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博士(工学)遠藤仁彦 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)遠藤仁彦 学位論文題名

親水性 港湾構造物の水工的諸問題に関する研究 学位論文内容の要旨

  これまで の港湾空間は、陸と海とを結ぶ結節点として効率的かっ高度な物流を確立する ために整備 し、島国日本の発展に寄与してきた。社会が成熟してきた現在、港湾空間もこ れまでの物 流・産業のための整備のみならず、市民の生活空間の一部としての役割を付加 した総合的 な港湾空間の整備をするようになってきた。親水性の防波堤や護岸は、総合的 な港湾空間 を創造するために大きな役割を果たすものであり、一般市民に憩いの場、賑わ いの場を提 供することができる司能性を秘めている。

  ただし、 防波堤や護岸は、波を防ぎ港内の静穏を確保したり、背後の用地を守るための 施設であり、実際に海中に転落してしまう事故例が少なくないことからも明らかなように、

人にとって 必ずしも安全な場所ではない。それら施設の天端高さは、本来機能を満足しし かも経済性 を考慮して設計されているため、年間数日は越波するように設定されているの である。利 用者の安全を確保することは親水性施設を整備する上で必要最小限の要件であ り、最も重 要でかっ緊急の検討課題となっている。また、親水性施設では、天端上に利用 者の安全性 を確保するために転落防止用の手すりが設置されるが、このような天端上の施 設に対する 耐波設計法が無かったために越波時に被災を受ける例が少なくなかった。天端 上の施設は 、利用者の安全性のみならず、利便性・快適性を向上させるために設置オるも のであり、 耐波設計法の確立が望まれている。

  本研究で は、親水性施設の整備が今後増加していく状況において、以上のような緊急な 検討課題に 対応するために実施したものであり、親水性施設の総合的な設計技術を確立す ることを目 的としている。

  第1章 は 本 論 文 の 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 に っ い て 述 べ る 。   第2章では、天端上の構造物や人の安 全を検討するための基礎としての位置づけられ、

防波堤上で の越波水の運動の特性にっいて述べる。

  第1節では、混成防波堤を対象にして 比較的低波浪を対象とした越波水の運動特性を検 討した。越波現象は、越波水が直接打ち込んでく・る「打ち込み時」と、その後港内側への 速い流れと なる「越流時」に分けることができ、波浪条件や防波堤構造条件と越波現象と の関係を定 性的に明らかにした。また、防波堤上における越波水の最大水位や最大流速が 任意の位置 で算定できる越波水の運動モデルOWMを構築した。

  第2節では、越波水の運動モデルを高 波浪に対して適用できるように、また種々の防波 堤構造形式 に適用するために、系統的な水理実験を実施した。重複波領域から砕波領域ま での連続的 な越波水の運動状況の変化や、消波ブロック被覆堤やスリットケーソン堤にお け る越 波特 性を 明ら か にし 、波 浪条 件や構造 条件に対するOWMの適用範囲 を拡張した。

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  第3章 で は 、 防 波 堤 天 端 上 の 各 種 構 造 物 の 耐 波 設 計 法 に っ い て 検 討 し た 。   第1節 では、防波堤上の水平天端面・緩傾斜な階段斜面・直立 壁を対象として系統的な 水理実 験を行った。それぞれの施設に作用する波カを打ち込み 時と越流時に分けて波力発 生 メカ ニズ ム を明 らか にし て、 越波 水の 運動 モデ ルOWMに基づ いた打ち込み時と越流時 の波力 算定方法を提案した。

  第2節 では、防波堤上に設置する転落防止用の手すりを対象と して、水理実験および現 地実験 を行った。手すりに作用する波カは流速に依存する抗カ として表すことができるこ と が分 かり 、OWMを基 本と した 波力 算定 法 を提 案し た。現地防 波堤上で手すりに作用す る波カ を測定し、手すり部材破壊状況を観測することにより、算定法の妥当性を検証した。

  第3節 では、親水性護岸の背後舗装を対象に、現地被災事例の 解析および水理実験を行 った。 現地の被災事例から各種舗装の耐波強度特性を検討し、 インターロッキングブ口ッ ク舗装 が最も越波に対して強度が弱いことを明らかにした。水 理実験によって同舗装の破 壊 メカ ニズ ム が明 らか にす ると とも に、OWMを 用い た破壊再現 計算から破壊限界時の越 波流量 を示した。

  第4章 で は 、 親 水 性 施 設 に お け る 市 民 の 安 全 確 保 技 術 に っ い て 検 討 し た 。   第1節 では、新聞記事を検索することによって実際に港内で発 生した海中転落事故の特 徴を調 べた。最も危険度が大きい事故として高波による海中転 落があり、防波堤上の人が 自分の 置かれている危険が分かりにくい状況で事故が発生して いる例が多いことが分かっ た 。ま た、 事 故の 発生 要因 に基づぃて、親水性施設で安全上配 慮すべき事項を示した。

  第2節では、既往の親水性護岸の 入園記録に基づき、入園禁止時の自然条件を検討した。

さらに 、水理実験を行い、天端上にしぶき打ち上がる状況や越 波が発生する限界の状況を 再 現 す る と と も に 、 そ れ ら の 状 況 と な る 波 高 算 定 方 法 をOWMに 基 づ き 定 式 化 し た 。   第3節 では、越波したときに防波堤上に人がいる場合を想定し て、越波によって人が転 倒する 危険状況を検討した。実際の人を用いた実物実験を行い 、流れ中での人の転倒をモ デル化 した。人の転倒条件は、人の身長や体型、床と靴との摩 擦係数、防波堤上の位置に 依 るこ とが 分 かっ た。 また 、OWMを 基本 と して 転倒 限界の波高 算定方法を定式化した。

  第4節 では、最も危険度の高い越波による海中転落にっいて検 討した。人の模型を用い た水理 実験を行い、転落防止用の手すり形状によって人の転落条件が異なることが分かり、

手すり による人の転落防止効果が確認された。また、越波によ って人が海中転落する波高 はOWMを基本として定式化した。

  第5節では、親水性施設の波浪に 対する危険度を評価する手法を提・寨した。施設の危険 度は、 各種危険発生波高と施設周辺での波浪特性から頻度的・ 時間的に評価するものであ り、計 画・設計・管理時において安全対策のために応用するこ とができる。また、本評価 手法を 用いて事例解沂を行った。

  第6節 では 、防 波堤 上の 危険 と越 波流 量 との 関係 にっいて検 討をした。水理実験とOW Mによる 計算から、人が危険となる越波流量が護岸の設計時に用 いる許容越波流量よりも かなり 小さくなることが分かった。

  第7節 では、親水性施設の高波警報システム「クジラくん」を 提案した。このシステム は、利 用者自身がりアルクイムの危険状況を音としぷきで知る ことができることが特徴で あ り 、 水 理 実 験 と 数 値 計 算 よ り 基 本 的 な 音 の 物 理 特 性 を 明 ら か に し た 。   第5章 では 、本 研究 全般 のとりま とめを行い、主要な結論を述べる。第3章での検討に よって 親水性施設天端上の各種構造物に文寸する耐波設計法が明らかになり、第4章の検討 によっ て利用者の安全確保方法を確立することができた。

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(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

親水性港湾構造物の水工的諸問題に関する研究

  これまでの港湾空間は、陸と海とを結ぷ結節点として効率的かっ高度な物流を確立する ために整備し、島国日本の発展に寄与してきた。社会が成熟してきた現在、港湾空間もこ れまでの物流・産業のための整備のみならず、市民の生活空間の一部としての役割を付加 した総合的な港湾空間の整備をするようになってきた。親水性の防波堤や護岸は、総合的 な港湾空間を創造するために大きな役割を果たすものであり、一般市民に憩いの場、賑わ いの場を提供することができる可能性を秘めている。

  ただし、防波堤や護岸;よ、本来機能を満足し、しかも経済性を考慮して設計されている ため、年間数日は越波するように設定されている。よって、利用者の安全を確保すること は親水性施設を整備する上で必要最小限の要件であり、最も重要でかっ緊急の検討課題と なっている。また、親水性構造物の天端上の施設は、利用者の安全性のみならず、利便性

・快適性を向上させるために設置するものであり、それらの耐波設計法の確立が望まれて いる。

  本研究は、以上のような緊急な検討課題に対応するために実施したものであり、親水性 構 造 物 お よ び 施 設 の 総 合 的 な 設 計 技 術 を 確 立 す る こ と を 目 的 と し て い る 。   第1章 は 本 論 文 の 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 に っ い て 述 べ て い る 。   第2章では 、天端上 の構造物や人の安全を検討するための基礎としての位置づけられ、

防波堤 上での 越波水の 運動の特性にっいて述べていて、第1節では、混成防波堤を対象に して比較的低波浪を対象とした越波水の運動特性を検討した。越波現象は、越波水が直接 打ち込んでくる「打ち込み時」と、その後、港内側への速い流れとなる「越流時」に分け ることができ、波浪条件や防波堤構造条件と越波現象との関係を定性的に明らかにし、防 波堤上における越波水の最大水位や最大流速が任意の位置で算定できる越波水の運動モデ ルOWMを 構築 し た 。第2節で は、越波 水の運 動モデル を高波 浪に対し て適用で きるよ う に、系統的な水理実験を実施し、重複波領域から砕波領域までの連続的な越波水の運動状 況の変 化や、 各種防波 堤に対する越波特性を明らかにし、波浪条件や構造条件に対するO WMの適用範囲を拡張した。

  第3章では 、防波堤 天端上 の各種構 造物の耐 波設計法について検討し、第1節では、防 波堤上の水平天端面・綬傾斜な階段斜面・直立壁を対象として系統的な水理実験を行い、

それぞれの施設に作用する波カを打ち込み時と越流時に分けて波力発生メカニズムを明ら かにし て、越 波水の運 動モデ ルOWMに 基づいた 打ち込 み時と越 流時の 波カ算定 方法を提

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浩 興

博 彦

   

   

忠 睦

佐 板

藤 山

授 授

授 授

   

   

教 教

教 助

査 査

査 査

主 副

副 副

(4)

案した 。また第2節では、防波堤上に設置する転落防止用の手すりを対象として、水理実 験およ び現地実 験を行 い、手す りに作 用する波 カにっ いては、OWMを基本とした波力算 定法を 提案し、 現地防波堤上での測定から、算定法の妥当性を検証した。第3節では、親 水性護岸の背後舗装を対象に、現地被災事例の解析および水理実験から、インタ―ロッキ ングブ口ック舗装が最も越波に対して強度が弱いことを明らかにし、水理実験によって同 舗装の 破壊メカ ニズム が明らか にする とともに 、OWMを用いた 破壊再現計算から破壊限 界時の越波流量を示した。

  第4章 で は 、 親 水 性 施 設 に お け る 市 民 の 安 全 確 保 技 術 に っ い て 検 討 し た 。   第1節では、 新聞記事の検索より港内で発生した海中転落事故の特徴を調べ、最も危険 度が大きい事故として高波による海中転落があり、防波堤上の人が自分の置かれている危 険が分かりにくい状況で事故が発生している例が多いこ・とを明らかにした。また、事故の 発生要 因に基づ いて、親水性施設で安全上配慮すべき事項を示した。第2節では、既往の 親水性護岸の.入園記録に基づき、入園禁止時の自然条件を明らかにするとともに、水理実 験を行い、天端上にしぷき打ち上がる状況や越波が発生する限界の状況を再現するととも に 、そ れ らの状況 となる 波高算定 方法をOWMに基 づき定式 化した 。第3節では 、越波し たときに防波堤上に人がいる場合を想定して、越波によって人が転倒する危険状況を検討 し、実物実験を行い、流れ中での人の転倒をモデル化するとともに、人の転倒条件は、人 の身長や体型、床と靴との摩擦係数、防波堤上の位置に依ることを明らかにした。また、

OWMを 基 本と し て 転倒 限 界 の波 高 算 定方 法 を 定 式化 し た 。さ ら に、第4、第5、第6節 お よび 第7節で は、越 波によっ て人が海 中転落 する波高 をOWMを基本と して定 式化する とともに、親水性施設の波浪に対する危険度を評価する手法を提案し、本評価手法による 事例解説を行った。

  また、 防波堤 上の危険 と越波流 量との 関係にっ いては 、水理実 験とOWMによる計算か ら、人が危険となる越波流量が護岸の設計時に用いる許容越波流量よりもかなり小さくな ることを明らかにし、最終的に、利用者自身がりアルタイムで危険状況を音としぷきで知 ることができる親水性施設の高波警報システム「クジラくん」を提案し、水理実験と数値 計算より基本的な音の物理特性を明らかにした。

  第5章 で は 、 本 研 究 全 般 の と り ま と め を 行 い 、 主 要 な 結 諭 を 示 し て い る 。

    これを要するに、著者は親水性港湾構造物の水工学的な諸課題を解決したもので、港 湾 工 学 、 海 岸 工 学 の 進 展 に 貢 献 す る と こ ろ 大 な る も の が あ る 。   、 よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格があるものと認められる。

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