近 世 中 期 の 日本 漢 詩 の 訓 読 に お け る 助 詞 「 ハ 」 付 与 に つ い て*
浅 山 佳 郎
[キ イ ワ ー ド]主 題 「は 」 訓 読 漢 文
1.は じ め に 1.1.問 題 点
日本 漢 文 は,直 接 用 い られ て い る古 典 中 国 語Dと 「補 助 的」 に加 え られ る訓 読 日本 語 とい う,言 語 上2つ の性 格 を持 つ 。 日本 人 の 用 い る古 典 中 国語
に訓 読 が つ い て ま わ る とい う この 中 国語 と 日本 語 の並 存 問 題 は,以 下 の3つ の 差 を生 む。
a訓 読 日本語 と しては適格 だが,古 典 中 国語 と して不 適格 な場合 b古 典 中国語 としての構造分析 篇意味 が訓読 日本 語 と異 なる場 合 c古 典 中 国語 に無 い情 報 が訓 読 日本 語で加 え られて いる場 合
aは,い わ ゆ る 「和 臭 」 問 題 と呼 ば れ る もの で あ り,bは 訓 読 の 弊 害 と され る 問 題 で あ る。 そ れ ぞ れ も重 要 な 問 題 で はあ るが,こ こ で は3つ め を取 り上 げ る。
中 国 語 に無 い 情 報 で,訓 読 に よ っ て加 え られ る 要 素 は 以 下 の2つ が 中心 と な る。
i名 詞 句後置 要素(助 詞) ii述 語 後置 要素(助 動詞 な ど)
こ の う ち,iiに つ い て は,言 語 の 判 断 要 素(モ ダ リ テ ィ)が"epistemic"
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(認 識 判 断)な もの と"deontic"(義 務 判 断)な もの に分 か れ る とす る場 合, 中 国 語 の そ れ が 後 者 を 中心 とす る の に対 し,日 本 語 の そ れ が 前 者 を中 心 とす る こ とに よ る差 が 大 きい。 これ も興 味 深 い 問題 で は あ る が,本 稿 で は,こ の 問 題 は扱 わ ず,iの 名 詞 句 後 置 要 素 の な か で も,助 詞 「ハ 」 の 問 題 を と りあ げ る こ と とす る。
な お,中 国 語 と 日本 語 の 並 存 に と も な う問 題 と して,組 み 合 わ せ の4番 め に 「訓 読 日本 語 に無 い 情 報 が 古 典 中 国 語 と して は あ る場 合 」 が あ り う る。
具体 的 に は読 ま ない 虚 字 な どで あ るが,こ れ は視 覚情 報 と して は 把 握 され て い る の で,当 面 の 問 題 には しな い 。
1.2.訓 読 の 資 料
資 料 と して は,ま ず 中心 的 に,伊 藤 仁 斎(1627‑1705)の 漢 詩 を用 い る 。 な お,詩 句 本 文 お よび 訓 読 は,以 下 の版 本 に記 され て い る もの に従 う。
『古学先 生詩集」 〈天理 図書館所蔵 歴代 手沢本 〉享保2年 版
(ぺ りかん社 『近 世儒 家 文集集成1」)
仁 斎 の 漢 詩 を用 い る の は,以 下 の理 由 に よ る。 まず,仁 斎 の 作 品 は稿 本 か らの トレー ス が 可 能 で,同 時代 的 な訓 読 をか な り正 確 に決 定 し う る こ とで あ る。 上 記 の 版 本 の ほ か に,稿 本 で あ る伊 藤 東 涯 編 ・林 景 苑 筆 の 『古 学 先 生 詩 集 』〈 天 理 図 書 館 所 蔵 林 本 〉 に も訓 点 が 加 え て あ り,本 稿 で も参 考 とす る 。
これ に加 えて,古 文 辞 学 派 以 前 な の で,訓 読 に よる作 成 お よび 受 容 が比 較 的 重 要 視 され て い る 時期 の 作 品 で あ る こ と,漢 詩 が,各 句 の 独 立 性が 高 く,デ
ィス コ ー ス上 の 要 素 を比 較 的 に低 く押 さえ られ る こ とtも 理 由 で あ る。
以 下 の本 論 中 にお け る統 計 的 な処 理 は,こ の 伊 藤 仁 斎 の 詩 集 で あ る 『古 学 先 生 詩 集 』 巻1の142首,1184句 に対 して行 う。 さ ら にr用 例 と して はr この ほ か に以 下 に示 す もの か ら取 り上 げ る2}。
伊 藤東 涯 『紹 述先生文集 』宝暦11年 版(ぺ りかん社 『近 世儒 家 文集集 成4』)
祇 園南海 『南海先生 文集」 天明4年 版(汲 古書 院 『詩集 日本漢詩1』) 新 井 白石 『白石先生 余稿』享保20年?(汲 古書 院 『詩集 日本漢 詩1j) 服 部南郭 『南郭先生 文集初 編』 享保12年 版(汲 古書 院 『詩 集 日本漢 詩
近 世 中期 の 日本漢 詩 の訓 読 にお け る助 詞 「ハ 」 付 与につ い て57
3』)
こ れ ら も,新 井 白 石 の もの を 除 く と,版 本 で の 訓 点 付 与 が 比 較 的 明 らか な もの で あ り,同 時 代 的 な訓 読 を 決 定 しや す い。 ま た}こ れ らの 作 品 は,ほ ぼ 伊 藤 仁 斎 と同 時 代 と認 め う る。 よ っ て,本 稿 は,近 世 中 期(17世 紀 後 半 か ら18世 紀 後 半 まで)の 日本 漢 詩 に見 え る訓 読 日本 語 の 研 究 とい う こ と に な る。
1.3.結 論
結 論 と し て はt以 下 の こ と を 示 す 。
(1)助 詞 「ハ 」 は,格 関 係 を示 す こ との で き ない 名 詞 句 を持 つ 句 ・ ま た は リ ズ ム構 造 の くぎ りが 変 則 的 な句 に対 す る 「統 語 」 支 配 の 代 替 と
して,k主 題 」 支 配 を示 す た め に付 与 され る・
これ は,以 下 の よ うな事 情 で あ る と考 え る。 つ ま り,古 典 中 国 語 で は,位 置 とい う格 形 式 が比 較 的 「ゆ る い 」 格 を許 す の に対 し,日 本 語 で は,格 助 詞 に よ る格 パ ター ンが 比 較 的 固定 的 な の で,格 助 詞 を与 え られ な い 名 詞 句 は統 語 的 な コ ン トロー ル を持 た な い 。 訓 読 され た あ る 日本 語 文 が そ の よ うな不 安 定 さ を持 つ 場 合 にfそ れ で も,そ の 不 安 定 な名 詞 句 を含 め て1句 が 形 成 され て い る こ とを 示 す た め に,「 主 題 」 コ ン トロ ー ル とい う統 語 的 手 段 と は異 な る 別 の 手 段 が 用 い られ る。
な お,詩 で は な い 文 章 の 場 合 は,
a「 者」 字の あ る ところ
b名 詞 述語 文 または形 容詞 述語文 の主語 c「 主述構造述 語文」 の最初 の名詞
に助 詞 「ハ 」 が付 与 され る。 この う ちaは ほ ぼ 必 須 で あ るが,bとcは,必
要 条 件 で しか な い。 い ず れ に しろ,こ の 必 要 条 件 は,そ の ま ま古 典 中 国語 の 伝 統 的 な 「主題 」 の定 義 と重 な る 要 件 で あ る。 た だ し,こ れ が必 要 条 件 で あ っ て,「 ハ 」 で 実 現 され な い と こ ろ が あ る こ と につ い て は,デ ィス コ ー ス上 の語 用 論 的 条 件 が働 く と考 え る こ とが で き る。
なお,詩 句 を資 料 とす る 本 稿 で は,詩 とい う特 性 か ら,こ の 語 用 論 的 な条
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件 を加 え る こ とが きわ め て困 難 で あ り,結 果 的 に そ れ を除 い て分 析 す る こ と が で き る。 そ れ に よ っ て,「 ハ 」 の統 語 的 な 問 題 に焦 点 を 当 て て 整 理 す る こ
とが 可 能 に な る と考 え る。
2.古 典 中 国 語 の 主 題 と 日本 語 の 助 詞 「は 」 2.1.格
古 典 中 国 語 で は,介 詞 構 造 を除 く と,述 語 の前 後 の 「位 置 」 が 「格 」 を示 す 形 式 とな る。 述 語 の 「前 位 置 」 と 「後 位 置 」 を 形 式 と して の 格 と認 め3), そ れ ぞ れ 「Nl・N2」 と し,い わ ゆ る 「主 述 述 句 」 を とる 名 詞 句 を 「No」 と す る と,古 典 中 国語 の 格 形 式 パ ター ンは,以 下 の よ うに な る。
(2)aNl述 語N2(N3)
bNoN1述 語N2
こ の2つ が,基 本 的 な 「位 置 」 格 で あ る。 この うちaで 示 した 「N3」 を 持 つ 二 重 対 格 句 は少 な い 。伊 藤 仁 斎 の詩 集 巻1で は,全 部 で1184句 の うち, 以 下 の よ うな例 の6句 の み で あ り,比 率 で は約0.5%程 度 に過 ぎな い 。
(3)a買 田京洛東 南地=田 を買ふ京洛東 南の地(『 古学』1) b寄 語洛 陽小 児女;語 を寄す 洛 陽の小 児女(『 古 学』1)
よ って ほ ぼ(2)に 示 す 「No,Nl,N2」 の3つ の 位 置 を考 え れ ば よい こ とに な る 。 そ れ ぞ れ の 「位 置 」 形 式 に与 え られ る訓 読 日本 語 の 助 詞 形 式 は以 下 の とお りで あ る ・ なお 「助 詞 」 の欄 の 「φ」 は どの よ う な助 詞 も与 え られ て い な い こ と を意 味 す る。
近 世 中 期 の 日 本 漢 詩 の,翻{1読に お け る 助 詞 「ハ1付̀♪ に つ い て59
表1仁 斎 の漢詩 にお ける各 「位置」名詞句 に与 え られた訓読 名詞句 の助詞
助詞
名詞句
ガ ヲ 二 斜格 嚇 ノ 、 φ
No 0 0 Q 0 {} 107
Ni 0 1 6 n 70 ,568
N2 0 324 123 20 0 238
この 表 か ら は,各 「位 置 」 形 式 に与 え られ る助 詞 形 式 につ い て,以 下 の こ とを指 摘 で きる。 まず 「No」 は 「φ」 が 無 標 で あ り,ま た 「Nl」 も 「φ」
が 無 標 で あ る。 つ ま り 「前 位 置 」 は基 本 的 に助 詞 で マ ー ク され な い。 これ に 対 して,「N2」 は 「ヲ」 ま た は 「二 」 で マ ー ク され るの が 無 標 で あ る。 「N2」
が 「φ」 に な る の は,返 ら な い 読 み の場 合 で あ る。 な お,「 ハ 」 は,す べ て
「N1」 に与 え られ て い る。 こ れ は い わ ゆ る 「主 述 述 語 句 」 の 最 初 の 名 詞 句 に
「ハ 」 が 与 え られ て い な い こ と を意 味 す る。 ま たs「N{}」 が あ る 時 の 「N1」
は 全 て 「φ」 でf「 ハ 」 は 加 え られ な い 。
2.2.対 比 と主 題
訓 読 に与 え られ た 「ハ 」 は,対 句 に 多 く用 い られ て い る よ うに,対 比 の 効 果 を持 つ こ と も確 か で あ るが,対 比 は訓 読 日本 語 に お け る 「ハ 」 使 用 を ・ そ れ だ け で 決 定 す る もの で は ない 。 そ れ は,以 下 の ④ の 例 の よ う に,対 句 以 外 の 句 に も 「ハ 」 が 用 い られ て い る こ と,お よ び(5)の 例 の よ う に,対 句 で も対 比 の 「ハ」 が 用 い られ て い な い例 が か な りあ る こ と な どか ら明 らか で あ る。
alD
4 ( Ca 5 (
b
C
月 白…川風=月 は白 し一川 の風(『 古学 」1)
雪照金 銀十二行e雪 は照 らす金鋏 十二行(『 南 海』3)
兼 味幸 非縁市 近 峯兼味 は幸 に市の 近 きに縁 るに非 ず(『古学」1) 船遠 閑閑 去=船 遠 う して 閑閑 として去 り
天長漠 漠 空=天 長 う して 漠漠 と して空 し(『古学」1) 風 雨忽揺 蒼樹 色e風 雨 忽 ち揺 がす 蒼樹 の色
庭 閲永謝 白雲辺=庭 閲 永 く謝す 白雲 の辺(「 南郭j4) 夜深独 向楼頭 月 ・=夜 深 う して 独 り向ふ楼 頭 の月
日暮 閑看櫨外 雲=日 暮 れて 閑か に看 る濫外 の雲(r古 学 」1)
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対 比 以 上 に,「 ハ 」 の 機 能 と して は,主 題 とい う性 格 が 強 い と見 る こ とが で き る 。 そ うみ なす こ とが 可 能 な根 拠 と して はT「 ハ 」 が 加 え られ る 名 詞 句 の 位 置 を挙 げ る こ とが で き る。 日本 漢 詩 訓 読 で の 「ハ 」 は,圧 倒 的 に句 頭 が 多 い 。 こ れ は 和 文 や 和 歌 にお い て係 助 詞 と して用 い られ る 「ハ」 と異 な る点 で あ る。
表2仁 斎 の漢詩 におけ る 「ハ」 が与 え られ る語句 の位 置
位置
句頭1字 名 詞句頭2字 名 詞
連体句付句頭 名詞(3字 目)
準体句(1字 ま たは2字 目)
接続 句
「テ ハ」 その他
合計
句数
44 13 11 b 4 2 801字 名 詞 と2字 名 詞 を合 わ せ る と,句 頭 名 詞 句 に与 え ら れ た 「ハ」 が,713
%と4分 の3近 くを 占め る。 これ に 「千 峰 の 雨 ハ」 の よ うな修 飾 語 付 きの 名 詞 と,「 志 を持 す る ハ 」 な どの よ うな 述 語 の 前 の位 置 に置 か れ る 準 体 句 を 合 わせ る と,90%以 上 が 句 頭 で あ る 。接 続 句 の 「テ ハ」 を除 く例 外 は 以 下 に示 す2つ の み で あ る。aは 対 比 の後 名 詞 に与 え た もの,bは 副 詞 を前 置 さ せ た もの で あ る。
(6)al1Q下 種 麻 縞 外 棘=縞 下 麻 を種 ふAp外 は棘(『 古 学 』1) b夜 夜 月 従 梢 上過=夜 夜 月 は梢 上 よ り過 ぎ(「 古 学 』1)
句 頭 位 置 は,そ れ 以 下 の 語 句 と切 り離 され う る位 置 で あ る 。 「ハ 」 が こ こ に置 か れ るの は,そ れ以 下 の 語 句 全 体 に対 応 す る位 置 に置 く必 要 が あ る た め と解 す る こ とが で きる。 そ の 場 合,句 頭 名 詞 句 は そ れ 以 下 の 語 句 を評 言 とす る主 題 に な る。
全 部 で80例 あ る 「ハ 」 の う ち,対 句 が64例,つ ま り32組 の 対 句 に 「ハ 」 が 与 え られ て い る 。伊 藤 仁 斎 の詩 集 巻1の 対 句 は全 部 で290組 で あ り,そ の 全 て に名 詞 が1つ は含 ま れ て い る の でT「 ハ 」 を加 え る可 能性 が全 て に あ る と仮 定 す る と,「 ハ 」 使 用 率 は11.0%と な る 。 これ に対 して,全 て の 句 頭 名 詞 句 に対 す る使 用 率 は16.2%で あ る。 こ こか ら見 て,「 ハ」 の機 能 は,対 比 よ りは 主題 と して の性 格 を よ り強 く持 つ と考 え る こ とが で きる。
た だ し,「 ハ 」 使 用 が 対 句 と無 関 係 とい うわ け で は な い 。 「句 頭 名 詞句 」 と
近 世中 期 の 日 本漢詩 の 訓読 に おけ る助 詞 「ハ 」付 与につ い て61
い うほ か に,「 対 句 」 とい う条 件 が 重 な れ ば5),「 ハ」 は発 動 さ れ や す くな る。
だ か ら逆 に,対 句 の 比 較 的 少 ない 絶 句 を納 め る巻2に は,「 ハ」 の 用 例 が 少 な い。
い ず れ に しろ,対 比 的 な 意 味 を十 分 に残 しつ つ,句 頭 の 「N1」 名 詞 に し か加 え られ な い と い う点 か ら判 断 して,「 ハ 」 は 主 題 マ ー カ ー と して の機 能
を強 く果 た して い る と考 え る こ とが で きる。
2.3,中 国 語 の 主 題
rハ 」 を 主 題 マ ー カ ー とみ な した 場 合sつ ぎ に問 題 とな るの は,そ れ が 古 典 中 国 語 と して の 主題 と訓 読 日本 語 と して の 主題 の い ず れ を示 して い る の か とい う こ とで あ る。 こ こで は,助 詞 「ハ 」 が 古 典 中 国語 の 主 題 とは 一 致 して い な い こ と,い い か え れ ばrそ れが 訓 読 日本 語 独 自の 情 報 を に な っ て い る こ
と を検 討 す る。
古 典 中 国語 の 主 題 は,伝 統 的 に はr以 下 の よ う に定 義 され る。
(7)迭 難i醐 不慰 驕 的 施馳 不 駿 事 ・麟 是i醐 赫 存 在白勺刈 象,柑 是 潤 矯描 絵,除 述,坪 沿 的 対 象 是 主題 揃 乱(略)官 的 凋 襯包 括劫 司和其 ピー・切 炎型 的 溜悟 。下 面我伯 就 看 看亡 的 凋梧;5 以形 容 両或 其 短 悟 力 凋濃 的 主題 主橋 句 。..、以 名 同或 其 短f̀J 旙 的 主題 主悟 句n3,以 劫 同或其 短 滑 力 凋悟 的 主題 主梧 句。 ヰ, 以主 溜 多耕勾力 滑 悟 的 主題 ・L梧句 。(楊,何1992,p.766)
この定義 に したが う場合,中 国語 の主題 は,い わゆ る主 述述語句 または名詞 述語句 の句 頭名 詞 を,典型 とす るが,日 本 漢詩 の訓 読 日本 語 におい て は,こ れ
らの名詞 にはほ とん ど 「ハ」 が与 え られ ていな い。
表3仁 斎 の漢詩 にお け る句 の構 造 ごとの有題句 比率
単句 複句 主述構造述語句 名詞述語句
有題句
60(16.101・) 14(8.2x1・) 0(0.0°1・)2(2.40/0}
無題句
312×83.9°/0} 156×91.8°/0} 107(goo.0°1・) 80×97.6°/0}fit
主題 「ハ 」 を持 つ有 題 句 は,述 語 が1つ で あ る 「単句 」 が 中 心 で あ り,そ れ に2つ 以 上 の 述 語 を持 つ 「複句 」 の例 が や や あ る だ け で,主 述 述 語 句 や 名 詞 述 語 句 で は,(8)や(9)の 例 の よ う に ほ とん どな い 。伊 藤 仁 斎 の詩 集 巻1で
は,例 外 は(10)の 名 詞 述 語 句 の2つ だ けで あ る。
(8)a
b
C d
(9)a
b
C d a b ① α
西 山雨已収=西 山 雨 已 に収 ま る(『 古学』1)
幽径花 開時 自香=幽 径 花 開 きて 時 に 自 ら香 し(『古学』1) 銀渚露 初結=銀 渚 露 初 めて結ぶ(『 南 海』2)
菱花影 碧潟清光=菱 花 影 碧 に して 清光 を潟す(『 紹 述」
24)
仙 牧本是西 河種e仙 牧 本 是れ西 河の種(『 古 学』1) 季 弟猶総角 鴛季 弟 猶 ほ総角(『 古学』1)
東都 非我土e東 都 我 が土 に非ず(楠 海』2)
故 園秋色是他 郷=故 園の秋色 是 れ他 郷(『 白石』1>
遠 師大乗 士 匹遠 師は 大乗 の士(『 古学」1)
朝 廷有慶 是 人才=朝 廷 慶 有 る は 是 れ人才(『 古 学』1)
⑧ の 例 の よ うに,主 語 述 語 構 造 句 を述 語 と して持 つ 「No」 名 詞 句 は,古 典 中 国 語 と して の 「主 題 」 で あ る こ とが 位 置 の 上 か ら明 確 で あ る の で,訓 読
日本 語 と して も主 題 を あ らた め て表 示 す る必 要 が な い もの で あ る。 古 典 中国 語 と して の 位 置 情 報 を視 覚 的 に提 示 で きな い 音 読 の場 合 は,こ の位 置 にrお そ ら く主 題 を 示 し うる も う1つ の マ ー カー で あ る 「停 頓 」 が 置 か れ る はず で あ る 。 ま た,(9)の 例 の よ う に,名 詞 述 語 句 は,動 詞 述 語 の よ う に複 数 の 名 詞句 を項 と して持 た な い の で,他 の 格 との 混 乱 が な く,日 本 語 と して や は り あ らた め て 主 題 で あ る こ とを 表示 す る必 要 が な い もの で あ る。
こ う した 意 味 で,「 ハ 」 は,古 典 中 国語 の 典 型 的 な主 題 に対 応 す る もの で は ない とい う こ とが で き る。
こ う した伝 統 的 な主 題 理 解 は,基 本 的 に 主 題 を句 の 統 語 レベ ル に置 い て 考 え る も の で あ る が,そ れ と は べ つ に,主 題 を 談 話 レベ ル で と ら え よ う と す る もの もあ る。 曹 逢 甫 の 研 究(Tsao.1979,1987,1990な ど)で は,主 題 を 談 話 上 の"topic‑chain"か ら規 定 して い る。
(11)Intwoofmypreviousworks(Tsao1978,1979)(略)itis
近{{ヒ中 期 の 日本 漢 詩 の 骸釜ll読に お け る 助 詞 「ハ 」 イポ ♪に つ い て63
concludedthatsubjectinChinesehasthefollowingproperties:
(a.)Subjectisalwaysunmarkedbyprep・siti・n・(b・)Byp・sid・n・
subjectcanbeidentifiedastheanimateNPtotheleftofthe verb;otherwise,theNPimmediatelybeforetheverb.(c.)
Subjectalwaysbearssomeselectionalrelationtothemainverb ofthesentence.(略)Tsao(1978,1979)alsσdemonstratesthat topicinChinesecanbeidentifiedasanNPhavingthefollowing pr・perUes:(a.)T・picinvariably・ccupies出eS‑in酬P・sid・n ofthefirstsentenceinatopicchain.(b.)Topiccanoptionally beseparatedfromtherestofthesentenceinwhichitovertly
・ccursby・ne・f血ef・urpauseparticles:a,na,鯉 ・andba.(略) Tsao(1987}
詩 で は,各 句 の 独 立 性 が 強 く,ま た一 般 的 な結 びつ きで は ない"chain"が 形 成 され て い る可 能 性 が 高 い の で,"topic‑chain"に よ る主 題 を決 定 しに く い 。 しか し,た とえ ば"topic‑chain"か らの 要 請 が 強 い た め 「後 位 置 」 か ら
「前 位 置 」 に移 動 され た と考 え る こ との で きる 目的 語 前 置 の 例 に つ い て 見 て も,以 下 の よ うに 「ハ 」 で は マ ー ク され ない 。
a b C d ) 1 1 (
魚蝦不 可蔵=魚 蝦 蔵 す可 か らず(『 古 学』1)
旧伴新 朋 同謝遣=旧 伴 新朋 同 じく謝 し遣 り(『古学」1) 此情 難尽書=此 の情 尽 く書 き難 し(『南 海』2)
此心 擬借 素書伝=此 の心 素書 を借 りて伝 へ ん と擬 す(『南 郭」4)
こ う した 点 か ら見 て,古 典 中 国語 と して の 主 題 に対 して は,訓 読 日本 語 で は 「ハ 」 は与 え られ て お らず,基 本 的 に無 マ ー カ ー で しめ され て い る と考 え る こ とが で きる。 つ ま り,古 典 中 国 語 と して の 主題 は,訓 読 日本 語 に お い て もa助 詞 が 付 与 され な い句 頭 名 詞 句 とい う無 標 の 名 詞句 で 示 され る。 こ れが 主 題 と 主 格 の 重 な っ た 名 詞 句 か,あ る い は 位 置 格 と し て の 主 格 だ け な の か は ・
"t・pic‑chain・'に よ っ て決 定 され る・詩 の場 合 ・対 句 な ど を除 くほ とん ど全 て の句 頭 名 詞 句 が,"topic‑chain"に よ る 主題 と重 な る と考 え て もか ま わ な い 。
これ に対 して,「 ハ 」が 付 与 され る の は,有 標 の 主 題 とい う こ と に な る 。そ して こ の マ ー ク され た 主題 は,訓 読 日本 語 の み に存 在 し,古 典 中 国語 に は な
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い 情 報 とい う こ と に な る。
3.「 ハ 」 の 機 能
3,1.後 置 名 詞 句 の 分 布 と一 述 語 句 に お け る 「ハ 」 の 機 能
で は,こ の訓 読 日本 語 の み の 主題 マ ー カ ー 「ハ」 は,ど の よ うな 規則 で付 与 され るの か 。 そ の 付 与 に は,統 語 論 的 側 面 に関 わ る機 能 とそ れ 以 外 の 語 用 論 的 な側 面 に関 わ る機 能 が あ る。 語 用 論 的 な もの とは,音 律 ・字 数 ・対 句 に 関 わ る もの で あ る が,本 稿 で は,こ の 問 題 は ひ と まず 置 い て お く。い っ ぽ う, 統 語 論 的 側 面 に関 わ る機 能 と は,句 全 体 が1つ に コ ン トロ ー ル され る こ と を 示 す とい う もの で あ る。 以 下,こ の 問 題 を論 ず る 。
まず,次 の 表 は,伊 藤 仁 斎 の 詩 集 巻1の 各 詩 句 にお い て,述 語 に後 置 され る名 詞 句 の有 無 と句 頭 名 詞 句 に与 え られ る主 題 マ ー カ ー の 「ハ 」 との 関 係 を 示 す もの で あ る。 な お,こ の 表 で,句 頭 名 詞 句 の 「Nハ 」 は,句 頭 名 詞 句 に 助 詞 「ハ 」 が 与 え られ て い る もの,「Nφ 」 は,句 頭 名 詞 句 に何 の 助 詞 も 与 え られ て い ない もの,「 無 」 は,句 頭 名 詞句 が ない もの で あ るs}。
表4仁 斎 の漢詩 におけ る述語後 置名詞句 の有無 と 句頭 名詞句 の 「ハ」 との 関係
後置名詞句
句頭名詞句
N2有 り N2無 し合計
N1ハ 53×88.3°ka)
7(11.7%)
soN1φ 230(59.Q°/o) 160(41.働) 390
無
262(94.鯛 14×5.1a/o} 276合計
545 181 72fiこの 表 で は,「N1」 に 「ハ 」 が 付 与 され る場 合 ,約9割 が,述 語 に後 置 さ れ る 名 詞 句 「N2」 を 持 つ の に 対 し,「Nl」 が 無 助 詞 の 場 合 は,6割 程 度 で し か な い こ とが 示 さ れ て い る。 つ ま り,句 頭 名 詞句 に 「ハ 」 が付 与 され る か ど うか は,述 語 に後 置 され る 名 詞 句 の有 無 と関係 が 強 い こ と を意 味 す る。
次 に,こ の 述 語 に後 置 され て い る 名詞 句 の 「格 」関 係 と,主 題 マ ー カ ー 「ハ 」 との 関係 を見 る。以 下 の 表5で あ る。 な お,こ の 表 で,述 語 に後 置 され る名
近 世 中期 の 日本 漢 詩 の 訓 読 に お け る助 詞 「ハ 」付 与に つ い て65
詞 句 の 種 類 の う ち,「N2ヲ ・二 ・斜 」 とす る の は,そ の 名 詞 句 に 「ヲ」 や
「二 」 な どの 格 助 詞 が あ た え られ た もの で,「 斜 」 格 は,「 ト,ヨ リ」 の ほ か, 名 詞 に後 接 す る 「ご と し」 に接 続 す る 「ガ ・ノ」 を加 え る。 「N2φ(主 ・対 格)」 とす る の は,後 置 名 詞 句 に,実 際 に は格 助 詞 が 出 現 して い な い が ・ 意 味 の 上 か ら 「ガ,ヲ,二 」 の3種 類 の格 助 詞 の い ず れ か を補 うこ とが 可 能 な
もの で あ る。 この う ち 「二」 は,必 須 項 を示 す 「二 」 の み とす る。 また 「ガ」
はs「 有 無 」 な ど存 現 動 詞 の 主 体 とな る もの で あ る。 「N2φ(他 ・無 格)」 と す る の は,後 置 名 詞句 に格 助 詞 が 出 現 して お らず,か つ 「ガ,ヲ 」 お よび必 須 項 を示 す 「二」 の3つ の格 助 詞 の い ず れ を も補 え な い もの で あ る。無 理 に 格 助 詞 を 出 現 させ よ う とす れ ば,「 デ 」 や 「二」 な どが 可 能 に な る場 合 もあ るが,す べ て訓 読 文 と して は不 安 定 また は不 適 当 な もの で あ りsそ れ 以 外 の 多 くの 場 合 は,い か な る助 詞 も補 え ない 。
表5仁 斎 の漢詩 にお ける述語後置 名詞句 の格 と句 頭名 詞句 の 「ハ」との 関係
後置 名詞句 の格 句頭名詞句
N2ヲ ・二 ・斜 N2φ(主 ・対 格) N2φ(他 無 格)
合計
Nlハ 2241..5°/a) 7(13.2°/c)) 2445.3°/0} 53
Nlφ 147×63.9°/a) 73×31.7°/n) 10(4.3°1・) 230
無 154(57.3'/0) 9235.1≪lo} 20(7.6°10) 2fi2
合計
319 172 54この 表 は,句 頭 名 詞 句 に 「ハ 」 が 付 与 され て い る 場 合,「N2」 の 半 数 近 く が,「 ガ,ヲ 」 ま た は必 須 項 を示 す 「二 」 とい っ た 格 助 詞 で マ ー ク され て い
な い ば か りで な く,潜 在 的 に もそ れ らの 助 詞 を補 う こ とが で き ない こ と を示 して い る。 い っ ぽ う,句 頭 名 詞 句 に何 も助 詞 が加 え られ て い ない 場 合,あ る い は句 頭 名 詞 句 が ない 場 合 の後 置 名 詞 句 に つ い て見 る と,そ の よ う な形 式 上 の 格 を 与 え に くい 名 詞 句 は,1割 に満 た ない 。
上 の 表 で 「N2φ(主 ・対 格 〉」 に分 類 され る詩 句 が 「172」 もあ る よ う に, 助 詞 の な い 「N2φ 」 も,基 本 的 に は,「 ヲ」 また は 「二 」 を与 え る こ とが で き る。 た とえ ば,「 空 開桑 戸 口」 は,版 本 に与 え られ た 訓 点 に従 えば,「 空 し
く開 く 桑 戸 の 口」 と訓 読 す るが,こ れ を 「空 し く桑 戸 の ロ ヲ開 く」 と訓 読
66
す る こ と も可 能 で あ る 。
とこ ろ が,そ う した 「ヲ」 や 「二 」 を与 え られ な い 名 詞 句 が 述 語 に後 置 さ れ て い る場 合 もあ る。 た と え ば,次 の 例 で あ る。
(12)終 日経 過 雨鐸 時=終 日経 過 すmる る時(r古 学 』1)
この 場 合,「 経 過 」 に後 置 され て い る 名 詞 句 は 「雨 舞 時 」 で あ る。 「終 日が 過 ぎて い き,雨 が や っ と晴 れ る 時 に な っ た」 とい う意 味 で あ る と考 え られ る が,「 雨 霧 時 」 はs動 詞 「経 過 」 に対 して,「 二 」 な どの格 助 詞 で 関係 付 け る
こ とが で きな い。
こ う した後 置 名 詞 句 は,意 味 的 に は 「主 体 」 「時」 「所 」 「そ の 他 」 に分 け られ る。 そ して,こ う した名 詞 句 が あ り,か つ句 頭 に も名 詞 句 が あ る場 合 に は,(12)の 例 の よ うに,何 も助 詞 が 与 え られ な い例 もあ る が sそ の 多 くで, 句 頭 の 「Nl」 に 「ハ 」 が 与 え られ る。
まず,比 較 的 は っ き り して い る 「そ の 他 」 の 例 で あ る。
13}a
b
Cld
e
月 白一川風 ・=月は 白 し 一川の風(『 古 学』1) 風軽 曾点服=風 は軽 し 曾点 が服(『 古 学』1)
月微東 嶺雲=月 は微 な り 東 嶺の雲(『 古学 』1)
首翅重畳 士峰 雪=首 は翅 く重畳 たる士 峰の雪(『 古 学』1) 雪霧千 峰兼 万墾=雪 は舞 る 千 峰 と万墾 と(『古学』1)
これ らの 「一 川 の風 」 「曾 点 が 服 」 「東 嶺 の 雲 」 「重 畳 た る士 峰 の 雪 」 「千 峰 と万 墾 と」 と い っ た後 置 名 詞句 は,そ の 前 の 述 語 句 の 示 す 「月 が 白 い 」 「風 が 軽 い 」 「月 が微 か だ」 「首 を あ げ る」 「雪 が 晴 れ る」 とい っ た事 態 に対 して, 状 況 や原 因 を 述べ る もの で あ る。 こ れ らの 名 詞 句 に 「デ」 や 「二」 とい っ た 助 詞 を無 理 に 入 れ るの は,訓 読 日本 語 と して は適 当 で な い 。 そ の 意 味 で こ れ
らの 名 詞 句 は形 式 上 の 格 を表 面 的 に も潜 在 的 に も持 て な い。
こ の種 類 の 名 詞 句 は,伊 藤 仁 斎 の 詩 集 巻1に11例 あ る が ,そ の う ちの10 例 は,句 頭 名 詞句 に 「ハ 」 が与 え られ て い る。 例 外 は次 の1例 の み で あ る。
(14>征 馬 休 噺 士 峰 雪=征 馬 噺 く こ と休 め よ士 峰 の 雪(『 古 学 』1)
近 世 中 期 の 日 本 漢 詩 の 訓 読 に お け る 助 詞 「ハ 」 付'チ に つ い て67
つ ぎに,意 味 的 に 「主体 」 を 示 す の は,以 下 の 例 の よ うな,「 ノ」 を介 し て動 詞 に前 置 され て い る名 詞 句 と組 み あ わ さ って,事 態 の 「主 体 」 を示 す も の で あ る。
a b C d 句 α
枝 短新楊 柳 瓢枝 は短 し 新楊柳(「 古学」1)
嬰 酒 三花 又五英=嬰 には乏 かぶ 三花 また五英(「 古学 」1) 盤堆庖氏 新裁鰭=盤 は堆 し庖氏 新 た に裁 ち たる鱈(r古 学」1) 髪班 好易李 之才e髪 は班 な り 易 を好 む李 之才(『 古 学』1)
これ らの 「新 楊 柳 」 「三 花 また 五 英 」 「庖 氏 新 た に裁 ち た る,.コ」 「易 を好 む李 之 才 」 は,そ れ ぞ れ の句 頭 名 詞 句 と,「 新 楊 柳 ノ枝 」 「発 ノ(中 ノ)三 花 また 五 英 」 「盤 ノ(上 ノ)庖 氏 新 た に裁 ち た る鰭 」 「易 を好 む李 之 才 ノ髪 」 とい っ た意 味 関 係 を持 ち う る。 しか し,動 詞 に後 置 され た 名 詞 句 に,事 態 の 主体 を 示 すrガ 」 や 「ノ」 とい っ た 助 詞 を与 え る こ とは 丁 訓 読 日本 語 と して で きな
い の で,こ れ も形 式 上 の格 関 係 を持 て ない 名 詞句 とな る・
動 詞 に後 置 され るの が こ う した 「主 体 」 を示 す 名 詞 で,か つ句 頭 名 詞 句 が あ る例(た だ し,「 有 無 足 乏 多 」 な ど存 在 を示 す 存 現 動 詞 は 除 く)は,伊 藤 仁 斎 の 詩 集 巻1に12あ る が,そ の うち の8例 で 「ハ 」 が 付 与 され て い る。
例 外 は 以 下 の4つ で あ る。
a b C d 0 α
風 光易老 陽春=風 光 布衣 自楽一書生=布 衣 霜皮剥 落老龍 姿=霜 皮 旭 日乍収千瞳 雨=旭 日
老 い 易 し 維 陽 の 春(『 古 学 」1) 自 ら楽 しむm書 生(『 古 学 』1) 剥 落 た り 老 龍 の 姿(『 古 学 』1) 乍 ち収 ま る 千 瞳 の 雨(r古 学 』1)
残 りの 「時 」 と 「所 」 を示 す 名 詞 句 に は,「 二 」 を与 え る こ とが 可 能 で あ るが,伊 藤 仁 斎 の 詩 集 で 実 際 に 「所 名 詞 」 に 「二格 」が 与 え られ て い る の は,
「入 る ・上 る」 とい っ た 移 動 動 詞 の 目的 地 か 「坐 す ・生 ず 」 とい っ た動 作 結 果 を 含 意 す る動 詞 の 存 在 場 所 で あ っ て,以 下 の 例 の よ う な そ の 事 態 が 関 与 す る場 所 とい う漠 然 と した 意 味 で は ない 。 ま た 「時 名 詞 」 に は ほ とん ど助 詞 が 与 え られ ない 。
(17)a名 聞 北路 商 夷 国=名 は聞 ゆ 北 路 商 夷 の 国(「 古 学 」1)
68
b a b 鋤 α
墓 古清 閑山寺 中=墓 は古 る 清 閑山寺 の中(『 古学』1)月満露垂 時=月 は満つ 露 の垂 る る時(『 古学 』1)
雨湿 新篁解 簿時=雨 は湿す 新篁簿 を解す る時(『 古学』1)
動 詞 に後 置 され る の が 「時 」 名 詞 お よ び 「所 」 名 詞 で,か つ 句 頭 名 詞 句 が あ る例 は,伊 藤 仁 斎 の詩 集 巻1に11あ るが,そ の う ちの7例 で 「ハ 」 が 付 与 され る。 例 外 は以 下 の4つ で あ る。
(19)a
b
C d
日暮江 城路=日 暮 る 清券 自溢三 三径=清 券 幽賞先期 九九 天 ・=幽賞 績 悟早 成十五歳=穎 悟
江 城 の 路(『 古 学 』1)
自 ら溢 る 三 三径(『 古 学 』1) 先 づ 期 す 九 九 の 天(『 古 学 』1) 早 成 十 五 歳(『 古 学 』1)
「ハ 」 の 与 え られ た 句 頭 名 詞 句 は,主 題 と して,そ れ 以 下 に 述 べ ら れ る句 に対応 す る。 一 般 的 に主 題 に対 応 す る句 は複 数 か ら な り,そ れ が 談 話 単 位 の つ ら な りと な っ て"topic‑chain"構 造 を作 る 。しか し,詩 にお い て は,"tOPIC‑
chain"と して の 談 話 単 位 は1詩 句 ご と に形 成 され や す い 。 そ の た め,句 頭 の 「ハ」 名 詞 句 は,1詩 句 を,詩 にお け る 実 質 的 な1"topic"単 位 と して ま
とめ る とい う機 能 を持 つ 。 つ ま り,句 末 まで を コ ン トロ ー ル す る とい う機 能 を持 つ の で あ る 。
通 常,日 本 語 にお け る句 の コ ン トロ ー ル は,述 語 と格 助 詞 との 関 係 に よっ て形 成 され る。 しか し,漢 詩 の 訓 読 日本 語 にお い て は,上 に見 た よ う に,こ う した 格 助 詞 に よ る統 語 的 な関 係 を表 面 的 に も潜 在 的 に も保 持 し得 な い 場 合 が あ る。 そ うい う場 合 に,格 パ タ0ン が とれ ない 名 詞 句 が 述 語 の後 に存 在 し
た と して も,そ の 名 詞 句 を含 め て1つ の 単 位 の 支 配 下 にあ る こ と を示 す た め に,「 ハ」 の 談 話 単 位 コ ン トロー ル機 能 が用 い られ る の で あ る。
こ れ が 漢 詩 の 訓 読 日本 語 に お け る 「ハ 」 の 機 能 で あ る 。 「ハ 」 は,句 全 体 を談 話 単 位 と して コ ン トロ ー ル す る こ と に よ って,日 本 語 と して は格 助 詞 を 用 い て統 語 的 に コ ン トロ ール で きな い句 に,代 理 的 に1単 位 と して の 支 配 関 係 を与 え て い る の で あ る。 こ れ は他 の 詩 人 の 漢 詩 にお け る 「ハ 」 の 用 例 で も 基 本 的 に 同 じで あ る。
(20)a詩 驚 項玖輝=詩 は驚 く 瑳玖 の輝(『 紹 述』22)
b才 高 青理鳳j麟器=才 は高 し 青預 鳳麟 の器(『 紹 述』24)
近 世 中 期 の 「1本漢 詩 の 「郵ll読に お け る 助 詞 「ハ 」 付 与 に つ い て69
C d e f
g
日落 江城 玉露秋=日 は落 つ 江城 玉露 の秋(r白 石』1) 雲薄 窓 中樹=雲 は薄 し 窓 中の樹(『 南海』3)
波浮 江漢葡 萄緑 需波 は浮 かぶ 江 漢葡萄 の緑(『 南 海」3) 遊倦 中原 色;遊 は倦 む 中原 の色(『 南郭』3)
山来 四面雨収初 鷹山 は来 る 四面 雨収 まる初(『 南郭 」4)
Vw.詩 句 の く ぎ り と2述 語 句 に お け る 「ハ 」 の 機 能
こ こ まで 見 て きた 句 全 体 へ の コ ン トロ ー ル とい う機 能 は f比 較 的 に構 造 の 単 純 な1述 語 の 句 を典 型 的 な例 と した。 しか し,こ の こ とは また2述 語 句 な
どの や や 複 雑 な構 造 を持 つ句 の く ぎ りの 問 題 と も関 わ る。
漢 詩 は,7言 詩 の 場 合 は 「2字̲̲..字 一3字 」 の リズ ム を,5言 詩 の 場 合 は 「2字 一3字 」 の リズ ム を基 本 的 な く ぎ りとす る。 そ して この くぎ りは, 句 と して の統 語 と関 わ る 。 た とえ ば,「 勤 竹 扶 持 新 細 茎 」 が,「 勤 竹 扶 持 す
新 細 茎 」 と2‑2‑3に く ぎ って 訓 む こ とで,格 助 詞 を与 え な くて も 「主 格 名 詞 句 一述 語 一 目的 格 名 詞 句 」 で あ る こ と を示 す よ うに で あ る。
しか し,こ う した く ぎ りが 明 確 で ない 場 合 もあ る。 そ う した と きに ,く ぎ りの リ ズ ム で 確 保 され な い 句 全 体 の 統 語 的 な ま と ま り を,「 ハ 」 の 談 話 単 位 形 成 コ ン トロ ー ル が代 替 す る と考 え る こ とが 可 能 で あ る。 た と え ば,以 下 の 例 で あ る。
(21)a兼 味 幸非縁 市近=兼 味 は 1}
b戯 蝶免被 蛛網 鈷 講戯 蝶 は
幸 に市の近 きに縁 る に非ず(r古 学」
蛛 網 に結 せ らる る を 免 る(「古 学 」1)
この(21)aで は,4字 め が 「非 」 とい う 「縁 市 近 」 を否 定 す る助 辞 で あ り, bで は や は り4字 め に 「被 」 とい う受 動 の 助 辞 が あ る 。 通 常 の 絶 句 で は4字 め と5字 め の 間 に くぎれ が あ るが,こ れ らの 詩 句 で は,そ こで 切 る こ とが で
き ない 。4字 め の助 辞 が そ の 直 後 の5字 め の 述 語 動 詞 と,訓 読 した 際 に直 接 関 わ る か らで あ る。
無 マ ・一カ ー の句 頭 名 詞 は,そ の直 後 の 述 語 に対 して 主 格 と して 関 わ る こ と を示 す の で,も し上 の(23)の 例 の 句 頭 名 詞 句 に 「ハ 」 を置 か な け れ ば,「 幸 非 」 や 「免 被 」 が 「兼 味 」 や 「戯 蝶 」 とい う主 格 名 詞句 に対 す る 述 語 と して 読 まれ な け れ ば な ら な い こ とに な る 。 そ れ は,「 非 」 や 「被 」 が 直 後 の5字
70
め の 述 語 動 詞 と切 り離 され る こ と に な り,意 味 上 不 適 当 で あ る。
よ って,「 兼 味 」 「戯 蝶 」 の 後 に 「ハ 」 を置 い て,こ の 詩 句 が 末尾 まで1命 題 で あ る こ と を示 す 必 要 が あ る。 そ れ に よ っ て,2‑5ま た は2‑1‑4と い う変 則 的 な く ぎれ が,適 当 な もの と して認 可 され る こ とに な る。
実 際 上,仁 斎 詩 集 巻1に あ る80の 「ハ 」用 例 か ら,4例 の 接 続 形 「テハ 」, 2例 の 名 詞 述 語 文 の 主 語 に与 え られ た 「ハ 」,6例 の 主 格 位 置 に置 か れ た準 体 句 に与 え られ た 「ハ 」 を除 い た残 りの68の 「ハ 」 用 例 の うち ・33例 は ・
「く ぎ り」 問 題 を解 決 して1句 全 体 へ の コ ン トロ ー ル を保 つ た め の 「主 題 」 提 示 と な っ て い る。
この 変 則 的 な く ぎ りを もた らす もの は,(21)で 見 た よ うな後3字 が 述 語 と 名 詞 句 か らな っ て い る もの(伊 藤 仁 斎 の 詩 集 巻1で は6例)の ほ か に,結 果 構 造 を持 つ もの(同14例),介 詞 構 造 を持 つ もの(同6例)・ 連 体 修 飾 節 が あ る もの(同5例),そ の 他 の もの(同2例)で あ る。 述 語 が2つ 以 上 あ る場 合 に は,構 成 が 変 則 的 に な りや す い 。 こ れ らの33例 の うち,「2‑2‑
3」 に分 け られ ない もの は,31例 に上 る。
まず,結 果 補 語 の 例 で あ る。
(22)a妻 裁 春 服 成=妻 は春 服 を裁 して成 る(『 古 学 』1)
b寒 浪 遥 揺 楚 山 動 二寒 浪 は遥 に楚 山 を揺 して動 き(『 古 学 』1)
(22)のaで 「妻 」 に 「ハ 」 を与 え な い と,「 妻 裁 して ・ 春 服 成 る」 とい う2 事 態 の並 列 の 意 味 に な る。 結 果 的 に は似 た 意 味 で あ るが,妻 の 仕 事 が 終 わ っ
た,と い う結 果 補 語 の 意 味 は 出 ない 。bも 同 じで,「 寒 浪 」 に 「ハ 」 を与 え な け れ ば,「 寒 浪 遥 に揺 し,楚 山 動 く」 と な り,や は り並 列 に な る・
これ は,句 頭 名 詞 句 が1字 名 詞 で あ る た め に,「(2‑)2‑3」 とい う く ぎ りが 不 安 定 に な るか らで あ る。 同 じ結 果 補 語 を持 つ 句 で も,句 頭 名 詞 句 が2 字 で あ れ ば,そ う な らな い 。 以 下 の(23)で あ る。
(23)小 旛 勢 繰 畢=小 旛 線 を勇 りて畢 は る(「 古 学 』1)
結 果 補 語 を持 つ 詩 句 で,句 頭 名 詞 句 が あ る場 合 に,「 ハ 」 が 与 え られ な い の は,す べ て,「(2‑)2‑3」 く ぎ りに な っ て い る もの で あ る。
介 詞 構 造 も同 じ問 題 を持 つ 。 以 下 の(24)の 「天 」 に 「ハ 」 が 付 与 され ・ (25)の 「龍 」 に付 与 され ない の は,前 者 が4‑1の く ぎ りを要 求 しい るの に
近 世 中 期 の 日 本 漢 詩 の 訓 読 に お け る 助 詞 「ハ 」 付 与 に つ い て71
対 し,後 者 が4‑3と い う 自 然 な く ぎ り を 要 求 す る か ら で あ る 。 「天 」 に
「ハ 」 を与 えず に,無 マ ー カ ー の ま ま 「向」 に だ け位 置 主 格 と して 関 わ らせ た場 合,「 天 が 向 か う,そ して 海 門 が 開 く」 とい う読 み が(意 味 的 な 適 合性 は 別 に して)2‑3と い う 自然 な くぎ りか ら成 立 しか ね な い か らで あ る。
(24)天 向 海 門 開e天 は 海 門 に 向 い て 開 く(『 古 学 」1)
(25)龍 向 地 中 猶 自蟄 し=龍 地 中 に 向 い て 猶 ほ 自 ら蟄 し(『 古学 」1)
連 体 節 を持 つ句 も同 じで あ る 。 以 下 の(26)は 「ハ 」 が 与 え られ た 句,(27) は与 え られ て い ない 句 で あ る が,く ぎ りが 異 な る。
(26)携 厨 人傍 池辺樹=厨 を携 る人 は 池 辺の樹 に傍 ひ(『 古学』1) (27)手 栽 花草漸 生成=手 か ら栽 うる花 草 漸 く生成 す(『 古学J1)
こ う した や や 複 雑 な構造 の旬 は,く ぎ りも変 則 的 に な る 可 能 性 が あ る。 漢 詩 の 訓 読 にお い て は,く ぎ りが 統 語 的 な支 配 の 機 能 に関 わ って い る 。 変 則 的 な くぎ りは そ れ を示 す こ とが で き な くな る 。 よっ て,代 理 的 に主 題 に よる コ
ン トロー ル が行 わ れ るの で あ る。 これ は,他 の 詩 人 で も同 じで あ る。
a b C d 鋤 ②
漢地宮 懸倦 掌起=漢 地 の宮 は 倦 掌 を懸 けて起 り(「南 郭j4) 雲從音 羽 山頭起=雲 は 音 羽山頭 よ り起 ち(『 紹述』24) 龍虎 気蒸 槍 海湧=龍 虎 の気 は 澹 海 を蒸 して湧 き(『 白石」2) 彩射 毫光 直=彩 は 毫 光 を射 て直 し(『南 海」2)
3.3.例 外 の 議 論
以 上 の統 語 的 な機 能 は,「 ハ 」 付 与 を あ る程 度 決定 す るが,完 全 で は な い 。
「ハ 」 付 与 は,格 統 合 の よ う な完 全 な統 語 論 的 手 続 きで は な い の で,語 用 論 的 に左 右 され る か らで あ る 。
そ の 最 大 の 要 素 は,音 律 上 の 問題 で あ る。句 頭 名 詞 句 が1字 名 詞 で あ る場 合,訓 読 和 語 は2音 節 程 度 が 多 い の で12字 の 音 読 漢 語 と比 べ る とs1〜2 モ ー ラ分 少 ない 。 この 不 足 感 を 「ハ 」 が 埋 め る と考 え る こ とが で きる。 実 際 上,句 頭 名 詞 句 に 「ハ 」 が 与 え られ る場 合,8割 程 度 が1字 名 詞 句 で あ り, 2字 名 詞 句 は2割 をや や 越 え る程 度 で あ る。
72
前 節 まで 論 じて きた統 語 論 的 な 機 能 は,こ の1字 名 詞 とい う条 件 と重 な る こ とで,発 動 され や す くな る 。 この こ とか ら逆 に,前 節 まで の議 論 の 例 外 と な る の が,こ う した音 律 の 要 素 に よる と考 え る こ とが で きる 。 以 下 は,2字 名 詞 な の でr「 ハ 」 が 付 与 され な か っ た と考 え られ る例 で あ る。
(29)a風 光易老 維陽春e風 光老 い易 し 誰 陽の春(『 古学』1) b清 券 自溢 三三径=1青 券 自ら溢 る 三三径(『 古 学』1)
また,前 節 まで に見 て きた格 関係 の不安 定 と くぎ りの不安 定 とい う2つ の理 由が ない の に 「ハ」 を付与 され ている句 も,音 律 上 の問題 が関 わる と考 える。次 の例 は,述 語 に後 置 され る名詞句 が比 較 的単純 な 目的格 名詞句 で,
「ヲ」 付 与 が可能 で あ る もの に もか かわ らず,句 頭 名詞句 に 「ハ」 が与 え ら れてい る例外 であ る。 これ も1字 名詞句 が音律 的 に不足 の感 じを抱 かせ かね ない こ とを避 け るためで ある と考 えてお く。
(30)雲 遮 広 寒 殿=雲 は 遮 る 広 寒 殿(『 古 学 』1)
さ ら に,音 律 的 な 問題 以 外 に,格 関 係 を持 て な い 名 詞句 を主 題 の 「ハ 」 が 支 配 して い る とす る と,句 頭 名 詞 句 が ない 句 が 問 題 に な る。 この例 外 に 関 し て は,「 ゆ るい 」 連 体 節 的 な理 解 が オ ー バ ー ラ ップ して 支 配 を加 え て い る と 考 え て お く。 た と え ば,次 の例 で あ る。
(31)空 掻 短髪武江 雲e空 し く短髪 を掻 く 武 江雲(『 古 学』1)
この 例 で は,述 語 後 置 名 詞 句 が 格 と して は不 安 定 で あ るが ,句 頭 に名 詞 句 が 無 い の で,「 ハ 」 が 加 え ら れ な い。 た だ し,こ の 句 は全 体 と して 「空 し く 短 髪 を掻 く,そ うい う江 戸 あ た りの 雲(の 風 景)で あ る」 とい う連 体 修 飾句 的 な理 解 が 可 能 で あ る。 少 な くと も訓 読 した と きの 統 語 的 な 印 象 は,「 細 細 た る 窓前 の 雨」 と同 じよ うな連 体 修 飾 句 と近 い と感 じられ る。 よ っ て,統 語 的 に不 安 定 で も1句 と して の ま と ま りを確 保 で きる もの で あ る と考 え る。
近 世 申 期 の 日 本 漢 詩 の 訓 読 に お け る 助 詞 「ハ 」 付'♪ に つ い て73
4.ま と め
「ハ 」 は,句 に統 合 性 を与 え る た め に用 い ら れ て い る。
句 の 統 合 的 な構 造 は,日 本 語 の 場 合,動 詞 と名 詞 句 の 格 に よ っ て選 択 的 な 関係 と して 作 られ る。 しか し,漢 詩 を訓 読 す る場 合,適 当 な格 を 与え られ な い場 合 が あ る。 ま た,漢 詩 に お い て は,く ぎ り とい う リズ ム が ゆ る や か な統 合 性 を もた ら して い る が,訓 読 した場 合,文 法 の 再 分 析 に よ って 不 可 能 な場 合 が あ る。
こ の2つ の 場 合 に,句 と して の 統 合 性 を持 たせ るの が,句 頭 名 詞 句 に与 え る 「ハ 」 の 機 能 で あ る。
*こ の論 文は,神 奈川大学共 同研究奨励助成金 による研 究成果の一部 である。
注
1)い わ ゆ る古 漢 語,ArchaicChinese,古 文 で あ る が,時 代 的 に古 代 に 用 い ら れ た もの で は な く,文 体 と して の そ れ を指 す 意 味 で 「古 典 中 国 語 」 と い う用 語 を 用 い る 。
2)引 用 例 句 は,古 典 中 国 語 と し て の5言7言 の 形 を まず 示 し,そ の 後 に 「=」 で つ な い で 訓 読 さ れ た 形 を 示 す 。 最 後 の()内 の 『 』 は 出 典 と な る 作 品 集 名, そ の 後 の 数 字 は 巻 数 で あ る 。 出 典 は以 下 の 略 号 で 示 す 。
『古 学 』〜 伊 藤 仁 斎 の 『古 学 先 生 詩 集 』 『紹 述 』 〜伊 藤 東 涯 の 『紹 述 先 生 文 集 』
『南 海 』〜 祇 園 南 海 の 『南 海 先 生 文 集 』 『白 石 』 〜 新 井 白 石 の 『白 石 先 生 鯨 稿 』
『南 郭 』 〜服 部 南 郭 の 『南 郭 先 生 文 集 初 編 』
3)形 式 上 の 格 と し て,「 前 位 置 」 を 「主 格 」,「後 位 置 」 を を1対 格 」 と呼 ぶ こ と も 可 能 で あ る 。
4)斜 格 に は 「ト ・ヨ リ」 の ほ か,名 詞 に後 接 す る 「ご と しiに 接 続 す る 「ガ ・ノ 」 を加 え た 。
5)こ の ほ か に,後 述 す る 「1字 名 詞 で あ る こ と に よ る く ぎ りの 不 安 定 化 」 と 「音 律 の 調 整 」 と い っ た 条 件 も関 与 す る。
6)句 頭 名 詞 句 に 「ハ 」 以 外 の 助 詞 が 与 え ら れ た 詩 句(「 ヲ」 が1例,「 二 」 が6例) は,す べ て 述 語 に 後 置 さ れ る 名 詞 句 を持 た な い 。
74
参 考 文 献
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