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Academic year: 2021

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第2回

日本臨床作業療法学術大会

学会テーマ:共 創

平成27年2月6日〜7日

2月8日

沖縄県男女共同参画センターてぃるる

沖縄県自治会館

(2)
(3)

①急性期から作業に焦点を当てる

ファシリテーター

三﨑 一彦(済生会小樽病院)

澤田 辰徳(イムス板橋リハビリテーション病院)

二階 会議室1

スマートホンでつながる

老年病研究所附属病院

真塩 敦士

編み物を通して生活の再構築を目指した肺がんの事例

浜田医療センター

北垣 佑一

作業療法士が緩和ケアチームに貢献するために必要なこととは?

津島市民病院

渡邉 立志

実際に道具を使用した事で自信を取り戻した事例

朝日大学歯学部附属

村上記念病院

坂田 崇好

急性期での離床

〜事例の主体性に着目して〜

千鳥橋病院

大町 昭彦

他職種連携で術後指導を行い、功を奏した事例を通して

-ある看護師との関わりから-

公益社団法人鳥取県中部医

師会立 三朝温泉病院

大西 千香子

股関節鏡視下手術後の患者に対するIADL拡大を目的とした

作業療法の実践

大久保病院

竹本 政則

自助具の使用によって意味のある作業が進めやすくなった

脊髄損傷者の事例

朝日大学歯学部附属

村上記念病院

髙橋 一滋

「将棋は好きでっせぇ」から支援する

音羽記念病院

志村 邦康

10

機能訓練を実施していたクライエントにCOPMを用い関わった事例

寺下病院

沖田 直子

14

(4)

スマートホンでつながる

―クモ膜下出血発症後の CL との「スマートホン」を通しての関わり―

真塩敦士 1),眞下智子 1),山口智晴 1) 1)公益財団法人老年病研究所附属病院 【はじめに】 本事例はクモ膜下出血により自発性低下,認知機能低下,重度記憶障害を主とした高次脳 機能障害を呈しており,病棟でも自発性低下や生活リズムの崩れが目立っていた.そこで, 急性期から若者になじみのあるスマートホン(以下スマホ)を活用した介入を行い,一定の 効果が得られたため以下に報告する.なお本報告について,本人,家族には承諾を得ている. 【事例紹介】 30 歳代の男性で母親との二人暮らし.製薬会社の機械メンテナンスの仕事に従事してい た.休日は友人とツーリングやお酒を呑んで過ごしていた.発症後,セルフケアは全般的に介 助を要し,自発話や表情変化がみられなかった. 【介入経過】 本事例は自発性低下により,日中の大半を無為に過ごしほとんど臥床していた.初期面接 では「仕事,運転,ツーリング」の希望が挙がったため,病室にあるスマホを手渡すと多くの 写真があり,笑顔で思い出を語った.そこで「友人との関わり」に着目し,スマホを利用した 介入を始めた.OT 場面では,これまで利用していたアプリやインターネットサービスを利 用する時間を設けた.すると,自室にて自らスマホを利用しニュースや SNS を閲覧する様子 が観察され,姉や友人からの連絡に返信することも徐々に増えた. また,生活リズムの崩れに対しては,面接により「ツーリングで待ち合わせができる」と いう目標を共有し,スケジュールアプリを用いた介入を開始した.しかし,予定を伝えても自 発的に使用する様子は見られないことが続いた.そこで,介入時に共有した目標と対応させ ながらスケジュールアプリを活用する意図の説明を繰り返した.結果として,「私は忘れてし まうからスケジュールアプリを使います」といった発言も聞かれ,予定を伝えた際にはスマ ホに入力しようとする様子が見られてきている. 【考察】 本事例は病前多くの場面においてスマホを活用しており,今回の介入では慣れ親しんで使 用していたスマホを活用したことで,自発性低下などの多彩な高次脳機能障害を呈しながら も介入プログラムに導入しやすかったと考える.また事例にとって周囲とのコミュニケーシ ョンの起点であったスマホを利用した介入により,周囲との関わりに対する意欲が向上し, さらに友人とのつながりが再び生まれたことが自発性向上に加え,病識向上にも結び付いた と考えている.今回,なじみの作業や IT 機器,本事例の周囲の人的資源などを有効に活用 することの重要性を改めて認識した.

(5)

編み物を通して生活の再構築を目指した肺がんの事例

北垣佑一 1) 1)国立病院機構浜田医療センター 【はじめに】 今回右肺扁平上皮がんのクライエント(以下 CL)を担当した.自宅復帰に向けて PT,OT 介入したが,途中状態が悪化し,自宅復帰困難となった.離床が困難になった後も編み物, ADL 練習を中心とした OT は継続することができ,本人が希望する施設へ転院となった.な お本発表に関しては CL に承諾を得ている. 【事例紹介】 右肺扁平上皮がん.在宅酸素療法を導入しながら独居生活を営んでいた.自宅では家事, 音楽を聴く,テレビを見ることが主な作業であった.入院 3 週目より PT 開始.6 週目より 自宅復帰を目指して OT が処方された. 【介入経過】 《第1期:自宅復帰を目指した時期》初回面接で ADOC を実施.①炊事②掃除③洗濯④編 み物(主治医へマフラーをプレゼントしたい)を選択.面接では「絶対に家に帰りたい.い つでも子供が帰られるようにきれいにしておきたい」との本人の価値,役割なども聴取でき た.ADOC で挙げた作業①~⑤についてそれぞれ作業観察し,代償手段を用いることで再び 独居生活を目指した.《第 2 期:状態が悪化した時期》退院を 2 週後に控えた頃,状態が悪 化.意識レベル低下を認め,離床困難な状態が続いた.意識レベルが改善した後,OT では ベッド上(編み物)での介入を継続したが,PT では「もうなにもできない」と介入を拒否 した.その後,カンファレンスにて今後の ADL 改善次第で有料老人ホームもしくは療養型病 院への転院を決める方針となった.《第 3 期:編み物のマフラーが完成した時期》継続して ベッド上で編み物を行い,完成したマフラーを主治医にプレゼントすることができた.この 頃より「また元気になれるかしら」とリハビリ室での ADL 練習を希望するようになった.《第 4 期:OT 介入を続け施設へ転院した時期》施設見学に行き「いいところだった.あそこなら 行ってもいいと思う.」と語った.CL の希望する施設へ転院するまで OT では編み物と施設 生活にむけての ADL 練習を中心とした介入を行った. 【考察】 CL は当初,自宅復帰を目指したが,退院前に状態が悪化したことで目標の変更を余儀な くされた.機能訓練を拒否したが,介入 3 期に再び ADL 練習を OT に希望した.これは,編 み物を通して意志に変化が生じたことが要因の一つと考える.その後,OT 介入を希望し続 け,CL が希望する施設へ退院することができた.本事例とって OT 介入初期から意味のある 作業に従事し続けたことが生活を再構築しようとする意志に繋がったと考える.

(6)

作業療法士が緩和ケアチームに貢献するために必要なこととは?

―チームへ参入した 3 年間の経験と事例を通して―

渡邉立志 1) 1)津島市民病院 【はじめに】 緩和ケアでは,トータルペインに対応する多職種チームによる支援が基本であり OT はそ の一員である.しかし,緩和ケアチームにおいて OT がどのようにチームに貢献できるかは 課題とされている.本発表では,演者が経験した 3 年間の緩和ケア病棟の経験と,OT の専 門性を発揮しようとした試みを事例を含めて報告する.事例家族に書面にて同意を得ている. 【当院緩和ケア部門紹介】 愛知県西部に位置する,440 床(急性期 375,回復期 47,緩和ケア 18)の病院であり,緩和 ケアは急性期スタッフが兼任.OT か PT のどちらかの介入で,週 3 回以内と決められている. 【経過】 第 1 期:多職種チームへの作業療法の勉強会開催 (チーム参入前~参入 1 年目) 村田理論と作業に焦点を当てた作業療法の事例について,緩和ケアチームと病棟 Ns に対 して勉強会を行った.その結果 1 例目の作業療法処方が出され介入開始となった. 第 2 期:チーム内での役割に迷走 (参入 1 年目~2 年目) OT が参入する以前は環境調整・福祉用具の選定・セルフケアについては PT が行っており, 生活歴は入院前の面談にて Ns が聴取していた.同時期に臨床心理士がチームに加わった. 緩和ケア医からは「社会性を保つために関わることがリハビリ目的」とされていた.多職 種カンファレンスで OT は身体機能と認知面に対しての発言が中心だった. 第 3 期:作業療法の専門性の発揮 (参入 2 年目~3 年目) 夫と病棟 Ns との意見が対立した CL を担当した.夫は「歩行訓練」を妻である CL に強く 勧めていたが,病棟 Ns は本人が苦痛になっているから止めてほしいと考えていた.OT 介 入時,夫から「歩行訓練」についての意味を聴取し病棟スタッフへ伝えた.夫は二人での 時間を共有したい思いと寝たきりが嫌だと語った.主治医から再度病状説明があり,OT では「歩行訓練」から「車椅子での散歩」に作業の形態を変化させ,大切な時間と CL が 語った「お茶を飲み夫と TV を見ること」を Ns に依頼し実施してもらった.また,カンフ ァレンス内で他CL の言動をリーズニングし発言するように心がけた.その結果Ns から「OT がどう CL を捉えているか分かったが,OT と PT の違いはまだ明確にわからない」 Dr から は「まず OT 処方しておくのでどのリハビリが必要か決めてくれ」との発言が得られた. 【考察】 熊野らは緩和ケアチームにおける作業療法の役割として,患者・家族にとって今,ここに 生きる意味を見いだせるよう最適な環境を設定しトータルペインを軽減していくことと述 べている.さらに演者は,作業の視点で分析した結果をチーム内に伝えることで,作業療法 士の専門性を発揮し緩和ケアチームに貢献できると考える.

(7)

実際に道具を使用した事で自信を取り戻した事例

坂田崇好 1),髙橋一滋1) 2),淺井菜緒1) 1)朝日大学歯学部附属村上記念病院,2)広島大学大学院医歯薬保健学研究科 【はじめに】 今回,左片麻痺により自信を失い,今後の生活に不安を抱える事例を担当した.実際に包丁 やはさみを使用した事で,自信の獲得に繋がり,クライエントの主体的な参加が可能となっ たため以下に報告する.尚,本報告に際し,本人の了承を得ている. 【事例紹介】 A 氏,80 歳代女性.利き手は左手.診断名は脳梗塞.軽度の左片麻痺(Br.stageⅤ-Ⅵ-Ⅵ)を 呈していたが,高次脳機能の低下はみられず病棟内 ADL も自立しており,作業療法のみの介 入であった.独居生活であるため,IADL の自立も求められていた. 【介入経過】

作業療法初回面接では Canadian Occupational Performance Measure(以下 COPM)を使用し た結果,「包丁が使える」(重要度 10,遂行度 1,満足度 1),「はさみが使える」(重要度 10, 遂行度 1,満足度 1),「ひもが結べる」(重要度 10,遂行度 1,満足度 1)が作業ニーズとし て挙げられた.包丁に関しては,独居生活のため全て自分でやらなければならず,特に包丁 操作に重きを置いていた.はさみの使用やひも結びに関しては,百姓仕事や趣味の盆栽で必 要であると話された.介入当初,病棟看護師より利き手交換が必要となるかもしれないと話 されていたこともあり,退院後の生活に不安を抱えていた.しかし,作業観察のため,実際 に包丁やはさみを使用することを提案すると,「こんなに動くとは思わなかった.これなら 料理や野菜の収穫もできそうです.」などと嬉しそうに話された.その後は,模擬的な動作 を中心とした練習を行っていたが,作業療法時間以外でも木べらを使用した皮むき動作や, ひも結びの自主トレーニングを行いたいとの本人希望もあり,病室でも自己のペースで練 習されていた.最終評価の COPM では「包丁が使える」(遂行度 9,満足度 9),「はさみが使 える」(遂行度 9,満足度 7),「ひもが結べる」(遂行度 10,満足度 10)となった. 【考察】 本来であれば,クライエントが慣れ親しんだ道具で練習するのが最良であると思われる.し かし,独居であることや病院という限られた環境でも,より実動作に近い道具の使用や環境 での練習を行うことで不安が軽減し,自信獲得に繋がりクライエントの主体的な参加が可 能となったのではないかと考える.

(8)

急性期での離床~事例の主体性に着目して~

大町 昭彦1) 千々和 実緒1) 西尾絵里香2) 1)千鳥橋病院 2)城浜診療所 【はじめに】 急性期では全身状態改善の為に離床の重要性についての報告は多数あるが、筆者はどのよう に離床を進めていくかについて葛藤することが多い。今回筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)発 症し、人工呼吸器管理となった事例を集中管理治療室(以下ICU)から担当した。セラピスト が、事例が主体的に活動出来るよう介入する中で変化が得られたので報告する。 ※なお、発表に関しては本人に十分な説明をし、同意を得ている。 【事例紹介】 70 代女性、長女と同居。40 年間トラックの運転手であった。趣味である押し花で教室を開 いていた経歴をもつ。他院にてALS の診断を受け、球麻痺優位に進行し、その2ヶ月後発語困 難、嚥下障害にて胃瘻造設目的にて当院入院。介入当初ALS の重症度分類 Stage3。意思疎通 はジェスチャーか筆談でおこなう。ADL は全介助レベル。 【経過】 胃瘻造設後状態急変しICU 入室後、終日人工呼吸器管理となる。人工呼吸器管理後よりリハ ビリ介入する。人工呼吸器はモード終日SIMV、PS8cmH2O で設定され、介入当初はセラピス ト主導で「誤嚥予防、人工呼吸器離脱にむけてベッドからの離床」を目標に介入した。離床し 換気向上すると、人工呼吸器も一時的に離脱可能だったが、事例は人工呼吸器に依存し、人工 呼吸器の離脱に恐怖心があり介入に対して「分からない」と訴えることが多く、離脱時間も20 分以内だった。事例の趣味である押し花を提案したが、病前の様に作業が出来ないことで拒否 がみられていた。そこで、Dr.へ同行を求め、吹き流しで散歩を行い病室から出られることを経 験してもらった。また、押し花は事例が難しい行程をセラピストがサポートしながら行った。 一度作品ができあがると、リハビリの時間では主体的に離床出来るようになり、セラピストが 指導を受ける立場として介入することで、事例は教師として指導したり、他患者へ作品を手渡 す場面がみられた。人工呼吸器離脱にはならなかったが、日中CPAP 管理、PS6cmH2O へ設 定変更され、人工呼吸器離脱時間1時間以上可能となった。また、他患者やご家族と押し花を 共に行い、笑顔が見られるようになった。 【考察】 急性期では医学的な立場からどうしてもセラピスト主導の介入になることが多い。本事例 は、人工呼吸器を離脱する恐怖心からセラピスト主導の介入では上手くいかなかった。今回セ ラピストが作業の出来る環境を調整する過程のなかで、パートナーシップが築かれ作業の可能 化に繋がったと考える。今回の経験を、急性期作業療法の一部はクライエントが環境に繋がっ ていく最初の援助をになうものとして、今後に活かしていきたい。

(9)

他職種連携で術後指導を行い,功を奏した事例を通して

―ある看護師との関わりから―

○大西千香子,福井麻紀,松本周三 公益社団法人鳥取県中部医師会立三朝温泉病院 【はじめに】 当院OT部門では人工股関節全置換術(以下THA)及び人工骨頭置換術(以下BHA,共に 後方アプローチ)の患者に対し,当部門で作成したパンフレットを基に脱臼予防を意識した 生活動作訓練を行っている。今回BHAを行ったある患者に対する担当Nsの関わりを機に, パンフレット改訂や他職種との勉強会を開催し,より連携を深める取り組みを行えたので報 告する。尚,報告に際しては本人から同意を得た。 【事例紹介】 A氏80代女性,6人暮らし。右大腿骨頚部内側骨折しBHAを行う。両人工膝関節置換術 既往。しっかり治して自宅に帰り,趣味のグランドゴルフや畑仕事をやりたいとの希望有り。 【経過】 Ⅰの関わり(A氏へのOT介入);クリニカルパス(以下パス)に準じ,パンフレットを基に脱 臼予防を意識した生活動作訓練を実施。A氏は退院後に必要な生活動作を獲得し,グランド ゴルフも可能となった。但し,畑仕事は,ご家族の同意が得られず,断念する結果となった。 Ⅱの関わり(担当Nsの介入);担当Nsからパンフレットの確認あり。その後独自のパンフ レットを追加で作成され,OTと合わせて生活動作指導の介入有り。そのパンフレットには 患者主観による自信確認欄も盛り込まれていた。 Ⅲの関わり;パンフレット内容の周知度の低さ,患者の自信や想いに対するフォローの不十 分さに気づいた。そこでパンフレットの改訂を行い,患者主観での自信確認欄や退院後の患 者の価値ある作業についての項目を追加し,院内の全職員対象に勉強会を実施した。 【考察】 今回担当Nsからは,患者の自信確認欄を設けた独自のパンフレットをNs間で共有した事 で,患者自身の肯定的な発言,病棟Ns同士や病棟Ns対患者との関わりが増え,更に先を 見据えながらの関わりが出来たとの意見があった。これを受けOTパンフレットに患者の自 信確認欄を設け,更に患者にとって価値ある作業についての項目を追加し,一般化された内 容に個別化を図った。この事により患者主観に沿った進捗状況や価値ある作業が誰でもわか りやすくなり,多くの職種を介した細やかな関わりが出来る様になったのではないかと考え る。又,これをより多くの部門へ展開する為,院内の全職員を対象とした勉強会を開催し, パンフレットの周知を図り共有を促した。併せて,この勉強会を開催した事によって,OT の仕事内容や価値ある作業への関わりを理解してもらう機会となり,同じ目的を共有し,連 携を実践しやすい環境づくりが出来たのではないかと考える。

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股関節鏡視下手術後の患者に対する IADL 拡大を目的とした作業療法の実践

竹本政則 1),水池千尋 1) 1)大久保病院 【はじめに】 Femoroacetabular Impingement(以下,FAI) は,臼蓋縁と大腿骨頸部での衝突によって生 じ,股関節唇の損傷や股関節痛を呈する病態である.保存療法によって改善がみられない場 合,鏡視下で骨棘切除を行い,合わせて股関節唇修復術を行われる.当院では 2013 年 5 月 から理学療法に加え作業療法士による整形外科急性期病棟での病棟リハビリを開始し,ADL 訓練を中心に術後早期からリハビリテーションを行っている.今回,股関節鏡視下手術後の 患者に対する作業療法実践を行ったので,いくつかの知見を加えて報告する. 【事例紹介】 事例は,両側 FAI と診断された県外在住の 20 代女性.鏡視下にて股関節唇縫合術と腸脛靭 帯移植術を施行された.事前に研究の目的や手順を十分に説明し,文書にて同意を得た. 【調査方法】 日本語版 POMS 短縮版検査(以下,POMS)を用いて,気分の状態について質問した.今回は, 測定時の気分の状態について,術前と術後 1 週ごとに調査を実施した. 【作業療法介入経過】 病棟でのセルフリハ指導と日常生活活動(以下,ADL)練習については理学療法士と連携して 行った.入院当初から早期の入浴自立に対する希望が強かったので,許可された範囲の荷重 (9kg)と股関節可動域内で入浴動作の練習を実施し,術後 9 日よりシャワー浴自立となった. 術後 6 週で全荷重となった.この時期に作業療法士による屋外歩行,公共交通機関の利用や 買い物の評価と練習を行った. 【気分状態の変化】 POMS の結果,手術前は[不安-緊張]が高く,[活気]が低く,[混乱]が高かった.術後 1 週では[不安-緊張]が術前より低くなったが依然高値で,[混乱]は高値を維持していた. 術後 2 週で[不安-緊張]が大きく下降し,[活気]が上昇し,[混乱]が下降した.その後 は同様のパターンを示していた. 【考察】 FAI 患者の股関節鏡視下手術後のリハビリにおいて,術後早期から評価と作業療法の介入を 実施した.心理面において術後 2 週から不安が軽減していた.本人の hope を満たした上で 荷重や可動域制限範囲内で ADL 及び手段的日常生活活動(以下,IADL)を安全に向上するこ とができたことによると考えられる.今回の実践を通して,下肢の整形外科疾患に対しても 作業療法士が介入する余地があることが示唆された.

(11)

自助具の使用によって意味のある作業が進めやすくなった脊髄損傷者の事例

―作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を使用して―

髙橋一滋,坂田崇好,淺井菜緒 朝日大学歯学部附属村上記念病院 【はじめに】 今回, 自発性低下,悲観的な言動が見られた脊髄損傷者に対して, 自助具の使用をきっかけ に機能訓練や作業活動に対して意欲的に取り組むことができ,ADL と作業満足度が向上した 事例を経験した. 【事例紹介】 A さん,80 代後半,男性.元運送業.妻と二人暮らし,妻は足が悪い.息子夫婦は少し離れた町 に,孫は同市内 30 分圏内に居住.責任感が強い性格.半年前より頸部痛訴え他院外来通院中 に転倒, 脊髄損傷(C3-C5 不全損傷)と診断される.FIM は 51/126 点(運動:22 点認知:29 点)MMT は上腕二頭筋 3, 上腕三頭筋 3,肘屈曲 3,手関節背屈 3,手関掌屈 2,手指屈曲 2,両 側の肘,膝以遠には強い痺れを認めた. 【介入経過】 当初,床上安静が 20 日程継続.A さんはネガティブな発言が多く, 自己身体や行為に対して 悲観的にとらえていた.作業面接は ADOC(作業選択意思決定支援ソフト:以下 ADOC)を使用し た.面接では, ①起き上がり/立ち上がり②排泄③食事④屋内移動⑤整容の5つを選択.特に 整容,食事,排泄は「他人に迷惑かけると申し訳ない,身の回りのことだけは自分でしたい」 と語った.介入は手指・上肢機能と作業活動(整容,食事,排泄)を中心に行った.徐々に,笑 顔の頻度,趣味や興味などの自分史を自発的に語る機会が増え, ADL(FIM:51→65 点)と作 業満足度(5項目全てが3点以上)が向上した. 【考察】 自発性低下, 悲観的言動があった A さんに対して,自助具を用いることで, 動機付けとして の成功体験を経験され,足が悪い妻や他人(医療従事者)に迷惑をかけたくないという思い もあり,自発的でポジティブな言動につながった.また,その後の ADOC での面接, 機能訓練 や作業活動をスムーズに進められたと考える.実際に語りの中からも「意外にできるな,これ ならできそうや」という言葉がきかれた.また,A さん自身が行いやすい自助具の装着方法を セラピストに自発的に提案されるなど行動変容にもつながったと予測される.このように自 助具(道具)使用をきっかけに快情動がもたらされ, 行動変容につながることが再認識する ことができた.

(12)

「将棋は好きでっせぇ」から支援する

志村邦康 洛和会音羽記念病院 【はじめに】 当院は腎臓疾患総合病院であり,透析導入やシャントトラブル,長期療養,リハビリテー ション目的に至るまで広く透析患者の治療と支援を行っている.腎臓リハビリテーション は透析中の運動療法が注目されているが,暮らしを彩る作業を確認して生活を再構築して いくことも同様に大切と考えている.今回は慢性腎不全と硬膜下血腫を呈した男性と家族 の暮らしを支援した経験を報告する.また,発表について対象者とご家族の同意を得ている. 【事例紹介】 自宅で転倒し硬膜下血腫を呈し,受診した病院での入院治療も考慮されたが,認知症の進 行と安静が保てないことを理由に自宅療養をしていた.1週間後血腫の増大がみられ近隣 病院での入院となったが,夜間徘徊が目立ち,家族も付き添いを継続することが困難となり, リハ目的で当院に入院となった.入院2日目の夕方に看護師に暴力を振るいスリッパのま ま独歩で離院し,約2km先の警察署前で保護されるなど不適応な行動が目立っていた.ま た家族は「家に帰らせてあげたいけど,よくこけるので心配」といった身体的な問題と不慣 れな環境での長期療養による認知機能の低下を心配されていた. 【介入】 OT初回面接時に「将棋は好きでっせぇ」「ここでもできますの?」などの発言がみられた 為,将棋を介した療養環境への適応に働きかけた.実施場所をナースステーションからその 様子が確認できる談話室に設定し,病棟スタッフにも穏やかに過ごしている様子を確認し てもらえるよう配慮した.並行して転倒を予防するため応用行動分析学を利用して歩行姿 勢や不適切な行動の改善を促進した.家族には,丸石らの社会適応障害調査票をチェックリ ストにしたものをお渡しして、入院前後の行動変化と介入の効果について確認して自宅療 養の安心材料にしようと考えた.介入初期の身体・認知機能は MMSE:27/30,HDS-R:24/30, FAB:13/18,TMT-A:208s,FBS:52/56,チェックリスト(家族用):31/140 であった. 【結果】 約3ヵ月の介入で MMSE:30 /30,HDS-R:26/30,FAB:14/18,TMT-A:80s,FBS:53/56, チェックリスト(家族用):2/140 と改善,自宅退院となり透析通院が可能となった.退院時 の助言としてデイなどで生活の中に将棋が行える時間を再構築していくことを提案した. 【考察】 高齢や高次脳機能障害によって環境への適応能力が低下し,認知機能に大きな低下がな くても不適応な行動が目立つことがある.急性期での作業を用いた介入は患者に安寧を提 供し,家族に向けたチェックリストの提供は退院への安心を提供できると考えている.

(13)

機能訓練を実施していたクライエントに COPM を用い関わった事例

沖田 直子1) 1)医療法人進正会 寺下病院 【はじめに】 今回、回復期病棟に入院する 70 代男性を担当した.機能訓練中心だったが、COPM を用い A 氏がやりたい作業に焦点をあて介入した経過を報告する.なお、症例の同意を得ている. 【事例紹介】 70 歳代男性.一人暮らしで ADL 自立.波止づりとカラオケへ行くことが趣味.地元の釣 りクラブへ入りクラブ雑誌へ掲載するほどの腕前であった.また、近所の人とカラオケへ行 く事が楽しみで、聞く人が喜んでくれることが喜びだと話した.脳幹梗塞を発症し ADL に介 助を要した.左 BRS:上肢・手指Ⅵ MMSE:30/30 点 FIM:85 点 【評価】 作業療法の説明後 COPM を実施した.「そんな想いでリハしてくれると嬉しい」と話し、① 車いすでトイレに行く(満足度 4)②料理をする(満足度 2)③カラオケに行く(満足度 2) ④釣りに行く(満足度 2)すべての項目において遂行度は 1 点であった.動作観察より、フ ットレストのあげ忘れ等により転倒のリスクが伺えた.また、包丁や針の操作時に失調が著 明となり、見守りと時間を要した.立移動作は支持物にもたれることで可能であった.A 氏 と話をし①車いす自走しての排泄動作自立②簡単な調理ができるを目標とした. 【プログラム】 ①他職種への情報共有②車いす駆動訓練③排泄動作訓練④調理訓練⑤釣りの仕掛けづくり 【経過】 PT・ST へ COPM で得た内容を伝えた、PT と協力し反復練習と振り返りを促す事で、介入 10 日後に排泄動作自立に至った.調理は、滑りを防ぐための環境設定を行い、徐々に難易 度をあげた.また、調理場面を PT・ST・SW にみてもらう場面を設定した.失調症状は残存 するものの、材料の固定の安定性が向上し小アジを捌くことが可能となった.そして、自宅 から釣り糸や針などを持参し、仕掛け作りを行った. COPM にて再評価を実施した.①車いすでトイレに行く(満足度 10)②料理をするは(満足 度 10)、遂行度・満足度共に向上した.FIM も 112 点と院内 ADL は自立に至った.現在も当 院 PT へ通院されているが、釣りにはまだいけてないけど、自分でさばいた刺身をたべてい るよとはなされた. 【考察】 COPM の満足度や遂行度の上昇は、移動を含めた排泄動作を PT と協力し反復訓練を実施す る事で、早期に動作獲得した事や、調理訓練やそれに必要な機能訓練を実施し、A 氏自身が できると実感したためと考える. この事例を通し、病院内で実施した作業療法が自宅生活につながっていると実感できた.今 後もやりたい事が、退院後の生活につながるように支援していきたい.

(14)

②回復期リハ病棟で作業に焦点を当てる

ファシリテーター

藤本 一博 (茅ヶ崎新北陵病院)

齋藤 佑樹 (郡山健康科学専門学校)

澤田 辰徳(イムス板橋リハビリテーション病院)

三階 研修室2

「夫」としての役割の再獲得に繋がった高齢CVA事例

ー人間作業モデルの視点からー

新横浜リハビリテー

ション病院

赤塚 花実

2

当院での回復期リハビリテーションOT標準パスの紹介と実践に向けた

取り組み

近江温泉病院

加藤 智志

当院のリーズニングシートを用いた面接トレーニングの成果

イムス板橋リハビリテー

ション病院

夜久 風由香

10年ぶりの料理をきっかけに病棟生活が変化した症例

東大阪山路病院

西村 昭宣

不安を整理し,今やるべき作業に気づき目標設定につながった事例

たたらリハビリテー

ション病院

真田 千里

くも膜下出血により無動無言症を呈した症例への介入報告

-余暇活動に対する環境制御装置の有用性-藤田保健衛生大学七栗

サナトリウムリハビリテー

ション部

石橋 美奈

目指せ「スコア120!!」

医療法人社団苑田会苑田会

リハビリテーション病院

大舘 哲詩

馴染みある作業を手段的に用いてADLが自立した事例

イムス板橋リハビリテー

ション病院

北田 有美

重度症例が大切にしていた作業を再獲得するまで

明石リハビリテーション

病院

山田 祥子

10

調理活動より覚醒の向上とBPSDが改善した事例

済生会小樽病院

白井 美奈子

11

中枢神経障害により対応困難な事例に対し作業活動による介入

―書道という趣味活動に着目して―

東川口病院

森 裕美

12

「以前の生活を変えたい」と語った事例に対する役割へのアプローチ

みどり野リハビリテー

ション病院

平石 暢之

25

(15)

「夫」としての役割の再獲得に繋がった高齢 CVA 事例

―人間作業モデルの視点から―

赤塚花実 1),笹田哲 2) 1)新横浜リハビリテーション病院,2)神奈川県立保健福祉大学 【はじめに】 遂行能力の低下が自己効力感の低下を招き,役割を喪失したと感じていたクライエントに対 し,人間作業モデルを用いて介入を行った.その結果,遂行能力の改善と個人的原因帰属の 変化をもたらし,役割の再獲得に繋がったのでここに報告する. 【事例紹介】 80 歳代男性,脳梗塞.妻,長男との 3 人暮らし.キーパーソンは近隣に住む長女.妻は要 介護 5,ADL 全介助,小規模多機能型施設のサービスを利用しながら週 2~3 日を自宅で過ご す生活を送っている.クライエントは妻の排泄介助や簡単な食事の準備等,夫として妻の介 助を行うという役割を担っており,今後も担っていきたいと強く希望していた.約 1 ヶ月半 前に脳梗塞を発症し,保存的加療後リハビリテーション目的で当院に転院となった. 【介入経過】 第Ⅰ期(44~81 病日,FIM72 点→97 点):入院時のクライエントは遂行能力と自己効力感の 低下を認め,問題点の焦点化やセラピストとの目標共有が困難な状態であった.よって第Ⅰ 期では,更衣やトイレ内動作の ADL 獲得を目指した身体機能訓練を行い,クライエントが主 体的にリハビリに取り組めるようになることを目指した.第Ⅱ期(101~138 病日,FIM91 点→106 点):胸水貯留治療の為に転院し,20 日後に再入院.第Ⅰ期で遂行能力の向上と ADL 獲得を認めた為,自己効力感の向上を目指して IADL 練習を中心に行った.第Ⅲ期(139~189 病日,FIM106 点→113 点):ADL が自立し,IADL も可能な範囲で行っていくと選択出来るよ うになったクライエントは,真のニーズであった妻との関わりについて,自身の能力を把握 し妻への介助方法を模索するようになった. 【考察】 入院時のクライエントは,夫として妻に関わる役割を今後も大切にしたいと考えていた(価 値).しかし,身体機能の低下(遂行能力)により病前の役割を担うことが困難になったこ とから喪失感を抱き(個人的原因帰属),退院後の生活に希望を見出せなくなっていると考 えられた.役割の再獲得の為には遂行能力の向上が必要であり,また病前とは異なる遂行能 力であっても「役割が担える」という個人的原因帰属の向上が必要と判断し,遂行能力と意 志の側面に着目した介入を行った.このことが,直接的な身体機能訓練と ADL・IADL 練習の プログラム選択を可能にさせ,遂行能力の向上と共に個人的原因帰属の変化をもたらす結果 となり,役割の再獲得に寄与したものと考えられる.

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当院での回復期リハビリテーション OT 標準パスの紹介と実践に向けた取り組み

加藤智志 1),石黒望 1) 1)近江温泉病院 総合リハビリテーションセンター 【はじめに】 回復期リハビリテーション病棟(以下回リハ)の作業療法では、クライエント(以下 CL)の 思いを聞き取りながら変化する目の前の個人因子に焦点をあてた介入を行い、早期に心身機 能の安定を図った後、具体的な生活に向けた思いの実現に向け、CL 自身の思いに寄り添う 作業を基盤とした介入が求められる。当院の作業療法ではこの視点を軸に作業療法士が CL に介入できるよう、近江回復期リハビリテーションOT 標準パス(以下OKOS パス)を作成した。 今回、この OKOS パスの紹介とパスの実践に向けた取り組みについて報告を行う。 【OKOS パスの紹介】

OKOS パスは回リハでの入院期間を、1:Top to bottom の視点を取り入れながら病棟環境へ の初期適応に向けた優先順位の高い課題特定・介入を行う時期である(①病院環境適応期② 初期集中期③経過期)、2:True top down の視点で自宅環境への適応や自宅生活での役割獲 得に向けた優先順位の高い課題特定・介入を行う時期である(④加速期⑤後期集中期⑥目標 環境適応期⑦ステップアップ期)、3:生活期との連携を行う時期である(⑧伝達期)に分けて いる。それぞれの時期で『作業』療法士としての「実践のための専門的リーズニング」を身 につける OTIPM で介入し、『作業』療法士としてニーズに答える生活行為向上マネジメント を活用しながら多職種または地域との連携を図り、臨床実践の中で活かせるよう構成される。 【実践に向けた取り組み】 CL に対し面接実施、チームミーティングで各 時期を意識した介入モデルの確認・修正の指導、 AMPS 認定評価者による作業評価・観察指導、退 院時報告書への生活行為申し送り表の添付、作 業に焦点をあてた症例報告の指導、県内でのト ップダウン勉強会・AMPS 講習会の開催等、作業 を基盤とした介入や生活期への申し送りがで きるシステム作り・教育を行っている。 【まとめ】 OKOS パスを実践して、面接や作業課題が実施困難な重症例の CL などに対しパスを活用で きない場合もあり、実践する私たちの課題がまだ多い状態ではあるが、このパスを用いる事 で作業を中心としたプログラム立案や CL や多職種と作業を中心とした会話が多くなり、『作 業』療法士の専門性を意識できるようになったと思う。今後、全ての CL に実践できるよう 研鑽を行い、CL の思いに寄り添う作業実践ができるパスとして効果を検証・報告していき たいと考える。

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当院のリーズニングシートを用いた面接トレーニングの成果

―OTR の面接を通じて―

夜久風由香 ,澤田辰徳 イムス板橋リハビリテーション病院 【はじめに】 面接でクライエントを知ることは作業療法において重要である.しかし,面接でクライエ ントの思いを共有することは,しばしば困難で知識と技術を要する.今回,当院で利用して いるリーズニングシートを用いて面接をトレーニングし,有用であったため報告する.尚, 報告にあたり対象者に同意を得ている. 【方法】 当院のリーズニングシートは,「その作業をする動機」,「作業の動機・価値観につながる 人生のエピソード」,「価値観・役割・生きがいの意味」の構成からなる.今回,COPM で 挙がった作業に対して,経験者からの面接講義を受けた上で,このリーズニングシートを用 い,面接トレーニングを行なった.対象者は30 歳代.女性,臨床 10 年目の OTR であった. 【リーズニング】 COPM では「旅行にいきたい」というニードが挙がった.その作業についてリーズニン グシートに沿って面接を進めた.動機では,「知らない世界を知ることができるし,リフレ ッシュできるからやりたい」ということが聞かれた.その背景のエピソードとして,演者が 理解できない感覚(価値等)について質問していった.幼少期の A 氏は,病気がちな弟がいる 影響から,両親や周囲を心配させないよう,良い子で自活した人でいる必要があり,良い長 女の責任を果たすために自分の感情を抑圧して振舞ってきた.その我慢のため,家族や同年 代の輪に十分に溶け込めず寂しい思いをした経験から,集団から孤立することへの恐怖心が あった.ゆえに,責任を果たす義務を持つと共に人とつながることへの価値も持っている. 一方で,責任を果たすことの疲労から,そのようなしがらみのない世界に居心地のよさを感 じ,その一つが旅行であった. 【面接者OTR の変化】 演者はトレーニング前,作業の文脈について疑問に思うことはあっても深く理由が出てこ ない場合,釈然としなかった.しかし,トレーニング後は,クライエントの作業の動機の源 が明確となり,CMOP-E で示されるようなスピリチュアリティを理解し共有できる感覚に 至った. 【考察】 本リーズニングシートを用いることは,クライエントの背景や作業の動機,多くの作業歴 の中から,クライエントのスピリチュアリティを知るための過程を構成的に援助するものと 考える.つまり,シートに書かれている繋がりを考慮してクライエントを理解することは, 演者が共有できないクライエントの思いを構成的かつ倫理的に解釈する手立てとなり,最終 的にクライエントとの共通の理解地平を確立する一助になると考える.

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10 年ぶりの料理をきっかけに病棟生活が変化した症例

西村昭宣 1),平山奈緒1),古市貴実 1),米元佑太1),菅野安須加 1) 1)孟仁会東大阪山路病院 【はじめに】 脳梗塞右片麻痺を呈した症例を回復期において担当した.臥床傾向にあった症例が,10 年ぶりの調理訓練をきっかけに病棟での活動範囲の広がりや,他者との交流が増えた症例を 経験したので以下に報告する.尚,本発表に関して本人・家族に口頭にて了承を得ている. 【事例紹介】 60 代,女性A氏.脳梗塞右片麻痺.夫と二人暮らし,10 年程前から人工透析施行し以降 料理を含む家事全般を夫が実施.日中のほとんどをベッド上で過ごす生活を送っていた. [既往歴] 糖尿病,狭心症,脳梗塞,右大腿骨骨折,右下腿骨折 [心身機能面]固定型歩行器にて見守りレベル.見当識,記憶,認知機能の低下が認められた. 作業療法面接では簡単な質問でも夫へ意見を求める事が多く,夫がいなければ情緒不安定に なる事があった.リハビリに対して拒否をする事が多く,何事に対しても消極的で自らの希 望を述べる事はなかった.コミュニケーションは可能であるも,表情は乏しく俯いている事 が多かった.自発性,発動性の低下によりベッド上で過ごす時間が長く,家族が面会に来て いても横になっている事が多かった. 【介入経過】 作業療法開始から一ヶ月後,様々な事に対して拒否が強かったA氏より面接の中で「料理 がしたい」と初めて希望が聞かれた.帰宅後に役割をもって楽しめる作業として,夫と料理 が出来る事を目標に調理訓練を実施した.自宅で行う際の環境設定や注意点・介助方法を共 有する為に夫の同席を依頼した.事前に材料や手順を記載し,手順を確認しながらA氏が主 体的に行えるようにした.料理はA氏,家族,スタッフで食べ,「美味しかった,上手に出 来ていた」等のポジティブフィードバックを実施した. 調理訓練後は表情が豊かになり,「今度は何を作ろうか」と次の調理訓練に意欲をみせ, 自宅での外泊中に夫と料理をするなど積極性も向上した.また,病棟生活において徐々に車 椅子に座る時間が増え,看護師や他患者と交流を持つようになり活動範囲が広がった. 【考察】 本症例は 10 年程前から身体機能が徐々に低下し,様々な役割を喪失する経験してきたと 考えられる.役割の喪失は自発性・発動性等の精神機能を低下させ,臥床時間の延長といっ た悪循環を生じさせていたと考える.今回夫と料理が出来た達成経験,他者からのポジティ ブフィードバックという言語的説得により,自己効力感が高まったと考えられる.Matheson ら 1)は「有能性への衝動は自己効力感に基づく成長の為の動機づけを提供する」としてい る.自己効力感の高まりは自発性や発動性の向上に繋がり,車椅子座位時間の延長,他者と の交流機会の増加といった行動変容が生じ,正循環へと移行出来たのではないかと考える. 【引用文献】1)MaryLaw(宮前珠子/長谷龍太郎・訳):クライエント中心の作業療法 カナダ 作業療法の展開.協同医書出版社,東京,2006,pp123.

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不安を整理し,今やるべき作業に気づき目標共有につながった事例

真田千里1) たたらリハビリテーション病院1) 【はじめに】 本事例に対し作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を使用し目標共有を図ろうとした.しか し,面接の中では漠然とした今後の生活に対する不安が聞かれ,作業選択ができず目標設定に 難渋した.そこで,本事例の不安を整理していく中で今取り組むべき作業に焦点を当てること ができるようになった経過を報告する.尚,今回の発表について本人より同意を得ている. 【事例紹介】 80歳代男性,脳梗塞により軽度右片麻痺(Grade11-11-10)を呈した.病前は独居,生活保護 を受給し周囲との交流は乏しく,唯一キーパーソンである元奥さんに食事の世話をしてもらう 生活習慣があった.ADL面は全般的に軽度から中等度介助レベル(FIM44/126点 運動:23点,認 知項目:21点).認知面は記憶力の低下(MMSE14点)がみられ,リハビリに対しては受動的で意 欲の低さがあった. 【介入経過】 事例とセラピストが不安を共有し整理することで不安を解消する糸口を見つけることを介入 方針とした.事例が不安に感じていることは大きく3点が挙げられた. ①人とのつながりの喪失=社会的欲求の喪失(元奥さんに見捨てられるという語り) →元奥さんと面談し週1,2回程度の面会時間を確保した.経過の中で『おかあちゃんが来て いったよ』と嬉しそうに話す事例の発言が増えていき,最終的に元奥さんに対する悲観的な 発言はほぼ無くなった. ②安全欲求の喪失(階段がある家では暮らせないという語り) ③経済的基盤の不安(お金がないからやっていけないという語り) →②・③に対し,退院先等については介護保険による生活の幅を選択できる情報を提供し, 安心感を与え今後の生活構築に向けてイメージを共有していった.その中で,不安に対す る訴えが徐々に減少していき,実動作を介して今取り組むべき課題に気づき排泄動作に対 しての目標共有を図ることができた.結果,機能訓練,実動作訓練ともに積極的に介入す ることが可能となった.ADL面では,食事・終日トイレ内動作自立し,FIM66点(1カ月)→78 点(2カ月)→87点(3カ月)と自立度の向上もみられ,変化を実感する発言が増加した. 【考察】 回復期での作業療法には,本人がしたいと思う作業を支援する一方,回復段階にある今やる べき作業がある.本事例は、今後の生活のイメージの不透明さから不安が強まり,作業選択も ままならない状況であった.今回,その不安をセラピストと共有し,整理することで今やるべ き作業に目を向けることができ,目標共有を図ることができた. 今後,さらに事例が主体性を持って生活を再構築できるように支援していきたい.

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くも膜下出血により無動無言症を呈した症例への介入報告

―余暇活動に対する環境制御装置の有用性―

石橋美奈 1),富田 豊 2),宮坂裕之 1)2),中川裕規 1),松浦友紀 1),金森理恵子 1), 川端純平 1),淺野直樹 1),岡本さやか 1),園田 茂 1) 1)藤田保健衛生大学七栗サナトリウム,2)藤田保健衛生大学藤田記念七栗研究所 【はじめに】 今回,くも膜下出血により,両片麻痺,無動無言を呈した症例に対し,自発的な動作を引き 出すことを目的に,症例の興味を引くことができた「テレビ鑑賞」に着目し,環境制御装置 を用いて介入を行った. 【事例紹介】 症例は 40 歳代女性,くも膜下出血,2 度の左末梢前大脳動脈破裂を起こし,コイル塞栓術 を施行.その後,水頭症を併発し両側ドレナージ術,VP シャント術を施行.第 29 病日,当 院回復期リハビリテーション病棟に入院.入院時の身体機能は Brunnstrom recovery stage が両側共に,上肢Ⅱ,手指Ⅳ,下肢Ⅱ,両上下肢の Modified Ashworth Scale は 3,右上肢 は屈曲パターン,左上肢は伸展パターンを呈していた.嚥下機能は,送り込みの障害がある が,咀嚼を伴う形態では,咀嚼を契機に嚥下可能な状態であった.高次脳機能は,行動観察 上,無動無言,発動性低下,右半側空間無視,全般的注意力低下,両手に強制把握を認めた. 基本動作ならびに ADL は全介助レベルであり,Functional Independence Measure は 18/126 点(全項目 1 点)であった.なお,今回の発表にあたり本人および家族の同意を得た. 【介入経過】 1 週目は ADL 動作や病前の趣味活動を実場面で促すという方法で,自発的に動作が行える活 動を模索し,食事とテレビ鑑賞で反応を認めた.4 週目より最も自発的な反応を認めた食事 動作に介入開始.ポータブルスプリングバランサーと母指-示指のウェブスペーサースプリ ントを使用し訓練を実施した.13 週目には軽介助にてスナック菓子の自己摂取が可能とな った.食事動作獲得に目途が立った 9 週目より,テレビのリモコン操作訓練を開始.既製品 のリモコンではボタンが硬く,また,ボタンを押すことに対する反応が出現しなかったため, ボタンの形状を検討.光センサーを使用したタッチセンサー,レバー式のスイッチを使用す るが,いずれも発動性の低下により使用困難であった.最終的に作成した卓上ベルを改良し たスイッチでは,反応を示し,反応の良い日はテレビの電源をつけることが可能となった. 【考察】 症例の自発的反応を利用した作業活動を選択しつつ,工学 的支援を活用することで,重度障害患者の能力を引き出す ことが可能であると考えられた.また,自発性を引き出す ためには,症例の残存機能を把握し,能力に合わせた装置 を数多く用意しておくことも必要であると考えられた. 卓上ベル テレビリモコン 卓上ベル押すとテレビリモコンの スイッチが起動するように接続した

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目指せ「スコア 120!!」

―ボーリングへの取り組みから主体性を獲得できた事例―

大舘哲詩 1) 1)医療法人社団苑田会苑田会リハビリテーション病院 【はじめに】 回復期リハビリテーション病院にて脳梗塞による右片麻痺に加え、廃用症候群、抑うつを 呈した事例を担当した。ADL 訓練中心に作業療法(以下 OT)を行っていたが、変化に乏しか った。しかし、興味関心チェックリストにて抽出された「ボーリング」を通した介入により 主体的参加を得られ、ADL の改善にもつながった。なお、本発表について本人の同意を得た。 【事例紹介】 A 氏、70 代男性。脳梗塞により右片麻痺を呈し、当院にてリハビリテーション(以下リハ ビリ)を受ける。ADL 軽介助まで改善していたが、全身状態悪化により 2 ヵ月程急性期病院 へ転院。当院への帰院時は廃用による心身機能の低下、抑うつ傾向を認め、ADL 全介助の状 態だった。事例に対して、Paper 版 ADOC を用いた面接を行い、「1人で着替えができる」、「ト イレにいける」を目標とし介入を始めたが、変化に乏しく主体的な参加も得られにくかった。 【介入経過】 主体的な参加を得られやすい作業を再検討するために、改めて興味関心チェックシートを 用いた OT 面接を行った。作業に関して事例の語りを引き出していくよう考慮して進めたと ころ「ボーリング」について以前は「週に 5 回通い、1 日に 10 ゲームも行っていた。アベ レージは 200 くらいだった。」との語りを得られた。OT の時間で簡易的なボーリングに取り 組む事、それに必要な道具を共に作成してみることを提案し、本人の了承を得た。 「ボーリング」はペットボトルを用いたピンなどを作業療法士と製作することからはじめ、 毎回 1 ゲームのスコアを記録した。初回のスコアは 55 で事例から「120 は取りたいな」と 前向きな目標が語られた。遂行技能評価として AMPS の項目にて検討した。(AMPS 課題 P-6、 P-4 で運動技能-0.24 ロジット、プロセス技能-0.1 ロジット)ボールの変更やピンとの距離 の設定、投げ方の工夫及び継続的な実践からスコアの改善を狙った。経過の中で事例からは ボールの選択や投げ方について自ら提案するなど、主体的な参加を得られるようになってい った。その頃から ADL への取り組みにも主体性が見られ能力の変化を認めた。3ヶ月の介入 によりボーリングのベストハイスコアは124 となった。また、AMPS 再評価では運動技能0.4、 プロセス技能 0.7 へと変化した。統計的にも有意な変化を認め、当初の目標であった「1人 で着替えができる」、「トイレにいける」も達成された。 【考察】 事例にとって「ボーリング」は馴染みがあり、スコアというわかりやすい結果が向上する ことで主体性を引き出すことにつながったと考えられる。回復期においても ADL に限らず余 暇活動としての作業も検討し焦点化することで主体性を高め回復を促進する可能性がある。

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馴染みある作業を手段的に用いて ADL が自立した事例

北田有美 澤田辰徳 入沢健 イムス板橋リハビリテーション病院

【はじめに】前頭葉障害による意欲低下によって Activities of Daily Living(ADL)に介助 を必要とする事例に対しての代表的訓練には言語的促しと強化報酬がある.しかし,クライ エントが直接介入に拒否的な反応を示す場合もある.今回,馴染みある作業を手段的に用い た結果,楽しみや役割の体験から意欲の向上がみられ,ADL 自立に繋がったため,その経過 を報告する. 【事例紹介】A 氏,70 歳代後半の男性.世話好きな性格であった.ある日,トラックと接触 しそうになり,自転車より転倒,頭部外傷にて両前頭葉損傷となる.明らかな麻痺はなかっ た.意欲低下から ADL は依存傾向により介助が必要であった. 【面接】ニードは本人・家族ともに食事・更衣・整容・トイレ・入浴の自立が挙がった.馴 染みある作業歴には絵画,書道,園芸,洗濯物たたみ,カラオケ,天体調べ,菓子作りであ った.背景には,幼少期芸術に対しての高評価を受けていたこと,母親から園芸の知識を学 び,現在は園芸を趣味とする妻へ助言する役割があったこと,洗濯物たたみが自宅内役割で あったこと,カラオケ・天体が趣味であったことが挙げられた. 【観察評価】ADL 練習に対して直接的介入を行おうとしたが,拒否的発言があった.また, 促すと ADL 動作は可能だが,すべての動作に声掛けがないと作業を行うことができなかった. その他,何をするにも意欲低下がみられ,日中はベッド臥床傾向だった.ベッドサイドにて 馴染みある作業の話をすると笑顔がみられた.Fundamantal independence measure(FIM)は 食事 2 点,整容・更衣・トイレ・入浴 5 点であった. 【解釈】ADL の直接介入の拒否は,前頭葉障害の意欲低下によるものと思われたが,介助に 依存的であることから,作業自体に興味,関心がないと推察した.そのため,動機付けのし やすい作業から楽しみや役割の体験を通す方が A 氏に有用だと考えた. 【目標】馴染みある作業を行い,楽しみや役割の体験から意欲が上がり,ADL が自立となる. 【経過】ベッド臥床傾向にあるA氏に対して作業を段階付け,難易度の低い工程から行った. まず,家の役割でもあった洗濯物たたみと園芸の水やりを反復作業として行った.それらが 習慣になってきた頃,A 氏が作業療法士に園芸を教えるという役割を提供した.A 氏は役割 を果たそうと主体的に取り組んだ.更に,日中の時間で大人の塗り絵(絵画は自由度が高い ため実施せず)や音楽鑑賞,天体調べを行うよう提案した.塗り絵や書道の作品はリハビリ 室や自室に展示し,他者から称賛される機会を設けた.結果,A氏は他者から称賛される嬉 しさを体験し,実践した作業は促しがなくても主体的に行えるようになり,介入から 2 ヶ月 後には全ての ADL が自立(食事・整容・更衣・トイレ・入浴とも FIM7 点)となった. 【考察】拒否があるクライエントには作業を基盤とした実践が困難である.そのような場合, 経験があり主体的に参加できそうな作業を用いることは有用である可能性がある.また,近 年,作業の手段的利用は姿を消しつつあるが,本事例のように伝統的な作業の手段的利用が 有効なケースもあり,介入手段の一つとして有効であると考える.

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重度症例が大切にしていた作業を再獲得するまで

―ノンアルコールビールが飲めるようになる―

山田祥子 1), 1)明石リハビリテーション病院 【はじめに】 今回,重度の脳血管疾患の事例に対し介入を行った.結果,発症前より事が習慣にしていた 作業を介助下で実施可能のとなり事例の笑顔をみることができた.今回の経験に考察を加え 以下に報告する.なお今回の発表に対して事例・家族に十分説明し同意を得ている. 【事例紹介】 60 歳代女性.夫と二人暮らし.脳血管疾患発症し,リハビリテーション目的に当院入院と なった.問いかけに対して開眼行う程度で食事は胃瘻より注入を行い FIM18 点.全身に拘縮 あるが普通型車椅子座位可能でバイタルの変動はみられない. 【介入経過】 入院時,家族に趣味や習慣を聴取した.結果,テレビや音楽が好きであったこと,夫と共に 毎夕食時にビールを決まったグラスに入れ,飲んでいたことなどを聴取した. 家族からビー ルが好きであったエピソードを強く話した.スタッフ間でもなんとかノンアルコールビール を飲むことが出来るようにならないか話合った.まず,覚醒の向上を目的にベッドではテレ ビを付けて刺激入力を行い,離床時には,談話室で他患者と共にテレビや音楽鑑賞,スタッフ からの声掛けを行った.その結果,徐々に覚醒が向上し発語や歌を歌うことができた.拘縮の 影響から動きにくい左上肢で食事や引水も軽介助で可能となった.主治医よりノンアルコー ルビールの許可を得て家族に持参を依頼した.家族が多忙だったこと,事例の機能面の向上 を理解できず「そんなことできるはずがない」と時間がかかった.この頃,家族が面会に来た 時に事例が歌を歌う場面や食事が出来るようになった場面を見て出来ることを理解し持参 していただいた.重みを減らすために軽量のコップで飲むことかできた.事例からは笑顔が みられ美味しそうに飲んだ.その場面を見た家族からは「大好きなビールが飲めるとは…ま た飲もうね」と嬉しそうに語った.飲み終わると事例は,パジャマを引っ張る動作がみられ, 私服に着替えたいかとの問いに対し笑顔で頷きがみられた. 【考察】 重度で介入時意思疎通が困難な事例であったが家族からの情報で,スタッフ間でも最終目 標事例が毎日の習慣で大好きであった“ノンアルコールビールを飲めるようになる”とし 目標を共有できた.家族から賞賛の声が聞かれ,事例のできることが増えた事への理解にも 繋がった.事例自身も私服へ着替えたいとのさらなる作業の獲得を目指そうと事例から発信 することが出来るようになった.事例にとっての大切な作業を再開する際に家族との連携は 不可欠である.今回,事例から重度であっても事例らしさが再獲得できること,多忙な家族と も密に情報交換を行う必要性を改めて学んだ.

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調理活動により覚醒の向上と BPSD が改善した認知症の事例

白井美奈子 1),三崎一彦 1) 1)済生会小樽病院リハビリテーション室 【はじめに】 今回,覚醒が低く寝たきりの状態であった脳血管性認知症に対して,過去の役割であった なじみのある調理活動を中心とした介入により覚醒の向上と行動・心理の周辺症状(以下, BPSD)が改善された事例について報告する. 【事例紹介】 80 歳代女性の A 氏は,これまで主婦として家事と二人の子供を育ててきた.今回,脳梗 塞後遺症より当院の回復期リハビリテーション病棟に入院.既往に多発性脳梗塞,脳血管性 認知症.入院前の生活は,日中仕事をしている息子と娘の三人暮らし,介護サービスを受け ていたがベッド上で過ごしていることが多かった. なお,本報告についてご家族より書面 にて同意を得た. 【介入経過】 初回評価は,JCS:Ⅰ-3,麻痺症状はなく全ての ADL に介助を要しており,FIM:25/126 点, N-ADL:6/50 点,CDR:3 であった.病棟生活は,昼夜逆転し,声掛けに対して乱暴な言動が みられていた.作業療法場面では端座位での作業も傾眠が続き,自発的に何かをする場面は みられなかった.面接も出来ず意味のある作業を聞き出すことが困難な状態であった.そこ で,生活歴より家族ために長年行ってきたなじみのある調理活動を治療手段とした.まずは, 端座位で包丁を使って切る工程から開始し,嗅覚刺激の入力より覚醒の向上を図るため材 料に玉ねぎを選択した.A 氏は,涙目になりながらも作業を自ら行う場面がみられた.また, BPSD が助長しやすい夕方の時間帯に工程を段階づけて行い,味噌汁を作るまでに至った. 調理活動の様子をご家族や病棟スタッフに写真と動画で報告すると「こんな事ができるの か。」と驚いていた.また,A 氏に対して「私にもお味噌汁作ってくださいね。」と存在価値 を認めるような肯定的な接し方へ変化していった.A 氏は,次第に身なりを気にして整髪や 服装を整える,愛想よく振る舞う場面が増えた.3 か月後の退院時は,生活リズムの改善が みられ,FIM:64/126 点,N-ADL:21/50 点,CDR:2 であった.自宅生活でもご家族や訪問介 護ヘルパーと共に調理を行えるように環境調整を行った.退院 1 年後の聞き取り調査より 退院時と変わりなく生活されているとのことであった. 【考察】 なじみのある作業を中心とした介入より安心できる環境で作業遂行が可能となり,主婦 としての役割が自己の存在価値を再構築し,BPSD の改善に影響したと考えられる.さらに, 覚醒が低いクライアントに対して玉ねぎなどの材料を活用し,視覚・体性感覚だけでなく嗅 覚への入力を強化したことより覚醒しやすい環境調整を設定できたと思われる.多様な感 覚入力により手続き記憶の想起や主体的な行動が出現されやすくなることが示唆された.

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中枢神経障害により対応困難な事例に対し作業活動による介入

―書道という趣味活動に着目して―

森裕美 1) 1) 東川口病院 【はじめに】 今回,中枢神経障害により注意機能や短期記憶,また,失調を呈した症例を経験した.本 症例(以下,A 氏)は,様々な認知機能障害を呈し介入困難であったが作業活動に参加する ことで,上記の症状が改善したため以下に報告する.対象者と家族に対し,研究の主旨,個 人が特定されないように配慮することを文書と口頭で説明し同意を得た. 【事例紹介】 事例は 80 歳代,女性.趣味は書道とカラオケ.小脳梗塞により右上下肢及び体幹の失調 を呈している.座位耐久性低下により,食事動作や排泄動作,整容動作に介助を要する. HDS-R は 4 点.日中は大声を出し続け,注意,見当識,記憶,理解が障害され作業療法に持 続的参加が困難であった. 【介入経過】 初期は機能訓練を中心に介入したが,注意の転導性により効果が得られにくい状況であっ た.そこで,A 氏の趣味活動に着目し,書道及びカラオケへの参加を促した.また,作業療 法介入の回数を増やし,1 回の時間を短縮することで,注意力の持続を図った. 書字動作は失調の影響もあり拙劣であったが,書道は他の活動と比較した場合,集中して 行う様子が見られ,書字の精度の向上も認められた.カラオケへの参加を繰り返すことで, 他患との交流も見られるようになった. 書道活動を継続することで,座位耐久性が向上し食事動作や排泄動作の介助量が軽減し, 失調による巧緻性の障害も改善し,書字の上達も見られた.また,カラオケに参加すること で他患となじみの関係を構築する様子が見られた.次第に,病棟での暴言,大声,情緒の不 安定さも改善され近日退院が決定した. 【考察】 作業療法への集中力が継続した要因として,1 回の作業時間を短縮することで集中力が途 切れること無く参加することに繋がったと考えられる.また,座位で行う書字動作は座位耐 久性の獲得にも繋がり,安定した座位姿勢の保持は食事動作や排泄動作の介助量軽減に寄与 したと考えられる. スタッフに対する暴言や大声が改善したことは,書道やカラオケに参加することで他人と 関わる機会の増加や,それに伴うなじみの関係の構築により病棟生活に安心感を得ることが できたためと考えられる.また,書道という創作的活動により自己効力感や,自己愛の充足 により情緒の安定に繋がったと考えた.単調な身体的機能訓練の繰り返しではなく,本人に 興味のある作業を介して介入することで注意の持続,情緒の安定に繋がったと考えた.

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車両の作業用照明・ヘッド ライト・懐中電灯・LED 多機能ライトにより,夜間 における作業性を確保して

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2019年6月4日にX-2ペネ内扉に,AWJ ※1 にて孔(孔径約0.21m)を開ける作業中,PCV内 のダスト濃度上昇を早期検知するためのダストモニタ(下記図の作業監視用DM①)の値が作 業管理値(1.7×10

1〜3号機 1 〜3号機 原子炉建屋1階 原子炉建屋1階 除染・遮へい作業の 除染・遮へい作業の