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博 士 ( 工 学 ) 齊 田 愛 子

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 齊 田 愛 子

     学 位 論文 題名

Metal Hydride Production without Activation Treatment      ( 活 性 化 処 理 不 要 の 水 素 吸 蔵 合 金 製 造 法 )

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  水素エネルギー社会 の実現に向け、安全かつ高効率な水素貯蔵技術の開発は急務の課題である。

従来は圧縮や液化など 分子状水素の貯蔵が主流で あったが、これら物理的手法 による貯蔵技術は 液体水素密度を上限と して高密度化には限界がある。一方、水素吸蔵合金は水素との可逆反応によ り水素化物を形成し、 原子水素をその格子内に取り込むことから、従来技術以上の高密度水素貯蔵 が期待できる。しかし ながら水素吸蔵合金は合金 原料、合金製造および合金水 素化処理にエネル ギーおよぴ時間を浪費 し、結果として製造費が上 昇するため実用的であるとは 言い難い。そこで 本研究では、合金の水 素化処理を繰り返す「活性 化処理」と呼ばれる工程が最 も非効率的である ことに着目し、合金水 素化物の直接合成による活 性化処理の省略を目的とし、 水素化燃焼合成法 (Hydriding CombusdonSynmesis、HCS)およぴ気相合成法を 提案しそれらの実用可能性 を調査し た。燃焼合成(CS)と は原料の一端を加熱することにより発熱反応を励起させ、この化学反応によ り生 じる 反 応熱 を燃 焼波 とし て 原料 中に 自己 伝 播さ せる 粉末冶金の一種である。HCSではCSを 水素雰囲気中で行うこ とにより原料粉末間の固固反応または水素と粉末間の気固反応を利用し、合 金製造と水素化の同時 処理が可能となる。特に反 応熱の不十分な系については 予熱によるThennd ExplosionHCS(TE‐HCS)を、反応速度の小さい系 には機械的活性化(Mechamc齟Acmation)によ るHCSQ仏‐HCS)を試 みた。

  本論文は以下の7章 から構成される。

  第1章では本研究の 背景および目的を述べた。

  第2章 では マグ ネ シウ ム系 合金 水素化物のTE‐HCSを試み た。これまで代表的水素吸 蔵合金の ー つMg2NiH4のCSお よ ぴ そ の 水 素 化 物Mg2NiH4のHCSは 報 告 さ れ て い る が 、2g程 度 の 試 験 的規 模実 験のみであり、実用可 能性調査は充分であるとは 言い難い。そこでHCSの系統 的調査を 行う べく 、100g規模 の生 産能 カ を有 するHCS装置 を開 発し た 。同 装置 は主 と してTE.HCS用で あり 、こ れ は燃 焼波 に利 用す る 反応(2Mg十Ni=Mg2Ni十65kJ)の反応熱が比較的小さ く不十分 なため、大規模処理に おいて燃焼波が完全には伝播しないためである。同装置における最適条件を 決 定 し 、 加 熱 温度600℃. 加熱 時 間1時 間・ 水 素雰 囲気4MPaの 条件 にお いて 高純 度Mg2NiH4の 合成に成功した。加熱 時間および水素圧カは合金化および水素化が完了するための必要最低条件で ある。加熱温度はHCSが円滑に進行するMg‐Ni共晶 点(506℃)以上、かつ原料融点(Mg;650℃)

以下であることが重要 で、融点以上の温度では共晶およびマグネシウムの揮発が顕著に発生し、製 品純 度を 低下させた。得られたMg2NiH4は初期水素化におい て活性化処理を必要とせず 、高い水 素化 活性 を示した。同様にMg‐Cu系およぴMg‐Ni‐Cu系合 金にっいてTE−HCSを適用し 、初期活 性の 改善 された高純度合金水素 化物を得た。HCS製品は水素 を含むため酸化されにくく 、加えて 内部水素の放出時に微 小亀裂を生じるために、反応活性面が従来品よりも大きくなり高い初期水素 化活 性を 示すことが判明した。 これらの結果から、HCSは従 来問題となっていた活性化 処理の省 略および合金水素化物 の直接合成に効果的であり、種々の合金系について適用可能であることが裏 付けられた。

  第3章 で はMg2FeH6のMA−HCSを 試み た。Mg−Fe系 は 安定 相を 形成 しな い が、 水素 共存 下 に

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お い て の み水 素 化 物 相Mg2FeH6を形成 する。 しかし 従来のMg2FeH6製造 は焼結 やメカ ニカルア ロイングナょどにより長時間を要し、かつ収率は60ゲ。程度と低く非効率的である。そこで原料を微 粉 砕 す る こと に よ り 機械 的 に 生 成反 応 を 活 性化 し 、Mg2FeH6の 迅速合 成すな わちMA‑HCSを 試 み た 。 ポ ール ミ ル を 用い て 微 粉細した 原料Mg+Feを500℃に て10時間 加熱処 理した 結果、 純度 80ゲ 。のMg2FeH6を得た。製品は活性化処理を必要とせず、製造後は繰り返し水素を吸蔵・放出し た。本手法により従来法よりも短時間の加熱処理でより高純度・高活性製品を得た。これはボール ミ ル 処 理 に よ る メ カ ノ ケ ミ カ ル 効 果 が 焼 結 反 応 を 活 性 化 し た た め と 推 察 さ れ る 。   第4章では 水素吸 蔵合金 ´riFeのHCSを提案 した。 代表的水 素吸蔵 合金TiFeは原料が安価かつ 豊富であり常温常圧で作動するため実用的であるが、初期水素化活性が著しく低いため製品化され て いない 。そこ でCSを適 用し活 性化フ リーTiFeの 合成を 試みた 。原料 であるチタンと鉄の粉末 混 合 体をHCS処理し 、原料 中のチ タンと 水素の 反応熱Cfi十H2〓T1H2十144 kj)を利 用して 高純 度TiFeを合成 した。 製品の 水素吸蔵特性は大幅に改善されており、従来は高温で10回以上繰り返 さ れる活性化処理が1回で完了した。この結果は、今後操作条件を最適化することにより活性化処 理不要のTiFe製造技術が実現可能であることを示唆した。

  第5章では 、マグ ネシウ ムの蒸 気圧が 大きい ことに着 日し、MgH2の気 相合成 を試みた 。4MPa の高圧水素中にてマグネシウムを加熱し、発生した蒸気をインコネル製基板上に析出させた。析出 物 は直径 約500 nm, 全長数十 ミクロ ンの針 状MgH2結 晶であっ た。一 般に金属は水素脆性によっ て微細化しやすく単結晶水素化物として得るのは困難であったが、本実験結果はこの常識を覆し単 結晶が得られた。針状結晶の成長方向から、成長機構はマグネシウム層と水素層の交互析出である ことを示唆した。水素吸蔵合金としてのマグネシウムは安価かつ高水素密度のため最有望視されつ っも、水素拡散性および収率の低さから実用化が遠かった。気相合成による高効率合成が可能とな れぱ大きな成果である。

  第6章では 、上記2〜5章に おいて 実施し たCS法お よび気 相合成 法の有 効性を 調査すぺ く、各 プロセスシステムのエクセルギー解析を行い既存手法と比較した。解析に要する操業条件は、提案 法は実験条件に基づき、従来法は実プロセスおよび実験結果に基づき決定した。解析の結果、従来 法 は活性 化前処 理にお いて全 エクセル ギー損 失(EXL)の80%を消費しており、水素吸蔵合金を直 接合成し活性化処理を省略しうることにより大幅な省エクセルギー効果が見込まれることを定量的 に明らかにした。

  第7章では、本論文の研究成果を総括した。

  以上、本研究は従来の金属水素化物製造において最も非効率的な工程、活性化処理の省略を目的 と し、HCSま たは気 相合成 法によ る金属 水素化 物の直接合成を提案した。本研究の成果は同手法 の実用可能性を材料工学の観点から明らかにし、その有効性をエネルギー工学の観点から定量的に 評 価 し た こ と で 、 水 素 貯 蔵 技 術 の 実 用 化 に 大 き く 貢 献 す る と 考 え ら れ る 。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Metal Hydride Production without Activation Treatment

(活性化処理不要の水素吸蔵合金製造法)

  水素社会の実現に 向け、水素吸蔵合金は高密度水素貯蔵材料として期待されているが、合金製造 およぴ水素化処理に エネルギーおよび時間を浪費 するため実用的であるとは 言い難い。そこで本 研究では、合金の水 素化処理を繰り返す「活性化処理」と呼ぱれる工程が最も非効率なので、活性 化処理の省略を目的 として水素化燃焼合成法(Hydriding Combustion Synthesis、HCS)および気相 合成法による合金水 素化物の直接合成を提案し、 それらの実用可能性を調査 している。燃焼合成 (CS)とは原料の一端 を加熱することにより発熱反 応を励起し自己伝播させる 粉末冶金の一種であ り、HCSではCSを 水 素雰 囲気 中で 行う こ とに より 合金 製 造と水素化の同時処理が可能 となる。

  本論文は以下の7章 から構成される。

  第1章では本研究の 背景および目的を述べてい る。

  第2章 で は 生成 熟が 比較 的小 さ いMg系水 素吸 蔵合 金 に対 してThermal Explosion HCS (TE‑

HCS)を試 み てい る。 これ ま で代 表的 水素 吸蔵 合 金の ーつM92N1H4のHCSは 報告 されて いるが、

実用 可能 性 調査 は充 分で あ ると は言 い難 い。 そ こでHCSの系統的調査を行うべく、100g規模の 生産 能カ を 有す るTE‑HCS装 置を 開発した。同装置におい て、加熱温度600℃、加熱時 間1時間、

水 素 雰 囲 気4 MPaの 条 件 に お い て 高 純 度Mg2NiH4の 合 成に 成功 した 。 加熱 温度 はTE‑HCSが 円 滑に 進行 するMg‑Ni共晶点(506℃)以上、かつ原料融点(Mg; 650℃)以下であることが 重要で、

融点以上の温度では 共晶およびマグネシウムの揮発が顕著に発生し、製品純度を低下させた。得ら れたM92NiH4は初期水素化にお いて活性化処理を必要とせ ず、高い水素化活性を示した 。同様に Mg‑Cu系 お よ びMg‑Ni‑Cu系 合金 に つい てTE‑HCSを適 用 し、 初期 活性 の 改善 され た高 純度 合 金 水素 化物 を得た。これらの結 果から、HCSは従来問題とな っていた活性化処理の省略お よぴ合金 水素化物の直接合成 に効果的であり、種々の合金系について適用可能であることが裏付けられた。

  第3章では、従来法 では合成が困難なMg2FeH6に 対して、機械的活性化(Mechanical Activation) 後HCSす る 、MA‑HCSを 試 み た 。 ボ ー ル ミ ル を 用 い て 微 粉 砕 し た 原 料2Mg十Feを500℃ に て 10時 間加 熱処理した結果、純 度80ゲ。のMg2FeH6を得た。 製品は活性化処理を必要とせ ず、製造 後は繰り返し水素を 吸蔵・放出し、ボールミル処理によるメカノケミカル効果が初期活性を改善す ることを明らかにし た。

  第4章 では 水素 吸 蔵合 金TiFeのHCSを提 案し て いる 。代 表的 水素 吸 蔵合 金TiFeは原 料が安価 かつ豊富であり常温 常圧で作動するため実用的であるが、初期水素化活性が著しく低いため製品化 され てい ない。原料であるチ タンと鉄の粉末混合体をHCS処理し、原料中のチタンと水 素の反応 熟(Ti十H2 TiH2十144 kj)を利 用して高純度TiFeを合成 した。製品の水素吸蔵特性ほ 大幅に改

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宏 明

隆 聡

友 惣

山 貫

浦 田

秋 大

松 丹

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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善されており、従来は高 温で10回以上繰り返される活 性化処理が1回で完了した。 この結果は今 後操作条件を最適化する ことにより、活性化処理不要 のTiFe製造技術が実現可能であることを示 唆した。

  第5章 では マグ ネシ ウ ムの 蒸気 圧が 大き い こと に着 目し 、MgH2の気 相合成を 試みている。4 MPaの 高 圧水 素中 にて マ グネ シウ ムを 加熱 し た結果 、直径約500 nm,全長数十ミ クロンの針状 MgH2結晶がインコネル製 基板上に析出した。一般に金 属は水素脆性によって微細化しやすく単結 晶水素化物として得るの は困難であるが、本実験結果はこの常識を覆し単結晶が得られた。高純度 MgH2は従 来法 で は製 造困 難であるため、今後、本気 相合成法による高効率合成が 期待される。

  第6章 ではHCS法お よび 気相合成法の有効性を調査 すぺくエクセルギー解析を行 い、既存手法 と比較している。解析に 要する操業条件として、提案法は実験データ、従来法は実プロセスおよび 実験データを採用した。 解析結果は従来法は活性化処 理において全エクセルギー 損失(EXL)の80

%を消費しており、HCS法 による水素吸蔵合金の直接 合成ならびに活性化処理の省 略は大幅な省 エクセルギー効果をもた らすことを定量的に明らかに した。

  第7章では、本論文の研 究成果を総括した。

  以 上、著者は従来の金属水素化物製造において最も非効率的な工程、活性化処理の省略を目的と し、HCSまたは気相合成法による 金属水素化物の直接合成を提 案し、同手法の実用可能性を反応 工学 およびプロセス工学の観点から新しい知見を示している。これらの結果は水素貯蔵技術の実用 化の みならず、材料工学およぴエネルギー工学に対しても貢献するところ大である。よって著者は 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 が あ る も の と 認 め る 。

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