• 検索結果がありません。

仙骨巨大転移をきたした小径腎癌の1例

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "仙骨巨大転移をきたした小径腎癌の1例"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

症例報告

Case Report

仙骨巨大転移をきたした小径腎癌の 1 例

1)松下記念病院泌尿器科,2)松下記念病院臨床検査科

清水 輝記

1)

瀧上 夏未

1)

原田 雄基

1)

川端 健二

2)

落合

1) 要旨: 66 歳,男性.臀部痛を主訴に前医受診.MRI で直径 8cm の仙骨腫瘍あり当院整形外科紹介後,CT で左腎 下極に 2.5cm の腫瘍を認め当科受診.腹部造影 CT では乏血性の腎腫瘍.CT ガイド下仙骨腫瘍生検にて転移 性骨腫瘍と診断.しかし CT ガイド下左腎腫瘍生検では悪性腫瘍の診断は得られなかったが,小径腎癌の骨転 移としてスニチニブによる加療を開始した.しかし,仙骨腫瘍では奏功せず,経過中に 2 度の大量下血あり, 緊急大腸内視鏡検査では直腸背面広範囲に出血を伴う潰瘍性病変あり,仙骨腫瘍直腸浸潤による大量下血と 診断.全身衰弱は進行し,治療開始後 2 カ月で死亡の転帰となった.病理解剖を行った結果は小径腎癌,仙骨 転移,肺転移であった. (日泌尿会誌 111(2):48∼52,2020) キーワード:小径腎癌,仙骨転移 3cm 以下の小径腎癌は一般的に予後良好で転移をき たすことは稀と考えられている.今回,我々は仙骨巨大 転移を契機に発見された小径腎癌を経験したので,若干 の文献的考察を加えて報告する. 患者:66 歳,男性. 主訴:臀部痛,間欠跛行. 既往歴:特になし. 内服薬:セレコキシブ. 現病歴:20XX 年 2 月に臀部痛,間欠跛行を自覚し,4 月に前医を受診.レントゲン,MRI で仙骨腫瘍を認めた ため当院の整形外科へ 5 月に紹介され,CT で左腎腫瘍 を認めたため当科に紹介となった. 初診時現症:身長 166cm,体重 52kg,BMI18.8kg/m2 , ECOG-PS:2. 初診時検査所見:血液検査(初診時). WBC 6,000/μl(Neut 67.1%,Ly20.8%),CRP 7.95mg/ dl,Hb 15.3g/dl,HT 45.9%,PLT 27.6 万,AST 20IU/l, ALT 9IU/l, LDH 223IU/l, ALP 405IU/l, TP 7.7g/dl, Alb 3.6g/dl, Na 133mEq/l, Cl 92mEq/l, K 4.4mEq/l, Ca 10.5mEq/l,BUN 16mg/dl,Cre 0.59mg/dl,eGFR 103.8ml/分. MSKCC 分 類(3/5 点,poor risk)IMDC 分 類(3/6 点,poor risk). 画像所見:腹部造影 CT 検査:造影早期にて淡く造影 される長径 2.5cm の乏血性の左腎腫瘍を認めた(Fig. 1a, b).仙骨腫瘍は最大径 8cm で,同様に造影にて淡く不均 一に造影された(Fig. 1c,d).PETCT 検査:仙骨腫瘍部 位に強い高集積を認め,左腎腫瘍部位には低集積の所見 であった(Fig. 2a). 臨床経過:CT ガイド下仙骨腫瘍生検を施行し原発性 骨腫瘍ではなく転移性骨腫瘍との病理診断を得た(Fig. 2b).引き続き追加検査(CT ガイド下左腎腫瘍生検,右 鼡径リンパ節切除)を施行した.CT ガイド下左腎腫瘍生 検を行ったが,病理結果では悪性の所見を認めなかった. 右鼡径リンパ節摘出検体では,肉眼所見では 3×2×2cm の腫大リンパ節(Fig. 2c)を認め,組織像所見では転移性 のリンパ節で腎癌のリンパ節転移が疑われた(Fig. 2d). 左腎腫瘍から腎癌の組織診断が得られず,再度造影剤を 使用しての CT ガイド下左腎腫瘍生検や,手術による診 断を提案したが,更なる精査を患者が希望せず,PETCT 検査で左腎以外に腫瘍性病変を認めなかったこと,仙骨 腫瘍生検結果が転移性骨腫瘍であったため小径腎癌の骨 転移,リンパ節転移の臨床診断で,スニチニブ 50mg/ 日による治療を開始した.スニチニブを開始するも, Grade3 の肝機能障害が出現し,数日で中止.37.5mg/ 日に減量し再開するも,内服困難となり中止した.1 カ月 受付日:2019 年 7 月 1 日,受理日:2019 年 10 月 29 日 清水輝記:松下記念病院泌尿器科〔〒570―8540 大阪府守口市外島町 5 番 55 号〕 E-mail: [email protected]

(2)

Fig. 1 初診時腹部造影 CT 画像 左腎腫瘍 a 造影早期相 b 造影平衡相 左腎下極に約 25mm の乏血性の腎腫瘍を認めた. 仙骨腫瘍 c 単純相 d 造影平衡相 最大径約 8cm の不均一に造影される仙骨腫瘍を認めた. Fig. 2 追加諸検査 a PET 検査 b CT ガイド下仙骨腫瘍生検 淡明な胞体をもつ 明細胞癌の組織像が大半を占めていた.右鼡径リンパ節 c 肉眼所見 d 病 理組織像 淡明な胞体をもつ明細胞癌の組織像が大半を占めており転移性腫 瘍でリンパ節が置換されていた. 半の経過で,左腎腫瘍は CT 上サイズに変化を認めない が,仙骨腫瘍は明らかな増大を認めた(Fig. 3a,b).経 過中,大量下血を 2 度経験した.下血精査時の造影 CT では,増大した仙骨腫瘍が直腸後面へ浸潤する所見を認

(3)

Fig. 3 仙骨腫瘍の直腸面浸潤画像 造影 CT 画像 a 初診時 b 下血時 短期間に 仙骨腫瘍は急速に増大を認めた.大腸内視鏡画像 c 止血前 d 止血後 出 血を伴う潰瘍性病変に対して電気凝固を施行し,以後下血は寛解した. Fig. 4 病理解剖所見 a 左腎肉眼的所見 b ∼ d 組織学的所見(b 腎腫瘍部 c 肺 d 仙骨 腫瘍)腎腫瘍内においては大半が淡明な胞体をもつ明細胞癌の組織像であり一部に 紡錘形(spindle)細胞の成分を認めた(白矢印).一方で,仙骨部腫瘍および肺転 移巣は大半が紡錘形細胞変化(sarcomatoid change)を遂げていた. めた(Fig. 3b).消化器内科に依頼して緊急の大腸内視鏡 を施行.肛門から 10cm までの直腸面背側に広範囲に潰 瘍性病変と出血を認め(Fig. 3c),可及的に電気凝固止血 を施行.以後下血は寛解した(Fig. 3d).入院経過中,発 熱は持続,全身衰弱,消耗は進行し,治療開始後 2 カ月 後に永眠された. 病理解剖:左腎下極に 2.5cm の腎腫瘍を認め淡明細 胞型の腎細胞癌であった(Fig. 4a).大半が淡明な胞体を

(4)

もつ明細胞癌の組織像であったが一部に紡錘形細胞型の 成分を認めた(Fig. 4b).一方,仙骨部腫瘍および肺転移 巣は紡錘形細胞型(肉腫様癌)変化を遂げていた(Fig. 4c, d). 免疫組織学的には左腎の腫瘍, 仙骨部の腫瘍, 肺 転 移 巣 い ず れ も AE1/AE3(+),CK7(−),CD10 (+),CD13(+)focal,RCC marker(−),villin(−) で一致した.最終病理診断は左腎癌,仙骨転移,肺転移 であった. 3cm 以下の小径腎癌が転移をきたすことは稀で,一般 的に予後良好と考えられている.そのため 2017 年版の腎 癌診療ガイドラインにおいても 4cm 以下の T1a 腎癌症 例に対しては,腎部分切除が推奨され根治的腎摘除術と 同等の制癌性が報告されている1).一方で久米らによる と,165 例の 3cm 以下の小径腎癌の後ろ向き検討におい て 10 例(6.0%)が遠隔転移を認めており2) ,Klatte らは, 2∼3cm の小径腎癌 392 症例の内,20 症例(5.1%)が遠隔 転移を来たしたと報告した3).今回我々は,8cm の仙骨腫 瘍による臀部痛の症状が契機となり発見された小径腎癌 の 1 例を経験した. 小径腎癌の遠隔転移をきたす因子の解析において,腫 瘍内に microvascular invasion を認めることが早期に静 脈血管内やリンパ管内に浸潤し,局所で増大するよりも 早くに転移巣を形成する機序が考えられている2)3) .また, 遠隔転移の分類として診断時に遠隔転移を認める同時性 遠隔転移(synchronous)と診断後に手術などの治療介入 後や Active Surveillance などフォローアップ中に遠隔 転移が出現する異時性遠隔転移(metachronus)に分類さ れる.同時性転移では肉腫様(sarcomatoid)の組織成分 を含む症例が多く報告されており,予後も異時性転移よ り不良であるとされる4)5).Peralta らの報告では,sarco-matoid change を来たした 101 例の腎癌の解析におい て,平均腫瘍サイズは 9.2cm で,3cm 以下の小径腎癌は 1 例もなかったと報告しており6) ,本症例は貴重な症例と 考えられる. 本症例では,同時性転移症例であり治療からの死亡の 転帰までは約 2 カ月と極めて不良な予後であった.病理 組織学的には腫瘍内に明らかな microvascular invasion は認めず,腫瘍内においては大半が淡明な胞体をもつ明 細胞癌の組織像であり一部に紡錘形(spindle)細胞の成 分を認めた.一方で,仙骨部腫瘍および肺転移巣は大半 が sarcomatoid change を遂げておりいわゆる肉腫様癌 化していた.原発巣と転移巣での組織型の異なる組織型 の混在 heterogeneity に関しては,原発巣で紡錘形に形 態変化(grade up)した成分が転移する,あるいは転移巣 で増大する中で形態変化を遂げるという両方の可能性が 考えられた7) が,原発巣においてもわずかに紡錘形の腫瘍 成分を認めることからは grade up した成分が転移を来 たした可能性が示唆された.本症例で貴重な点は,CT ガイド下仙骨腫瘍生検と剖検で,転移先の病理組織を経 時的に 2 度観察できた点で,仙骨腫瘍針生検では淡明細 胞癌の組織像を認めるものの,剖検時には仙骨腫瘍の大 半が grade up した組織である点からは,転移先において より悪性度の高い組織型へと形態変化を来たしながら腫 瘍増大したことが考えられた.このような転移先での病 理組織の grade up が起こる背景因子に関しては更なる 検討が必要である. 治療に関して,一般的には転移性腎癌に対しても原発 巣切除が予後改善に寄与する8) が,本症例では左腎摘出は 生命予後にはあまり寄与しなかったと考えられたため, 手術は行わず,転移性腎癌 stageIV の全身治療として分 子標的薬であるスニチニブを開始したが仙骨腫瘍での response は得られなかった.本邦でも 2018 年 8 月より 中高リスクの腎癌に対する第一選択薬としてニボルマブ とイピリブマブの併用が承認されたことから今後は免疫 チェックポイント阻害剤の早期使用へシフトしていくと 予想される.また,臀部の疼痛に対してはオピオイドの 導入を行うにとどめたが,今回の想定以上の進行性の経 過を踏まえると,仙骨腫瘍に対して疼痛軽減目的,また 腫瘍縮小効果を期待して同部位への放射線照射を当初よ り併用すべきであった. 仙骨巨大骨転移で発見された小径腎癌の経験をしたの で報告した.原発不明の転移性骨腫瘍を認めた場合には 小径腎癌も念頭において精査が必要である.また同時性 遠隔転移性小径腎癌の予後は不良である. 本報告の要旨は第 241 回日本泌尿器科学会関西地方会で発 表した. 1)日本泌尿器科学会:腎癌診療ガイドライン,p 45― 47,2017.

2)Kume H, Suzuki M, Fujimura T, Fukuhara H, Eno-moto Y, Nishimatsu H and Homma Y: Distant me-tastasis of renal cell carcinoma with a diameter of 3 cm or less-which is aggressive cancer? The Journal of urology, 184(1), 64―68, 2010.

3)Klatte T, Patard JJ, de Martino M, Bensalah K, Ver-hoest G, de la Taille A, Abbou CC, Allhoff EP, Carri-eri G, Riggs SB, Kabbinavar FF, Belldegrun AS and Pantuck AJ: Tumor size does not predict risk of me-tastatic disease or prognosis of small renal cell carci-nomas. The Journal of urology, 179(5), 1719―1726, 2008.

4)Dall Oglio MF, Antunes AA, Sarkis AS, Crippa A, Leite KR, Lucon AM and Srougi M: Microvascular tumour invasion in renal cell carcinoma : the most important prognostic factor. BJU Int, 100(3), 552―

(5)

555, 2007.

5)Keskin SK, Msaouel P, Hess KR, Yu KJ, Matin SF, Sircar K, Tamboli P, Jonasch E, Wood CG, Karam JA and Tannir NM: Outcomes of Patients with Re-nal Cell Carcinoma and Sarcomatoid Dedifferentia-tion Treated with Nephrectomy and Systemic Therapies: Comparison between the Cytokine and Targeted Therapy Eras. The Journal of urology, 198(3), 530―537, 2017.

6)de Peralta-Venturina M, Moch H, Amin M, Tamboli P, Hailemariam S, Mihatsch M, Javidan J, Stricker H, Ro JY and Amin MB: Sarcomatoid differentiation in renal cell carcinoma: a study of 101 cases. The American journal of surgical pathology, 25(3), 275―

284, 2001.

7)福田百邦:腎癌の予後規定因子としての原発巣と転 移巣の病理組織学的比較.日泌尿会誌,86,870― 877,1995.

8)Bamias A, Tzannis K, Papatsoris A, Oudard S, Beu-selinck B, Escudier B, Liontos M, Elaidi TR, Chriso-fos M, Stravodimos K, Anastasiou I, Mitropoulos D, Deliveliotis C, Constantinides C, Dimopoulos MA and Bamia C: Prognostic significance of cytoreduc-tive nephrectomy in patients with synchronous me-tastases from renal cell carcinoma treated with first-line sunitinib : a European multiinstitutional study. Clinical genitourinary cancer, 12(5), 373―383, 2014.

SMALL RENAL CELL CARCINOMA PRESENTING WITH HUGE SACRALMETASTASIS: A CASE REPORT Teruki Shimizu1)

, Natsumi Takigami1)

, Yuki Harada1)

, Kenji Kawabata2)

and Atsushi Ochiai1)

1)

Department of Urology, Matsushita Memorial Hospital 2)

Department of Clinical Pathology, Matsushita Memorial Hospital

Abstract:

A 66-year-old man with buttock pain and intermittent claudication visited a nearby doctor. Magnetic resonance im-aging revealed a tumor of 8 cm in diameter in his sacrum. He was referred to our hospital. Abdominal contrast en-hanced computed tomography revealed a small mass of 2.5 cm in diameter on his left kidney and he was diagnosed with metastatic bone disease after needle tumor biopsy. However, needle biopsy of the renal tumor demonstrated no evidence of malignancy. As he rejected further examination, we started treatment using the tyrosine kinase inhibitor sunitinib. However, it had little effect on his sacral metastasis and he developed massive bowel bleeding twice. Exten-sive invasion from the sacral metastasis to the back side of the rectum was found on colonoscopy. The patient died 2 months after the introduction of sunitinib. The final diagnosis based on pathological autopsy was renal cell carcinoma with sacral metastasis.

(Jpn. J. Urol 111(2): 48-52, 2020) Keywords: small renal cell carcinoma, sacral metastasis

Received: July 1, 2019, Accepted: October 29, 2019 ! 2020 The Japanese Urological Association

参照

関連したドキュメント

3 Department of Respiratory Medicine, Cellular Transplantation Biology, Graduate School of Medicine, Kanazawa University, Japan. Reprints : Asao Sakai, Respiratory Medicine,

 6.結節型腫瘍のCOPPとりこみの組織学的所見

、術後生命予後が良好であり(平均42.0±31.7ケ月),多

 局所々見:右膝隅部外側に栂揃頭大の腫脹があ

今回completionpneumonectomyを施行したが,再

添付)。これらの成果より、ケモカインを介した炎症・免疫細胞の制御は腎線維

23mmを算した.腫瘤は外壁に厚い肉芽組織を有して

 1)幼若犬;自家新鮮骨を移植し,4日目に見られる