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(1)

モデル圏

alg-d

http://alg-d.com/math/kan_extension/

2019 年 3 月 24 日

目次

1 定義と導入 . . . 1

2 基本的性質 . . . 4

3 ホモトピー圏の構成 . . . 17

4 導来関手 . . . 22

1 定義と導入

通常の圏では同型な対象は同じものとみなすが,数学では同型でないものでも同じとみ なすことがある.例えば位相空間の圏Topにおいてはホモトピー同値や弱ホモトピー同 値という概念がある.更にこのTopはcofibration,fibrationと呼ばれる種類の射も持っ ている.このような,「weak equivalence」「cofibration」「fibration」と呼ばれる射を持 つ圏のことをモデル圏という.

定義. 可換図式

a u

b v

f i p

g

のリフトとは,射h: b →uであってf =h◦ig =p◦hを満たすものをいう.即ち次

(2)

の図式が可換となるようなhである.

a u

b v

f i p

g h

定義. モデル圏とは,完備かつ余完備な圏C であって,W,Cof,FibMor(C)が与えら れ,以下の条件を満たすことをいう.

(1) (2-out-of-3)C の射f, gcod(f) = dom(g)を満たすとする.f, g, f◦gのうち少 なくとも2つがW に属するならば,残りの1つもW に属する.

(2) (Retracts)Cの射gf のretractで,f ∈W (f Cof,f Fib)ならばg∈W (gCof,g∈Fib)である.

(3) (Lifting) C の可換図式

a u

b v

f i p

g

(a)i Cof,p∈Fib∩W ならばリフトを持つ.

(b)i Cof ∩Wp∈Fibならばリフトを持つ.

(4) (Factorization)任意の射f: a→b

(a)f =p◦ii∈Cof,p∈Fib∩W と分解できる.

(b)f =p◦ii∈Cof ∩Wp∈Fibと分解できる.

W,Cof,Fibに属する射をそれぞれweak equivalence,cofibration,fibrationと呼び,こ こでは記号でa ba ,→babのように書く.またCof∩WFib∩W に属する射 をそれぞれtrivial cofibration,trivial fibrationと呼び,記号ではa,→ ba bと書く.

定義. f: a bg: u vに対してLLP (Left Lifting Property)を持つ(もしくはgf に対してRLP (Right Lifting Property)を持つ)

(3)

⇐⇒任意の可換図式

a u

b v

g f

がリフトを持つ.

1. 位相空間の圏 Topを考える.任意の CW複体A に対する包含写像 A× {0} → [0,1]に対してRLPを持つ射をSerre fibrationという.

f Topがweak equivalence ⇐⇒f がweak homotopy equivalence

f Topがfibration ⇐⇒f がSerre fibration

f Topがcofibration ⇐⇒f がtrivial fibrationに対してLLPを持つ と定めると,Topはモデル圏となる.

2. Rを単位的環とする.左R加群の鎖複体の圏Ch0(R)において

f weak equivalence⇐⇒f がホモロジー群の同型を誘導する

f: M →N がcofibration ⇐⇒任意のn≥0に対してfn: Mn →Nnが単射であ り,cokerfn が射影的

f: M →N fibration ⇐⇒任意のn >0に対してfn: Mn→Nnが全射 と定めると,Ch0(R)はモデル圏となる.

モデル圏では weak equivalence を同型射と扱いたいのであるが,実はモデル圏C

「weak equivalence を同型射とした」圏 Ho(C) を構成することができる (これをホモ

トピー圏という).先の Ch0(R) の例では,このホモトピー圏が導来圏になっている.

また C, D をモデル圏,F: C D を関手とするとホモトピー圏に対して自然に関手 P: C Ho(C),P: D→Ho(D)が得られるから,次の図式を得る.

Ho(C)

C D Ho(D)

P

P F

よってもしKan拡張が存在すれば,自然に関手 Ho(C) Ho(D)を得ることができる.

この関手をF の導来関手という.

(4)

この PDFの目的はホモトピー圏Ho(C)を構成し,(ある程度の条件の下で)導来関手 が存在することを示すことである.

2 基本的性質

命題 3. モデル圏Cにおいて

(1) f がcofibraton ⇐⇒f はtrivial fibrationに対してLLPを持つ.

(2) f がtrivial cofibraton ⇐⇒f はfibrationに対してLLPを持つ.

(3) f がfibraton ⇐⇒f はtrivial cofibrationに対してRLPを持つ.

(4) f がtrivial fibraton ⇐⇒f はcofibrationに対してRLPを持つ.

証明. 同様なため,1のみ示す.

=はモデル圏の定義である.=を示すため,f: a→bがtrivial fibrationに対して LLPを持つとする.f = (a ,

i x

p b)と分解すれば,次の実線の可換図式を得る.

a x

b b

p i

f

idb g

故に点線の射g: b→xが存在する.これにより次の可換図式を得る.

a a a

b x b

f i f

ida ida

g

p idb

即ちf はcofibrationiのレトラクトであり,従ってcofibrationである.

命題 4. Cof は射の合成について閉じている.即ち,f: a →bg: b→ cがcofibration ならばg◦f もcofibrationである.

証明. 命題3を使う.f: a ,→ bg: b ,→ cをcofibrationとする.p: u v を任意の

(5)

trivial fibrationとして次の実線の可換図式を考える.

a u

b

c v

p f

g

h0

h

f が cofibrationでp がtrivial fibration だから,リフトh0: b u が存在する.g が cofibrationでpがtrivial fibrationだから,リフトh: c→uが存在する.故に,g◦f は trivial fibrationに対してLLPを持つから,命題3によりcofibrationであることがわか る.

W も合成について閉じているから,Cof∩W が合成について閉じていることも分かる.

命題 5. Cof (Cof∩W)はpushoutについて閉じている.即ち,f: a →bがcofibration (trivial cofibration)でg: a→uが射ならば,pushout*1で得られる射fe: u→b⨿auも cofibration (trivial cofibration)である.

a u

b b⨿au

g

e

f f

証明. f: a ,→bcofibrationg: a →uを射とする.任意のtrivial fibration p: v w と次の可換図式を考える.

u v

b⨿au w e p

f

f cofibrationだから,リフトh0: b→vが存在する.

a u v

b b⨿au w

p g

f h0

h

*1定義よりモデル圏は余完備だから,このpushoutは存在する.

(6)

よってpushoutの普遍性から射 h: b⨿au vが存在し,可換となる.従って命題3か らfeはcofibrationである.trivial cofibrationに関しても同様である.

命題 6. 同型射はweak equivalenceかつcofibrationかつfibrationである.

証明. これも命題3から容易に分かる.

定義. (1) a ∈Ccofibrant ⇐⇒一意な射0→acofibration (2) a∈C がfibrant ⇐⇒一意な射a 1がfibration.

定義. a∈Cとする.普遍性により射id,id: a⨿a→aが得られる.この射がid,id= (a⨿a−→i x→

p a)と分解するとき,このxaのcylinder objectと呼ぶ.更に (1) iがcofibrationのときgood cylinder objectと呼ぶ.

(2) iがcofibrationでpがfibrationのときvery good cylinder objectと呼ぶ.

モデル圏の定義から,各a ∈C のvery good cylinder objectが少なくとも一つ存在す る(一意とは限らない).aのcylinder objectをa∧I で表す.

定義. f, g: a→bがleft homotopic (記号f l gで表す)

⇐⇒あるcylinder objecta⨿a −→i a∧I aと射h: a∧I →bが存在して,次が可換と なる.

a∧I

a⨿a b

i h

f,g

このときの射hf からgへのleft homotopyという.更にa∧I(very) good cylinder objectのとき,hを(very) good left homotopyという.

a⨿a −→i a∧I aaのcylinder objectとする.a−→µ0 a⨿a ←−µ1 aをcoproductの 標準射としてi0 :=i◦µ0i1 :=i◦µ1:a →a∧I とおく.

a a⨿a a

a∧I

µ0 µ1

i0 i1

i

命題 7. a ∈Ccofibranta⨿a ,→a∧I aagood cylinder objectとすると

(7)

き,i0, i1: a →a∧I はtrivial cofibrationである.

証明. 定義から次の図式が可換である.

a

a⨿a a∧I a

µ0 i0

ida

i

ida,ida

ida: a →aはweak equivalenceだから,i0もweak equivalenceである.(この証明から 分かるように,i0 ∈Waがcofibrantでなくても成り立つ.)

次に,aがcofibrantだから,0→aがcofibrationである.次の図式を考える.

0 a

a a⨿a a∧I

µ0

µ1

i0

i1

i

左上の四角はpushoutである.よって命題 5よりµ0 はcofibrationであり,従って命題 4より合成i0 =i◦µ0 もcofibrationである.故にi0 がtrivial cofibrationであることが 分かった.i1についても同様である.

命題 8. f l g: a→bのとき,f ∈W ⇐⇒g ∈W である.

証明. h: a∧I bf からgへの left homotopyとする.定義から次の図式が可換で ある.(命題7で示したようにi0 ∈W となる.)

0 a

a a⨿a a∧I

b

µ0

µ1

i0

f,g f

g i

h

2-out-of-3よりf W ⇐⇒ h W が分かる.同様にしてg W ⇐⇒ h W である.

よってf ∈W ⇐⇒g∈W となる.

(8)

命題 9. f l g: a →bのとき,f からgへのgood left homotopyが存在する.更にもし bがfibrantならば,very good left homotopyが存在する.

証明. f l gだから,cylinder objecta⨿a−→i a∧I

p ah: a∧I →bが存在して,次 が可換となる.

a∧I

a⨿a b

i h

f,g

(a⨿a−→i a∧I) = (a⨿a ,→

i x

p a∧I)と分解する.

a a∧I

x

a⨿a b

i p

p

i h

f,g

a⨿a ,→

i x

pp aaのgood cylinder objectである.故にh◦p: x→bf からgへ のgood left homotopyとなる.

次にbをfibrant としてh: a∧I bを改めてgood left homotopy とする.今度は (a∧I

p a) = (a∧I ,→

i x

p a)と分解する.2-out-of-3によりitrivial cofibration である.これに終対象1を加えて,次の実線の可換図式を得る.

a

x

1 a∧I

a⨿a b

i i

p

p

h

f,g

!

! h

(9)

a⨿a ,→

iix

p aはvery good cylinder objectである.今bがfibrantだから,一意な射

! : b 1はfibrationである.i がtrivial cofibrationだから,モデル圏の条件より点線 のリフトh: x→bが存在する.このhがvery good left homotopyである.

命題 10. aがcofibrantなら,left homotopicはHomC(a, b)の同値関係となる.

証明. f: a →bとする.a⨿a −−−−→id,id a→

id aはcylinder objectで,図式 a

a⨿a b

⟨id,id⟩ f

f,f

は可換である.故にf l f である.

次にf l g: a bとする.cylinder object a⨿a −→i a∧I

p ah: a∧I →bが存 在して,次が可換となる.

a∧I

a⨿a b

i h

f,g

a−→µ0 a⨿a ←−µ1 aを標準射とすれば,普遍性から次の射sを得る.

a

a⨿a a⨿a a

µ1

µ0

µ0

µ1

s

以上を組み合わせて次の図式を得る.

a∧I

a⨿a a⨿a b

a

i h

s

f,g µ0

µ1

g

(10)

普遍性により⟨f, g⟩ ◦s =⟨g, f⟩である.またa⨿a−−→is a∧I

p aはcylinder objectで ある.よって次の図式が得られてg∼l f が分かる.

a∧I

a⨿a b

is h

g,f

最後に f l gかつ g l h とする.命題 9により f から gへの good left homotopy s: a∧I →bgからhへのgood left homotopy t: a∧I →bが取れる.

a∧I

a⨿a b

a

i s

f,g i0

µ0

f

a∧I

a⨿a b

a

i t

g,h i0

µ0

g

a

a⨿a a∧I

a b

a⨿a a∧I

a

f

g

h µ0

µ1

µ0

µ1

f,g

⟨g,h⟩

i

s

i

t

a∧I ←a →a∧I のpushoutをxとする.

a∧I

a x b

a∧I

i0 s

i1 t

このxacylinder objectである.

(11)

...

) 定義から,次の図式が可換である.

a⨿a a∧I

a a

a⨿a a∧I

µ0

id,id id

µ1

id,id i

i

よってpushoutの普遍性により射x→aが得られる.

a⨿a a∧I

a x a

a⨿a a∧I

µ0

i

µ1

i

i0

i1

trivial cofibrationのpushoutはtrivial cofibrationであることと,2-out-of-3により x→aweak equivalenceだと分かる.よってxacylinder objectである.

このxと先の図式を組み合わせて次の図式が得られる.

a

a⨿a a∧I

a⨿a x b

a⨿a a∧I

a

f

h µ0

µ1

i

i µ0

µ1

u

(12)

この図式からu: x→bf からhへのleft homotopyであることが分かる.

定義. Cをモデル圏,a, b∈C を対象とする.HomC(a, b)上の同値関係Rを,l で生成 されるものとして,πl(a, b) := HomC(a, b)/Rと定める.

今示した様に,aがcofibrantならばπl(a, b) = HomC(a, b)/l である.

命題 11. s: b→cとする.このときf l g: a →bならばs◦f l s◦g: a →cである.

(よって写像s: πl(a, b) [f] 7→ [s◦f] πl(a, c)はwell-definedである.) 更にa が cofibrantでs: b cがtrivial fibrationであるとする.このときs は全単射である.

証明. f l g: a→bとする.f からgへのleft homotopy h: a∧I →bを取る.

a∧I

a⨿a b c

h

f,g s

このときs◦hs◦f からs◦gへのleft homotopyである.よってs◦f l s◦g: a→c である.従って [f] = [g] とすると f l f1 ∼ · · ·l l fn l g とできるが,このとき s◦f l s ◦f1

∼ · · ·l l s ◦fn

l s◦g となり [s ◦f] = [s◦g] である.よって s は well-definedである.

次に aがcofibrantでs: b cがtrivial fibrationであるとする.s の全射性を示す ため,f: a →cを任意に取る.次の可換図式を考えれば,リフトg: a →bが得られる.

0 b

a c

s f g

このときs([g]) = [s◦g] = [f]である.

s の単射性を示すため,f, g: a bs◦f l s◦gを満たすとする.命題9により good cylinder object a⨿a ,→

i a∧I ah: a∧I →cが存在して次が可換となる.

a∧I

a⨿a c

i h

⟨sf,sg⟩

(13)

次の可換図式を考えれば,リフトg: a∧I →bが得られる.

a⨿a b

a∧I c

s

⟨f,g⟩

i

h g

このgf からgへのleft homotopyである.

命題 12. f: a bを射として,c∈ C がfibrantであるとする.このときs l t: b→c ならばs◦f l t◦f: a →cである.(よって写像f: πl(b, c)[s]7−→[s◦f]∈ πl(a, c) はwell-definedである.)

証明. s∼l t: b→cとする.命題9により,very good cylinder object b⨿b ,→

i b∧I

p bh: b∧I →cが存在して次が可換となる.

b∧I

b⨿b c

i h

s,t

aのgood cylinder objecta⨿a ,→

j a∧I

q aを取る.次の図式の実線部分は可換である.

c

a⨿a b⨿b b∧I

a∧I a b

f,f i

j p

q f

k

s,t

h

よってリフトk: a∧I b∧I が存在する.このときh◦k s◦f からt◦f への left homotopyである.

命題 13. fibrantなc∈ C に対して πl(b, c)×πl(a, b) ([s],[f]) 7−→ [s◦f] πl(a, c) はwell-definedである.

証明. f l g: a →bs l t: b→ cに対して[s◦f] = [t◦g]を示せばよい.cがfibrant

(14)

だから命題12によりs◦f l t◦f である.また命題11によりt◦f l t◦gである.よっ て[s◦f] = [t◦g]である.

双対的にpath object,right homotopicを定義する.

定義. a∈Cとする.普遍性により射id,id: a→a×aが得られる.この射がid,id= (a

i x−→p a×a)と分解するとき,このxapath objectと呼ぶ.更に (1) pがfibrationのときgood path objectと呼ぶ.

(2) iがcofibrationでpがfibrationのときvery good path objectと呼ぶ.

aのpath objectをaI で表す.

定義. f, g: a→bがright homotopic (記号f r gで表す)

⇐⇒あるpath objectb→ bI −→p b×bと射h:a →bI が存在して,次が可換となる.

bI

a b×b

h p

f,g

勿論,path objectに対してもcylinder objectと同様な命題が成り立つ(省略) 命題 14. f, g: a →bとする.aがcofibrantならば「f l gならばf r g」である.同 様にして,bがfibrantならば「f r gならばf l g」である.

証明. a が cofibrant で,f l g: a b とする.命題 9 より good cylinder object a⨿a ,→

i a∧I

p a とleft homotopy h: a∧I b が取れる.bのgood path object b→

j bI

q b×bを取る.次の図式が得られる.

a

a∧I

a⨿a b bI b×b

a b

i h

f,g µ0

f i0

p f

j

q

id

(15)

ここから次の実線の可換図式が得られる.

a b bI

a∧I b×b

f j

i0 q

(fp)×h k

acofibrantだから,命題7によりi0 はtrivial cofibratonである.qfibrationだか ら,リフトk: a∧I →bI が得られる.このときk◦i1 がright homotopyである.

従って aがcofibrantでbがfibrantならば,l =r かつ πl(a, b) = πr(a, b)である.

よってこの場合には,これらを単にπ(a, b)と書く.

命題 15. a, bをcofibrantかつfibrantとしてf: a→bを射とする.このとき f がweak equivalence

⇐⇒ある射g: b→aが存在してg◦f idaかつ f◦g∼ idb となる.(このときgf のhomotopy inverseという.)

証明. (=) f: a b weak equivalence とする.f = (a ,→

i x

p b) と分解する.

2-out-of-3によりpもweak equivalenceである.

aがfibrantだから,次の図式を考えればg: x →ag◦i= idaとなるものを得る.

a a

x 1

id

i g

次に命題11の双対によりi: π(x, x)→π(a, x)は全単射である.i([i◦g]) = [i◦g◦i] = [i],i([ida]) = [i]だから[i◦g] = [idx]となり,即ちi◦g idx である.故にgiの homotopy inverseであることが分かった.同様にしてpのhomotopy inverse h が存在 することも分かる.このときg◦hf =p◦ihomotopy inverseである.

(=) g◦f idaf ◦g idb とする.f = (a ,→

i x

p b)と分解する.pがweak equivalence であることを示せばよい.h: b∧I bf ◦g から idb への good left

(16)

homotopyとすると次の可換図式を得る.

b a x

b⨿b

b∧I b

g

i

p µ0

h f

fg,idb

左の縦の射の合成i0は命題7によりtrivial cofibrationである.故にリフトk: b∧I →x が存在する.

b a x

b∧I b

g

i

i0 p

h k

s:=k◦i1 とおけばp◦s =h◦i1 = idb である.

b x

b∧I b

s

i1 p

h id

k

ここで,i: a ,→ x はweak equivalence だから,homotopy inverse r: x a を持つ.

f =p◦iだからf ◦r=p◦i◦r ∼p◦idx =pとなる.またk, sの取り方からki◦g からsへのleft homotopyであり,

s◦p∼i◦g◦p∼i◦g◦f ◦r ∼i◦ida◦r=i◦r idx

となる.idはweak equivalenceだから,命題8よりs◦pもweak equivalenceである.

(17)

また次の図式が可換となる.

x x x

b x b

p sp p

idx idx

s p

即ちpはweak equivalence s◦pのretractである.故にモデル圏の定義からpもweak equivalenceである.

3 ホモトピー圏の構成

定義. モデル圏C に対して,充満部分圏Cc, Cf, Ccf ⊂C を以下により定める.

(1) Ob(Cc) :={a ∈C |aはcofibrant} (2) Ob(Cf) :={a ∈C |aはfibrant}

(3) Ob(Ccf) :={a∈C |acofibrantかつfibrant}

更に,圏πCc, πCf, πCcf を以下により定める.(命題13に注意する.) (1) Ob(πCc) := Ob(Cc)で,HomπCc(a, b) :=πr(a, b)

(2) Ob(πCf) := Ob(Cf)で,HomπCf(a, b) :=πl(a, b). (3) Ob(πCcf) := Ob(Ccf)で,HomπCcf(a, b) :=π(a, b). 各対象a C に対して,分解(0 −→! a) = (0,→ Q(a)

pa

a)を考える.つまりQ(a)は cofibrantである.但し,cofibrantなaに対してはQ(a) :=apa := idaと取るようにし ておく.

命題 16. このQは関手Q: C →πCcを定める.

証明. まずCの射f: a →bに対してQ(f)を定義する.f, pa, pb と0から次の実線の可 換図式を得る.

0 Q(b)

Q(a) a b

pb

pa f

f

0→Q(a)がcofibrationでpb がtrivial fibrationだから,リフトf: Q(a)→Q(b)が存

(18)

在する.このようなf: Q(a)→Q(b)はright homotopicを除いて一意である.

...

) 今Q(a)がcofibrantだから,命題14よりleft homotopicを除いて一意である ことを示せばよい.それは命題11から従う.

よってQ(f) := [f]∈πr(a, b) = HomπCc(a, b)と定義することができる.後はこのQ が関手C →πCc となることを示せばよい.

まずQ(ida) = [idQ(a)]は明らかである.

C の射f: a →bg: b→cを取る.次の可換図式を考える.

0 0 Q(b)

0 Q(b) b c

Q(a) a b c

pc

pb g

g

pb

pa f

f

g

idc

図式から明らかに,Q(g◦f) =Q(g)◦Q(f)である.

このQをcofibrant replacement functorと呼ぶ.またpa: Q(a) aaのcofibrant resolutionという.

17. Ch0(R)の場合,X ={Xn} ∈Ch(R)がcofibrantであるとは各Xn が射影的 であることである.よってR-加群M を鎖複体

· · · →00→M

と同一視してcofibrant resolution 0,→Q(M)↠ M を取れば,Q(M)M の射影分解 である.

命題 18. Q: C →πCcCf に制限することで,関手Q: πCf →πCcf が得られる.

証明. a∈Cをfibrantとする.0,→Q(a) a ↠1より,Q(a)はfibrantかつcofibrant である.よって関手Q|Cf: Cf →πCcf が得られる.

後は,a, b∈C がfibrantで,f l g: a→bのときQ(f) =Q(g)を示せばよい.

0 Q(b)

Q(a) a b

pb

pa f

f

0 Q(b)

Q(a) a b

pb

pa g

g

(19)

bがfibrantだから,命題12によりf ◦pa

l g◦paである.即ち[f ◦pa] = [g◦pa]で ある.よって命題11によりQ(f) =Q(g)が分かる.

双対的に,fibrant replacement functor R: C πCfa ,→

ia

R(a) ↠ 1 により定ま る.これにより関手R: πCc →πCcf が定義される.よって関手RQ: C →πCcf が得ら れる.

定義. モデル圏C のホモトピー圏Ho(C)を以下のように定める.

Ob(Ho(C)) := Ob(C).

HomHo(C)(a, b) := HomπCcf(RQa, RQb)

また関手P: C Ho(C)を以下のように定める.

対象a ∈Cに対してP(a) :=a

f HomC(a, b)に対してP(f) :=RQ(f)

命題 19. f ∈Cがweak equivalence ⇐⇒P(f)が同型射.

証明. f: a →bC の射とする.次の可換図式のリフトf を取る.

0 Qb

Qa a b

pb

pa f

f

このときQ(f) = [f]である.さらに次の可換図式のリフトf′′を取る.

Qa Qb RQb

iQb

RQa 1

f

iQa

f′′

このときP(f) = RQ(f) = [f′′]である.RQaRQbはcofibrantかつ fibrantだから,

2-out-of-3と命題15により

f がweak equivalence⇐⇒f′′がweak equivalence

⇐⇒f′′homotopy inverseを持つ

⇐⇒P(f)が同型

(20)

となる.

定義. C を圏,W Mor(C)とする.CW による局所化とは組⟨W1C, P⟩であって 以下を満たすものである.

(1) W−1C は圏,P: C W−1C は関手であり,f W に対してP(f)は同型射で ある.

(2) 関手S: C →Dが同じ条件(f ∈W に対してS(f)は同型射)を満たすならば,関 手F: W1C →Dが一意に存在してF ◦P =S となる.

C W1C

D

P

S F

定理 20. モデル圏C に対して,Ho(C), PCW による局所化である.

証明. まず命題19より,fC のweak equivalenceならばP(f)は同型である.

次にDを圏,S: C →Dを関手で「f ∈W に対してS(f)は同型射」を満たすとする.

※ 証明に入る前に次のことを確認しておく.f: a bCの射とする.命題19の 証明のようにf′′: RQa→RQbを取る.

RQa RQb

Qa Qb

a b

f′′

iQa iQb

f

pa pb f

f W に対してSf は同型射」だから Sf =Spb◦SiQb1◦Sf′′◦SiQa◦Sp−1a が成 り立つ.

k HomHo(C)(a, b) = HomπCcf(RQa, RQb) とする.あるC の射h: RQa RQb を使ってk = [h]と書ける.このhを使ってF k :=Spb ◦SiQb1◦Sh◦SiQa◦Spa1 と定 める.これはwell-definedである.

...

) f l g: a b に対して Sf = Sg であることを示せばよい.good cylinder

(21)

object a⨿a ,→

i a∧I

p bh: a∧I →bが存在して次が可換となる.

a

a∧I

a a⨿a b

p

i h

f,g ida

i0

µ0

f

p◦i0 = ida =p◦i1だからSp◦Si0 =Sp◦Si1となる.今pがweak equivalenceだ からSpは同型射となりSi0 =Si1 が分かる.故にSf =Sh◦Si0 =Sh◦Si1 =Sg である.

対象 a Ho(C)に対してF(a) := S(a)とすれば関手F: Ho(C) Dが定まる.こ のときf HomC(a, b)に対して上のようにf′′: RQa →RQbを取れば

F P(f) =F[f′′] =Spb◦SiQb1◦Sf′′◦SiQa◦Spa1 =S(f) となるからF P =S である.

後はこのようなF の一意性を示せばよい.k = P(f)と書ける射k HomHo(C)(a, b) に対しては,上から分かるようにF(P(f)) =S(f)でなければならない.従って,任意の 射k HomHo(C)(a, b)P(f) (f Mor(C))の合成で書けることを示せばよい.

a, b C に対してRQa, RQbはcofibrantかつfibrantだから,f: RQa →RQbに対 して上のようにf′′ を取ればf′′ =f となる.

RQRQa RQRQb

QRQa QRQb

RQa RQb

f

id =iQRQa iQRQb= id

f

id =pRQa pRQb= id

f

故にP: HomC(RQa, RQb) HomHo(C)(RQa, RQb)は全射であることが分かる.一 方a

pa

Qa ,→

iQa

RQab

pb

Qb ,→

iQb

RQbからHo(C)の同型 P(iQa)◦P(pa)1P(pb)

(22)

P(iQb)1 が得られる.これにより全単射 HomHo(C)(RQa, RQb) HomHo(C)(a, b) が f 7→ P(pb)◦P(iQb)−1 f ◦P(iQa) ◦P(pa)−1 により得られる.以上により全射 HomC(RQa, RQb) HomHo(C)(a, b)が得られる.即ち,任意の k HomHo(C)(a, b) はあるf HomC(RQa, RQb)によりk =P(pb)◦P(iQb)1◦P(f)◦P(iQa)◦P(pa)1 と表される.

4 導来関手

定義. C をモデル圏,Dを圏,F: C →Dを関手とする.局所化P: C Ho(C)に沿っ たF の右Kan拡張LF := PFF の左導来関手という.局所化P: C Ho(C) に 沿ったF の左Kan拡張RF :=PFF の右導来関手という.

Ho(C)

C = D

P

F LF

Ho(C)

C = D

P

F RF

補題 21. F: Cc →Dを関手とし,f Cc がtrivial cofibrationならばF f は同型射で あるとする.このときCc の射f, g: a →bがright homotopicならばF f =F gである.

証明. bがcofibrantだから,命題9の双対によりvery good path object b,→

i bI

p b×b とright homotopy h: a →bI が取れる.µ0, µ1: b×b→bを標準射影とすれば次の可換 図式を得る.

b 0 bI

a b×b

b

i

id,id

h p

⟨f,g⟩

µ0 f

b が cofibrant だから bI も cofibrant となる.よって仮定から F i は同型射である.

id,id = p◦iだからF⟨id,id = F p◦F iとなり,よってF p = F⟨id,id⟩ ◦F i1 であ

(23)

る.f =µ0◦p◦hg=µ1◦p◦hだから F f =F µ0◦F p◦F h

=F µ0◦F⟨id,id⟩ ◦F i1◦F h

=F(id)◦F i1◦F h

=F µ1◦F⟨id,id⟩ ◦F i1◦F h

=F µ1◦F p◦F h

=F g である.

定理 22. C をモデル圏,D を圏,F: C Dを関手とする.a, b C がcofibrant で f:a →bがweak equivalenceならば,F f は同型射であるとする.このとき右Kan拡張 PF,即ちF の左導来関手が存在する.

証明. FCcへの制限F|Ccに補題21を適用して,関手F: πCc →Dを得る.f ∈Cを weak equivalenceとすればF Q(f) ∈Dは同型射である.よって局所化P: C Ho(C) の普遍性により,関手L: Ho(C)→Dが一意に存在してLP =F Qとなる.

Ho(C)

C πCc D

P L

Q F

a C に対して εa := F(pa) : F Qa F a と定める.これにより自然変換 ε: LP = F Q ⇒F が定まる.

Ho(C)

C πCc D

= ε

P L

Q

F F

(24)

...

) C の射f: a →bに対して,次を可換とするようなC の射fを取る.

0 Q(b)

Q(a) a b

pb

pa f

f

これに関手F を適用して次の可換図式を得る.

F Qa F a

F Qb F b

F(pa)

F(f) F(f)

F(pb)

Qの定義よりQ(f) = [f]であり,よってF Q(f) = F(f)となる.よって上の図 式を書きかえることで次の可換図式を得る.

F Qa F a

F Qb F b

εa

F(f) F Q(f)

εb

即ちε: F Q⇒F は自然変換である.

⟨L, ε⟩P に沿ったF の右Kan拡張であることを示す.その為にS: Ho(C)→Dを 関手,θ: SP ⇒F を自然変換とする.次の等式を満たすτ が一意に存在することを示せ ばよい.

Ho(C)

C ε = D

P

F L

S

τ =

Ho(C)

C D

=

P θ

F S

まず一意性を示すため,τ: S ⇒Lε◦τP =θを満たすとする.a ∈Cに対して次の図

(25)

式が可換となる.

SP Qa LP Qa F Qa

SP a LP a F a

SP pa

τP Qa

τP a

LP pa

εQa

εa

F pa

θQa

θa

pa:Qa→aはweak equivalenceだから,SP pa: SP Qa→SP aは同型射である.また QaはcofibrantだからpQa = idQaであり,よってεQa =F pQa = idである.LP =F Q もあわせて次の図式を得る.

SP Qa F QQa F Qa

SP a F Qa F a

SP pa

τP Qa

τP a

F Qpa

id

εa

F pa

θQa

θa

ここでQの定義から,Qpa = [id]である.

0 Qa

Qa Qa a

pa

id pa

id

よってF Qpa = idが分かる.故にτ は,任意のa∈C に対して τa =τP a =(

SP a SP p

1

−−−−→a SP Qa−−→θQa F Qa=LP a) を満たさなければならない.従ってτ はもし存在すれば一意である.

逆にτ をこの合成で定義すれば,τ: S ⇒Lは自然変換である.

参照

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