プログラミング入門教育とその評価の試み
(昭和58年5月31日 原稿受付)
情報処理教育センター中山泰雄
〃 矢 鳴 虎 夫
Some Evalu for the Beginner s Programing Education
by Yasuo NAKAYAMA
Torao YANARU
Ah8tract
Our Education Center for Information Processing started at 1974. First, we introduce the simple history of our center. Secondly, we give the course of education listing up some ex・
amples of programming themes. Thirdly, an evaluation method by using self・check sheets in
proposed and experimented for the freshmen, who are all beggineers, belong to the department
of Electric Engineerings and Control Engineering. The resultant data concerring the numberof staternents and operators are statistically investigated.
入する方式でプログラム入力が容易となった。言語は主
1・まえがき にFORTRANであり, WATFIVの導入により処理速
TSSの普及に伴い,情報処理入門教育の形態もこれに 度が向上し,メモリーも192K,ディスクパックも70MB 対応を迫られた。九州工業大学においても情報処理教育 4パックに増強された。
センター発足当初のバッチ処理から始まり,ハードウエ 55年度より,ホストコンピュータはIBMからMEL・
アを含めて大きな変化が見られる。入門教育の現況,今 COM−COSMO 7001nにリプレイスされ, CRT端末装置 後の展望,教育の評価についての手がかり等を報告する。 が30台設置され,完全なTSS方式となり,カード入力方
式は廃止された。メモリーは2MB,ディスクは300MB
4パックで構成されている。2.変遷
情報処理教育センターの発足は49年度であるが,それ 56年4月より講i義室にビデオプロジェクターを設置
までは,情報工学科のミニコンTOSBAC−40により, し,端末装置の画面を70インチスクリーンに投影する方
マークカード入力のバッチ方式で教育が行われた。マー 式を利用開始した。58年10月よりはホストコンピュータ クリーダの読取速度,LPの印字速度が遅く,JOBの処理 COSMO 700mが800111にレペルアップされ,メモリーは件数が限られた。 6MB,ディスクは1800MBとなる。またパソコン
50年3月,IBM 370−115が情報処理教育センターに導 Multi−16が20台端末装置として増設される。言語は 入され,同年4月よりマークカード入力によるバッチ処 FORTRAN, PASCAL, FLAG, BASICが主に使われ
理を開始した。カードリーダー,LPともに速度が向上し ている。処理速度の向上により夜間は10時で運転終了と たため,JOB処理件数はかなり増加したが, CPU速度の なっている。ネックにより,終夜運転も生じた。なおCPUメモリーは
3.入門教育の事例
128K,ディスクは70MB2パックであった。同年10月よ
り端末装置14台によるバッチオンライン入力方式が稼 プログラミング入門教育は全学科とも準必須であり,
動,CRT端末画面で作成されたプログラムを,バッチ投 1年次の前後期に別れて実施されている。講義演習を含
めて週160分である。ここでは電気科・制御科の授業例 めて2通出題する。図形はテキストの演習問題と同じも について紹介する。後期15週で4単位であるが,これを のであり,任意の図形をLP出力するものである。プロ 次のように割りふる。 グラミング能力よりも図形のアイデアという発想力を要 1週目 コンピュータの概念。 求されるため,表現のむずかしさを実感するものが多い。
2〜4週 BASIC。ここでは習得の容易なBASICで カレンダについては正月でもあり,実用も兼ねて出題し
4則演算,判断比較,ループ,配列の考え方を理解させ ているが,学生の喜ぶテーマのひとつである。これも表 る。2週目は端末装置の利用法に慣れさせ,またエディ 現に種々のものが見られ,文字パターンの作成も含めて ターの利用法も習得させる。 優れた出力結果はクラス全員に披露している。但し,万5〜14週 PASCALの学習。テキストは森口他 年歴の計算法は参考例を資料として渡してある。
「PASCALプログラミング対話」を用いる。 ・第7回 積分
5週目は,PASCAL例題ソースプログラムの作成,コ テキストの積分例の出題である。ここでは結果の解っ ンパイル,実行方法を理解させる。 た例として,
フ1篇1;;㌶!慧㌫:;㌫; r・i・A砿・・sr㎡
出力方法及び出力ファイルのLP出力方法を習得させ, の計算をさせ,1V等分した場合の長方形,中点法,シン 8週目にバッチ投入方法を利用させる。 プソン法の3方式での比較をさせ,」Vによる変化を調べ
最終回にはPASCALと対応してFORTRANの概略 誤差を評価させる。
を説明する。 ・第8回 連立方程式
レポートのテーマを次に示す。 網状の抵抗の回路網を示し,各枝路の電流を求める問
・第1回 2次方程式の解 題である。連立方程式の解法を理解したうえで,電気系 係数を与えて2次方程式の解を求める簡単な問題であ 学生の電気回路の学習問題を兼ねて出題しているが,回 るが,判別式に注意させる。レポートの書き方も習得。 路の方程式のたて方に苦労し,初めて専門科目とプログ
・第2回 データの個数,平均値の計算等 ラミングと結びつきを理解している。
テキストの最大値を求める例題を変更し,データの個 ・第9回 成績一覧表
数,最小値,平均値を求める内容にする。ここでは出力 テキストのソートの応用であり,40人の3教科の成績 結果は画面出力を手書きさせている。 を入力し,順位表を作成する。procedureの上手な書き
・第3回 関数曲線の表示 方,表のみやすい出力形式等で,これもかなり個人差の 正弦波の基本波と高調波及びその合成波のグラフをL 大きい内容となっている。
Pに出力させる。テキストに減衰曲線のLP出力例が記 ・第10回
述されているので,この応用として出題。ここではLP 最後の出題であり,いくつかのテーマから自由に選ば
に適当な大きさでグラフ化するためのスケーリングにつ せる。文字,ワードのカウント,整数入力による電卓計 いての理解を図っているが,あわせて電気系学生である 算のシミュレーション,簡単な英和術語辞典のファイル ため,電圧の概念と結びつけている。 作成による単語の検索等がその例である。・第4回 ヒストグラム 文字のカウントでは,講義の最初のエディターの使い 講義中に乱数の概念を解説し,コーディング用紙1枚 方の練習時に作成したファイル(英文またはローマ字で に1けたの乱数を400個記入させる。多量のデータの確 の憲法前文,もしくは第9条)を使用させたが,このテー 実な入力の訓練の意味で,これをキーボードから入力し, マを選択したものが多くみうけられた。
この入力ファイルを用いてヒストグラムを作成させる。
4.レポートの評価法
出力のグラフに目盛り等でかなり表現に個人差が出る。データの偏りに興味を持つ者も多い。 レポートの評価については,レポートの提出時にあら
・第5,6回カレンダ,図形 かじめ配布した自己採点票を添付させる。
冬休みにかかるため,レポート作成期間が長い事も含 旦亘麺の基準は,提出:50点,期限おくれ:−20
101
点,未完成:−10点とし,内容については3段階評価と 興味については,テーマについてその内容に余り興味を
し,それぞれの区分で3,6,9点とする。 感じないが1段階,3段階目は内容に興味が多い。理解 項目は,解法・流れ図・プログラム・結果・ディス 度では,1段階は,十分には理解出来なかった,3段階
カッションからなる。なお流れ図はNSチャートを用い では内容が完全に理解出来たものとして区分してある。る。 レポート番号3で興味の3の数値が大きいのも電波の出
他人の内容を参照せず,独力で書いたものは2段階と 力に関心があった事を示している。する。内容がユニークなものは3段階,プログラム等自 レポート番号9では,時間不足が多いが,丁度年末が 力で完成出来ないものは他人の参照も認め,またプログ 近く,計算機の応答が遅いためであり,またそのため提
ラムは内容を十分理解したうえであれば,友人のコピー 出期限に間に合わないもののためにサンプルプログラム も認めているが,その場合,1段階とする。 を与えてあり,このためプログラムのコピーの多いのも また,文字・図等が乱雑な表現は一5点,正確かつ奇 やむを得ないであろう。またレポート番号5はカレンダ 麗な表示は+5点とする。これらの自己採点は,全員の であるが,これは出力にこりすぎて時間不足を生じたも
レポートの内容を点検の上,本人に十分に理解させ,な のであり,当然興味深い内容であることを示している。
お前年度の模範レポートを表示した後,採点基準を理解 東工大木村教授の作譜心得10条を授業中に解説して
させ,これにより公正化を図る。これにより順次レポー いるが,その中に, ほどほどに の項目がある。興味にまトの自己採点の修正が滅少する。 かせてプログラミングにのめりこむ学生には,この項目 なお毎回のレポート採点面接時,レポートの質問事項 を再度指示するが,言葉通りにはゆかぬ場合が多い。
に答えることにより学習の理解度も深まることは当然で ここで角度を変えて,レポート5,7,8の内容を調
ある。 べてみる。
コピー等により1段階の記入項目には,十分な学習指 第3表は学生各個人のプログラムのステートメントの 導を与えることは言うまでもない。 行数を調べたものである。一見して解るが,レポート番 自己採点表(修正後)の集計結果を第1表に示すが,第, 号5(カレンダ)はプログラムも長く,また標準偏差も
2表の感想と合わせて,ほぼ妥当なテーマと言えるであろ 大きい。従って個人差の大きい事もこの表からうなずけ う。第2表の集計ではレポート作成について各項目での記 るものである。番号9はプログラムも小さく標準偏差も 入結果を示す。それぞれ3段階とし,時間にっいては, 小さいが,これは連立方程式の解は,教科書の例題がそ
1段階では時間不足,3段階では時間が十分であった。 のまま利用出来るため,殆ど似たようなプログラムとな 第1表 自己採点統計 1
レポート
@ 恥 2 3 4 5 6 7 8 9
区 分
1 2 31
2 31
2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 31
2 31
2 3解 法
666
11 3 69 9 3 70 7 8 53 11 6 48 13 456
5 4 59 11 7 63 8流れ図 3 78 1 2 71 4 1
70
9 6 53 16 2 54 10 1 66 4 8 68 61
64 12プログラム 9 65 9 10 54 15 10 56 15 16 43 16 7 46 12 14 50 8
1
64 2 24 41 9結 果
2 68 12 2 57 20 3 61 15 10 52 14 2 56 12 6 63 4 2 676
4 58 15 デイスカcション 72 11 56 23
70
11 63 8 63 7 64 13 62 10 64 1310
第2表 統 計 表 n
レポート番号 2 3 4 5 6 7 8 9
、区 分 1
2 3 1 2 3 1 2 31
2 31
2 3 1 2 31
2 3 1 2 3時 間
16 51 18 24 44 31 28 32 6 3430
4 28 24 8 16 50 9 966
17 42 26 7興 味
6 65 13 3 49 40 3 61 14 0 49 25 4 41 13 4 59 8 2 79 11 6 57 11理解度
3 44 35 1 48 48 4 47 20 4 52 14 3 41 211
55 14 080
8 5 58 13一 第3表ステートメントの数
レポート番号
平均値 最小値 最大値 標準偏差
5 101 34 548 88
7 67 26 207 26
8 49 39 94 8
第4表 オペレーター覧表
5 7 8 5 7 8
begin
11.57.5
5.71var 3.5
2.651.1
Procedure
2.85 0.81 0,015 round 0,035 0 0血nctiur 0 1.85 0 sgr 0.05 0 0
writeln 14.3
8.2
5.43chr 2.0
0 0wdte
7.061.1
2.06十
15.2 14.53.0
read
1.150.5 1.9 一 6.5
9.45 0readln 0.18 0.05 0.83
* 4.0
15.5 2.15for 7.05 25.1
9.81
/ 0.217.1
2.45to 7.13 25.1
9.8
直t2.9
0.05 0do㎜to 0,015 0
2.1
mod5.5
0.13 0,015case
1.561.1
0,035;=
29.3 29.6 20.1while
0,285 1.99 0,035 ; 68.6 51.7 29.2repeat
0,785 0.38 0,035 input 1 0.28 0if 5.5
0.680.2 abs
01.81
0and 2.41 0.84 0
COS
0 1.98 0or 2.35
1.43 1.7
1n 0 1.65 0キ
2.28 0,065 0,035 sin 02.0
0≦
0.38 0.65 0 integer 5.76 3.161.08
≧
0.23 0,015 0 rea1 0.05 6.23 3.03=
7.35 3.863.5
Boolean 0.01 0 0<
0.131.23
0 Goto 0 0.01 0〉 1.1 0.2
0Labe1
0 0.01 0) 60.1 32.5 36.3
typo
0 01
const 0,065 0.83 0.98 コメント 2 2
1
り,出力の表現に差が生じる程度である事が解る。第2表 グラム能力のコンピュータによる評価がある程度可能と の時間と照合すると,当然時間不足は最も少ない。 なるであろう。その他Halsteadの評価(2)の色々な適用 次に各プログラムのオペレータの数を調べてみる。レ が考えられる。
ポート5はprocedureが平均3個使われ, write文も多
_ 5.TSS教育の問題点
く出力の多い事を不している。レポート6の数値積分は当然for文での繰り返しが多い。:=でみると各々ほぼ同 TSS端末の使用形態として二つの方式が考えられる。
じ演算式の個数であるが,;で区切られるステートメン 先ず一つは,常時TSS端末を開放し,常時自由な時間に
トの数はレポート8が一番少なく,第3表と似た結果と 使用させる方式であり,今一つは,演習時間帯だけ利用
なっている。数値積分以外は函数が殆ど用いられず,if文 させる方式である。本学では演習時間帯は該当クラスの の多いレポート5はプログラムが複雑であり,この表の み端末装置を専用し,それ以外の時間は開放の形式とし 平均値と各個人のオペレータの値が比較出来れば,プロ ている。しかし自由な使用形式では積極的な使用が少なく,必ずしも適切ではなかった。マイコンがパーソナル することにより,CPU負荷の軽減を図り,またマイコン な形で使われる時代となれば,次第に意味が無くなるが, の特徴を生かした教育を10月より実施の予定である。レ ハングリーな状態でコンピュータを利用した時代の方が ポートに関して補足すると,提出期限は通常1週間とし 教育効果のあがった過去の実例も考慮する必要があるの ている。これは一般的にみて十分な期間を与えても早目 ではないか。そのためには汎用機の利用ではマイコンで にとりかかる例は殆ど無いのが実状である。夏休みを挾
出来ない学習内容に主体を置くべきであろう。 んでの出題と,1週間の期限での出題でも殆ど差がない
学生数と端末台数の関連については,1人1台専有と 例からも明らかである。また,グループ学習でレポート するか,2〜3人に1台で間に合わせるかのいずれかで 作成を行わせた場合,十分に足並みが揃わないと学習に あるが,これにっいては,初めて端末を利用する場合は, 障害を与えることになるので,この方式はとるべきでは22幽を交互に使う方式が,操作を習得し易い。 ない。
デバッグも最初は2人で相互に注意しながらの方が効
果が上がる.キーボードの操作,プ。グラミング能力の 6・むすび
向上に伴い,予算が許せば,1人1台専用が好ましいと マイコンの普及により中高校生でBASICの習得者も 思える。 増加しつつあるこパソコン所有者との差が学習に影響を
本学では専有時間を1時間としてある。以前のバッチ 与えることも留意する必要がある。今後の入門教育としシステムではコーディング後十分に内容をチェックの ては,例えば理科年表,各種工学ハンドブックの数値表 上,実行,デバッグも慎重に行っていた。現在では,気 等を教育用データベースとして準備しておくべきであろ 楽に端末から入力出来るため,紙上でのコーディング作 う。また非数値計算,図形処理の算法もある程度,入門 業が行われず,考えながら直接ソースプログラムの入力 教育で触れる必要があろう。
を行う場合が多い。従ってプログラム作成の無駄が多い。 これからは単なる言語教育はCAIまたはVTRを用
この辺りは十分なしつけの必要がある。 いて個人学習して良い時代である。集団教育の方法論を最近CRT乏長時間対面する場合,目に障害を起こす より確立する必要があろう。蛇足だが,日本で開発され
例も報告されているので,この事実も十分に認識させる た優れたソフトウエアが無い事を学生に知らしめておく 必要がある。 ことも無駄ではあるまい。マイコンの普及した今日,TSS端末ではなく,1クラ
ス分のマイコンを設置して教育する方式も見かける。ご 参 考 文 献