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学位 論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

     博 士 ( 地 球環 境科 学 )比 嘉道 也 学 位 論 文 題 名

   Expermental Study on Restitution Coefficients of Ice Spheres with reference to the Evolution of Planetary Rings

( 惑 星 リ ン グ の 進 化 に 関 す る 氷 球 の 反 発 係 数 の 実 験 的 研 究 )

学 位 論 文 内 容の 要旨

  氷 は 外惑 星の 衛星,惑星リング 彗星などでその存 在が確認されており,太陽系に多 量に 存 在す る重 要な構成鉱物である.惑星リングは惑 星の周りをケプラー運動している 多数 の りン グ粒 子で構成されている.リング内では, 軌道の交差による粒子どうしの衝 突が 起 きる ため ,惑星リングの進化過程の研究におい て,リング粒子間の衝突の際に行 われ る エネ ルギ 交換 が重 要で ある .土 星リ ングは,cmサイズからmサイズの分布を持つ 氷粒 子 で構 成さ れているので,土星リングの進化過程 を知るためには個々の氷の衝突の 物理を解明した上で,軌道進化 過程をシミュレートする必要がある。そのため低温下(〜

100K)で幅広い衝突速度一サイズ領域での氷球の衝突特性を 解明する必要がある.本研究 では氷球を氷ブロックに衝突させ,鉛直方向の氷球の反発係数(6)について広い衝突速度 (vi二 ニ11000 cm/s),サ イズ (氷 球半 径, り 0.143.6 cm),温 度(T269〜113 K)条件下で測定を行った・

  試 料 は多 結晶 氷( 粒径13 cm)を 整形 して制作した .ただし,氷球半径ルニニ0.14 試料 は 蒸留 水を 急冷 する こと によ って 制作 した.反発係数は高速度ビデオ(200又 は500 フレーム/秒)またはAcoustic‑Emissionセンサーを用いて 測定した。実験温度は,温度 範囲269 ‑ 245Kでは低温室の温 度を調節して,低温度範囲215〜  113Kでは専用の低温制 御装置を製作して用いた.低温 制御装置の温度調節は冷却部(銅製)に液体窒素を循環さ せて行った.

  実験の結果,反発係数は衝突破壊の起こり始める臨界速度(眺)、を用いて整理できた・

反発 係 数は 準弾 性領 域(弧≧vc)と 非弾 性領 域(vi冫vc)に 分け る こと ができた.(1)q がve以下の場合には弧に関係な く,£は一定であり準弾性衝突が起こる.cの最大値は完 全弾性体にほぼ近い値(s>―0.95)をとり,サイズ,温度依存性がほとんど見られなかっ た.しかし,£のばらっきが半径の減少とともに増加し,£の平均値が半径の減少とともに 0.95土0.04(ルニニニ3.6)から0.71:f:0.09(ルニニ0.14)ヘ減少した.これは氷試料の表面の不 規則性に起因すると考えられ, 表面の凸凹によって並進のエネルギーだけでなく回転や振 動のエネルギーにも分配が起こ るためである.(2)一方,晄 冫班の場合には,破壊を伴う 衝突となり,£はqとともに減少した.£はveを用いて実験ピ〜(菱)―g(h)によって表さ れた . この 時veは半 径の 減少 とと もに 増加 し,温度T>―228Kでは温度の減少とともに

(2)

増 加 し た が ,T 228Kでは 一定 とな った . このveの サイ ズ及 ぴ温 度依 存性 はHertz 理論を用いることにより,破壊せん断応力(ん)の歪み速度(ミ;)及び温度依存性と解釈 できる.破壊せん断応カの歪み速度及び温度依存性は,己= ATC 。exp(一RE̲r)で整理でき るこ とが 分か った .ここでR‑気体定数 ,A‑定数,nc〜ー6.5Ec=クラック形成の活性化 エ ネ ル ギ ー で あ る . Ecは ,T> ―228KEc=49 kj/molと な り ,T228Kで 温度 依存 性がほとんどない.この関係は,氷の静的な変形実験(歪み速度〜 10−4S−1)でも脆性破 壊において成り立っことが知られている.この時,応カのべき乗n。が高い値をとること,

温度 依存 性が 高温 領域で見られるのに 対して低温領域でほとんどなくなることと同様な 傾向が見られた.この一致から,動的な衝 突実験と静的な変形実験における破壊のメカニ ズムが同様なものであることが示唆される.

  さ らに ,破 壊せ ん断応カの歪み速度 及び温度依存性から,任意の温度における氷球同 士の 衝突 にお けるveのスケーリング則 が得られるので,反発係数を見積もることができ る.現在の土星メインリングの厚さ.(く200 m)を理論的に説明するためには,リング粒 子の 反発 係数 は非 弾性 的( 例 えば ,qlcm/ss〜0.6)である必要がある.しかしメ インリングのサイズ‐温度依存性を考慮しても,滑らかな表面の氷球の反発係数iよ予想さ れる 反発 係数 より 弾性 的( ル ニニ ニ10mT〜100K,弧くlcm/sでE1)である.この事 実は,土星リング粒子が滑らかな表面を持 つ粒子ではないことを示している.一方,氷の 破壊が反発係数の減少を伴うことを考慮す れば,土星のりングが,粒子の破壊を伴った粒 子表面の粗さ形成によって反発係数を小さくする可能性がある.このこ、とは,リングの進 化がりング粒子の表層の進化によって決まることを示唆している.

(3)

学位 論文審査の要旨

主査   教授   前野 副査   教授   本堂 副査   講師   水野 副査   教授   山本      学位論文題名

紀一 武夫 悠紀子

哲生(大学院理学研究科)

   Expermental Study on Restitution Coefficients of Ice Spheres with reference to the Evolution of Planetary Rings

(惑星 リン グの 進化 に関 する 氷球の反発係数の実験的研究)

  

氷は 、外 惑星 の衛 星、 惑星 リング、彗星などを構成する太陽系において極めて重 要 な 鉱 物 で あ る 。 特 に 、 土 星 リ ン グ は 数

cm

か ら 数 十

m

の 大 き さ の 氷 粒 子 で 出 来 て お り 、 ケ プラ ー運 動す る氷 粒子 は軌 道の 交差に よる 頻繁 な衝 突に よっ てエ ネル ギ ー 交 換 を 行な い、 リン グの 特徴 的な 直径 や厚さ を決 定し てい ると 考え られ てい る 。本 研究 は、 この よう な惑 星リングの現在の姿およびその進化過程を解明するた め に 不 可 欠 では ある が未 だ明 らか にな って いなか った 氷粒 子の 衝突 特性 を広 い温 度 、速 度範 囲で 詳細 に調 べ、 惑星リング研究のための基礎データを確立したもので あ る。 研究 は、 氷球 を氷 ブロ ック に衝 突さ せ、 鉛直 方向の 反発係数(E)について 広 い 衝 突 速 度(vi:1〜1000 cm/s)、氷 球半 径(rp: 0.14〜

3.6 cm)

およ び温度 (T

269

113K

冫 の 条 件 下 で 行 わ れ た 。 研 究 は

4

部 か ら な り 、 第

1

部 で は 惑 星 リ ン グ およ ぴ氷 の反 発係 数に 関す るこ れま での 研究 のレ ビュー 、第2部では実験の装置 と 方法 、第

3

部 では 実験 結果、 そして第4部では結果の議論と惑星リン,グの進化研 究 への 応用 が述 ぺら れて いる 。

  

実 験 に 用 いら れた 試料 は、 多結 晶氷 (粒 径1〜

3 cm)

を整 形し て製 作さ れた 。氷 球 半径 が0.14 cmの 試料 は蒸留 水を 凍結 する こと によ って 作られた。反発係数は高 速 度ビ デオ

(200

又は

500

フレー ム/ 秒) また はア クー ステ イック.エミッション・

セ ン サ ー を 用 い て 測 定 さ れ た 。 実 験 温 度は 、温 度範 囲269〜245Kで は低 温室 の温 度 を 調 節 し 、 よ り 低 い

215

〜113Kで は 専 用 の低温 制御 装置 (液 体窒 素使 用) で調 節 され た。

  

実験 で求 めら れた 反発 係数 は衝 突破 壊の 起こ り始 める臨 界速度(v。)を用いて 整 理 さ れ た 。 反 発 係 数 は 準 弾 性 領 域

(vi

v

。) と非 弾性 領域

(vi>v

。) に分 けら

(4)

れ、次の結果が得られた。(

1

)viが

vc

以下の場合にはviに関係なくsは一定であ り、準弾性的に衝突が起こる。£の最大値は完全弾性体にほぼ近い値(

s

≧0.95

)をとり、サイズ、温度依存性がほとんど見られない。しかしsのばらっきは半径 の減少とともに増加し、

s

の平均値は半径の減少とともに

0.95

土0.04 (rp=3.6)か ら0.71土0.09 (rp=0.14)ヘ減少した。これは氷試料の表面の不規則性に起因する と考えられ、表面の凸凹によって並進のエネルギーだけでなく回転や振動のエネル ギーにも分 配が起こる ためである。

(2)

一方、

Vi>Vc

の場合には破壊を伴う衝突 となり、Eはviとともに減少する。ピは

ve

を用いて実験式c〓(yi/yc)‑log (VivJに よって表された。この時v。は半径の減少とともに増加し、温度T≧−228Kでは温度 の減少とともに増加したが、

T

≧228Kでは一定となった。この

v

。のサイズ及び温 度依存性は

Henz

の理論を用いることにより、氷の破壊せん断応力(て)の歪速度 及び温度依存性として解釈された。破壊せん断応カの歪速度及び温度依存性の結果 から求められた応カベき数は

6

.5、活性化エネルギーは49kJ/

mol

であり、228K 以下ではほとんど温度依存性が認められなかった。これらの結果は、氷の静的な変 形実験(歪速度〜

10

一4s.1)における脆性破壊の場合と同様であり、同種の破壊メ カニズムが関与していることが示唆された。

  

次に、破壊せん断応カの歪速度及び温度依存性を一般化することにより、任意の 温度における氷球衝突に関するv。のスケーリング則が求められた。その結果、任 意の大きさの水球の反発係数がどの温度でも見積もることが可能となった。最後 に、得られた結果の応用の一例として土星リングが扱われた。理論によれば、現在 の土星のメイン・リングの厚さ(く

200m

)を説明するためにはりング粒子の反発 係数は非弾性的(例えば,

vi

く1cm/sでc〜

0

.6)である必要がある。しかし、本 研究の結果により、リング粒子のサイズと温度依存性を考慮しても反発係数はより 弾性的であり、現在の土星リング粒子が滑らかな表面を持つ氷球ではないことが結 論された。また、氷の破壊が反発係数の減少を伴うことを考慮し、土星リングがり ング粒子の衝突破壊による表面の粗さ形成を伴って進化してきたことが結論され た。

  

審査員一同は、以上の成果が惑星リングの現在の構造および進化の研究に寄与す るところが大きく、また申請者が研究者として誠実かつ熱心であり、大学院課程に おける研鑽や取得単位等も併せ、申請者が博士(地球環境科学)の学位を受けるに 十分な資格を有するものと判定した。

参照

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