• 検索結果がありません。

鋼トラス橋の漏水等による劣化事例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "鋼トラス橋の漏水等による劣化事例 "

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

鋼トラス橋の漏水等による劣化事例

西日本高速道路(株) 中国支社 正会員 ○本荘 淸司 (株)国際建設技術研究所 正会員 藤原 規雄

1.はじめに

近年,中国地方の高速道路の橋梁では,凍結防止 剤の影響による塩害劣化が顕在化している

1) 2)

.鋼 橋においては,とくに

RC

床版の劣化が顕著で,床 版取替が実施された事例も増えているが,橋面から の漏水の影響を受ける箇所では桁や橋脚においても 劣化が顕在化している.多くの事例は劣化したジョ イントからの漏水の影響によるものであるが,床版 の排水孔や貫通ひび割れ,破損した排水管などから の漏水に起因するものもある.

本報告では,今後の鋼橋の維持管理計画を策定す る際の参考資料となるように,比較的事例の少ない 鋼トラス橋における漏水等による劣化事例を示す.

2.鋼トラス・鋼製橋脚の劣化事例 2.1 RC 床版からの漏水による劣化

排水装置の劣化などで橋面の排水性能が低化した 橋梁では,

RC

床版の端部に排水用の貫通孔(以下,

水抜き孔)を設ける場合がある.この水抜き孔から の漏水の影響でトラス部材の腐食が顕著になった事 例を示す.漏水の流下する範囲の鋼部材には腐食が 見られ,形状などから漏水が溜まりやすい箇所では 断面が局部的に欠損しているケースもあった(写真 2.1~写真 2.6参照).

現時点においては,水抜き孔の下に排水装置が設 けられ,部材上に橋面水が流下することはなくなっ たが,このような排水処置は水抜き孔の設置と同時 に実施することが望まれる.

2.2 破損した排水管からの漏水による劣化 破損した排水管からの漏水の影響で塩害劣化が顕 在化した,連続トラスの鋼製橋脚の事例を示す.

ジョイントのない連続径間の中間支点の橋脚は,

通常,橋面からの漏水の影響がなく劣化が顕在化し にくい条件下にあるが,当該橋脚(S 橋 P1)では破 損した排水管からの漏水が流下する

L

脚で広範囲の 腐食が見られ,一部に断面欠損が生じている箇所も あった.一方,排水管のない

R

脚では,腐食は見ら れず,塗膜にも顕著な劣化は見られなかった(写真 2.7~写真 2.8参照).

排水管の破損の早期発見と補修によって,劣化の 進行は抑制できた可能性があるものと考えられる.

凍結防止剤を散布する地域の構造物の維持管理に おいては,漏水の早期発見,早期対策がとくに重要 であると考える.

キーワード 鋼トラス,鋼製橋脚,凍結防止剤,結露,滞水,湿気

連絡先 〒

731-0103

広島市安佐南区緑井

2-26-1

西日本高速道路(株) 中国支社 事業調整部

TEL 082-831-4111

写真 2.1 床版の水抜き孔

床版に設けられた 水抜き孔

写真 2.2 上弦材の腐食

上弦材

鉛直材

鉛直材

斜材 鉛直材

下弦材

写真 2.3 鉛直材の腐食 写真 2.4 下弦材の腐食

写真 2.5 水抜き孔下面 写真 2.6 同 左

写真 2.7 排水管破損の L 側が腐食

漏水範囲 が腐食

破損した 排水管

R 脚 L 脚 L 脚

写真 2.8 同 左 土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑1141‑

Ⅰ‑571

(2)

3.鋼製橋脚内部の滞水 3.1 鋼殻内部の滞水

前述の鋼製橋脚と同様の状況にあった橋脚(S 橋 P5)

の内部の状況を調査したところ,上梁や橋脚基部に多 量の滞水が見られた.上梁のもっとも滞水が顕著な箇 所では水深が 38cm に達していた(図 3.1参照).

当初,これらの滞水は,破損した排水管から上梁上 面に流下した漏水が,鋼板の添接部の継ぎ目などを通 じて鋼殻内部に浸入したものと考えられたが,3 箇所 で採取した滞水を持ち帰って分析したところ,いずれ も塩化物はほとんど検出されなかった.また,鋼殻内 部には著しい結露が見られたことから,鋼殻内部の滞 水は結露によるものと推測された.

滞水に塩化物がほとんど含まれていなかったこ とから鋼材の腐食がただちに顕在化する可能性は 低いが,放置しておくと塗膜や鋼材の劣化を進行さ せる因子となりえるので,何らかの対策を講じる必 要がある.

3.2 湿気調査

鋼殻内部の滞水の発生メカニズムを把握するための 基礎資料収集のために,鋼殻内部で湿気調査を実施し た(平成 26 年 2 月 18 日~28 日).なお,この調査は 季節を変えて 3~4 回実施する予定であるが,今回はそ の第 1 回目で,冬季のデータの位置付けである.

各測点の気温と湿度の経時変化および結露の生じ る露点温度を図 3.2に示す。

鋼殻内の湿度については各測点とも 30%程度で大 差なかった.いずれも露点温度は鋼殻内の気温より

15℃以上低かったが,「P5 中 R」(R 脚中段の測点)に ついては日中と夜間の気温に最大 25℃以上の大きな 差があり,湿度や露点温度の変化も他の測点より大き い.25 日の日中は露点温度が 5℃を超えているのに対 して,鋼殻内の気温は夜間に 0℃以下となっている.

鋼板の温度は気温よりも急速に低下していると考えら れ,表面結露が発生する状態にあったのではないかと 推測される.

この検証のために,次回の測定では鋼板の温度につ いても同時に測定する予定である.

4.まとめ

今回の調査結果のまとめを以下に示す.

・ 中国地方の高速道路の鋼橋では,桁端部や橋脚で も凍結防止剤による塩害劣化が顕在化している.

・ 鋼桁端部や鋼製橋脚では,漏水の有無で劣化状況 が大きく異なる.床版や破損した排水管からの漏水 によって劣化が顕在化している事例もある.

・ 鋼製橋脚では鋼殻内部に結露による大量の滞水が 発生している事例がある.この滞水の発生メカニズ ムを把握するために鋼殻内部の湿気調査を今後も 実施する予定である.

[参考文献]

1)

本荘淸司ほか:凍結防止剤による鋼橋

RC

床版の塩害 劣化に関する実橋調査,コンクリート構造物の補修,補強, アップグレードシンポジウム論文報告集,第

8

巻,

pp.125-130,2008.10

2)

本荘淸司ほか:凍結防止剤による塩害で劣化した鋼橋

RC

床版の詳細調査,コンクリート構造物の補修,補強,ア ッ プ グ レ ー ド シ ン ポ ジ ウ ム 論 文 報 告 集 , 第

11

巻 ,

pp.529-536,2011.10

上梁 L 側(最深部 38cm)

図 3.1 滞水状況と測点位置

P5 下 R (R 脚基部) P5 上 L

(上梁 L 側) P5 上 R

(上梁 R 側)

P5 中 R (R 脚中間)

R 脚基部

※ 湿気調査前に滞水は除去

700 8503 750 9953

9500

7500

4@6500=260007501000 27750103824500

柱 15000

柱 900019500

266.280

▽ 8000

17630 306.186

9000

6000

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30

2/18 0時2/19 0時2/20 0時2/21 0時2/22 0時2/23 0時2/24 0時2/25 0時2/26 0時2/27 0時2/28 0時3/1 0時

鋼殻内部の湿度(%)

鋼殻内部の気温(℃)

測定 日時 測点:P5上L

P5上L温度 露点温度 P5上L湿度

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30

2/18 0時2/19 0時2/20 0時2/21 0時2/22 0時2/23 0時2/24 0時2/25 0時2/26 0時2/27 0時2/28 0時3/1 0時

鋼殻内部の湿度(%)

鋼殻内部の気温(℃)

測 定 日時 測点:P5上R

P5上R温度 露点温度 P5上R湿度

図 3.2 各測点の温度・湿度・露点温度(冬季)

P5 上 L (上梁 L 側) P5 上 R (上梁 R 側)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30

2/18 0時2/19 0時2/20 0時2/21 0時2/22 0時2/23 0時2/24 0時2/25 0時2/26 0時2/27 0時2/28 0時 3/1 0時

鋼殻内部の湿度(%)

鋼殻内部の気温(℃)

測 定 日時 測点:P5中R

P5中R温度 露点温度 P5中R湿度

P5 中 R (R 脚中間部) P5 下 R (R 脚基部)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 30

2/18 0時2/19 0時2/20 0時2/21 0時2/22 0時2/23 0時2/24 0時2/25 0時2/26 0時2/27 0時2/28 0時3/1 0時

鋼殻内部の湿度(%)

鋼殻内部の気温(℃)

測 定 日時 測点:P5下R

P5下R温度 露点温度 P5下R湿度

土木学会第69回年次学術講演会(平成26年9月)

‑1142‑

Ⅰ‑571

参照

関連したドキュメント

直杭式桟橋部には,“リブ付き二重鋼管接合構 造”を採用した.本構造は,複合トラス橋の格点構 造(コンクリート床版と鋼トラス材の接合部)で実 績のある構造である

FEM の汎用コード DIANA( 梁要素のみ)を 用いて、 鋼トラス橋の崩壊過程を線形

日本の道路橋は高度経済成長期以降にその多くが建 設されている.今後建設から 50 年を超過した老朽化橋 梁の数は急激に増加していくため,橋梁,特に

実際の腐食は化学的には鉄の酸化現象であるが,本研究で 子(アタック因子)を鋼表面上に落下させることにより鋼表

1.はじめに 近年土木構造物の長寿命化が重要視されている。すで に劣化・損傷しているものに対しては進行を遅らせるこ と、していないものに対してはそれらの発生を防止する

3 「公害の時代」の道路緑化

RC 橋脚の耐震補強は,長期不通防止として全線 にわたり,せん断破壊の余裕度の低いものから優先 し,また,中央防災会議が提示する想定東海地震に おいて,

平成 14 年版の道路橋示方書では,橋梁の設計上の目標期間が 100 年に設定されている 1) .現在,鋼橋に使用さ れている塗装の寿命は重防食塗装系で