症 例
症 例:78歳 男性 主 訴:発熱,食思不振 既往歴:60歳頃~:高血圧で内服加療,71 歳~:心房細動・右脚ブロック,75歳:大腸 ポリープ切除,78歳:副鼻腔炎・肝機能障害 内服薬:ベニジピン,モサプリド,テプレノ ン,ランソプラゾール,ビフィズス菌 生活歴:飲酒:日本酒4 ~ 5合/日(20 ~ 75 歳),喫煙:20本/日(20 ~ 75歳) 家族歴:父:多発性骨髄腫,心不全,腎疾患, 高血圧,母:高血圧 現病歴:高血圧,心房細動のため他院で通 院加療中であった。76歳時点では血圧 144/92 mmHg,Cr 0.81 mg/dl,尿蛋白/尿潜血陰性であっ た。 入院9 ヶ月前より37℃台の間歇的な発熱を認 めるようになった。この頃副鼻腔炎と診断され, 抗生剤を内服している。 入院8 ヶ月前に受診した市の健康診断では, 脂質異常を指摘されたが,尿所見を含めその他 の異常はなかった。 微熱は続いており,入院6 ヶ月前頃から食思 不振,全身倦怠感,脱力感,易疲労感が出現。 体重は8 ヶ月前時点と比し5 ~ 6 kg減少した。 入院5 ヶ月前にはAST 127 IU/l,ALT 84 U/ l,γ-GTP 135 IU/lと肝機能障害が出現し,Cr 0.95 mg/dl, CRP 1.36 mg/dlであった。感冒に伴 うウィルス性のものだろうといわれた。 入院4 ヶ月前になると夜間頻尿があり,心窩 部不快感を感じるようになった。また,寝汗も かくようになった。 入院3 ヶ月前には尿蛋白+,尿潜血±と初め て検尿異常が出現。 入院6週間前にはBUN 35.9 mg/dl,Cr 3.2 mg/ dl,CRP 3.29 mg/dlと腎機能障害,炎症反応上 昇を認めた。 さらに入院2週間前にはBUN 67.9 mg/dl,Cr 7.97 mg/dlとなり 他院に入院,急性腎不全とし て血液透析が開始され,家族の都合により当院 転院となった。70 kgあった体重が転院時は57 kgとなっていた。 入院時身体所見:身長170.3 cm,体重56.3 kg, 血 圧 120/68 mmHg, 脈 拍 76/分 不 整, 体 温 37.5℃,呼吸数 12/分,SpO2 96%(室内気),意識: 清明,結膜:貧血・黄疸なし,皮膚:皮疹はな く,表在リンパ節は触知しない,胸部:心音純, 呼吸音清,腹部:平坦・軟で圧痛なし,肝・脾 を触知しない,四肢:浮腫なし,神経所見:異 常なし急性腎不全・不明熱で入院,血小板減少も併発し診断に苦慮した1例
池 田 信一郎 星 野 太 郎 中 村 太 一
<血算> WBC 3400 /μl Neut 85.0 % Lymp 7.0 % Hb 9.4 g/dl Plt 4.0万 /μl <生化学> TP 6.5 g/dl Alb 3.2 g/dl T-bil 0.6 mg/dl AST 24 IU/l ALT 10 IU/l LDH 278 IU/l ALP 226 IU/l γ-GTP 13 IU/l CK 20 IU/l BUN 37.5 mg/dl Cr 7.39 mg/dl Na 133 mEq/l K 3.5 mEq/l Cl 100 mEq/l Ca 8.8 mg/dl P 4.8 mg/dl Mg 2.2 mg/dl CRP 1.9 mg/dl T-Cho 202 mg/dl BS 132.0 mg/dl HbA1c(JDS値) 6.0 % IgG 1961.0 mg/dl IgA 191.0 mg/dl IgM 130.0 mg/dl iPTH 18.0 pg/ml 1,25(OH)2VitD 25 pg/m ASO 75.0 IU/ml ASK 640.0 倍 C3 68.0 mg/dl C4 36.8 mg/dl CH50 37.0 IU/ml RF 3.0 抗核抗体 <40.0 倍 抗dsDNA抗体 2.9 IU/ml PR3-ANCA <10 EU MPO-ANCA <10 EU 抗GBM抗体 <10 抗血小板抗体 陰性 PAIgG 6.7 ng/107 <尿検査> pH 7.0 比重 1.0 蛋白 2+ 糖 1+ ケトン ⊖ 潜血 ± 赤血球 <1 /HPF 白血球 1~ 4 /HPF 細菌 -selictivity index 0.46 尿中β2MG 121400 μg/l 尿中NAG 6.7 U-Na 113 mEq/l U-K 16 mEq/l U-Ca 46 mg/dl U-Cr 148 mg/dl U-BUN 9.1 mg/dl <蓄尿検査> Cr 0.37 g/日 尿蛋白 0.48 g/日 Ccr 2.25 ml/min Ca 39 mg/日 入院時検査所見 図1 図2
図3 図4 図5 図6 図7 図8
図9 図10 図11 図12 図13 図14
図15
プロブレムリスト
◦急性腎不全 ◦発熱,食思不振,体重減少 ◦血小板減少鑑別診断
◦急性腎不全 → 腎性腎不全 急速進行性糸球体腎炎 間質性腎炎 etc ◦悪性腫瘍 ◦感染症 ◦膠原病入院中に行った検査
◦呼吸機能検査 FVC 2.4 L %FVC 88.5% FEV1.0 2.21 L FEV1.0% 77.8% ◦眼科診察 軽度高血圧性変化:Scheie分類 両眼 H1S2 ぶどう膜炎は認めず ◦抗ヘパリン-PF4抗体 陽性 ◦骨髄生検 過形成性骨髄で造血系細胞の形態異常なし 壊死を伴わない多核巨細胞を含む肉芽腫 ◦上部消化管内視鏡 胃体下部~中部小弯前壁に潰瘍 生検で腫瘍性変化なし アミロイド沈着はみられず ◦67Gaシンチグラム 骨髄に軽度の集積 その他悪性腫瘍を示唆する異常集積はなし ◦腎生検 間質に多核巨細胞を含む類上皮細胞肉芽腫が 多数認められる肉芽腫性間質性腎炎
◦薬剤性 ◦感染症:結核,真菌症など ◦血管炎:ウェゲナー肉芽腫症など ◦サルコイドーシスその他の検査結果
◦ 喀痰・血液・尿培養:細菌,真菌,結核菌陰 性 ◦QFT-3G®:陰性 ツベルクリン反応:陰性(3 × 2 mm,硬結なし) 血清ACE:33.6 IU/l(8.3 ~ 21.4 U/l)血清リゾチーム:29.8 μg/ml(5.0 ~ 10.2μg/ml)
診 断
◦サルコイドーシス ACE陽性の組織診断群 (特定疾病治療研究事業における認定基準) ◦ヘパリン起因性血小板減少症(HIT) HIT抗体陽性であり,回路内の残血が目立ち, カテーテルの閉塞を繰り返した。 カテーテルロック用のヘパリンも中止したと ころ血小板数は上昇した。症例の小括
◦ HITによる血小板減少のため腎生検施行まで に時間を要し診断に苦慮した。 ◦ サルコイドーシスによる肉芽腫性間質性腎炎 により急性腎不全を発症し維持透析導入と なった。 ◦ ステロイド治療を行ったが血液透析を離脱で きていない。考察:サルコイドーシス
◦ サルコイドーシスは,「肺,眼,皮膚を主病 変とし,非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を主徴 とする原因不明の全身性疾患」である。 ◦ 肺病変を来たすことが多く,腎病変のみを呈 することは比較的稀である。 ◦ 眼症状や皮疹,咳,全身倦怠感などで発見さ れる場合が多いが,無症状で検診でBHLを 指摘され発見に至ることもある。サルコイドーシスにおける腎病変
◦ 他臓器の病変と併存することもあるが,単独 で出現する症例も報告されている1)。 ◦ Matthieuらによると,腎サルコイドーシス47 例のうち,血液透析を要する高度の腎不全を 認めたのは3例で,2例は治療後も維持透析 を要した2)。 → 本例は緊急透析を要する急性腎不全として発 症し,他臓器病変の所見に乏しかった。 1)Nephrol Dial Transplant 2003;18:280-284 2)Medicine 2009;88:98-106サルコイドーシスにおける腎病変の病態
Am J Kidney Dis 2006;48:856-870より ◦ カルシウム代謝異常に伴うもの ◦ 肉芽腫性間質性腎炎(GIN) ◦ 糸球体腎炎 ◦ 尿路閉塞,腎血管病変などによるもの → 本例ではカルシウム代謝異常はみられず, GINにより急性腎不全を起こしたと考えられ た。肉芽腫性間質性腎炎(GIN)
◦ GINの頻度は,腎生検標本中0.5-0.9%と報告 されている1)。 ◦ 病因として薬剤性,感染症,肉芽腫性血管炎, サルコイドーシスなどがある1)。 ◦ GINの病因としてサルコイドーシスの占め る割合は9.3-28.9%である2)。 1)Medicine 2007;86:170-180 2)Int J Surgical Path 2006;14:57-63サルコイドーシスにおける血小板減少症
◦ サルコイドーシスにおける血小板減少症は稀 であるが,機序としては①脾腫,②骨髄浸潤, ③自己免疫(ITP)が考えられる*。 ◦ 本症例では脾腫があり,骨髄では巨核球が増 殖しており,①及び③が関与していた可能性 があるが,PA-IgGは陰性でHIT抗体陽性で あった。 ◦ サルコイドーシスにおいては,Th1刺激によ る免疫状態の変化があり,他の自己免疫疾 患を合併しやすいことが知られる*。一方, HITにおいては自己抗体産生により血小板減 少が引き起こされる。* Sarcoidosis vasculitis and diffuse lung diseases 2006;23:229-235
結 語
◦ サルコイドーシスのGINがあり急性腎不全 を発症,維持透析導入となり血小板減少症 を併発したため診断に苦慮した1例を経験し た。 ◦ HITとサルコイドーシスが合併した症例の報告は検索の限りなかった。 ◦ 急激に重篤な腎不全を発症したものの他臓器 の所見に乏しく,腎生検を行わなくては確定 診断が困難であった。
討 論
池田 よろしくお願いいたします。「急性腎不 全,不明熱で入院,血小板減少も併発し診断に 苦慮した1例」を発表させていただきます。 【スライド】症例は78歳男性です。主訴は発熱, 食思不振です。 既往歴として,60歳ころから高血圧,71歳 から心房細動,右脚ブロックを指摘されていま した。75歳で大腸ポリープ,78歳で副鼻腔炎・ 肝機能障害を指摘されています。 入院時の内服は以下のとおりです。(ベニジ ピン,モサプリド,テプレノン,ランソプラゾー ル,ビフィズス菌)。 生活歴として,75歳まで飲酒が日本酒4 ~ 5 合/日。喫煙が20本/日でした。家族歴として, 父が多発性骨髄腫,心不全,腎疾患を指摘され ていますが,詳細は不明です。 【スライド】現病歴です。高血圧,心房細動の ため他院で通院加療中でした。2009年3月時 点では血圧144/92mm/Hg,Cr(クレアチニン) 0.81mg/dl,尿蛋白,尿潜血は陰性でした。 入院9 ヶ月前ごろより,37℃台の間欠的な発 熱を認めるようになりました。このころ,副鼻 腔炎と診断され,抗生剤を内服しております。 入院8 ヶ月前に受診した市の健康診断では, 脂質異常を指摘されましたが,尿所見を含めそ の他の異常は見られませんでした。 【スライド】微熱は続き,入院6 ヶ月前ごろか ら食思不振,全身倦怠感,脱力,易疲労感が出現。 体重は入院8 ヶ月前時点と比較して,5,6kg減 少したとのことでした。 入 院4 ヶ 月 前 に は,AST127,ALT84, γ- GTP135と肝機能障害が出現。クレアチニンは 0.95,CRPは1.36でありました。感冒に伴うウ イルス性のものだろうといわれたとのことで す。 入院4 ヶ月前になると,夜間頻尿が出現。心 窩部不快感を感じるようになりました。また寝 汗をかくようになったとのことです。【スライド】入院3 ヶ月前には尿蛋白+,尿潜 血±と初めて検尿異常が出現しました。 入院6週間前BUN35.9mg/dL,クレアチニン 3.2mg/dL,CRP3.29mg/dLと腎機能障害,炎症 反応上昇を認めました。 さ ら に 入 院2週 間 前 に は,BUN67.9mg/dL, クレアチニン7.97mg/dLとなり,他院に入院。 急性腎不全として血液透析が開始されました。 家族の都合により当院に転院となりました。以 前は70kgあった体重が転院時には57kgまで減 少していました。 【 ス ラ イ ド 】 入 院 時 の 身 体 所 見 で す。 身 長 170.3cm,体重56.3kg,血圧は120/68で,体温 は37.5℃でした。意識は清明で,結膜に貧血, 黄疸はありません。皮疹は見られず,表在リン パ節も触知しませんでした。胸部に異常はなく, 腹部所見でも肝脾腫は見られませんでした。ま た浮腫はなく,神経学的にも異常は見られませ んでした。 【スライド】入院時の検査所見です。白血球 3400/μl,ヘモグロビン9.4g/dl,血小板4.0万/ μlと減少していました。その他,LDH278IU/ lと軽度の上昇。BUN37.5mg/dl,Cr7.39mg/dlと 腎不全を認めました。CRPは1.9mg/dlでした。 免疫学的にはIgGの軽度の上昇が見られまし た。また,ASO,ASK等は陰性で,抗体の著 明な異常は見られません。抗核抗体は陰性で, ANCAも陰性でした。 【スライド】尿所見では,pHが7.0の比重が1.0, 蛋白が2+で,潜血は±でした。β2MGが著 明に上昇しており,NAGは基準範囲内でした。 尿蛋白は0.48g/日で,Ccrは2.25ml/minでした。 【 ス ラ イ ド 】 入 院 時 の 胸 部X線 写 真 で は, CTR48%で,両下肺野に間質影が見られます。 肺門リンパ節の腫大は見られませんでした。 【スライド】胸部のCTでは両側下葉に間質影 が軽度認められています。腹部の単純CTでは, 腎臓は腫大しており,水腎や結石,石灰化は見 られませんでした。また,脾臓が腫大していま した。 【スライド】心電図では,心房細動と完全右脚 ブロックを認めています。 【スライド】プロブレムリストを挙げると,急 性腎不全,それから,発熱,食思不振,体重減 少などの全身症状。血小板減少が主なものとし て挙げられました。 【スライド】鑑別を行いました。急性腎不全に 関しましては,画像上,腎後性の要因はなく, 脱水や心不全など,腎前性の要因も見られな かったため,腎性腎不全と考えました。急速進 行性糸球体腎炎や間質性腎炎などを中心に考え ました。また,全身症状が見られたことから, 悪性腫瘍,感染症,膠原病などの存在も念頭に 置いて,診断治療を開始しました。 【スライド】入院後の経過です。入院後も38℃ 前後の発熱が続きました。また,血液透析を週 3回で継続しましたが,クレアチニンは7mg/dl 前後を推移しております。 入院後,血液培養から,メチシリン耐性の表 皮ブドウ球菌が検出されたため,カテーテル関 連の血流感染症と考えて,バンコマイシンを投 与しております。第37病日には血液培養でも 陰性化しましたが,発熱は続きました。 また血小板の数値は回復せず,4万から6万 を推移しておりました。第29病日の時点でナ ファモスタットをアルガトロバンに変更してお りますが,血小板は回復しておりません。 診断のために骨髄生検,上部消化管,内視鏡, ガリウムシンチグラムなどを行いました。第 44病日,ご家族に同意を取得のうえ,腎生検 を施行しました。 【スライド】入院中に行った検査の結果をお示 しします。呼吸機能検査では異常は見られませ んでした。眼科診察では,両目にScheie分類で, H1S2の軽度の高血圧性変化が認められるのみ でした。 また,抗ヘパリン-PF4抗体が陽性でした。 【スライド】骨髄生検では,過形成骨髄で造血 系細胞の形態異常は見られませんでした。壊死 を伴わない多核巨細胞を含む肉芽腫が見られま
した。 上部消化管内視鏡検査では,胃体下部から中 部小弯前壁に潰瘍が見られました。生検で腫瘍 性変化などはなく,アミロイド沈着も見られま せんでした。 【スライド】ガリウムシンチでは,骨髄に軽度 の集積がありましたが,その他,悪性腫瘍を示 唆するような異常集積は見られませんでした。 腎生検では,間質に多核巨細胞を含む類上皮 細胞肉芽腫が多数認められました。 【スライド】蛍光染色では,IgMのみ弱陽性で, 異常な沈着は見られていません。 【スライド】HE染色ですが,腎生検では36個 の糸球体が見られ,3個は完全に硬化,3個は 分節状の硬化が見られました。 【スライド】mesangium細胞の増多はありませ んでしたが,mesangium基質は瀰漫性に軽度増 加していました。半月体は見られませんでした。 【スライド】mesangium基質が,瀰漫性に軽度 に増加しています。 【スライド】PAM染色では,膜の二重化や, spike形成などは見られませんでした。 【スライド】Masson trichrome染色では,基底膜 への沈着は見られておりませんが,間質には線 維化が見られます。 【スライド】一方,間質にはリンパ球浸潤が目 立ち,尿細管炎の所見が見られました。また類 上皮細胞肉芽腫が認められました。 【スライド】電子顕微鏡写真では,糸球体は軽 度に虚脱しており,dense depositは認められま せんでした。mesangiumの基質は軽度に増加し ています。 またmesangial interpositionはなく,係蹄基底 膜は所々で蛇行,軽度に肥厚していました。 【スライド】ということで,腎生検の組織学的 な所見は肉芽腫性間質性腎炎です。原因として は,ここに挙げたようなものが考えられます。 薬剤性としては,入院時に内服していた薬剤 は全て中止しておりましたが,腎機能は改善し ておらず否定的と考えられました。 また,Wegener肉芽腫症などの血管炎を示唆 するような所見はなく,ANCAも陰性であるこ とから否定的と考えました。 【スライド】その他の検索を行いました。喀痰, 血液,尿培養で,細菌,真菌,結核を含む菌は 検出されませんでした。クォンティフェロンは 陰性で,ツベルクリン反応も陰性でした。血清 ACEは,33.6IU/l,血清リゾチームは29.8μg/ mlと,いずれも上昇を認めておりました。 【スライド】診断ですが,骨髄,腎の組織所見 及びACE陽性より,組織診断群として,サル コイドーシスと診断しました。 また,HIT抗体陽性であり,透析中も回路内 の残血が目立っておりました。ヘパリン起因性 血小板減少症と診断しました。 カテーテルロック用のヘパリンも中止したと ころ,結小板数は4,5万であったものが10万 程度まで上昇しております。 【スライド】診断後の経過です。腎生検後,一 時的な菌血症を起こし,状態が悪化したため, バンコマイシンとメロペネムで治療をしまし た。と同時に,プレドニゾロン20mgで治療を 開始したところ,発熱などの全身症状は速やか に消失しました。また,クレアチニンも3mg/dl 程度まで改善しておりますが,現在のところ, 維持透析を継続しております。 【スライド】症例のまとめです。HITによる血 小板減少のため腎生検施行までに時間を要し診 断に苦慮しました。サルコイドーシスによる肉 芽腫性間質性腎炎により,急性腎不全を発症し 維持透析導入となりました。ステロイド治療を 行っていますが,血液透析を離脱できておりま せん。 【スライド】考察です。サルコイドーシスは, 影響箇所的には,肺,眼,皮膚を主病変とし, 非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を主徴とする原因 不明の全身性疾患とされます。 肺病変を来すことが多く,腎病変のみを呈す ることは比較的まれです。 眼の症状や皮疹,咳嗽,全身倦怠感などで発
見される場合が多いですが,無症状で検診で両 側肺門リンパ節腫脹を指摘され,発見に至るこ ともあります。 【スライド】サルコイドーシスにおける腎病変 ですが,他臓器の病変と併存することもありま すが,単独で出現する症例も報告されておりま す。 Matthieuらによると,腎サルコイドーシス47 例のうち,血液透析を要する高度の腎不全を認 めたのは3例で,2例は治療後も維持透析を要 したとのことです。 本例は,緊急透析を要する急性腎不全として 発症し,他臓器の病変の所見に乏しかった症例 でした。 【スライド】サルコイドーシスにおける腎病変 の病態ですが,原因として,カルシウム代謝異 常に伴うもの。肉芽腫性間質性腎炎,糸球体腎 炎,それから,その他,尿路閉塞や腎血管病変 などによるものが挙げられます。 本例では,高カルシウム血症や高カルシウム 尿症などの,カルシウム代謝異常はみられず, 肉芽腫性間質性腎炎により急性腎不全を起こし たと考えられました。 【スライド】肉芽腫性間質性腎炎ですが,頻度 は腎生検標本中0.5から0.9%と報告されており ます。病因としては,薬剤性,感染症,肉芽腫 性血管炎,サルコイドーシスなどが挙げられま す。 また,病因としてサルコイドーシスの占める 割合は9.3から28.9%と報告されています。 【スライド】また,サルコイドーシスにおける 血小板減少症ですが,サルコイドーシスにおけ る血小板減少症はまれであるが,機序としては 脾腫,骨髄浸潤,自己免疫が考えられます。 本症例では脾腫があり,骨髄では巨核球が増 殖しており,脾腫または自己免疫が関与してい た可能性がありますが,PA-IgGは陰性で,HIT 抗体が陽性の症例でした。 サルコイドーシスにおいては,Th1刺激によ る免疫状態の変化があり,他の自己免疫疾患 を合併しやすいことが知られています。一方, HITにおいては,自己抗体産生により血小板減 少が引き起こされています。 【スライド】結語です。サルコイドーシスの肉 芽腫性間質性腎炎があり,急性腎不全を発症, 維持透析導入となり,血小板減少症を併発した ため,診断に苦慮した1例を経験しました。 HITとサルコイドーシスが合併した症例の報 告は検索のかぎりありませんでした。 急激に重篤な腎不全を発症したものの,他臓 器の所見に乏しく,腎生検を行わなくては,確 定診断が困難な1例でした。 以上です。ありがとうございます。 酒井 先生,ありがとうございました。非常に 激烈なサルコイドで,われわれのイメージから いうサルコイドーシスとはだいぶかけ離れて, 非常に重篤な,かつ病歴も複雑ですよね。まず, じゃあクリニカルな面で,フロアの方々からご 質問,ご意見等。先生どうぞ。 乳原 虎の門病院腎センターの乳原です。貴重 な症例をありがとうございました。 先ほど,最後のほうにカルシウム代謝異常を 伴わないと断言されましたけど,最後に出てき たデータでは,クレアチンがいくらぐらいでし たか。 池田 治療後のですか? 乳原 治療後ではなくて,入院時の検査所見で す。 池田 入院時が7程度です。 乳原 7で,私が記憶しているには,カルシウ ムが8.8であると。やはり,急性腎不全であっ ても慢性腎不全であっても,クレアチンが7ぐ らいいくと低カルシウム血症になってくるん です。それで,今8.8ということと,アルブミ ンが3.2ということを考えると,カルシウムは かなり高くなっています。本来は,腎不全が進 行すると,カルシウムは下がりますので,これ は,やはり高カルシウム血症だということなん です。 もう一つは,VitD1.25をよく測っておられた
んですけども,この時期に急性腎不全であって も,慢性腎不全であっても,ビタミンDを測定 すると,感度以下になるということなんです ね。ということを考えると,これはちゃんとし たビタミンD異常を伴った,高カルシウム血症 を伴ったもので,サルコイドーシスを強く疑う ということになってくると思います。 池田 分かりました。ありがとうございます。 乳原 もう一つは,コメントですけども,サル コイドーシスが全て腎病変を呈するわけではな くて,サルコイドーシスの典型例は,やはり肺 病変を伴ったり,ぶどう膜炎を伴ったり,そう いうものがあると思うんです。そういうもので 腎病変を伴ってくるというのがどのぐらいある かというのは分かりませんけども,サルコイド の腎病変を呈した症例の立場から㋯ますと,必 ずしも典型的な肺病変とか,ぶどう膜炎を伴う わけではない。むしろ,はっきりしないものが どうもありそうです。でも,そのような症例を 見てみると,やはりビタミンDが高くて,カル シウムが高く,急激に腎不全が進行する症例が 多いように思います。 池田 はい。ありがとうございます。 酒井 ほかにいかがでしょうか。先生,どうぞ。 青山 行徳総合病院の腎臓内科の青山といいま す。実は,前医で,私が最初に診せていただい た症例なんですが,治療の点で,質問をさせて いただきます。 プレドニンの内服で治療を開始されているん ですが,パルスをやらなかった理由,ステロイ ドで内服のみでいった理由というのは,菌血症 の経過があったからという判断でよろしいので しょうか。 池田 そうですね。一応,こういった腎サル コイドーシスなどの症例で,パーキロ0.8mg ~ 1mgのステロイドとかというのが,よくされて いる治療になるかとは思うんですけれども,本 症例では78歳と高齢であったことや,感染症 を併発していたこと,それから腎障害が激烈 で,維持透析は逃れられないかなという想定の 下で,少なめの内服のプレドニゾロン20mgと いう用量で治療させていただきました。 酒井 重松先生,どうぞ。 重松 この方は発熱して,肺所見があったわけ ですね。アクネ菌というのが病理の領域ではか なり問題になっているんですけども,この症例 では,アクネ菌の検索はなさったでしょうか。 池田 すみません。この症例ではしておりませ ん。 山口 すみません。この心臓はサルコイドーシ スと関係ないですか。時々,突然死とか,不整 脈で,心サルコイドーシスで,われわれは絶句 することもあるわけです。 あと,CTで腎臓の映像なんですが,一部, tubular-like lesionのように見えているんですが, あれは腎盂のところなんですか。 池田 こちらは,一応,腎盂嚢胞という。 山口 嚢胞でいいんですね。 池田 はい。 山口 そうですか。 池田 はい。 山口 心臓はどうなんですか。サルコイドーシ スの可能性はない? 池田 心臓のほうは,4年前から,心房細動と 右脚ブロックを認めておりまして,所見として はサルコイドーシスでもあり得るんですけれど も,他の症状の出現が全て4年以上たってから というところを見ると,関係ないのかなという ふうに考えました。 それから,入院中の心エコーでは,心臓の動 きに異常はなく,心室中隔などもサルコイドー シスの所見はありませんでした。 酒井 腎サルコイドーシスのときは,ガリウム シンチは光ることが多いと思うんですけど,こ の症例は全く。 池田 この症例では全く集積はありませんでし た。 酒井 これは,先生そういうものですか。 乳原 一般的には,サルコイドーシスが腎病変 を伴ってくるときは,Gaシンチにて腎臓にhot
spotとしてみられます。この場合にどの程度の ものを陽性所見として取るかどうかということ もあると思うんです。臨床的には典型的サルコ イドに相当する腎臓病変を呈しても,Gaシン チでは軽度の変化しかみられないこともありま す。1つの参考所見としてGaシンチを利用すれ ばよいと思います。 酒井 ありがとうございます。 ほかにいかがでしょうか。では,病理のほう に移らせていただきたいと思います。では,重 松先生のほうからよろしくお願いします。 重 松 【 ス ラ イ ド01】 こ の 症 例 は ま さ し く monocyte-macrophage dependent nephropathy ない しsarcoidosisということであるのですが,この 症例で私が驚いたのは,腎病変です。サルコイ ドの腎病変。演者が出された間質病変のほかに 血管病変ですね。それから,糸球体病変もかぶっ ている。血管炎にしてもいいと思うんだけども, 糸球体の病変もあったということです。その三 つを重点に置いて,ちょっと見ていただきたい と思います。 【スライド02】これは,きっかけになった骨髄 生検です。そして,過形成性骨髄と書いてあっ たけれど,示されたのは,normocellularの,あ るいは軽度低形成の骨髄像で,その中にこうい う肉芽腫様の病変があります。 【スライド03】大きくしますと,こういうふう なLanghans型の巨細胞を入れて,そして,類 上皮細胞はあまりはっきりしませんけれども, ここら辺にちょっとそういうところがあります かね。真ん中にnecrosisがないということで, これは結核菌の染色なんかももちろんやった結 果,恐らくサルコイド結節が一番近いものだろ うと思われます。 【スライド04】それで,腎生検のほうを見ます と,ここに35のglomerulusがあって,三つは global sclerosis,あとの二つが何かへんちくり んなglomerulusだったのです,だからabnormal と書いてあります。実は,これがサルコイドー シスによる糸球体炎だというふうに,私は最終 的に診断しました。 【 ス ラ イ ド05】 ま ず, 間 質 病 変 で す が、 interstitial nodular lesionsが目立つ。Masson染色 をやりますと,線維性のものに少し囲まれて, 肉芽腫があちこちあります。糸球体の周りにあ るところもあります。 【スライド06】ここには,リンパ球が恐らく浸 潤していて,そしてそこにmacrophageが結節 性の病変をつくっています。単独で巨細胞化し たところもあります。すごく多核の巨細胞が目 立つ結節もあります。 【スライド07】そして,PAMで見ますと,これ はどうやってできたのだろうかというのを考え たわけです。そうすると,尿細管炎があるとこ ろが見えるその内側に,こういう華々しく肉芽 腫様の病変になってきているものですから,恐 らくサルコイドーシスの抗原がいろいろ考えら れていますけれども,抗原は恐らく尿細管腔由 来で来て,そして,この尿細管炎を起こしてい るのではないかというふうに,まずは考えまし た。 【スライド08】それからもう一つは血管炎です。 vascular lesionsのところへ行きました。HE染色 だと非常に見にくいのですけれども。これは葉 間動脈ぐらい太い動脈です。その枝のところ に血管があって,ここにfibrinoid様の浸出物が あって,その周りにかなり強い肉芽腫ができて います。 【スライド09】それと同じところのPAS染色で す。PAS染色で見ますと,平滑筋の周りが全部 PASで染まりますから,この血管壁,中膜が。 そうすると,ここでは,肉芽腫はその外側にあ るのですけれども,内皮側に細胞の腫大があっ て,閉塞性の変化がある。ちょっとこれはどこ から始まったか。血管内腔から始まって外に展 開したかどうか,ちょっとこれでは分かりませ ん。 【スライド10】同じところのMasson染色です。 端っこで,ここは静脈になっちゃっていますけ れども,先程の同じ血管の枝を見ると,ここで
は内皮細胞が腫大をして,ここに浸み込み病変 がある。ちょっとpinkishに染まっていて,あ るいは,fibrinoidかもしれませんが,真っ赤に 染まっているものもある。そして,その外に肉 芽腫が展開していますから,これはサルコイド 血管炎といってもいい所見だろうと思います。 【スライド11】これは同じところのPAM染色で す。この血管は,内弾性板がPAMで染まる場 合もあるのですけれども,ちょうどこのエラス ティカが陽性の血管から陰性の血管へ移るよう なところに,どうも病変があって,太い動脈の 内弾性板が破綻して,サルコイド血管炎という のも起こるのだというふうな説明が病理のほう でなされていますけれども,腎臓の場合は,エ ラスティカのないような血管に,このサルコイ ドの病変が出ているというふうに見えます。 【スライド12】もっと小さな血管を見ていきま す。これもそうなのですけれども,血管の内皮 が肥大して,その周りに平滑筋の変性,ないし, あるいはmonocyte的なものがずっと浸潤して きているのかもしれません。そして,外側に肉 芽腫ができています。 【スライド13】これも結節の中心に血管があっ て,周りが結節で取り囲まれているということ です。 【スライド14】これも細動脈の一部が,恐らく ここで破綻しているのでしょうか,かなり強い 肉芽腫の反応が見られます。 【スライド15】これもそうです。これもかなり 中膜の異常が出ております。 【スライド16】これは同じところのMassonの染 色です。あまり線維は著明には増えていない。 【スライド17】PAM染色でやると,血管を取り 巻いてこういう病変ができているということで す。これがだんだん大きくなってくると,間質 の病変と区別がつかなくなってくると思いま す。 【スライド18】それからglomerular lesionです。 abnormal glomerulusが二つあったと書いたその 一つです。HE染色で見ると何か細胞がわんわ ん増えていて,ここだけが管内増殖性腎炎に なって,一部にextracapillaryのlesionもあるの です。 【スライド19】これと同じところをPAS染色で 見ると,一部係蹄の改築があります。この中に foamcellというか,macrophage様の腫大した細 胞が入っています。 【スライド20】PAM染色でやると,恐らくこれ は多核の細胞が入っていますから,血管炎の一 種だろうと見てもいいと思うのですけれども, サルコイドーシスによって起こった血管病変の 一つ。糸球体病変がここにあるということです。 【スライド21】この部分はちょっと問題がある と思います。糸球体の病変も,ずっと行き着く ところはこういう肉芽腫が全部を占めちゃいま すので,ここが糸球体であったかどうかという 証拠がありません。 ということで,この症例はかなりフレッシュ な症例だと思います。そして,腎不全なんかが 強いというのは,間質病変もさることながら, 血管が相当たくさんサルコイドの病変を受けて いるために,そのような虚血性の変化というの が,かなり尾を引いているのではないかと考え ました。 以上です。 山口 私もあまり付け加えることはないのです が,一応出してください。 【スライド01】ちょっとサルコイドーシスがあ まりにも派手なので,サルコイドーシスだけで いいのかなというのがあります。それから急性 腎不全の経過を取ったのがどうしたのかという 問題だろうと思います。 【スライド02】ちょっとgranulomaが,意外と 多核の巨細胞腫大で,類上皮があまり出てこな いのです。それから,血管周囲,あるいは間質, それからシングルで巨細胞が散在性に出てき て,だいぶここは線維化が強くなっています。 尿細管炎もだいぶあります。サルコイドの場 合は,肉芽腫が必ずしも随伴しない場合もある らしいです。この辺は上皮細胞のinjuryがある
ように思います。 【スライド03】それからgranulomaの一部なの ですが,これはちょっと強拡大のものを持って くればよかったですけれども,今考えると,こ のfibrin様のものが少しgranulomaの中にちょっ と析出しているかなという印象です。血管も後 で出てきますが,糸球体周囲,間質,いわゆる 非常に強い尿細管炎も随伴してみられます。 【スライド04】ここが先ほど重松先生が肉芽腫 性の動脈炎と言った場所であります。静脈が あって,その周囲の間質にgranulomaができて くるわけで,髄質側に近いところにも,やはり granulomaができてきています。 【スライド05】よくわれわれがサルコイドーシ スと診断する場合,有名なのはasteroid bodyで す。いろいろなinclusion bodyを持ってくるわ けで,こういうmicro calcificationも一つその可 能性を示唆します。もちろんこれがあるからと いってサルコイドーシスとは言えませんけれど も,血管周囲に肉芽腫が,細動脈周囲に見られ ています。あまりエオジノはそんなに目立たな かったように思います。 【スライド06】それでちょっと気になったの は,こういうようにfibrinasなmaterialが,この granulomaの中心部に一致して,necrosisはない のですが,何かfibrinasなものが,ちょっと沈 着があるので,恐らく毛細血管のオーダーの障 害を反映しているのかなというように思いま す。 【スライド07】それで,先ほどの重松先生が出 された動脈の内膜の増殖と,内腔が非常に狭小 化して,炎症細胞があって,周りを肉芽腫が取 り囲んでいるということで,肉芽腫性の動脈炎 ということがいえると思います。 【スライド08】そこのところがもうちょっと, PASで見ますとこういうように壁構造が壊れて きていますので,やはり動脈炎と言っていいと 思います。糸球体は虚脱しています。それから tubules,tubular capillaritisもあります。
【スライド09】先ほどの重松先生が出されたと ころの,これはIgMであります。壁内にこうい う染み込みがあって,ちょっと壁構造がなく なって変性,壊死しているような状態で,これ は山ができていますので,明らかに動脈炎であ ることは間違いないのだろうと思います。 【スライド10】糸球体は,一つはこういう動脈 炎の末梢の虚血を示唆するような,ボーマン嚢 が残るようなglobal,あるいはcollapseが見ら れています。 【スライド11】先ほどのちょっと奇妙な,重松 先生は名前を付けなかったのですが,僕はも うしょうがない,granulomatus glomerulitisとい うふうに名前は付けちゃいました。こういう granulomaが周りから来たともちょっと言えま せんので,糸球体内で起こっていますので,表 現としてはしょうがないなと思います。 【スライド12】それをPAMで見ますと,明ら かに多核の細胞が係蹄内に入り込んで,糸球 体のタフトを壊していますので,肉芽腫性の glomerulitisとしか言いようがない。もちろん周 囲にもある程度は反応があります。 【スライド13】これは髄質に見られた非常に強 い尿細管炎です。尿細管炎が比較的深いところ まであって,一部にgranulomaができています。 髄質部にも炎症が広がっているということだろ うと思います。 【スライド14】これはbone marrowのgranuloma です。 【 ス ラ イ ド15】 そ う い う よ う な こ と で, granulomatus tubulointerstitial nephritisで,ちょっ とepithelioid granulomaと一般的にはいわれて いるのですが,どちらかというと非常にgiant cellが 主 体 で,micro calcificationが あ っ て, tubulitis,それからgranulomatus asteritis,それ からglomerulitisということになると思います。 一応,腎サルコイドーシス,ウエゲナーを否定 しないといけないとは思います。 【スライド16】サルコイドーシスですと,先 ほ どhypercalcemiaに よ る 結 石,obstructive なuropathyで す。 そ れ か らgranulomatus, あ
る い はgranulomaの な いintestitial nephritis。 glomeruluにはいろいろな病変を伴ってきて, ここに一番最後にgranulomatous angiitisという のがあるのですけれども,非常に珍しいように 思います。 【スライド17】先ほど乳原先生が腎サルコイ ドーシスの50例か47例だったと思います。そ うすると,腎で見つかった時点で既にサルコイ ドが診断できているのが2割ぐらいしかないの です。この文献ですと。そうすると,最初から 腎不全で出てくる場合もeGFRが62%も出てい ますので,やはり腎機能障害。それからweight loss,あるいはfeverで出てくるというのが多い ということだそうです。 そ れ か ら,granulomaが8割 ぐ ら い で, granulomaのないのが2割ぐらいあります。こ の 症 例 は, 結 局bone marrowにgranulomaが あ りますけれども,比較的頻度が少ないように思 いますので,非常に腎病変が先行する腎サルコ イドーシスの場合は,そういうタイプがどうも 多いようであります。 以上です。 酒井 先生,ありがとうございました。では, 病理所見も含めまして,総合的な討論をよろし くお願いいたします。 長田 筑波大の病理の長田です。山口先生と重 松先生に教えていただきたいのですけれども。 標本を拝見していないのでこういうことを言う のはいいかどうか分かりませんが,サルコイド にしては,バックグラウンドの急性炎症が目立 つのかなと思ったのです。そういうのを含めて サルコイドと考えて,あまり疑問を挟む必要は ないと考えていいですか。 山 口 granuloma主 体 で 出 て く る 場 合 と, tubulointerstitial tubulitisが非常に強く出てくる 場合と,両方あって,この症例は両方とも派手 な症例というふうに考えれば,特に問題はない ように思います。 長田 派手な二つというのは,違ったメカニズ ムがあるのではないですか。 山 口 い わ ゆ るtubulointerstitial nephritisで, tubulitis主 体 だ け でgranulomaが 出 て こ な い 症例もあるのです。ですから,この場合は granulomaとtubulitisと両方,尿細管間質性の非 常に強いかたちということでいいように思いま す。もちろん,granuloma主体であまり炎症が ない症例もあるし,いろいろなタイプが腎サル コイドーシスの場合には,症例はあるみたいで す。 酒井 ほかにいかがでしょうか。先生,どうぞ。 青山 行徳総合病院腎臓内科の青山です。病理 の先生方にお聞きしたいのですが,入院する4 カ月ぐらい前からクレアチニンも,ちょっと高 めな0.95という数値がありました。このころか ら腎病変としては始まっていたのかどうかとい うところ。もしくは,発熱を間欠的に認めてい たので,このころからの発症でいいのかどうか というところです。 今現在,こちらに転院されてきたのですが, 比較的尿量が保たれていて,利尿剤で1日1000 から1500ぐらい尿量が認められています。透 析の離脱も,今後は考えているのですが,組織 学的には透析の離脱は難しいものなのかどうか をお聞きしたいのですが。 山口 私はもう,数カ月の病変と考えていいよ うに思いますから,何カ月とはっきり言えませ んけれども,やはり間欠的な発熱があった時点 で,もう始まっているようには思います。ただ, 非常に腎全体に進展しちゃっていることは間違 いないので,やはりそのぐらいかかるのではな いでしょうか。 重松 私も比較的新しい病変だと考えます。そ れで,やはり問題なのは,サルコイド,あるい は肉芽腫性の血管炎です。あの周りにかなりす ごい結節ができてきますが,この結節がやはり macrophage系のものがtranceformationしてでき ていますから,これは,治るときはすっと治る わけです。だからあれがそのままがちがちの結 節になるということではないと思うので,透析 から離脱する可能性も十分にあると思います。
その治療については専門ではないので分かり ませんけれども,要するに,肉芽腫性の病変と いうのはmacrophageでできてくるので,その macrophageを何とか活動を抑えてやるという ことで,病変の回復は目指せると思います。 乳原 虎の門病院の乳原です。サルコイドーシ スの症例報告というのは腎臓学会の東部会,ま たは他の研究会でも多く報告されていますけれ ども,その多くは,類上皮細胞肉芽腫が尿細管 にありましたよといったもので,むしろ尿細管 間質の障害が中心だよという症例がほとんどを 占めていたと思います。 その中で私たちが経験してきた中で,急激に 腎不全が進行してしまうタイプがあり,それは, 血管を巻き込んでいる症例だったということで す。 それともう一つは,サルコイドの類上皮細胞 というのは,どうも尿細管間質がほとんどです けれども,私たちは,1例,糸球体の中にそれ らしいものがありました。よく血管に入ってく るような類上皮細胞様の細胞が,macrophageか もしれませんけれども,そういうものがあると 手術はいつも入り込んでいるということでしょ うか。 酒井 そういうことを含めて,今,治療として いはまだステロイド20でいっていらっしゃる のですか。 池田 20で1カ月投与しまして,17.5に減量と いうかたちにしています。 酒井 今もテーパリングして。 池田 そうです。15まで減量したところです。 小林 あけぼの病院の小林と申します。1例目 と,今の2例目を合わせて,重松先生に少し教 えていただきたいのですが,かなり示唆的な お話をされたように思うのです。1例目のとき のいわゆる炎症細胞の反応がmonocyteが主体 であるということをお話になりました。本来, monocyteは炎症の場にあってその修復に関与 すると考えられていると思います。このことは 炎症が今後,ある程度改善するという意味も含 まれているのだろうと思いました。monocytic な炎症,それが糸球体,あるいは間質,どちら でもいいと思いますけれども,今回の2例目の ときにも同じようなご発言をなさいました。 組織を確認するという臨床医の立場というの は,もちろん疾患の診断も大切ですけれども, 今後病勢がどうなるかということを判断すると いうことにおいて,組織の観察というのは非常 に大きいと思うのです。 今の,重松先生の2例に関するご発言を伺っ ていますと,こういう炎症が非常に激しいとき に,その炎症を構成する病変がmonocyte主体 であるというふうにもし捉えることができるよ うな場合には,今後,臨床的に改善の余地があ り得るというふうに読み込むことができるかど うかということを,今の先生のご発言で感じた のですが,その辺に関してはいかがでしょうか。 重松 非常に難しい質問で,実際に1例目は はっきりした肉芽腫にはなっていないのですけ れども,monocyteがTH1細胞によって起こる, transformation growth factorみたいなサイトカイ ンによっていろいろ形質転換をするわけです。 それで,ああいう病変ができてくる。 サルコイドーシスのほうも,由来について説 を出しました。間質の病変,あれはtubulitisが monocytic,あるいはmacrophage,それがリン パ球の共同作用によって起こった炎症がそのう ちにgranulomatousなものになるということで す。 もう一つの見方としては,ああいうtubules が壊れると,上皮と間質のtransformationが問 題になっていて,尿細管の上皮がmacrophage に形質転換するというふうな説も出てきていま す。 いずれにせよ,macrophage的に間葉系の細 胞に近く上皮がなってしまうということです。 それから,血管炎のほうもmacrophageのかた ちで,単球のかたちで血管をすり抜けて,そ して外膜近くでああいう結節をつくるわけで す。だから,治療として考えた場合,こういう
macrophageで起こってくる障害は,なるべくな らそういう肉芽腫みたいな完成したものになる 前に,浸潤を抑えることに目を向けることがで きれば,もうちょっと早く処置ができる。そう いうふうな希望を持っています。 とにかく,monocyte/macrophage dependentの tissue injuryというのは,実験でかなり示唆を受 けたところがありまして,それを人の例に当て はめるとかなりうまく当てはまる点があるとい うことです。 だから,実験で見たことを人で実際に見てみ るということで進んでいますので,臨床の皆さ んの治療法がいろいろ工夫されて,どうなった という結果を聞かせていただくことによって, また私たち腎病理医の見方が妥当なものかどう かという評価にもつながってくると考えていま す。 海津 社会保険横浜病院の海津です。貴重な症 例をありがとうございました。 臨床的な点をお聞きしたいのですが,尿量と 蛋白尿,血尿の推移はいかがでしょうか。この 患者さんは,先ほどのフロアからのお話でも, 乏尿になっていないようですが,乏尿の期間は ないかどうか。それから尿量,血尿の推移はど うかというのをお聞きしたいのですが,いかが でしょうか。 池田 入院時の尿量は,1000から15000mlに保 たれておりまして,入院後透析を導入して週3 回やっている間も,700から800ml程度は保た れていました。血尿に関しては,+から±程度 の推移で,尿蛋白に関しましては,0.5gいくか いかないかぐらいで推移していました。 海津 そうすると,血尿は一度も高度の血尿を 呈したことはないのですね。 池田 病歴上は1度もないです。 海津 ありがとうございました。 池田 ありがとうございます。 酒井 かなり激烈なサルコイドーシスでいただ いた症例で,病理のほうからは,サルコイドの 血管炎のポイントが高いのではないかというこ とと,ちょっと基礎的な話では,EMTが,治 療に効果があるかないか,見極めるポイントに なるかもしれないというお話でした。 そろそろ時間も過ぎていますので,先生,ど うもありがとうございました。 池田 ありがとうございました。
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