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Ⅰ 型胃神経内分泌腫瘍 ( 胃 NET) と A 型胃炎 長岡中央綜合病院佐藤祐一 要旨 萎縮性胃炎を背景に発生する Ⅰ 型胃 NET は 腫瘍径は小さく多発性であり 組織学的 にも低悪性度で 予後がよいのが特徴とされる 一方 リンパ節転移や肝転移を来たす Ⅰ 型胃 NET が低頻度ながら存在し そ

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Academic year: 2021

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Ⅰ 型 胃 神 経 内 分 泌 腫 瘍 ( 胃 NET) と A 型 胃 炎 長 岡 中 央 綜 合 病 院 佐 藤 祐 一 要 旨 ○ 萎 縮 性 胃 炎 を 背 景 に 発 生 す る Ⅰ 型 胃 NET は 、 腫 瘍 径 は 小 さ く 多 発 性 で あ り 、 組 織 学 的 に も 低 悪 性 度 で 、 予 後 が よ い の が 特 徴 と さ れ る 。 ○ 一 方 、 リ ン パ 節 転 移 や 肝 転 移 を 来 た す Ⅰ 型 胃 NET が 低 頻 度 な が ら 存 在 し 、 そ の 危 険 因 子 と し て 、 ① 腫 瘍 径 10m m 以 上 ② Ki67 index 高 値 ③ 固 有 筋 層 以 深 の 深 部 浸 潤 、 な ど の 臨 床 的 特 徴 が 挙 げ ら れ て い る 。 ○A 型 胃 炎 は 、 特 徴 的 な 拡 大 内 視 鏡 像 と し て 、 保 存 さ れ た 血 管 の ネ ッ ト ワ ー ク 像 と 腺 管 開 口 部 の 消 失 が 認 め ら れ 、 ま た 自 己 免 疫 性 甲 状 腺 炎 を 合 併 す る 例 が あ る こ と に 注 意 す る 。 さ ら に 除 菌 判 定 の 際 に は 、 尿 素 呼 気 試 験 で 偽 陽 性 に な る 場 合 に 注 意 し な く て は な ら な い

(2)

胃 NET( Neuroendocrine tumor; 神 経 内 分 泌 腫 瘍 ) の 臨 床 分 類

胃 NET( Neuroendocrine tumor; 神 経 内 分 泌 腫 瘍 ) は そ の 発 生 の 背 景 の 相 違 に よ り 、

Ⅰ 型;萎 縮 性 胃 炎 に 合 併 す る 胃 NET、Ⅱ 型 ; 多 発 性 内 分 泌 腫 瘍 症 1 型( multiple endocrine

neoplasm syndrome type1 )/Zollinzer-Ellison 症 候 群 に 合 併 す る 胃 NET、Ⅲ 型 ;散 発 性

胃 NET の 3 種 類 に 分 類 さ れ る ( 1 )。臨 床 的 特 徴 と し て 、 Ⅰ 型 、Ⅱ 型 は 、 E C L 細 胞 由 来

の 腫 瘍 で 、 高 ガ ス ト リ ン 血 症 を 合 併 し 、 腫 瘍 径 は 小 さ く 多 発 性 で 、 予 後 が よ い の に 対 し 、

Ⅲ 型 は 血 中 ガ ス ト リ ン 値 は 正 常 で 、 単 発 で 大 き く 、 予 後 が 悪 い 。 ま た 、 3 つ の タ イ プ の 中

で は Ⅰ 型 胃 NET が 最 も 頻 度 が 高 い (表 1 )。

(3)

Ⅰ 型 胃 NET の 大 部 分 は A 型 胃 炎 ( 自 己 免 疫 性 胃 炎 ) が 背 景 疾 患 に あ り 、 本 邦 に お い て

も 胃 NET の 87.1% に A 型 胃 炎 が 認 め ら れ た (2)。そ の 一 方 、H.pylori 感 染 に よ る 萎 縮 性 胃

炎 の 関 与 も 示 唆 さ れ て い る(3,4)。ま た 2010 年 の WHO 分 類 (4)で は 、NET を 核 分 裂 数 と

Ki-67 指 数 に よ る 組 織 学 的 grading に よ っ て 、 NET G1 (carcinoid), NET G2,NEC

(Neuroendocrine carcinoma; large cell or small cell type;G3 に 相 当 )、MANEC (mixed

adeno-neuroendocrine carcinoma)、Hyperplastic and preneoplastic lesion に 分 類 す る よ

う に な っ た 。 Ⅰ 型 胃 NET の 多 く は NETG1 で あ る 。 Ⅰ 型 胃 NET の 内 視 鏡 的 特 徴 と 診 断 ・ 治 療 I 型 胃 NET は 粘 膜 深 層 部 の 内 分 泌 細 胞 か ら 発 生 し 、 次 第 に 粘 膜 下 層 に 向 か っ て 膨 張 性 に 発 育 す る と 考 え ら れ 、 粘 膜 下 腫 瘍 様 の 形 態 を 呈 す る 。 一 般 的 に 、 表 面 粘 膜 は 正 常 か ら 黄 色 調 の 色 調 で 、 大 き く な る に つ れ 中 心 陥 凹 ( と き に 潰 瘍 ) や 発 赤 、pit の 拡 大 ・ 消 失 や 血 管 走 行 の 異 常 像 を 認 め る よ う に な る(5)。通 常 は 、生 検 組 織 で NET の 診 断 は 可 能 だ が 、 EUS-FNA も 有 用 で あ る ( 6)。 治 療 の ア ル ゴ リ ズ ム を 図 1 に 示 す ( 7) 。 Ⅰ 型 胃 NET の 場 合 、 腫 瘍 径 ・ 個 数 ・ 浸 潤 度 ・ リ ン パ 節 転 移 の 有 無 に よ り 治 療 を 選 択 す る が 、 元 々 予 後 が よ い 腫 瘍 な の で 、 小 さ い も の は 経 過 観 察 で も よ い と さ れ て い る 。 ま た 、 内 視 鏡 治 療 に 関 し て 、EMR で は 切 除 断 端 が 陽 性 に な る こ と が 多 い が 、ESD は 粘 膜 下 層 へ の 浸 潤 が あ っ て も 腫 瘍 境 界 の 確 保 が 容 易 な た め 完 全 切 除 率 が 高 く 、 そ の 有 用 性 が 示 唆 さ れ て い る(8)。

(4)

図 1 . Ⅰ 型 胃 NET の 治 療 ア ル ゴ リ ズ ム 最 近 の 報 告 か ら 見 た Ⅰ 型 胃 NET の 臨 床 的 予 後 我 々 が 行 っ た 、 本 邦 で の Ⅰ 型 胃 NET の 検 討 ( 9,10) で は 、 固 有 筋 層 以 深 の 浸 潤 は 1 例 の み (1/64= 1.6% ) で 、 脈 管 侵 襲 は 8 例 ( 8/82= 9.8% ; リ ン パ 管 /静 脈 と も 陽 性 は 3 例 、 リ ン パ 管 3 例 、静 脈 2 例 )で あ り 、リ ン パ 節 転 移 は 1 例( 1/82= 1.2% )で 、遠 隔 転 移 例 は な か っ た 。 ま た 疾 患 関 連 死 亡 例 は 1 例 も な か っ た 。 し か し 、 最 近 の 報 告 で は 、 Ⅰ 型 胃 NET で も G3 症 例 や リ ン パ 節 転 移 ・ 遠 隔 転 移 が 認 め ら れ て お り (11-17)、そ れ で は 、① 腫 瘍 径 10m m 以 上 ② Ki67 index 高 値( G3 は 特 に 注 意 が 必 要 ) ③ 固 有 筋 層 以 深 の 深 部 浸 潤 、 の 3 つ が 現 段 階 で の リ ン パ 節 転 移 ・ 肝 転 移 の 危 険 因 子 と 考 え ら れ て い る ( 表 2)。

(5)

表 2 Ⅰ 型 胃 NET の 臨 床 的 特 徴 A 型 胃 炎 を め ぐ る 最 近 の 話 題 H.pylori感 染 率 の 低 下 に 伴 い 、A 型 胃 炎 に そ の も の 自 体 に も 最 近 、注 目 が 集 ま っ て い る 。 A 型 胃 炎 で は 、 抗 壁 細 胞 抗 体 に よ り 炎 症 が 惹 起 さ れ , 胃 体 部 の 胃 底 腺 の 壁 細 胞 の み な ら ず 主 細 胞 を 含 む 胃 底 腺 全 体 が 破 壊 さ れ る 。 そ の た め 、 病 理 組 織 学 的 特 徴 と し て 、 胃 底 腺 の 萎 縮 や 壁 細 胞 の 消 失 が 認 め ら れ 、 炎 症 が 長 期 に 及 ぶ と 腸 上 皮 化 生 が 見 ら れ る よ う に な り 、

さ ら に 非 腫 瘍 性 の 内 分 泌 細 胞 微 小 胞 巣 (endocrine cell micronest; ECM) が 多 発 す る 。

A 型 胃 炎 の 内 視 鏡 的 特 徴 と 言 え ば 、 前 庭 部 に 炎 症 ・ 萎 縮 所 見 が 乏 し く 、 体 部 に 強 い 萎 縮 が 認 め ら れ る 、 い わ ゆ る “ 逆 萎 縮 ” と よ ば れ る 像 が 典 型 的 で あ る 。 一 方 、 拡 大 内 視 鏡 像 で は 、 “ ネ ッ ト ワ ー ク 状 の 毛 細 血 管 像 は 認 め る が ,中 央 の 腺 開 口 部 が 不 明 瞭 な 所 見 ”が 見 ら れ る こ と が 特 徴 的 で あ る( 図 2 )(18)。こ れ は 、粘 膜 全 層 に 炎 症 が 及 ぶ H.pylori 感 染 胃 炎 と 違 い 、A 型 胃 炎 の 場 合 、 粘 膜 深 層 の 腺 部 の 炎 症 と 破 壊 が 進 行 す る 一 方 、 腺 窩 上 皮 部 の 炎 症 は 軽 度 な た め 、 そ の 構 造 が 比 較 的 保 た れ て い る こ と に 由 来 す る と 考 え ら れ る 。

(6)

図 2 .A 型 胃 炎 の 体 部 小 弯 の 拡 大 内 視 鏡 像 と 組 織 像

ま た 、こ れ ま で も A 型 胃 炎 の 患 者 に は 、自 己 免 疫 性 疾 患 を 合 併 す る こ と が 知 ら れ て い た

が 、 一 部 の A 型 胃 炎 は 、 自 己 免 疫 性 多 腺 性 内 分 泌 不 全 症 ( Autoimmune polyendocrine

syndrome (APSs)) の 中 の Type3 B に 含 ま れ 、 自 己 免 疫 性 甲 状 腺 炎 を 合 併 し て い る (19)。

こ の た め 、 甲 状 腺 疾 患 の 患 者 を 診 察 す る 際 に は 、A 型 胃 炎 の 存 在 を 頭 の 片 隅 に 置 い て お く 必 要 が あ ろ う 。 さ ら に 、A 型 胃 炎 の H. pylori感 染 診 断 に お い て は ,H. pylori は 既 に 除 菌 さ れ て い る に も か か わ ら ず ,尿 素 呼 気 試 験 が 偽 陽 性 と な る 点 に 注 意 を 要 す る 。こ れ は A 型 胃 炎 に よ る 無 酸 症 が 原 因 と な っ て 、 本 来 で あ れ ば 胃 酸 で 死 滅 す る よ う な ウ レ ア ー ゼ 産 生 菌 が 胃 液 中 に 存 在 し て い る た め と 考 え ら れ る 。 こ の こ と を 認 識 し て い な い と 、 実 際 は 除 菌 に 成 功 し て い る に も か か わ ら ず 、 レ ジ メ ン を 変 え て 何 度 も 除 菌 治 療 を 行 っ て し ま う 、 い わ ゆ る “ 泥 沼 ” 除 菌 に 陥 る こ と に な る(20)。 こ の 場 合 、 便 中 抗 原 で ピ ロ リ 菌 感 染 を 確 認 す る と と も に 、 A 型 胃 炎 の 合 併 を 疑 っ て 、 抗 壁 細 胞 抗 体 や 血 清 ガ ス ト リ ン 値 を 調 べ る 必 要 が あ る 。

(7)

さ ら に A 型 胃 炎 は 、 Ⅰ 型 胃 NET だ け で な く 、 胃 癌 の 発 生 母 地 に な る こ と か ら 、 A 型 胃

(8)

文 献

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表 1 . 胃 カ ル チ ノ イ ド の 臨 床 的 分 類
図 1 . Ⅰ 型 胃 NET の 治 療 ア ル ゴ リ ズ ム 最 近 の 報 告 か ら 見 た Ⅰ 型 胃 NET の 臨 床 的 予 後   我 々 が 行 っ た 、 本 邦 で の Ⅰ 型 胃 NET の 検 討 ( 9,10 ) で は 、 固 有 筋 層 以 深 の 浸 潤 は 1 例 の み ( 1/64= 1.6% ) で 、 脈 管 侵 襲 は 8 例 ( 8/82= 9.8 % ; リ ン パ 管 / 静 脈 と も 陽 性 は 3 例 、 リ ン パ 管 3 例 、静 脈 2 例
表 2   Ⅰ 型 胃 NET の 臨 床 的 特 徴 A 型 胃 炎 を め ぐ る 最 近 の 話 題 H.pylori 感 染 率 の 低 下 に 伴 い 、 A 型 胃 炎 に そ の も の 自 体 に も 最 近 、注 目 が 集 ま っ て い る 。 A 型 胃 炎 で は 、 抗 壁 細 胞 抗 体 に よ り 炎 症 が 惹 起 さ れ , 胃 体 部 の 胃 底 腺 の 壁 細 胞 の み な ら ず 主 細 胞 を 含 む 胃 底 腺 全 体 が 破 壊 さ れ る 。 そ の た
図 2 . A 型 胃 炎 の 体 部 小 弯 の 拡 大 内 視 鏡 像 と 組 織 像

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