Vol.60,Nα12,2009 811
ノ ー ト
火 花 放 電 下 パ ル ス ア ノ ー ド酸 化 チ タ ン皮 膜 の マ イ ク ロパ タ ー ニ ン グ
玉 川 泰 裕a,野 間 直 樹b,堀 川 袷 志c,岩 崎 光 伸 ゆ*
a近 畿 大 学 大 学 院 総 合 理 工 学 研 究 科(〒577 ‑8502大 阪 府 東 大 阪 市 小 若 江3‑4‑1) b近 畿 大 学 理 工 学 部(〒577 ‑8502大 阪 府 東 大 阪 市 小 若 江3‑4‑1) c近 畿 大 学 リ エ ゾ ン セ ン タ ー(〒577 ‑8502大 阪 府 東 大 阪 市 小 若 江3‑4‑1)
Micrometer-scale Patterning of Anodized Titanium Film Produced under Pulsed-current Density
Yasuhiro TAMAGAWAa, Naoki NOMAb, Hiroshi HORIKAWAc and Mitsunobu IWASAKIa'w a Interdisciplinar
y Graduate School of Science and Engineering, Kinki University(3-4-1, Kowakae, Higashi-Osaka, Osaka 577-8502) b School of Science and Engineering
, Kinki University(3-4-1, Kowakae, Higashi-Osaka, Osaka 577-8502) c Lieson Center
, Kinki University(3-4-1, Kowakae, Higashi-Osaka, Osaka 577-8502)
Micrometer-scale patterning of a sol-gel derived TiO2 film was formed on a titanium plate using photo-irradiation patterning.
The patterned TiO2 on a micrometer scale, which had nearly the same design as the TiO2 gel film, was formed at pulsed-current density by anodic oxidation in an alkaline bath under spark discharge.
Keywords : Anodic Oxidation, Titanium, TiO2 Gel Film, Patterning
1.緒 言
現 在,欠 損 した 骨 の 再 建 修 復 に は,自 家 骨 や 同種 骨 な ど に よ る骨 移 植 の ほか に,セ ラ ミッ クス,バ イ オ メ タ ル な どの 人 工 骨 が補 填 され て い る1周 。 金 属 系 人工 骨 は,高 い耐 食 性 と 靭 性 と を有 して い るが,生 体 不 活 性 で あ る ため に生 体 骨 と直 接 接 合 しな い と い う欠 点 を あ わせ も って い る が3脚,最 近, チ タ ン(Ti)表面 にハ イ ドロ シキ アパ タ イ トを付 着 させ る こ と
に よ り,生 体 活 性 を付 与 した人 工 骨 も実 用 化 され始 め てい る5)。
さ ら に,人 工 骨 表 面 に直 径 数 十 μmの 孔 を付 与 す る と,孔 内 に骨 芽 細 胞 が 誘 導 され る こ とに よ り人 工 骨 と新 生 骨(生 体 骨)と を早 期 か ら強 く接 着 す る こ とが で きる と期 待 され るた め,骨 折 患 者 のQoL(QualityofLi艶)を 飛 躍 的 に 向上 で き る
と考 え られ て い る6)〜8)。
吉 川 ら は,レ ー ザ ー ア ブ レ ー シ ョン法 に よ り金 属Ti表 面 に規 則 的 に凹 凸 を形 成 す る方 法 を開 発 して い るが,比 較 的 大 規 模 な設 備 を必 要 とす る9)。
一 方,野 間 ら は,光 感 応 性 パ ター ニ ン グ手 法 を用 い て,ガ ラス 基 板 上 に ミク ロ ン オー ダー の 微 細 で 規 則 的 なパ ター ニ ン グ を有 す る無 機 酸 化 物 薄 膜 を作 製 して い るlo)。
本研 究 は,野 間 らが 開発 した 光 感 応 性 パ ター ニ ン グ手 法 を 用 い て ミ ク ロ ン オー ダー の パ ター ニ ン グ をチ タ ン板 上 に形 成 し,そ の 後 火 花 放 電 下 で ア ノー ド酸 化 す る こ と に よ り ミク ロ ン オー ダー の 規 則 的 なパ ター ニ ン グ を有 す る厚 膜 型 チ タ ン ア ノー ド酸 化 皮 膜 材 を作 製 す る もの で あ る。
2.実 験
Ti板 に は 工 業 用 純Ti(㈱ 昭 和 製,30㎜ ×25㎜ ×0.4㎜t) を 用 い た 。 パ タ ー ニ ン グ 型 ア ノ ー ド酸 化 チ タ ン厚 膜 は,ま ず, Ti板 上 に 一 様 に 作 製 した チ タ ニ ア ゲ ル 薄 膜 に パ タ ー ニ ン グ マ
ス ク を か ぶ せ て 光 照 射 す る こ と で パ タ ー ニ ン グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 を 作 製 し た 後 火 花 放 電 下 で ア ノ ー ド酸 化 す る こ と で 得 た 。
ゾ ル ゲ ル 法 に よ る チ タ ニ ア ゲ ル 膜 のTi板 へ の コ ー テ ィ ン グ は,チ タ ン テ ト ラ ブ トキ シ ドモ ノ マ ー,ベ ン ゾ イ ル ア セ ト ン,2一 ア ミ ノ エ タ ノ ー ル,イ オ ン交 換 水,エ タ ノ ー ル を1:1:
1:4:40の モ ル 比 で 混 合 し た コ ー テ ィ ン グ 溶 液 にTi板 を デ ィ ッ プ コ ー テ ィ ン グ す る こ と で 膜 厚2μmの チ タ ニ ア ゲ ル 膜 を 得 た 。 次 に,パ タ ー ニ ン グ マ ス ク(パ タ ー ニ ン グ 間 隔 200μm)を チ タ ニ ア ゲ ル 膜 コ ー トTi板 に か ぶ せ,超 高 圧 水 銀 灯UVラ イ ト を30分 照 射 す る こ と に よ り,光 照 射 部 分 を 硬 化 さ せ た 。 そ の 後,エ タ ノ ー ル に 浸 漬 す る こ と で 未 照 射 部 分 を エ ッ チ ン グ し て,パ タ ー ニ ン グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 一 チ タ ン板 ((Pa卜(Tio2/Ti))を 得 た 。
次 に,こ の も の を0.05MNa3PqO.5MNaOHの 電 解 浴 中 で, 浸 漬 時 間10秒,上 限 電 圧200V,電 流 密 度0±30A・dm‑2, 周 波 数100Hzの 矩 形 波 で5分 間 パ ル ス ア ノ ー ド酸 化 す る こ
と に よ りパ タ ー ニ ン グ ア ノ ー ド酸 化 チ タ ン厚 膜/干 渉 皮 膜 (Pa←(Pulse‑AOイi/In←TiO2))を 作 製 し た 。Pa卜(TiO2/Ti)お よ び Pa←(Pulse‑AO‑Ti/In←TiO2)の 表 面 形 状 お よ び 膜 厚 は,走 査 型 電 子 顕 微 鏡(SEM:日 立 製 作 所 製 走 査X線 分 析 装 置Type‑N
S‑3000N),エ ネ ル ギ ー 分 散 型X線 分 析 装 置(EDX:HORIBA 製EX‑250)お よ び レ ー ザ ー 顕 微 鏡(キ ー エ ン ス 社 製VHX一
812
100)を 用 い て 測 定 し た 。
3.結 果 お よび 考 察
ノb
デ ィ ッ プ コ ー テ ィ ン グ に よ り膜 厚2μmの チ タ ニ ア ゲ ル 膜 を チ タ ン 板 上 に 形 成 し た 後,200μm問 隔 を 有 す る ス ト ラ イ プ 状 の マ ス キ ン グ を 用 い て パ タ ー ニ ン グ を 形 成 し たPat‑
(Tio2/Ti)の 表 面sEM写 真,チ タ ン と 炭 素 のEDx面 分 析 結 果 を 図1に 示 す 。SEM写 真 よ りパ タ ー ニ ン グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 に は,パ タ ー ニ ン グ マ ス ク と 同 等 の200μm間 隔 の ス トラ イ プ が 形 成 さ れ て い る こ と が わ か る 。 さ ら に,チ タ ン と 炭 素 の 面 分 析 結 果 か ら,SEM写 真 の 黒 い 部 分 と 炭 素 の パ タ ー ン が ほ ぼ 一 致 す る こ と が わ か る 。 炭 素 は チ タ ニ ア ゲ ル 膜 中 の Tiに 配 位 結 合 し た ベ ン ゾ イ ル ア セ チ ル 基 に 起 因 す る も の で あ る こ と か ら,黒 い ス トラ イ プ 部 分 が チ タ ニ ア ゲ ル 膜 で あ る こ と が わ か る 。
次 に,15回 デ ィ ッ プ コ ー テ ィ ン グ し て 得 たPaレ(Tio2/Ti), お よ び こ の も の を 火 花 放 電 下 で パ ル ス 電 解 し て 作 製 し たPat‑
(Pulse‑AO‑Ti/In卜TiO2)のSEM写 真 を 図2(a)お よ び(b)に, Pa卜(Pulse蓋0イi/In←TiO2)の レ ー ザ ー 顕 微 鏡 に よ る 観 察 結 果
を 図2(c)に 示 す 。
Pa←(TiO2/Ti)のSEM写 真 か ら,格 子 状 パ タ ー ニ ン グ に お い て も,パ タ ー ニ ン グ マ ス ク の 形 状(170μm四 方 の 正 方 形 と 幅 30μmの 格 子)と ほ ぼ 同 じ も の が 形 成 し て い る こ と が わ か る 。 図 に は示 し て い な い が,Pa卜(Tio2/Ti)パ タ ー ニ ン グ 界 面 を レ ー
ト 表面技術
ザ ー 顕 微 鏡 で 観 察 す る と,パ タ ー ニ ン グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 と チ タ ン の 界 面 は 急 峻 で,約1μmの 段 差 が 形 成 さ れ て い た 。
次 に,Paト(Pulse‑AO‑Ti/ln←TiO2)の 外 観 写 真(図2(b))か ら, Paト(TiO2/Ti)よ り 少 し 小 さ い 一 辺 約150μmの 正 方 形 と 幅 50μmの 格 子 状 の パ タ ー ニ ン グ 皮 膜 が 形 成 し て い る こ と が 確 認 で き る 。 こ れ は,Pulse‑AO‑Ti界 面 が な だ ら か に 隆 起 し て い る た め に 若 干 小 さ く見 え て い る と考 え ら れ る 。 こ の こ と か ら,チ タ ニ ア ゲ ル 膜 の 格 子 状 パ タ ー ニ ン グ を ほ ぼ 反 映 し て ア ノ ー ド酸 化 さ れ て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 ま た,Pat‑
(Pulse‑AO‑Tyln卜TiO2)の レ ー ザ ー 顕 微 鏡 観 察 結 果(図2(c))か ら,Pulse‑AO岨 とIn卜TiO2と の 界 面 はPa卜(TiO2/Ti)と 同 様 に か な り急 峻 と な っ て お り,そ の 段 差 は 約2μmで あ る こ と が わ か る 。 パ ル ス ア ノ ー ド酸 化 に よ り,Pulse‑AO‑Ti部 分 は 約 1μm膜 厚 が 厚 く な っ て い る 。 さ ら に,両 部 分 の 表 面 をSEM 観 察 す る と,InレTiO2表 面 は 滑 らか で あ っ た の に 対 し,Pulse‑
AO‑Ti表 面 に は 火 花 放 電 下 で ア ノ ー ド酸 化 さ れ た 時 に 特 有 の 直 径1〜3μmの 孔 が 多 数 存 在 し て い た 。 こ れ ら の こ と か ら, 格 子 状 の 部 分 は ア ノ ー ド酸 化 皮 膜(Pulse‑AO‑Ti)で あ り,そ の 周 り は 干 渉 皮 膜(InレTiO2:膜 厚 約180nm)で あ る こ と が わ か る 。
以 上 の こ と か ら,Paレ(Tio2/Ti)を パ ル ス ア ノ ー ド酸 化 す る と,Ti部 分 は 火 花 放 電 が 起 き ず に 干 渉 皮 膜(lnレTio2)と な る の に 対 し,パ タ ー ニ ン グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 部 分 は 火 花 放 電 に よ り ア ノ ー ド酸 化 チ タ ン厚 膜(Pulse‑AO‑Ti)が 形 成 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 一 方,パ ル ス を か け な い 通 常 の 定 電 圧 直 流 下
■1〒'UUUμ'"一 冨 一
titaniagel‑film
Fig.lSEMphotographandEDXareaimagesofTiandCR)rPat‑(TiO2/Ti).
'
Int‑Tio2 〜
Pulse‑AO‑Ti
Fig.2PhotographsofPat‑(TiO2‑Ti)(a),Pat‑(Pulse‑AO‑Ti/Int‑TiO2)(b), scopicimage(c)ofPat‑(Pulse‑AO‑Ti/Int‑TiO2).
andlasermicro一
一68一
Vol.60,Nα12,2009 火 花 放 電 下パ ル ス ア ノ ー ド酸化 チ タ ン皮 膜 の マ イ ク ロ パ ター ニ ング で の 火 花 放 電 ア ノー ド酸 化 で は,全 面 に ア ノー ド酸 化 厚 膜 が
形 成 し,規 則 的 なパ ター ニ ン グ を得 る こ とが で き なか っ た こ とか ら,電 流 をパ ルス 波 に して ア ノー ド酸 化 す る こ とで,選 択 的 な場 所 に ア ノー ド酸 化 厚 膜 を形 成 で き る こ とが わか っ た。
4.ま と め
Ti板 上 に チ タ ニ ア ゲ ル 膜 を デ ィ ッ プ コ ー テ ィ ン グ 後uv 照 射 し て,エ ッ チ ン グ す る こ と で マ イ ク ロ メ ー トル 単 位 の 精 度 で パ タ ー ン を 形 成 す る こ と が で き た 。 さ ら に,パ タ ー ニ ン
グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 を コ ー テ ィ ン グ し たTi板 を 火 花 放 電 下 で パ ル ス ア ノ ー ド酸 化 す る こ と に よ り,パ タ ー ニ ン グ チ タ ニ ア ゲ ル 膜 上 に パ タ ー ニ ン グ ア ノ ー ド酸 化 チ タ ン 厚 膜 を 形 成 さ せ
る こ と が で き た 。
こ の 技 術 を 駆 使 す る こ と でTi表 面 に 規 則 的 な 凹 凸 を 有 す る 細 胞 誘 導 能 に優 れ た 人 工 骨 へ の 応 用 が 期 待 で き る 。
(ReceivedAugust28,2009;AcceptedOctober6,2009)
文 献
813
1)B.Liang,S.F両ibayashiandM.Neo;B∫o〃2惚 κ,24,4959(2003).
2)T.Kokubo,H.M.Kim,M.KawashitaandTNakamura;刀1佃 θκ5c孟
Mα'θ κ読d,15,99(2004).
3)D.M.Brunette,PTengvall,M.TextorandPThomsen;Titaniumin Medicine,26,(Springer,2001).
4)K.Kudo,M.IwasakiandS.Ito;Z3配 吻oθF∫ η納.800.ゆ η.,59,60
(2008)(inJapanese).
5)H.Ishizawa,M.Ogino;Zβ ∫o〃2θ以 ル伽 θ〃 ヒθ3.,29,65(1995).
6)M.Kikuchi,H.N.Matsumoto,TY自mada,YKoyama,K.Takakuda andJ.Tanaka;8∫o〃zα'ε κ,25,63(2004).
7)YKoyama,YMatsumoto,K.Takakuda,H.Miyairi,K.Masanoriand J。Tanaka;盈)gソo乃'リ ノo,50,42(2002).
8)M.KikuchiandJ.Tanaka;耐 θη識 忽 αん〃,1,151(2004).
9)H。YbshikawaandK.Sugamoto;五 α3θFOrごg加 α1,32126(2004).
10)FLImao,N.NomaandS.Ito;8玩 儒 α∫κ ソoんα納 ∫,79,277(2006).