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博 士 ( 薬 学 ) 根 岸 文 子

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 薬 学 ) 根 岸 文 子

学 位 論 文 題 名

胚 性 腫 瘍 細 胞 分 化 の 分子 機 構

: 制 御 転写 調 節 エ レメ ン ト と その 結 合 夕 ンパク 質

学 位 論 文内 容 の 要 旨

  

生 物個体の 機能は、 多様に機能分化した細胞群により営まれている。これらに携わ る各 々の細 胞群がい かにして分化しその機能を獲得して役割を果たしているかは、非 常 に 興 味 深 い 生 命 現 象 で あ る 。 し か し な が ら 、 今 だ に 未 知 な 部 分 が 多 い 。

  in vitro

で分化を再現できる細胞系は細胞分化の有効なモデル系である。胚性腫瘍細 胞は 、その 様な細胞 のーつであり、胚幹細胞分化の分子機構の研究に広く持ちいられ ている  1)。

  

胚 幹細胞分 化は複雑 かつ協調的な遺伝子発現のネットワークで構成されている。実 際 に 、ホ メ オ ボ ック ス 遺 伝子 群 、 胚性 腫 癌 細胞特異 的転写 因子Oct‑3遺伝子

2

)、

c‑myc

癌遺伝子等3,4,5,6)の転写調節因子から細胞表面抗原等の分化マ―力一に至る まで 分化誘 導の前後 で発現の変化する遺伝子が多々報告されている。そこで、細胞分 化決 定機構 の鍵は分 化に際して遺伝子発現を制御する転写調節因子が握っているもの と 考 えら れ て お り、 細 胞 分化 特 異 的転 写 因 子の解析 が精力 的に行な われて いる。

  

過 去、当研 究室にお いて、 胚性腫瘍 細胞

  F9

由 来のクロ ―ンで ポリオ―マウイル ス 大 型

T

抗 原 を 発 現 し てい る

F9‑28

細胞 中 に プ ラス ミ ド 状態 で 存 在し て い た変 異 株 (

 fPyF9

) よ り 、 転 写 調 節 活 性 を 持 つ

DNA

配 列

BOX DNA

を 単 離し た

7

8

9

BOX DNA

結 合 夕 ンパ ク 質 が胚 性 腫 瘍細 胞 特 異的 因 子 であ る 事 が 示唆 さ れたので

BOX DNA

及 び そ の因 子 の 胚性 腫 瘍 細胞 分 化 への 関 与 につ い て 本 研究 を 行なった

10,11

)。

2

BOX DNA

は 胚 性 腫 瘍 細 胞 特 異 的 エ ン ハ ン サ ー で あ る。

  P19

ECA2.

及 び

F9

は 細 胞 分 化 の研 究 に 広く 持 ち いら れ る マウ ス 胚 性腫 瘍 細 胞 で あ る 。

  

こ れ ら の 細 胞 に つ い て

‑BOX DNA

の 転 写 調 節 活 性 を

CAT

ア ッセ イ に よ り 調 べ た 。そ の 結 果、 こ こ で用 い た 全 ての 胚 性 腫瘍 細 胞 につ い て 、BOX DNAをプ

・口 モータ ー上流に 接続した 時のみ エンハン サー活 性が認められた。また、BOX DNA によ る転写 活性の増 強が胚性 腫瘍細胞に特異的かどうかを知る目的で、分化したマウ ス 繊 維 芽 細 胞 で あ る

L

細 胞 及 び

Balb3T3

細 胞 を 用い て 同 様の 実 験 を行 な っ た。 そ の 結 果 、 これ ら の 非胚 性 腫 瘍細 胞 で は 、BOX DNAのエ ン ハ ンサ 一 活 性は 全 っ たく 認め られな かった。

3

 BOX DNA

結 合 夕 ン パ ク 質は 胚 性 腫瘍 細 胞 と非 胚 性 腫瘍 細 胞 で 異な る 。

  

転写調 節機構は 、特定の

DNA

配 列を認識 して結 合するタ ンパク 質(転写 調節因子

) と そ れ ら と 協 調 し て 働 く 蛋白 質 の 相互 作 用 等に よ り 制御 さ れ てい る 。

P19

E

( ニ

A2.  F9

の 胚 性 腫 瘍 細 胞に こ の よう な 転 写調 節 因 子、

BOX DNA

特異 的 結 合 タンパク質が存在するか否かをバンドシフト法により調べた。その結果、どの胚性腫 瘍細 胞 で もBOX DNAに 特異 的 に 結合 す る タン パ ク 質複 合体を 示すバン ドが認め ら れた 。 一 方、

BOX DNA

のエ ン ハ ンサ ― 活 性が 認 め られ な い

  L. Balb

の非 胚 性 腫 瘍細 胞 に つい て

BOX DNA

結 合 夕 ンパ ク 質 の存 在 を 調べ たとこ ろ、胚性 腫瘍細胞 と

‑ 339ー

(2)

は 移 動 度 の 異 な る バ ン ド が 認 め ら れ た 。 こ れ ら も

BOX DNA

に 特 異 的 に 結 合 し た

。 非 胚 性 腫 瘍 細 胞 で は 、BOX DNA結 合タ ンパ ク 質が 不活 性型 であ るか 共同 因子 が な い な ど の 理 由 で

BOX DNA

がエ ンハ ンサ ―と し て機 能し ない もの と推 測さ れた 。

4

BOX DNA

の エ ン ハ ン サ ー 活 性 . と 結 合 タ ン パ ク 質 は 分 化 に 伴 っ て 減 少 す る 。

  P19

ECA2.  F9

の胚 性腫 瘍細 胞を 種々 の方 法で 分化 誘導 し、 分 化誘 導前 後の

BOX DNA

の 活 性 を 比 較 し た 。 そ の 結 果 、 い ず れ の 細 胞 で も

BOX DNA

の エン ハン サ 了活 性は 分化 に伴 って 減 少し た。 それ に平 衡し たBOX DNA結合タンパク質の減 少 が同 様の 系で 認め られ た 。以 上の 事か ら、

BOX DNA

及 び結 合タンパク質が胚性 腫 瘍細 胞の 分化 に関 与す る 転写 調節 エレメント及び因子である事が示唆された。

5

 BOX DNA

を 有 す る 胚 性 腫 瘍 細 胞 由 来 の 転 写 調 節 領 域

pBOXF1

の ク ロ ― ニ ン グ

  BOX DNA

は ポリ オー マウ イ ルス 変異 株の 挿入 配列 とし て単 離さ れたため、細胞由 来 で あ る こ と が 推 測 さ れ て は い た も のの 、確 定的 では ナょ かっ た 。そ こで 、BOX

DNA

の片 方の 鎖に 相補 的な オ リゴ ヌク レオ チド と制 限酵 素  Hind IIIリンカ―をプ ラ イ マ ー に し た

PCR

法 に よ り

F9

細 胞 の 染 色 体

DNA

か ら

BOX DNA

を 含 む 転 写 調 節 領 域 の 単 離 を 試 み た 。 こ の

PCR

法 に よ り

3

種 類 の ク 口 ― ン (

pBOXF1

pBOXF5

pBOXF16

)が 得ら れ た。 更に 、こ れら の領 域内 にプ ロモ ―夕一活性がある か 否 か を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 得 ら れ た

3

つ の ク ロ ー ン 中 、

pBOXFl

由 来 の

pF1

H

CAT

の み に プ ロ モ ― 夕 一 活 性 が 認 め られ た。

pBOXF1

の 塩基 配列 を調 べて 見る と

BOX DNA

の 下 流 に 転 写 因 子

  Spl

の 結 合 配 列 、

TATA box

様 配 列 、 転 写 因 子

Oct

配 列 等 が 存 在 し て い た 。

S1

マ ッ ピ ン グ に よ り

TATA box

様 配 列 の180bp下流 に 転写 開始 点の 存在 が明 らか とな った 。

6

BOX DNA

を 有 す る 胚 性 腫 瘍 細 胞 由 来 の 転 写 調 節 領 域

  BOXF1

BOX DNAに よ り 細 胞 分 化 に 応 じ た 制 御 が な さ れ て い る 。   BOXF1

の転 写活 性が細胞の分化状態 に応じて制御されているのか、そしてこの制御 に

BOX DNA

が 関 与 し て い る か ど う か を 知 る た め に 、

pF1

H‑) CAT

の 各 種

deletion mutant

を作 製し 、分 化誘 導前 後の

P19

細胞でその活性を比較した。、分化 誘 導 前 の 細 胞 で は

BOX DNA

の 欠 損 に よ る

BOXF1

の 活 性 の 現 象 が 顕 著 に 認 め ら れ た が 、 誘 導 後 の 細 胞 で は 、 殆 ど 認 め ら れ な か っ た 。

PCR

法 に よ り

  BOXF1

の 下流に存在す る遺伝子をクロ―ニングしたところ胚性腫瘍細胞分化に 伴って発現の減 少する遺伝子 (  2.4 kb)が存在した。

7

. 胚 性 腫 瘍 細 胞 か ら の

BOX DNA

結 合 タ ン パ ク 質 の 精 製

  BOX DNA

結合 クン パク 質の 細胞 分化 への 関与 を分 子 レベ ルで 詳細に調べるために

P19

細 胞 か ら

BOX DNA

結 合 タ ン パ ク 質 の 精 製 を 行 な っ た 。

  9x109

個 の

P19

細 胞 か ら 粗 核 抽 出 液 を 調 製 し 、 硫 安 沈殿 後、

Heparin‑Sepharose column

及 びBOX

DNA

を りガ ンド にし たDNA Affiniy columnに通 し活 性 画分 を集 め精製標品とした。

得 ら れ た 精 製 標 品 は 分 子 量 約

44 kDa

のタ ンパ ク質 であ り  BOX DNAに 特異 的に 結 合し た。

8

. バ ー キ ッ ト リ ン パ 腫

Rai

細 胞 か ら の

BOXDNA

結 合 夕 ン パ ク 質 の 精 製

  

オク タマ 一結 合蛋 白因 子群 やGATA転 写因 子群 等12,

13

) で知られてい るように、

細 胞分 化に関与す る転写因子ではファミリー中の他因子が異なった細胞系 で転写因子 と レ て 機 能 ・ 関 与 し て い る 事 が 知 ら れて いる 。そ こで 、  BOXDNAに この よう な活 性 があ るか否かを 血球系細胞分化ついて調べた。未分化な分化能のある細 胞として急 性 前 骨 髄 性 白 血 病 細 胞

  HL60

、 及 び 分化 能の ない 細胞 とし て急 性リ ンパ 芽球 性白 血 病 細 胞

  Jurkat

と バ ー キ ッ ト リ ン パ腫

  Raji

に つい て、

  BOXDNA

をプ ロ― ブに

‑ 340―

(3)

したバンドシフト法を行なった。その結果、これらの血球系細胞にもBOX DNA結 合タンパク質が複数存在することがわかった。

  

バンドシフトで認められた血球系細胞のBOX DNA結合タンパク質が分化に関連 した 転 写 調節 因 子か ど う かを 知 る目 的 で、

Rai

細 胞でBOXDNAの転 写調節活 性 と

  BOXDNA

結合タ ンパク質 の結合の特異性を調べた。その結果、分化能のない

Raji

細胞では

BOXDNA

はエンハンサーとして働かないことが分かった。しかしなが ら、

  BOXDNA

に特異的に結合するタンパク質が存在していた。そこで、  P19細 胞と同様 の精製法 で

Raji

細胞から

BOXDNA

結合タンパク質を精製し、それ等を比 較検討した。Raji細胞からは、分子量約100kDaと

60kDa

のタンパク質が主に精製 された。また、少量ではあるが、  P19細胞で精製されたタンパク質と同じ分子量(

  44kDa

)のタンパク質も共に精製されていた。これらの事から、

  BOXDNA

が 未分化細胞特異的エンハンサ―として血球系細胞分化にも関与している可能性が示唆 された。また、Raji細胞の結果を、上述の

L

細胞や

Bmb3T3

細胞の結果と考え合わ せると、 分化能の ない細胞 での未分化細胞特異的エンハンサ―BOXDNA抑制機構 の存在が推測された。

参 考文献

1) Martin, G. R.  (1980)  Science.  209, 768‑776.

2) Okamoto, K., Okazawa, H., Okuda, A., M., Sakai, Muramatsu, M., and Hamada, H. ( 1990 )     Cell, 60, 461‑472.

3) Kihara, F., and Ariga, H.  ( 1991)  Biochem.  Biophys.  Acta.  1089,  227‑233 4) Taira, T., Negishi, Y., Kihara, F.,  Iguchi‑Ariga,  S.M.M., and Ariga,  H. ( 1992 )  Biocem.   Biophys. Acta. 1130,166‑174.

5) Kakizaki, I., Imamura, Y., Galli., I., Kihara, F., Ariga., H., and Iguchi‑Ariga, S.M.M.

   ( 1993 )  Int. J.  Onc. 2,657‑661.

6) Negishi; Y., Nishita;Y., Sa  egusa, Y., Kakizaki, I., Galli, I., Kihara, F., Tamai, K.,      Miyajima, N.,Iguchi‑Ariga, S.M.M., and Ariga, H.  ( 1994 )  Oncogene.  in press.

7) Ariizumi, K*, and Ariga,H.  (1986 )  MoI.  Cell.  Biol. 6, 3920‑3927.

8) Ariizumi, K., and Takahashi, H., Nakamura, M., and Ariga, H.  ( 1989 )  Mol.  Cell. Biol.  9, 4026‑4031.

9) Arizumi, K., and Takahashi, H., Nakamura, M., and Ariga, H.  ( 1989 )  MoI. Cell. Biol.  9,    4032‑ 4037.      . 10) Kihara‑Negishi, F., Tsujita, R., Negishi, Y., and Ariga, H.  ( 1993 )  Mol.  Cell.  Biol.  13, 7747‑7756.

11) Kihara‑Negishi, F., Negishi, Y., Sa  egusa, Y., Nishita, Y., and Ariga, H.  ( submitted ) 12) Aruceli, R. J., King, A. A. J., Simon, M. C., Orkin, S. H., and Wilson, D.B.  ( 1993 )  MoI.        Cell.  Biol.  13, 2235‑2256.

13) Ko, L. J., and Engel, J. D.  ( 1993 )  MoI.  Cell.  Biol.  13, 4011‑4022.

(4)

学位論 文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

′教授 教授 助教授 助教授

有賀 長澤 近藤 高橋

学 位 論 文 題 名

寛芳 滋治 博之 和彦

     胚性腫瘍細胞分化の分子機構

:制御転写調節エレメントとその結合夕ンパク質

  

細胞は増殖、分化、死の

3

っの形態をとり、それぞれ遺伝子支配されている。

細胞は様々な分化を繰り返し、最終的な機能分担を行って亠ヽる。細胞分化の分子 機構は近年様々な方法論で展開されているが、分子生物学的手法により分化を誘 導あるいは維持に関わっている遺伝子群が同定されている。これらをより効率的 に解析するために動物ウイルスのシステムが多用されてきた。例えばポリオーマ ウイルスは分化したマウス細胞を宿主とし増殖するが未分化細胞では増殖できな い。未分化マウス細胞で増殖可能なウイルス変異株が1980年代初頭より単離され、

得られたポリオーマウイルス変異株は一般に初期転写プロモーター内に変異を有 しており、これが転写工ンハンサーの発見へと続った。これらのエンハンサ一変 異によりそこに結合する細胞側夕ンパク質因子の検索が行われ、多くのものが転 写因 子 で あり 、 こ れら が 細胞 分 化 ・に 関 与する ことが明 かとなっ てきた。

  

当研究室においても未分化マウスF9細胞で増殖可能なポリオーマウイルスの単 離を試み、

F9

細胞内で染色体外

DNA

として自律増殖する変異株

FPyf9

を単離した。

FPyf9

はェンハンサー領域に21塩基対の外来

DNA

が3箇所挿入されており、これを

BOX

と命名した。

BOX

配列はポリオーマウイルス

T

抗原存在下では、転写と複製を抑 制するサイレンサーとして機能することがその後明かにされた。従って、本学位 申請者はこのBOX配列の転写調節配歹

fJ

としての細胞分化における機能、BOX配列に 結合するタンパク質因子とそのターゲット遺伝子の向定、さらにはBOX配列結合夕 ン パ ク 質 の 精 製 を 行 い 、 細 胞 分 化 と転 写 の連 動 機 構を 詳 細に 検 討 した 。

―342−.

(5)

l

、BOX配列の細胞分化における転写調節配列としての機能

    BOX

配歹ljはポリオーマウイルスT抗原存在下では転写と複製のサイレンサーと して機能していた。そこでT抗原非存在下においてBOX配列の機能を解析するため に、CAT遺伝子にへルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)とBOX配列を接続したレ ポーター遺伝子を構築し、胚性腫瘍細胞としてマウスF9,P19,ECA2細胞、非胚性 腫瘍細胞としてL,Balb3T3細胞にトランスフェクションする実験系で解析した。

3

種の胚性腫瘍細胞においてはBOX配列の数に依存して転写活性の増加が観察され たが、非胚|陸腫瘍細胞では活性の増強は見られなかった。またBOX配列に変異を導 入したものでは胚性、非胚性細胞とも活性増加は現れなかった。この事実はBOX配 列が胚性腫癌細胞特異的エンハンサーとして機能することを示している。次に胚 性腫瘍細胞3種をレチノイン酸、diBucAMPなどの組合せで細胞分化させ、BOX配列 の転写エンハンサー活性を測定したところ、未分化時のみ活性を有していた。こ れらに結果はBOX配列は未分化胚性腫瘍細胞特異的エンハンサーという新しいタイ プのエンハンサーであることが判明した。

  2

、BOX結合タンバク質の同定

    

一般に転写調節領域が機能する場合、その配歹uを認識し結合するトランスタン バク質因子が必須である。そこで、胚性、非胚性腫癌細胞より核抽出液を作製し、

BOX

配列をプローブとしたバンドシフトアッセイを行った。転写活性に比例して胚 性腫瘍細胞では未分化細胞で存在し、分化に伴って減少した。非胚性腫瘍細胞で はBOX結合夕ンパク質モのものは存在する.ものの、その分子種は胚性腫瘍細胞とは 異なっており、BOX結合タンパク質ファミリーの存在が示唆された。これらの非胚 性腫瘍細胞ではBOX配列が転写活性を示さないのは非胚性腫瘍細胞でのBOX結合タ

  

ンバク質が結合しても非活性な形であることを意味しているが、この理由として

BOX

結合タンパク質のりン酸化などの修飾による違い、他の会合タンパク質の存在

.などが考えられる。

  3

、BOX結合タンバク質のターゲット遺伝子の単離

    BOX

配列とHindIIIリンカーをプライマーとし、F9ゲノム

DNA

を鋳型としたPCR

  

法によりBOX配列結合タンパク質のターゲット遺伝子、即ちBOX配列を有する遺伝

  

子のクローニングを行った。種々の獲られたPCR断片をプラスミドにクローニング 後、CAT遺伝子に連結し、塩基配列の決定と同時に転写活性を測定した。その内

  BOXF1

と名づけたPCR断片は

F9

細胞で顕著な転写活性を示した。塩基配列を決定し

  

たところ、ポリオーマウイルスに位置していた場合と逆向きにBOX配列が存在し、

  

その下流に転写調節配列オクタマー配列、sP−1、TATA boxなどが存在していた。

(6)

Sl

法により現実にこの遺伝子内からRNAが読まれるかを検討したところ、BOX配列 下流

150

塩基対より転写開始されており、BOXF1がin vivoで機能している遺伝子で あることが判明した。この転写プロモーターを有するBOXF1のどの領域が重要であ るかを検討うるために、種々の欠損変異を導入したBOXF1−CAT遺伝子を構築し転写 活性を測定したところ、BOX配列が基本的に最も重要であった。また

BOXF1

の転写 活性は未分化胚性腫癌細胞でのみ現れ、明らかにBOX結合タンパク質のターゲツ丶ト 遺伝子であることが明かとなった。BOXF1は遺伝子の全長でないので、これをプロ ーブとしてF9ゲノム及ぴcDNAライプラリーよルクローニングを行い、現在までポ ジテイプクローンを得ている。獲られた

cDNA

は新規なものでノーザン法の結果、

細胞分化に伴って発現減少する遺伝子であった。現在全構造の決定を行っている。

4

、BOX結合夕ンパク質の精製

    

次にBOX結合タンパク質のcDNAクローニング、抗体生成などの目的のために胚 性及び非胚性腫瘍細胞よりBOX結合タンパク質の精製を行った。ヘパリンセフアロ ースカラムの後、BOX配列をりガンドとしたアフイニテイークロマトグラフイーに より精製を行った。胚性腫癌細胞P19からは分子量

45K

ダルトンのタンパク質が単 離され、B細胞であるRaii細胞からは分子量110Kタンパク質と微量の45K夕ンパク 質が単離された。B細胞においてはBOX配列の転写エンハンサーとしての活性は検 出されない。現実にこれらのタンパク質が

BOX

配列結合能を有することはuvクロス リンキング法で確認された。これらの事実はBOX結合タンパク質のファミリーの存 在を生化学的に示唆するものであり、B細胞においては、活性型45Kタンパク質が 非活性型110Kタンパク質と拮抗することでBOX配列がェンハンサーとして機能しな いことが考えられる。

45KBOX

結合タンパク質の発現が未分化細胞の維持と胚性腫 瘍細胞の形質を規定していると想定される。この関係は転写因子オクタマーフア ミリーと類似している。オクタマーフんミリーの内、OTF―1は殆ど全ての細胞に存 在する転写因子であり、

OTF

―2はB細胞特異的エンハンサー結合タンパク質として

B

細胞の形質を規定している。またOTF−3は未分化細胞の・みで機能するオクタマー タンバク質である。今後

BOX

結合タンバク質群のcDNAクローこングを行い、これら の分子種牽明かにすることが重要な課題である。

  

以上の研究成果は細胞分化における転写因子の機能、胚性腫瘍細胞の形質発現 の点で多くの新知見を与えるものである。これらの成果はすでに国際的科学雑誌 に掲載され高く評価されたものであり、更にこの関連分野で公表された論文が

10     

一一

報近く存在する。

  

従って、申請者根岸文子は博士(藁学)を授与するに充分であると判断された。

―344− ―

参照

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