mmHg未満であった。タイプ3;逆行性血流が全く認められなかった。循環停止で虚脱した細動静脈が,逆行 性脳裡流にし,送血量を徐々に増加させ脳港流圧を上昇させても,細静脈内に血液は充満するものの,逆向きの 血流は観察されず,細動脈は完全に虚脱したままであった。最大港流量としても連流圧は20mmHg未満であっ た。タイプ分けの結果は タイプ1,タイプ2,タイプ3それぞれ2頭(各33.3%)づっであった。 ′ 考 察 弓部大動脈痛手術時の脳保護法として,従来より超低体温循環停法や選択的順行性脳連流法が用いられてきた が,最近では,逆行性脳潜流法が注目され,臨床的効果が報告されるようになってきた。しかし,港流量,濯流 圧および時間的安全限界など未解決の問題が多く,臨床的にも実験的にも検討されている。逆行性脳港流法は静 脈から動脈への非生理的な漕流であり,はたして脳全体に十分な潜流がなされているか明らかではない。そこで, 本研究ではCCD生体顕微鏡で直接脳表面の細動静脈を観察し潜流条件の違いによる微小循環の差異を明らかに した。順行性脳潜流時は均一で良好な血流が認められたが,逆行性脳港流時の濯流パターンは一様ではなく,6 頑中4頑に逆行性血流を生じたが,2頭は逆行性血流を認めなかった。また,逆行性潜流の認められた4頑も脳 潜流圧が20mmHg以上の2頭は細動静脈とも逆行性血流が均一となったが、最大潜流量でも潜流圧20mmHg 未満の2頑は細静脈の血流は不均一なままであった。逆行性脳潅流により弓部大動脈癖手術の臨床成績の改善を みている施設は多い。しかし,脳合併症の中で不可逆性脳障害ではないが,一過性の痙攣や覚醒遅延といった非 生理的連流方法が原因と思われるものが順行性脳潅流よりも多いとの報告がある。本実験結果では,理想的な血 流がえられなかった4頭がこれにあたり不均等な港流であるため脳実質の代謝あるいは低温化に部位的な差を生 じ,そのために重篤ではないが一過性の脳障害の原因になりうる可能性があると示唆された。 結語 順行性脳港流時,観察された脳表の細動静脈の血流は,全て均一で良好であったのに対し,逆行性脳連流時,連 流パターンは一様ではなく,6例中最終的に均一な逆行性血流が得られたのは2例のみであった。2例は不均一 な逆行性血流のままで,残りの2例は,細静脈は緊満するものの細動脈は虚脱したままで逆行性血流は得られな かった。すなわち,逆行性脳港流において細動静脈レベルでの血流が不均一である可能性が示唆された。細動静 脈とも逆行性血流が均一となった2例の港流庄はいずれも20mmHg以上で,脳裡流圧が20mmHg以上でない と均一で有効な逆行性血流が得られない可能性を示唆した。