博 士 ( 工 学 ) 安 中 弘 行
学 位 論 文 題 名
連 鋳 鋳 片 の 表 面 欠 陥 の 改 善 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の要 旨
鋼 の 連 続 鋳 造 は1950年 代 に よ う や く 工 業 化 さ れ た 。 我 が 国 の 鋼 の 生 産 量 に 占 め る 連 続 鋳 造 の 比 率 は1970年 に は 約 10% で あ っ た が 、 1980年 に は 約 60% と 急 激 に 増 大 し 、 現 在 は100% に 近 づ き つ っ あ る 。 こ の 間 、 鋳 片 を 高 温 状 態 で 熱 間 圧 延 工 程 に送 る 直 送 化 の た め の 技 術 開 発 が 盛 ん に行 われ た。直 送化 を 図 る た め に は 鋳 片 の 無手 入 れ 化 が 必 須 で あ り 、 鋳 片 表 面 欠 陥防 止技 術の開 発が き わめ て重 要な 課題 とな って きて いる 。
特 に 、 鋳 型 内 で 発 生す る 表 面 欠 陥 に つ い て は 、 鋳 型 内 の 凝固 現象 が非常 に複 雑 で あ り 、 発 生 機 構 ・ 防止 対 策 と も に ま だ 解 明 さ れ て い な い 点が 多い 。この ため 、 鋳 型 内 で 不 均 一 凝 固 し や す い 、 炭 素 量 が0.08〜0.16% 程 度 の 亜 包 晶 鋼 の 表面 割れ や近 年生 産量 が急 増し てい る極 低炭素 鋼の 気泡 欠陥 が問 題と なっ てい る。
一 方 、 現 状 の 連 続 鋳造 に 代 わ る 新 し い 連 続 鋳 造 技 術 の 創 出に 対す る熱意 も大 き い も の が あ り 、 ス ト リッ プ 連 鋳 な ど ニ ア ネ ッ ト シ ェ イ プ キ ャス ティ ング法 の開 発 も 精 力 的 に 行 わ れ れ てい る 。 ニ ア ネ ッ 卜 シ ェ イ プ キ ャ ス テ ィン グは 製品に 近い 形 状 を し て お り 、 圧 延 率 が 少 な い た め 表 面 品 質 に 対 す る 要 求 が 特 に 厳 し い 。 こ の よ う な 背 景 か ら、 特 に 最 近 問 題 に な っ て い る 亜 包 品 鋼の 表面 割れ、 極低 炭 素 鋼 の 気 泡 欠 陥 、 さ らに 将 来 述 鋳 技 術 と し て の ス ト リ ッ プ 述鋳 にお ける表 面欠 陥 の 発 生 機 構 の 解 明 お よび そ の 改 善 技 術 の 開 発 を 本 研 究 の 目 的と した 。以下 にそ の 概要 を示 す。
第1章 で は 、 鋼 の 連 続 鋳 造 の 歴史 、 辿 鋳 鋳 片 の 表 面 品 質 改 善 技 術 の 重 要 性 に つ い て 述 べ た 。 ま た 、 述鋳 鋳 片 に 発 生 す る 表 而 欠 陥 を 分 類 し 、そ の特 徴を述 べる と と も に 、 そ れ ら の 改 善技 術 に 関 す る 従 来 の 研 究 に つ い て 紹 介し た。 さらに 、本 論 文の 目的 ・構 成に つい て示 した 。
第2章 で は 、 鋼 の 述 絖 鋳 造 に 必須 の 鋳 型 振 動 と 鋳 片 表 而 性 状 の 関 係 に つ い て 述 べ た 。 鋼 の 述 続 鋳 造 にお い て は 、鮎 型と 鋳Jヤ の焼 き付 きを 防止 する ために 鋳型 を 振 動 す る 必 要 が あ る 。こ の た め 、 鋳 型 の 振 勁 に 応 じ て 鋳 片 表而 には オッシ レー シ ヨ ン マ ― ク と 呼 ば れ る凹 み が 生 ずる 。オ ッシレ ーシ ョン マ― ク部 には 応カ が集111 し や す く 、 ま た 不 均 一凝 固 し や す い た め 横 剖 れ や 気 泡 欠 陥 が発 生し やすい 。そ こ で 水 モ デ ル 装 賦 ・ 試 験述 紡 機 ・ 実 機 改 造 述 鋳 機 ・ 実 機 述 鋳 機を 用い 、オッ シレ ― シ ョ ン マ ― ク の 生 成 にお よ ぼ す 鋳 型 振 勁 条 件 の 影 響 に つ い て調 査・ 研究し た。 そ の 結 采 、 鋳 型 振 動 数 の高 サ イ ク ル 化 に よ ル オ ッ シ レ ー シ ョ ンマ ーク 深さの 低減 お よ び 横 剖 れ の 防 止 が 可能 な こ と を 明 ら か に し た ふ 本 技 術 を 日本 で初 の高級 鋼用 ビ レ ッ ト 述 鋳 機 に 稼 働 当初 か ら 適 用 す る こ と に よ り 、 非 常 に 良好 な表 面品質 が得 ら
ー 399―
れることを示した。
第3 章で は、鋳型内 で発生する 横割れの起 因となる、 深いオッシレーションマ
―ク(ディ プレッショ ンマ―ク)の生成機構およびコ―ナ―横剖れの防止対策に ついて述べ た。亜包晶 鋼の高速鋳造化を図った際に、鋳片コーナ―部に鋳型内で 発生したと 考えられる 横割れが多発した。横割れはディプレッションマークの底 に発生し、 鋳型振動条 件の改善では解決できなかった。そこで割れ部の調査・数 値解析・実 機試験をお こない、ディプレッションマークの生成機構を明らかにし た。また、 湯面変動量 の低減によるディプレッションマーク発生の防止およびモ ールドパウダー物性の改善・鋳型狭面テーパの適正化による摩擦カの低減により、
鋳 型 内 で 発 生 す る コ ー ナ ー 横 割 れ を 低 減 で き る こ と を 示 し た 。 第4 章で は、亜包晶 鋼の縦割れ の起因とな る鋳型内の 凝固遅れの発生機構およ び縦割れの 防止対策に ついて述べた。鋳片中央部の縦割れは緩冷却モ―ルドパウ ダーの採用 により防止 できている。しかしながら、さらなる高速鋳造化を図った 際に、浸潰 ノズルから の吐出流が衝突するコーナー近傍に凝固遅れや縦割れが発 生した。ま た、縦割れ 部を起点にして鋳型直下でプレークアウトすることもあり 大きな問題 となった。 そこで、水モデル試験、数値解析により鋳型内の熱流動を 改善する新 しい浸潰ノ ズルを開発し、実機テストを通じてコ―ナ一部の凝固遅れ および縦割れを防止した結果について述べた。
第5 章で は、表面割 れとならん で問題とな っている、 気泡欠陥の生成機構につ いて示した 。気泡欠陥 は微細な欠陥ではあるが、近年生産量が急増している極低 炭素鋼に発 生しやすい 。極低炭素鋼は表面品質に対する要求が非常に厳しい用途 に用いられ るため、そ の防止技術の開発が求められている。そこで、気泡欠陥の 生成機構、 製品におけ るスリバ―欠陥との対応についての調査・研究をおこなっ た。その結 果、極低炭 素鋼は不均一凝固しやすく、溶鋼の粘度も大きいため気泡 が捕捉され やすいこと 、気泡の内壁にはA1 203 が存在する場合があることまた、
このAl 203 がスリバ .ー欠陥の原因であることを明らかにした。鋳型内での気泡 の浮上性の 改善、夕ン ディッシュ内での二次酸化の防止および製錬機能の強化を お こ な い 、 こ れ ら の 欠 陥 を 大 幅 に 改 善 で き る こ と を 示 し た 。 第6 章で は、二次冷 却帯で発生 する表面剖 れについて 述べた。二次冷却帯で発 生す る 剖れ は おも に 横剖 れ であ る 。通 常の 鋼穏では防 止できてい るが、Nb 、V などを含む鋼柚は剖れ感受性が大きく|瑚題となっている。これらの鋼柚の高温引 張試験、炭窒化物の析出挙動と高温延性の関係について調査した。その調査ネ占果 に基づき、斯述鋳機の矯正 j 捧長さの短縮・矯正点数の低減をおこなうことにより、
二次冷j ; 1Jj 浄での横剖れを防止できることを示した。
第 7 章では、ストリップ述鋳における表而欠陥の防.止技術について述べた。ス トリップ述 錨技術は、 溶鋼から血 接 2 t‑3mm 厚み の薄板を製造する技術であり、
現在世界各国で蟻んに I 荊発が進められている。ストリップ述錨により得られた鋳 Jt の凝固組織 、ロール― 鋳片lm の伝熱挙勁、水モデルによる流勁調査などをおこ ない、表面欠陥の発生機構を Ilj らかにした。また、板厚に応じた適正な鋳造述度 を設定する ことにより 横剖れを、ロール上の溶鋼母と注入する溶鋼盈との比を0.
2 以 上 に す る こ と に よ り 縦 剖 れ を 低 減 で き る こ と を 示 し た 。 第8 章で は、迎鋳鋳 片に発生す る各種の表 而欠陥の発 生機構および防止対策に ついてまとめて示した。
以上のよう に、本論文 は述鋳鋳片の表面欠陥の発生機構の解明およびその改善 技術の開発について述べたものである。
―400 ―
学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
連鋳鋳片の表面欠陥の改善に関する研究
我 が 国 の 素 鋼 生 産 に 占 め る 連 続 鋳 造 の 比 率 は 、1970年に は 約10% で あっ た が、l 980年 に は 約60% と 急 激 に 増 大 し 、 現 在 は ほ ぽ100% に 近 づ き つ っ あ る 。 こ の 間 、 鋳片直送化のための鋳片表面欠陥の防止あるい1ま低減技術の開発がきわめて重要な課題に なった。 鋳型内で 発生する表面欠陥については、鋳型内の凝固現象が非常に複雑なため、
発生機構 ・防止対 策ともにまだ解明されていない点が多く、特に鋳型内で不均一凝固しや す い 、 炭 素 量 が0.08〜0.16% 程 度 の 亜 包 品 鋼 の 表 面割 れ や、 近 年 生産 量 が急 増 し ている極 低炭素鋼 の気泡欠陥が大きな問題となっている。さらに現状の連続鋳造に代わる 新しい連 続鋳造技 術として、ストリップ連鋳などニアネットシェイプキャスティング法の 開発も精 力的に行 われれているが、この連鋳材の圧延率が少ないため表面品質に対する要 求も特に厳しく、表面欠陥の防止対策も重要課題となっている。
本論文は 、亜包品鋼の表面剖れ、極低炭素鋼の気泡欠陥、さらにストリップ連鋳におけ る表面欠陥等の鋳片表面部に発生する欠陥の発生機構の解1凋に関する研究結果およびその 改善技術の開発をまとめたもので、8章より構成されている。
第1章では 、本研究 の技術的重 要性と日 的・意義および本論文の構成について述ぺてい る。
第2章では 、オッシ レーション マークの 生成におよぼす鋳型振動条件の影響についての 研究結果 を述べて いる。鋳型振勁数の商サイクル化により、オッシレーションマーク深さ の低滅お よび横剖 れの防止が可能であり、本技術を日本で初の高級鋼JHビレット迎鋳機に 適用することにより、非常に良好な表而品質をi聾ている。
第3章では、鋳型内で発生する横剖れの起囚となる、深いオッシレーションマ.ーク(デ イプレッ ションマ ーク)の生成機構を、剖れ部の調査、数値解析、実機試験等で検討し、
湯面変勤 盈の低滅 によるディプレッションマーク発生の防止およびモールドパウダー物性 の改善、 鋳型狭面 テーパの適正化による鋳片ー鋳型岡の摩擦カの低減により、コーナ―横 割れを低滅できることを述べている。
第4竜では 、亜包品 鋼の縦剖れ の起因と なる鋳型内の凝固遅れの発生機構および縦剖れ
− ・401ー
行 雄
宜 夫
昌
達
邦
敏
藤 川
井 田
工 石
石 成
授 授
授 授
教 教
教 教
査 査
査 査
主 副
副 副
の防lt:対策について述べている。一般的には緩冷却化により防止できたが、高速鋳造化で 凝固遅れや縦剖れが再度発生した。そこで、水モデル試験、数値解析により鋳型内の熱流 動を改善する新しい浸潰ノズルを開発し、実機テストを通じてコーナ一部の凝固遅れおよ び縦割れを防止できることを示している。
第
5
章で は、極低炭素鋼の気泡欠陥と製品としてのスリバ―欠陥の生成機構について述 べている。極低炭素鋼は不均一凝固しやすく、溶鋼の粘度も大きいため気泡が捕捉されや,す いこ と、 気泡 の内 壁に はA 1203が 存在 し、 この
A1203
が スリバ ー欠陥の原因である ことを明らかにした。鋳型内での気泡の浮上性の改善、タンディッシュ内での二次酸化の 防止および製錬機能の強化をおこない、これらの欠陥を大幅に改善できることを示してい る。第
6
章 で は 、Nb、Vな どを 含む 割れ 感受 性の 高い 合金鋼 の二 次冷 却帯 で発 生す る表 面 横割れについて述べている。これらの鋼種の高温引張試験、炭窒化物の析出挙動と高温延 性の関係について調査し、連鋳機の矯正帯長さの短縮、矯正点数の低減をおこなうことに より、横割れを防止できることを示している。第
7
章で は、ステンレス鋼のストリップ連鋳における表面欠陥の防止技術について述べ ている。ストリップ連鋳により得られた鋳片の凝固組織、ロールと鋳片間の伝熱挙動、水 モデルによる流動調査などをおこない、表面欠陥の発生機構を明らかにし、板厚に応じた 適正な鋳造速度を設定することにより横割れを、口―ル上の溶鋼量と注入する溶鋼量との 比 を0.2
以 上 に す る こ と に よ り 縦 割 れ を 低 滅 で き る こ と を 示 し た 。第
8
章は 、本論文のまとめであり、連鋳鋳片に発生する各種の表面欠陥の発生機構およ び防止対策について簡潔に示している。これを要するに、著者は、炭素鋼、ステンレス鋼に発生する連続鋳造鋳片の表面欠陥に 関して、不均一凝固殻の生成機構や気泡のトラップ°機構などに新知見を得るとともに、表 面欠陥の大幅な低減に成功しており、鉄鋼材料工学の進歩に寄与するところ大なるものが ある。
よ っ て 著者 は、 北海 道大 学博 士( 工学 )の 学位 を授与 され る資 格あ る者 と認 める 。
―402 ‑,