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博 士 ( 薬 学 ) 島 本 雄 司

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Academic year: 2021

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博 士 ( 薬 学 ) 島 本 雄 司      学位論文題名

新規シチジン誘導体1 ・  (3‑C‑ethynyl‑)8‑D‑ribo‑pentofuranosyD cytosine (ECyd) の 抗癌効果と薬物動態,

及 び 感 受 性規 定因 子 に関 する 基 礎研 究

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  RNA合 成 を 阻 害 す る 代 謝 拮 抗 剤 と し て見 出 さ れた 新 規 シチ ジ ン 誘導 体1‑(3 ‑C‑

ethynyl‑p ‑D‑ribo‑pento furanosyl)cytosine(エチニルシチジン;ECyd)は,細胞内に取り込 まれ た後ウ リジン‐ シチジ ンキナー ゼ(UCK;EC 2.7.1.48)によってーリン酸体に代謝 さ れ ,さ ら に り ン酸 化 を 受け 活 性 代謝 物 の 三リ ン 酸 体ECTPと なり. このECTPRNA ポ リ メラ ー ゼ 活 性を 阻 害 してRNA合 成 を 阻害 す る と考 え ら れて いる。こ のように , ECydは 既 存 のDNA合成 阻 害 を主 作 用 とす る 代 謝拮 抗 剤 とは 異 なる作 用機序を 持ち,

有用 な抗癌 剤になり 得るも のと期待 される 。しかし ,従来の 抗癌剤は他の疾患の臨床 薬に 比較し て毒性が 強いこ とや,治 療有効 投与量域 と毒性発 現投与量域が近接してい るた め十分 な臨床効 果が得 られなぃ ことが 問題とな る場合が 多く,今後の抗癌剤は高 い癌 選択性 に基づい た抗癌 活性を有 し,治 療成績向 上のため に至適投与法を確立する こと が重要 であり, さらに 抗癌剤感 受性規 定因子を 考慮した 治療計画も必要となる。

そこ で著者 は,ECydの 抗癌効果 に及ぼす 投与ス ケジュー ルの影 響と薬物動態を検討し ECydの 至 適投 与 法 と癌 選 択 性を 明らかに し,さ らに,ECydの感受性 規定因子 を明 確 に し てECydの 効 果 予 測 因 子 を 提 示 す る こ と を 目 的 と し て 本 研 究 を 行 っ た 。 1 ECydの 至適投与 法と癌 選択性に 関する 検討

1) ヒト固形 癌細胞を 用いECydの 接触時 間と細胞 増殖抑制 効果の 関係を調 べたと こ ろ ,ECydin vitro殺 細 胞 様式は 濃度x時間(AUC) 依存的で ,ECydは細 胞周期非 依存 性の薬剤 に分類さ れると 考えられ た。こ のことよ り,ECydの抗癌効果を最大限に 発揮 させるた めには必 ずしも 長時間の 薬剤持 続接触は 必要ではなぃことが示唆され,

また ,細胞周 期依存的 な既存 の抗癌剤 が効き にくい癌 腫に対しても,ECydは効果が期 待で きるもの と思われ た。

(2) ECydのin vivo抗癌 効果に対 する投与スケジュールの影響をヒト固形癌株ヌードラ ット 皮下移植 モデルを 用い3種類の 投与スケジュールで比較検討した。その結果,ECyd は 投与ス ケジュー ルに依 存せず3種類す べての 投与スケ ジュー ルでほぼ 同等の強 い抗 癌効 果が認め られ,間 欠投与 でも重篤 な毒性 を示すこ となく強い抗癌効果を発揮する こと が明らか となった 。この ことはま た,効 果と毒性 が投与スケジュールに左右され る既 存の抗癌 剤と異な り,ECydが 細胞内 代謝の面 で優れた 特徴を有していることを示 唆す るもので あった。

(3)ヒト 固形癌株 皮下移 植ヌード ラットに[3H]ECydを単回 投与し ,経時的 に種々 の組 織を 摘出して 各組織へ の放射 能分布を 測定し たところ ,ECyd由来の放射能は正常組織

‑ 275

(2)

に比べて癌組織に高濃度で長時間持続する傾向が認められた。さらに,癌組織内にお けるECydの代謝動態を測定したところ,活性代謝物ECTPを主とすると考えられる ECydヌクレオチド(ECydのりン酸化体)が癌組織内に高濃度で長時間持続すること が示され,このECydヌクレオチドの癌組織内蓄積がECydの癌選択的な組織分布に繋 がっているものと考えられた。したがって,ECydが投与スケジュールに依存せず,間 欠投与でも重篤な毒性を示すことなく強い抗癌効果を発揮するのは,このようなECyd の薬力学的な特徴,すなわち,ECydヌクレオチドの癌選択的な組織分布特性が反映さ れているためだと考えられた。そしてこのようなECydヌクレオチドの癌選択的な組 織分布は,正常組織よりも癌組織におけるECydリン酸化活性(UCK活性)が高く,

それだけ癌組織においてECydがより多くりン酸化されることが大きな要因になって いると考えられた。

2. ECydの感受性規定因子に関する検討

(1)2種類のヒト固形癌細胞からECydに対する耐性株を樹立し,耐性株の生物学的性 質,特にECydの細胞内代謝動態を中心に親株と比較し,ECydに対する耐性機序,す なわちECydの感受性を規定する因子について検索した。その結果,UCKによるECyd リン酸化の低下が活性代謝物ECTPの細胞内蓄積量を減少させ,ECydによるRNA合 成阻害活性を抑制し,その結果としてECydに対する耐性の大きな要因となること,

すなわち,UCK活性がECydの感受性規定因子のーっであることが明らかとなった。

(2)ヒト 固形 癌細 胞のECydに対 する 感受 性とUCK活 性, 及びUCKの二種類のアイ ソ ザイ ムUCK1及 びUCK2のmRNA及びタンパク発現量の関係について調べ,細胞レ ベ ルに おい て,UCK1及びUCK2がECydの効果予測因子となり得るかどうかの検討 を行った。その結果,まず,ECydに対する感受性とUCK活性との間には高い相関関 係 が認 めら れ,UCK1につ いて はmRNA及び タン パク 発現 量ともにUCK活性との間 に相関が認められなかったのに対し,UCK2についてはmRNA及びタンパク発現量と も にUCK活性 との 間に 相関 関係 が認 めら れた 。さ らに ,ヒトUCKl及びUCK2タン パクを大腸菌で発現させ,ECydを基質に用いてECydリン酸化反応速度の解析を行つ た とこ ろ,ECydリン 酸化 酵素としての触媒効率はUCK2がUCK1よりも約2000倍高 く,UCK2がECydリン酸化の責任酵素であることが明らかにされた。以上のことより,

ECydは主にUCK2によルリン酸化され,UCK2がECyd感受性規定因子のーつであり,

UCK2のmRNAおよ びタ ンパ ク発現量がECydの効果予測因子となることが明らかと なった。

(3)ヌードラッ卜モデルにおいてECydが高い癌選択性を示すのは癌組織における UCK活性が高いためであり,それはすなわち癌組織におけるUCK2発現量が高いため と考えられる。そこで,臨床においてもECydに高い癌選択性が期待できるかどうか を調べるために,数種類の市販ヒト組織由来の細胞質タンパク溶液を用い,UCK2タ ンパク発現量をヒトの癌組織とそれに対応する正常組織で比較した。調べたヒト正常 組織由来細胞質タンパク溶液ではすべてUCK2の発現が認められなかったが,ヒト癌 組織由来細胞質タンパク溶液では5癌腫中4癌腫においてUCK2の発現が認められた。

このヒト組織におけるUCK2タンパク発現量の分布特性から,臨床においてもECyd の癌選択的リン酸化が期待され,ECydが癌選択性の高い治療薬となる可能性が示唆さ れた。

  以上,本研究において,ECydが高い癌選択性を持ち,間欠投与でも重篤な毒性を示 さず強い抗癌効果を発揮すること,そして,それがECydの薬物体内動態の特徴に基 づくことを明らかにした。また,ECydリン酸化酵素UCKのアイソザイムUCK2がECyd 感受 性規 定因 子のーつであり,UCK2のmRNA及びタンパク発現量がECydの効果予 測因子となることを明らかにし,臨床においてもECydが癌選択性の高い治療薬とな る可能性を示した。

(3)

学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査

副査 副査 副査

教 授

  

松 教 授

  

鎌 助教授

  

山 助教授

  

田    彰 滝 哲 也 崎 浩 史 東    智

     学位論文題名

新規シチジン誘導体 1 ‐ (3‑C‑ethynyl‑,B‑D‑ribo‑pentofuranosyl) cytosine (ECyd) の抗癌効果と薬物動態,

及び感受性規定因子に関する基礎研究

  RNA

合成を阻害する代謝拮抗剤として見出された新規シチジン誘導体1‑(3‑

く冫ethynyl 亅・

Ip

−D‑ribo‑pentofuranosyDcytosine (ECyd) は,細胞内に取り込 ま れた後ウリジンーシチジンキナーゼ(UCK ;EC 2.7.1.48) によってーリン酸 体に代謝され,さらにりン酸化を受けた活性代謝物の三リン酸体EC'I `.P がRNA ポ リメラ ーゼ を阻 害し

RNA

合成 を阻害 すると考えられている.

ECyd

は既存の

DNA

合成阻害を主作用とする代謝拮抗剤とは異なる作用機序を持ち,有用な抗 癌剤になり得るものと期待される.そこで申請者は,ECyd の抗癌効果に及ぽす 投 与スケジュールの影響と薬物動態を検討しECyd の至適投与法と癌選択性を 明 らかに する こと ,さ らに,

ECyd

の感 受性規 定因 子を 明確 にして

ECyd

の効 果 予 測 因 子 を 提 示 す る こ と を 目 的 と し て 本 研 究 を 行 っ た .

  1

. ECyd の至適投与法と癌選択性に関する検討

(1) ECyd

のin vitr 〇殺細胞様式は 濃度x 時間(AUC ) 依存的で,細胞周期非 依存性の薬剤に分類された.このことより,ECyd の抗癌効果を最大限に発揮さ せるためには必ずしも長時間の薬剤持続接触は必要ではないことが示唆され,ま た,細胞周期依存的な既存の抗癌剤が効きにくい癌腫に対しても,効果が期待で きるものと考えられた.

(2 )ECyd のjnWv ・〇抗癌効果に対する投与スケジュールの影響をヒト固形癌由来

株ヌードラット皮下移植モデルを用いて比較検討した.その結果,ECyd は投与

スケジュールに依存せずほぼ同等の強い抗癌効果を示し,間欠投与でも重篤な毒

性 を 示 す こ と な く 強 い 抗 癌 効 果 を 発 揮 す る こ と が 明 ら か と な っ た .

(4)

  (3)ヒ ト固形癌株皮下移植ヌードラットに[3H]ECydを単回投与し,経時的に種々   の組織 を摘出して 各組織への 放射能分布 を測定したところ,ECyd由来の放射能   は正常組織に比べて癌組織に高濃度で長時間持続する傾向が認められた.さらに,

  癌組 織 内に お けるECydの代謝 動態を測定 したところ ,ECydヌクレオ チドの癌   組織内蓄積が ECydの癌選択的な組織分布に繋がっているものと考えられた.し   たがっ て,ECydヌクレ オチドの癌 選択的な組織分布は,正常組織よりも癌組織   におけ るECydリン酸化 活性(UCK活性)が 高く,それ だけ癌組織 において'ECyd   が よ り 多 く りン 酸 化さ れ るこ と が大 き な要 因 にな っ てい る と 考え ら れた .   2. ECydの感受性規定因子に関する検討

  (1)ヒ ト固形癌由来細胞からECydに対する耐性株を樹立し,ECydの感受性規定因   子につ いて検索し た.その結 果,UCKに よるECydリン酸 化の低下が 活性代謝物   ECTPの細胞 内蓄積量を 減少させ,RNA合成阻 害活性を抑 制し,その 結果として   ECydに 対 す る 耐 性 の 大 き な 要 因 と な る こ と を 明 ら か に し た .   (2)ヒ ト 固 形 癌 由来 細 胞のECydに 対す る 感受 性 と二 種 類のUCKア イ ソザ イ ム   UCK1及 びUCK2のmRNAお よび タ ンパ ク 発現 量 の関 係 につ い て調 べ た. そ の結   果,ECydに 対する感受 性とUCK活 性との間に は高い相関 関係が認め られ,UCK1   につい てはmRNAおよび タンパク発 現量ともにUCK活性と の間に相関 が認められ   な か っ た の に 対 し ,UCK2に つ い て はmRNAお よ びタ ン パク 発 現 量と も にUCK   活性 と の間 に 相関 関 係が 認められ た.さらに ,ヒトUCK1およびUCK2夕ンパク   を大腸菌で発現させ,ECydリン酸化反応速度の解析を行ったところ,触媒効率は   UCK2がUCK1よ り も 約2000倍 高 く ,UCK2がECydリ ン 酸 化 の 責 任 酵 素 で あ   ること が明らかに なった.以 上のことよ り,UCK2がECyd感受性規定因子のーつ   で あ り ,UCK2のmRNAお よ びタ ン パク 発 現量 がECydの効 果 予測 因 子と な るこ   とを明らかにした.

  (3)ヌ ードラットモデルにおいてECydが高い癌選択性を示すのは癌組織における   UCK2活性が 高いためで あると考え られる.そこで,臨床においてもECydに高い   癌選択性が期待できるかどうかを調べるために,数種類の市販ヒト組織由来細胞質   夕ンパク溶液を用い,UCK2夕ンパク発現量をヒト癌組織とそれに対応する正常組

゛織で比較した.調べたヒト正常組織由来細胞質夕ンパク溶液ではすべてUCK2の発   現が認められなかったが,ヒト癌組織由来細胞質夕ンパク溶液では5癌腫中4癌腫   にお い てUCK2の 発現 が 認めら れた.この ヒト組織に おけるUCK2夕ン パク発現   量の分 布特性から ,臨床にお いてもECydの癌選択的リン酸化が期待され,ECyd   が癌選択性の高い治療薬となる可能性が示唆された.

    以上の ように本研究は、RNA合成阻害剤であるECydが高い癌選択性を持ち,間   欠投与でも重篤な毒性を示さず強い抗癌効果を発揮することを明らかにし,それが,

  ECydのりン 酸化酵素UCK2の発 現量に依存 することを明らかにした.現在,ECyd   は米国でPhaseI試験が進行中であり、癌選択性の高い治療薬となることが期待され   てお り 、博 士 (薬 学 )の 学位を授 与するに足 る内容を持 っものと認 定した.

参照

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