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米中貿易とアヘン戦争

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Academic year: 2022

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(1)

近年、米中関係の問題が至る所で叫ばれている。中でも貿易摩擦が特に大きな問題とな っており、この状況を放っておくと軍事的な戦争にまで発展する可能性があると言われて いる。この危機をどうにかして避ける方法はないだろうか。

そこで、歴史の中を探れば、中国が他の国と貿易摩擦が原因で戦争に発展した例はない だろうかと考えた。その事例と比較してみれば、現代の米中関係の問題を解決するヒント を得ることが出来るかもしれない。

中国の貿易相手であるアメリカは、20世紀以降に世界経済のヘゲモニー国家となった 国である。それ以前、19世紀においては、イギリスが世界経済のヘゲモニー国家であっ た(松田・秋田,2002)。中国とイギリスとの貿易の問題から戦争に発展した例としては、

アヘン戦争が代表的なものである。ここでは、アヘン戦争と現代の米中関係の比較を基に 今後の展開を予想し、そこから米中関係の問題を解決するヒントを探る事を試みる。

1.アヘン戦争前の中国(清)とイギリスの貿易の歴史

イギリスとの貿易を開始する前、清にとって重要な貿易相手は東南アジアとインドであ った。例えば、シャムとの貿易では、米穀を輸入し、手工業製品を輸出した。また、イン ドとの貿易では、綿花を輸入し、砂糖を輸出した。

17

世紀の終わり頃になると、イギリスをはじめとする西洋諸国の貿易商人が広州にや って来た。そして本格的に貿易を営みはじめ、清にとっての新たな貿易相手となったので ある。その貿易において清とイギリスとの間で取引された商品についてみると、清からイ ギリスへは茶、絹、生糸、陶磁器など、清の特産品が輸出され、イギリスから清へは銀が 輸出された。

米中貿易とアヘン戦争

井 上 喬 介

* 社会科学総合学術院 君塚弘恭准教授の指導の下に作成された。

(2)

18

世紀のイギリスでは、世界市場の形成と産業革命がすすむなかで、喫茶が定着普及 した。それによって、清の特産の茶を大量に消費するようになったのである。イギリスは 減税法を制定し、1784年に

100%以上だった茶の輸入税率をおよそ 10

分の

1

にまで引き 下げた。それを機に茶の買付は爆発的に増加した。

しかし、イギリスなどの西洋諸国は、東南アジアのように、清が求める物産を持ってい なかった。イギリス産の毛織物などの輸出品も清にはほとんど売れなかったため、銀を対 価とせざるを得なかった。そうして、おびただしい量の銀が清に流入する事となった。

ところで、

18

世紀の清朝は朝貢貿易を行っており、粤海関という税関によって外国商 人に厳しい制限がかけられ、イギリスをはじめ西洋諸国も変則的に、この体制に組み込ま れていた。一方的な輸入超過の問題に直面したイギリスは、大使を清に派遣して貿易条件 の改善を求めた。しかし、清朝はその要求を拒否した(岡本,2013,pp. 197〜198)

2.イギリス側の状況、政策

18

世紀から

19

世紀にかけての産業革命の時代のイギリスにおいては、国内での資金需 要が発生し、茶の対価として銀を持ち出せない状況になっていた。そこで、銀にかわる決 済手段として、イギリスは、植民地化を進めていたインドで生産された麻薬のアヘンを清 に持ち込んだ。アヘンの持ち込みは、表向きは禁止されたが密貿易で持ち込まれた。その 結果、売り上げが伸び、茶の支払いを相殺できた。こうして、インド・清貿易=インドの 黒字、清・イギリス貿易=イギリスの赤字、これらを組み合わせ、相殺する三角貿易とい う形で、イギリスは清との貿易赤字を克服したのである。

また、イギリスでは産業革命による綿工業の興隆が起こり、原料綿花をはじめ、アメリ カから多くの輸入に依存せざるをえない状況となった。その支払いをも清へのアヘン輸出 の黒字でまかなっていた。その結果、産業革命が進めば進むほどより多くのアヘンが清に 入る(40万人分→

400

万人分)事となった。イギリスは、関税を課して中国からの輸入 を制限するという保護貿易政策は行わず、自由貿易主義のもとでアヘンを清に輸出し続け るという手法を取っていたのである(岡本,2013,pp. 200〜201)

3.清の対抗策とそれに対するイギリスの反発

19

世紀初めになると、アヘン輸入額が茶の輸出額を上回るほどに急増し、それまでの 銀が清に流入する流れは、清から流出する流れにかわった。また、アヘン密貿易の拡大は 粤海関を通じた外国貿易管理の体制を脅かした。

清においては、アヘン問題をめぐる論争がおこる。弛禁論と厳禁論の対立がその代表的

(3)

なものであった。弛禁論は許乃済によって唱えられ、アヘン貿易を粤海関の管理下に合法 化せよ、関税を徴収するというものであった。それに対し、厳禁論は黄爵滋によって唱え られ、アヘン吸飲者を死刑に処するべきというものであった。

厳禁論者である林則徐が欽差大臣として広州に派遣され、アヘン密貿易の根絶にあたっ たが、イギリス商人はこれに強く反発した。イギリスの当時の貿易監督官チャールズ・エ リオットが清に軍事的な圧力を加えること(いわゆる砲艦政策)を主張した。そして、イ ギリス本国議会でわずか

9

票差でイギリス海軍の派遣が決定したのである。こうしてアヘ ン戦争(

1840

42

年)がはじまったのである。この戦争は講和条件が一方的な南京条約で 終わりを告げた(尾形・岸本,1998,pp. 314〜317)

4 .アヘン戦争後〜現代の米中貿易戦争までの時代の中国の対外貿易の特 徴、変化、経過の概説

アヘン戦争後、上海の外国領事によって設立された税関の統計からアヘン戦争以降の条 約港時代の中国の対外貿易に関する情報を知ることができる。それによると、1842年か ら

1949

年の間に、中国の主な貿易相手がイギリスからアメリカに変わり、商品の構成も 変わったのである。

アヘン戦争後、イギリスをはじめとする主要欧州諸国が主要貿易相手国となった。しか し、20世紀初頭までには、地域の重点はすでに他の国、米国、日本に移っていた。

商品構造の変化については、19世紀から

20

世紀にかけての変化をみると、輸入に関し ては、アヘン、綿、毛織物の輸入が減少し、金属、鉱物、機械の輸入が増加した。輸出に 関しては、紅茶、絹の輸出が減少し、繊維製品の輸出が増加した。また、その期間には、

貿易の規模もかなり大きくなった。

1949

年から

1978

年に関しては、冷戦などの影響で、対外貿易の発展はあまりなかっ た。また、中国の対外貿易に関するデータはあまり残っていない。1966年から

1977

年の 文化大革命の間、データ収集が中止されたことなどが理由の一つである。

1978

年から現代にかけて、中国の対外貿易は拡大し、経済成長を続けている。改革開 放による貿易自由化がその要因であり、中国の貿易成長率は全体的に上昇している

(Keller・Li・Shiue, 2010, pp. 10〜33)

5.米中貿易の状況とアメリカの政策

米中貿易戦争と呼ばれている今日のアメリカと中国の貿易について分析する。現在、米 中間の貿易は、中国からの輸出額がアメリカからの輸出額の

4

倍近くとなっており、アメ

(4)

リカ側の大幅な赤字となっている。それに対するアメリカ側の戦略としては、トランプ政 権の保護貿易政策により、通商法

301

条に基づく制裁関税措置の発動を武器に、相手国に 貿易不均衡の是正や市場開放を求めるというものである。中国側もそれに対抗して報復関 税を課している。その報復関税に対してアメリカ側も更に追加の報復関税を課し、それに 対してもまた中国側が報復関税を課すという、米中間で追加関税の応酬合戦が行われてい るという状況である。

以下にその詳しい経緯を示しておく。

米中追加関税の報復合戦の経緯

アメリカ政府は、

2018

6

15

日に、中国の知的財産権侵害への制裁措置として

500

億ドル分の中国製品に

25%の追加関税を課すと発表した。それに対し中国政府は、米国

製品に同額の報復関税を課すこと表明した。これ以降、両国間での報復関税の応酬合戦の 様相へと急速に発展した。

2018

7

6

アメリカは中国からの自動車、航空関連などの輸入品

818

品目、

340

億ドル相当分に

25%の追加関税

←中国は直ちにアメリカからの農産品や自動車に対して同じ規模の制裁関税を課す

2018

8

23

アメリカは半導体や鉄道車両など

279

品目、160億ドル規模の中国製品に追加関税

←中国も即座に同規模の報復措置を行う

2018

9

24

アメリカは家具や家電など

6301

品目、2000億ドル分に

10%の制裁関税を発動、2019

年以降はこの関税を

25%に引き上げる

←中国もこれに応じ、600億ドル分のアメリカからの輸入品に対して、5〜10%の制 裁関税をかけた

2018

12

1

日、90日間延期で合意

(木内,2018,pp. 32〜36、渡邉,2018,pp. 18〜20)

先程も述べた様に、現代の米中貿易では、中国からアメリカへの輸出が輸入よりもかな り多いものとなっており、中国からアメリカへの輸出額はアメリカから中国への輸出額の

4

倍近くもある。中国から米国への輸出額は

5050

億ドルで、アメリカ側が制裁関税の対 象としたのは、そのうちの約半分、

2500

億ドルであり、残り

2500

億ドル分の追加関税を かける余地がある。

(5)

また、アメリカは、中国が最先端分野で成長し、市場の支配を進めていることを警戒し ており、追加関税の対象になっているのもこうした分野となっている。中国が発表した

「中国製造

2025」では、IT

やロボットなどで世界トップレベルの「製造強国」に並ぶこと が目標とされた。そこでの重点業種は、自動車、産業用ロボットなどのハイテク製品であ り、アメリカが追加関税の対象としたのもこういった分野である。

さらに、アメリカは追加関税以外にも中国包囲網を築いている。アメリカは時に中国企 業を排除しようとする政策をとっている。アメリカは、中国の通信大手の

2

社、つまり、

ファーウェイ、

ZTE

を特に警戒している。ファーウェイや

ZTE

の通信機器には、端末の 情報が無断で中国に送信されるバックドアが仕掛けられているという疑惑があり、国家の 安全保障に関する観点から、これらの端末の使用を中止すべきという考え方が生まれた。

2018

8

13

日、アメリカ政府や政府職員と取引する契約業者がファーウェイや

ZTE

の機器を使用することを禁止する国防権限法を制定し、米国防衛省は、世界の米軍基地で

2

社の携帯電話の販売を禁止した。

また、アメリカ商務省は

4

月に、

ZTE

に対して米国企業との取引を

7

年間禁じる決定 を下した。イランや北朝鮮に対して通信機器を違法に輸出していたことがその理由とされ た。その結果、

ZTE

は経営危機にまで追い込まれたのである。しかし、

ZTE

に部品を供 給する米企業への打撃が大きかったため、7月には米商務省は

ZTE

への制裁を解除した。

とはいえ、

ZTE

は、アメリカがメモリチップを売らないと操業ができない。さらに、

製品を作っても、安全保障の観点からアメリカにはもう輸出できず、また、知的財産の盗 用という観点からも中国企業の投資を規制する動きがアメリカのみならず世界的に広がる 可能性は高い。国際的に中国企業の排除が始まりつつあるのである。米中貿易戦争におい ては、アメリカが不利になる理由が限りなくないに等しいと考える事が出来るかもしれな い(木内,2018,pp. 32〜37)(渡邉,2018,pp. 18〜24, 39〜41)

6.中国側が取りうる対抗策

たしかに中国からアメリカへの輸出は

5050

億ドル、アメリカから中国への輸出は

1300

億ドルといったように、中国からの輸出額は米国からの輸出額の

4

倍近くあり、報復関税 の応酬による貿易戦争で不利であると考える事が出来る。米国の追加関税から中国が受け る経済的打撃よりもかなり小さい打撃しか米国側に与えることができないからある。ま た、中国側が制裁関税の対象としたのはアメリカから中国への輸出額の

8

割以上、

1100

億ドルが対象であり、残り

200

億ドルしか関税をかける余地がないため、追加関税によっ てでは中国側はこれ以上、アメリカへの対抗措置を取りにくい。

しかし、中国側にも対抗策はある。中国国内で活動するアメリカ企業が多い事を考える

(6)

と、一概には言えない。それらの生産・販売を制限する措置を中国政府が行えば、アメリ カ側に大きな打撃を与える事ができる。また、中国の関税引き上げによって、中国国内で 生産活動を行うアメリカ企業が中国国外から調達する部品や材料のコストが高まり、それ らの生産活動、収益環境に打撃を与えることが出来る。さらに、米中貿易戦争による中国 の内需悪化によってもアメリカ企業は打撃を受けるだろう。また、仮に中国人による米国 企業の製品に対する広範囲な不買運動が起こればそれも大きな打撃になるだろう。

さらに、中国からアメリカへの輸出品目は、携帯電話、コンピュータ、衣料品などの、

米国の消費者が直接購入する消費財である。こうした品目を課税の対象とすれば、消費者 の生活を圧迫し、政治的に大きな失点となる可能性がある。そのため、トランプ政権は、

消費財を追加関税の対象から極力外している。しかし、追加関税の範囲を広げていけば、

中国から輸入される消費財も対象に多く含まれるようになる。米中貿易戦争によって打撃 を受けるのは中国だけではなく、アメリカ側にとっても大きな打撃となるのである(木内,

2018,pp. 38〜41)。

7.考察

アヘン戦争と現代の米中関係を比較した上で、その考察を述べる。

まず、どちらのケースにおいても、中国側の黒字、その相手国側の赤字、という貿易の 状況は同じであった。しかし、当然ながら、相違点もある。

例えば、清における関税は、現代のものとは違う概念であった。アヘン戦争前の貿易の 当時の海関は、もっぱら税収をあげるための機関にとどまり、清朝には税率を上下させて 国内産業を保護育成するという概念はなかった。

貿易収支と関税以外について、2つのケースの違いを考察すると、2つのケースでは、

貿易体制、貿易政策に関するいくつかの要素が逆になっている事が分かった。

清との貿易にイギリスをはじめとした西洋諸国が参入してきた時、中国は朝貢貿易を行 っていた。イギリスが中国との貿易に参入する時、朝貢貿易があったために対等な関係か ら始まったものではなかった。

それに対し、現代の中国の対外貿易は、1978年の改革開放より、自由化されている。

アメリカとしては、初めから対等な貿易関係を築く事ができた。

中国の貿易相手国側の体制についても、アヘン戦争当時のイギリスと現代のアメリカで は逆になっている。イギリスは自由貿易主義の下に清にアヘンを売りつける事によって清 との貿易赤字を克服した。それに対し、アメリカは、中国との貿易赤字に対して制裁関税 で臨む保護貿易主義である。どちらも自国の貿易赤字を解消するための政策であるが、そ の手法が逆になっている。

(7)

また、取引された商品については、アヘンと現代の中国の最先端分野の商品について考 える。アヘンについて言えば、麻薬であるため、問題のある商品である事は言うまでもな い。そして、現代、中国の最先端分野での商品は、国家の安全保障や知的財産の盗用の観 点から疑念があるとされている。つまり、問題のある商品という事である。かなり乱暴な 言い方をすれば、「問題のある商品」という面では、アヘンと現代中国の最先端分野の商 品は共通している。しかし、それを輸出する側と輸入する側が逆になっている。アヘン は、清の貿易相手国であるイギリスから輸出され、輸入する側である清の方が、それが国 内に入ってくる事を拒否した。現代の米中貿易においては、問題のある最先端商品を中国 側が輸出し、相手国であるアメリカ側がそれを拒否する、という構図になっている。

このように、アヘン戦争と現代の米中関係を比較したところ、いくつかの政策は逆の形 になっているという結果が出てしまった。この結果に対して、2通りの解釈を考えた。

一つは、構図が逆であり、現代の中国がアヘン戦争時のイギリスの立場、現代のアメリ カが清の立場となっている、とする解釈である。

ただし、その解釈をするならば、中国側が貿易赤字でアメリカ側が貿易黒字となってい なければならない。それにもかかわらず、中国側が大幅な貿易黒字となっているのはアヘ ン戦争の時から変わらないという事が問題となる。そうなれば、中国の市場開放性につい ての更なる研究が必要となるだろう。

もう一つは、これはあくまでも貿易赤字に対抗するための手段の違いであり、アヘン戦 争と現代の米中関係の構図は似たものとなっている、とする解釈である。どちらの例でも 清・中国側の黒字、その貿易相手国側の赤字、という構造は同じであり、イギリスの政策 もアメリカの政策も、貿易赤字を解消するという目的に関しては共通している。

ここでは、アヘン戦争との比較を基にして米中関係の今後の展開を予想する事を主旨と しているため、後者の解釈に基づいて考察を進める。

アヘン戦争の時は、アヘンを輸出するというイギリス側がとった赤字への打開策に対し て、清側がアヘン厳禁論をもって禁止するという政策を採用し、それに対してイギリス側 が反発し、戦争に発展した、という流れである。それでは、仮にアヘン戦争を避けられた シナリオがあったとすれば、それはどのようなものだっただろうか。

イギリスはアヘンの輸出を始める前、清との貿易赤字を危惧して貿易条件の改善を求め るために大使を派遣し、清がそれを拒否した。仮にその要求を清側が拒否せず、貿易摩擦 を緩和するように歩み寄る姿勢が清にあればイギリス側がアヘンの輸出という手段を用い ずに済んだのかもしれない。

あるいは、清がアヘンを厳禁論の立場で徹底的に取り締まるのではなく、イギリス側の 貿易事情も考慮した形で少しずつ取り締まっていれば軍事的な衝突までは避けられたかも しれない。

(8)

また、イギリス側としては、議会で海軍の派遣を止める事が出来れば戦争への発展を避 けられたかもしれない。アヘン戦争が起こる前、イギリス議会で海軍を送る決定がなされ たのはわずか

9

票差であったという。軍事力の行使を反対する論調があと少しだけ強けれ ば、清への海軍の派遣は行われなかったかもしれない。

この構図に現代の米中関係を当てはめ、今後の展開を考察する事で結論とする。

結論

現在、アメリカは中国に対する貿易赤字の打開策として制裁関税を課している。現段階 では追加関税の応酬合戦に留まっているが、中国側がそれだけではアメリカに対抗できな くなり、中国国内で活動するアメリカ企業への規制する政策を始めるようになると、アメ リカが反発して武力に訴えかねない、というシナリオを予想することは出来ないだろう か。

アヘン戦争の例を基にこのシナリオを避ける方法を考えると、以下の様になる。

中国側が貿易摩擦の緩和に歩み寄る姿勢は当然必要なものであろう。また、互いにむや みに追加関税を課さないという事も米中両国にとって当然必要な事となる。

また、仮に現時点よりも更にアメリカから追加の制裁関税が課され、中国側が報復関税 では対抗しきれなくなった場合にも、中国国内のアメリカ企業の活動を制限する措置など は行うべきではないだろう。仮に行うとしても、アヘン厳禁論の時のように徹底的に行う のは好ましくない。そうなれば米中関係はより戦争へと発展する可能性が高くなるからで ある。

アメリカ側としては、仮に今以上に中国との経済関係が悪化したとしても、軍事力に訴 える様な展開になることだけは何としてでも避けなければならない。そのためには、当然 ながら、武力の行使に反対する論調をアメリカ国内で強めていく必要がある。議会などで 反対する勢力を強めるなどの政治的な観点も必要になってくるだろう。

このような観点を持つことによって、米中の貿易摩擦が軍事的な戦争に発展する事を避 けるヒントを得られるだろう。

参考文献

1朝倉弘教・内田日出海(1999)『ヨーロッパ経済 過去からの照射』勁草書房

2岡本隆司(2013)『中国経済史』名古屋大学出版会

3尾形勇・岸本美緒(1998)『中国史』山川出版社

4金井雄一・中西聡・福澤直樹(2010)『世界経済の歴史 グローバル経済史入門』名古屋大学出版

5木内登英(2018)『トランプ貿易戦争 日本を揺るがす米中衝突』日本経済新聞出版社

6陳友駿(2011)『米中貿易摩擦』晃洋書房

(9)

7松田武・秋田茂(2002)『ヘゲモニー国家と世界システム 20世紀をふりかえって』山川出版社

8渡邉哲也(2018)『2019年 アメリカはどこまで中国を崩壊させるか そして日本が歩む繁栄の 道』徳間書店

9 Wolfgang Keller・Ben Li・Carol H. Shiue(2010)『CHINAʼS FOREIGN TRADE: PERSPECTIVES FROM THE PAST 150 YEARS』NATIONNAL BUREAU OF ECONOMIC RESERCH 1050 Massachusetts Avenue Cambridge, MA 02138

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参照

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