昭 和35年7月(1960)
二,三 食 品 のtanninに
関 す る顕 微 化 学 的 研 究
(第2報)
足
立
晃 太 郎
亀
井
光
子
秋
山
知
子
各 帯r藩 →←馨 今← 1. 緒 論 1) 前 報 に 於 て,著 者 等 は,食 用 植 物 中.主 とし て 果 実 類 及 び 疏 菜 類 に就 い て,顕 微 化 学 的 方 法(micro chemical method)に 依 つ て,分 類 学 並 び に 組 織 学 の 見 地 か ら植 物 体 内 のtannin分 布 状態 を 研 究 した 。 そ の 結 果 一般 に 皮 部,胚 部,細 胞 膜,維 管 束 部 に 主 とし て tanninの 存 在 を 認 め た 。しか し,あ る種 の 食用 植 物 に あ つ て は,基 本 組 織 内 に 特 殊 の 異 形 細 胞 と して,tan-nin cellを 有 す る こ と及 びtanして,tan-nin細 胞 の形 状 は, 一 般 に柔 組 織(parenchyma)で は 円 形 又 は 楕 円形, 維 管束(vascular bundle)部 で は紡 錘 形 又 は 桿 状 で あ る こ と等 を 認 め た が,本 報 は,前 報 に 引 続 ぎ食 品 中 重 要 な 位 置 を 占 め る 禾 穀 類,救 穀 類 等 に就 い てtan・nin の 分 布 状 態 を 究 明 し よ う と した 。従 来 のtannin分 類 2) 3) 法 とし て はStenhouse-PocterやPerkin-Everest の 分 類 法 等種 々あ るが,い ず れ もtanninの 化 学 構 造 や 性 質 か ら の 分 類 で あ る 。 そ れ 故著 者 等 は種 々の 食用 植 物 に就 き 顕 微 化 学 的 にtanninの 所 在,分 布 状態 及 びtannin細 胞 の 有 無 やそ の 形 状 等 を 究 明 し,組 織 学 及 び 分 類 学 的 に 考 察 し,更 に 分 布 の 形 態 を い くつ か の 型 に 分 類 す る こ と に よつ て,植 物 体 内 に 於 け る tannin分 布 状 態 の共 通 性 及 び 特 異 性 を 導 き出 そ うと 試 み た.併 せ て 渋 柿 の アル コ ール にごよ る脱 渋 中 に 起 る 渋 柿 組 織 内 のchibuolの 状 態 の 変化 に就 い て も究 明 し た 。 H. 実 験 の 部 1)実 験 試 料(A)未 熟i蔵 穀i類
お た ふ く豆,碗 豆,オ ラ ン ダ,絹 爽,い ん げ ん, さ さ げ 。 い ず れ も 昭 和36年6月 ∼8.月 に京 都 市 販 の 新 鮮 物 使 用 。 (B)成 熟F穀 類 大 豆,小 豆,白 小 豆,斗 六 豆,う づ ら,黒 豆,青 u豆,赤 腕 豆 。 い ず れ も昭 和34年 産 で 同 年11月 ∼12月 に京 都 市販 の も の 。 (C)禾 穀 類 ウエ ス タ ン小 麦,ハ ー ドウ イ ン タ ー小 麦,マ ニ ト バ2号,マ ニ トバ3号,ウ ェ ス タ ン ホ ワイ ト。 以 上 昭 和34年,神 戸 日清 製 粉 会 社 よ り求 む 。 内地 小 麦,伊 勢 裸 麦,梗 米,蠕 米 。 以 上 昭 和34年 日本 産 。 (D)柿 富 有 柿,渋 柿 昭 和34年 奈 良 産 。 2)実 験 方 法 9) 前 報 同 様Wisselinghの 実 験 方 法 を 参 考 と した 。 即 ち,寂 穀 類,禾 穀 類 の 切 片 を 作 り之 を 塩 化 第 二 鉄 (FeCl3)の1%水 溶 液 で 呈 色 させ る 。 tanninは 塩 化 第 二 鉄 液 に よつ て 暗 青 色 乃 至 黒 色 を 呈 す るか ら,こ れ を 顕 微 鏡 で観 察 し,tannin分 布 状 態 を 究 明 した 。 次 に 渋 柿 を 用 い て 脱 渋 中 に起 る渋 柿 組 織 内 のshibuoi の状 態 変 化 に 就 き観 察 し た 。渋 柿 の 脱 渋法 に は 湯抜 き, 酒抜 き乾 柿 法 等が 古 来 か ら行 わ れ 進 歩 した も の で は 炭 酸 ガス,エ チ レン ガ ス 等 で ガ ス 抜 を 行 う方 法 等 種 々あ るが,本 実 験 に は 酒 抜 法 を 採 用 した 。 即 ち 一 定 容 器 内 に 渋 柿 を 入 れ,30%ア ル コ ール を 噴 射 後 密 封 し 日数 経 過 に伴 つ て 起 る 脱 渋 中 のshibuolの 状 態 の 変 化 を2 週 間 にわ た り観 察 し た 。 3)実 験 結 果 及 び 考 察 実 験 の 結 果,一 般 に 未 熟 救 穀 類 の 爽(pod)で は 皮 部,維 管 束,細 胞 膜 が 暗 青 色を 呈 し.成 ;.穀 類 で は 種 皮(seed coat)及 び 胚(embryo)が 黒 色 を 呈 し た 。禾 穀 類 で は 糠 層 及 び 胚 がFeCl31/水 溶 液 に 依 つ て 黒 色 を 呈 し。 之 等 の 部 分 に集 中 的 にtanninが 存 在 釜本 学 教 授 鞭 本 学 副 手(昭 和32年 度 卒 業 生)懸 暑昭 和34年 度 本 学 卒 業 生
一一20一 食 物 学 会 誌 ・第8号 し てい る も の と考 え られ る。 これ を 各 々の 食 品 に つ い て示 せ ばTable 1.の よ うに な る。 尚 顕 微 鏡 写 真 に よ つ て も 示 し た 。 Table 1.塩 化 第 二 鉄 液 で 呈 色 した 組 織 と写 真 番 号 食 品 名 a.夫J. 穀 類 お た ふ く豆 豆 ダ 爽 ん げ 纐 豆 豆 豆 豆 ら 豆
"
庸
さ
葡
小
六
つ
碗 オ 絹 い さ 成 大 小 白 斗 う 黒 凪 FeCls液 で 呈 色 した 組 織{襲
㌻ 欝 細撒 膜維散
種 皮,細 胞 膜 〃 〃 皮 部,細 胞 膜,維 管 束 胚,種 皮,維 管 束 種 皮,胚, 種 皮,胚,細 胞 膜, 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 種 皮,細 胞 膜,維 管 束 種 皮,胚,維 管 束 写 真 食 品 名 青 碗 豆 赤 碗 豆 C.禾 穀i類 ウ エ ス タ ン 小 麦 ハ ー ドウ ィ ン タ ー小 麦 マ ニ ト バ 2 号 マ ニ ト バ 3 号 ウ エ ス タ ン ホ ワ イ ト 内 地 小 麦 伊 勢 裸 麦 梗 米 濡 米 FeCl3液 で 呈 色 した 組 織 月不, 糸田1抱冠莫, 種 皮 〃 〃 〃 糠 層,胚 芽 〃 ii 〃 〃 〃 〃 〃 // 〃 ク 〃 〃 胚 芽,糠 層 〃 〃 写 真 Fig.1 Fig.2 Fig.3 Fig.4 FeCls 1%水 溶 液 で 黒 色 を 呈 した 組 織 をTable 1. に 示 し,こ れ ら の 組 織 にtanninの 存 在 してい る こ と が 明か とな つ た わ け で あ るが,更 に 詳 細 にtanninの 分 布 す る組 織,tanninの 形 状 等 を 組 織 学 的 に 追 求 し た 結 果 次 の こ とが 認 め られ た 。 (A) 夫 熟 救 穀 類 「お た ふ く 豆 」 の 爽 で は 皮 部,柔 組 織 の 柔 細 胞 (parenchymatous cell)膜 及 び維 管 束 の,種 実 で は 種 皮 に 主 と して 含 まれ,種 実 の 大 部 分 を 占 め る 子 葉 (cotyledon)部 は 細 胞 膜 にわ つ か に認 め られ る 程 度 で あ る 。 こ の 豆 で は 主 と して 爽 の 皮 部 及 び 爽 と種 皮 の 一 端 に あ る膀(目n .avel)の 接 着 部 に集 中 的 に分 布 し てい る こ とが 認 め られ る 。 「碗 豆 」 「オ ラ ン ダ」 は種 皮 及 び柔 細 胞 膜 及 び 維 管 束 に 認 め られ る。 「い ん げ ん」 は 爽 で は 表 皮 組 織 に 含 まれ るが,主 と して 維 管 束 に 分 布 し てい る 。 「さ さ げゴ の 子 葉 部 で は柔 細 胞 膜 にわ つ か に 認 め られ るだ け で あ る が,種 皮 及 び 胚 部 に 円形 又 は 楕 円形 のtannin細 胞 様 物 質 が 集 中 的 に存 在 し て い る のが 認 め られ る。 以 上 未 熟 寂 穀 類 につ い て は, 一 般 に種 皮,維 管 束,胚 にtanninを 認 め るが,種 子 (seed)の 大 部 分 を 占 め る子 葉 部 には 殆 ん ど認 め ら れ な い 。 (B) 成 熟 救 穀 類 豊 救 類 の種 子 は 内 容 物 が全 部 胚 子 に属 し,胚 子 の 子 葉 部 が 発 達 して い るも の で,胚 乳 部 を 有 しな い の が 特 徴 で あ り,大 体 種 皮,子 葉,胚 の 三 部 よ りな る。 大 豆, 小 豆,斗 六豆,碗 豆 等 い つ れ も主 と して 種 皮, 胚 に tanninが 分 布 し,子 葉 部 で は 柔 細胞 膜 にわ つ か に 認 め られ る。 「うづ ら」.黒 豆 で は 種 皮,維 管 束,に 主 と して 分 布 して い る。 種 皮 の 一 端 に あ る 日の 部 に も 認 め られ る。 目は 子 実 と爽 の 接 着 部 で 発 育 中 この 部 分 を 通 して 養 分 の 伝 達 が 行 わ れ るわ け で あ るが,目 の 一 端 に 珠 孔(micropyle)と 称 す る小 孔 が あ り,発 芽 の 際 こ の 部 分 か ら根 が 現 れ る。 この よ うな 部分 や 胚 に tanninが 分 布 して い る こ とは 新 細 胞 の 形 成 に. tallni11 が 関 係 し て い るの で は な か ろ うか と推 察 され るわ け で あ る。 (C) 禾 穀 類 穀 類 は 禾 本 科 植 物(gramineae)の 種 子(seed) で 外 部 は二 枚 の 俘(穎glumes)に 依つ て 包 まれ て い る。 本 実 験 で は 俘 を 分 離 した 種 実 を 使 用 した 。Fig・1 ∼4に 示 す よ うに 麦 類 は い ず れ も 大 体 同 じ傾 向を 示 し て い る。 即 ちtanninは 糠 層及 び 胚 芽 部 に主 と し て分 5) 布 し て い る が,更 に 麦 類 の 構 造 を 麩(bran)一 外 皮 (outer envelope)(表 皮,外 果 皮,内 果 皮)と 種 皮 (外 胚 季し 糊 粉 層);胚;内 胚 乳(endosperm)の 三 部 に 分 け て 考 察 す る と,品 種 に よ り多 少 の 相 違 は あ る昭 和35年7月(1960) が 一 般 的 傾 向 と して 麩 の うち 角皮,表 皮(Cuticle), 外 果 皮(epicarp)に は ご く稀 れ に しか 認 め られ ず, 主 と して 内 果 皮(endocarp)及 び 種 皮 の 横 走 細 胞 や 管 状 細 胞 層 に紡 錘 形 或 は 円形 のtannin細 胞 様 物 質 が 認 め られ る(Fig.1∼3)。 又 縦 溝 部 の 種 皮 及 び 胚 盤 皮膜 とそ の 周 辺 柔 組 織 に 集 積 して 居 り,内 胚 乳 には 殆 ん ど認 め られ な い 。 次 に 梗 及 び 購 畷 粒 は い つ 渦 胚 芽 と果 皮(peri・arp)及 び 種 皮 に 分 布 し,内 胚 乳 に は 殆 ん ど 認 め られ な い 。 (Fig.4)。__a)/r11...胚 で は 特 に 胚 盤(scutelium)の 皮 膜 及 び そ の 周 辺 の 柔 組 織 に 分 布 し 覧 い る 。 以 上 組 織 学 的)'Y考 察 した が,之 を 簡 明lY表 示 す れ ば Table 2.の よ う に な る 。 Table 2. tanninの 分 布 状 態 食 品 名 A.未 熟 救 穀 類 お た ふ く豆 碗 豆 オ ラ ン ダ 絹 爽 い ん げ ん さ さ げ B.成 熟救 穀類 大 豆 小 豆 白 小 豆 斗 六 豆 う づ ら 黒 豆 tanninの 所 在 組 織 ン ニ ン タ 束 の 管 形 維 円 ,楕 膜 に 胞 部 。 制不 ﹂り み れ 柔 , あ ,皮 質 部 種 物 皮 ﹁ 様 ﹁ 実 胞 爽 種 細
ー
種 皮,柔 細 胞 膜 〃 // 種 皮,細 胞 膜,維 管 束 種 皮,維 管 束,胚 種 皮,胚 に 円形 又 は 楕 円形 の タ ン ニ ン細 胞 様 物 質 あ り 種 皮,胚 〃 〃 〃 〃 〃 〃 種 皮,維 管 束,細 胞 膜 〃 〃 〃 食 品 名 青 碗 豆 赤 碗 豆 C.禾 穀 類 ウ ェス タ ン 小 麦 ハ ー ドウ イ ン タ ー マ ニ ト パ 2号 ・マ ニ ト ノミ 3号 ウ ェス タ ン ホ ワイ ト 内 地 小 麦 伊 勢 裸 麦 梗 米 濡 米 tan・ninの 所 在 組 織 種 皮,胚,細 胞 膜 〃 〃 〃 内果皮,種 皮の横走 細胞,管 状 細胞 層に 円形 又 は紡錘形 の タンニ ン細胞 様 物質 あ り 縦 溝 部種 皮 " ii 〃 〃 〃 〃 〃 内 果 皮,種 皮 の 横 走 細 胞 層,縦 溝 部 ii ii 種 皮,果 皮,胚 盤 皮 膜 とそ の 周 辺 組 織 〃 〃 皮 〃 種 以 上 は 組 織 学 の 立 場 か らtanninの 分 布 状 態 を 考 察 した の で あ るが,次 に これ と異 る角 度 か ら考 え て み る こ とにす る。 周 知 の よ うにtanninは 植 物 の 一 特 殊 成 分 と して,植 物 の 種 類 に よ り含 有 量 の 多 少 は あ るが, そ の 微 量 は 全 て の 植 物 に共 通 に 含 まれ て い るも の で あ る。 従 来 のtannin分 類 法 は 主 と してtanninの 化 学 構 造 や 性 質 を 基 準 に行 わ れ て い るよ うで あ る。 著 老 等 は 食 用 植 物 組 織 中 のtanninを 分 布 の 形 態 か ら考 察 し た 。 そ の 結 果 一 般 的 傾 向 と して 次 の 諸typeに 分 類 す る こ とが 可 能 で あ ろ う と思わ れ る。 1. 組.織中 に tannin細 胞 を 有 しな い 食 用 植 物 と 有 す る植 物 の 二 つ に分 け.前 者 をGeneral type (一 般 型),後 者 をSpecial type(特 殊 型)と す る 。 General typeは 最 も一 般 的 な 型 で,殆 ん どの 植 物 が これ にご属 す る。 即 ち,白 菜,キ ヤ ベ ツ,大 根 等 の 疏 菜 類.林 檎,桃 等 の 如 き 果 実 類 等,広 くこ の 型 に属 し,主 と して 皮 部,細 胞 膜,維 管 束 に分 布 す る植 物で あ る。 SPecial typeは 通 常,柔 組 織 中 に 円形 又 は 楕 円形 のtannin細 胞 を 有 し,維 管 束 部 で は 桿 状 又 は 紡 錘 形 のtannin細 胞 を 有 す るがtannin細 胞 以 外 の 細 胞 や 導 管 に は,殆 ん ど存 在 し な い 植 物 で,柿,ヤ マ ノイ モ 科 の 「ヤ マ イ モ」・ テ ンナ ン シsウ 科 の 里 芋 等 が これ に 属 す る。 2.次 に分 布 状 態 が 或 る特 定 の 組 織 の み に 集 中 的 で あ るか,又 は全 組 織 にわ た り分 散 的 に分 布 して い るか に依 つ てSp・tt・d typ・C点 在 型)C・ 器densed tyPe (集 中 型) Diffused type (禰 散 型), Radial type(放 射 型), Y'"分け る。点 在 型 は 柿 や里 芋 等 の よ う に組 織 全 体 にtamin 細 胞 が 点 在 し てい る場 合 で あ る。 集 中 型 は 或 る特 定 の 組 織 (例 え ば胚 盤 皮 膜)の み に集 中 的 に含 まれ る場 合 で 麦 類 や 或 る種 の 救 穀 類 等 が これ に
一一22-一 註1) 属 す る。 放 射 型 は 人y,s「 ごぼ う」 等 の よ うに 放 射 維 管 束 に 放 射状 に 分 布 す る場 合 で あ る。 最 後 に び 散 型(瀟 散 型)は,最 も広 く存 在 す る一 般 的型 で,主 と して 細胞 膜 に 含 まれ 組 織 全 体 にほ ぽ 均 等 に含 まれ る場 合で あつ て,葉 菜類や 大い ていの未 熟 蔽 穀 類 等,広 く こ の 型 に属 す る。1.の 分 類 法 と の 関 連 性 を み る と,大 体,点 在 型,集 中 型 は 特 殊 型 に,放 射 型,び 散 型 は 一 般 型 に属 す る と云 え よ う。 以 上 に 述 べ た よ うに 少 く と も本 実 験 に用 い た 食 用 植 物 に 於 て は上 記 の 型 の い ず れ か に属 し,一 般 的傾 向 と して この 分 布 の 諸 型 に は 種 や 科 に よ る共 通 性 や 特 異 性 が 認 め られ るの で あ る。 註2) 次 に前 報 に述 べ た よ うに 甘 柿(富 有)の 未 熟 時 と成 熟 時 に 於 け るtannin分 布 状 態 を 比 較 検 鏡 し た 結 果tannin細 胞 の形 態 にか な りの 相 違 が 認 め られ た 。 そ れ 故 本 実 験 で は,渋 柿 脱 渋 中 に伴 つ て 起 るで あ ろ う渋 柿 組 織 内 のtannin細 胞 の 形 態 に つ い て2週 間観 察 した 結 果Fig.7∼12に 示 す よ うに,最 初 はtannin細 胞 の 明 確 な形 は な く shibuolが 流 動 状 に 存 在 して い るが,ア ル コ ール に 依 つ て漸 次不 容 性 のshibuo1え と変 化 す るに 従 いshibuolが 凝 集 し て 円形 又 は 惰 円形 の 明確 なta皿in細 胞 を 形 成 し て行 く 過 程 が 認 め られ る。 第14日 に は 完 全 にtannin細 胞 を 形 成 し,之 を 成 熟 時 の 甘 柿 と比 較 す る とFig,5.6に 示 す よ う に 両 者 は 大 体 同 じ様 な 形 態 を 示 し shibuolが 不 溶 性 に なつ た こ とを 明 らか に表 わ し て い る。 こ の 様 に アル コ ール '/rよつ て,shibuolが 不 溶 性 に な る こ とは,shibuolの 酸 基 と水 酸 基 とが 分 子 8) 内 凝 集 を 起 す 為 で あ ろ う と推 察 され て い た が そ の こ とが この 写 真 に依 つ て 明 らか に認 め られ るので あ る。 . 皿 要 約 及 び 結 論 前 報 に 於 て,果 実 類,疏 菜 類 につ い て 顕 微 化 学 的 方 法 に よ り,分i類 学 並 び に 組 織 学 的 にtanninの 分 布 状 態 を 研 究 した こ とを 述 べ た 。本 実 験 は これ に 引続 い て, 食 品 中 重 要 な 位 置 を 占 め る禾 穀 類,救 穀 類 等 に 就 い て 研 究 を行 つ た 。 周 知 の 如 く,tanninは 植 物 に よつ て含 有 量 の多 少 は あ るが,そ の微 量 は 全 て の 食 用 植 物 に 含 『まれ て い る特 殊 成 分 の一 つ で あ る 。こ のtannin の 分 布 状 態 を分 類 学 並 び に 組織 学 的 に 考 察 した 。 次Y' tanninの 分 布 形 態 か ら考 察 し更 に分 布 形 態 を種 々 の 食物学 会誌 ・第8号 型b""分 類 す る こ と に よ つ て,植 物 組 織 内 に 於 け る tannin分 布 状 態 の 共 通 性 や 特 異 性 を 導 き 出 そ う と 試 み た 。 そ の 結 果 本 実 験 の 範 囲 内 の 食 用 植 物 は 次 に 述 べ る 諸 型 の い つ れ か に 属 し,一 般 的 傾 向 と し て こ の 諸 型 G'は 同 一 品 種 や 科 に よ る 共 通 性 や 特 異 性 が 認 め ら れ る の で あ る。 併 せ て 渋 柿 の ア ル コ ー ル に よ る脱 渋 中 に 起 るshibuolの 状 態 変 化 を 究 明 し た 。 tanninの 分 布 状 態 を 組 織 学 的 に 考 察 す る と, 1).禾 穀 類,救 穀 類 の 特 殊 成 分 と し てtanninの 所 在 を 認 め た 。 2).一 般 に 未 熟 藏 穀 類 で は 種 皮,維 管 束,胚 に tanninの 所 在 を 認 め るが,種 子 の 大 部 分 を 占 め る 子 葉 に は 殆 ん ど 認 め ら れ な い 。 但 し例 外 と し て オ タ フ ク 豆 や サ サ ゲ 等 は 種 皮 及 び 胚 部 に 集 中 的 に 円 形 又 は.楕 円 形 のtannin細 胞 様 物 質 を 認 め る 。 3).成 熟 寂 穀 類 は 一 般 に 種 皮,胚 に 分 布 し て い る 。 4).禾 穀 類 中 麦 類 は 内 果 皮 及 び 種 皮,特 に縦 溝 部 の 種 皮 に 集 中 的 に 紡 錘 形 又 は 円 形 のtannin細 胞 様 物 質 を 有 す る 。 梗 及 蠕 等 の 米 粒 は 胚 盤 皮 膜 と そ の 周 辺 柔 組 織 及 び 果 皮 に 分 布 し,内 胚 乳 に は 殆 ん ど 認 め ら れ な い 。 次 にtanninの 分 布 形 態 か ら 考 察 す る と 次 の 諸 型 に 分 類 す る こ とが 可 能 と 思 わ れ る 。 1).組 織 中 にtannin cellを 有 す る か 否 か に よ つ て,General type(一 般 型),とSpecial type (特 殊 型)に 分 け る 。
2).分 布 状 態 が あ る組 織 の み に 集 中 し て い る か 又 は 全 組 織 に わ た り 分 散 的 に 分 布 す るか 等 分 布 の 形 態 か ら,Spotted type(点 在 型), Condensed type (集 中 型),Radial type(放 射 型), Diffused type(び 散 型)に 分 け る 。 尚,渋 柿 の ア ル コ ー ル に よ る 脱 渋 中 に 起 る 組 織 内 の shibuoiの 変 化 を 追 求 し た 結 果,最 初 流 動 状 に 存 在 し て い たshibuolが ア ル コ ー ル に よ つ て,日 数 経 過 と 共 に 漸 次 凝 集 し て,円 形 又 は 楕 円 形 の 不 溶 性tannin 細 胞 を 形 成 し で 行 く こ とを 認 め た 。 参 考 文 献 ユ).足 立.亀 井:京 都 女 子 大 学 食 物 学 会 誌,6, (1959),44.
2).Stenhouse, Procter:J. Am. Cheln. Soc., 16(1894 , 247.
3).Perkin, Everest ."The Natural Organic Coloring Matters", London(1918),418. 4).Wisselingh:Beihefte zum Bot. Centralblatt 32(1)(1914),155.
5).Harz Landwirtschaftliche samenkunde (18ε5), 1233,1236. 6).中 村:国 民 術 生18,(1941),71・ '!).近 藤:農 学 会 報185,(1917),70. 8).小 松:京 理 紀,A8(1925),231. 註1).京 都 女 子 大 学 食 物 学 会 誌 第6号p.52.Fig.18参 照(1959年)参 照, 註2)京 都 女 子 大 学 食 物 学 会 誌 第6号p.50.Fig.6-a,6-b参 照
Fig.3 Fig.4 Fig.5 Fig.6 Fig・1:ウ ェ ス タ ン 小 麦 Fig・2:ハ ー ド ウ ィ ン タ ー 小 麦 Fig・3:ウ ェ ス タ ン ホ ワ イ ト Fig.4:梗 米 Fig・5:成 熟 甘 柿 Fig.6:脱 渋 後 の 渋 柿
Fig.7 Fig.8
Fig.9 Fig.10
Fig.11 Fig.12