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石炭灰硬化体の海洋生物の付着特性における定期的観察

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Academic year: 2022

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石炭灰硬化体の海洋生物の付着特性における定期的観察

鹿児島大学大学院 学生会員 ○日野 陽子    鹿児島大学  正会員  武若 耕司 鹿児島大学 学生会員 井手内 俊憲    鹿児島大学  正会員  山口 明伸

株式会社 間組  正会員  坂本 守 

1. 背景

近年,石炭火力発電所等から排出される石炭灰の有効利用を目的として,石炭灰を多量に用いた石炭灰硬化体が 開発され,大規模漁場造成工事である人工海底山脈事業などに適用されつつある。著者らはこれまでに,各種素材 への海洋性生物付着性を比較するために,1年間の曝露実験を実施し,その結果,特に石炭灰硬化体において多用な 生態系が形成されることを確認した1)。本研究では,検討対象の素材の種類をさらに増やし,各種素材への海洋生物 の付着特性をより詳しく検討して岩礁性生態系形成に寄与する着生生物量の定量評価を行うことを目的として,改 めて海洋曝露実験を実施した。ここでは,その結果の一部を報告する。

2. 海洋曝露実験概要

本実験で検討対象とした素材は,多量の石炭灰を使用した石 炭灰硬化体に加え,石炭灰の 50%を南九州で多量に存在する火 砕流堆積物であるシラス(粒径5mm以下に分級したもの)ある いは水産副産物の貝殻(ホタテ殻)粉末(10mm以下に粉砕した もの)と置換した硬化体,W/C60%の普通モルタルおよび細骨 材にシラスを使用したシラスモルタル,W/C50%の普通モルタ ル,ならびに石材(花崗岩)の全 7 種類である。本実験に供し た各種石炭灰硬化体ならびにモルタル供試体の配合をそれぞれ,

表-1,表-2に示す。供試体寸法は15×30×3cm(石材のみ15×

30×1.2cm)とし,石炭灰硬化体およびモルタル供試体について

は28日の水中養生終了後,両端に穴を開け,図-1に示すように 鉄製フレームに固定し,鹿児島県錦江湾谷山港内の海洋曝露場 の海中部に2007年11月から最長1年間の予定で曝露実験を開 始した。表-3 に曝露開始時期,および曝露期間を示す。付着生 物の量的評価は湿重量,および被度について行い,観察範囲は フレーム設置部の影響を考慮して両端 5cm を除いた 15

×20cmの範囲とした。なお,被度の算出方法は次の通り である。すなわち,(1)供試体両面を写真撮影し,(2)観察 範囲に図-2 に示すように 5mm メッシュに分割し,(3)各 マス内の付着生物を藻類,フジツボ類,ゴカイ類,貝類 の4種類に大別したうえで,最も優勢な生物をそのマス

内で特定された生物と見なし,(4)最後に供試体観察面に占める各生物の面積割合を求め,被度とした1)。 表‑1 各種石炭灰硬化体配合 

表‑2 各種モルタル供試体配合 

表‑3 曝露開始時期および曝露期間 水 セメント石炭灰シラス貝殻 NaCl 石炭灰硬化体 385 234 1126 - - 12.7 シラス・石炭灰硬化体 330 246 617 617 - 10.9 貝殻・石炭灰硬化体 288 190 684 - 684 9.50

単位量(kg/m3) 供試体名

水 セメント 川砂 シラス 普通モルタル50% 50 1.62 350 700 1134 - 普通モルタル60% 60 2.52 321 535 1350 - シラスモルタル60% 60 1.34 393 655 - 878

単位量(kg/m3 供試体名 W/C

(%) S/C

11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 2007年11月〜2008年2月

2007年11月〜2008年5月 2007年11月〜2008年8月 2007年11月〜2008年11月

2008年2月〜2008年5月 2008年5月〜2008年8月 2008年8月〜2008年11月

20cm

15cm

図‑1 供試体の設置概要  図‑2 被度の観察方法

3. 観察結果および考察

 曝露実験による観察結果の一例として,図-3には2007年11月から2月までの3ヶ月間,図-4には2007年11月 から8月までの9ヶ月間,それぞれ曝露した供試体において曝露終了直後に付着していた生物の湿重量を示す。な お,それぞれの結果は各種素材の打設面と型枠面の付着量を平均し,さらに3体の平均値として求めたものである。

また,図中では石炭灰硬化体はAC,シラス・石炭灰硬化体はSC,貝殻・石炭灰硬化体はKC,普通モルタル(W/C60%)

はNM,シラスモルタルはSM,W/C50%の普通モルタルは50と表記している。両図の比較から,実験曝露開始時期

土木学会西部支部研究発表会 (2009.3) V-048

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が同じであるにも関わらず,3ヶ月間の 曝露に比べ,9ヶ月間曝露すると付着生 物の湿重量は返って減少する傾向を示 した。また,いずれの曝露期間において も,各種石炭灰硬化体については,石材 や各種モルタル供試体に比べて,相対的 に湿重量が多い傾向が得られた。図-5に 2007年11月から2月まで,図-6に2007 年11月から8月まで曝露した供試体へ 付着した生物の被度を示す。9ヶ月間曝 露したものは,3ヶ月間曝露したものに 比べ観察面への総付着面積率は小さく,

この点は上記した湿重量の測定結果と 同様の傾向とであったが,その一方で,

動物系生物の付着に富むという特徴も 見られた。また,図-6に特徴的に示され ているように,各種石炭灰硬化体は,石 材や各種モルタル供試体と比較して,多 様な生物が付着する傾向にあることも 認められる。

図-7は,2007年11月に一斉に曝露を 開始した供試体における湿重量の経時 変化を示したものである。一方,図-8は,

2007年11月〜2008年2月,2月〜5月,

5月〜8月,8月〜11月の4季に分けて,

それぞれ3ヶ月間の着生生物湿重量を時系列的に示したものである。両図は ほぼ同様の傾向を示し,このことから,海洋環境で岩礁や人工物に付着する 生物の量は,必ずしも時間とともに蓄積していくものではなく,どちらかと いうと環境の変化に依存すると考えられた。図-9に鹿児島湾の海水温の推移 を示す2)。この結果と図-7,8を比較すると,曝露期間の長短に関わらず,

海水温の季節変動によって湿重量が増減し,特に,海水温が高くなる夏季に 湿重量の減少が顕著となる傾向にある。なお,図-7および8のいずれにおい

ても,各種石炭灰硬化体では,着生生物が増加段階での増加速度が石材や各種モルタル供試体に比べて明らかに大 きくなる傾向が認められ,このことは,この材料が生態系を早期に形成しやすいことを示しているといえる。

図‑3 2007/11〜2008/2 の   付着生物の湿重量

図‑4 2007/11〜2008/8 の   付着生物の湿重量

図‑6 2007/11〜2008/8 の   付着生物の被度 図‑5 2007/11〜2008/2 の

  付着生物の被度 0

50 100 150 200

平均湿重量(g/m2

AC SC KC 石材 NM 50 SM 0 50 100 150 200

平均湿重量(g/m2

AC SC KC 石材 NM 50 SM

0%

20%

40%

60%

80%

100%

付着生物の被度(%)

藻類 フジツボ類 ゴカイ類 貝類

AC SC KC 石材 NM 50 SM 0%

20%

40%

60%

80%

100%

付着生物の被度(%)

藻類 フジツボ類 ゴカイ類 貝類

AC SC KC 石材 NM 50 SM

AC SC KC 石材 NM 50 SM

付着生物の湿重量(g/m2

0 50 100 150 200

0 50 100 150 200

付着生物の湿重量(g/m2

11月 2月 5月 8月 11月 11月 2月 5月 8月 11月

図‑7 2008/11 月より曝露した 各曝露期間の湿重量の推移

図‑8 3 ヶ月間曝露した  各季節での湿重量の推移

海水温(

11/1 2/1 5/1 8/1 11/1 10

15 20 25 30

35 2008年海水温 平年値

2007/

図‑9 鹿児島湾の海水温の推移2)

4. まとめ

本研究により,いずれの曝露開始時期および曝露期間においても,石炭灰硬化体は,石材や普通モルタルに比べ て付着した生物の湿重量が多く,さらに,より多様な生態系に富む結果が得られた。また,岩礁性生態系に寄与す る着生生物の付着は季節により変化し,特に夏季に減少する傾向にあるが,その後,次段階の生態系形成へと遷移 する際の形成速度も各種石炭灰硬化体が優位であることが確認された。

【参考文献】 1)坂本守ほか:石炭灰硬化体への生物付着特性,土木学会年次学術講演概要集,5-429,pp.857-858,2007 2)第十管区海上保安本部 海洋情報部     HP(http://www6.kaiho.mlit.go.jp/kagoshima/)

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