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歩行入室導入における効果・今後の課題について

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Academic year: 2021

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(1)

歩行入室導入における効果・今後の課題について

徳橋 聡子,松屋 志保,金沢 幸江,木村 千春,高崎 美佳,佐藤 貴子

北海道社会保険病院 手術・中材

Key WordS l

      要  旨

 当院では、2004年4月から、全身麻酔の手術患者の歩行入室を開始した。歩行入室が手術前の患者の緊張 感を和らげることは文献により明らかになっている。しかし、術後訪問に行くと患者から手術室内の風景 が見えて怖かったという言葉が聞かれた。そこで、全身麻酔で歩行入室する患者に聞き取り調査を行なっ た。その結果、60最中、44名が歩行入室が良かったと答え、恐怖感のなかった者は55名であった。また、疲労 感を感じた者はいなかった。これらに手術経験の有無性別、年齢での有意差はなかった。もし、次回手術と なった場合の歩行入室の希望は47名に上がり、多くの患者は歩行入室を望んでいることがわかった。しか し、歩行入室をすることにより不安や恐怖感が増す患者もいるとわかった。そのため、各手術室の閉扉や器 材の整理整頓、歩行通路に絵画や写真を飾るなどの環境作りが大切であると判った。

         はじめに

 当院では、2004年4月から麻酔科医による前投薬 が廃止され、全身麻酔患者の歩行入室が開始となっ た。歩行入室が手術前の患者の緊張感を和らげるこ とは、文献により明らかになっている.しかし、術 後訪問に行くと患者から手術室の中の風景が見えて 怖かったと言う言葉が聞かれたので、今回全身麻酔 歩行入室患者に聞き取り調査を行った。結果、歩行 入室の効果と課題を明らかにすることが出来たので、

ここに報告する。

         目的と方法

 歩行入室の実態を調査し、入室方法の今後の課題 を明らかにすることを目的とし、平成!7年9月7日

〜11月10日の間に当院全身麻酔歩行入室患者(母児 同伴入室した患者は除く)60名を対象とした。

 データ収集方法は手術後に記録担当看護師が調査 用紙を用い以下の内容について各病室にて術後訪問 の一環として聞き取り調査を行った。①恐怖感の有 無②疲労感の有無③次回手術になった時の入室方法

④手術経験が有れば前回の入室方法、前回の入室方 法との比較⑤手術経験が無ければ歩行入室の感想の 5項目について調査した。また、これらの結果は単 純集計、クロス集計を用いた。

         結  果

 研究期間中の全身麻酔手術件数は255件、歩行入 室患者は156名であった。そのうち、術後訪問に行 き、聞き取り調査をすることができたのは60名であ った。性別でみると男性27名、女性33名(図1)、年 代別では60〜70代が多く27名であった。(図2)診療 科別では、外科が最も多かった。(図3)

女性 33名

(55%)

図1 性別の分布

男性 27名

(45%)

一28一

(2)

歩行入室導入における効果・今後の課題について

70代

50代

30代

10代

図2 年代別の分布

0%     5%    10%    15日目   20%    25%

   眼科

心臓血管外科

 整形外科  泌尿器科   耳鼻科  産婦人科    外科

図3 科別の分布

2名 3名

6名 7名

11名 14名

17名

0%    5%    10%    15%   20%   25%   30%

図5 手術経験有 前回今回入室方法比較

今回

22名

12名

どちらでもない 

前回 3名

0%    20%   40%   60%   80%

 全体で、恐怖感のあった人は4名、なかった人は 55名だった。手術経験有無・性別・年齢では恐怖感 の有無について有意差はなかった。また、疲労感の あった人は0名、なかった人は58名だった。次回入 室方法の希望は、ベッド入室は3名、車椅子入室は

1名、歩行入室は47名、どれでもよいは9名だった。

手術経験の有無・性別・年齢では次回希望の入室方 法に有意差はなかった。また、60名中、手術経験が ある人は38名、ない人は22名だった。手術経験があ る患者の中で前回ベッド入室は33名、車椅子入室は

1名、歩行入室は3名だった。(図4)前回と今回ど ちらの入室方法が良かったかという質問では、前回

3名、今回22名、どちらでもない12名だった。(図5

)患者からは、「病人のような姿ではなく、元気に入 室したかったので良かった。」と聞かれた。手術経験 のない患者へ歩行入室をして良かったか、という質 問では22名全員が良かったと答えている。患者から は「ベッドで入室すると大事のような気がするので 歩行入室の方が気が楽だった」「元気なので歩きたい

」などの意見が聞かれた。

         考  察

 今回の実態調査では行い高い割合で恐怖感、疲労 感はなく次回も歩行入室がよいという結果が得られ た。患者からは「自分が手術をするので自分で歩いて いく方がよい。」との意見が聞かれた。上田らは「能動 的に手術に望む患者にとって歩行入室は手術への意 欲を高めると考える.」1)と述べている。これは、患 者にとって歩行入室は自分の足で手術室へ向かい、

手術を行うことで病気を治そうという意欲が高まる と考える。また、「ベッドだと周りから見られている 気がして緊張する。」「大げさな感じがして嫌だ。」と いう意見が聞かれた。これらの意見から、ベッド入 室は上から見られることでの圧迫感・重病な感じが するといったマイナスイメージがあり、手術に対す る不安や恐怖感を増強させているとわかった。一方、

歩行入室患者は「看護師と話しながら入ることで緊 張がほぐれた。」と聞かれ、歩行入室は普段と変わら ない行動であり、視線が同じ高さで医療者とコミュ ニケーションが図りやすく、恐怖感を緩和させると

考える。

 しかし、今回の実態調査では手術経験のある患者 3名は次回ベッド入室を希望し、12名はどれでも良

一29一

(3)

北海道社会保険病院 第6巻 2007

いと答えている。その中で「どんな入室方法でも緊張 する。」「大きい手術だとベッドの方が良い」という意 見があった。武島らは、「歩行入室を選択するにあた

り、手術室看護師には、入室手段を患者自身が選択 できるような十分なインフォームドコンセントの必 要性と患者の全身および精神状態を把握するアセス メント能力が求められる。」と述べている。このこと から歩ける患者は必ず歩行入室がよいというのでは なく、患者の精神面も考慮しどの入室方法がよいの かを患者と考えることが必要であるとわかった。菊 池らは「入室方法についてどちらが良いか選択する

ときに、体験のある人は選びやすく体験のない人は 選びにくい、そのため、言われたことをそのまま受

け入れてしまう状態にあるといえる。」と述べている。

このことから、手術の体験のない人は入室方法をイ メージしにくく手術室看護師に決定を委ねてしまう 可能性があると言える。そのため、今後は術前診察 の際に、その患者にとって最もよい入室方法を一緒 に決めていくことが望ましい。

また、恐怖感については56名の患者がないと答えた が4名の患者が恐怖感を訴えた。理由として「色々な 物が見えて恐がった」「ドアが開いていて他の手術が 見えた」というものであった。手術室内歩行の時に見 える他の部屋の風景や手術特有の雰囲気が患者の恐 怖感を増強したと考える。当手術室では患者が通る 廊下に麻酔器や器材が置いてあり、部屋のドアが開

きっ放しになっていることがあった。現在は、各手 術室のドアを必ず閉めるように張り紙をし、空いて いる時は声を掛け合うことで徹底している。また、

スタッフの仕事の効率だけではなく、器材の整理整 頓・患者の歩行通路に絵や写真を飾り、恐怖感を和

らげるような環境作りを心がけている。

         結  論

1)徒歩入室は緊張感が緩和され、次回も歩行入室   を望む患者は多い。

2)歩行入室で恐怖感、疲労感を訴える患者は少な

  い。

3)恐怖感を訴える患者もいるため恐怖感が軽減さ   れるよう今後環境作りが必要となる。

  多くの患者は歩行入室を望んでいるが、不安や  恐怖感が増す患者もいるとわかった。これまで

歩行可能な患者には歩行入室を勧めていたが、

今後は入室に対する個々の思いを理解し、患者 に合った入室方法を考えていきたい。そして、

歩行入室の患者が雰囲気が良いと感じながら入 室できる環境作りに努めたい。

         引用文献

1)上田和子他:歩行入室が手術患者に与える影響,

 OPEnursing, 18(6), 98−100, 2003.

2)武島知恵子他:手術室歩行入室の現状と評価,

 手術医学,24(3),213−2!6,2003.

3)菊地多恵子他1歩行入室する患者の精神的一考   察,OPEnursing,11(7)、86−93、1996.

         参考文献

1)森脇五六他:手術室歩行入室の検討,麻酔,43(3),

  427、 1994.

2)白石義人他:「手術室歩行入室」の勧め,臨床麻   酔,19(5),737,1995.

3)芳賀忍他:手術室入室は歩行がいい,臨床麻酔,

  25(4), 693−694、 2001.

4)津久井淳他:麻酔前投薬廃止の試み,臨床麻酔,

  23(9), 1499−1500, 1999,

5)森田善仁他:歩行入室患者における術前不安の   検討,麻酔,51(4),382−386、2002.

6)藤松みずほ他:歩行入室時の手術部内における   清浄度の検討,手術医学,23(1),61−63,2002.

7)油布克巳他:当院における歩行入室の現状 患   者および看護師へのアンケート調査から一,手   術医学,24(3),209−212,2003.

8)清村明子他:全身麻酔歩行入室のパス,

  OPEnursing, 19(6),28−30,2004.

9)大野公一他:手術室歩行入室の実施一患者の不   安軽減と業務の効率化一,看護管理,31回,135

  −137, 2000.

10)高橋雅士:全身麻酔および腰椎麻酔患者の歩行   入室について,手術医学,25(2),179−!81,

  2004.

11)佐々木俊郎他:麻酔前投薬廃止と手術室歩行入   室の導入およびその効果,臨床外科,58(7),

  985−987, 2003.

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参照

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