琵琶湖での遠泳における実習前後の変化について
―泳力と不安に着目して―
藤嶋 尚生(生涯スポーツ学科 野外スポーツコース)
指導教員 清水 史郎 キーワード:遠泳,不安,琵琶湖
1. 序論
三宅ら(2006)によると,遠泳は自然の中で,
自己の気力,体力の限界に挑戦することで,自 己を見つめ,確認するとともに,集団の偉大さ を知るという教育的な意義があると述べてい る.筆者の経験では,遠泳前には琵琶湖という 自然の水に対して,「波がキツイ」「風が強い」
「底が見えず,怖い」といった不安を感じてい た.しかし,遠泳を終えてみるとそのような不 安は薄れていた.
そこで本研究では,B 大学の遠泳において,
遠泳前後における不安の変化と,泳力の関連を 検討することを目的とした.
2.先行研究
三宅ら(2006)の研究では,海浜実習の遠泳に おいて,遠泳前後の有能感,不安の変化を見た ところ,泳力の低い群では,遠泳後に有能感が 増加する傾向があり,不安感が低下した.
3. 研究方法 1)対象者
2014 年度B大学の遠泳に参加した学生のう ち,有効な回答を得られた260名の中から泳力 の高い群 82 名,泳力の低い群 70 名の計 152 名を分析対象とした.
2)調査時期
三宅ら(2006)が用いた質問紙を参考に筆者 が作成した30項目からなる質問紙を使用し,
遠泳前後に調査を行った.遠泳前の調査は,
2014年8月,9月に琵琶湖で行われたB大学水 辺実習の開講式でアンケート調査を実施した.
遠泳後の調査については,2014年9 月の遠泳 終了後に閉講式でアンケート調査を実施した.
4.結果と考察
水泳と遠泳に関する質問25項目の集計デー タから,最尤法により「不安感」,「泳力の自信」,
「努力」,「泳力不安」,「外的環境不安」,「身体 的不安」の6因子が抽出された.以上の6因子 において,遠泳前後の比較を行った.
その結果,「泳力不安」,「外的環境不安」,「身 体的不安」の不安因子において,泳力の高い群 と低い群の両群で,遠泳後に有意な不安の低下 が見られた.三宅ら(2006)の研究では,不安に 有意な低下が見られたのは泳力の低い群だけ であったが,今回の調査では泳力の高い群にお いても有意差が見られ,泳力の高いものであっ ても,遠泳を終えた後に不安が低下することが 明らかになった.
泳力の低い群においては,「泳力の自信」,「努 力」の2因子で遠泳後に得点が有意に向上し,
遠泳により泳力に自信がついたと言える.
不安因子の得点を見たところ,泳力と不安に は関連があり,泳力の高い群は,不安は低く,
泳力の低い群では,高い不安が見られた.
5. 結論
2014年度のB大学水辺実習の遠泳において,
アンケート調査を実施した.結果は以下の通り である.
「泳力不安」,「外的環境不安」,「身体的不安」
の不安因子において,泳力の高い群では,遠泳 前から不安は低かったが,遠泳後にはさらに不 安はなくなった.泳力の低い群では,遠泳前に は高い不安が見られたが,遠泳後には不安の低 下が見られた.
泳力の高い群は,泳力に自信があり,あまり 不安がなかった.一方,泳力の低い群は,泳力 にあまり自信がなく,不安が高かった.
参考文献
三宅信花・西条修光(2006)遠泳における泳力 と有能感,不安感の関連-遠泳前後の比較から
-,日本体育大学紀要,36巻1号,29-35.
池畑亜由美・長谷川望・鈴木大地・中島宣行
(2003) 海浜実習における不安要因に関する
研究-不安要因の構造的理解と測定尺度の作 成-,順天堂大学スポーツ健康科学研究,第7 号,62-67.