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琵琶湖博物館での研修
著者 松山 豊樹, 土井 幸重
雑誌名 奈良教育大学附属自然環境教育センター紀要
巻 6
ページ 61‑63
発行年 2004‑03‑31
その他のタイトル Learning in the Lake Biwa Museum en
URL http://hdl.handle.net/10105/282
琵琶湖博物館 での研修
松 山 豊 樹 奈 良教 育大 学物 理 学 教 室
土 井 幸 重
奈 良教 育大 学 大学 院教 育 学研 究科 理科 教 育専 攻
Learning in the Lake Biwa Ⅳ Iuseum
Toyoki Matsuyama
Department of Physics, Nara University of Education Yukie Doi
Graduate School of Science Education, Nara University of Education
1.は じめに
平成 14年 度奈良教育大学学長裁量経 費プロジェク ト「地域 と連携 した奈良盆地の野池 。河川の 魚類生態系調査 と環境教育教材 の開発」 の一環 として、魚類生態 の研 究の最前線 の一端 に触れる ため、淡水魚 を対象 としている博物館 としては国内最大規模 の滋賀県立琵琶湖博物館 にて当館学 芸 員の指導 に よる研修 を行 った。
日時は平成 14年 12月 18日 (水 )の 1330か ら夕刻 まで行われた。本学か らの参加者は、教官 2名 、 大学 院生 2名 、学部 4回 生 2名 の計 6名 である。琵琶湖博物館側か らは、中井克樹主任学芸員 と 秋 山廣光専 門学芸員 に対応 にあたって頂 いた。
研修 内容 は、 (1)外 来魚 問題 の第一 人者 であ る中井主任学芸員か ら琵琶湖 の外 来魚問題の現 状 とその元 凶であるブラ ックバ スや ブルーギルの生態 についていろいろ教 えて頂 き、 また、我 々 が進めている奈良市内の野池の魚類生態系 の調査 にア ドバ イス を頂 くことと、 (2)秋 山専 門学 芸員 によ り、通常 は立 ち入 りが出来 ない博物館の裏方 まで案 内 して頂 き、学芸員が行 なっている 研 究 について教 えて頂 くことであ る。 (1)に ついては、「松 山 (2003)、 松 山 。田中 (2003)」 の 研 究 を進 め る上 で貴重 なア ドバ イス となった。一方、 (2)に つ いては、直接、学芸員か ら御 自 身の研 究 を中心 に魚類 の生態 についての御指導頂 き、博物館 を利 用 した広 い意味での理科・環境 教育の実践 の場 を持つ ことが 出来た。本稿 で は、 この貴重 な体験で学んだ ことを報告す る。
2.魚 の発する音 についての研究
学芸員 は博物館 の企画 。運営 だけでな く、各 自がテーマ を持 って研 究 を行 っている。秋 山専 門 学芸員のテーマは魚の発す る音 である。一般的 に、魚 の発す る音の研究 とい うのは非常 に難 しい。
それ は、魚 が生息す る水 中は空 中 よ り密度が高 く、音が よ く伝 わって しまい、沢 山の雑音が混 ざって しまうか らである。では、 これ までにその ような研究 はあ ま りなされて こなかったのであ ろうか。それが、意外 にもロシアで軍事機密 として研究 されていた。原子力潜水艦 は船内でキャッ チ した音が何の音か を正確 に区別す る必要がある。つ ま り、その音 の正体が船の出す音 なのか、
魚 が鳴いている音 なのか を聞 き分 ける研究が行 われていた。後 に、それが魚の鳴 き声の研究へ と つ なが る。
また、魚 の出す音 を研 究す る とい うのは、音の収拾が難 しい とい うだけではない。魚 は、音が 聞 こえていて もそれ を行動 に表す とは限 らない。そ こで、魚 の心臓 に電極 を挿入 してそ この信号
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か ら、何 Hzか ら何Hzま で魚が聞 くことがで きるのか とい う事が調べ られている。いずれにして も、魚が どう言 う理由で鳴いているのかなど、まだまだ分かっていない点が多い。
ところで、魚はどのようにして音 を聞いているのだろうか ?魚 は、測線 という、穴の空いた鱗 を持っていて、そこが聴覚の役割を果た している。この測線は、幼魚の時には穴がな く、成長に つれて穴が出来て くる。幼魚の時には、クプランという糸が出ていて、ゼ リー状のカプセルで包 まれている。糸は長短2本 出ていて、長い方の糸は短い糸の出ていない方にしか傾 くことは出来な い。その傾 く方向で、音の方向を知 ることが出来る。 クプランは成長につれて、幾つかの塊 とし てへ こみ、測線 という穴が出来る。
音 を出す魚 として日本で有名な魚は「ギギ」であるが、ではどんなときに鳴 くのであろうか
?水槽 にオス同士 を入れた ときに相手にかみつかれて鳴いた り、産卵時に巣の周 りの魚 を威嚇する
ときに鳴 くようである。ただ、ギギに限らず 日本の淡水魚の産卵 というのは、 まだその大部分が 分かっていないそうである。そんな中、大阪教育大学では、ギギの産卵現場 を撮影することに成 功 し、確かに産卵 に関わってギギが鳴いているというのを実証 したそうである。
次に、ギギはどうやって鳴いているのであろうか ?ギ ギという魚は、エラブタに接触 している 部分の骨が複雑な鋭い形でゴツゴツしている。この部分で手 を切 る事 もあるらしく、釣 りをする 人には少 し煙たが られている。エラブタを張った り引っ込めた りすると、擦れて音が出る。
さて、 日本で見 られるような平べったいナマズは、世界的には実は少ないそうである。ギギの 格好をしたナマズというのが世界的には数百種 も居て、そちらの方が多い。 Cat ishを 日本ではナ マズと訳 しているが、言語学的にはギギ と訳すのが正 しい。 これはギギのヒゲのはえ方が、 ネコ のようであるところか ら名付けられている。ギギのような「鳴 く魚」は日本ではめず らしい とさ れているが、世界的には結構 よく居るようである。 インダス川やメコン川では、 4mに もなる世 界最大の
̀メコン大ナマズ 'が 居るが、この魚 もよく鳴 くそ うである。
3.黒 い金魚が赤 くなつたワケ
こちらか らした質問にも、丸山専門学芸員は丁寧に答えて くれた。本学理科教育研究室の松村 佳子先生の飼っていた一匹の黒い金魚が赤 くなったそ うなのであるが、それがなぜか という質問 をした。金魚 というのは、そ もそ も中国のフナである。あの赤色は最初か ら付いているわけでは な く、フナ特有の色の状態か ら、ランチュウが大 きくなる過程で赤 くなってい き、 1年 経つ事で 完全に赤 くなるそ うである。黒デメキンはそんな赤い金魚の中か ら出て きた黒 く色の出る品種 を 何代 も掛け合わせ る事で作っているのだそうである。だか ら、赤 く戻 って も何 ら不思議はないの だそうである。
また、金魚は人為的にその形が作 られているため、放ってお くと野生化するそ うである。通常 売 られている状態では、 自然界では早 く食べ られて しまうため、より早 く泳げるようなフナの形 へ と戻ってい くのだそうである。金魚 を養殖する事 を生業にされる業者は金魚のフナ化 を防 ぐた め、 4つ 尾の ものは除いてい くなど、選別 をして行 く。ちなみに目が突出するというのは、ある 種の栄養失調時に起 こる突然変異種なのだそうである。そのため、餌 を大量 に食べ させると、出 ていた目が引っ込む事 もあるそうだ。
テツオナラという、天然記念物に指定 されている先祖還 りの金魚が居 るそ うで、 これは自然状 態に戻 りかけている金魚の形態に近いそうである。そのため、郡山などで養殖場か ら流出した金 魚が間違われて、 よく問い合わせ られるとの事だった。
このように、金魚はもともとの状態か ら無理な状態にさせ られているため、寿命 もフナほど長 くはない。浮 き袋ひとつ とっても、変形 した状態なので、冬になって寒 くなると動けな くなる。
そうなると、バ ランスが保てな くな り、おなかを上にして浮いて しまい、浮いた部分が しもやけ
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になって腐 って穴が空いて しまうのだそうだ。 フナは経験的に 30年 経っても命が衰えないそ うだ が、金魚は 2〜 3年 、 よく生 きても 8年 くらいだそうである。
4.博 物館 の役割
最後 に博物館 の果 たす役割 につ いて伺 った。 曰 く、博物館では役 に立たないか らと言 って、捨 てる事 はで きない。あ らゆる もの (無 形 の情報 も含む )を 残 してお く事 が、博物館 の重要 な仕事 のひ とつ とで ある。中で も、「何気ない風景」の記録 (映 像や写真 )と い うのを残す事 は難 しい。
町の風景や生活の様子 とい うものは案外見過 ごされて しまうので、無 くなってか ら気付 く事が多 い との事 だった。
他 に、子 どもの興 味 を 自然 に向け させ る事 も大切 だ とい うこと、 また、 自然環境が どん どん変 わって きている事 に多 くの人に気付 いて もらう事 も博物館 の活動 として、 とて も大切 だ とい う事 だった。 この 10年 、琵琶湖内で も相当の変化があったそ うであるが、多 くの人がそれに気付 いて お らず、 今 も昔 も全然変わっていない と思 っているようである。ある程度知識 を持 っている人で さえ、 いな くなって しまったボ ッジ ャコをまだいる と思 っていた り、時間的空 間的なズ レを知 ら せ る事 は、博物館 として とて も大切 だ とい う事 であった。
5.ま とめ
今回、 ほぼ半 日の コー スで琵琶湖博物館 を訪問 し学芸員の方 々か ら研修 を受 けた。網羅的な内 容 で は な く、学芸 員が実際 に取 り組 んで い る研 究 に即 して御指導頂 いたのは、極 めて有意義で あ った。魚 の発す る音 の研 究、金魚の発色 を中心課題 とし、それに付随 した魚の生態 について教 えて頂 いた。加 えて、博物館の役割 といった大 きな課題 について も、直接 、学芸員か らお話 を聞 けたの は貴重 であった。
当 日、学芸員の方 々は多忙 な 日常業務の中、本当に大事 な時間を我 々のために提供 して頂いた。
さらに、大変 な熱意 を持 って我 々に接 して くれた。その熱心 な姿 には、頭が下が る思いであった。
博物館 の持 つ教育効果が極 めて高い ことをあ らためて痛感 した。何 よ りも実物がそ こにあるこ とが最大の強みである。それだけで学習意欲が違 って来 る し、百聞は一見に しかずの伝 の通 りよ り理解が進 む。特 に生物学・生態学 を中心 とした環境教育 には うってつ けの教育の場 となる。今 現在、 当研 究室 では、新 たに、 きしわだ 自然資料館 との環境教育 。研究の連携 を計画 している。
今後、 こうい った様 々な連携 を発展 させ、良質 な環境教育の場 を構築で きれば と考 える。
謝辞
琵琶湖 の外 来魚 問題 の現状 につ いて詳 し く教 えて頂 き、 また、野池魚類生態系 の調査 について ア ドバ イス を頂いた琵琶湖博物館 の中井克樹主任学芸員 に感謝致 します。淡水魚の生態 について 本学 の学生、大学 院生 を御指導頂いた琵琶湖博物館の秋 山廣光専 門学芸員 に感謝致 します。琵琶 湖博物館 の見学や学芸員の方 々との交流の場 をア レンジ して頂いた琵琶湖博物館の芦谷美奈子主 任学芸員 に感謝致 します。
参考文献
松 山豊樹 。 2003.連 続 的標識再捕獲 の時系列解析 による個体数推定の新手法 .奈 良教育大学紀 要
(自然科学 ),52(2):1‑5。
松 山豊樹 ・田中淳。 2003.外 来魚が移入 された野池 の魚類生態系調査 と数理生態学的手法 によ る未来予測。奈良教育大学紀要
(自然科学 ),52(2):7‑18。
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