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日本産科婦人科内視鏡学会雑誌Vol.36 No.2; , 2020.

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【緒  言】

 腸 管 子 宮 内 膜 症 か ら 発 生 し た 悪 性 腫 瘍 は Endometriosis-associated intestinal tumor(以下 EAIT)と総称されているが、その頻度は稀とさ れている。稀小部位子宮内膜症ガイドラインでは、 本邦でのEAITの頻度は腸管子宮内膜症の0.77% と報告されており、本邦での論文報告も約20例程 度である1)。腹痛や下血などの症状を呈する場合 もあるが無症状で偶発的に発見されることもある2) 画像では典型例はなく術前診断が難しく、組織生 検が診断の補助となるが、生検でも診断がえられ ないことも多いため、消化管腫瘍として外科で手 術し術後に診断がつくケースも多い。 2020 December 日産婦内視鏡学会 第36巻第2号

症例報告

A case of endometrioid carcinoma of the rectum arising from rectal

endometriosis treated by laparoscopic surgery

Asuka Sakiyama1), Takuya Aoki1), Ayami Koike1), Etsuko Kawata1), Saeko Tanabe1), Motoko Mizumoto2), Shigeo Hara3), Shinya Yoshioka1)

Department of Obstetrics and Gynecology1),

Department of Surgery2),

Department of Diagnostic Pathology3),

Kobe City Medical Center General Hospital Abstract

 The frequency of malignant transformation in endometriosis is rare; it is estimated to be less than 1%. Malignant transformation mainly occurs in the ovary and rarely in the extragonadal sites. Endometriosis-associated intestinal tumors (EAITs) represent the malignant transformation of gastrointestinal endometriosis; the prevalence of EAITs is 0.77% in Japan. Here, we present a case of endometrioid carcinoma of the rectum arising from rectal endometriosis that was treated by laparoscopic surgery.

 A 68-year-old woman presented with no symptoms but had a pelvic mass and was referred to our hospital. She had no history of endometriosis and hormone replacement therapy. Tissue biopsy revealed a poorly-differentiated adenocarcinoma, and the immunohistochemical studies showed cytokeratin7+, cytokeratin20-, and estrogen receptor+. Therefore, the tumor was suspected to be of gynecological origin and not primary colon origin. She underwent laparoscopic total hysterectomy, bilateral salpingo-oophorectomy, and low anterior resection with D3 lymphadenectomy. There were no malignant findings in the uterus and ovaries. The tumor was located adjacent to the rectal wall; endometrial glands and stroma were present adjacent to the tumor. We diagnosed her with endometrioid carcinoma arising from endometriosis of the rectum. No metastatic lymph nodes were identified pathologically. The patient received adjuvant chemotherapy postoperatively and has been disease-free for 18 months since the surgery.

 The basic treatment for EAITs is surgery, and we could treat her through laparoscopy. Laparoscopy, a minimally invasive surgery, is another treatment option for EAITs.

Key words: Endometrioid carcinoma, Endometriosis-associated intestinal tumor (EAIT), Laparoscopic surgery

腹腔鏡で治療しえた直腸子宮内膜症から発生した類内膜癌の1例

神戸市立医療センター中央市民病院 産婦人科1)、外科2)、病理診断科3)

﨑山明香

1)

、青木卓哉

1)

、小池彩美

1)

、川田悦子

1)

、田邉更衣子

1)

(2)

今回我々は、無症状で偶発的に発見された傍直腸 腫瘍に対して、術前に婦人科臓器由来の悪性腫瘍 を疑い、外科医と協力し腹腔鏡下に治療しえた直 腸子宮内膜症から発生した類内膜癌の1例を経験 したので報告する。なお、症例報告することに関 して患者の同意を得ている。 【症  例】 68歳 4妊2産 主訴:なし 月経歴:閉経 55歳 ホルモン治療歴なし 既往歴:腎盂腎炎、膀胱炎、外痔核 婦人科疾患 の既往歴なし 現病歴:  外痔核で近医消化器科を受診した際に超音波検 査で4cm弱の骨盤内腫瘤を指摘され、当院産婦 人科へ紹介となった。内診では、後腟円蓋5時直 腸方向に鶏卵大の腫瘤を触知し、経腟超音波では 子宮後方に3.5cm大の腫瘤を認め子宮との連続性 はないように思われた。直腸診では肛門から4-5cmの直腸左側に弾性硬な腫瘤を触知し、粘膜 面に異常は認めなかった。  血液検査所見では、血液生化学検査に異常なく、 腫瘍マーカーもCEA 2.0 ng/ml, CA19-9 7.9 U/ml, CA125 13.0 U/mlと正常範囲内であった。骨盤造 影MRI検査にて、直腸左側に辺縁が造影される充 実性腫瘍を認め、内部はT2WIで低信号を呈して いたが、拡散制限は認めなかった(図1)。PET-CTでは直腸左側の腫瘤はSUVmax=9.9程度の FDG集積を認めた。画像上は明らかな子宮との 連続性は認めず、遠隔転移などの所見も認めなか った。注腸造影を施行し、直腸のRa~Rb境界部 の左壁になだらかな隆起性病変を認め、直腸非上 皮性腫瘍と考えられた。下部消化管内視鏡検査で は、第一Houston弁と第二Houston弁間に3~4 ㎝大の粘膜下腫瘍を認め、直腸粘膜面にはびらん・ 潰瘍などは認めなかった(図2)。画像結果から はGISTなどの直腸粘膜下腫瘍が疑われ、診断目 的に消化器内科で超音波内視鏡ガイド下に穿刺吸 引針生検を施行した。  術前の病理組織学的検査では、子宮頸部細胞診 はNILM、子宮内膜細胞診は陰性であった。傍直 腸腫瘍の生検では、大型の核と明瞭な核小体を有 する腫瘍細胞が充実性に増殖し、核分裂像も400 倍の倍率で5個/1視野程度認められ、悪性腫瘍 と考えられた。腫瘍胞巣内に微小腺腔形成が散見 され低分化腺癌が疑われた。免疫組織学的所見で は、CK 7+, CK20-, ER+, PgR-, CDX2-, PAX8+で あり、婦人科臓器由来の腺癌の可能性が指摘され た。しかし画像上は子宮・付属器に病変を疑う所 見はなく、腫瘍の存在部位より直腸由来の腺癌の 可能性も完全には否定できなかった。そのため婦 人科にて子宮全摘術・両側付属器切除、外科にて 低位前方切除を行う方針とした。腹腔鏡で手術可 能と判断し腹腔鏡下手術とした。 T2強調画像、水平断 T2強調画像、矢状断 T1強調造影画像、水平断 図1 造影MRI 直腸左側にT2強調画像で内部低信号な腫瘤性病変(→)あり、子宮との連続性は認めず。辺縁は造影効果あり。 図2 下部消化管内視鏡 第一Houston弁と第二Houston弁間に3-4cm大の粘 膜下腫瘍あり、粘膜面にはびらん・潰瘍などは認 めず。矢印部位より生検を施行

(3)

【手術所見】  外科医により臍部よりopen法で腹腔内に到達 しカメラ用トロッカー(12mmトロッカー)を挿 入、右下腹部と左下腹部に12mmトロッカー、右 側腹部と左側腹部に5mmトロッカーを留置し腹 腔内を観察した。後に婦人科で下腹部正中に5 mmトロッカーを追加留置した。子宮・両側付属 器には肉眼的異常は認めなかった。腹膜反転部の 直腸左側前壁に結腸腹膜垂が癒着しており癒着を 剥離すると硬結を触れ既知の腫瘍と思われた。骨 盤腹膜への腫瘍の露出は認めなかった。その他に は腹腔内に癒着なく、子宮内膜症性病変を疑う所 見も認めなかった(図3)。洗浄腹水細胞診の迅 速検査は陰性、両側付属器も迅速検査に提出した が悪性所見は認めなかった。婦人科医で子宮全摘 術を施行。子宮と腫瘍は肉眼的には距離があり連 続性はないように思えたが、腟切開する際に前壁 から切開し、腟後壁はダグラス窩腹膜と分離させ てから切開し、腫瘍を腹膜と連続するように摘出 した。外科医により腹腔鏡下低位前方切除に加え、 直腸由来の腺癌の可能性も考慮しD3廓清を施行 した。最終的に子宮~ダグラス窩腹膜~直腸は分 断せずに摘出した。手術時間は8時間18分、出血 は少量のみであった。 切除標本:  肉眼像では直腸粘膜になだらかな隆起部分を認 め、割面では直腸壁外に1.9x0.8cm大の境界明瞭 な白色結節を認めた(図4)。 病理組織学的所見:  子宮内膜、頸部粘膜に腫瘍は認めず。子宮筋層 内に内膜腺がみられ、子宮腺筋症の所見は認めた が悪性所見なく、両側付属器も悪性所見は認めな かった。腫瘍細胞は直腸壁外に充実性に増殖し、 微小腺腔の形成を散在性に認めた。直腸粘膜には 悪性所見はみられず、腫瘍周囲には線維化ととも に泡沫状組織球の集簇がみられ、ヘモジデリン貪 食組織も認めた。直腸外膜に内膜腺を思わせる所 見がみられ、周囲間質はCD10陽性であり子宮内 膜症と診断した。腫瘍組織の免疫染色は術前と同 じでCK7陽性、CK20陰性、ER陽性の組織であり、 子宮内膜症の存在から直腸子宮内膜症から発生し た類内膜癌G3と診断した(図5)。リンパ節に転 移は認めなかった。 術後経過:術後はddTC(Paclitaxel:80mg/㎡ +Carboplatin:AUC 6)を施行。患者希望にて、 6コース予定から3コースで終了とし、現在外来 にて経過観察中であるが、治療後1年6ヵ月経過

子宮

子宮頸部

子宮頸部

直腸粘膜

腹膜

図3 子宮は正常大、両側付属器に異常は認めなかった。腹腔内には内膜症を疑う所見も認めなかった。病変部位は腹膜反転部の直腸左側 前壁であった(→)。 図4 摘出標本写真 直腸粘膜になだらかな隆起部分あり(→)、割面では直腸壁外に1.9x0.8cm大の境界明瞭な白色結節あり(○)。

(4)

するが再発は認めていない。 【考  察】  子宮内膜症は子宮内膜に類似した組織が子宮外 に発生する疾患である。発生部位は多岐に渡り、 生じる症状も臓器によって多様である。卵巣、子 宮靭帯、ダグラス窩、腹膜はcommon siteであり、 それ以外に発生する子宮内膜症を稀少部位子宮内 膜症と総称される。子宮内膜症の悪性化は1%以 下と言われ、その約80%は卵巣原発である。腸管 子宮内膜症は、子宮内膜症の全体で約10-30%を 占め、稀少部位子宮内膜症の中では最も発症頻度 が高い1)   腸 管 子 宮 内 膜 症 か ら 発 生 し た 悪 性 腫 瘍 は Endometriosis-associated intestinal tumor(以下 EAIT) と 総 称 さ れ て お り、 医 学 中 央 雑 誌・ PubMedで検索したところ本邦での論文報告は本 症例を含めて21例であった(表1)3-21)。年齢の 中央値は49.5歳(45-56歳)で、Slavinらの報告と ほぼ同じ好発年齢であった。自覚症状は下血が9 例(43%)と約半数を占めていたが、腹痛は4例、 便通異常が4例、腹部膨満感・腹部腫瘤感が2例、 不正性器出血が1例で、本症例以外の20例では何 らかの症状を呈していた。8例(38%)で子宮内 膜症での手術歴を認め、HRT既往は2例(9.5%) に認めた。本症例では年齢が68歳と好発年齢より 高く、また無症状で偶発的に発見されていた。ホ ルモン治療歴や骨盤内膜症の手術歴も認めず、や や非典型例であった。  EAITの発生部位としては、これまでの報告2) では77%は直腸・S状結腸部位であり、本邦21例 の症例でも小腸で発生した1例を除く20例(95%) が直腸・S状結腸での発生であった。腸管子宮内 膜症の発生部位も直腸・S状結腸が最も多く約 70%を占め、次いで直腸腟中隔、小腸、盲腸へと 続くが、それを反映していると思われる22)。組織 型として類内膜癌の報告が44%と最も多く、その 他には少数だが明細胞癌、肉腫なども認められる と報告されている2,23,24)。本邦での報告では、類内 膜癌が12例(57%)、明細胞癌が5例(24%)、漿 液性腺癌が1例(5%)であり、これまでの報告 と同様に約半数が類内膜癌であった。  EAITの問題は術前診断が困難なことである。 これまでの報告より、診断には子宮内膜症の存在 や免疫組織学的所見が有用と言われている24)。診 断が困難な理由としては、典型的な画像所見はな く、生検での診断率が低いことである21)。本邦21 例の報告でも術前に悪性腫瘍の診断がついていた のは本症例を含め9例(43%)であった。そのう ち4例で婦人科癌既往やHE所見、免疫組織学的 CK7 x 200 CK20 x 200 ER x 200 HE x 12.5 HE x 200 CD10 x 200

直腸壁

腫瘍組織

腫瘍組織

図5 病理組織学的所見 腫瘍組織は直腸壁外に充実性に増殖し、微小腺腔の形成を散在性に認めた。 直腸外膜に内膜腺と思われる所見あり(〇)、周囲間質はCD10陽性であり、子宮内膜症と診断。 腫瘍組織はCK7陽性、CK20陰性、ER陽性であった。

(5)

所見から婦人科由来の悪性腫瘍が疑われた。生検 での診断率が低い理由としては、病変の主座が粘 膜面ではなく粘膜下層より深層に存在することが 多い点が挙げられる。腸管子宮内膜症も同様の理 由で内視鏡下生検での診断率は10%未満25)と低率 だが、近年では超音波ガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)での診断率向上が報告26)されており、腸 管子宮内膜症やEAITを疑う場合、EUS-FNAは 生検方法に有用であると考える。また、原発性大 腸癌とEAITの鑑別には免疫組織学的所見が有用 であり、Chuらの報告では卵巣由来の腺癌では CK7陽性/CK20陰性は96%、子宮由来の類内膜癌 では100%でCK7陽性/CK20陰性である。逆に、 大腸由来の腺癌では、95%でCK7陰性/CK20陰性 であり、鑑別に重要な免疫染色である27)。本症例 も画像所見からはGISTなどの粘膜下腫瘍が疑わ れたが、EUS-FNAで組織生検を行い、免疫組織 学的所見より婦人科由来の悪性腫瘍を疑うことが できた。   子 宮 内 膜 症 か ら の 悪 性 化 の 診 断 に は、 Sampson28)とScott29)の診断基準がよく用いられ る。Sampsonの基準は以下の3つで、1)癌の病 変と子宮内膜症の病変が同一組織に存在するこ と、2)癌がその組織から発生し他の部位からの 浸潤や転移ではないこと、3)組織像で子宮内膜 間質様組織が存在すること、である。これに Scottは子宮内膜症から癌への移行像を認めるこ とを挙げている。本症例では、Sampsonの基準は 満たしており、子宮内膜症からの悪性化と考えら れたが、子宮内膜症から癌への移行部は明らかで はなかった。最終的には組織学的所見、免疫組織 学的所見より、直腸子宮内膜症から発生した類内 膜癌と診断した。  治療法に関しては基本的には外科的切除が第一 選択である。これまでの報告ではほとんどが開腹 手術であるが、消化器外科・婦人科とも腹腔鏡手 術・ロボット支援下での手術が普及してきており、 今後は腹腔鏡・ロボット手術の症例が増えてくる と思われる。本邦でも2014年から現時点で本症例 を含め4例が腹腔鏡で施行されており、1例はロ ボット手術で行われている17,19,21)。しかしまだ EAITに対する標準術式はないのが現状である。 発生部位的に外科医により消化器癌に準じた術式 が施行されていることが多く、郭清部位も消化器 領域のリンパ節郭清が行われていることが多い。 リンパ節転移陽性例は予後不良とする報告も認め 表1 本邦でのEAIT症例の報告

(6)

られる一方で、術後5年経過しても再発を認めな い症例もある7,15)。予後に関しても今後も症例の 蓄積と検討が必要である。術後療法に関しても一 定の見解はないが、2000年以降は約半数は婦人科 悪性腫瘍の治療で用いられるTC療法が行われて おり、本症例も術後補助療法としてddTC療法を 施行し、治療後1年6ヵ月経過するが再発は認め ていない。残存病変がなく、リンパ節転移のない 症例では、再発リスクはそこまで懸念されないの かもしれないが、症例数が少なく、今後の検討課 題である。 今回、生検組織から婦人科由来の腺癌が疑われ、 画像上は子宮・付属器には異常は認めなかったが、 子宮・付属器悪性腫瘍の転移の可能性も否定でき なかったため子宮全摘術と両側付属器切除も施行 した。子宮・付属器には原発病変がないことを証 明することで、今回の病変が腸管子宮内膜症から 類内膜癌が発生したという診断へと繋がった。必 ずしも子宮全摘術・両側付属器切除が必要であっ たとは言えないが、診断のためには有用であった と考える。 【結  語】  今回、傍直腸腫瘍に対して術前に婦人科臓器由 来の悪性腫瘍を疑い、外科医と協力し腹腔鏡下に 治療しえた直腸子宮内膜症から発生した類内膜癌 の1例を経験したため、本邦で報告されている EAIT症例を検討し、文献的考察を加え報告した。 低侵襲手術も治療の選択肢になると考える。  本論文の要旨は第59回日本産科婦人科内視鏡学 会において発表した。また、すべての著者は開示 すべき利益相反はない。 【参考文献】 1) 稀少部位子宮内膜症 診療ガイドライン. 難治性稀少 部位子宮内膜症の集学的治療のための分類・診断・ 治療ガイドライン作成研究班, 2018.

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投稿日:2020年2月12日 採択日:2020年3月19日

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