博 士 ( 経 営 学 ) 秋 庭 太 学 位 論 文 題 名
地域における場の形成とマ不ジメント 学位論文内容の要旨
シ リ コ ン バ レ ー 等 の い く っ か の 先 進 的 地 域 を モ デ ル と し た 研 究 に よ り , 地 域 に お け る ネ ッ ト ワー ク の 強 み が 強 調 さ れ て き て い る . そ れ ら の 研 究 の 成 果 は 日 本 の 地 域政 策 に盛 んに 取 り入 れ られ て きた が, 思 つ た よ う な 成 果 を 生 ん で い な い の が 現 状 で あ る . こ れ は 地 域 に お け る 企 業 や 個 人 が ネ ッ ト ワ ー ク を活 用 し て 協 働 す る プ ロ セ ス を 詳 細 な 記 述 に 基 づ ぃ て 分 析 し た 研 究 が 少 な い こ と に 起 因 し て い る . 日 本 に 限 ら ず , こ の プ ロ セ ス を 詳 細 に 記 述 し 分 析 し た 研 究 は 少 な い . と く に 理 論 的 な も の に 限っ て い え ば さ ら に 少 な い と ぃ え る , そ の た め の 分 析 枠 組 み も 未 開 発 で あ る と ぃ っ て よ く , こ の 分 野 に つい て は 確 固 と し た 理 論 が 確 立 さ れ て い る と は ぃ え な い ,
本 研 究 で は , 地 域 内 の 主 体 に よ る 協 働 の プ 口 セ ス を , 近 年 経 営 学 の 分 野 で 研 究 が 進 め ら れ て いる 場 の 理 論 を 用 い て 実 証 的 に 分 析 し て い る , こ の 場 の 理 論 で は 地 域 に お け る 協 働 の プ ロ セ ス を 効 果 的 に記 述 す る こ と が 可 能 で あ る . 記 述 と 分 析 の 焦 点 は 相 互 作 用 の 現 場 と そ の プ ロ セ ス そ の も の に 置 か れ る . 本 研 究 の 目 的 は , 場 の 概 念 を 用 い て 地 域 内 の 複 数 主 体 に よ る 協 働 の メ カ ニ ズ ム を 明 ら か に す るこ と で あ る . 協 働 に 結 び っ く ネ ッ ト ワ ー ク を 形 成 す る プ ロ セ ス , お よ び そ れ に よ っ て 導 か れ る 協 働 の メカ ニ ズ ム の 解 明 が 本 研 究 の 中 心 的 課 題 で あ る . 中 で も , 協 働 の 現 場 の 形 成 に 必 要 な 要 因 お よ び , そ の 協働 の 現 場 を 継 続 的 に 維 持 し , 成 功 に 結 び つ け る 要 因 の 分 析 に カ 点 が 置 か れ る , そ の た め に 地 域 内 の 主 体に よ る 協 働 の 現 場 を 「 地 域 に お け る 場 」 と 定 義 し 実 証 分 析 を お こ な っ て い る .
ま ず 第 一 に , 地 域 内 の 成 果 を 挙 げ た 事 例 に 注 目 し , そ の 協 働の 現 場の 形成 メ カニ ズ ムを 明 らか にし た . 第 二 に 複 数 の 主 体 が 相 互 作 用 す る 現 場 の メ カ ニ ズ ム を 参 加 観 察 調 査 法 と 事 例 研 究 に よ り 明 ら か にし て い る . そ の 上 で , 分 析 結 果 を 統 合 し 「 地 域 に お け る 場 」 の マ ネ ジ メ ン ト を 明 ら か に し た . 結 論 を 要約 す る と 次 の よ う に な る .
(1) 先 行 研 究 に 基 づ ぃ た 分 析 枠 組 み を 用 い て 分 析 し た 結 果 、 「 地 域 に おけ る場 」 の形 成 およ ぴ 「地 域に お け る 場 」 の 相 互 作 用 そ れ ぞ れ に お ぃ て , 要 因 間 の 関 係 が 明 ら か に さ れ . 新 た な 分 析 枠 組 みを 構築 す る こ と が 可 能 に な っ た ,
(2) 「 地 域 に お け る 場 」 の 形 成 プ ロ セ ス に お ぃ て , も っ と も 重 要 な 役 割を 果た す のは コ アメ ン バー の行 動 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た . こ れ は 先 行 研 究 で は そ れ ほ ど 強 調 さ れ て ぃ な ぃ 事 実 で あ る. 他の 要 因 は コ ア メ ン バ ー の 行 動 を 支 援 す る こ と を 通 じ た 間 接 的 な 影 響 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た .
(3) コ ア メ ン バ ー の 行 動 と の 関 連 か ら , ア ジ ェ ン ダ は コ ア メ ン バ ― の 個人 的な 動 機に 基 づく と 同時 に、
場 を 形 成 す る メ ン バ ー に と っ て も 魅 力 的 な 形 で 設 定 さ れ る 必 要 が あ る こ と が 明 ら か に な っ た .
(4) 日 常 の 交 流 に 基 づ く ネ ッ ト ワ ― ク は 、 地 域 内 の 協 力 者 を 探 索 す る 際に 大き な 役割 を 果た す 事が 明ら か に な っ た が , 同 時 に あ く ま で コ ア メ ン バ ー に 対す る 支援 機 能し か もた なぃ こ とも 明 らか に され た,
(5) 「 地 域 に お け る 場 」 に お ぃ て 、 濃 密 な 相 互 作 用 を 実 現 す る た め に も っ と も 重 要 な 要 因 は , よ り 具 体 的 な 議 題 で あ る @ サ ブ ァ ジ ェ ン ダ の 設 定 に よ る 相 互 作 用 の か じ 取 り と @ メ ン パ 一 内 で の理 念・
価 値 観 の 共 有 で あ る 事 が 明 ら か に な っ た , 相 互 作 用 の か じ 取 り と は . ア ジ ェ ン ダ に 基 づ ぃ たサ ブァ ジ ェ ン ダ の 設 定 で あ る と ぃ う こ と が 実 証 分 析 を 通 し て 明 ら か に な っ た .
(6) 「 地 域 に お け る 場 」 の 形 成 と 相 互 作 用 そ れ ぞ れ の 分 析 か ら 「 地 域 にお ける 場 」の マ ネジ メ ント が明 ら か に な っ た , 「 地 域 に お け る 場 」 の 形 成 と 相 互 作 用 の プ ロ セ ス は 相 互 に 深 く 関 連 し て ぃ る, その た め 「 地 域 に お け る 場 」 の マ ネ ジ メ ン ト は ― 貫 して お こな わ れな け れば ぃけ な ぃこ と が明 ら かに なっ
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て ぃる.「地域におけ る場」のマネジメ ントでは,サブァ ジェンダを効果的に設定できるスキルを も った人物をあらかじ め場の形成時にメンバーとして獲得することと.事前調査を実施してメンバ―
を 探 索 し 、 可 能 な 限 リ 理 念 や 価 値 観 を 共 有 で き る 人 物 で 場 を形 成す る こと が重 要 とな る.
以上 の分 析 から 本研 究では「 地域における場」 の形成とマネジメン トを分析し明らか にすることがで きたと考えてい る.この「地域にお ける場」の一連の プロセスを実証的 に分析し,そのプ口セスの一貫 した 論理 を 明ら かに するとと もに,新たな分析 枠組みを構築したこ とが本研究の最大 の貢献である.
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
地域における場の形成とマネジメント
本論文は、近年経営学において注目を集めてきている「場」という概念を用いて、地域における 協働のネッ卜ワークの形成とマネジメントについてインテンシイブな調査に基づぃて明らかにした 先駆的な実証研究である。
これまで地域に関する研究は、経済地理学や経済学の視点からの分析が多く、経営学をべースに した研究は極めて少数に限られていた。近年になって、ネッ卜ワークやクラスタ←という概念を用 いて地域の産業集積や優位陛の問題を経営学的に分析する研究が徐カにではあるが行われるように なってきた。秋庭氏の研究は、このような地域に関する最近の経営学的研究を踏まえたうえで、さ らにマネジメントの視点から分析するために、経営学における新しい用語である「場」の概念を導 入することによって、地域の多様な主体が相互作用し、コラボレー卜するプロセスを解明しようと 試みている。これまでネッ卜ワークやクラスターの重要性が指摘されてきてはいるが、その形成や 展開のプロセスは必ずしも十分に解明されてこなかった。秋庭氏の研究の意義は、既存の研究では 明確ではなかったネッ卜ワークやクラスターの形成プロセスを、「場」という新しい概念を用いるこ とによって説得的に分析していることにある。そして、この研究は既存のネッ卜ワークやクラスタ ーによる地域の研究のかけている部分を補完し、地域の経営学的研究を総合的に展開する可能性を 示している。しかも、このような現象を有効に解明するためには、相互作用が展開されている現場 に入り、詳細な観察を行うことが必要となるが、このような調査を実施することは必ずしも容易な ことではなぃ。秋庭氏は、参加観察を含む多様な研究方法を用いることによってこのような現場で 生じる相互作用のりアルな姿を捉え、コラボレーションが生まれていくプロセスを詳細に分析して いる。
〈<論文の概要>>
第1 章の序論において従来の研究では地域におけるネットワークの重要陸と意義については多く の指摘がなされているが、そのようなネットワーク形成の契機となる多様な主体間の協働が生み出 され、それが有効な形で継続されるプロセスについての分析は理論的にも経験的にも未開拓のまま 残されていることが明らかにされ、その解明が本研究の中心的課題であるとの研究目的が明確に設 定されている。
第2 章は、この課題の解明にとって有効と考えられるネットワークと場に関する先行研究のレビ ユーが行われ、既存の研究の貢献と限界が提出されている。
続 く第3 章 では、 第2 章の先行研究のレビューを踏まえ、地域において協働の場が形成され、相 互作用が展開されるプロセスを解明するための分析枠組が提示されている。この分析枠組みによる
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と、場の形成に関わる変数として、「アジェンダ」「コアメンバー」「日常の交流に基づくネットワー ク」「コンテクス卜」の4 つの要因が、場の相互作用においては「アジェンダ」と「メンバーシップ」
の2 要因が鍵となると認識されている。
第4 章では地 域における協働の場が形成さ れるプロセスをニつの事例による比較事例研究によっ て分析し ている,事例は市民活動で あるYOSAKOI ソーラン祭りの スタートアッププロセスと産 ・ 官・学のスタッ フが連携した水谷プロジェクトの誘致と法人化にっいてである.これらの比較事例 分析からは,地 域における協働プロセスにおいて最も直接的な影響をもち,かっ重要な役割を果た しているのが「コアメンバー」であることが明らかになっている.
第5 章では, 地域において協働の場が形成 された後に展開される相互作用のプロセスについて分 析している.こ こでは株式会社北海道ハウジングオペレーションが,有識者を集めておこなったフ ランチャイズ事 業戦略検討会議における相互作用を分析対象としている.秋庭氏は、参加観察を実 施することで、 このような場における相互作用プロセスを分析している.これらの分析から「アジ エンダ」と「メンバーシップ」の2 要因に加え,「サブアジェンダの設定」ならびに「理念や価値観 の 共有 」が 濃密 な相 互 作用 を実 現す る ため の重 要な 要因 で ある こと が明 らかにされている . 第6 章 では第4 章と第5 章の分析に基 づき,協働の場の形成と相 互作用が展開されるプロセス を 有効に分析する ための新たな分析モデルを提出するとともにこれまでの分析結果を統合し,地域に おける場のマネジメントを議論している.
最後に第6 章では,これまでの分析結果 と理論的含意,および実践的含意が提示されている.
〈<論文の評価〉>
1 本論文の最 大の貢献は、「場」という経 営学においては新しい概念を用いることによって既存 の研究ではほと んど解明されていない地域における協働のプロセスを経営学的に分析し、これまで の地域とネッ卜ワークの議論を大きく発展させたことである。
2 本論 文の分析によって、地域にお ける協働のネットワークの 形成と相互作用のプロセスを 解 明するための分 析モデルが具体的に提示され、プロセスを促進させる要因聞の関係が特定化される ことによって地 域の有効なコラボレーションを生み出すためのメカニズムが明らかになった。この こ と に よ っ て 、 本 研 究 は 地 域 の 活 ´ 陸 化 に と っ て 重 要 な 政 策 的 含 意 を 提 出 し て い る 。 3 本研 究では参加観察を調査の主要 な戦略として採用すること により、面接調査等の方法で は 明らかにするこ とが困難な現象を分析することが可能となり既存の研究では得られないいくっかの 興味ある知見が 獲得されている。これによって、相互作用プロセスを観察、分析する方法としての 参加観察の有効性が示されている。
なお、審査委 員会では問題点として、ネットワークに関する多様な知識在庫についての詳細なレ ビ ュー を行 うこ とに よ って場の概念 との関連性を明確にする必 要があるとの指摘がなされた 。
<<結諭〉>
以上の所見を 総合して、本審査委員会は本論文を博士(経営学)の学位を授与するに値するもの と判断した。
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