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* 特恵的貿易取決め,数量制限及びサービス貿易*

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(1)

特恵的貿易取決め,数量制限及び サー ビス貿易*

佐 竹 正 夫

1

.はじめに

地域的な経済統合にたいす る関心がふたたび高まってきた。 これはヨーロッ パ経済共同体

(EEC)

が,

1987

年発効の単一欧州議定書 によって

1992

年 に向

けて完全な共同市場を 目指す ことを決めたこと,米国がカ リブ海諸国に対する 一方 的 な特恵 関税 の適用 を定 めた 「カ リブ海諸 国開発計 画

」 (Caribbean BasinInitiative,1983)

に続 き,イスラエルやカナダと

2

国間の自由貿易地 域協定を締結 した ( 前者 は

1985

年,後者 は

1987

年) こと,が大 きな要因であ る。 とりわけ第

2

次大戦後,「関税 と貿易に関す る一般協定

」(GAT甘)

の下 で無差別多角的な自由貿易主義を推進 してきた米国が,自由貿易地域協定 とい う形の,

2

国間アプローチの採用に踏み切 ったことは,歴史の大 きな変化を予 期 させ るものである1 )。 これによって経済協力開発機構

(OECD)

の中で何

*

本稿 は

,1989

1

月 に一橋大学経済研究所の寺西 ・江 口ゼ ミで行 った報告 に基づ いている。寺西垂部,江口英一先生をは じめとす る出席者の方 々か ら有益なコメン

トを頂いた。また同年

6

月に学内の研究会で報告 した際にも出席者の方 々か ら幾多 の コメン トを与え られた。なお筆者は,本年度の文部省の特定研究経費 ( テーマ :

1990

年代 の国際経済 レジームに関す る学際的研究」)を得 たO これ らに対 して 謝意を表 します。

1)CBI

や米 ・イスラエル及 び米加 自由貿易協定以前 に,米国が 自由貿易政策を特恵 的な取決めの下で行 ったケースは二つ しかない。一つは

,1965

年の米加 自動車協 定である。 これはある条件の下で,完成車 と部品の無税通関を認めたものである。

もう一つ は

,197

1 年 に発展途上国 に対す る一般特恵制度へ参加 した ことである0 米 ・イスラェル協定 に関 しては

,Goldberg,HirshandSassoon (1988)

,及び

47

(2)

48

42

巻 第

4

らかの形で経済統合 に入 っていないのは日本だけにな った。 もっとも米国 は, 日本や東 アジア諸国に対 して も自由貿易協定を打診 して きてお り,ア ジア ・太 平洋地域 で も経済統合の構想 は再 び関心を集め始 めた

2) 。

しか し第

2

次大戦後の貿易交渉をみ ると,地域的な経済統合 よ りも

GATT

の場で行われた多国間交渉の方が重要であ る。 とりわ け,ケネデ ィ ・ラウン ド

(1964‑67)

と東京 ラウ ン ド

(1973‑79)

にお け る一般 関税 引下 げ交渉 は, 自由貿易を大 いに進展 させた。 これによって先進諸国の工業品の平均的な関税 率 は,極 めて低 い水準 にまで低下 して い る。 また 日本 も

1970

年以 降の経常収 支 の黒字基調 を背景 に自由化政策を進 め,関税引下 げ とともに輸入制限 も撤廃

して きた。

ところが,同 じ

1970

年 頃か ら米 国や ヨー ロ ッパで は 日本や新興工業経済群

(NIES)

の工業品に対 して,主 に輸 出自主規制 とい う形でそれ らを規制す る 動 きが 出て きた。現在で は,繊維,履物,衣料,鉄鋼, 自動車,半導体,工作 機械等,非常 に多 くの商品が,なん らかの形の規制を受 けている。 また貿易相 手国の輸 出をダ ンピングや補助金付 き輸 出 と認定 して,反 ダ ンピング税や相殺 関税を課す ケース もこの数年非常 に 目立 って い る

3) 。

さ らに, アメ リカは, 自国の工業品をそれ らの措置によって防衛す る政策か ら,近年 は対米黒字国を 相手 に個別 に市場 開放 を要求す る政策 に転換 して い る

4)

。 日米 間の最近 の摩

Schott(1989)

所収の

Rosen

の論文があるが,米加協定に関 しては,文献の数は 非常に多い。協定が成立する前のそれには

,Wonnacott(1987),Stern,Trezies andWhalley(1987),SchottandSmith(1988)

等がある。

2

)太平洋地域の自由貿易地域構想に対するごく最近の ( 否定的な) 見解は

,Drysdale andGarnaut(1989)

にみられる。この論文は

Schott(1989)

に含まれている が,後者は

1988

1

1 月に

InstituteforlnternationalEconomics

が主催 した会 議の議事録で,太平洋地域の可能性のある種々の自由貿易構想が検討されている。

また最近の小島教授の見解は

Kojima(199

1 )に見 られる。日米間の自由貿易協 定構想については

,Schott(1989)

所収の黒田論文以外には,兼光

(199

1 )の

12

章がある。

3

) 非関税障壁の程度については, 拙稿

(1987)

及 び

Nogues,et.al(1986)

を参照。

4

)バ グワテ ィ

(∫.Bhagwati1988,pp.82‑4)

は,赤字国の要求に答えて黒字国

が個別商品の輸入を増加 させることを

,

「 輸入自主拡大

(VoluntaryImport Expantion)

と命名 し,輸出自主規制と同様

GATT

原則を侵食するものとして

強く批判 している。

(3)

特恵的貿易取決 め,数量制限及 びサ ー ビス貿易

49

操 は,もっぱ ら日本の市場開放 に関 して生 じている。しか もアメ リカの狙いは, 伝統的な製品の輸出よりもサー ビスの貿易に照準が移 り,財に対す る国境措置 の撤廃,軽減だけではな く,生産要素の移動 に対す る規制の緩和や,流通機構 のような国内の諸制度の変革を求めている。

米加 自由貿易協定 にも,関税や数量制限の 自由化のような伝統的な自由貿易 協定 に加えて,サービスや投資の 自由化が含 まれてお り,内容 は包括的である.

日米間の 自由貿易協定の場合で も,それが検討 され る時には,農産物や差別的 な輸出自主規制の取扱いと共に,サー ビス貿易の自由化が大 きな焦点になるも の と思われる。つまり現在の貿易交渉の大 きな焦点 は,それが

GATT

の場の 無差別的な交渉であれ, 自由貿易地域のような特恵的な取決 めであれ,関税 引下げよりも,む. しろ非関税障壁, とりわけ輸出自主規制のような数量制限や 生産要素の移動 に対す る規制の緩和が,中心問題 になりつつある。また,財だ けでな く,サー ビスの貿易が対象 として取 り上げ られているところに,特色が あるといえる。

地域的な経済統合 は,貿易財 と生産要素の移動の自由の程度 に応 じて,

4

つ の形態に分 けることができる。第一 は貿易可能財 に関 して,関税や数量制限等 の貿易障壁措置を撤廃する自由貿易地域

(FreeTradeArea)

である。 この 場合,対外的な貿易措置は各国政府の自由裁量 に任 され る。ただ し

GATT

は 第

24

条で,経済統合を設立する時には,統合後の域外に対す る貿易障壁を,紘 合前の水準 よ りも強化 してはいけないと している

5)。

第二 は,域内の自由貿

5)GATT

24

条第

4

項 は 「 締約国は,また,関税同盟又 は自由貿易地域の目的が, その構成領域間の貿易を容易にす ることにあ り,そのよ うな領域 と他の締約国 との 問の貿易に対する障害を引 き上げることはないことを認 める」( 高野 ・小原

,1983

,

p.15)

と述べて,第三国に対す る貿易障壁を同盟前 よ りも引き上 げてはいけない

という現状維持の規定を設 けている。 しか し貿易障壁の内容や協定以後の程度 につ

いては,具体的には明 らかにされていない。同条第

5

(a)

には 「・・・同盟国

の構成国又はその協定の当事国でない締約国 との貿易に適用 され る関税その他の通

商規則 は,全体 として,当該関税同盟の組織又 は当該中間協定の締結の前 にその構

成地域 において適用 されていた関税の全般的な水準及び通商規則 よりそれぞれ高度

な ものであるか又 は制限的な ものであって はな らない」 ( 同上

,p.15)

とい う文

言があり,関税については 「 全般的な水準」よ りも引き上げてはいけないとされて

(4)

50

42

4

易に加えて,加盟国が域外 に対 しては共通の関税 ( 対外共通関税)を設置す る 関税同盟

(CustomsUnion)である。経済統合が財だけでな く,労働や資本

の よ うな生 産要 素 の 自由移動 を含 む時 に は,統 合 は共 同市場

(Common Market)

と呼ばれ る。 さ らに共同市場 内の各国の政府が,財政政策や金融政 策をは じめとして,独 占禁止政策や農業政策,社会 ・地域政策等について,早 な る協調を越えて統一的な政策を とる場合を, 経済同盟

(EconomicUnion)

と呼ぶ。

経済統合の理論的検討 は,現実の経済統合の動 きほどには進展 していないよ うにみえ る。理論の対象 はもっぱ ら関税同盟 ( 及 び自由貿易地域)に限 られて お り,要素移動を伴 う共同市場の分析 は貧弱である。 しか し関税同盟の理論 自 体 は1

950

年代,60 年代 に大いに進展 し,国際経済学 の一分野を形成 してお り, 共通の財産 となるよ うな議論 を残 して きた

6)。

当初経済統合 は,多 くの貿易 障壁が存在 しているなかで,その 1つが消滅す るので 自由貿易へ近づ くことと

して歓迎 された。 この考えは,

GATT

に も影響を与え,明 らかに

GATT

の 無差別原則 と矛盾す る地域的な経済統合 は

GATT

の例外 と して残 る ことに な った。 しか し,

1950

年 に ヴ ァイナ ‑

(Viner,1950)

が貿易創 出

(trade creation)効果 とともに貿易転換 (tradediversion)効果の概念を導入 して

か ら, このよ うな単純な考えは,修正 され ることとな り,む しろ経済統合の差 別的な側面が注 目を集め るよ うにな った。 この ヴァイナ‑の議論 は次善

(se‑

condbest)の理論 として一般化 された。すなわち,最適資源配分 に関す る一

つの条件が欠 けている場合 に,他の一つの条件が満たされて も,最適資源配分 の状態に近づ くかどうかは,先験的には明かではないという議論である。

ヴァイナ‑の貢献 は,関税同盟が 自由貿易的であると同時に保護貿易的であ

いるが,それ以外については単に 「 通商規則」となっているだけで,具体的に何を 持って障壁の水準とするのかは暖味である。

6)Robson(1972)

,

Krauss(1973)

はリィ‑ディングズである。展望論文には

,1950

年代のものにLi

psey(1960),60

年代のそれに

Krauss(1972)

,そして7

0

年代を

含んだ展望にEl

Agraa(1985)がある。邦文では兼光 (1989)が新 しい。

(5)

特意的貿易取決め,数量制限及びサービス貿易

51

ることを指摘 し,関税同盟が常に当事国の利益 とはな らないことを明確に した ことである。その後関税同盟の理論はいろいろ展開を見せたが,その過程で生 まれた一つの議論 は,関税同盟のよ うな特恵的な関税引下 げ

(preferential tariffreduction)

と無 差 別 的 関 税 引下 げ

(non‑discriminatory tariff reduction)

の優劣の問題であった。 この点に関 して経済学者の間では,小国 で規模の経済性がなければ,関税同盟よ りも無差別的関税引下げの方が経済厚 生 は高い という合意がなされている。 クラウス

(Krauss,1972)

によれば, この通説のために,理論的な関心 は関税同盟の経済的効果の分析か ら,各国が 経済統合 を行お うとす るのは何故か, とい う政治経済学的な分析 に移 って き

た 。

もちろん,小国 と規模の経済性がないとい う仮定をはずす と,上述の定説 は 成立せず,関税統合の優位性が出て くる。関税同盟前には小国であって も,同 盟 によって市場が統合 され大国になれば,域外か ら域 内に貿易が移 ることに よって,域外に対す る交易条件が有利 になる可能性が生 じる。国際経済学で言 う,最適関税の理論が成立す るのである。また規模の経済があるところでは, 統合 によって,より効率的な生産が可能にな り,費用逓減の利益が得 られる。

しか しこれ らの問題 については,まだ確定的な答えは出されていない。それゆ え,各国,特に発展途上国が経済統合を行 う動機については,非経済的な要因 を導入す る試みが行われてきた7

)0

ところで これ らの伝統的な理論の特色 は,第一にもっぱ ら関税の自由化が分 析 されて,数量制限については議論 されていないこと,第二に対象 とされるの は有形な財であって,それ とサー ビスとの区別がなされていないこと,第三 に 完全競争的な市場を前提に していること,そ して,第四に関税同盟の議論であ るために生産要素の国際間の移動 は考慮 されていないことである。 これ らが全 く議論 されていない とは言わないが,

1960

年代ではな く現在の経済統合の問 題を考えるときには, このような特色を持つ伝統的な理論 は不十分であるよう

7

)代表的な文献 は

,Johnson(1965)

CooperandMassel(1965)

である。

(6)

52

商 学 討 究し第

42

巻 第

4

号 に思われる

さきに述べたように,現在先進諸国の工業品の関税率はきわめて低い水準 に あり,関税引下げの貿易創出 ・転換効果は量的にはそれほど大 きな影響を与え るようにはみえない。む しろ,輸出自主規制を初めとする数量規制が各国の主 要な貿易障壁 となってお り,地域的統合を行 う場合に最 も大 きな問題になるの は,それ らの撤廃ない し軽減の方法 とその効果であろう

ところが奇妙なこと に経済統合 と数量制限の関係を分析 した研究は,私の知 る限 りでは,今 まで存 在 していないように思われる。数量制限の域内における撤廃 は,

EEC

や欧州 自由貿易連合

(EFTA)

のような関税同盟や 自由貿易地域協定では当然協定 の中に含まれてはいるが,関税が もっぱ ら分析の対象 とな り,数量制限につい ては議論されていない。

この理由としては考え られ るのは,第一 にカーゾン

(Curzon,1974,pp.72

‑75)

が述べているように,

EFTA

の場合 には,発足の当初か ら域内各国の 数量制限は,

GATT

OECD

のよ うな場で無差別的に撤廃 させ られていっ たので,それが持つ差別的な効果 はそれほど問題 にな らなか った ことである。

第二に,理論的には有名な関税 と輸入数量制限に関す る同等性の定理が影響を 与えているのか も知れない

8)。

同等性 の定理 によれば,完全競争を仮定 し, 政府が輸入許可証を競争入札によって配分す る限 り,無差別的な関税 と数量制 限は資源配分の面で完全 に同一の効果を与える。従 って関税同盟の場合で も同 等性の定理が成立す ると考え られて,数量制限については陽表的な分析が行わ れなか ったのか もしれない。

本稿の第一の課題 は,経済統合のような特恵的な貿易取決めにおける数量制 限 自由化の効果を分析す ることである。以下で明 らかになるように関税同盟の ような特恵的な自由化の場合 には,関税 と数量制限の同等性の定理 は成立 しな い。そ して関税よ りも数量制限の自由化の方が,輸入国にとっては利益が大 き

8

)同等性 の定理 について は,例えば

BhagwatiandSrinivasan (1983,chap.10)

最近の ものでは,

Vousden (1990)pp.64174

が詳 しい。

(7)

特恵的貿易取決め,数量制限及びサービス貿易

53

い ( 損失が生 じる場合で も小 さい) とい う一見逆説的な結論が得 られる。また 数量制限で も,輸入国の輸入制限の自由化よりも輸出自主規制の撤廃の方が, 輸入国にとっては利益が大 きくなることが示 される。 もっともこの結論は新 し

いものではない。

本稿の第二の論点は,伝統的な理論の第二の特色に関連 している。近年サー ビス貿易の自由化が注 目を集め, とりわけアメ リカは

2

国間であれ多国間であ れ様 々な機会を とらえて,サ ービス貿易の自由化を進めようとしている。サー ビス貿易の自由化が自由貿易協定 といった形で行われる場合に,伝統的な理論 の結論が同 じように成立す るのか どうかを検討することが課題 になる。 しか し サービス貿易が財貿易に対 してどのような特色を持 っているのか,サービス貿 易 は伝統的な貿易モデルで説明で きるのか,あるいはサ ー ビス貿易の 自由化 は,財貿易 と同 じような利益を もた らすのか といった点に関 しての理論的な研 究は,最近 になってや っと緒に就いたばか りである。

したがって本稿 は,サービス貿易の自由化を分析す るための一つのアイディ アを提供 しようとす る試みであると考え られたい。議論のポイ ン トは,サービ ス貿易の自由化 は関税 自由化のような間接的な ( 価格)規制の軽減ではな く, 直接的な規制の緩和であること,そ してサー ビスの貿易が要素移動を伴 うこと を特色 とす ることである。それゆえ本稿の第一の論点である数量制限の分析を 使 うことができる。

なお以下で議論するような特恵的な貿易取決めは経済統合だけではない。特

恵関税のような多国間の取決めもそ うであるし,特定の財についての

2

国問協

定 ( 注

4

で述べたようなバ グワティの輸入 自主拡大のよ うなケース) も他国に

対 しては差別的な効果を持っ可能性がある。それゆえ本稿の分析 は,経済統合

の議論 に限 られるものではな く一般的な ものである。 しか し用語 とモデルにつ

いては,関税同盟の文献に したが っている。

3

国モデルを仮定 し,

A

,

B

国を

同盟国( 域内)あるいは特恵的な協定を締結す る国 とし

,C

国を第三国 ( 域外)

あるいは協定の外にある国 とする。

(8)

54

商 学 討 究 第

42

巻 第

4

2.数量制限の撤廃

ヴァイナ一流の貿易創出と貿易転換効果が,特恵的貿易取決めにおける数量 制限の撤廃 ( ない し軽減)の場合にも生 じるかどうか, という点が本節の課題 である。分析は部分均衡分析を用いて

2

つのケースについて行われる。一つは 将来の同盟国が 自由貿易下で も貿易制限下で も,第三国に対 して競争力がな く,輸入国の全輸入に占める同盟国のシェアがゼロである場合, もう一つは競 争力があり高いシェアを占めるケースである。最初のケースは第 1図で示 され る。 D

A

,

SA

A

国の需要 と供給曲線,

SB,S

cは

B

,

C

国の輸 出供給曲線で ある。図が示 しているように,全ての範囲にわたって第三国であるC国の価格 は,同盟国の B国よりも安い。 したが って, 自由貿易の下ではA国はすべての 財を

Op

cの価格で

C

国か ら輸入す る。

当初

A

国が

pcp/Op

cの従価税をすべての国の製品に対 して課すか,ある いは輸入国の輸入制限か,輸出国の輸出自主規制によって輸入を

12 (‑34)に

制限す ると,輸入財の国内価格 は

Cp

に上昇 し,輸入量 は

34

に減少す る。 この 場合,輸入制限の方法 は一般的,無差別であって も, C国の方が競争力がある か ら,財はすべて

C

国か ら輸入 され る

。pcpx34‑3421

は関税の場合には関税 収入 とな り,

A

国の政府の手にはいる。輸入制限の場合には,それは

A

国の政 府 ( 政府が貿易を管理す る国家貿易か,輸入の権利を競売 にす る場合)か,

A

国の輸入業者 ( 輸入業者が輸入の権利を割当によって獲得す る場合)が手にす

るレン トになる。他方,数量制限が外国の輸出自主規制によって行われると, 輸出国の政府 ( 輸 出許可を競売する場合)か輸 出企業 ( 企業が輸出割当を受 け

る場合)に帰属す るレン トになる。

初めに関税の自由化を対象 とする伝統的な分析を見てみよう

A

国が

B

国 と 関税同盟 ( ない し自由貿易地域)を結び,B国に対 してだけ関税率をゼ ロにし,

C

国に対 しては関税率をそのままに してお くと9 )

, B

国の方が競争的になる

9

)関税同盟の議論では,第三国に対す る ( 共通対外)関税率 は,協定を結ぶ前の同盟

国の間の平均 的な関税率 を用いるので,

A

国の

C

国に対す る関税率 は

pcp/Op

(9)

特恵的貿易取決 め,数量制限及 びサー ビス貿易

55

か ら,

A

国はすべての財を

B

国か ら

OpB

の価格で輸入す ることにな る。輸入 量 は

34

か ら

56

に拡大 し,消費者の利益 は生産者の損失を土回 り,ネ ッ トの消費 者余剰の増加分 は台形

3465

の面積 に等 しい。 しか し,同盟前 に

C

国か ら得て いた閲税収入の

3421

は失われ るので,

A

国の純粋 な利益 は

375+468‑7821

で ある。 これが正 になるか どうか は先験的には明 らかで はない

。375+468

が一 般化された貿易創 出効果,

7821

が貿易転換効果である

10)O

次に数量制限のケ⊥スを考察 してみよう

A

国が

B

国 と特恵的な取決めを結 び,

B

国に対 してだけは, 自由化を行 うとしよう

C

国に対 しては数量制限を 残すが, C国の輸入枠をどうす るかが問題 となる。域外諸国に対する貿易障壁 を同盟以前 よりも増大 してはいけないという GATTの規定を,第三国か らの 輸入枠 はそのままに維持 しなければな らないと解釈す ると, C国か らの輸入量 は

34

のままである

ID

しか し

,B

国か らは自由に財が流入す るので,国内価 格 は

Op

か ら

OpB

に低下 し,輸入量 は

56

に増加す る. この うち,

56‑78

B

国か らの輸入量であ る.国内価格の低下 によって

A

国 はネ ッ トで,

3465

の消 費者余剰の増加を得 るが, この うち

3487

の部分 は,以前 は輸入国政府か輸入 業者の レン ト所得であったので,国内経済主体間の移転にす ぎず,純粋な増加

は,

875+468

である. これは関税の場合 と同 じ貿易創 出効果 と考え られ る。

他方貿易転換効果はどうだろうか。関税の場合には,第三国であるC国か ら

りも高 くなるか もしれない し,低 くなるか もしれない。 Ⅶしか し

,pcpB/Op

よ りも 低 くなる場合を除けば, この ことは以下の議論に影響を与えない。 自由貿易地域の 場合 は,第三国に対す る関税率は協定前の水準に維持 しなければな らない。

10)

ここでいう貿易創出と貿易転換効果 はヴァイナ‑の用いた概念 とは異な り, ジョン ソン

(Johnson,1962)

に従 っている。

ll)

数量制限の場合,協定後の第三国に対す る貿易障壁の水準を輸入の絶対量で計 っ

て,協定前 よ りも増加 しないとい うのは

,GATT24

条の一つの解釈であろ うと思

われ る。 もう一つの解釈 は各国の輸入に占める第三国のシェアを基準 にす ることで

ある。第

1

図では協定前の

C

国の

A

国におけるシェアは

100%

なので, この場合 に

はこれは適切ではないが,第 2 図ではシェア方式は採用され る。 しか し個別の国 ご

とによる場合 とは別に,同盟国全体に占める第三国のシェアを維持す る方法 もある

であろう。 この場合には,協定後の第三国の輸入枠がある国については縮小す るこ

ともあ りうる。 しか し他の国は増加す るので,域外全体に対 しては障壁を高めるこ

とにはな らない。 もっとも域外の国の間では輸出の シェアは変わるであろう。

(10)

56

第42 4号

の輸入はすべて

B

国か らの輸入によって代替 されたので,関税収入が失われ7

8 21

が貿易転換効果 として損失 になったが, この場合 には相変わ らず

C

国か らは 輸入を続けているので, レン ト所得 は減少 して もゼロになるわけではない。7

g 21

の レン トは相変わ らず,

A

国の政府か輸入業者の手に入 っている。つまり第 三国の輸入枠を縮小 しなければ,第三国か らの輸入の絶対量 は減 らないか ら, レン ト所得 も残 るのである。 したが って貿易転換効果は発生せず;関税同盟の よ うな特恵的貿易取決めによる数量制限の 自由化 は,第三国の輸入枠が協定 後,縮小 しないかぎり,必ず

A

国に利益を もた らす。 この点は関税 自由化 との 大 きな違いであ り,伝統的な議論が見過 ごしてきた点であろうと思われる。

輸出自主規制の場合 はどうだろうか。 この場合には,

A

国の利益 は輸入制限 の場合 よ りも大 きい。何故 な ら, 自由化前 には レン ト所得 の四角形3421 は輸 出国側 に帰属す るが, 自由化後 はそれは

7821

に減少 し

,3487

は輸入国の消費 者に移転 されるか らである。以上を要約す ると,関税 自由化の場合の利益 は

37 5+468‑7821

,輸入制限のそれ は

375+468

,そ して輸 出自主規制 は

375+468

+3478‑3465

となる。

このように上述のモデル と仮定の下では,関税の特恵的な自由化 と異な り, 輸入数量制限の場合には,貿易転換効果 は現れず,伝統的な議論の結論は成立 しない。 もちろん これは第三国であるC国か らの輸入枠を,現状のままに固定 す るとい う取決めを結んだためである。

C

国に対す る輸入枠を

,

.例えば

12

の半 分 に削減す ると, 自由化後 の レン トは

1/ 2×7821

にな るので,その分だけ 輸入国の レン ト所得 は減少 し,貿易転換効果が現れ る。すなわち,第三国に対 して協定後の輸入枠を厳 しくすればす るほど,輸入国にとっては不利 になるこ とが示され る。

しか し,数量制限が輸出自主規制の場合には,第三国に対す る差別的な取扱 いの程度 は,輸入国の経済厚生には少 しの影響 も与えない。輸入国の観点か ら は, C国の輸出自主規制枠を協定後34 よ りも減 らして も, レン トが輸出国か ら 輸入国に移転 して,利益が増加す る以外 の変化 は生 じない。 もちろん C 国に

とっては,

A

国に対す る̲ 輸出量が減 ることになるか ら, レン トが現状維持の場

(11)

特恵的貿易取決 め,数量制 限及 びサー ビス貿易

57

合 よりも小 さくな り,損失を被 ることになる。その分

B

国の生産者が輸出を伸

ばす ことになる

いずれにせよ,第 1図のモデルでは数量制限の自由化は伝統的な関税同盟の 理論の結論 とは異なる。同 じになるのは

C

国か らの輸入枠をゼロに して,完全 にA国の市場か ら締め出す場合だけである。 しか し, このような協定は GATT の現状維持条件に反す るか ら, このような内容を含む協定を締結することは難

しい もの と思われ る。 この点で関税 と輸入割当の同等性 は成立 しないのであ る。この結論の違いは, 第

3

国に対す る現状維持条件の実質的な違いに基づ く。

関税の場合,現状維持条件は,関税水準の維持であって,第

3

国か らの輸入量 その ものではない。関税率が変わ らな くて も,第

3

国か らの輸入 は取決め後, 完全に同盟国の痴 人に代替 され る。それに対 して,数量制限の場合には,第

3

価 格

(12)

58

価 格

a.p。

商 学 討 究 第

42

巻 第

4

2

国か らの輸入量その ものが維持 され るので,貿易転換が起 こらず,経済厚生が 悪化 しないのである。

次に

A

国の輸入 に占める同盟国のシェアが高い場合を考察 しよう

2

図の D

A

A

国の輸入 ( 超過需要)曲線,

SB,Sc

は前 と同 じく

B

,

C

国の輸 出供 給曲線である。

A

国は

C

国に対 しては前 と同 じように小国であるが,

B

国に対 しては大国である。また

B

国は

pcl

の部分 に関 しては

C

国よ りも競争力がある。

いま A 国が無差別的な輸入制限を行い,輸入量を

pc2 (‑p 3)

に制限す るも の と しよう

。pC2

の中で

B

国の輸出量 は

pcl

にな り,残 りの

12

C

国か らの輸 入 となる. これ によ って国内価格 は自由貿易下の

Op

cか ら

Op

に上昇す る

これは

,pcp/Op

cの従価税を課 した場合 と全 く同一の資源配分効果を もた ら

す.関税収入 は

p32p

cで,その うち

p41p

cは

B

国の輸入か らの収入で,残 り

(13)

特恵的貿易取決め,数量制限及びサー ビス貿易

59

は C 国か らの収入 となる

輸入制限の場合, この部分 は先の議論 と同様,輸入 国か輸 出国 ( 輸出自主規制の場合)に帰属す るレン トになる

初めに関税のケ‑スか ら考察 しよ う

この場合

C

国に対 しては従前通 りの関 税率 をか け,

B

国か らは無税で輸入 で きるO この とき,新 しい均衡 は D

A

SB が交わ る

5

にな り,国内価格 は

Cpu

に低下 し輸入量 はp U5 となる. これは すべて

B

国か ら輸入 され る。 C国の輸入品の価格 は国内では

Op

と変わ らない か ら,完全 に B 国に代替 され るのである

o

A 国の厚生上の変化 は ,356‑

pU62 pc

で示 され る.

他方, これに対 して数量制限の場合 には異なった結論が生 まれ る。 C国に対 す る輸入枠を4

3 (‑78)

に維持す ると,A 国に対する輸 出供給 は,

B

国のそれ と

C

国の輸入枠を加えた ものにな るので,国内価格 は

OpR

まで低下す る。

C

国か らの輸入の分があ るだ け,関税の場合 よ りも国内価格 は低下す るのであ

したが って,輸入量 も関税のケースよ りも多 く

p R88

こなる。 この うち

p R

7 が

B

国か らの輸入である。

経済厚生上 の変化 は, 数量制限が輸入国の規制か, 輸 出国のそれかで異な る。

前者の場合,第

1

図で は現れなか った関税の場合 と同 じ貿易転換効果が生 じ る。それは協定を結ぶ前 にもB国か ら輸入 してお り,そこか らレン ト所得が得

られていたためである。 この レン トは,協定後

B

国に対す る枠が撤廃 されるの で消滅す る。 その部分 はp41

pc

で あ り, この うち輸入国の消費者 に価格低下 の形で トラ ンスフ ァーされ る部分

p49pR

を除いた

pR91pc

が,輸入国の所得の 中か ら失 われ る。他方 消費 が増加す る ことによ る利益 は3810 で あ る。 した が って,ネ ッ トの効果 は

3810‑pR91pc

にな るが, これが正 にな るか どうか はわか らない。すなわち,同盟国の シェアが高い場合 には,関税の場合 と同 じ 貿易転換効果があ らわれ るので,特恵的な貿易取決めの下での数量制限の撤廃

は,関税 と同様必ず利益を もた らす とは言えない。 しか し,関税 とのケースと 比べ るとプラスの貿易創 出効果 は大 き く

(3810>356)

,マイナスの貿易転換 効果 は小 さい

(p R91pc<pU6

2

pc)

ことが図か ら読み取れ る。

それに対 して輸 出自主規制の場合 には,第

1

図 と同様 に貿易転換効果 は生 じ

(14)

60

42

巻 第

4

ない。輸入制限の場合 と同様 に

A

国が外国 に対 して無差別的に

pC2

の輸 出自 主規制を要請す ると,

B

国 は

pcl

,

C

国 は

72

に輸 出を規制す ることにな るO 国内価格 は

Op

に上昇 し,輸 出国は単位当 り

pc

pの レン トを獲得す る。

A

,

B

両国の間の協定 によって

B

国が輸 出自主境制を止 め,

C

国の輸 出枠がそのまま であれば,価格 は

OpR

に低下す る。 B国の輸 出は

pR

7 に増加す るが, B国は

p41p

c の レン ト所得を失 う

この うちp49

pR

は,

A

国の消費者が価格低下 による消費者余剰の増加 の形 で獲得す る分である。

A

国の消費者 は, これに加えて

C

国の生産者が得ていた

43109

の レン トも得 ることになる。結局, B国の輸 出自主規制の撤廃 によって

A

国の消費者が得 る利益 は,台形p38pR の面積 に等 しい。失 うものはないか ら,

A

国にとっては

B

国の輸出自主規制の撤廃 は必ず利益を もた らす ことにな る。 B国にとっては輸 出自主規制の撤廃 は,既存の輸出か ら生 じた レン トを失 う代わ りに,輸 出増加 による生産者余剰の増加 を得 るか ら,ネ ッ トで は

971二

p49pR

とな り, これが正 にな るか どうか は分か らない。

C

国 は輸 出 自主規制 を続 けていて も,

B

国の 自由化 によって

A

国における輸 出品の価格が下が るか

ら,43109 の レン トを失 う

C

国に対す る協定後の輸入枠,を協定前の

C

国の シェアを維持す るように決 めると,

A

国が利益を得 る可能性 は大 き くなる。第

2

図で,43/p3‑11

12/

pT12

となるよ うに

11

12

が選ばれている。 この場合 シェアは変わ らな くて も,

絶対的な輸入枠 は増加す るか ら,

A

国に対す る

B

国 と

C

国の輸 出供給量 C

ipT

1

2 にな り,価格 は

OpTまで下落す る。OpT<CpR

だか ら,貿易創 出効果 は輸

入枠が

78

め場合 よりも大 きくな り,貿易転換効果 は小 さ くなる。 このように,

輸入制限の場合 には第三国に対す る輸入枠の大 きさが決定的に重要である

三国に対す る輸入枠を拡大すればす るだけ, A国がネ ッ トで利益を得 る可能性

は大 きくなる。輸出自主規制の場合には,

A

国は必ず利益を得 るが,

C

国の枠

の拡大 は国内価格を下 げるか ら,同様 に利益 は大 きくなる。

(15)

特 恵的貿易取決 め,数量制限及 びサー ビス貿易

61

3

.サービス貿易の自由化

前節の数量制限の分析 は,特恵的貿易取決 めにおけるサー ビス貿易の 自由化 の効果を検討す る際に適用す ることがで きる。サー ビスの特色,あ るいはその 貿易の性質 について は,近年活発 に議論 されて きた。それ らの議論 によれば, サー ビスの取引は財のそれ と大 きな違 いがあるといわれ る。その最大 の特色 は サー ビスの供給者

(provider)

が, その需要者 と同 じ時間にそ して同 じ場所 に存在 しなければな らない とい う点

(physicalproximity)

であ る。 これ は サー ビスの在庫不可能性

(nonstorablenature)

とい う特質か ら生 じる

12'。

それゆえ国際間の取引の場合 には,人 ( 労働)や資本が国境を越え ることが必 要 になる。海外旅行 とい うサー ビスは人が移動 しなければ取引 は生 じない。医 者,弁護士のサー ビス, コンサルタ ン ト業務,音楽家の演奏,演劇の公演等 も 人 ( 労働)の移動を伴 う

また銀行や保険会社のサー ビス も海外支店 を設立 し なければ十分な海外活動 はで きない。 これ らの例 は,サー ビスの国際取引が労 働や資本 の移動 を伴 うことを意味 している。 したが って,サー ビスの 自由化 は 生産要素の移動 の 自由化を伴 う

サー ビスの供給者 と需要者が移動す る場合 には, ( 1)供給者が国境を越え て移動す るケース

, (2)

需要者が移動す るケース,

(3)

両者が共 に第三国に 移動 してサー ビスの取 引を行 うケース,の三つ に分 け られ る。第‑のケースは 人の移動 の場合 には建設労働者 や弁護士,コ ンサル タ ン ト業務があ る。 第二 は, 外国旅行者,留学,外国で医療サー ビスを受 ける場合,第三 は,医者 と患者が 第三国に行 って医療サー ビスが行われ ること,等の例を挙 げることがで きる。

しか し,要素の移動を伴わないサー ビスの国際取引があ ることも事実である。

バ グアテ ィ

(Bhagwa

t

i,1984)

のい う

"splinteredservice'

',あるいはサ ン

12)

サー ビスと財の違 いについて論 じた先等 区的な論文の一つ は

,Hill(1987)

である。

本節で参考 に した論文 は

Grubel(1987),SampsonandSn臥pe(1985),Stern andHoekman (1987),Sapir(1988)

,

Feketekuty (1988)

,経済企画庁調査

(1988)

等である。サー ビス貿易の文献 は

Feketekuty (1988)

が詳 しい。

(16)

62 42 4

プソン ・スネイ

ブ(SampsonandSnape,1985)

̀̀separatedservice"

がそれに当たる。具体的な例 としては,建築ディザイナーが外国の建築物を設 計 しその図面を送 る場合があるが,コンサルティング ・サー ビスや生命保険業 もサー ビスだけの取引が可能である。 とりわけ通信設備が発達 して くれば供給 者が移動す る必要 は少な くなるか もしれない。 レコー ドや書物 は現在では一般 には財 と考え られているが, このようなサー ビスの古典的な例である。バ グア ティ

(1984)

が例 として挙げているように,供給者 ( 演奏家)が移動す るか, あるいは需要者 ( 音楽愛好者)が移動 して演奏を直接鑑賞で きな くて も,現在 では演奏 とい うサー ビスを レコー ドという形で享受できる。 これは蓄音機の発 明とい う技術進歩のおかげである。

レコー ドや書物は別に して も,多 くのサー ビスの流出入に対す る規制 は価格 を変える間接的な手段 ( 例えば関税) とい う形ではな く,直接的に規制す る方 法が とられている。財でいえば数量制限が規制の方法 としては近いといえるで あろう

外国人労働者や資本の流入に対す る制限は,生産要素の移動を規制す ることによってサー ビスの流入を規制す る数量制限になるし, 営業権

(rights ofestablishment)

の許可 も直接的な規制である

一般 にサー ビスの国際貿 易に対す る規制 は財の場合よりも厳 しいといわれ る。 もっともサー ビス取引に 対する規制は,国際貿易に対 してだけ厳 しいというよりは,国内市場で も一般 的である。政府が 自ら供給を独 占 した り (日本の郵便業務や フラ ンスの通信 サー ビス),民間企業の独 占や寡 占を承認す るケースは多い.

規制の理由について しば しば言われることは,第‑に消費者の保護であるO サービスの もう一つの性質 として, 「目にみえないこと」が挙げ られる。財の ように事前に性質を確かめることがで きず,個々一つ一つのサービスが品質を 異にする場合が多い。また医者や弁護士のサー ビスは専門的であって,サー ビ

スの質を需要者が容易に判断で きないことがある

このために需要者は安全性

や健康等の面で不利な立場に立たされる。 これ らの特色があるために消費者保

護 という名 目でサー ビス取引は規制 される。 このようなサー ビスの質について

の情報の入手の難 しさや質のバ ラツキは,文化や制度を異 にす る国際間では

(17)

特恵的貿易取決 め,数量制 限及 びサ ー ビス貿易

63

いっそ う大 きいと考え られる。 この点 もサービスの国際取引に規制が加え られ る大 きな理由である。

サー ビスが規制を受ける第二の理 由は,サー ビスが労働や資本の移動を伴 う ためである。生産要素の移動 は国家の安全保障や文化的なナショナ リズムと抵 触する可能性が,財の移動よ りも高いと考え られ る。 このために生産要素の移 動 には政治,あるいは文化 といった非経済的な理 由か ら制限が加え られやす

く, したが ってそれに伴 うサー ビスの流出入 も規制 される結果になる。

以上のサー ビス貿易の性質を要約す ると,第一 に要素移動を伴 うこと,そ し て第二 に貿易障壁の形 として は直接的な規制が とられ ることである。 さらに サー ビスの場合には,個 々のサー ビスが財 ほど同質的でないために,内外市場 で完全競争的な市場を想定することは,財の場合よりも一層難 しいといえるか

もしれない。

これ らの性質は,従来の伝統的な関税同盟の理論が設定 してきた仮定にこと ごとく反 している。それゆえ伝統的な理論をそのまま用いることはできない。

しか し,完全競争的なサービスの市場を想定することができれば, 自由貿易地 域協定のような特恵的な貿易協定の下での,サー ビス貿易の自由化の効果 につ いては, 前節の議論を使 って分析す ることが可能 になる。 以下では,同質のサー ビスを生産す る供給者が内外に多数存在す るような完全競争市場が存在す るも の と仮定 して,あるいはそのような性質を持っサービスについて,分析を行 っ てみたい。 このような想定の下では,最終消費 としてのサー ビスに対 しては, 財 に対す るの と同 じ性質を持つ需要 と供給曲線を措 くことがで きる

13)。

また ここでは生産要素 と共に移動す るサー ビスを考えるが,は じめに供給者が,吹 は需要者が国際間を移動 してサー ビス取引を行 うケースを考察す る。

1

図 と第

2

図は,

B

,

C

国の方がサー ビスに関 して

A

国よりも競争力があ

13)

サー ビス一般を,以下のよ うに,財 と同様の需給の概念を使 って分析す ることにつ

いては,セ ミナーの参加者か ら疑問が表明された。 ここではサー ビス貿易が要素移

動を伴 うことと,直接 に規制されるとい う

2

点だけに着 目し,他 は財 と同 じように

費用逓増で同質の財が競争的に供給 され るという性質を持つ と想定 して,部分均衡

で分析を行 っている。

(18)

64

商 学 討 究 第

42

巻 第

4

り,供給者が

A

国に移動 してサー ビスを供給 ( 輸出)す る場合である。

A

国か らみればサー ビスを輸入す るケースにな る。初めに第

1

図を考えてみよう

当 初,外国の供給者を制限す ることによって,サー ビスは

12

しか輸入 されない も の とす る.サー ビスの国内価格 は

Cp

に上昇 し,国際価格

Op

cとの差 の部分 に輸入量を乗 じた分が レン トとなる。 これ は基本的には

A

国に流入 して営業を 許可 されたサー ビスの供給者,すなわち第

1

図の場合 には

C

国の供給者の手 に

はいる。

このような設定の下では,サー ビス貿易の自由化 ‑外国のサー ビス供給者の 流入規制撤廃 は,明 らかに輸入国に利益を与え る。無差別 に流入規制を撤廃す れば,大国 C 国か らの供給が増加 し,サー ビスの価格 は

Cp

cに低下す る。他 方 自由貿易地域のような特恵的な貿易取決めを,

A

,

B

両国が締結す る場合 は

どうであろ うか。

B

国の供給者が

A

国内で営業す ることは許可す るが, C国に 対 しては制限を課すケースである。 この時

B

国か らの供給が増加す るために, 価格 は

OpB

に下落す る。輸入量 は 56 にな るが, この うち C 国か らどれだけ輸 入 され るかは, C国に対す る政策 に依存す る。 C国か らの供給を協定前の水準

に保つのであれば, 56‑7 8 が B 国か らの輸入量 になる

A

国にとって, このよ うな取決めは明 らかに利益になる

利益の増加分 は台 形 3465 の面積である。 この うちの 3487 の部分 は, もともと C 国の供給者が得 ていた レン トだが,それを国内の消費者が価格低下 によって獲得す ることにな る。 ここで注意すべ きことは, この結果 は

C

国に対す る輸入枠の大 きさが どう であれ, A 国の利益 は台形 3465 で変わ らない ことであ る。 これ は,サー ビス が供給者の流入を ともな う場合 は,前節の輸 出自主規制の場合 と同 じように, レン トは, C国のサー ビス供給者か ら

A

国の消費者 に移転す るか らである。 こ の ことは,第

2

図のよ うなケースに も当て はまる.第

2

図のよ うな場合,当 初

B

国か らもサー ビスを輸入 しているが,

B

国か らの輸入を 自由に して も,

A

国 は レン トを失 うわけで はない。む しろ B国の供給者が得て いた レン トの一部 を,消費者余剰の形で獲得で きるので,貿易転換効果 は存在 しない。

以上 はサー ビスの輸入 に関 してであるが,次 に需要者の移動を伴 うサー ビス

(19)

特恵的貿易取決 め,数量制限及 びサー ビス貿易

65

の輸出を分析 してみよう

これは,外国の大学や学校で教育を受けるために留 学す る場合や,外国の医療機関で治療を受けるようなケースである。第

3

図は サー ビスの輸出国である

A

国が,輸入国の

B

,

C

に対 して小国であるような, 最 も単純なケースを想定 している。 この図では, C国の需要者 はB 国の需要者 よ りも高 い価格を支払 って も良い と考え られている。

A

国のサー ビス輸 出が まった く制限されていないな ら,

C

国の需要者 は

Op

cの価格を払 って,全て のサービスを購入す る。

B

国の需要者 は

Op

Bの価格 しか払 う意図がないので,

このサー ビスを少 しも購入す ることはできないのである。

いま,

A

国が需要者の流入を規制 し,サー ビスの輸出を

12

に制限するものと しよう

需要が減少 したために国内価格は

Op

まで低下す る。

A

国の消費者余 剰 は増加す るが,生産者余剰 はそれ以上に減少す る。そ して入国を許 され,12

価 格

CβQIa.

(20)

66

42 4号

だけ輸入で きた

C

国の需要者 は,

1243

の面積 に等 しい消費者余剰を獲得す る。

(C

国の需要者 は

Op

cの価格を支払 う用意があ ったのに,実際には

Op

の価 格を支払 うだけで済んだか ら,消費者余剰を獲得するのである。)

ここでA国はB国 と自由貿易協定を結び, B国に対 してだけこのサー ビスの 需要を許可す るものとしよ う

B国の需要者 は, このサー ビスにを

Op

Bの価 格で購入する用意があるので, 価格 は

Cp

Bに上昇す る。サー ビスの貿易量は

56

になるが,その うちどれだけが

B

国の輸入 になるかは,協定後の

C

国に対す る 規制の程度に依存す る。 C国に対す る規制を変えなければ,

B

国の輸入量は

56

‑78

である。

A国のなかでは, この差別的な自由化 は生産者の利益を拡大 し,消費者に損

失を与えるO しか し前者 は後者を上回 り,ネ ッ トの利益 は

5643

の面積 に等 し

い。 C国の需要者 の消費者余剰 は,12

87

にな り

7843

だけ減少す る。 この7

843

は価格が上昇す ることによるA国生産者の余剰の増加の一部になるので, C国 の需要者か ら

A

国のサー ビスの生産者への トランスファーである。図か ら明 ら かなように, この場合 もA 国はこの協定か ら不利益を被 ることはない。またA 国の利益 は, C国に対す る規制の大 きさには依存 しない。 C国に対する輸出枠 を拡大 して も,それが

56

を越えない限 り,価格は

Cp

Bに維持 され るか ら

A国

の利益の増加額は変わ らないのである。

4.おわ りに

本稿では初めに,伝統的な関税同盟の理論で扱われて こなか った,特恵的な

貿易取決めにおける数量制限の自由化の効果を,教科書的な部分均衡分析を用

いて検討 した。ヴァイナ一流の貿易創出効果 と貿易転換効果が,数量制限の場

合にもあ らわれるか どうかが問題であった。その結果,貿易創出効果 は常に生

じるが,貿易転換効果は必ず生 じるとはいえないことが明 らかになった。それ

は第‑に,数量制限が輸入国の規制によるのか輸出国の規制によるのかに,第

二に,輸入の中で同盟国のシェアが高いか どうか,そ して第三に,協定後の第

(21)

特恵的貿易取決 め,数量制限及 びサー ビス貿易

67

三国に対す る差別的な政策の程度 に依存す る

数量制限が輸出自主規制で行われている場合には,貿易転換効果 は全 く生 じ ない。 これは同盟国の輸入国におけるシェアにも,また第三国に対す る協定後 の政策にも関わ りな く成立す る。貿易創 出効果だけが発生するので,無差別的 な自由化ではな くて も当事国は必ず利益を得 る。

数量制限が輸入国の規制による場合 には,同盟国が輸入国の輸入の中で高い 割合を占めていると,同盟国の輸入か ら得ていた レン ト所得を失 うという意味 で貿易転換効果が生 じる。関税同盟や 自由貿易地域のような貿易協定 は,一般 に地理的に近接 し,経済関係 も深い国の間で結ばれることが多い。それ らの国 の間では,お互いの貿易のシェアは高いであろう。 もしそ うであれば,貿易転 換効果は大 きくなるので,特恵的な輸入制限の自由化が輸入国に必ず利益を与 えるとは限 らな くなる。 もっとも輸入国が失 うレン トは,同盟輸出国の生産者 の利益 となるか ら協定国全体 としては,第三国を犠牲に してそのような自由化 か ら利益を獲得できることは確かである。

特恵的貿易取決めにおけるサー ビス貿易の 自由化の効果 について考察を加え たのが,本稿の第二の論点である。財 と同 じように完全競争的な市場が存在す ると仮定す ると,サービス貿易の 自由化 は輸出自主規制の撤廃 と同様の効果を 持っ ことが示 される。 したが って貿易転換効果は発生せず,差別的な自由化で あって も輸入国は必ず利益を得 ることになる。サー ビスの輸出の場合 も同様で あり,輸出規制の撤廃 はそれが差別的であって もその国には利益だけを もた ら す。

しか し,サー ビス貿易の場合は貿易創 出効果だけを生 じさせ るか ら,特恵的 な貿易取決めにおける自由化が望ま しいとして も,最善の政策 は無差別的な自 由化政策である。 この点でサー ビス貿易の自由化を,無差別にどの国に対 して も開かれた形で行 う方が望ま しいのか,それ とも

2

国間ない しは地域間で特恵 的な協定を結んで行 う方が望ま しいのか とい う問題 に対 しては,本稿のモデル で も,伝統的な見解 と同様に無差別的な自由化が望ま しいという答えが導かれ

る。

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