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示し︑かつ仮名書き法華経の代表的な伝本である﹁妙一本﹂と対比し

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(1)

はじめに    

本稿は ﹁仮名書き法華経﹂ の新資料 ﹁月ヶ瀬本﹂ を国語史資料として

紹介︑提供するものである︒原本を︑極力︑原姿に近い形で翻字して

示し︑かつ仮名書き法華経の代表的な伝本である﹁妙一本﹂と対比し

てその異同を注記して添える︒今回はその ︵二︶ として ﹁方便品第二﹂

﹁譬喩品第三﹂を対象とする︒方便品は迹門の眼目と目され︑四要品

の一つとして重視されてきた︒譬喩品は〝三車火宅の譬え〟    ︱いわゆ

る﹁法華七喩の一つ﹂︱を含み甚だ長大で︑法華経︵二十八品︶全体

の一割を占める︒語彙・語法も多彩である︒

翻字の方針は先の ︹凡例︺ に基づくが︑ ﹁月ヶ瀬本﹂ ﹁妙一本﹂ の両本

の本文に相違が認められる場合にあって︑ ﹁月ヶ瀬本﹂ の本文が ﹁妙一

本﹂の左傍の訓に一致するケースについては︑下註に︵左訓︑同︶と

付け加えることにした︒また︑墨付きの頁はすべて対象とし頁数に含

める方針であるが︑一二五頁 ︵巻二の ﹁目次﹂ の記載のみ︶ は今回︑省

略に付した︒

全品の翻字作業を完了ののち本資料全体にわたる解説を期している

が︑以下には今回︑翻字の対象にした範囲で特に目についた事項を摘

記しておく︒ ﹁方便品﹂ ﹁譬喩品﹂   略解説    

︵一︶ 表記︑用字について

月ヶ瀬本の表記︵用字︶には佛教要語の仮名書きや同音語の宛字が

あることは先にも指摘したが︑本品にも次のような例が頻出する︒

しよほう   ︵五九・

1 ︶    しやりほつ ︵五五・

7 ︶

諸  法   ︵五八・

      1 ︶ しやり弗 ︵五六・

8 ︶

しゆ生   ︵一一一・

       7 ︶ 舎利弗 ︵ 五七・

4 ︶

衆  生  ︵一〇九・

5 ︶ ﹁月ヶ瀬本仮名書き法華経﹂ 解説並びに翻字 ︵二︶

野   澤   勝   夫

月ヶ瀬本仮名書き法華経(巻二の冒頭)

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎜ ⎬ ⎜ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

(2)

   また︑次の例は月ヶ瀬本が經文原典の本文から遊離して口唱用の

テキストと独行し︑経典の原文の理解に及んでいないことを示す︒

   めう此をゝあいするがごとし︒   ︵月ヶ瀬本   一一三・

5 ︶

①  䉉 牛のおを愛するかことし︒   ︵妙一本   一五一・

5 ︶

   ︹深著於五欲︺ 如 䉉 牛愛尾   ︵岩波文庫本上   一二二・

4 ︶

   ひやく此ふうしき︑しうけつし⁝⁝   ︵月ヶ瀬本   一六二・

5 ︶

②  白 牛 の膚 色 充 潔 し⁝⁝   ︵妙一本   二一八・

5 ︶

   白牛膚色   充潔⁝⁝   ︵岩波文庫本上   一六六・

12 ︶

︵二︶ 音韻的な特徴

次のような ﹁四つ仮名の乱れ﹂ ﹁開合のみだれ﹂ が若干例︑認められ︑

このテキストの書写成立の時期を推定する手掛かりを与えている︒ま

た︑ ﹁教ゆる︵九八・

5 ︶﹂などの動詞のハ行の語尾がヤ行に変わる語

が見られるのも中世語的である︒

       ぢうまん ︹充満︺ ︵月ヶ瀬本 六三・         1︶ 四つ仮名の乱れ

5 ︶

しゆぢやう ︹衆生︺   ︵月ヶ瀬本   一一七・

1 ︶

ぢざいむげ ︹自在無礙︺   ︵月ヶ瀬本   一七三・

3 ︶

なんじ    ︹ 汝︺   ︵月ヶ瀬本    七八・

5 ︶

だうしやう ︹道場︺   ︵月ヶ瀬本   一一一・

1 ︶

しやくす   ︹ 着す︺   ︵月ヶ瀬本   二〇九・

1 ︶

しつじき   ︹ 質直︺   ︵月ヶ瀬本   二一四・

8 ︶

み  づ   ︹ 見ず︺   ︵月ヶ瀬本   二一〇・

6 ︶

か  づ   ︹ 数︺   ︵月ヶ瀬本   六二・

  7 六三・

   8

  七一・

    3 ⁝⁝ ︶

なお︑ ﹁譬喩品﹂ の長偈の初め ︵一八〇〜一八一︶ にみられる 鳥・虫・

獣の類の難字語は︑諸本では多少の異同を交えながら訓読されている が︑ ﹁月ヶ瀬本﹂ では全て音読され︑別筆で訓の書き込みが認められる

なかに︑なめくじら ︹蛞蝓︺ ねづみ ︹鼠︺ がある︒

       ぎもう ︹ 疑網︺ ︵月ヶ瀬本 六九・ 2︶ 開合の乱れ

6 ︶

こもう    ︹ 虚妄︺   ︵月ヶ瀬本   九〇・

  3 九九・

7 ︶

しこうじて ︹而︺   ︵月ヶ瀬本   一七〇・

  3 一七一・

3   一七一・

  8 一七八・

3 ・ 7 ︶

そうこ    ︹ 糟糠︺   ︵月ヶ瀬本   九一・

2 ︶

ほうす    ︹ 謗︺   ︵月ヶ瀬本   二一一・

5 ︶

ゑぞう    ︹ 画像︺   ︵月ヶ瀬本   一〇六・

6 ︶

3︶ 連 

深 遠 ︵五七・

6 ︶の他︑漢語と和語との融合した次のような例︵い

ずれも N 音で終わる漢語に格助詞ヲが下接するケース︶が見られるが︑

中世後期 ︵室町時代︶ の言語の反映が窺がわれる︒

  ①かくのごときの法音の聞て︑ぎげこと〴〵く︑すでにのぞこりぬ︒

  ︵月ケ瀬本   一三四・

8 ︶

  ②もろ〳〵のくなんのはなれぬ︒   ︵月ヶ瀬本   一九〇・

6 ︶

  ③なんのまぬかるる事ゑしめん︒   ︵月ヶ瀬本   一九一・

6 ︶

  ④舎利弗すら︑なを︑此経におゐて︑しんのもて︑いる事をゑたり︒

  ︵月ヶ瀬本   二〇三・

8 ︶

  ⑤がけんのけするものには︑この経をとくことなかれ︒

  ︵月ヶ瀬本   二〇四・

4 ︶

  ⑥にくみそねみて︑けつごんのいだかん︒ ︵月ヶ瀬本   二〇五 ・

6 ︶

4︶ 濁音の表記

  読経のためのテキストとして表音的な表記が目立つが︑その一つに

濁音の表記が多い︒漢語に関しては︑慣用の本濁・新濁に馴染まない

ものは読経の際の読み癖と思われるが ︑ それらのなかに ﹃ 日葡辞書﹄

︵注1︶

⎫ ⎜ ⎬ ⎜ ⎭

⎫ ⎜ ⎬ ⎜ ⎭

(3)

と一致するものがある ︵木村秀次氏の教示による︶ ︒   ﹁くやう ︵供養︶ ず﹂  Cuyoji, zuru, ita  クヤウジ︑ズル︑ジタ

  ﹁さんだん ︵讃嘆︶ ﹂  Sandan  ﹁てんぼうりん ︵転法輪︶ ﹂  Tenborin などは ﹃日葡辞書﹄ に見えるが︑

  ﹁じゆぎ ︵授記︶ ﹂  Iuqi  ﹁げんご ︵堅固︶ ﹂  Qengo     ﹁しつど ︵嫉妬︶ ﹂  Xitto  ﹁ふがしぎ ︵不可思議︶ ﹂  Fucaxigui  などは読み癖であるらしい︒ ﹁月ヶ瀬本﹂ が仮名書きの清濁の資料とし

てどの程度に有効であるか︑今後︑注意して見ていきたい︒

︵三︶ 語彙的な相違

1︶ 別訓の対立

  仮名書きの遺品を見比べるとき︑同一語について音読・訓読の差異︑

対立は気付かれやすい特徴であるが︑妙一本に見るように漢字の右傍

に音読︑左傍に訓︵ときに語訳︶を記すテキストがある︒その何れを

採るかによって同じ親本から音読・訓読の差異︑対立をもつ転写本が

生じうるから︑音読・訓読の違いは直ちに訓読の系統の違いを示すこ

とにはならない ︒しかし ︑別訓の対立は事情を異にする ︒すなわち ︑

訓読文をつくるに際して和語の選択にはじまる︒したがって別訓は字

訓の資料であるとともに︑訓読の系統を識別する確かな手掛かりたり

得る︒   方便品に頻出する﹁欲﹂の訓は①のように別訓が対立する︒さらに

敬語意識が加わって ︵

1 ︶

〜 ︵

4 ︶ のようなバリエーションを示す︒

  ①欲   ほつす   ︵月ヶ瀬本   六八・

  4 七一・

  2 七五・

2 ⁝⁝︶

     おもふ   ︵妙一本   九三・

  2 九七・

  3 一〇二・

6 ⁝⁝︶

  ︵1

︶  

ほつす   ︵月ヶ瀬本   八一・

  2 八一・

4 ・

  5 八五・

6 ︶

     おぼす   ︵ 妙一本   一一〇・

  6 一一一・

2 ・   5 一一六・

5 ︶    ︵

2 ︶月ヶ瀬本が敬語化したケース

     おぼす   ︵月ヶ瀬本   七二・

8 ︶

     おもふ   ︵妙一本   九九・

2 ︶

   ︵

3 ︶共 に敬語化したケース

     おぼす   ︵月ヶ瀬本   五九・

4 ︶

     おぼす   ︵妙一本   八〇・

6 ︶

   ︵

4 ︶ 共に敬語化し︑月ヶ瀬本が ﹁給ふ﹂ を補読したケース

     ほつしたまふ   ︵月ヶ瀬本   八〇・

  8 一一〇・

3 ︶

     おぼす      ︵妙一本   一一〇・

  5 一四七・

5 ︶

  ②尽   ことごとく   ︵月ヶ瀬本   五六・

4 ︶

     つくして    ︵妙一本   七七・

1 ︶

  ③除   のぞこる    ︵月ヶ瀬本一三〇・

  2 一三四・

8 ︶  

           のそこほる   ︵妙一本   一七八・

  6 一八三・

2 ︶  

  ④除   のぞく   ︵ 月ヶ瀬本   一四三 ・

  2 一九八 ・

  7 六一 ・

4 ⁝⁝ ︶

     お  く  ︵ 妙一本   一九四・

  1 二六五・

  6 八三・

4 ⁝⁝ ︶

  ⑤斜   かたぶき   ︵月ヶ瀬本一八〇・

  2 ︶ 

     よよみ    ︵妙一本   二四二・

2 ︶ 

  ⑥競   きそひ    ︵月ヶ瀬本   二八一・

5 ︶

     きほひ    ︵妙一本   二四三・

6 ︶

  ⑦唯   ただ   ︵ 月ヶ瀬本   六七 ・

  8 七三 ・

  1 七四 ・

  4 七八 ・

6 ︶

     たたし   ︵ 妙一本   九二 ・

  4 九九 ・

  4 一〇一 ・

  4 一〇七 ・

5 ︶

  ⑧并   ならびに   ︵ 月ヶ瀬本   一〇四 ・

  2 一一五 ・

  2 二〇三 ・

4 ︶

     あはせて   ︵ 妙一本   一三九・

  6 一五三・

  4 二七二・

1 ︶

  ⑨軽   かろしめ   ︵月ヶ瀬本   二〇五・

5 ︶  

     かろめ    ︵妙一本   二七四・

5 ︶     

  ⑩

梧        しもつ ︵月ヶ瀬本 二〇七・

1 ︶

     ふ  ち   ︵妙一本   二七六・

5 ︶

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

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⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

(4)

  ⑪久故   久しくふりて   ︵月ヶ瀬本   一七九・

8 ︶

      くちふりて    ︵妙一本   二四一・

6 ︶

  ⑫仏子   仏のみこ   ︵月 ヶ 瀬本   二一四・

  5 二一五・

2 ︶  

      ほさつ    ︵妙一本   二八七・

  3 二八八・

3 ︶

  ⑬為   た  り    ︵月ヶ瀬本   一四六・

7 ︶  

     います     ︵妙一本   一九七・

6 ︶     

  ⑭為   た  り    ︵月ヶ瀬本   一七六・

6 ︶

     まします    ︵妙一本   二三七・

3 ︶

  ⑮而   しかも     ︵月ヶ瀬本   一九一・

5 ︶

     しかあるを   ︵妙一本   二五六・

5 ︶

  ⑯但   ただ    ︵月ヶ瀬本   一七〇 ・

  1 一七一 ・

  2 一七八 ・

7 ︶

     たたし   ︵妙一本     二二八・

  6 二三〇・

  2 二三九・

3 ︶

  ⑰乃   則    ︵ 月ヶ瀬本   二一四 ・

  2 二一四 ・

  4 二一五 ・

1 ・ 5 ︶

     いまし   ︵ 妙一本   二八六・

  5 二八七・

  2 二八七・

3 ・ 6 ︶

︵四︶ 語法の変化

同一の経典が時代を隔てて︑書写時の言語を反映しつつ書き継がれ

た仮名書き法華経は特に語法の変化︑変遷を通時的に比較︑観察する

のに有利な国語史資料である︒次には ﹁〜コト得﹂ の語法と謙譲の ﹁給

フ﹂ について記す︒

1︶﹁コト得﹂

の語法の消滅

古訓読の語法の一つとして︑ウ︵得︶という語は可能を表す助動詞

として用いるときには︑上の活用語をコトで受けて﹁ヲ﹂をとること

なく直に接続するのが通則とされた︒

︵注

天理本︑瑞光寺本︑妙一本︑

足利本などの鎌倉時代の資料には完全に︑または部分的に保存されて

いた ﹁〜コト得﹂ の語法が月ヶ瀬本ではすべて ﹁〜コトヲ

得﹂ に変わっ 0

ている︒法華経には頻出する語法で用例が多い ︵﹁翻字篇﹂ にその都度︑ 下段に妙一本と対比して示した︶ ︒

2︶ 謙譲の ﹁給フ﹂ の消長

譬喩品の前半︑舎利弗の領解︵佛弟子の︑佛説に対する理解内容の

復唱︶ の部分には ﹁妙一本﹂ には謙譲の ﹁給フ﹂ ︵下二段︶ の使用例が多

く認められ︑以後の仮名書き法華経の遺品とは対照を示し︑この語の

消長を窺うのに恰好な資料たりえた︒

︵注

﹁月ヶ瀬本﹂ ではそれらが無

敬語表現に替っていることを﹁翻字篇﹂の当該個所に注記した︒次に

は ﹁奉る﹂ が謙譲表現として代替している箇所 ︵二例︶ をあげておく︒

今︑仏のおんきやうをきゝ奉るに︑よろしきにしたがひて法をと

①  

きたまひけり︒   ︵月ヶ瀬本一三三・

2 ︶

いま︑ほとけの音声をききたまふれば︑よろしきにしたかひて法

をときたまひけり︒   ︵妙一本   一八八・

6 ︶

我ら︑むかしより此かた︑しばく世尊のせつ法を聞奉りしか共︑

②   ︵月ヶ瀬本一五〇・

3 ︶

われら︑むかしよりこのかた︑しはしは︑世尊の説法をききたま

へしかとも   ︵妙一本   二〇三・

2 ︶

︵五︶ 文脈︑語順の異同

延べ書きの文脈・語順は最初の訓読に際して漢文原典を構文的にど

のように理解したかによって決まり︑転写の間にそれが変わることは

考えにくい︒したがって文脈・語順に異同は仮名書き資料の依拠する

訓読の系統を識別する確かな手掛かりである︒ ﹁月ヶ瀬本﹂ と﹁妙一本﹂

とが訓読の系統を異にするものであることは前稿にも述べた︒

  本稿 ︵翻字篇︶ では文脈・語順に異同のある箇所を指摘し︑ ︻補注︼

に漢文原典を添えて示した︒

  以下には︑漢文原典の訓読の仕方によって文脈・語順に異同の生じ

るパターンの整理を試み︑実例を添える︒ ⎧ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎩ ⎧ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎩

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

⎫ ⎬ ⎭

(5)

⎨ ⎜ ⎜ ⎩ ①単純なケースとして︑文の区切り方によるもの︒ ②右に準ずるが︑経典中に幾度か現れる法華經の呼称を含む部分の

訓方によるもの︒

③目につきやすいものとしては倒置法の使用によるもの︒

④他動詞の目的語相当部分の認定にかかわるもの︒

⑤右に準ずるが︑ ﹁有﹂ の目的語相当部分の認定にかかわるもの︒

⑥ ﹁以﹂ の及ぶ部分の認定にかかわるもの︒

⑦受身構文の訓法によるもの︒

⑧二字漢字を熟語動詞と解するか︑一字ずつの動詞と解するかによ

るもの︒

︿句切りの異同﹀

   仏︑くたいをとき玉ふ︒じつにして︑こと成にとなし︒

  ︵月ヶ瀬本   二〇〇・

3 ︶

①  ほとけ︑苦諦は真実にして︑ことなることなしとときたまふ︒

  ︵妙一本   二六八・

1 ︶

   仏説苦諦   真実無異   ︵岩波文庫本上   二〇四・

2 ︶

︿法華経の呼称の訓み方﹀

もろ 〳〵 のしやうもんのために︑此大ぜうの経をとき玉ふ︒妙法

蓮華・けうぼさつ法・仏所ごねんとなづく︒

  ︵月ヶ瀬本一三九・

②  2 ︶

もろ

〳〵

のしやうもんのために

︑この大乗経の妙法華

・教菩薩

法・仏所護念となつくるをとく︒   ︵妙一本   一八九・

1 ︶

   為諸声聞   説是大乗経   名妙法蓮華   教菩薩法   仏所護念

  ︵岩波文庫本上   一四四・

13 ︶

︿倒置法﹀

   われ記す︑かくのごときの人は︑来世に仏道を成ぜん︒

  ︵月ヶ瀬本   九四・

5 ︶ ③  われ︑かくのごときのひと︑来世に仏道をならんと記す︒

  ︵妙一本   一二七・

5 ︶

   我記如是人   来世成仏道       ︵岩波文庫本上   一〇四 ・

11 ︶

我等︑此事にあつからずして︑はなはだ︑みづから︑如来のむり

やうのちけんをうしなへることを︑せんやうしき︒

  ︵月ヶ瀬本    一二七 ・ 1 ︶

③  われらこの事にあつからすして︑はなはた︑みづから︑感傷しき︑

如来の無量の知見をうしなへることを︒   ︵妙一本   一

二 ・

4

   我等不豫斯事   甚自感傷   失於如来   無量知見

  ︵岩波文庫本上  

一 三

四 ・

6

われ ︑さきに ︑﹁しよ仏世尊のしゆ〳 〵のいんゑむ ︑ひゆ ・ごん

じきをもて︑方便して︑法をとき玉ふ︒みな︑あのくたら三みや

く三ぼだひのため也﹂ といわずや︒   ︵月ヶ瀬本  

一 五

三 ・

2

③  

われ ︑さきにいわずや ︑﹁諸仏世尊の種々の因縁 ・譬喩の言辞を

もて︑方便して︑法をときたまふは︑みな阿耨多羅三貘三菩提の

ため也﹂ と︒   ︵妙一本  

二 〇

六 ・

6

我先不言   諸仏世尊   以種種因縁   譬喩言辞   方便説法   為阿耨

多羅三貘三菩提︒   ︵岩波文庫本上  

一 五

八 ・

9

︿他動詞を含む句の訓方﹀

道ぢやうにして︑くわをしやうずる事おゑて︑われ︑すでにこと

〳〵くかくのごときの大くわほう︑しゆの生さうのぎおちけんせ

り︒   ︵月ヶ瀬本   六一・

8 ︶

④  

道場にして︑果を成すことえて︑われ︑すてにこと〳〵く知見せ

り︒かくのごとき大果報︑種種の性相の義をは⁝⁝

  ︵妙一本   八二・

4 ︶

   道場得成果   我已悉知見   如是大果報   種種性相義⁝⁝     

  ︵岩波文庫本上   七〇・

⎩ 17 ︶ ⎜ ⎜ ⎜ ⎜ ⎩ ⎨ ⎜ ⎜ ⎜ ⎜ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎧ ⎜ ⎜ ⎩ ⎧ ⎜ ⎜ ⎜ ⎜ ⎨ ″ ⎜ ⎜ ⎜ ⎜ ⎧ ⎩ ⎜ ⎜ ⎜ ⎨ ′ ⎜ ⎜ ⎜ ⎧

⎧ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎩

⎧ ⎜ ⎜

(6)

︿﹁有り﹂ を含む句の訓方﹀

ほとけ子のこころ︑きよくにうなんに︑又︑りこんにして︑むり

やうのしよ佛のみもとに︑しかも︑じん妙の道行する有︒

  ︵月ヶ瀬本   九四・

2 ︶

⑤  佛 子 あり︒こころきよく柔 軟 にして︑また︑利 根 なり︒無 量 の諸

佛 のみもとにして︑深 妙 の道 を行 す︒ ︵妙一本   一二七 ・

2 〜 4 ︶

   有佛子心浄   柔軟亦利根   無量諸佛所   而行深妙道

  ︵岩波文庫本上   一〇四・

8 〜

︿﹁以﹂ を含む句の訓方﹀ 9 ︶

   深心に佛をねんじ︑浄戒をじゆうぢするをもてのゆへに    

  ︵月ヶ瀬本   九四・

5 ︶

⑥  深心をもて︑ほとけを念し︑浄戒を修持するかゆへに     

  ︵妙一本   一二七・

5 ︶

   以深心念佛   修持浄戒故   ︵岩波文庫本上   一〇四・

12 ︶

︿受身構文の訓方﹀ よろしき時にとく出して︑火のためにせうがいせられしむること

なからしむべし︒   ︵月ヶ瀬本   一五七・

3 ︶

⑦  よろしく時にとくいたりて︑火の焼害する所たらしむる事なから

しむべし︒   ︵妙一本二一二・

2 ︶

   宜時疾出   無令為火之所焼害   ︵岩波文庫本上   一六二・

7 ︶

︿二字動詞の訓み方﹀

われ︑佛眼をもて︑くわんじて六道のしゆ生をみるに︑びんぐう

にしてふくゑなし︒   ︵月ヶ瀬本   一一三・

2 ︶

⑧  

われ︑佛眼をもて︑六道の衆生を観見するに︑貧窮にして福慧な

し︒   ︵妙一本   一五一・

2 ︶

   我以佛眼観   見六道衆生   貧窮無福慧

  ︵岩波文庫本上   一二二・

1 ︶ が表現に反映したものがある︒ ﹁原典﹂ の取意︑理解の小異は補読に多   なお︑文脈・文体の差異は次のように﹁原典﹂の取意︑理解の相違

く見られるが︑これらは ﹁翻字編﹂ の下註に託した︒

   此法花経をば︑じんちのためにとく︒せんしきは是 ︹を︺ きいて︑

めいわくしてさとらず︒   ︵月ヶ瀬本   二〇三 ・ 4 ︶

⑨  

この法華経をは︑深智のためにとけ︒浅識はこれをききて︑迷惑

してさとらし︒   ︵妙一本   二七二 ・ 1 ︶

   斯法華経   為深智説   浅識聞之   迷惑不理

  ︵岩波文庫本上   二〇六・

13 ︶

︵注

  1 ︶土井忠生・森田武・長南実編訳﹃邦訳日葡辞書﹄ ︵岩波書店 一九八〇︶

︵注

2 ︶春日政治 ﹃西大寺本金光明最勝王經古點の國語学的研究﹄ ︵勉誠社 ・昭和 60 ︶︿研究篇二六七頁﹀

︵註

3 ︶拙稿 ﹁仮名書き法華経に見る謙譲の 〝給フ〟の消長﹂ ︵野沢勝夫 ﹃仮名書

き法華経研究序説﹄ ︿勉誠出版・二〇〇六﹀所収︶ ⎧ ⎜ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎜ ⎩ ⎧ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎩

⎧ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎩

⎧ ⎜ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎜ ⎩ ⎧ ⎜ ⎜ ⎜ ⎨ ⎜ ⎜ ⎜ ⎩

(7)

翻字篇

  めにぢよたんして︑こと〴〵くして︑あまり有   事なからしめたまふへし︒

妙法蓮華經方便品第二       

  その時に︑世尊︑三まいよりあんしやうとして立 て  

1

︶ 諸

佛の智恵︑

  しやりほつにつげたまわく︑ ﹁諸佛のちゑは 1 しん〴〵  

2

︶ 甚

深無量なり︒

55   にして︑ むりやうなり︒其ちゑのもんは︑ なん

2 3

3

︶ 知

恵の門︑

  げなんにう也︒一さいのしやうもん︑ひやくし佛の     しる事︑あたはざる所也︒ゆへいかんとなれ共 1  

1

︶ゆへはいかん︒

  佛︑ 2 むかし百千万おくむしゆの諸佛にしん  

2

︶ほとけは︑

  ごんして︑こと〳 〵 く 3 諸佛のむりやうの道法を  

3

︶つくして

  行じて︑ゆみやうしやうじんして︑みやうせう︑あまねく   きこへたまへり︒ 4 じん〳 〵 みぞううの法をしやうし  

4

︶きこへ︑

  ゆうして︑ 5 よろしきにしたがひてとき玉ふ所︑  

5

︶ 成

就して︑

56   いしゆ︑なんげ也︒ しやり弗︑我︑成佛してより此かた︑し

6

︶さとりかたし︒

  ゆ〳 〵 のいんゑん︑しゆ〳 〵 のひゆをもて︑ひろくごん      げうお ︹演べ︺ ︑むしゆのはうべんをもて︑衆生をいん導     して︑もろ〳 〵 のぢやくをはなれしむ︒ゆへいかんと       なれば 1 如来は︑はうべん・ちけん・はらみつ︑みなす  

1

︶ゆへはいかん︒

  でにぐそくしたまへり︒舎利弗︑如来のちけん   は︑ 2 くわうだいじんのん也 3 ︒むりやう・むげ・りき・むし  

2

︶ 如

来の知見︑

  よい・ぜんぢやう・げだつ・三まい有︒ふかくむざいに入  

3

︶ 深

遠なり︿連声﹀

57   て︑一さいのみぞううの法をしやうしゆう した

4

︶ 成

  まへり︒舎利弗︑如来はよくしゆ〴〵に分別して︑た       くみに諸法をとき︑ 1 ごんじにうなんにして︑しゆ  

1

︶ときたまふ︒

  の心をゑつかせしむ︒ 2 舎利弗︑要をとつてこれお  

2

︶ 悦

可す︒

  いはゞ︑むりやうむへんのみぞううの法をば︑佛︑こ       と〴〵くしやうしゆうせり︒ 3 やみなん︑舎利弗︑又︑と  

3

︶ 成

就したまへり︒

  くべからす︒ゆへいかん︒ 4 佛のしやうしゆうせる 3  

4

︶ゆえはいかん︒

  所は︑ 5 たい一け有なんげの法也︒たゞ︑ 6 佛と佛とのみ  

5

したまへるところ︑

58   いましよく諸法のじつさうをきわめつくし

6

︶たたし

      たまへり︒いわゆるしよほうの如 是 相 ・如是性 ・如是

  たい・如是りき・如是さ・如是いん・如是ゑん・      

  如是果 ・如是ほう・如是本 末 くきやうとう也︒ ﹂        その時に︑世尊︑かさねて此ぎをのべんとおほし         て︑げおとひてのたまわく︑       

  ﹁せおふをば︑はかるべからず︒諸天︑およひ世人︑一さい衆   生のたぐい︑ 1 よく佛をしるものなし︒佛の力・む  

1

︶ 類

59        しよい・げだつ・もろくの三まい︑および佛の   しよよの法をば︑よくしきりやうするものお けん︒ 1  

1

︶なし︒

  もとむしゆの佛にしたがいたてまつりて︑ 2 ぐそ  

2

︶したがひて︑

  くして︑もろ〳 〵 の道を行し玉ふ︒ 3 じん〴〵みめう  

3

︶道を行したまへり︒

  の法おは︑ 4 みかたく︑ 5 さとるべき事かたし︒むりやう  

4

︶ 法

は︑

  をくこうにおゐて︑ 6 此もろ〳 〵 の道を行じおはり  

5

︶みることかたく︑

  て︑道ぢやうにして︑くわをしやうずる事おゑて︑ 7 われ︑  

6

︶ 無

量億劫に︑

  すでにこと〴〵くかくのごときの大くわほう︑しゆ  

7

果を成することえて︑

60   〴〵の生さうのぎお ちけんせり︒我︑および十

8

︶ 性

相の義をは︑

  はうの佛︑ 1 いまし︑よく此の事おしり玉へり︒ 2 此法は  

1

︶ほとけのみ︑

  しめすべからず︒ごんじのさう︑じやくめつせり︒しよ  

2

︹上の二文語順の相違︺ ︻補注

1 ︼

  よの衆生るいは︑ 3 よくとくげする事有事なし︒  

3

︶ 諸

余の衆生類︑

  諸々の菩提しゆの︑しん力げんご成ものおば︑のぞ  

4

︶おく︒

  く︒ 4 しよ佛のでししゆ︑ 5 むかししよ佛をくやうじ︑  

5

︶ 弟

子衆の

  一さいの漏すでにつくして︑此さいごしんにちう   せり︒ 6 かくのごときのしよ人ら︑ 7 そのちから︑たゑざる  

6

︶ 最

後身に住せる︑

61   所也︒たとい︑世間にみてらんもの︑みな︑舎利弗のごと

7

かくのこときもろもろのひとらも︑

  くにして︑ 1 おもひをつくして︑ともに︑たくりやう  

1

のことくならむ︑

  す共︑佛のちゑ 2 をはかる事あたはじ︒たとい︑十  

2

︶ 佛

  方にみてらんもの︑皆︑舎利弗のごとく︑ 3 および︑よの  

3

のことくならん︑

  諸々のでし︑又︑十はうの國にみてらむ︑おもひをつ         くして︑ともにたゞ りやう 4 す共︑又々︑しる事あた  

4

︶ 度

  はじ︒ひやくし佛の︑りちにして︑むろのさいごし  

5

︶ 十

方界にみちて︑

  ん成︑又︑十方かいにみち︑ 5 其かづ 6 ︑竹林のごとくな  

6

かす︿四つ仮名の乱れ﹀

62   らん︑これら︑共に一心に おくむりやうこうにお

7

こころをひとつにして︑

(8)

  ゐて︑佛のしつちをおもはんとほつ ︹す︺ とも︑ 1 よく少ぶ     んを 2 しる事なけん︒しんほついの菩 薩 ︑ 3 むしゆの佛     をくやうじ︑諸々のぎしゆをれうだつし︑又︑よく〳 〵     法をとかむ︑ 4 たう・ま・ちく・いのごとくにして︑ 5 十方   せつにぢう 6 まんせん︑ 7 一心に 8 めうちをもて︑ごうが     しやこうにおゐて︑ 9 こと〳 〵 く︑皆共にしりやう     す共︑佛智をしる事あたはじ︒ふたいのもろ   63 〳 〵 の ぼさつ︑其かづ︑

ごうしやのごとくして︑ 10

11

一心  

  に 1 共にしぐす共︑又々︑しる事あたはじ︒ ﹂ 又︑舎     利弗につげたまはく︑ ﹁むろふしぎのじん〴〵み     めう 2 の法をば︑我︑今︑すでにつぶさにゑたり︒たゞ︑ 3     われ︑ 4 此さうをしれり︒十方の佛も又︑しか也︒舎利弗︑  

  まさにしるべし︑諸佛の 5 みこと︑いなる事 6 なし︒  

  仏のしよせつの法に︑ 7 まさに大しん力をしやうすべし︒ 8     世尊︑

法久しくして後に︑

  かならずまさに︑しん 10

64 じつをとくべし︒

  もろ〳 〵 のしやうもんしゆ︑および 11

  ゑんがくせうをもとむるもの︑われは︑ 1 くばくをたつ     せしめ︑ 2 ねはんおたいとくせしめたるに 3 つぐ︒ ﹃佛の     はうべんのちからをもて︑しめす︑ 4 三せうのけう     をもつてせしことは︑ 5 衆生︑ 6 しよ〳 〵 のぢやく︑これを     ひいていたす事をゑしめんとなり︒ 7 ﹄﹂ その時に︑大     しゆの中にして︑ 8 もろ〳 〵 のしやうもん・ろじんの     あらかんたる 9 あにやけうちん如とうの千二百人︑  

65   およびしやうもん・ひやくしぶつのこゝろをおこ   せる︑びく・〳 〵 に ・うばそく・うばいありて︑おの〳 〵     此ねんをなさく︑ 1 ﹁いま︑世尊︑なんがゆへぞ︑いんきんに 2       はうべん 3 せうたんして︑此みことを 4 なしたまふ︒ ﹃佛     のゑたる 5 所の法は︑じん〴〵にして︑げし方し︒ 6 ご         んぜつしたもう所有は︑いしゆしりがたし︒一さいのし     しやうもん・ひやくしぶつのおよぶ事あたばざる             所也︒ ﹄ 佛︑一げだつのぎをときしかば︑ 7 我等︑

又︑此法をゑ  

66 て︑ねはんにいたれる︒ しかるに ︹今︺ 此ぎのおもむく所 9          をしらず︒ ﹂ 其 時に︑舎利弗︑四しゆの心のうたがひ

  をしり︑みづからも又︑いまださとらずして︑佛           に申てまうさく︑ ﹁世尊︑なんのいん︑なんのゑん          有てが︑いんきんに︑ 1 諸佛のだい一のはうべん︑  

1

︶ねんころに

  じん〴〵みめう︑なんげの法をせうたんし玉ふ︒  

2

ほとけにしたかふたてまつりて︑

  われ︑むかしより此かた︑いまだかつて︑佛にした  

3

︶かくのことき説

  がひ奉りて︑ 2 かくのごときのせつ 3 をきかず︒ 4  

4

︶ききたまへす︒

67   今︑四しゆ︑こと〴〵くみな︑うたがひ有︒たゞ

5

︶たたし

  ねがわくは︑世尊︑此事をふゑんしたまふ︒ 1 なんがゆ  

1

︶ 敷

演したまへ︒

  へぞ︑いんぎんに 2 じん〴〵みめう︑なんげの法を  

2

︶ねんころに

  せうたんし玉ふ︒ ﹂ 其 時に︑舎利弗︑かさねて此   ぎおのべんとほつして︑ 3 げおといて申さく︑  

3

︶おもひて︑

  ﹁ゑ日大しやうそん︑久しくして︑ 4 いまし此法をと  

4

︶ひさしくありて

  き玉ふ︒みづから ﹃かくのごときの力 5 ・むい・三まい・  

5

︶かくのことき力

  ぜんちやう・げだつとうのふかしぎの法をゑたり︒ ﹄ 68   ととき玉ふ︒道ちやうしよとくの法おば︑ よく

6

︶ 法

は︑

  問をおこすものなし︒我心 に 1 はかるべき事  

1

︶わかこころ︑

  かたし︒又︑よく︑とうものなし︒とう事なけれ   ば︑しかも︑みづからとひて︑ 2 しよ行の道をせうた  

2

︶ときて

  んす︒ちゑ︑はなはだみめうにして︑諸佛のゑた   まへる所也︒むろ 3 もろ〳 〵 のらかん︑およびねはん  

3

︶ 無

漏の

  をもとむるもの︑今︑みな︑ぎもう 4 にだしぬ︒  

4

︶疑網︿開合の乱れ﹀

  佛︑なんがゆへぞ︑これをとき玉ふ︒それ︑ 5 ゑん  

5

︶ そ の

69   がくをもとむるもの︑びく・びくに・しよてんりう ・

6

︶もろもろの天龍

  きじん︑およびけんだつばとう︑あひみてゆよ   をいだいて︑りやうそく尊をせんかうし奉る︒ 1  

1

︶ 瞻

仰す︒

  此事︑いかなりとかせん︒ねがはくは︑佛︑ためにげせ        つし玉へ︒諸〳 〵 のしやうもんしゆにおゐて︑佛︑        

  われをだい一なりととき玉ふ︒われ︑今︑みづか           ら智において︑ぎわくして︑さとる事あたは             ず︒是︑くきやうの法とやせん︑これ︑しよ行の道        70   とやせん︒ぶつくしよしやうのみこ︑かつしやう︑ せんか

2

たなこころをあはせ︑

1

︶おもふとも︑

2

︶よく少分をも

3

︵ 菩薩の︑

4

︶よく法をとく︑

5

︶ことくして︑

6

︵ 充満︿四つ仮名﹀

7

十方の刹に充せらむ︑

8

こころをひとつにして

9

︵ 恒河沙劫に︑

10

かす︿四つ仮名の乱れ﹀

11

恒沙のことく︑

1

こころをひとつにして

2

・甚

3

︶たたし︑

4

︶われのみ︑

5

︵ 諸佛は

6

︶ことなること

7

︵ 法におきて︑

8

︶なすへし︒

9

︶世尊は︑

10

ひさしくありてのち︑

11

をときたまふへし︒

1

︶われ︑

2

われ︑ 苦 縛 をまぬかれしめ︑

3

を逮するものに

4

ほとけ︑便をもて︑しめすに

5

の教えをもして︑

6

衆生の

7

これをひきていたす

ことえしめたまふ︒

8

︵ 大衆のなかに︑

9

阿羅漢・

1

︶おもひをなさく︑

2

︶ねんころに

3

︵ 方便を

4

︶この言を

5

ほとけのえたまへる

6

︶さとりかたく︑

7

︶ときたまひしかは︑

8

︶われらも︑

9

涅槃にいたれり︒

10

︶しかあるを︑

(9)

  こうしてまち奉る︒ 1 ねがはくは︑みめうのみこゑ  

1

︶まつ︒

  を出して︑時にために︑じつのごとくときたまへ︒諸天・    

  りう神とうの︑ 2 其かづ︑ 3 ごうじやのごとし︒佛をもと  

2

︶ 諸

天・龍神︑

  むるもろ〳 〵 の菩薩︑大しゆ八万有︒又︑もろ〳 〵  

3

かす︿四つ仮名の乱れ﹀

  の万おくの國の︑てんりんじやう王のいたれる︑が          つしやうして︑ 4 きやう心をもて︑ぐそく道をきか  

4

たなこころをあはせ︑

  んとほつす︒ 5 ﹂ 其 時に︑佛︑舎利弗につげたま  

5

︶きかんとおもへり︒

71 わく︑ ﹁やみなん︑〳 〵 ︒又︑とくべからず︒もし此   事をとかば︑一さいのせけん︑ 1 諸天︑および人︑みな︑まさ  

1

︶ 一

切世間の

  におどろきうたがふべし︒ 2 ﹂ 舎利弗︑かさねて佛に  

2

︶ 驚

疑しぬへし︒

  申てまうさく︑ ﹁世尊︑たゞ 3 ねがはくは︑これをとき  

3

︶たたし

  玉へ︑〳 〵 ︒ 4 ゆゑいかにとなれば︑ 5 此ゑのむしゆ百千万  

4

︶﹁繰返し﹂ナシ︒

  おくあそうぎの衆生は︑むかし︑諸佛をみ奉  

5

︶ゆへはいかん︒

  れり︒ 6 しよこん︑みやう利にして︑ちゑ︑みやうれう  

6

︶みたてまつり︑

  也︒佛のしよせつを聞て︑則︑よくきやうしんせむ︒ 7 ﹂  

7

︶ 敬

信しなん︒

72 其時に︑舎利弗︑かさねて此ぎをのべんとお   ほして︑ 1 げおといて申さく︑ ﹁法王︑無上尊︑たゞ 2 と  

1

︶おもひて︑

  き玉へ︒ねがわくは︑うら思ひ玉ふ事なかれ︒此  

2

︶たたし

  ゑのむりやうのしゆは︑よくきやうしんすべき            もののみあり︒ ﹂ 佛︑又︑舎利弗をとゞめたまはく︑      

  ﹁若︑此ことをとかば︑一さい世けんの天人・あしゆ         ら︑皆︑まさにぎやうぎすべし︒ 3 ぞうじやうまん  

3

︶ 驚

疑しぬへし︒

  のびく︑まさに大きやうにおちなんとす︒ 4

﹂ 其

時 に

 

4

︶ 大

坑におつへし︒

73 世尊︑かさねてげおとひてのたまわく︑

  ﹁やみなん︑〳 〵 ︑とくべからず︒我が法は︑妙にしてお  

1

︶たたし

  もひがたし︒諸々のぞう上まん ︹の︺ もの︑きひてかな  

2

︶﹁繰返し﹂ナシ︒

  らすきやうしんせじ︒ ﹂ その時に︑舎利弗︑かさね  

3

︶われらかことき

  て佛に申てまうさく︑ ﹁世尊︑たゝ 1 ねがはくは︑是  

4

︶ 百

千万億なる︑

  をとき玉へ︑〳 〵 ︒今︑此ゑの中のわれらこときの 3  

5

︶﹁すでに﹂ナシ

  たぐひ︑百千万おく成は︑ 4 世々にすでに︑ 5 むかし  

6

したかふたてまつりて

  佛 にしたがひ奉りて︑ 6 化をうけたり︒かくのご  

7

︶かくのこときらの

74   ときの 人ら︑かならずよくきやうしんせん︒ 長 

7 8

8

︶ 敬

信してん︒

  夜あんおんにして︑ねうやくするところおほからん︒ 1 ﹂  

1

おほかん︒ ︿妙一本の誤か﹀

  其時に︑舎利弗︑かさねて此ぎをのべんとほつ           して︑ 2 げおといてまうさく︑ ﹁無上りやうそく  

2

︶おもひて︑

  尊︑ねがわくは︑だい一の法をとき玉へ︒我︑佛の         ちやうしたり︒たゞ︑ 3 ふんべつして︑とく事をた  

3

︶たたし︑

  れ玉へ︒此ゑのむりやうのしゆは︑よく此法をき  

4

︶ 敬

信しなん︒

  やうしんせん︒ 4 佛︑すでにむかし︑ 5 世々に︑かくの  

5

︶﹁すでに﹂ナシ

75   ごときらをけうけし玉へり︒皆︑一心に がつしや

7

こころをひとつにし︑

      

  うして︑ 1 佛 語 ︑ 2 ちやうしゆせんとほつす︒ 3 我等︑千  

1

たなこころをあはせて

  二百︑およびよの佛をもとむるもの︑ねがわくは︑  

2

︶ 佛

語を

  此しゆのためのゆゑに︑たゞ︑ 4 ふんべつして︑とく事  

3

︶おもへり︒

  をたれ玉へ︒是らの 5 法をきかば︑則︑大くわんぎ  

4

︶たたし︑

  をしやうぜん︒ 6 ﹂ 其 時に世尊︑舎利弗につげたま  

5

︶これら︑

  はく︑ ﹁なんぢ︑すでに︑いんきんに 7 三たひしやうしつ︒あ  

6

︶大歓喜をなしてん︒

  にとがざる事をゑんや︒なんぢ︑今︑まことに 8 き  

7

︶ねんころに

76   け︒よくこれをしねんせよ︒われ︑まさになんぢ

8

︶あきらかに

  がために分別して︑げせつすべし︒ ﹂ 此みこと 1 を  

1

︶この語

  とき玉ふとき︑ゑ中に 2 びく・〳 〵 に ・うばそく・うば  

2

︶ 会

のなかに

  い︑五千人とう有︑ 3 即︑ざよりたつて︑佛をらいし  

3

︶ 五

千人等ありて︑

  て︑しりぞきぬ︒ゆゑいかんとなれば︑ 5 此ともがら  

4

︶たちて

  は︑さい根しん重に︑ 6 およびぞう上まんにして︑  

5

︶ゆへはいかん︒

  いまだ︑ゑざるをゑたりとおもひ︑いまだ︑せうせ  

6

︶ 罪

根深重なり︒

  ざるをせうせりとおもへり︒かくのごときの 7 とが  

7

︶かくのことき

77 有︒こゝをもつてちうせず︒世尊︑もくねんと   して︑せいし 1 たまわず︒其時に︑佛︑舎利弗に  

1

︶ 制

止し

  つげたまわく︑ ﹁我︑今︑此しゆは︑ ︹また︺ しやうなし︒ 2 もつ  

2

︶ 枝

葉なくして︑

  はら︑ちやうじつのみ有︒舎利弗︑かくのごとき  

3

︶かくのことき

  の 3 ぞう上まんの人は︑しりぞいても︑ 4 又よし︒な  

4

︶しりそきぬる︑

  んぢ︑今︑よくきけ︒まさに︑なんじがため  

5

︶ 舎

利弗︑ 

  にとくべし︒ ﹂ 舎利弗の 5 まうさく︑ ﹁たゞ︑ 6 しかなり︒  

6

︶たたし

  世尊︑ねがわくは︑きかんとほつす︒ 7 ﹂ 佛︑しやりほ  

7

︶おもふ︒

78   つにつげたまわく︑ ﹁かくのごときの 妙法は︑諸佛

8

︶かくのことき

(10)

  如来の︑ 1 時に︑いましこれをときたまふ事︑ 2 う     どんげの︑時に 3 一たびげんずるがごとしまく     のみ︒ 4 舎利弗︑なんぢら 5 まさにしんずべし︒ 6 佛の     しよせつは︑みこと︑こまうならず︒しやりほつ︑  

  諸佛 7 ずいきのせつ法は︑いしゆ︑げしがたし︒ 8 ゆへ     いかんとなれば︑ 9 われ︑むしゆのはうべん︑しゆ〴〵の     いんゑん・ひゆ・ごんじをもて︑しよほうをゑんぜ   79 ず︒

  此ほうは︑しりやう・ふんへつのよくげする 10

  所にあらず︒たゞ︑ 1 しよ佛のみまし〳 〵 て︑いまし     い︑ 2 よく︑これをしりたまゑり︒ 3 ゆへいかんとなれ     ば︑ 4 しよ佛︑世尊は︑一大事のいんゑんをもての          故に︑世にしゆつげんしたまふ︒舎利弗︑いか成をか︑         

  しよ佛︑せそんの 5 たゞ 6 一大事のいんゑんをもて            のゆへに︑世にしゆつげんし玉ふとなづくる︒  

  しよ佛︑せそんは︑衆生をして佛ちけんを 7 ひ         80    らいて︑ しやう〴〵成事をゑしめんと ほつした 8 9

  まふがゆへに︑ 1 世に出現したまふ︒しゆじやうに佛ち  

1

︶おほすかゆえに︑

  けんを 2 しめさんとほつするがゆへに︑ 3 世に出現し  

2

︶ほとけの知見を

  玉ふ︒衆生をして︑佛ちけんをさとらしめんと  

3

︶おほすかゆえに︑

  ほつするがゆへに︑ 4 世に出現し玉ふ︒衆生をし  

4

︶おほすかゆえに︑

  て佛ちけん道 5 にいらしめんとほつするがゆへ  

5

︶ほとけの知見の道

  に︑ 6 世にしゆつげんしたまふ︒舎利弗︑これを︑しよ  

6

︶おほすかゆえに︑

  しよ佛は︑たゞ︑ 7 一大事のいんゑんをもてのゆへに︑世  

7

︶たたし︑

81       にしゆつげんしたまふとす︒ ﹂ 佛︑しやりほつにつ

       

  げたまわく︑ ﹁しよ佛如来は︑たゞ︑ 1 菩薩をけうけ  

1

︶たたし︑

  し玉ふに︑ 2 もろ〳 〵 のしよさあるは︑常に一事  

2

︶ 教

化したまふ︒

  のためにす︒ 3 たゞ︑ 4 佛ちけんを 5 もて︑しゆじやうに  

3

︶ 一

事のためなり︒

  示悟す︒ 6 しやりほつ︑如来は只︑ 7 一佛ぜうをもての  

4

︶たたし︑

  ゆゑに︑衆生のために法をとき玉ふ︒よせう  

5

︶ほとけの知見を

  の︑もしは二︑もしは三有事なし︒舎利弗︑一切  

6

︶ 示

悟せむとなり︒

  の十方の 8 しよ佛の法も︑又︑かくのごとし︒しやり  

7

︶たたし︑

82   ほつ︑くわこの諸佛も︑むりやうむしゆの方便・

8

︶ 一

切十方の

  しゆ〴〵のいんえん・ひゆ・ごんじをもて︑しかも︑ 1 衆生  

1

︶﹁しかも﹂ナシ

  のために︑しよ法をゑんぜつし玉ふ︒此法は︑ 2 み  

2

︶この法も︑

  な︑一ぶつぜうのためのゆへ也︒此もろ〳 〵 の衆生         の︑しよ佛にしたがひ奉りて︑ 3 法をきゝしは︑ 4  

3

したかふたてまつりて︑

  くきやうして︑皆︑一さいしゆちをゑつ︒ 5 舎利  

4

︶ 法

をききしも︑

  弗︑みらいのしよ佛の︑まさに世に出たまふ  

5

︶一切種智をえてき︒

  べきも︑又︑むりやうむしゆのはうべん・しゆ〴〵の      83   いんえん・ひゆ・ごんじをもて︑しかも︑ しゆじやう

6

︶﹁しかも﹂ナシ

  のために︑しよほうをゑんぜつしたまふ︒ 1 此法は︑ 2 み  

1

︶ 演

説したまはん︒

  な︑一ぶつぜうのためのゆゑ也︒此諸々のじゆじやうの︑  

2

︶この法も︑

  佛にしたがひ奉りて︑ 3 法をきかんも︑くきやうし  

3

したかふたてまつりて︑

  て︑みな︑一さいしゆちをうべし︒ 4 舎利弗︑げんざい十  

4

︶ 一

切種智をえん︒

  方のむりやう百千万おくの佛土の中にしよ佛            世尊︑しゆじやうをにうやくし︑あんらくし玉ふ所         おゝし︒此諸佛も︑又︑むりやうむしゆのはうべん・し     84   ゆ〴〵のいんゑん・ひゆ・ごんじをもて︑しかも︑ 衆生

5

︶﹁しかも﹂ナシ

  のために︑しよ法をゑんぜつし玉ふ︒此法は︑ 1 みな︑  

  一佛ぜうのためのゆへ也︒此もろ〳 〵 の衆生の︑佛に        したがひ奉りて︑ 2 法をきくも︑くきやうして︑  

  みな︑一さいしゆちをう︒舎利弗︑此しよ佛は︑       

  たゞ︑菩薩をけうけし玉ふ事︑ 3 佛のちけん     をもて︑しゆじやうにしめさんとほつし玉ふゆ     へ也︒ 4 佛のちけんをもて︑衆生にさとらしめん   85   とほつしたまふがゆへ也︒ 舎利弗︑われ︑今 5

  又々︑かくのごとし︒もろ〳 〵 の衆生のしゆ〴〵   のよく︑じんじんしよちやく 1 あるを 2 ︹知りて︺ その本  

1

︶ 深

心の所着

  性 にしがつて︑しゆ〴〵のいんえん・ひゆ・ごんじ・  

2

︶あることを

  はうべんのちから 3 をもてのゆへに︑しかも︑ため  

3

︶ 方

便力︿左訓︑同﹀

  に︑法をとき玉ふ︒ 4 しやりほつ︑かくのごとく成事  

4

︶ 法

をとく︒

  は︑ 5 みな︑一佛ぜう・一さいのしゆちをゑしめんがための  

5

︶かくのこときは︑

  ゆへ也︒舎利弗︑十方世界の中には︑なを二ぜう 86   なし︒いかにいはんや︑三あらんや︒舎利弗︑しよ佛︑

6

︶諸佛は︑ ︵

1

︵ 如来︑

2

︶ときたまふ︒

3

︶ときありて︑

4

︶ことくまくのみ︒

 

︿語法に疑義﹀︵

5

︶なんたち︑

6

︹語順の相違︺︻補注

2

7

︵ 諸佛の

8

︶さとりかたし︒

9

︶ゆへはいかん︒

10

演説す︒

1

︶たたし

2

︶いまし

3

︶しろしめせり︒

4

︶ゆへはいかん︒

5

世尊は

6

︶たたし

7

︶ほとけの知見を

8

︶ひらかしめ︑

9

浄なむと 〳〵

1

︶この法も︑

2

したかふたてまつりて︑

3

を教したまふ︒

4

︶おほすかゆへ︑

5

﹁也﹂を見せ消しで

﹁に﹂改め間に

補記あり︒︻補注

3

(11)

  五ぢよくあく世にいで出玉ふ︒いわゆるごうぢよく・    

  ぼんのう 1 ぢよく・しゆしやうぢよく・けんぢよく・みやう  

1

︶煩悩︿開合の乱れ﹀

  ぢよく也︒かくのごとき︑舎利弗︑こうぢよくのみ         だれたる時には︑しゆ生のくおもく︑けんどんしつ           どにして︑諸々のふぜんごん 2 しやうしゆうせる  

2

︶ 不

善根を

  がゆへに︑しよ佛︑はうべんのちから 3 をもて︑一佛  

3

︶ 方

便力

  ぜうにおゐて︑分別して三ととき玉ふ︒舎利          87       弗︑若 ︑わがでし︑みづからあらかん・ひやくし佛   なりとおもわんもの︑ 1 しよ佛如来の︑たゞし菩  

1

︶おもへらむもの︑

  薩を 2 げう ︹化︺ する事 3 をきかず︒しらざらんは︑  

2

︶たた菩薩をのみ

  是︑ぶつでしにあらず︑あらかんにあらず︑ひやく  

3

︶教化したまふこと

  し佛にあらず︒又︑舎利弗︑此もろくのびく・       

  くに︑みづから︑ ﹃すでにあらかんをゑたり︒これ︑さ      いごしん也︒ 4 くきやうねはんなり﹄ とおもふて︑ 5 則︑又︑  

4

︶ 最

後身︑

  あのくたら三みやく三ぼだいをしぐせざ  

5

︶おもひて︑

88 らん︑まさにしるべし︑此ともがらは︑みな︑これ︑

  ぞう上まんの人也︒ゆへはいかんとなれば︑ 1 若 ︑びく     のしつに 2 あらかんをゑたる 3 有て︑ 4 若︑此法をしん     ぜずといはゞ︑此所 5 に有事なけん︒佛のめ     つどの後 ︑現 前 に佛なからんをばのぞく︒ 6 ゆへ     いかんとなれば︑ 7 佛のめつどの後には︑ 8 かくのごとき     らの経をじゆぢし︑どくじゆし︑ 9 其ぎをさとる     もの︑此人は︑ゑかたければなり︒

10

若︑よの佛にあひ  

89 奉らば︑

此法の中におゐて︑ 11

12

則︑けつれうす  

  る事をゑん︑ 1 舎利弗︑なんぢら︑ 2 まさに一心にし       んげして︑佛語をじゆぢすべし︒しよ佛如来は     みこと︑こもう 3 なし︒よせう有事なし︒たゞ︑ 4 一佛     ぜうのみ也︒ ﹂ 其 時に︑世尊︑かさねこ此ぎをのべん ︹と︺  

  ほつし︑ 5 げおといてのたまわく︑  

  ﹁びく︑〳 〵 に の︑そう上まんをいだける︑ 6 うばそく         のがまん成︑うばいのふしんなる有︒ 7 かくのごとき  

90 の四しゆら︑ 其かづ︑ 五千有︒みづから︑そのとがお 8 9   みず︑かいにおゐて︑けつろ有て︑ 其 1 事

けしをこ  

1

︶ 欠

漏あり︒

  し や 事 くす︒ 2 此小智 は︑すでにいでぬ︒しゆ中 2 のそ 事 こう也 4 ︒  

2

︶まほりおしむ︒

  佛のいとくのゆへにさりぬ︒此人は︑ふくとくすくな  

3

︶ 衆

のなか

  くして︑此法をうくるにたゑず︒このしゆに︑ 5 しよう 6  

4

︶糟糠︿開合の乱れ﹀

  なし︒ただ︑ 7 もろ〳 〵 のちやうじつのみ有︒舎利弗︑  

5

この衆は︑

6

  よくきけ︒しよ佛のしよとくの法は︑ 8 むりやうの  

7

︶たたし

  はうべん力をもて︑しかも︑ 9 衆生のためにときた  

8

︶ 所

得の法をは︑

91   まふ︒衆生の心のしよねん︑しゆ〴〵のしよ行の

9

︶﹁しかも﹂ナシ

  道︑そこばくの 1 もろ〳 〵 のよく性 ︑ぜんぜのぜん  

1

︶ 若

干の

  あくのごう︑佛︑こと〴〵くこれをしろしめしおはり           て︑もろ〳 〵 のゑん・ひゆ・ごんじ・はうべんのちからを  

2

︶ 方

便力

  もて︑一さいをして︑くわんぎせしめたまふ︒あるひは       しゆたら・かだ︑およひほんじ・本しやう・みそううを       とき︑又︑いんえん・ひゆ︑ならびに 3 祇 や︑ 4 うはたひ  

3

︶あはせて

  しや経をとき玉ふ︒どんごんにして︑小法をねがひ︑  

4

︶ 祇

夜と

92 しやうじにどんぢやくし︑もろ〳 〵 のむりやうの 佛におゐて︑じん妙道を 1 行ぜずして︑ 2 しゆ〴〵に 3 のう らん 4 せらるゝ︒ 5 是がためにねはんをとき玉ふ︒ 6 われ︑

此はうべんをもうけ︑ 7 佛ゑに入事をゑしむ︒ 8 いまだ かつて︑なんぢら︑ 9 まさに佛道をしやうずる事を

うべし

ととかず︒いまだかつてとかざるゆへは︑せつ 10

時︑いまたいたらざりしがゆへ也︒今︑まさしく︑是︑

其時也︒けつぢやうして︑大せうをとく︒我︑此九ぶ

93 の法は︑衆生に

ずいじゆむしてとく︒大ぜうに入 12

  をほんとす︒ 1 爰をもての故に︑ 2 此経をとく︒佛子     のこゝろ︑きよくにうなんに︑又︑りこんにして︑むり     やうのしよ佛のみもとに︑しかも︑ 3 じん妙の道     行する有︒ 4 此もろ〳 〵 の佛子のために︑此大ぜう     経をとく︒われ記 す︑ 5 かくのごときの人は︑来世に     佛道を成ぜん︒ 6 深 心 に 7 佛をねんじ︑浄 戒 をじゆ       ぢするをもてのゆへに︑ 8 これら︑佛をゑつ 9 ときい 94 て︑大きに ︹喜び︺ 身にちうへんす︒

佛︑かの心行 10

をしろ 11

1

︶ゆへはいかん︒

2

︵ 実に

3

︶阿羅漢をえて︑

4

︹語順の相違︺︻補注

4

5

︶このことはり

6

︶おく︒

7

︶ゆへはいかん︒

8

︵ 滅度ののちに︑

9

︵ 受持読誦し︑

10

︶うることかたし︒

11

のほとけにあひて︑

12

この法のなかにして︑

1

︶ 深

妙の道︵

2

せる︑︵妙一本の誤か︶

3

︶ 衆

苦に︵

4

乱︿開合の乱れ﹀

5

︶ 悩

乱せらる︒︵

6

︶ 涅

槃をとく︒︵

7

︶まうけて︑

8

︶いることえしむ︒

9

︶なんたち

10

なることうへし

11

いまたいたらさるかゆへなり︒

12

︶ 衆

生︑

1

にいるに本たり︒

2

︶もてことさらに

3

︶﹁しかも﹂ナシ

4

︹語順の相違︺︻補注

6

5

︹語順の相違︺︻補注

7

6

︶ 佛

道ならん︒︵

7

︶ 深

心をもて︵

8

︹語順の相違︺︻補注

8

9

︶ほとけをうへし

10

充 遍 しぬ︒ ︿四つ仮名の乱れ﹀

11

︶かれか心行 ︵

1

了することえてむ︒

2

︶なんたち

3

︶虚妄︿開合の乱れ﹀

4

︶たたし

5

︶おほして︑

6

︶いたけることある︑

7

︹語順の相違︺︻補注

5

8

四衆等

9

かす︿四つ仮名の乱れ﹀

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