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76 第 26 回日本間脳下垂体腫瘍学会 Proceeding 経鼻内視鏡的下垂体腺腫摘出時の Narrow Band Imaging による残存下垂体の評価 谷口理章阿久津宣行甲村英二 神戸大学医学部脳神経外科 下垂体腺腫摘出に際しては 正常下垂体を残しつつ腫瘍を全摘出することが目標となる このた

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経鼻内視鏡的下垂体腺腫摘出時の

Narrow Band Imaging

による残存下垂体の評価

谷口 理章  阿久津宣行  甲村 英二

神戸大学医学部 脳神経外科 はじめに  下垂体腺腫摘出に際しては、正常下垂体を残しつつ腫 瘍を全摘出することが目標となる。このためには残存腫 瘍と正常下垂体を術中に判別することが必要になるが、 通常の経鼻内視鏡視野のもとでは両者の識別が困難なこ とがしばしばある。消化器内視鏡領域で使用されている Narrow Band Imaging(NBI)は415 nmと540 nmの狭 帯域光を照射することで粘膜表面および粘膜下浅層の血 管を強調し、同部位に進展した癌などの検出率を高める ことが示されている1)-3)。この技術を経鼻内視鏡下手術 に適応し、正常下垂体と残存腫瘍の術中判別に寄与しう るかを検討した。 1.対象と方法  神戸大学で経鼻的内視鏡下腫瘍摘出術が施行された下 垂体腺腫25例を対象とした。20例は非機能性腺腫、5 例は機能性腺腫(GH産生腺腫2例、PRL産生腺腫2例、 ACTH産生腺腫1例)であり、4例は再発例であった。 腫瘍摘出は硬性内視鏡(EndoArm; Olympus Co., Tokyo, Japan)の通常光下で行い、腫瘍摘出前後に軟性ビデオス コープ(VEF-V; Olympus Co., Tokyo, Japan)で術野を観 察した。ビデオスコープの先端径は4.8 mmで、手元の スイッチで瞬時に通常光とNBIモードの切り替えが可能 である4)。術野の観察は空気中(dry field)と人工髄液潅

流下(wet field)で行なった。NBI下での正常下垂体視認 の可否に関連する因子として腫瘍径、機能性・非機能性、 偽性被膜外摘出の可否、摘出率、過去の手術歴について Fisherの正確検定を用いて評価した。 2.結  果  19例で亜全摘出が得られ、内分泌学的寛解は機能性腺 腫5例中4例で得られた。NBI下の観察は4例で腫瘍摘 出前、23例で腫瘍摘出後に施行した。前者では腫瘍表面 は特徴的なパターンを呈さず、血管構築に乏しい、灰白 色の無器質な構造物として観察された。腫瘍摘出後dry fieldでの観察は血腫の干渉が強く、一定の知見を得られ なかった。一方でwet fieldでは23例中16例で正常下垂 体はモザイク状の微細な血管構築がシアン色に強調され た特徴的なパターンを呈し、他の構造物とは明瞭に識別 できた。この内2例は組織学的に、ほかの14例は通常 光の術中所見および術後MRIの所見から正常下垂体と 判断した。正常下垂体を観察できなかった7例の内6例 は術野の血腫および残存腫瘍が観察の妨げとなり、他1 例ではトルコ鞍開窓部が狭く、ビデオスコープの先端を 正常下垂体方向へ誘導する事が困難なためであった。  NBI下での正常下垂体観察の可否について腫瘍径、機 能性・非機能性、偽性被膜外摘出の可否、摘出率、過去の 手術歴の各因子について関連を検討したところ、唯一偽 性被膜外摘出の可否のみが統計学的有意差を持って正常 下垂体のNBI下での視認性と関連を示した(p = 0.003)。 3.代表症例  視野障害で発症した31歳、男性。MRIでは鞍上部に 進展するトルコ鞍部腫瘍を認める(図1A)。経鼻内視鏡 的に腫瘍を偽性被膜外に摘出した後の硬性鏡の所見で は、トルコ鞍左側に正常下垂体と思われる組織を認めた (図2A)。同部位をビデオスコープのNBIモードで観察 すると、シアン色でモザイク状に強調される構築が確認 された(図2B内星印)。術後MRIでは腫瘍が亜全摘出さ れ、正常下垂体が左側に残存しているのが確認された(図 1B)。腫瘍は非機能性下垂体腺腫であった。

Figure 1. The pre-operative MRI of the patient presented in the representative case demonstrating a macroadenoma with suprasellar extension (A). The post-operative MRI demonstrates total removal of the tumor with preservation of the normal pituitary gland (B).

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4.考  察  下垂体腺腫摘出の最終局面で、残存している組織が正 常下垂体であるのか残存腫瘍であるのか判断に苦慮する ことがしばしばある。生検による確認が正当な手順であ るが、正常下垂体を損傷する可能性があること、結果まで 相応の時間を要することなどが問題として挙げられる。 術中MRI 5)、6)indocyanine green 7)、8)による正常下垂

体の術中確認の方法も提唱されているが、前者は多大な 設備投資と検査時間を要し、後者は現時点で確立したも のではなく、一般に普及するに到っていない。本研究の 結果、経鼻内視鏡手術中にNBIを用いることにより正常 下垂体が識別可能となる可能性が示された。本法は観察 用に内視鏡を交換する煩雑さはあるが、前出の方法と比 べると比較的簡便であり、利点を有するものと考える。  NBIはヘモグロビンへの吸収光を強調して描出する技 術であるため4)、術野に残存する血腫の干渉を強く受け、 “クリーンな術野”が視認性の可否に大きく影響する。こ のためwet field下での観察が効果的であるが、血餅化 した血腫は洗浄のみでは除去できず、吸引などの手術操 作を加える必要がある。しかしながらビデオスコープ下 での手術操作は制限があり、本研究でも6例で血腫のた め観察が妨げられた。High definitionのエンドアームは NBI機能を有しているが、実際は対象とカメラまでの距 離が長いためNBIの光量が不足し、充分な所見がえられ ない。今後硬性鏡でNBIが有効なシステムが開発されれ ば、NBI下での手術操作が容易となり、本問題点は解決 すると思われる。  被膜内摘出を進めた終盤に血流の回復した残存腫瘍と 正常下垂体との鑑別を可能とするかが本法の真価が問わ れるところと思われるが、本研究では被膜内摘出に終始 した症例は7例のみで、その中で下垂体に特徴的なNBI のパターンが視認できたのは1例のみであった。血腫お よび残存腫瘍が正常下垂体を被覆していたことが原因で あるが、全例非機能性腺腫であり、あえて正常下垂体を 損傷する危険性を冒してまで全摘出にこだわらなかった ことも要因と思われる。本法が腫瘍摘出率の向上に寄与 しうるかは、今後可及的に全摘出が必要となる機能性腺 腫でさらに症例を蓄積することが必要である。一方で本 研究の結果のみからでも、下垂体に特徴的なNBIのパ ターンが確認されない間は残存腫瘍を疑い、摘出を継続 するという判断は正当化されると考える。 参考文献

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Figure 2. The intraoperative inspection of the residual pituitary gland with the rigid endoscope (A) and with the flex-ible videoscope under the NBI mode (B). The mosaic pattern can be recognized on the surface of the pitu-itary gland as indicated with the asterisk.

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飽和食塩溶液固定法遺体による

内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術トレーニングの経験

中島 伸幸

*1

 西岡  宏

*1,2

 深見真二郎

*1

 河野 道宏

*1

 福原 紀章

*2

岡田 満夫

*2

 山田 正三

*2

 伊藤 正裕

*3

 林  省吾

*3 *1東京医科大学 脳神経外科、*2虎の門病院 間脳下垂体外科、*3東京医科大学 人体構造学 まえがき  内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術は、深部での複雑な操作を 二次元下に行う高い技術を要求される手技である。一方 で、手技習得のためのトレーニングは、手術室での on-the-job trainingが主である。On-the-job trainingには、 経験豊富な指導者と十分な症例が必要であるが、一施設 での症例は限られており、手技習得には長いラーニング カーブが必要となる。そのため、サージカルトレーニン グには、下垂体モデル1)やシミュレーター2)およびカダ バー3)などによるoff-the-job trainingが行われてきた。 モデルやシミュレーターは、反復性、安全性、汎用性、低 コストなどの点で利点を有するが、実際の手術感覚には 限界を有する。一方、カダバートレーニングは、実際の 手術手技に近い有用な方法と思われる4)、5)。カダバート レーニングにおいて、ホルマリン固定法が一般的であっ た。しかし、ホルマリン固定法は、刺激臭、色調、組織 の硬さなどに加え、ホルムアルデヒドの発がん性が問題 になる6)。そこで、新鮮凍結法やThiel法、アルコール固 定法などの試みがあり、固定法の違いによる評価がなさ れている7)、8)  これまで我々は、東京医科大学人体構造学分野の協力 を得て、過去に10回の頭蓋底コースおよび1回の下垂 体コースのサージカルトレーニングコースを経験してき たが、いずれもホルマリン固定法であった。今回、我々 の知りうる限り、脳神経外科領域にてはじめて、飽和食 塩溶液固定法(Saturated Salt Solustion、SSS法)8)、9)によ

る内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術のサージカルトレーニング コースを行ったので報告する。 1.対象と方法  2015年9月19日、第2回虎の門下垂体セミナーにお いて、SSS法にて固定した6体の遺体により、内視鏡下 経鼻的腫瘍摘出術のサージカルレーニングコースを行っ た。公募による10名の実習者、14名の見学者および10 名の講師が参加した。使用内視鏡は6台(株式会社町田 製作所、オリンパス株式会社、日本ストライカー株式会 社)、内視鏡固定はエンドアーム(オリンパス株式会社) 2テーブル、ユニアーム(三鷹光器株式会社)2テーブル、 固定器なし2テーブルであった。午前に内視鏡下経鼻ア プローチの基本手技(千葉大学脳神経外科堀口健太郎医 師によるデモ)を行い、午後に拡大経鼻手術(日本医科大 学脳神経外科大山健一医師によるデモ)を行った(図1)。 図 1.講師によるデモ風景 A:千葉大学脳神経外科堀口健太郎医師による内視鏡下経鼻アプローチの基本手技(デモ)を行い、 B:日本医科大学脳神経外科大山健一医師による拡大経鼻手術

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 実習前後に同一の手術手技到達度アンケートを行い、 実習者(10名)の手技到達度の自己評価を検討した。評 価項目は、内視鏡セッティング、粘膜弁作成、トルコ鞍 開放までの鼻腔内操作、腫瘍摘出(非機能性、機能性、側 方進展、頭蓋咽頭腫、鞍結節部髄膜腫、斜台腫瘍)および 鞍底形成(硬膜縫合なし、あり)を、“全くできない”を0 点、“経験者が助手であればできる”を5点、“1人でで きる”を10点とし、実習者により0から10点の11段 階による主観的な自己評価が行われた。また、内視鏡下 経鼻的腫瘍摘出術トレーニングにおいてホルマリン固定 法や新鮮凍結法とSSS法との比較を検討した。遺体固定 法ごとに、視覚、触覚、鼻粘膜切開、中鼻甲介の操作性、 鼻中隔・鋤骨の削除、蝶形骨洞内操作、トルコ鞍底操作、 トルコ鞍内操作、トルコ鞍上部操作およびサージカルト レーニングでの有用性を、生体(実際の手術)と比較して、 “全く異なる”を1点、“やや生体と異なる”を2点、“ど ちらとも言えない”を3点、“やや生体に近い”を4点、 “全く生体と変わらない”を5点として評価した。評価 者は、SSS法32名、ホルマリン固定法18名、凍結新鮮 法7名であった。後者の2法は経験者のみが回答し、過 去のトレーニングコース経験の記憶に依った。 2.結  果  SSS法によって固定された6遺体は、固定から実習時 期まで固定期間が異なるものの、全例、今回の内視鏡下 経鼻的腫瘍摘出術のサージカルトレーニングに十分な状 態であった。  実習前後の手技到達度アンケート評価において、鼻 粘膜弁形成が実習前中央値2.5点であったのが実習後 6点へ(p<0.01)、腫瘍摘出(側方進展)が2点から4点 (p<0.01)、腫瘍摘出(頭蓋咽頭腫、髄膜腫)が0.5点から 3点(p<0.05)、腫瘍摘出(脊索腫など)が0点から3点 (p<0.05)へと改善した(表1)。これらの結果から、今回 のサージカルトレーニングにより粘膜弁形成と腫瘍摘出 の習熟度が深まったと推察された。  遺体固定法による内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術トレーニ ングにおける評価をアンケートから比較検討した。視 覚、触覚、鼻粘膜切開、鼻粘膜剥離、中鼻甲介操作、鼻 中隔・鋤骨操作、蝶形骨洞内操作、鞍底操作、鞍内操作、 鞍上部操作のいずれの評価項目において、SSS法はホル マリン固定法より有意に良い評価を得たが、新鮮凍結法 との間に有意差は認められなかった。  評価者からのコメントとして、ホルマリン法は刺激臭 が強い、発がん性、色調が黄色い、組織が硬く鼻腔内操 作が困難、粘膜の乾燥などにより粘膜弁作成が困難、脳 組織が硬く牽引できない、血管が虚脱している、凍結新 鮮法は頭蓋内組織の脆弱性、溶けるなどの問題点が挙げ られた。一方、SSS法は、刺激臭が少ない、鼻翼の可動 性が高い(図2)、粘膜が生体に近く粘膜弁作成が可能(図 3A)、色調が実際の手術に近い(図3B)、組織の牽引が 生体に近い、くも膜・神経・脳実質の感触が生体に近い (図3C)、動脈が虚脱していない(図3D)などの高評価を 得た。 3.考  察  ColemanらによりSSS法が開発され9)Hayashiらに よりSSS法がサージカルトレーニングにはじめて応用さ れた8)。発がん性を有するホルムアルデヒド濃度が通常 のホルマリン固定法は4–8%、アルコール法では2.3%7) に対し、SSS法は0.75%と極めて低い。また、固定費用 が安価(1体あたり約3000円)、月単位の保存可能、共 用可能など貴重な遺体運用において利点が多いのに加え て、固定の質も、画像、病理、色合いおよび硬さなどに おいてもホルマリン固定法、新鮮凍結法およびThiel法と 比し優れている印象がレビューされている10)。そこで、 今回、脳神経外科領域にてはじめてSSS法遺体を用いた サージカルトレーニングを経験することができた。 表 1. 内視鏡下経鼻的腫瘍提出術のサージカルトレーニング前後 アンケート結果 評価項目 実習前 実習後 P値 セッティング 8 8.5 0.6229 粘膜弁作成 2.5 6 0.0004 トルコ鞍開放まで 8 8.5 0.2024 腫瘍摘出;非機能性 7.5 8 0.3776 腫瘍摘出;機能性 4 6 0.19 腫瘍摘出;側方進展 2 4 0.0074 腫瘍摘出;頭蓋咽頭腫 0.5 3 0.0193 腫瘍摘出;髄膜腫 0.5 3 0.0193 腫瘍摘出;脊索腫など 0 3 0.0265 鞍底形成;硬膜縫合無 5 6 1 鞍底形成;硬膜縫合有 1.5 4 0.0802 図 2.鼻孔に挿入された内視鏡 鼻翼切開を行わなくても、内視鏡と鉗子にて実際の手術 に近い状況にて、鼻孔が進展されているのを確認できる。

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 今回行った内視鏡下経鼻的腫瘍摘出術トレーニングに おいて、SSS法は視覚、触覚および鼻腔内・鞍内・鞍上 部操作など全ての項目においてホルマリン固定法よりも 良い評価を得た。経鼻トレーニングに限ると新鮮凍結法 との間に有意差は認められなかったが、SSS法は、鼻腔 内構造物に限らず、皮膚、頭蓋内構造物などが溶けるこ となく、生体により近い状態にて数ヶ月以上の保存が可 能、多診療科にて共用できる、固定やランニングコスト が安価であるなど、総合的に優れたサージカルトレーニ ング環境を提供し得ると実感できた。反面、骨が脆い(ド リリングが物足りない)、静脈が虚脱している、感染症が 完全にはクリアされていないなどの問題点や本研究の評 価法は主観的かつ他の固定法との直接比較ではないなど の限界点を有している。 結  語  脳神経外科領域にてはじめて、飽和食塩溶液固定法 (Saturated salt solution、SSS法)による内視鏡下経鼻的腫 瘍摘出術のサージカルトレーニングコースを経験した。 手術手技習得のためのoff-the-job trainingとして、生体 に近い組織の硬さ・色調、ホルムアルデヒドによる刺激 臭・発がん性の回避、月単位の保存・多診療科との共用 が可能など、多くの利点を有するSSS法は、脳神経外科 領域においても極めて有用と考えられた。 謝  辞  アンケート、評価にご協力をいただいた実習者、見学 者および講師の諸先生方に、厚く御礼申し上げます。 文  献

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下垂体腺腫における頭痛とトルコ鞍内圧との関係

Measurement of intrasellar pressure for patients with pituitary adenomas associated with headache

林  康彦

*1

 福井 一生

*1

 喜多 大輔

*1

 笹川 泰生

*1

大石 正博

*1

 立花  修

*2

 中田 光俊

*1 *1金沢大学 脳神経外科、*2金沢医科大学 脳神経外科 はじめに  下垂体腺腫による主症状のひとつとして頭痛が挙げら れるが、その発症機序としては正常下垂体周囲の鞍隔膜 や海綿静脈洞内側硬膜における伸展刺激1)-3)や海綿静 脈洞内での三叉神経への圧迫効果4)などが推測されてい る。その伸展や圧迫には腫瘍によるトルコ鞍内圧の上昇 が必要であるが、実際に測定された報告は少ない。また トルコ鞍内圧の上昇を来しやすい周囲構造の因子に関す る検討も少ない5)、6)。今回、我々は下垂体腺腫症例で実 際に摘出術中にトルコ鞍内圧測定を行い、頭痛発症例で の術前の画像の特徴やトルコ鞍内圧を術後の症状の変化 と合わせて検討したのでこれを報告する。 1.対象と方法  2013–2015年までに当科にて施行された内視鏡下経鼻 的下垂体腺腫摘出術症例のうち術中トルコ鞍内圧測定を 施行した初回手術60例を対象とした。そのうち、頭痛発 症例は11例で、年齢は平均43.0(22–65)歳であり、男 女比は3:8であった。腫瘍の種類は、非機能性腺腫が9 例、プロラクチン産生性腺腫が2例であった。  術前のMRI画像において下垂体腺腫及びその周囲構 造におけるトルコ鞍内圧の上昇に関与すると考えられる 解剖学的着目点を以下に述べる。腺腫における因子とし て、腺腫の最大径と腺腫内出血(MRI T1強調画像にお ける高信号域)の有無を評価した。また周囲構造におけ る因子として、海綿静脈洞や蝶形洞内への腫瘍伸展とト ルコ鞍内硬膜の連続性の有無、鞍隔膜の開口部の最大径 (MRI T2強調画像もしくは FIESTA画像における冠状 断)の測定を行った。  トルコ鞍内圧の測定を以下の様に施行した5)。蝶形骨 洞の前壁を十分に削除した後に、鞍底の正中部に最大径 3 mmの小さな開窓を設けた。その後に硬膜を2 mm切 開して、ICPセンサー(Codman ICP Monitoring System) の0 cm H2O圧補正を行った後に下垂体腺腫内に5 mm 挿入した。実際の測定値はセンサー挿入後約1–2分の値 の変動が十分落ち着いた時の値とした。測定中に麻酔医 によるバルサルバ手技(35 cm H2O)を施行して、その値 も記録した。さらに鞍底を十分開窓した後に、同様の圧 測定を再び施行した。

 頭痛の程度の評価としては、Headache Impact Test (HIT)−6(最低値36点~最高値78点)を用いた。また

術前後の血清プロラクチン値を測定してトルコ鞍内圧の 減少が下垂体柄に対するsectioning effectを軽減するか どうかも評価した。

(A)

Figure 1. (A) Intraoperative photograph of ICP sensor insertion, and (B) ICP sensor (B)

(7)

2.結  果  頭痛発症例(11例)における術中トルコ鞍内圧は44.5 (32–59)mmHgであり、バルサルバ手技によるトルコ 鞍内圧は41.8(28–54)mmHgで軽度の低下は認めるも、 有意な変化は得られなかった。しかし鞍底開窓後にはト ルコ鞍内圧は23.5(12–32)mmHgにまで著明に低下し た。一方、非頭痛発症例(49例)においては、トルコ鞍内 圧は16.9(7–35)mmHgであり、バルサルバ手技による トルコ鞍内圧は20.3(10–37)mmHgで、この手技によ り軽度ではあるが上昇を認めた。また鞍底開窓後にはト ルコ鞍内圧は11.7(1–27)mmHgにまで有意な低下を認 めた。  術中トルコ鞍内圧は頭痛発症例では非頭痛発症例と 比較して著しい高値を認めた(44.5 vs. 16.9 mmHg)。バ ルサルバ手技では非頭痛発症例では頭痛発症例と比較 して軽度であったが有意な上昇を認めた(−2.7 vs. 3.4 mmHg)。また鞍底開窓後のトルコ鞍内圧低下は頭痛発 症例では非頭痛発症例と比較して著明であった(21.0 vs. 5.2 mmHg)。  術前と術後の血清プロラクチン値を測定した。頭痛発 症の非機能性腺腫の9例では術前値は50.6 ng/mlであっ たが、術後は7.9 ng/mlと著明に低下した。非頭痛発症 の非機能性腺腫44例では、術前値は31.2 ng/mlと軽度 の上昇に留まり、頭痛発症例とは有意差を認めた。しか し術後は9.4 ng/mlと著明に低下して、頭痛発症例とは 有意差は認めなかった。  頭痛は術後に軽快したものが3例、消失したものが9 例と全例に改善を認めた。HIT-6では術前が平均62.0と 頭痛が日常生活に重篤な影響を与えていたが、術後は平 均36.4と日常生活に影響を与えないレベルにまで低下し た。頭痛の部位としては前頭部と目の奥がそれぞれ4例 と3例で、性状としては押される感じや重い感じを訴え ていた。また腫瘍の大きさが小さくトルコ鞍内にて偏在 しているもの5例に関しては、その局在と疼痛の局在が いずれも一致していた(Table 1)。  術前の画像所見では、腫瘍の最大径は頭痛発症例が 20.3 mmであったのに対して、非頭痛発症例では29.1 mmと、非頭痛例が有意に大きい結果であった。T2強調 画像もしくはFIESTA画像の冠状断にて測定した鞍隔膜 開口部の最大長は頭痛発症例が8.4 mmで、非頭痛発症 例が17.2 mmで非頭痛発症例が有意に大きい結果であっ た。また、側方の海綿静脈洞内や下方の蝶形骨洞内進展 は全例で認められなかった。非頭痛発症例では海綿静脈 洞内進展は19例(38.8%)、蝶形洞内進展は11例(22.4%) に認められた。腫瘍内の血腫もしくは嚢胞の存在に関し ては頭痛発症例では11例中9例(81.8%)と大多数の例 で認められた(Table 2)。一方、非頭痛発症例では49例 中18例(36.7%)に留まっていた。つまりトルコ鞍内の 硬膜は全体として保たれた状態にあり、血腫や嚢胞を含 む腫瘍にて内部の圧が上昇した状態であったことが推測 された。 3.考  察  頭痛は下垂体腺腫による主症状のひとつであり、鞍隔 膜や海綿静脈洞内側壁などの鞍内硬膜に対する伸展刺激 1)-3)や海綿静脈洞内への腫瘍進展による三叉神経への 圧迫刺激4)などがその成因として考えられている。鞍内 硬膜への伸展刺激を生じるためにはトルコ鞍内圧が腫瘍 により上昇する必要がある。頭痛発症例において実際に トルコ鞍内圧が上昇していることを確認して、そうなる ための腫瘍側の条件と硬膜や骨などの腫瘍の周囲構造の 条件に関して検討する必要がある。

Table 1. Clinical characteristics of the patients with headache

Patients Age / Sex lntrasellar Pressure Valsarva Prolactin Headache

Pre SFR Post SFR Preope Postope

1 28 /F 42 29 44 52 14 diminished 2 65 /F 47 36 48 27 3 improved 3 58 /M 59 42 54 33 17 diminished 4 41 / F 32 12 34 171 44 improved 5 40 /M 41 33 39 32 15 diminished 6 44 / F 40 25 39 105 6 diminished 7 41 / F 33 16 38 88 41 improved 8 42 / F 37 31 38 116 13 diminished 9 54 / M 44 20 45 12 8 diminished 10 22 / F 33 17 28 49 16 diminished 11 38 / F 40 16 42 52 6 diminished 43 40.5 23.5 41.8 46.9 14.9

(8)

 まず腫瘍側の条件として腫瘍の最大径と腫瘍内血腫や 嚢胞の有無に関して検討した。結果は頭痛発症例では非 頭痛発症例と比べて、腫瘍の最大径は有意に小さく、ま た腫瘍内の血腫もしくは嚢胞は有意に多いというもので あった。これは小さな腫瘍でも頭痛を生じ、経鼻的腫瘍 摘出術にて著明に改善するとしたFleseriuらの報告に合 致する7)。また周囲構造側の条件として、海綿静脈洞内 進展や蝶形洞内進展をトルコ鞍硬膜の連続性と鞍隔膜の 欠損部の最大径に関して検討した。頭痛発症例では海綿 静脈洞内進展や蝶形洞内進展を1例も認めず、鞍隔膜欠 損も有意に狭いという結果であった。これらは腫瘍側の 因子として慢性的に増大する腫瘍に加えて急性的に増大 する血腫などの関与がトルコ鞍内圧の亢進に繋がること を示している。またトルコ鞍内圧の亢進にはトルコ鞍硬 膜の連続性が保たれていると、伸展刺激を受けやすい状 態であることも示された。  またトルコ鞍内圧の亢進による下垂体機能に関しては 今回の研究では検討されていないが、上記のプロラク チン値測定の結果からも下垂体柄を圧迫するsectioning effectが頭痛発症例に有意に多く認められることが示さ れた。これにより門脈系を介する下垂体前葉系への血流 減少が起こりうる。これが下垂体機能不全に繋がり腫瘍 の摘出により機能の回復が見込めることは他の研究でも 示されており8)、頭痛発症例における手術適応は下垂体 機能不全の合併の有無も含めて検討する必要があること を示唆している。  以上より、頭痛発症の下垂体腺腫例においてもトルコ 鞍内硬膜の統合性(integrity)が保たれている例では、ト ルコ鞍内圧の上昇が頭痛の原因となることが推測され る。このような例では腫瘍の摘出にて著明な改善が期待 でき、積極的な手術適応になると考えられる。 文  献

1)Levy MJ, Jager HR, Powell M, Matharu MS, Meeran K, Goadsby PJ. Pituitary volume and headache: size is not everything. Arch Neurol 2004; 61: 721–5.

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8)Evans RW, Levy MJ. Expert opinion: headache and pi-tuitary tumors. Headache 2008; 48: 280–3.

Table 2. Radiological characteristics of the patients with headache

Patients Age / Sex Diameter Defect of Diaphra. Tumor Invasion Hemorrhage Caverous Sinus Sphenoid Sinus

1 28 /F 19 12.6 − − + 2 65 /F 19 11.8 − − + 3 58 /M 21 3.8 − − − 4 41 / F 13 2.1 − − + 5 40 /M 34 17.1 − − + 6 44 / F 20 3.9 − − + 7 41 / F 16 10.2 − − − 8 42 / F 23 8.6 − − + 9 54 / M 24 3.8 − − + 10 22 / F 10 5.6 − − + 11 38 / F 21 3.8 − − + 20.3 8.4 0 0 9

(9)

11

年前に非機能性下垂体腺腫と診断された

TTF-1

陽性下垂体部腫瘍の一例

TTF-1 positive sellar tumor diagnosed as non-functional pituitary adenoma 11 years ago

久保田真彰

*1

 堀口健太郎

*1

 石渡 規夫

*1

 村井 尚之

*1

 河野 貴史

*2

小出 尚史

*2

 田中 智明

*2

 岸本  充

*3

 中谷 行雄

*3

 佐伯 直勝

*1

*1千葉大学医学部附属病院 脳神経外科、*2同 糖尿病・代謝・内分泌内科、*3同 病理診断学・病理部

はじめに

 トルコ鞍近傍腫瘍として、pituicytoma, granular cell tumor(GCT)、spindle cell oncocytoma(SCO)が2007年 WHO分類おいても区分されている。これらの腫瘍は臨 床上、非常に稀な疾患であり、その診断にはしばしば難 渋する。病理学的には前2者は、下垂体後葉のpituicytes より発生し、後者は前葉のfolliculostellate cell(FSCs)よ り分化するものと考えられているが、未だ不明な点は多 い1)。しかしながら、近年TTF-1染色による診断の重要 性が提唱されており、GCTとSCOはpituicytomaの超微 細構造を反映しているという点でpituicytomaのvariant とする報告もある2)。今回、我々は病理診断にてTTF-1 陽性を示した下垂体腫瘍の一例を経験したので、若干の 文献的考察を含めて報告する。 1.症  例 患 者:79歳男性 既往歴:下垂体機能障害、高血圧、高脂血症 現病歴:11年前に他院で下垂体部の腫瘍性病変に対し、 顕微鏡下経蝶形骨洞手術を施行。手術は部分摘出であ り、病理診断は非機能性下垂体腺腫と診断された。7 年前まで明らかな腫瘍の増大傾向は認めなかったが、 同年より成長ホルモン製剤の補充を開始した。その 後、徐々に腫瘍の増大を認めたため、手術目的に当院 当科へ紹介となった。 神経学的所見:意識清明。視力視野障害を認めたが、そ の他明らかな神経学的異常所見は認めなかった。 内分泌学的所見:前回術後より下垂体前葉機能障害を認 め、Hydrocortisone(コートリル®)、Levothyroxine(チ ラーヂンS ®)、Octreotide(サンドスタチン® LAR)を 投与されていた。 ホルモン検査:LH 0.07 mIU/mL、FSH 0.36 IU/mL、PRL 2.16 ng/mL、TSH <0.003 IU/mL、fT3 2.27 pg/mL、 fT4 1.03 pg/mL、Cortisol 17.8 mg/dL、ACTH 5.1 pg/ mL、GH 0.23 ng/mL IGF-1 111ng/mL 画像所見:術前CTでは腫瘍内部に石灰化を認め、術前 より非常に硬い病変であることが示唆された。ガドリ ニウム造影T1強調画像では石灰化病変を除いて鞍内 から鞍上部に突出する不均一に造影される病変を認め た。腫瘍は上方で視神経と接しており、外側は海綿静 脈洞へ進展している所見を認めた(Figure 1)。 手術所見:当院入院後、内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍摘出術 を施行。経蝶形骨洞経由でトルコ鞍に到達し、鞍底硬 膜を切開すると、易出血性で非常に硬い腫瘍腫瘍が確 認された。一部は電気メスを用いながら摘出するも、 腫瘍は硬膜や海綿静脈洞に強く癒着していたため、摘 出に難渋した。年齢が高齢であること、周囲との癒着 が強固であることを考慮し、鞍上部への術野拡大は行 わずに鞍内の部分摘出で終了とした。 術後経過:明らかな術後出血は認めず、一過性に多尿を 認めたが、経過とともに改善し、術後10日目に独歩 で退院とした。 病理診断:好酸性紡錘形細胞が束状ないし花筵状に配列 し増生。核は類円形で軽度な大小はあるものの、異型 は軽度である所見を認めた。免疫染色では、TTF-1陽 性、S-100陽性、EMA陽性、synaptophysin弱陽性、 chromogranin A陰性、GFAP陰性、Neurofirament陰 性であった(Figure 2)。これらからpituicytomaと診 断された。

Figure 1. A, B: Preoperative MR images (GDT1) show the intra-supra sellar tumor enhanced heterogeneously. C: Preoperative CT image shows the calcification in the tumor.

A B

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遺伝子発現解析:本症例では腫瘍のGH receptorおよび IGF-1 receptorを含めた遺伝子について発現解析を施 行した。本症例においてはGH receptorは発現を示さ ないものの、IGF-1 receptorについては対照群と同等 の発現を認めた(Figure 3)。 2.考  察  Pituicytomaは下垂体後葉の下垂体細胞由来であり、病 理学的には好酸性の細胞質に紡錘形細胞が束状、花筵状 に配列する。一方、SCOは前葉の濾胞星状細胞由来であ り、同様に好酸性の細胞質に紡錘形ないし上皮様細胞が 束状配列する。免疫染色では、両者ともにTTF-1陽性、 S-100陽性、synaptophysin陰性、GFAP陰性~陽性、下 垂体ホルモン陰性である。MRI所見では、T1でhypo からiso intensityでhomogeneousに造影され、pituitary adenomaと類似する3)。したがって、画像所見、免疫染 色では両者の鑑別は困難である。病理学的には、SCOと GCTはpituicytomaの超微細構造を反映しているという 点でpituicytomaのvariantと近年報告されている2)  本症例が初発時に非機能性下垂体腺腫と診断されてい た点について検討を行った。その原因として、第一に腫 瘍が易出血性で硬く、前回の手術において摘出された検 A B

Figure 2. A: Hematoxylin-Eosin (H-E) stein shows the storiform arrangement of plump bipolar spindle cells with slightly fibrillar eosinophilic cytoplasm.

B: The tumor cells are diffusely positive for TTF-1.

Figure 3. Gene expression profiling shows growth-hormone-receptor gene (GHR) was not expressed in Pitu (pituicy-toma), but IGF-1 receptor gene (IGF1-R) was expressed equally with control groups (adenoma, GHoma).

(11)

体は非常に少量で十分な病理診断が困難であったことが 挙げられる。第二に前医病理標本において、ごく少量の 検体の中に下垂体前葉組織が腫瘍組織と共に同時に摘出 されているのが認められた。腫瘍組織は今回の摘出検体 と同様の所見であったが、非常に少量であり、大部分が 前葉組織であったことから、非機能性下垂体腺腫との診 断がなされたのではないかと考えられた。さらに第三の 要因として、本症例のpituicytomaに代表されるTTF-1 陽性下垂体部腫瘍は非常に稀な腫瘍であり、11年前の当 時においては病理診断におけるTTF-1染色の有用性の報 告も少なく、鑑別診断に挙げるのが困難であったことも 推察される。  成長ホルモン製剤投与に関しては、しばしば腫瘍の再 発や進展との関連性が論議されている。2015年に発表 されたShenらの2000例を超えるmeta-analysisによる と、小児の頭蓋内腫瘍のリスクは低下するものの、成長 ホルモン製剤投与は頭蓋内腫瘍の再発や進展に寄与しな いことを報告している4)。一方、GH receptorの有無に ついて病理組織を用いて検討したUchinoらの報告によ ると、GH receptor陽性である症例はhGH補充の投与 を慎重に検討する必要があるとしている5)。本症例につ

いても腫瘍のGH receptorおよびIGF-1 receptorの遺伝 子発現について解析した結果、GH receptorの発現は認 めないものの、IGF-1 receptorについては対照群と同等 の発現が確認された。この結果から、本症例においては 単純にGH receptorが存在し、hGH補充により腫瘍が 再発したという仮説は否定された。しかしながら、 IGF-1 receptorが対照群と同程度に発現していることは、リ ガンドであるIGF-1やIGF-2によるautocrineもしくは paracrineによる腫瘍増殖機序も推察される。今後、さら なる解析を行なう予定である。現時点では、前述した通 り、meta-analysisにおいて成長ホルモン製剤投与による 頭蓋内腫瘍の再発や進展に対して影響はないとの結果が でているが、成長ホルモン製剤投与後の再発病変に関し ては、GH receptorを含め、詳細な個別解析の必要性が 示唆された。 結  語  11年前に非機能性下垂体腺腫と診断された再発 pitui-cytomaの一例を経験した。Pituicytomaは非常に稀な傍 鞍部腫瘍であり、硬く、易出血性で全摘出が困難である。 病理診断にはTTF-1による免疫染色が有用であるが、診 断に難渋する可能性がある。本症例の腫瘍増大機序に関 しては、成長ホルモン製剤投与との関連性を含め、今後 さらなる解析が必要である。 参考文献

1)Corinna C. Zygourakis, John D. Rolston, Has S. Lee, Carlene Partow, Sandeep Kunwar, Manish K. Aghi. Pi-tuicytomas and spindle cell oncocytomas: modern case series from the University of California, San Francisco. Pituitary (2015) 18: 150–158.

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(12)

非機能性下垂体腺腫に伴う

GH

分泌障害:

その遠隔成績と関連因子の検討

小林 伸行

*1,2

 岡田 満夫

*1

 福原 紀章

*1

西岡  宏

*1

 山田 正三

*1 *1虎の門病院間脳下垂体外科、*2とちぎメディカルセンター下都賀総合病院脳神経外科 はじめに  非機能性下垂体腺腫(以下NFPA)における内分泌機能 障害として、成長ホルモン分泌障害(以下GHD)は最も 高頻度に認められる前葉機能障害である1)。しかしこの GHDの術後の経時的変化やそれに影響する因子につい ては、未だ不明な点が多い。  また成人GHD(aGHD)の診断にはGHRP-2を用いた 負荷試験が行われ、負荷後60分以内のGH頂値9.0ng/ ml以下を重症とする判定のみが存在する2)。そのため aGHDにおけるGH頂値>9.0ng/mlの群には正常例や 軽症、中等度のGHDの症例が含まれてしまう。一方小 児ではGH頂値16.0ng/mlを境界値として、重症(頂値 ≦9.0ng/ml)、中等症(頂値>9.0ng/ml、≦16.0ng/ml)、 軽症(頂値>16.0ng/ml)に分類されている3)  そこで今回我々は小児における中等症群の境界値16.0 ng/mlを加え、術直後に重傷aGHDであった症例を3群 に分類し、NFPAにおける術後aGHDの長期的経時変化 とGH分泌能の改善に関わる因子について後方視的に検 討したので報告する。 1.対  象  2007年から2012年の間に虎の門病院で経蝶形骨洞手 術(以下TSS)を受けたNFPA 730例のうち術直後(術後約 10日前後)にGHRP-2負荷試験を受けGH頂値が9.0ng/ ml以下、かつ術後1–2年後に再度GHRP-2負荷試験が 施行された150例を対象とした。 2.方  法  術直後のGHRP-2負荷試験で、GH頂値9.0ng/ml以 下の症例を重症群(術直後重症群)とした。これら術直後 の重症群に対し、まず術後1–2年目のGHRP-2負荷試 験で同様に重症群と判定された群と非重症群との2群間 でGH分泌能の改善に関わる因子について検討した。同 時に術後1–2年目のGHRP-2負荷試験の結果から重症 群(頂値≦9.0ng/ml)、中等症群(>9.0、≦16.0ng/ml)、 >16.0ng/mlを軽症(+正常)群の3群に分け、長期術後 重症群と長期術後中等症群、長期術後重症群と長期術後 軽症(+正常)群とを比較し、各群間における改善に関わ る因子について検討した。  検討項目は年齢、性別、腫瘍径(最大径)、Knosp分類 (grade 0-2 / grade 3-4)、MIB-1 index、下垂体卒中の有 無(臨床的および組織学的所見を含む)、腫瘍の性状(嚢胞 性/充実性)、腫瘍摘出率(全摘出/非全摘出)、術前視 野障害の有無、術前IGF-1 SD-S、長期術後IGF-1 SD-S の計11項目とした。またこの際IGF-1 SD-SはIsojima ら4)の算出方法を参考とした。 3.結  果 ⑴GH頂値9.0ng/mlを閾値に「重症群」と「非重症群」 の2群に分けた場合、術直後に重症aGHDであった 150例を長期観察し1–2年後に同様に重症と判定され たものは105例(70.0%)、非重症に改善した症例は45 例(30.0%)であった。(図1-A)  GH分泌能に影響する因子を検討すると「年齢(60 歳以上)」(P<0.05)、「術前IGF-1 SD-S低値」(P< 0.05)、「長期術後IGF-1 SD-S低値」(P<0.01)、「嚢 胞性腺腫」(P<0.05)の4因子に有意差を認め、「年 齢(60歳以上)」、「術前IGF-1 SD-S低値」、「長期術後 IGF-1 SD-S低値」の3因子はGH分泌能が改善しづら い因子であり、「嚢胞性腺腫」は改善が生じやすい因子 であった(表1)。 ⑵以上の2群の分類のほかに、GH頂値9.0–16.0ng/ml の中等症群を加え、「重症群」、「中等症群」「軽症(+正 常)群」の3群に分けて検討を行うと、術後1–2年目 に重症群(頂値≦9.0ng/ml)に分類されたものが105例 (70.0%)、中等症群(頂値>9.0ng/ml、≦16.0ng/ml) 28例(18.7%)、軽症(+正常)群(頂値>16.0ng/ml)17 例(11.3%)であった。(図1-B)  上記3群について「重症群」と「中等症群」を比較 すると、GH分泌能が回復しやすい因子として「嚢胞 性腺腫」(P<0.05)、逆に回復しづらい因子として「年 齢(60歳以上)」(P<0.05)、「術前IGF-1 SD-S低値」 (P<0.05)が挙げられた(表2-A)。また「重症群」と 「軽症(+正常)群」の比較では、回復しやすい因子は認 めず、回復しづらい因子として「術前IGF-1 SD-S低 値」、「長期術後IGF-1 SD-S低値」(共にP<0.01)の2 因子で有意差がみられた(表2-B)。

(13)

図 1 A B 表 1.重症群(GH 頂値≦9.0)と非重症群(GH 頂値>9.0ng/ml)間での各因子の比較 重症群(n=105) 非重症群(n=45) 年齢(60 歳以上) 43.8% 24.4% P<0.05 性別(M:F) Male 55.2% Male 42.2% NS 腫瘍径(30mm 以上) 41.6% 33.3% NS Knosp Grade K3-4 : 47.6% K3-4 : 40.0% NS MIB-1 index 平均 1.690±0.889 平均 1.760±1.124 NS 嚢胞性/充実性 Cyst 11.9% Cyst 30.0% P<0.05 摘出率 全摘 73.1% 全摘 74.4% NS 下垂体卒中 あり 11.4% あり 13.3% NS 術前視機能障害 あり 71.3% あり 68.6% NS 術前 IGF-1 SD-S 平均 −1.644±1.452 平均 −0.707±1.140 P<0.05 長期術後 IGF-1 SD-S 平均 −1.845±1.409 平均 −1.032±1.094 P<0.01 表 2-A.重症群(GH 頂値≦9.0)と中等症群(GH 頂値 9.0 ∼ 16.0ng/ml)間での各因子の比較 重症群(n=105) 中等症群(n=28) 年齢(60 歳以上) 43.8% 17.9% P<0.05 性別(M:F) Male 55.2% Male 42.9% NS 腫瘍径(30mm 以上) 41.6% 32.1% NS Knosp Grade K3-4 : 47.6% K3-4 : 39.3% NS MIB-1 index 平均 1.690±0.889 平均 1.625±1.077 NS 嚢胞性/充実性 Cyst 11.9% Cyst 32.0% P<0.05 摘出率 全摘 73.1% 全摘 76.9% NS 下垂体卒中 あり 11.4% あり 17.9% NS 術前視機能障害 あり 71.3% あり 63.6% NS 術前 IGF-1 SD-S 平均 −1.644±1.452 平均 −0.921±1.172 P<0.05 長期術後 IGF-1 SD-S 平均 −1.845±1.409 平均 −1.278±1.056 NS 表 2-B.重症群(GH 頂値≦9.0)と軽症(+正常)群(GH 頂値>16.0ng/ml)間での各因子の比較 重症群(n=105) 軽症(+ 正常)群(n=17) 年齢(60 歳以上) 43.8% 35.3% NS 性別(M:F) Male 55.2% Male 41.1% NS 腫瘍径(30mm 以上) 41.6% 35.3% NS Knosp Grade K3-4 : 47.6% K3-4 : 41.1% NS MIB-1 index 平均 1.690±0.889 平均 1.982±1.196 NS 嚢胞性/充実性 Cyst 11.9% Cyst 26.7% NS 摘出率 全摘 73.1% 全摘 70.6% NS 下垂体卒中 あり 11.4% あり 5.9% NS 術前視機能障害 あり 71.3% あり 76.9% NS 術前 IGF-1 SD-S 平均 −1.644±1.452 平均 −0.353±1.039 P<0.001 長期術後 IGF-1 SD-S 平均 −1.845±1.409 平均 −0.641±1.067 P<0.01

(14)

4.考  察  非機能性下垂体腺腫は一般に手術時は視交叉を圧迫す るmacroadenomaで、多くの症例ですでに術前から下垂 体前葉機能分泌低下症を伴うことが多い5)、6)。なかでも 成長ホルモン分泌障害の頻度は高く1)、結果として術後 のQOL低下の原因にもなっている7)。しかしこの下垂体 腺腫術後のGH分泌不全の経時的変化、また改善・非改 善に関わる因子についてこれまでに十分な報告はない。 またaGHDの重症度の診断として本邦ではGHRP-2負 荷テストが広く用いられるようになってきているが、成 人では重症GHDのみが判定可能になっている2)。この ため>9.0ng/mlの症例の中には軽度~中等症のGHDの 症例も含まれてしまうのが現状である。今回小児におけ るGHD判定基準3)であるGH頂値9.016.0ng/mlの中 等症を成人に用いた場合の特徴についても検討した。  今回の検討では、術直後にはGHRP-2負荷試験で AGHDの検査所見であっても術後1–2年の経過で同負荷 試験を再施行するとGH頂値>9.0ng/mlに反応するもの が30.0%、さらに>16.0ng/mlのGH分泌能の十分な回 復を認めるものが11.3%で見られた。このことから術直 後のGHRP-2負荷試験からGH分泌能が低下していて も、臨床症状に乏しい場合には、たとえ他の検査でsGHD と診断されても1–2年間は経過を観察すべきかと考えら れた。  このようなGH分泌能の自然回復が期待できるのは「嚢 胞性腺腫」に多く、本検討でも「嚢胞性腺腫」のみがGH 分泌能の回復に関連する唯一の有意な予測因子であっ た。この因子は3群に分けた場合でも有意な予測因子で あった。「嚢胞性腺腫」では手術の際の腫瘍の減圧が実質 性腫瘍に比べ容易であり、同時に手術操作による残存正 常下垂体への損傷も実質性腫瘍に比べ軽度であることが 予想され、結果、GH分泌能の回復が見込まれると推察 される。  一方、術前からIGF-1 SD-S低値を示す重症例と考えら れる症例や術後1–2年を経過してもIGF-1 SD-Sが低値 を示す症例、また60歳以上の症例ではGH分泌能の改 善は期待されない結果であった。IGF-1 SD-Sはその数 値のみでGH分泌能を評価できるものではないが3)、術 前および術後1–2年を経過した時点でのIGF-1 SD-Sが 低値である症例ではGH分泌能が低下している可能性が 極めて高い可能性があることを念頭に置くべきであると 思われた。  60歳以上の群については、加齢に伴った生理的な前葉 機能低下を基礎に持つことにより長期観察でもGH分泌 能改善が不良であることが推測された8) 結  語  非機能性下垂体腺腫での術後長期の経過でGH分泌 能の改善に関わる因子について検討した。今回従来の分 類法に加え、小児における中等症と軽症の境界値である GHRP-2負荷試験時のGH頂値16.0ng/mlを用い、aGHD 中等症群を設け3群間として比較、検討し新たな知見を 得たので報告した。 文  献

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3)成長ホルモン分泌不全性低身長症の診断の手引き(平 成24年度改訂):厚生労働科学研究費補助金難治性 疾患克服研究事業間脳下垂体機能障害に関する調査研 究班 平成24年度 統括・分担研究報告書 2013 4)Isojima T, Shimatsu A, Yokoya S, Chihara K, Tanaka

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5)Sassolas G, Charzot FB, Jaquet P, Bachelot I, chanson P, Rudelli CC, Tauber JP, Allannic H, Bringer J, Rou-daut N, Rohmer V, Roger P, Latapie JL, Reville P, Leute-negger M: GH deficiency in adults; an epidermiological approach. Eur J Endocrinol, 1999; 141: 595–600. 6)Hartman ML, Crowe BJ, Biller BM, HoKK,

Clem-mons DR, Chipman JI; HyposCCS Advisory Board; HypoCCS Study Group: Which patients do not require a GH stimulateon test for the diagnosis of adult GH de-ficiency? J Clin Endocrinol Metab, 2002; 87: 477–485. 7)Kargi AY, Merriam GR: Diagnosis and treatment of

growth hormone deficiency in adults. Nat Rev Endo-crinol, 2013; 9: 335–345.

8)Jahangiri A, Wagner JR, Han SW, Tran MT, Miller LM, Chen R, Tom MW, Ostling LR, Kunwar S, Blevins L, Aghi MK: Improved versus worsened endocrine func-tion after transsphenoidal surgery for nonfuncfunc-tioning pituitary adenomas: rate, time course, and radiological analysis. J Neurosurg, 2016; 124: 589–595.

(15)

傍鞍部囊胞性疾患の診断と治療

黒﨑 雅道  小椋 貴文  中島 定男  吉岡 裕樹

神部 敦司  仲山美名子  坂本  誠  渡辺 高志

鳥取大学医学部脳神経医科学講座 脳神経外科学分野 はじめに  頭蓋咽頭腫やラトケ囊胞などの傍鞍部囊胞性疾患にお いて、術前に診断の困難な症例を経験することがある。 疾患により手術方法が異なる場合もあり、術前画像診断 は重要となるが、その際の有用な所見を知ることは大切 である。今回、術前診断と術後病理所見とが異なった症 例について検討を行った。 1.対象と方法  2001年1月から2016年2月までに、当施設において、 経鼻的経蝶形骨洞手術を施行した連続214症例のうち下 垂体腺腫を除く囊胞性疾患を対象として、術前診断(主に 画像診断)と術後病理所見とが異なった症例を中心に後 方視的検討を行った。 2.結  果  最終診断の結果、214例中31例(14%)が囊胞性疾患で あり、その内訳は、ラトケ囊胞21例、くも膜囊胞4例、 頭蓋咽頭腫3例、トルコ鞍部黄色肉芽腫3例であった。  この31症例中、術前と術後で診断が異なった症例は5 例であり、表1に示したように、最終診断は、頭蓋咽頭 腫→ラトケ囊胞1例、ラトケ囊胞→くも膜囊胞1例、下 垂体腺腫→頭蓋咽頭腫1例、ラトケ囊胞→頭蓋咽頭腫1 例、ラトケ囊胞→トルコ鞍部黄色肉芽腫1例となった。 3.症例呈示(症例 4)  症例は73歳、男性。2008年11月頃、両側視力低下・ 視野狭窄あり、近医受診。頭部MRIにて鞍上部囊胞性病 変を認め、開頭摘出術を施行された(病理診断はラトケ囊 胞)。術翌日から視機能は改善したが、2ヵ月後に再び視 力低下・視野狭窄が出現し、MRIにて囊胞の再発を認め たため、当科紹介となった(図1A、B)。拡大経蝶形骨洞 法にて囊胞壁を可及的に摘出した。術中迅速病理所見は ラトケ囊胞であり、視交叉に癒着している部分は残存さ せた。最終病理診断は扁平上皮化生を伴うラトケ囊胞で あった(図1C)。術後、視力・視野障害は改善し、画像 上も病変は視交叉下面に一部認めるのみであったが(図 2A、C)、2年後のfollow-up MRIにてこの部分に充実性 の腫瘤性病変を認めたため(図2B、D)、頭蓋咽頭腫の治 療に準じてVMAT(強度変調回転原体照射50.4Gy)を用 いた定位放射線治療を行った。その後のfollow-up MRI で腫瘍はほぼ消失し、新たな下垂体機能不全も認めてい ない。 表 1.術前後で診断の異なった傍鞍部囊胞性疾患症例 症例 術前診断 術後診断 1 頭蓋咽頭腫 ラトケ囊胞 2 ラトケ囊胞 くも膜囊胞 3 下垂体腺腫 頭蓋咽頭腫 4 ラトケ囊胞 頭蓋咽頭腫 5 ラトケ囊胞 トルコ鞍部黄色肉芽腫 図 1.症例 73 歳男性(症例 4) 鞍上部囊胞再発時の MRI A: 造影 T1 強調画像(冠状断) B: 造影 T1 強調画像(矢状断)

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4.考  察  術前のMRI画像では、囊胞内容液の信号強度、囊胞壁 の増強効果の有無、石灰化の有無、視索の浮腫(T2強調 画像で高信号)等の所見を総合的に判断することが、傍鞍 部囊胞性疾患の鑑別診断において大切となる。  Nagahataら1)は、8例の頭蓋咽頭腫、15例の下垂体 腺腫(視神経圧迫例)、6例の鞍結節部髄膜腫のMRIを調 べたところ、8例中5例の頭蓋咽頭腫症例においてのみ 視索に沿った浮腫(T2強調画像にて高信号域)がみられ たとし、これを頭蓋咽頭腫に特徴的な所見として報告し た。その機序としては腫瘍自体、あるいは漏出した囊胞 内容物により惹起された炎症反応の関与が考えられた。 Saekiら2)50例の下垂体部疾患での検討では、頭蓋咽 頭腫だけでなく、下垂体腺腫や胚細胞腫瘍や悪性リンパ 腫でも同様の所見がみられた。そのため、彼らは腫瘍の 種類に関係なく、くも膜下腔への間質液の排出が病巣に より堰きとめられ、視神経路周囲のVirchow-Robin腔が 拡張することが浮腫の発生に関連していると推察してい る。われわれも炎症を伴ったラトケ囊胞等においてこの 所見がみられることを経験しており3)、必ずしも頭蓋咽 頭腫例に特徴的な所見とは言えないようである。  ラトケ囊胞では周囲組織の炎症を伴うことが多く、炎 症の影響で囊胞壁の上皮の形態が変化することが知ら れている。Hamaら4)は、扁平上皮化生を伴う場合に は慢性期の炎症所見を見ることが多いと報告している。 MRI所見では、囊胞内容液がT1強調画像で、等あるい は高信号のもので炎症を伴い、不可逆性の下垂体機能低 下症を起こしやすい5)。丹羽ら6)は、ラトケ囊胞のMRI における囊胞壁の増強効果と病理組織学的所見の関連性 について調べ、壁が厚く造影された症例の囊胞壁は組織 学的に重層扁平上皮あるいは慢性の炎症細胞の浸潤が認 められたと報告している。  ラトケ囊胞のうち扁平上皮化生の強いものでは、腫瘍 性病変である頭蓋咽頭腫との鑑別が必要となる。その合 併例やciliated craniopharyngiomaなどの移行症例も報 告されており、病理組織学的診断も困難な症例があり、 長期にわたっての注意深い経過観察が必要となる7)-9) 提示症例は、当初、扁平上皮化生を伴うラトケ囊胞と診 断していたが、臨床経過や画像所見から総合的に判断し て、頭蓋咽頭腫であったと考えられた。

 トルコ鞍黄色肉芽腫(Xanthogranuloma of the sellar region)はコレステリン結晶の沈着、泡沫細胞の集簇、慢 性炎症細胞浸潤、ヘモジデリン沈着などからなるトルコ 鞍部の肉芽腫性病変である。以前は変性した頭蓋咽頭腫 と考えられていたが、特有の臨床病理学的特徴をもち、別 のカテゴリーに入る疾患として2000年の脳腫瘍WHO 分類に加えられた10)。頭蓋咽頭腫やラトケ囊胞などの組 織内出血や炎症などに対する組織反応としてあらわれる 稀な病態である10)、11)とか、ラトケ囊胞から頭蓋咽頭腫 へ移行期の表現型であるといった説もあり9)、その発生 機序に関してはいまだ議論の余地がある。  MRI所見としては、T1強調画像では高信号、T2強 調画像で種々の信号強度を呈することが知られているが 10)、11)、われわれの経験では、囊胞周囲のhemosiderin rimや下垂体卒中例にみられる隣接硬膜や蝶形骨洞の粘 膜肥厚12)が特徴的な所見と考えている。  囊胞性疾患の治療に関しては、囊胞壁の部分摘出のみ でよいのか、全摘出が必要なのか、囊胞開放のみでよい のか、周囲脳槽との交通が必要となるのか等々、疾患に より異なる。例えば、くも膜囊胞では、囊胞内容液は通 常water intensityとなるが、囊胞内容液の吸引のみでは 再発しやすいため、同様の信号強度を呈するラトケ囊胞 症例との鑑別が重要となる。このように、治療方針を立 てるうえでも術前の正確な診断が大切となる。 文  献

1)Nagahata M, Hosoya T, Kayama T, Yamaguchi K. Ede-ma along the optic tract: A useful MR findings for the diagnosis of craniopharyngiomas. Am J Neuroradiol. 1998; 19: 1753–7.

図 2.症例 4 の術後 MRI(造影 T1 強調画像)

2年後に視交叉下面に充実性の腫瘤性病変を認めた。

A, C: 術直後 B, D: 術 2 年後

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2)Saeki N, Uchino Y, Murai H, Kubota M, Isobe K, Uno T, Sunami K, Yamaura A. MR imaging study of edema-like change along the optic tract in patients with pitu-itary region tumors. AJNR Am J Neuroradiol. 2003; 24: 336–42.

3)黒﨑雅道,浅枝正浩,石橋美名子,紙谷秀規,渡辺 高志,視神経路に浮腫を生じたラトケ囊胞症例につい て,CI研究,2006; 28: 149–54.

4)Hama S, Arita K, Nishisaka T, Fukuhara T, Tomina-ga A, Sugiyama K, Yoshioka H, Eguchi K, Sumida M, Heike Y, Kurisu K. Changes in the epithelium of Rathke cleft cyst associated with inflammation. J Neurosurg. 2002; 96: 209–16.

5)Nishioka H, Haraoka J, Izawa H, Ikeda Y. Magnetic resonance imaging, clinical manifestations, and man-agement of Rathke’s cleft cyst. Clin Endocrinol (Oxf). 2006; 64: 184–8.

6)丹羽 潤,田邊純嘉,伊林至洋,端 和夫,佐藤昌 明,ラトケ囊胞の臨床病理学的検討:MRIにおける 囊胞壁のエンハンス効果と病理組織所見の関連につい て,脳神経外科,1996; 24: 125–33.

7)Oka H, Kawano N, Yagishita S, Kobayashi I, Saegusa

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F, Yoshioka H, Sumida M, Kanou Y, Yajin K, Ogawa R. Thickening of sphenoid sinus mucosa during the acute stage of pituitary apoplexy. J Neurosurg. 2001; 95: 897–91.

Figure 1.  The pre-operative MRI of the patient presented in the  representative case demonstrating a macroadenoma  with suprasellar extension (A)
Figure 2.  The intraoperative inspection of the residual pituitary  gland with the rigid endoscope (A) and with the  flex-ible videoscope under the NBI mode (B)
Table 1. Clinical characteristics of the patients with headache
Table 2. Radiological characteristics of the patients with headache
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参照

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