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博 士 ( 理 学 ) 矢 地 晴 一

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 矢 地 晴 一

     学 位 論 文 題 名

Clusters of Galaxies and Cosmological Parameters      ( 銀 河 団 に 対 す る 宇 宙 論 的 パ ラ メ ー タ の 影 響 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  銀 河団 の 形 成過 程 は 丶l宇 宙 モ デル と 密 接に 関 係してお り、銀 河団の性 質から 、宇宙モ デ ル ヘ の制 限 を 導こ うと ぃう研 究が精力 的に行 なわれて いる。 銀河団は 、宇宙初 期の密 度 揺 ら ぎ が自 己 重 カに より 成長し て形成さ れる。 この形成 過程で 解放され た重カエ ネルギ ー は 、 銀 河 団 内 部 の ガ ス を 衝 撃 波 加 熱 に よ り 熱し て 、 銀河 団 は 強 いX線 源 とな り 、 このX 線により銀河団内部の構造を詳細に観測することができる。

  Richstone(1993)ら は 、 密度 パ ラ メー タ の 大き な 宇 宙で は 銀 河団 の 形 成が 比較的最 近 起 こ り 、形 成 の 過程 の痕 跡を不 規則な形 状とし て持って いる銀 河団が多 く期待さ れるこ と を 解 析 的 に 明 ら か にし た 。 この 可 能 性、 特 に 銀河 団 のX線 形 状 と 宇宙 モ デ ルの 関 係 、を よ り詳細に 調べる ため、数 値モデ レによ る銀河 団形成の 研究が、近年いくっか行なわれて い る 。 しか し 、 これ らの 研究に は次のよ うな問 題点があ る。: (1) 銀河団のX線 形状に重 要 で あ ると 考 え られ る ガ ス成 分 を 考 慮し て い ない 。(2)様 々な宇 宙モデル ヘの系 統的な依 存 性 が 十分 調 べ られ てい ない。(3)モデ ルや計 算方法に 不十分 な点があ る。(4)サンプ ´レ と な っ た銀 河 団 の数 が少 な過ぎ る。これ らの問 題点の全 てを回 避した計 算はまだ なされ て いない。

  我 々 は ガ ス と ダ ー ク マ タ ー の2成 分 を 考 慮 し た 計算 を 行 な い、 銀 河 団のX線 形状 の 宇 宙 論 的 パラ メ ー 夕( 密 度/ヾ ラ メ ー 夕Qo、 宇宙 項Ao)へ の 依存 性 を 系統 的 に調 べた。 ここ で考慮した宇宙モデルは以下のものである。:Einstein―de Sitter model G20 ‑ニ1,Aoニニニ0)、

Flat model Gzoニニニ0.3,0.2Ao二ニ1 ‑ sl,0)、Open model(sl,o二ニ0.3,0.2,Ao二ニニ0     重 力 計 算 に はGRAPE3Aを 使 い 、 流 体 力 学 の 計 算 に はSmoothed Particle Hydrody‑

namlcs法を使った。

  計 算の結 果、次の ことが明 らかに なった。Einstein―de Sitter modelでは 、いくっかの subclusterか ら成 る 銀 河 団が 多 く 形成 さ れ 、各sub clusterは球対 称に近 い形状を してい る 。 そ れに 対 し て、Flat modelで は、subclusterを 持った 銀河団は 少ない が、より 不規則 な 形 状 の銀 河 団 が多 く 見 られ る 。Open modelで は 球 対称 に 近 い形 状 の 銀河 団が 多く見ら れる。

  銀 河 団 の 形 状 の不 規 則 性を 定 量 化す る た めに 、 我 々は 、 銀 河 団X線 等 輝度 面 の 形状 の 重 心 変 移、 軸 比 、多 重極 モーメ ントによ る解析 を行なっ た。重 心変移、 軸比によ る解析 で は 、 密 度パ ラ メ ータ の大 きな銀 河団がよ り強い 不規則性 を示し 、同じ密 度パラメ ータの モ デ ル で は、 宇 宙 項を 持っ たモデ ルの銀河 団がよ り不規則 である とぃう結 果を得た 。一方 、 多 重 局 モー メ ン トに よ る 解析 で は 、Flat modelの 銀 河団 が よ り強 い 不 規則 性を 示すとぃ

(2)

う結果を得た。この結果は、近年Einstein・de Sitter modelに代わる有カな宇宙モデルの 候 補 と 考え ら れて い る

Flat model

の 密度 パラメー タに強い 制限を課 すもので ある。

  

こうして定量化された形状の違いの統計的有意性を判定するために、我々は、Kolmogorov・

Smirnov

検定を用いて解析を行なった。その結果、軸比、重心変移によって、

Einstein

・de

Sitter model

が他の宇宙モデルから有意に識別され得ること、また、多重極モーメントを 用 い る こ と で 、

Flat model

Open model

か ら 識別 可 能 なこ と が 明ら か にな っ た 。

58ー

(3)

学位論文審査の要旨 主 査    教 授    藤 本 正 行 副 査    教 授    石 川 健 三 副査   助教授   羽部朝男 副査   助教授   兼古   昇

     学位論文題名

Clusters of Galaxies and Cosmological Parameters      (銀河団に対する宇宙論的パラメータの影響)

  

宇 宙 モ デ ル の パラ メ ー ター を 求め る こ とは 、 現在 の 宇 宙論 の 中 心的 な 問題 で あ る 。宇 宙 モ デル の 研究 は 、 従来 は 、 主として、 遠方の銀 河の性質 を対象と してきた が 、最 近 、 銀河 団 の進 化 と 宇宙 論 モ デルの関連 に注目し た研究が 盛んにな ってきて い る 。 こ れ は 、 こ の間 、 電 波.

X

線 衛 星に よ る 観測 、

CCD

技 術 の 進展 に 伴い 、 銀 河 団 等 の 大 規 模 な 構 造に 対 す る情 報 が増 加 し てき た こと 、 お よび 、 計算 機 の 発展 に よ り、 宇 宙 初期 に おけ る 構 造形 成 の 大規模な数 値実験が 可能とな り、冷た いダーク マ タ ー が 支 配 的 で ある と す る宇 宙 モデ ル が 支持 を 得て き た ため で ある 。 現 在の 標 準 的 な 宇 宙 論 で は 、銀 河 団 は、 宇 宙初 期 の 密度 揺 らぎ が 自 己重 カ の影 響 で 成長 し て 形成 さ れ てき た とさ れ る が、 そ の 形成時間は 、現在の 宇宙年齢 に近いた め、宇宙 モ デ

J

レ が 形 成 過 程 に 与 え る 影 響 を 、 観 測 的 に 識 別 で き る 可 能 性 が あ る 。

  

著 者 の 研究 も 、 その よ うな 新 し い試 みのーつで あり、銀 河団の質 量集積過 程での 衝 突併 合 ・ 融合 の 痕跡 を 、 銀河 団 の 形状の不規 則性とし て捕らえ ようとす るもので ある。 このよう な関連の 可能性は 、半解析 的な近似 法により、

Richstone

達(1992)に よ って 指 摘 され た 。そ の 後 、こ の 可 能性 、 特に 、 銀 河団 の

X

線 で観 測され る形状と 宇 宙モ デ ル の関 係 を調 べ る ため に 、 いくっかの グループ により、 数値実験 がなされ て きた 。 し かし 、 これ ま で の研 究 に は、

X

線 を 出す ガ ス 成分 を 考慮 してい ない、ま た 、計 算 例 が少 な く銀 河 団 の形 状 を 議論するに は不十分 である等 の問題点 があり、

この可能性についての結論は得られていなかった。

  

著者は、これらの問題点を解決するため、ダークマターとともに、ガス成分をSmoothed,

Particle Hydrodynamics

法 で 扱 い 、 重 力 計 算 に 重 力専 用 計算 機

GRAPE3A

を用 い る こ とに よ って、銀 河団形成 の大規模 な数値実験 を遂行し 、宇宙論 的なパラ メー夕f密 度 パラ メ ー 夕、 宇 宙項 ) に 対す る 依 存性を系統 的に調べ た。この 数値実験 に基づぃ て 、密 度 の高いモ デルでは 、銀河団 はsubclustersを含み、 不規則な 形状が多 いとぃ

(4)

う 結果 を示 し、

Richstone

達の 予測 を確 証す ると とも に、 宇宙 項を 含む平坦なモデ ル では 、subclustersは少ないが、球対称からずれた不規則な銀河団が多くみられる との新しい知見を得ている。

  

さらに、数値実験で多数の銀河団を構成したことによって、形状の不規則性の定量 的な解析が可能となり、著者は、形状を、銀河団のX線輝度分布の軸比、重心偏移、多 重 極モ ーメ ント で表 わし 、統 計的 な有 為性の判定にKolmogorvーSmirnov検定を用い て、宇宙モデ少との相関を議論している。その結果、軸比と重心偏移は、Einstein−de

Sitter

のモ デル と開 いた モデ ルと の識 別に有効であるとの、統計的に有意義な結果 を 導き だし 、懸 案の 問題 に対 する 明快 な解答を与えた。また、多重極モーメントを 用 い る と 、 宇 宙 項 の ある平 坦な モデ ルを 開い たモ デル から 識別 する こと が可 能で あることを初めて指摘した。

  

これらの結果は、銀河団の形状の観測から、宇宙モデルの弁別が可能であること、

ま た、 それ に有 効な 解析 方法 を理 論的 に明らかにすることによって、今後の、銀河 団の観測、および、それによる宇宙モデルの研究に重要な示唆を与えるものである。

  

以 上 に 述 べ た 意 味 で 、 こ の 研 究 は 、

CDM

理 論 に おけ る、 銀河 団の 形成 過程 の理 解 、お よび 、宇 宙論 の研 究を 進め る上 で、大切な寄与をなしたと判断される。よっ て 、 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 理 学 ) を 授 与 さ れる 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

参照

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