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博 士 ( 工 学 ) 濱 田 弘 一

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 濱 田 弘 一

学 位 論 文 題 名

透 過 電 子 顕 微 鏡 を 用 い た 微 細 組 織 ・ 構 造 の 研 究 に    お け る 試 料 処 理 技 術 な ら び に 観 察 手 法 の 開 発

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  現在,新材料や新しいエ ネルギー開発に関連して,材料の超高純度化や無欠陥化あるい は極限環境での使用の可能 性が検討され,また材料を高度に利用したセンサ一等の機能素 子の高性能化,超小型・高 精度化,高信頼性が追求されている.さらに人工物質やその量 子効果の基礎研究および開 発研究が盛んである.これら材料の基礎的ならびに開発研究で は微細な組織や構造の解析 による現象の解明が必要であり,一つの有効な手法として透過 電子顕微鏡による観察が重 要な役割を担っている.

  本研究の目的は,この透 過電子顕微鏡を現在の材料科学が推進する新エネルギーの開発 に関連した材料の粒子線照 射効果,また材料の高度利用に伴う微細加工の影響の研究さら には人工物質の物性の基礎 および応用研究のために材料の微細組織・構造やその変化を解 明するーつの手法として活 用することにある.本論文は,この目的達成のための一連の試 料処理技術ならびに観察手 法の開発と,その観察結果から得られた材料の微細組織や構造 に関する新しい知見につい て論述したものである.

  本論文は8章により構成されており,その概要を以下 に示す.

  第1章では,緒言として本論文における研究の目的お よび基本的な考えと論文の構成に ついて述ぺ,っづいて材料 研究おける電子顕微鏡の位置づけ,観察手法,基本的な試料作 製法について述ぺた後,本 研究開発の試料処理技術ならびに観察手法と組織・構造観察の 新しい知見の要点を述ぺる ,

  第2章は,核分裂炉中性子による照射損傷組織の研究 において,照射における試料温度 制御技術の開発,電子顕微 鏡観察用の薄膜試料の直接照射技術の開発とこれら材料処理技 術 を適 用し たNi,Ni合金 の欠 陥組 織の 観察 が課 題で あ る. 原子 炉に よる照射の試料温 度制御に関しては,従来の 方式による原子炉の始動時および停止時の温度の不確実さを指 摘し,この不確実な照射温 度による照射損傷組織への影響を明らかにするため,新しい炉 心n鼠射装艦を開発し,この方式の炉外試験を行い,この結果に基づいて設計された温度制 御装盈を用いた照射の実行 とその結果およびこの技術を基にした処理技術の進展について 述べる.薄膜試料の窟接照 射に閲しては,斑子顛徽鏡観察のための薄膜試料の照射の必要 性,中性子照射での条件の 問題,真空ミニカプセルの開発,照射した実行例について述べ る . ま た 以 上2っ の開 発し た材 料処 理技 術を 利用 し照 射し たNiとNi希 薄合 金の 照射 誘 起欠陥に関して.薄膜試料とバルク試料における欠陥莉l織の比較,200℃.300℃,350℃・

400℃照射における温度の影響および微盈添加元素の効果について論じ今後の展開について

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述ぺる.

  第3章は,金属の精密加工された表面眉の深さ方向の 組織状悠や歪,加工眉の解析を課 題としている.一般に除去 加工した加工表面は組織が壊されていて表面を含む断面の透過 電子顕徽鏡観察は難しいと されこれまで観察された例は殆どない.したがってこの研究で の主な課題は透過電子顕微 鏡観察試料の作製法にある.この章は,観察目的と,本研究の ために開発した断面および 表面観察用の電子顕微鏡試料作製法,観察の結果から各加工に おける表面層の転位組織, 加工層の深さ,歪の状態等について検討した結果について述べ る.

  第4章の課題はldn−Znフ ェライト単結晶の超精密研磨面の加工変質層の評価である.こ の材料は主にビデオヘッド に用いられ,記録密度の高密度化に伴い0.1ルmオーダーの寸法 を 正確 に製 作す るこ とが 求められており10nmのオーダ ーで加工変質眉の制御が課題であ る.加工表面を含む断面の 電子顕微鏡観察の例は試料作製が困難で行われていないが,こ の章は,加工表面層のバッ クシンニングおよびへき開による電子顕微鏡観察のための試料 作製手法の工夫を行い,観 察された結果と他の測定法による結果と合わせて表面および加 工変質層の評価,転位組織 等について新しい知見を述べる,

  第5章は,金属の薄板の繰り返し引張り一圧縮による 疲労組織による内部での欠陥の蓄 積状態,欠陥の構造を明ら かにすることが課題である.一般に金属疲労試験はバルク試料 で行い.その組織観察はこ の試料から切り出して行うが,この研究では電子顕微鏡観察試 料を容易に作製できる金属 薄板の疲労試験法を開発した.また,疲労組織の発達過程の観 察,転位集団の評価のため の電子顕微鏡観察手法の開発ならびに転位密集部分の特徴を解 析した新しい知見を述ぺる .

  第6章は ,パ ―マ ロイMR(磁 気抵 抗効 果) 素子 の口 一レンツ法での動的磁区組織観察 で ある .現 在MR効果 を用 いパーマロイ素子は磁気記録 読み出しへッドとして使用されて いる.磁気記録の高密度化 に伴い,磁区の発生,移動や消滅に伴うバルクハウゼンノイズ が問題で,横バイアス磁界 の印加でノイズを減らすいわゆる磁区制御技術が開発されてい る.この章の課題は,詳細 な磁区構造の観察に適した口ーレンツ法を用いて,実際の磁気 ヘッドに用いる微小薄膜試 料に外部磁界を印加した場合の磁区変化の状態を直接観察する ことである.この磁区観察 の目的のために,微小な薄膜試料の磁区観察試料作製法,磁区 観察中の磁界の印加方法の 開発,観察結果から磁化過程における磁区構造の変化,特に磁 区制御技術の効果を観察で 実証した.

  第7章の 課題 は, 超高 真 空中 (lx10 ‑IoTorr) で作 られた一層の膜厚が数nmという金 属の超薄膜人工格子の構造 を直接観察することで,斑子顕徽鏡による表面および断面から の観察を試みたものである .厚さが数nmという極く薄い膜のため.観察試料の作製に工夫 が必要である.この章の新 しい知見は人工格子機造が電子顕徽鏡によりの観察できるため に人工格子膜の具備する条件を見出した点である..この章は,イオンシンニングによる断 而械察用試料の作製法,Co/t*fn.Co/Crの人工格子についての上記条件の考察と,GMR人 工 格 子 に 関 す る 構 造 とRKKY相 互 作 用 に よ るGMR( 巨 大 磁 気 抵 抗 ) 効 果 の 関 係 で論 じ た,

  孤8爺 は 結 言 と し て 本 研 究 の 全 体 の 課 題 に 対 す る 結 果 と 成 果 に つ い て ま と めた .   以!|のように,本論文は将来の核融合炉材の基礎研究から新しい椨密加工法ならびにエ レクトロニクスデバイス用 材料にわたり,透過電子顕徽鏡を用いたそれぞれの材料研究に 必要な材料処理技術と観察 手法の開発および微細組織の観察結果と得られた新しい知見な らびに今後の展開について 述ぺたものである.

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学位論文審査の要旨 主 査    , 教 授    廣田榮一 副 査    教 授    池 田 正 幸 副 査    教 授    武 笠 幸 一 副 査    教 授    高 橋平七郎 副査   助教授   岡田亜紀良

学 位 論 文 題 名

透過 電子顕微 鏡を用 いた微細組織・構造の研究に    お け る 試 料 処理 技 術 なら び に 観察 手 法 の開 発

  現在、新しい材料やエネルギ一開発に関連レて、材料の極限環境での使用の可能性、

超精密加工技術や原子層単位の積層多層膜などの人工物質研究などが検討され、材料物 性を高度に利用する研究開発が盛んに行われている。これら材料の基礎的ならびに開発 研究では微細な組織や構造の解析による現象の解明が必要であり、一つの有効な手法と して透過電子顕微鏡による観察が重要な役割を担っている。

  本研究の目的は、透過電子顕微鏡をこのような材料の基礎および開発研究のための手 法として活用することにある。本論文は、この目的達成のための一連の試料処理技術な らびに観察手法の開発と、その観察結果から得られた材料の微細組織や構造に閲する新 しい知見について論述したものである。本論文は8章により構成されており、その概要 を以下に示す。

  第1章では、研究の目的および基本的な考えと論文の構成、材料研究における電子顕 微鏡の位置づけ、観察手法、基本的な試料作製法について述べた後、本研究開発の試料 処理技術ならびに観察手法とこれによる材料の組織・構造の新しい知見を要約している。

  第2章では、核分裂炉中性子を用いた照射損傷の研究における、照射時の試料温度制 御技術の開発、電子顕徽鏡観察用薄膜試料の直接照射技術の開発とこれらを用いたNi、 Ni合金の欠陥組織の観察を課題としている。  試料の温度制御に関しては、従来の方 式による問題点を指摘するとともに、正確な温度制御さらには多分割照射が可能な新し L、炉心照射装置の開発のため、炉外試験および照射の実行に至る一連の技術を検討して t、る。  薄膜試料の直接照射に関しては、その必要性ならびに実行を可能とする真空ミ ニカプセルの開発を述べている。  照射実行例については、NiとNi希薄合金の欠陥 組織に関して薄膜試料とバルク試料の比較、照射温度の影響、微量添加元素の効果につ L`て言侖じまた今後の研究の方向について述べている。

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  第3章 は 、金属 の精密加 工された 加工表 面層の解 析を課 題として いる。 一般に除 去加 工 した加工 表面は 組織が坡 されて いて表面 を含む 断而の透 過電子顕 徽鏡観察は難しいと さ れてきた 。した がってこ こでの 主な課題 は透過 電子顕微 鏡観察試 料の作製法にある。

こ の章は、 本研究 課題のた めに開 発した断 面およ び表面観 察用の電 子顕徽鏡試料作製法 に ついて述 ぺ、つ いで切削 加工、 ダイヤモ ンド砥 粒加工、 放電なら びにレーザー加工に お ける転位 組織、 加工変質 眉の深 さ、歪の 状態等 について 検討した 結果を述べている。

  第4章の 課題はldn―Znフ ェライ ト単結晶 の超精 密研磨面 の加工 変質層の評価である。

こ の 材 料は 主 に ビデ オ ヘ ッド に 用 いら れ、記録 密度の 高密度化 に伴い10nmのオーダ ― で 加工変質 層の制 御が課題 となっ ている。 この章 では、加 工表面層 観察のためのバック シ ンニング 法およ びへき開 を用い た試料作 製手法 の工夫を 行い、観 察した結果と他の測 定 法による 結果と 合わせて 表面お よび加工 変質層 の評価、 転位組織 等について新しい知 見を述べている。

  第5章 は 、金属 の繰り返 し引張り 一圧縮 を受ける 際の疲 労による 材料内 部での欠 陥の 蓄 積状態、 欠陥の 構造を明 らかに すること が課題 である。 一般に金 属疲労試験はバルク 試 料で行う が、こ の研究で は電子 顕微鏡観 察試料 を容易に 作製でき る金属薄板の疲労試 験 法を開発 し、ま た疲労組 織の発 達過程の 観察や 転位集団 の評価の ための電子顕徽鏡観 察 手 法 とし て「土gステ レオ法」 の開発 を行った 。疲労 組織につ いて転位 密集部 分の特 徴を解析し新しい知見を得ている。

  第6章 は 、 パー マ ロ イMR( 磁 気抵 抗 効 果) 素 子 のロ ー レ ンツ 法で の磁区 組織観察 で あ る 。 現在MR効果 を 用 いた パ ー マ ロイ素 子は高密 度磁気 記録読み 出しへ ッドとし て使 用 されてい る。使 用時に磁 区の発 生、移動 や消滅 に伴うバ ルクハウ ゼンノイズが問題と さ れている 。この 章の課題 は、高 解像度で の磁区 構造の観 察に適し た口ーレンツ法を用 い て、実際 の磁気 ヘッドに 用いる ミクロン 単位の 微小薄膜 試料に外 部磁界を印加した場 合 の磁区変 化の状 態を直接 観察す ることで ある。 この磁区 観察の目 的のために、微小な 薄 膜試料の 磁区観 察試料作 製法、 電磁レン ズの残 留磁界を 利用した 磁区観察中の磁界の 印 加方法を 開発し 、磁化過 程にお ける磁区 構造の 変化、特 に磁区制 御技術の効果を観察 で実証している。

  第7章 の 課 題 は 、 超 高 真 空 巾 (lx10ーloTorr) で 作ら れ た 一屈 の 膜 厚がnmオー ダ ーの異柚金属からなる超薄膜人工格子の積屈構造や糸Il織にI瑚するものである。この章は、

イ オンシン ニング による断 而観察 用試料の 作製法を開発し、これによりCo/Xfn、Co/Crの 人 工 格 子な ら び に巨 大 磁 気抵 抗 効 果 (GMR)用 人 工 格子 の 積 屈構 造を観 察し、物 性と の 関述を論 じてい る。また 人工格 子の積J襾構造が電子顕微鏡によりの観察できるために 人工格子膜の具備する条件を見出している。

  第8章 は 結言と して本研 究の全体 の課題 に対する 結果と 成果につ いてま とめてい る。

  こ れを要 するに、 著者は、 新しい 材料の開 発なら びに利Ju分 野における材料の微細組 織・構造の研究に電子顕徽鏡を活用するため必須な試料処F」!技術ならびに観察手法を開 発 したもの で、ま たこれに より新 たに材料 に関す る有益な 知見を得 ている。また本開発 の 試料処理 技術お よび観察 手法は 、今後の 材料の 基礎およ び開発研 究の推進に寄与する ところが大きい。

  よ って著 者は、北 海道大学 博士( 工学)の 学位を 授与され る資格 あるものと認める。

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