甲状腺疾患と抗TSHレセプター抗体
診療前検査の意義
すみれ病院 院長 浜田 昇 第 第4343回回中国四国医学検査学会中国四国医学検査学会 松江 平成22年11月本日のセミナーでお話したいこと
TSHレセプター抗体(TRAb)は、
• 甲状腺疾患の診療、特にバセドウ病の診療において大変重 要な検査です。 • バセドウ病の診断だけでなく、バセドウ病を治療していますと、 いろんな場面で治療方針の決定を迫られることがありますが (投薬開始、投薬中止、治療法変更など) 、その時にTRAbが 重要な役割をはたします。ところが、これまでTRAbの結果は、
• 測定に時間がかかっていたので、診察の翌日以降にしか分か りませんでした。すなわち、 • 治療方針の決定に必要なTRAbを、参考にして診療を進める ことが出来なかったのです。本日のセミナーでお話したいこと
ー続き 何とかして、診療前に測定結果を知りたい • そのためには、測定時間の短縮、自動化が必要ですが、診療前にTRAbが分かる測定法が出来ました
• TRAb測定に使うトレーサーに、これまでラベルされたTSHを 使っていたのですが、TSHレセプターに対するモノクローナル 抗体を用いることにより、短時間にフルオートで測定できるよ うになりました。 • その有用性を紹介します。 • それに加えて、診療前TRAb測定でさらに改良が求められて いる点がありますが、それについても検討した成績をお話し ます。講演を理解するために必要な基礎知識
を簡単に説明します
TSHレセプター抗体(TRAb) TRAbの測定
T3 T4,T4,T4 T3,T4↑ 血液中の T3, T4上昇 血液中の TSHレセプター抗体 ホルモン分泌増加 甲状腺濾胞 上皮細胞 濾胞腔 ホルモン 合成↑ TSH レセプター 刺激
抗TSHレプター抗体とは
• TSHレセプター抗体は、 甲状腺濾胞細胞膜にあ るTSHレセプターに対す る抗体で、 • レセプターに結合して、 甲状腺を刺激する。 • バセドウ病の甲状腺機 能亢進症の原因になっ ている抗体と考えられて いる。 甲状腺濾胞バセドウ病とはどんな病気?
• 甲状腺機能亢進症=バセドウ病? ではなく、 • また甲状腺ホルモンが高いからバ セドウ病でもない。 • 血液中の甲状腺ホルモンが過剰に なる疾患が沢山あります。 • その中には、甲状腺機能の亢進に よるものと、亢進によらないものが あるが、 • バセドウ病は、 TSHレセプター抗体が甲状腺 を刺激する為に甲状腺ホルモ ンの合成が高くなって血液中 のホルモンが過剰になる疾患 である。 甲状腺機能亢進によるもの ・ バセドウ病 ・ 機能性結節性甲状腺腫 ・ 胞状奇胎、絨毛上皮腫 ・ 妊娠甲状腺中毒症 ・ 機能性悪性腫瘍 ・ 非自己免疫性常染色体優性甲状腺機能 亢進症 ・ 卵巣甲状腺腫 甲状腺機能亢進によらないもの ・ 無痛性甲状腺炎 ・ 亜急性甲状腺炎 ・ 医原性甲状腺中毒症 ・ 薬剤性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の梗塞、放 射性甲状腺炎 甲状腺機能亢進によるもの ・ バセドウ病 ・ 機能性結節性甲状腺腫 ・ 胞状奇胎、絨毛上皮腫 ・ 妊娠甲状腺中毒症 ・ 機能性悪性腫瘍 ・ 非自己免疫性常染色体優性甲状腺機能 亢進症 ・ 卵巣甲状腺腫 甲状腺機能亢進によらないもの ・ 無痛性甲状腺炎 ・ 亜急性甲状腺炎 ・ 医原性甲状腺中毒症 ・ 薬剤性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の梗塞、放 射性甲状腺炎 甲状腺ホルモンが過剰になる疾患TSHレセプター抗体(TRAb)の測定によって
何が分かるのか?
TSHレセプターに対する自己免疫の有無、程度が分かる TSHレセプターに対する自己免疫で起こる疾患がバセドウ病なので • バセドウ病かどうかが分かる(バセドウ病の診断) TSHレセプターに対する自己免疫の強さが分かるので • バセドウ病の活動性の強さが分かる これを、実際の臨床経過をあげて、具体的にみますと0 3 6 12 18 24 メルカゾール TRAb FT4 診断をつける時 予後の予測 投薬中止の判断 再発かどうかの判断 治療開始後の月数 バセドウ病の抗甲状腺薬治療における TSHレセプター抗体(TRAb)測定の有用性 2年間の治療で寛解に入る症例の治療経過 未治療で 甲状腺 ホルモンが 高い状態 少量の薬でコントロールの良い状態 再発? 薬中止
TRAbの測定は?
患者IgG ラベルされたTSHが TSH受容体に結合するのを 阻害する活性でみている ☆ ラベルされたTSH TSHレセプター 甲状腺濾胞 患者IgGがTSH受容体に結合するのを見ている 従来のTRAbの測定では 甲状腺濾胞 上皮細胞cAMP↑ 患者IgG モノクローナル抗体を使うことによって トレーサーの安定性、 レセプターとの親和性 が高くなった ☆ ラベルされた TSH TSHレセプター 甲状腺濾胞 患者IgG TSH受容体に対する モノクローナル抗体 ☆ 診療前TRAbの測定
診療前TRAbの測定は?
従来のTRAbの測定 測定が安定し、 反応時間を短縮でき、 フルオートにできた 短時間でフルオートで測定できるようになったのは診療前TRAb測定原理(TOSOH TRAb)
洗浄 検体 (血清) 100 μL + 分注水 25 μL 基質 200 μL ALP標識 ヒト抗TSHレセプター モノクローナル抗体(M22) 100 μL : 抗TSHレセプター抗体 : TSHレセプター : TRAb : ALPase標識 ヒト抗TSHレセプターモノクローナル抗体(M22) E : 4MUP : 4MU : 固相 テストカップ E E E 洗浄 第一反応 第二反応 検出 10分 10分 5分 E 干渉 物質 凍結乾燥された試薬 蛍光診療前TRAb測定(TOSOH TRAb)の特徴
• 試薬調製の必要がない
*• 一検体ごとの測定が可能
*• 2ステップ、検体成分の影響を受けない
• 35分という短い時間で測定できる
*凍結乾燥した試薬を直接フルオートの測定系に用いるこ とができるためEテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)
最少検出感度、実効検出感度
0 10 20 30 40 0 1 2 3 4 5 6 TRAb(IU/L) CV (% ) 1.8 IU/L 最少検出感度 (ゼロ-2SD) は 0.6 IU/L 実効感度は 同時アッセイ CV10% でみると 1.8 IU/L 同時ア ッ セ イ の CV 健常人 の値y = 0.907x + 0.288 r = 0.971 n =141 0 5 10 15 20 25 30 35 40 0 5 10 15 20 25 30 35 40 DYNOtest TRAb Human キット「ヤマサ」(IU/L)
AI
A (
IU
/L
)
Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb) と
TRAb human
の相関性試験
TSHレセプター抗体(TRAb)測定が
治療方針を決定する4つの場面における
Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)の有用性
1.鑑別診断 2.予後の予測 3.投薬中止の判断 4.再発かどうかの判断0 3 6 12 18 24 メルカゾール TRAb FT4 診断をつける時 予後の推測 投薬中止の判断 再発かどうかの判断 治療開始後の月数 TRAb測定が治療方針を決定する4つの場面における Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)の有用性 バセドウ病の抗甲状腺薬治療経過
甲状腺ホルモンが過剰(FT3↑、FT4↑、
TSH↓)の患者さんが受診されました
• 患者さんは症状が強い ので早く治療を開始して あげたいが、 • 血中甲状腺ホルモン値 を上昇させる疾患はたく さんあります。血液中の甲状腺ホルモンを
過剰になる疾患
甲状腺機能亢進によるもの ・ バセドウ病 ・ 機能性結節性甲状腺腫 ・ 胞状奇胎、絨毛上皮腫 ・ 妊娠甲状腺中毒症 ・ 機能性悪性腫瘍 ・ 非自己免疫性常染色体優性甲状腺機能 亢進症 ・ 卵巣甲状腺腫 甲状腺機能亢進によらないもの ・ 無痛性甲状腺炎 ・ 亜急性甲状腺炎 ・ 医原性甲状腺中毒症 ・ 薬剤性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の梗塞、放 射性甲状腺炎 甲状腺機能亢進によるもの ・ バセドウ病 ・ 機能性結節性甲状腺腫 ・ 胞状奇胎、絨毛上皮腫 ・ 妊娠甲状腺中毒症 ・ 機能性悪性腫瘍 ・ 非自己免疫性常染色体優性甲状腺機能 亢進症 ・ 卵巣甲状腺腫 甲状腺機能亢進によらないもの ・ 無痛性甲状腺炎 ・ 亜急性甲状腺炎 ・ 医原性甲状腺中毒症 ・ 薬剤性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の梗塞、放 射性甲状腺炎甲状腺ホルモン過剰(FT3↑、FT4↑、TSH↓)の
患者さんが受診された時
これまでは、この状態をみると、 • バセドウ病のことが多いので、す ぐに抗甲状腺薬の投与が開始さ れたりしていました。 • しかし、バセドウ病と言える確証 はありません。 • 特に、無痛性甲状腺炎との鑑別 は絶対に必要です。 • バセドウ病でないのに、薬が投 与されると、機能低下になります し、副作用がでたら大変です。FT3↑、FT4↑、TSH↓
甲状腺中毒症患者の原因疾患の頻度
未治療の1.067例における頻度;伊藤病院 甲状腺機能亢進によるもの ・ バセドウ病 853 (80%) ・ 機能性結節性甲状腺腫 5 (0.5%) ・ 胞状奇胎、絨毛上皮腫 0 ・ 妊娠甲状腺中毒症 10 (1.0%) ・ 機能性悪性腫瘍 0 ・ 非自己免疫性常染色体優性甲状腺機能亢進症 0 ・ 卵巣甲状腺腫 0 甲状腺機能亢進によらないもの ・ 無痛性甲状腺炎 89 (8.3%) ・ 亜急性甲状腺炎 110 (10.3%) ・ 薬剤性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の梗塞、放射性甲状腺炎 0 甲状腺機能亢進によるもの ・ バセドウ病 853 (80%) ・ 機能性結節性甲状腺腫 5 (0.5%) ・ 胞状奇胎、絨毛上皮腫 0 ・ 妊娠甲状腺中毒症 10 (1.0%) ・ 機能性悪性腫瘍 0 ・ 非自己免疫性常染色体優性甲状腺機能亢進症 0 ・ 卵巣甲状腺腫 0 甲状腺機能亢進によらないもの ・ 無痛性甲状腺炎 89 (8.3%) ・ 亜急性甲状腺炎 110 (10.3%) ・ 薬剤性甲状腺炎、甲状腺腫瘍の梗塞、放射性甲状腺炎 0 甲状腺腫が 結節性 妊娠している 甲状腺に痛み 発熱 CRP陽性 この状態を見たときに問題になるのは、 バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別であるバセドウ病と無痛性甲状腺炎は
何故間違われやすいのか
両方とも 甲状腺はびまん性に腫大している 甲状腺には痛みはない 血液中の甲状腺ホルモンは上昇 患者さんを見ただけでは分からないバセドウ病と無痛性甲状腺炎の違い
• TSH受容体抗体が甲状腺 上皮細胞を刺激するため に甲状腺ホルモンの合成・ 分泌が亢進し,血中甲状 腺ホルモンが高値になる 疾患 • リンパ球性甲状腺炎を基礎 として一過性に甲状腺が破 壊するため甲状腺ホルモン が血中に流出し,甲状腺中 毒症をきたす病態 • 橋本病でもバセドウ病でも 起こる バセドウ病 無痛性甲状腺炎T3 T4,T4,T4 I I ↓ 血中 T3, T4 漏出 原因? I I ↑ T3,T3,T3 T4 血中 T3,T4 TSH受容体抗体 TRAb 分泌 甲状腺上皮細胞 濾胞腔
バセドウ病
無痛性甲状腺炎
一番の違いは ヨードの取り込み 次はTRAbの有無 ホルモン 合成↑ 濾胞の 破壊 甲状腺上皮細胞TOSOH TRAbが
甲状腺中毒症の鑑別診断に有用かどうか
すみれ病院を受診した 未治療の甲状腺中毒症患者を 対象に調べてみました ( 2005 12/15 – 2006 4/15)各種甲状腺疾患における
各種甲状腺疾患における
TOSOH TRAb (IU/L) (IU/L) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 未治療 未治療 バセドウ病 バセドウ病 (31例) 橋本病 橋本病 腫瘍性疾患腫瘍性疾患 無痛性無痛性 甲状腺炎 甲状腺炎 亜急性 亜急性 甲状腺炎 甲状腺炎 健常者 健常者 (133例) 実効感度1.8をカットオフとして 陽性率 96.8% 健常人分布 (平均値+2SD) 0.96 IU/ L 全例 1.0 IU/L 未満 2.3 1.8 1.7 1.2バセドウ病の診断 バセドウ病と健常者におけるROC分析 未治療バセドウ病疾患(31例)と健常者(133例)の測定値による ROC分析から得られた感度・特異度 カットオフ値 (IU/L) 0.9 感度 (%) 100.0 特異度 (%) 100.0 0 20 40 60 80 100 100-Specificity 100 80 60 40 20 0 Sens itiv ity 測定感度 (IU/L) 1.0 実効感度 (IU/L) 1.8 感度 (%) 100.0 96.8 特異度 (%) 100.0 100.0 TOSOH TRAb
バセドウ病の診断 バセドウ病と無痛性甲状腺炎におけるROC分析 未治療バセドウ病疾患(31例)と無痛性甲状腺炎疾患(20例)の 測定値によるROC分析から得られた感度・特異度 カットオフ値 (IU/L) 2.3 感度 (%) 96.8 特異度 (%) 100.0 0 20 40 60 80 100 100-Specificity 100 80 60 40 20 0 Sens itiv ity バセドウ病と無痛性甲状腺炎とのカットオフ値 の設定はキットの性能とはまったく別の話で 臨床の問題 対象とした無痛性甲状腺炎により値は異なる キットの性能としては、 TRAb低値が如何に正確に測定できるか 非特異的な値がでないか がポイントである
これまで
診療前TRAb検査が出来なかったとき
どのようにして、
T3 T4,T4,T4 血中 T3, T4 漏出 原因? T3,T3,T3 T4 血中 T3,T4 TSH受容体抗体 TRAb 分泌 甲状腺上皮細胞 濾胞腔
バセドウ病
無痛性甲状腺炎
ホルモン 合成↑ 濾胞の 破壊 甲状腺上皮細胞 T3/T4比↑ T3/T4比↓ ホルモンの合成が盛んで、分泌が増えている 場合はT3が多く分泌される 甲状腺の中に貯蔵されているのは、T4が多い。 破壊されてホルモンが漏れ出るとT4が多く出るバセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎の
FT3/FT4比
0 2 4 6 0 2 4 6 8 1 0 F T 4 FT3/FT4 バ セ ド ウ 病 亜 急 性 甲 状 腺 炎 無 痛 性 甲 状 腺 炎 2 .8 1T3 T4,T4,T4 血中 T3, T4 漏出 原因? T3,T3,T3 T4 血中 T3,T4 TSH受容体抗体 TRAb 分泌 甲状腺上皮細胞 濾胞腔
バセドウ病
無痛性甲状腺炎
ホルモン 合成↑ 濾胞の 破壊 甲状腺上皮細胞 T3/T4比↑ T3/T4比↓ 血流↑ 働いているので活発に 血流↓ 働いていないので甲状腺は甲状腺内の血流による鑑別
無痛性甲状腺炎 典型的な未治療バセドウ病
診療前にTRAb値が分かることの有用性①
甲状腺中毒症患者を診たとき、
その場で鑑別診断ができる
• 甲状腺ホルモン高値の患者を診たとき、バセドウ病と無痛 性甲状腺炎の鑑別が非常に大事である。 • 患者は、動悸、息切れ、倦怠感などの甲状腺機能亢進症状 があるので、早く治療を開始して欲しいが、両者の治療法 が異なるので、診断がつかないと治療を始めることが出来 ない。 • 我々専門家でも、バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別は難 しく、悩むことが多いが、診察時にTRAb値が分かればこの 鑑別ができる。診療前にTRAb値が分かることの有用性① 甲状腺中毒症患者を診たとき、その場で鑑別診断ができる
Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)の有用性
今回の検討では、
• Eテスト「TOSOH」Ⅱの最小検出感度は、0.6 IU/L • 健常人は、全例1.0 IU/L未満 • バセドウ病の陰性とした症例は、1.2 であったので、全例陽性としてもおかしくないが、 • 実行感度1.8IU/lにあわせて、1.8未満を陰性としても、未治 療バセドウ病患者31例中30例が陽性(97.6%)であった。0 3 6 12 18 24 メルカゾール TRAb FT4 診断をつける時 予後の予測 投薬中止の判断 再発かどうかの判断 治療開始後の月数 バセドウ病の抗甲状腺薬治療経過 TRAb測定が治療方針を決定する4つの場面における Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)の有用性
バセドウ病の予後の予測
抗甲状腺薬で治療中のバセドウ病患者を見たとき このまま薬を続けて寛解する可能性があるのかどうかを判断で きることは、治療方針を考える上で大変重要である。 抗甲状腺薬で寛解の可能性が低ければ、手術治療、アイソトー プ治療に、きりかえるかなどの説明が必要である。 この判断にTRAbが有用かどうかTRAbが予後予測に有用かどうかを調べる研究
【対象】 • 2005 年1 月から2006 年2 月までに受診した未治療のバセ ドウ病患者42 例 【方法】 • 抗甲状腺薬治療を開始し、甲状腺機能が正常になれば、 可能な限り早急に抗甲状腺薬を減量していき、ガイドライン の投薬中止の条件*に入れば、投薬を中止した。 【結果】 • 治療開始後2年以内にガイドラインの投薬中止の条件*に 入った 19 名と入らなかった 20名を比較した *バセドウ病薬物治療ガイドラインの「投薬中止の目安」 隔日1Tの抗甲状腺薬で6ヶ月間、甲状腺機能が正常であることを確かめた後に、投薬中止を検討する この条件で中止すると2年後の寛解率は70%0 10 20 30 40 50 区分1 区分3 区分1 4 2.08 27.49 区分3 3 8.16 43.25 遺伝的背景 喫煙量1日本数 甲状腺線種の大きさ 抗甲状腺薬開始後2年以内に 中止の基準に入ったもの 入らなかったもの
バセドウ病の予後の予測
開始前FT3 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 入ったもの 入らなかったもの 抗甲状腺薬開始後 2年以内に 中止の基準に 治療開始前 FT3
開始前FT4 0.00 2.00 4.00 6.00 8.00 10.00 12.00 14.00 入ったもの 入らなかったもの 抗甲状腺薬開始後 2年以内に 中止の基準に 治療開始前 FT4
治療開始 6ヶ月後 TRAb 入ったもの 入らなかったもの 抗甲状腺薬開始後 2年以内に 中止の基準に 0 5 10 15 20 25 30 35 40 TR Ab ( IU /L) 17例/19例 8例/10例 平均値 3.8 IU/L 平均値 18.1 IU/L 治療開始6ヶ月の TRAbが 10 IU/L以上のものは 10例中8例(80%) が二年では治らない 逆に 10 IU/L以下のものは 19例中17例(89%)が、 中止の条件に入る
治療開始 12ヶ月後 TRAb 入ったもの 入らなかったもの 抗甲状腺薬開始後 2年以内に 中止の基準に 0 5 10 15 20 25 30 35 40 TR Ab ( IU /L ) 平均値 2.1 IU/L 平均値 11.1 IU/L 9例/10例 18例/16例 治療開始12ヶ月の TRAbが 5 IU/L以上のものは 10例中9例(90%) が二年では治らない 逆に 5 IU/L以下のものは 19例中17例(89%)が、 中止の条件に入る
診療前TRAb値の有用性②
バセドウ病患者の抗甲状腺薬治療中に
予後を予測できる
• 抗甲状腺薬を開始したバセドウ病患者を見たとき、このまま 薬を続けて寛解する可能性があるのかどうかの判断を迫ら れることがある。 • 今回の検討で、抗甲状腺薬治療開始後6ヶ月のTRAbが 10IU/L以上、12ヶ月後のTRAbが5IU/L以上のものは、寛解 しにくいことが分かった。 • 治療早期のTRAbを見る事によって、その患者が抗甲状腺 薬で寛解しそうかどうかが分かる。 • 診療時にTRAbが分かっていれば、患者の治療方針をその 場で決定することが出来るので有用である。0 3 6 12 18 24 メルカゾール TRAb FT4 診断をつける時 予後の推測 投薬中止の判断 再発かどうかの判断 治療開始後の月数 バセドウ病の抗甲状腺薬治療経過 TRAb測定が治療方針を決定する4つの場面における Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)の有用性
抗甲状腺薬中止後の経過観察中
再発かどうかの判断をせまられる状況
投薬中止後の経過観察中に
FT3, FT4値の上昇を見たとき、
• バセドウ病の再発と考えて、抗甲状腺薬が再開されること が多かったが、無痛性甲状腺炎の場合や、投薬をしなくて も自然に正常に戻る例があることが分かってきた。 • 一過性のホルモン上昇例に、抗甲状腺薬を投与すること は、機能が低下する可能性もあるし、副作用の危険もある。 さらに一旦薬を開始すると長期間薬を続けることにもなる。 • 再発なのか、一過性のホルモン上昇なのかの鑑別は、治 療の再開を考える上で極めて重要である。 TRAbでこの鑑別ができるか?バセドウ病で投薬中止後に
再発した症例
一過性に甲状腺ホルモンが上昇した例
無痛性甲状腺炎を起こした例
のTRAb値の変動
まず症例を提示します0 1 2 3 TRA b h (IU/mL ) TSH (μ IU/mL ) FT4 (Ng/ d L ) バセドウ病、再発 A.A. 0 2 4 6 0 1 2 3 中止時 3ヵ月後 6ヵ月後 9ヵ月後 再発時に TRAbが 上昇している バセドウ病の再発
バセドウ病、一過性増悪 O.M. 0 1 2 3 中止時 3ヵ月後 6ヵ月後 7ヵ月後 12ヵ月後 15ヵ月後 18ヵ月後 24ヵ月後 TRA b h (IU/mL ) TSH (μ IU/mL ) FT4 (Ng/ d L ) 0 1 2 3 0 1 2 3 TRAbの上昇なし FT4は高く TSHは感度以下になっているが、
0 1 2 3 0 10 20 30 40 中止時 3ヵ月後 6ヵ月後 9ヵ月後 12ヵ月後 0 1 2 3 バセドウ病、抗甲状腺薬中止後 無痛性甲状腺炎 K.K. TRA b h (IU/mL ) TSH (μ IU/mL ) FT4 (Ng/ d L ) TRAbの上昇はない FT4は一過性に上昇している TSHは最初低値になって その後上昇している
その後TRAbが一過性に上昇している バセドウ病でみられる無痛性甲状腺炎 では、TRAbが上昇することが多いが、 後になって上がってくる 0 1 2 3 4 5 H18.9 H19.2 H19.5 H19.7 H19.8 H19.9 H19.11 H20.2 H20.5 TRA b h (IU/mL ) TSH (μ IU/mL ) FT4 (Ng/ d L ) 0 2 4 6 8 10 0 1 2 3 ATD中止 FT4上昇時には、 TRAbの上昇はないが FT4は一過性に上昇している TSHは最初低値になって その後上昇している バセドウ病、抗甲状腺薬中止後 無痛性甲状腺炎 Y.M.
抗甲状腺薬中止後の経過観察中、FT4上昇、TSH低値になった時
TRAbで再発か、一過性かの鑑別ができるか
[対象] • 平成22年6月1日から8月21日までに受診したバセドウ病患 者1021名の中で • 経過観察中, FT4が上昇し、TSHが低下してきた11名 バセドウ病の再発 7名 一過性甲状腺中毒症 4名 バセドウ病再発は,FT4上昇およびTSH低値が3ヶ月以上続いたもの FT4上昇が3ヶ月未満のものを一過性甲状腺中毒症とした. 甲状腺中毒症状が強いものは,3ヶ月を待たずにATDを再開したが, その後の経過で再発か一過性かの判断を行った.一過性中毒症例 再発例 再発例 一過性甲状腺中毒症例 > 5 0 1 2 3 4 5 TRAb (IU/L) 中央値 ATD中止時TRAb陰性例の
中毒症発症時のTRAb値
一過性のものは すべて2以下で 再発例は、 2以上が多い診療前にTRAb値が分かることの有用性③
抗甲状腺薬中止後の経過観察中、
再発かどうかの判断ができる
• 治療中止後の経過観察中に甲状腺ホルモンの上昇を見たと き、バセドウ病の再発か一過性の甲状腺ホルモンの上昇か の鑑別が重要になる。 • 前者であれば、抗甲状腺薬を再開しなければいけないが、後 者であれば経過観察で良い。 • 再発か一過性の甲状腺ホルモンの上昇かの判断はTRAb値 によって可能なことが多いので、診療時にTRAb値が分かる ことは、患者を診療する上で非常に有用性が高い。• 再発例は、TRAb 2.0IU/L以上が多いので、 Eテスト「TOSOH」 Ⅱ(TRAb)の実行感度1.8IU/lであれば十分判断できる
0 3 6 12 18 24 メルカゾール TRAb FT4 診断をつける時 予後の推測 投薬中止の判断 再発かどうかの判断 治療開始後の月数 バセドウ病の抗甲状腺薬治療経過 TRAb測定が治療方針を決定する4つの場面における Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)の有用性
抗甲状腺薬で治療中
薬を中止して良いかどうかの判断
バセドウ病の寛解の指標にTRAbが使えるか この研究には、抗甲状腺薬を中止後1年以上の経過観察が必 要であるために、 Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)によるデータは まだ出ていません。 これまで、TRAb humanを使って検討したデータを示します。 一般的にバセドウ病の薬物治療の中止の判断はどのように行 われているかから話をしますバセドウ病薬物治療ガイドライン「中止の目安」
ステーメント
1. バセドウ病が寛解しているかどうかを正確に判断する 方法はまだ見つかっていない。現時点で実際的な方法 は、最少量の抗甲状腺薬で一定期間、甲状腺機能が正 常であることを確かめた後に、投薬中止を検討すること である。 2. 薬物治療中止の目安として簡便さと有用性で、TSH受容 体抗体が参考にされている。 TRAbはどの程度有用なのかバセドウ病薬物治療「ガイドライン」
中止の目安の条件で
薬を中止した場合
ガイドラインの条件で薬を中止したときの
治療成績
対象
• 2002 年2 月から2007 年9 月に,ガイドラインに順じATD を 中止したバセドウ病患者114 名方法
ATD中止後、3年間の予後を観察した • バセドウ病を再発したものを再発例とし • 甲状腺機能正常を維持しているもの,および甲状腺中毒症を呈しても一過性のもの は寛解例としたガイドラインの条件で薬を中止したときの
治療成績
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 0.5 1 2 3 寛解 維持率 (%) (年) 寛解維持率 (%) 87.7 75.5 69.2 56.1 観察された症例数 114 110 104 84 一年後に 25% 再発 ガイドラインの条件で中止しても、 1年後に25%は再発するが 70%の症例は2年後でも寛解している 薬剤中止後の年数投薬中止時のTRAb値で
寛解率に差が出るのか
抗甲状腺薬中止時に
TRAb陽性者のものと TRAb陰性のものの寛解率を比較すると
治療中止時のTRAb値と治療成績
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 0.5 1 2 3 寛解維持率(%) (年) TRAb陰性 TRAb陽性 中止後の期間 TRAb陽性のもので再発が多い治療中止時のTRAb値と治療成績
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 0.5 1 2 3 寛解維持率(%) (年) 92 % 75 % P<0.05 TRAb陰性 TRAb陽性 中止後の期間 問題は、TRAbの高さである, TRAb陽性とした群の平均値は 半年後で有意差が でている。 TRAb陽性のもので再発が多い 1.98±0.99 IU/l すなわち陽性としたものの 半分以上が2.0以下の値であるTRAbの高さに分けて検討してみると
治療中止時のTRAb値と治療成績の関係 0 0.5 1 2 3 寛解維持率(%) (年) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 TRAb弱陽性 (1.0 - 2.0) TRAb陰性 TRAb陽性 (≧2.0) 中止後の期間 91.8% 76.2% 73.3% TRAbが、1.0-2.0でも抗甲状腺薬中止後半年で再発しやすい投薬中止時のTRAb値と予後の関係
• 最少量の抗甲状腺薬で一定期間甲状腺機能が正常である ことを確かめた後に、投薬中止を検討したとき、TRAbが陽 性のものは、有意に再発率が高い • TRAb陽性者のTRAb値は、 1.98±0.99 :mean ± SD IU/l • すなわち、中止の判断には、かなり低濃度(1.0-2.0)のTRAb が正確に測定できなければいけない。 • そのためには、感度を上げるのと同時に非特異的な反応を 少なくすることが重要である。Eテスト「TOSOH」Ⅱの性能をみると
• 最小検出感度 0.6 IU/L • 実効感度 1.8 IU/L • 健常人分布(平均値+2SD) 0.96 IU/ L • 2ステップ法であるEテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb)では、検体成分の影 響を受けないこともあり、健常人は全例1.0IU/L未満の値に出ている。 • したがって、TRAb 1.0-2.0 IU/Lの値も検討可能と思われるが、まだ実 際寛解の指標に有用かどうかの検討はできていない。 • 出来れば、同じ測定系でもう少し感度を上げられれば、有用性が増す と思われるので、この点について検討した 投薬中止時のTRAb値と予後の関係を検討した TRAb humanの実効感度は、1.35 IU/Lであるが、現行の測定システムで、
感度を上げる工夫
受容体は変更できない トレーサーの感度は十分高い これまでに受容体を安定させる工夫は十分してきた 固層の方法、バッファーなど できることは⇒低濃度域の測定精度を上げるアプローチ 診療前TRAb測定原理(TOSOH TRAb) 洗浄 検体 (血清) 100 μL + 分注水 25 μL 基質 200 μL ALP標識 ヒト抗TSHレセプター モノクローナル抗体(M22) 100 μL : 抗TSHレセプター抗体 : TSHレセプター : TRAb : ALPase標識 ヒト抗TSHレセプターモノクローナル抗体(M22) E : 4MUP : 4MU : 固相 E E E 洗浄 第一反応 第二反応 検出 10分 5分 E 干渉 物質 10分 10分→20分 TSHレセプターの安定性を確保するための反応液組成の最適化 患者血中のTRAb との反応時間を 長くした
実効検出感度の比較
0 10 20 30 40 0 1 2 3 4 5 6 TRAb(IU/L) CV( % ) 1.8 IU/L ● 10-10 min. 実効感度 Eテスト「TOSOH」Ⅱ 1.8 IU/L 高感度法 1.2 IU/L 1.2 IU/L ● 10-10 min. ● 20-10 min. 最小検出感度 Eテスト「TOSOH」Ⅱ 0.6 IU/L 高感度法 0.3 IU/L 健常人分布 (平均値+2SD) Eテスト「TOSOH」Ⅱ 0.96 IU/ L 高感度法 0.68 IU/L 低濃度域の測定精度を上げるアプローチy = 1.060x - 0.146 r = 0.905 n = 95 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 DYNOtest TRAb Human キット「ヤマサ」 (IU/L)
AI A (I U /L ) y = 1.105x - 0.254 r = 0.932 n = 95 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 DYNOtest TRAb Human キット「ヤマサ」 (IU/L)
AIA (I U /L ) 高感度法 20-10min. Eテスト「TOSOH」Ⅱ(TRAb) 10-10min.
TRAb 1.0-5.0 IU/L
濃度域における
DYNOtestHuman 「ヤマサ」との相関
R = 0.905 R = 0.932TRAb 1.0-2.5 IU/L
濃度域における
DYNOtestHuman 「ヤマサ」との相関
y = 1.120x - 0.238 r = 0.709 n = 63 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 DYNOtest TRAb Human キット「ヤマサ」 (IU/L)A IA 10 -1 0 m in. ( IU /L) y = 1.114x - 0.265 r = 0.819 n= 63 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 DYNOtest TRAb Human キット「ヤマサ」 (IU/L)
AI A 2 0 -1 0 m in . (I U /L ) R = 0.709 R = 0.819
まとめ;TRAb診療前検査の4つの有用性
1.甲状腺中毒症患者を診たとき;鑑別診断
最小検出感度0.6 IU/L、実効感度1.8でOK2.バセドウ病の抗甲状腺薬治療開始後;予後の予測
最小検出感度0.6 IU/L、実効感度1.8でOK3.バセドウ病を抗甲状腺薬で治療中;投薬中止の判断
最小検出感度0.6 IU/L、実効感度1.8でも対応可能・・? 高感度法(実効感度1.2)であれば十分対応できる4.抗甲状腺薬中止後の再発の判断
最小検出感度0.6 IU/L、実効感度1.8でOKおわりに
• 診療前にTRAbが測定できることによって、バセドウ病診療 において治療方針の決定がスムースに行えるようになった。 • バセドウ病診療において大変大きな進歩である。