• 検索結果がありません。

恐慌発生の必然性とメカニズム

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "恐慌発生の必然性とメカニズム"

Copied!
28
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

恐慌発生の必然性とメカニズム

著者 海野 八尋

雑誌名 金沢大学経済学部論集 = Economic Review of Kanazawa University

巻 3

号 1

ページ 9‑37

発行年 1982‑10‑30

URL http://hdl.handle.net/2297/18359

(2)

海野八尋

はじめに

l・マルクスの拡大再生産表式 2.需要と供給の規定関係 3.上方不均衡累積の榊造 4.逆転のメカニズム 5.現実の恐慌

6.残された論点………おわりに

はじめに

われわれが本稿で意図するのは簡単な形式をもった資本主義モデルを使っ ての恐慌の発生メカニズムの解明である。したがって恐慌の「抽象的」ある いは「形式的」可能性から「現実の恐慌」,「具体的恐慌」へと上向する「恐 慌論の体系」の展開が予定されるのではない。あくまで問題は景気の無限上 昇の不可能性,「景気の逆転」の内在的根拠の解明である。少なからぬ数の 研究者が恐慌について論じて来たが恐`慌発生のメカニズムについては充分論 証されてきたとはいい難い。例えば生産性不変・利潤率低下・実質賃金率上 昇と投資拡大といった背反的範鴫を条件抜きに共存させた好況モデルを設定 したり(参考文献〔1〕),労働者の消費が抑制されていることから直ち全般的過 剰生産を論じるというやり方〔2〕は科学的とはいえない。

またわれわれはマルクスに依拠しながらもマルクスの恐慌に関する断片的 叙述の解釈は行なわない。それはマルクスの妥当な解釈のためには考証学的 接近よりわれわれ自身の積極的な恐`慌理論の創造の方が確実であるという判 断と,マルクスの叙述全てを是認することは困難であるという評価をわれわ れが保持しているためである。

マルクス自身が批判するように,蛾恐慌の形式的可能性(購買と販売の分 離)は商品の形態そのものであり,したがって恐慌の形態にすぎず,この形

(3)

金沢大学経済学部論菓第3巻第1号1982.10

態そのものの中に「なにによって恐`慌のこの可能性が恐慌になるのか」とい うことは含まれてはいない〃(〔3〕S502,s503,677頁,689頁)。しかし マルクスが恐`慌の必然性を明らかにしたとは評価し得ない。「恐`慌の一般的 諸条件は……資本主義的生産の一般的な諸条件から説明されなければならな い」((3〕S516,696頁)ということで恐慌の根拠を「人民大衆が必需品の 平均的な量よりも多くをけっして消費しえないということ,したがって彼ら の消費が労働の生産性に一致して増大しないということ」(〔3〕S469,635 頁),また「必需品の範囲内に閉じ込められている生産者大衆を基礎とする 生産力の無制約の発展」(〔3〕S529,714頁)に求めてもあいかわらず恐慌 の可能性が現実性に転化することを説明したことにはならない。社会的生産 が生産者大衆の消費より大きいということは剰余生産物が存在するというこ

とであり,したがってそれは拡大再生産=経済成長の決定的必要条件である といえる。そのことを指摘したところで恐`院の発生過程が説明されるわけで はない。資本主義社会においてこの剰余生産物は労働者の消費元本にはなら ず,資本家が消費するしかない。しかし全剰余を資本家が自家用に消費して しまうのであれば資本の拡大はない。全剰余生産物(価値)の実現と資本の 拡大のため資本家は投資を社会的に強制される。これは資本主義の仕組み-

一般的条件であるが,このことから全般的過剰生産産恐慌の発生を直接に 説明することはできないことは明らかである。

恐`慌論の基本的課題のひとつが恐慌発生の直接的な根拠と条件つまり発生 メカニズムの解明であることは異論があるまい。しかし従来の研究で恐`慌に 先立つ景気上昇局面における需給不一致(需要超過)の関係がいかにしてそ の逆の不一致,過剰生産の関係に移行するのかということが明らかになった

という共通の了解はない。

恐慌の発生が需給関係の決定的な逆転であることからわれわれはこの「逆 転のメカニズム」の解明がきわめて重要だと考える。需給関係の逆転メカニ ズムを解明するためにわれわれは資本主義的生産社会における生産(供給)

と消費(需要)のそれぞれの規定関係を区別と統一において考察するという 方法をとる。つまりこれは貨幣環流と実物的需給一致したがって事前的・事 後的・価値的需給一致を前提条件としたマルクスの表式展開の方法とは異な る方法を採用することを意味する。そこでまずマルクスの表式論の方法が恐 '慌論において採用できない理由を明らかにしよう。

-10-

FD゛.:,:ロ

(4)

1.マルクスの拡大再生産表式

かつてマルクスの再生産表式論の恐慌論上の意義について多くの議論が行 なわれた。そしてその議論を通じて次のような見解が示されてきた。第1の 見解は,恐慌をマルクスにおける拡大再生産の条件(V]+Mv,十Mk,=C2+

MC2)からの逸脱ととらえる考え方である〔4〕。

第2の考えは,その拡大再生産の条件だけでは均衡は実現されず,付加的条 件が必要とみなし,この付加的条件を求めるものである〔5〕。われわれの考え

ではこれらの見地は共に正しくない。

周知のようにマルクスにおける拡大再生産表式は

'1ルー鮴朧鯏雅蝋蝋

であり均衡の条件は

V,+Mv,+MkFC2+Mc2(1.1)

※Wは商品価値総額,C,Vは不変資本価値総額,Mは剰余価値総額,MqMvは不変 資本投資,可変資本投資,IVDKは資本家の個人的消費分,添字は生産財部門(1),消費財

部門0mを示す。

つまり(1.1)で示されるような価値的均衡条件(価値で示された条件)

が充たされれば社会の価値的・素材的交換が過不足なく果され,拡大再生産 が支障なく進行することになっている。しかしこの均衡条件式は実はマルク スの行なっている貨幣環流の想定と,事実上行なわれている全取引市場にお ける需給一致の仮定から導かれる結論であり,これ以上に厳しい均衡は与え ようがないといえる。別のいい方をすれば両部門の貨幣環流を前提するとい うことは両部門の売りと買いが一致するということであり,これに価値的均

衡が加われば各々の売りに対する (図1)

買いも一致する,つまり需給が-

資本家1資本家2 致するのである。単純化していえ

ば次のようになる。図1においてG1=ニニニニニニヨWh

資本家1は資本家2より商品W2

蟇鵬雫二繊襄|

入し,代金G2を支払う。貨幣環W: W]崖二二二二二二二G2 ’

-11-

(5)

+-1~ ̄~~←

金沢大学経済学部論巣第3巻第1号1982.10

流とは価値次元でG1=G2となることである。これは次のような関係で与え られる。

(1)G1=Wh

(2)W,=G2

(3)W,=W2

...(4)G1=G2

(1)と(2)は商品Wi,W2に関する需給一致を示す。マルクスはまず(4)を前提し (3)をV,+Mv,+MkI=C2+MC2という部門間の関係として導いているので

あるが,これは(1)と(2)を想定しなくては不可能である。つまりマルクスは取 引される商品(その全ての部分)についての需給一致を事実上前提条件とし て設定しているのである。このことをマルクスの二部門三分割表式を用いて 具体的に説明しよう。

商品資本タームで表現すればマルクスの表式は既にみた通り

慌二:ヰリ;聡柵測量

で示される。そこでマルクスの均衡条件が求められる過程を追及してみよう。

1)部門1は[Cl+MCl]の価値をもつ貨幣G[Cl+McJをもって商品W[Cl

+Mc,]を購入する-1部門内取引。

2)IはG[V,+Mv,+Mk,]をもって、より商品W[C2+MC2]を購入する

-部門間取引。

3)nはG[C2+MC2]をもってIより商品W[V,+Mv,+MkJを購入する

-部門間取引。

4)nはG[V2+Mv2+Mk2]をもって商品W[V2+Mv2+Mk2]を購入する

-11部門内取引

そこで両部門のそれぞれの投下貨幣は,

1.G[Cl+MCU+G[V,+MV,+Mk]]

、.G[C2+Mc2]+G[V2+MV2+Mk2]

であり,回収貨幣は,

1.G[C,+Mc,]+G[C2+MC2]

II.G[V,+Mv,+MkJ+G[V2+Mv2+Mk2]

であり,貨幣環流の想定よりこの両者は等しく,

1)G[Cl+MCI]+G[V,+Mv2+Mk,]

=G[Q+MC,]+G[C2+MC2]

-12-

(6)

2)G[C2+Mc2]+G[V2+Mv2+Mkz]

=G[V,+Mv,+Mk,]+G[V2+Mv2+Mk2]

これを整理すればどちらの式を整理しても

G[V,+Mv,+MkL]=G[C2+Mc2] (1.2)

が求まる。マルクスはこの条件から価値的一致条件W[V,+Mv,+MkJ=W [C2+Mc2]を導いている。するとG[V,+Mv,+MkjによってW[C2+Mc2]

が購入され,G[C2+MC2]によってW[V,+Mv+MkJが購入されるのであ るから(1.2〉式とこの均衡条件から当然

|:脚;1M輔匡緋訟刷

の関係が成立していなければならない。つまり部門間で取引される生産財,

消費財に関して需給が一致することが前提されねばならないのである。それ では部門内で取引されるそれぞれの財についての需給関係はどうか。I部門 内で消耗した生産財,11部門内で消耗した消費財はそれぞれ過不足なく補填

されねばならない。つまり

消耗[Cl+MCI]=補填[Cl+Mc1]

消耗[V2+Mv2+Mk2]=補填[V2+Mv2十Mk2]

そして各部門内で貨幣を投下したそれぞれの資本家の許へ貨幣は環流すると すれば,消耗分が供給,補填分が需要であるから

G[Cl+MC,]=W[C]+Mcj

G[V2+Mv2+MM=W[V2+Mv2+Mkz]

つまり部門内取引分についても各々需給一致でなければならない。このこと によって社会的総生産の需給一致が実現する。このことは社会的総生産の全 取引分野における需給一致と貨幣環流を想定すればマルクスの均衡条件 式は直ちに求まることを意I床する。つまりマルクスの均衡条件とは単 に部門間の価値的均衡のみならず全取引分野の需給一致,社会的需給 一致,貨幣環流の三つを内在させているといえるのである(念のためにいえ ば貨幣環流とは各部門,資本家に対する需要とそれらが他に対して発する需 要とが同額であること,したがって需給一致の下ではそれぞれの行なう生産 と消費とが価値的に一致することを意味する)。つまりマルクスの均衡条件と は単なる社会的総供給と総需要の一致ではなく各部門,各資本家について需 給が一致し,かつ各部門・各資本家の行なう生産と消費が価値的に一致する

13-

(7)

金沢大学経済学部論菓第3巻第1号1982.10

という厳しいものでこれ以上に厳しい均衡条件は求めようがない。したがっ てこれ以上に均衡概念を拡張することは自然との代謝関係と生産関係との均 衡を別にすれば意味のないことである。

注意しなければならないのは私的所有形態にある資本主義経済が毎期この ような厳しい均衡を維持することはありえないということである。これはこ の均衡条件が充たされないからといって拡大再生産が不可能になったり,そ のことが直ちに恐慌をひきおこしたりするものではない,ということである。

資本主義において商品資本の次元でのマルクス均衡条件式が成立したとして も個々の取引における需給一致したがって貨幣環流が実現するわけではない から実物的な財の補填が行なわれても価格次元での不一致,したがって利潤 率較差は常に生じるのである。

以上のことから需給不均衡の動態的関係を明らかにすることにより需給関 係の逆転メカニズムを解こうとするわれわれにおいてマルクス的均衡条件を 採用することができないのは当然である。マルクス的条件の制約下でいくら 表式を操作してもそのことから恐慌発生の根拠を明らかにすることはできな いのである。

2.需要と供給の規定関係

われわれは資本主義的恐慌が全般的過剰生産恐慌としてあらわれることに 注目し,本稿では部門間の関連を度外視し,総供給と総需要の対応関係を取 り上げる。この方法において社会的総生産の部門間の関連は不明となるが需 要と供給それぞれの独自的運動と両者の関係の基本的姿態は明らかとなり,

部門間の関連についても一定の見通しが得られよう。部門間の関連について は別の機会で論じる予定である。

さてわれわれは次のような手続きで単一部門モデルを得る。

a〃:i商品1単位の生産に必要な財jの量 lガ:i商品1単位の生産に必要な労働量 xf:商品iの生産量

pi:商品iの価格 w:貨幣賃金率

X:生産価額(事前的供給額)

D:需要額

とする。簡単化のためpFpjとすると,供給は

-14-

(8)

X二=zpdxi

i=1

(2.1)

ここで

,=旦豐

とすると X=px

藤=鶚

ここでpを前期価格とするとXは事前的供給を示し,今期価格とすれば事後 的供給を示す。つまり

Xf=pt-]xz (2.2.1)

Xf-pfxf=D‘ (2.2.2)

※添字tは期間を示す。

この区別が決定的に重要である。生産物全てが売りきれるかどうかというこ とはさておき(「数理派モデル」の場合価格変化を通じて商品の全部的販売 が実現されることになっている〔6〕.〔7〕)事後的供給額は需要額に一致する。し たがって当該期の需給関係をみる場合この事後的供給と需要とを比較しても 意味がない。事後的一致・素材的不均衡の拡大から恐`慌を説明しようとする 数理学派の方法に対しわれわれは事前的・事後的供給と事前的・事後的需要 の対応関係の検討を通じ不均衡の構造を明らかにしようとする。ここで

倉旦些=a,

i=1,ゴー1,

倉上=, (n:部門数)

とするとa,Iはそれぞれ平均財投入と平均労働投入となる。

b=且旦土lzr=二 pp0 ※sは費用価格

とするとbは社会的平均投入コスト比となり事前的供給は次のように示すこ とができる。

例b

X`=bf-1Xf+Ⅱ‘ (2.3)

ここて、b`-lx`は社会的期首資本総額を,Ⅱ`は剰余価値価総額をあらわす。

ここで

n=-57聖【7('Ⅲ

15-

(9)

金沢大学経済学部論巣第3巻第1号1982.10

とし,fを剰余率と呼ぶと,

X`=bl-lX`(1+造)(2.3.1)

,、

Ⅱf=Xd-bf-1Xf=X`(1-b`-,)

(剰余価値価額=供給額一期首資本=供給額一費用)

だから(2.4)は

f-鶚景`-j-1-b腱-1  ̄bC-1 (2.4.1)

となる。sを費用価格,汀を単位当り利潤とすると

b=÷1-b=そ,(.=a,+1W)

だから(2.4.1)は

r`==L丙igf-竺一上一二竺一r`L1

pf-l Sオーl Sf-1

(2.4.2)

r1-,は前期の実現利潤率である。つまり(2.3)は

Xt=b`_jXt(1+f)=bd-lXt(1+r》_,)(2.3.2)

と示される。

(2.3),(2.3.1),(2.3.2)は価格で表示された価値であり,

事前的供給額を示すのである。、

次に需要の側について考えよう。需要は今期の補填需要と投資需要,資本 家の個人消費需要からなる。需要についても事前・事後の区別が必要である。

いま予定されている補填,投資,個人消費の素材量を各々k,i,cとす ると資本家は|日価格で実質需要量を決めるから

Kf=kzsオー,=b8-1Xf

※但しsは資本単位当りの価格。sは生産手段と労 I。=itsd-1 働力価格で櫛成されるのでpと一致しない。

Cf=c2pd-1 nt=L+C‘

Ⅱ`は資本家の補填分を除いた支出であり弾力的であるが補填分kfは完全に 補填されないと再生産が維持できない。Ⅱ`はまた貯蓄がされないという仮 定の下では予想された収益となる。つまり資本家は予想した収益に拠って支

16-

(10)

出を決める。そこで需要は,

DC=b`-lx`+Ⅱ`=b`-lx`+I`十cd(2.5)

予想収益に基く支出nであるがこの元本を資本家はどこから得るか。スト ックを捨象すれば手持の貨幣はなく投資・消費資金は今期の所得で賄うしか ない。しかし所得を得る前に買わねばならない。このジレンマは信用の導入 によって解決するしかない。つまり利潤を見込んで相互に信用を与え合うか 借入をすることによって必要な通貨(機能)を入手するのである。また念の 為にいえば我々の場合固定資本を捨象しているので予想収益と見込支出は毎 期同額であるが現実には一致しない。なぜなら収益予想は全投資期間と設備 の稼働期間つまり資本の循環期間全部に亘るものであり,見込支出とくに固 定資本投資は期間当初に集中する。したがって各期毎に双方が一致すること は一般にあり得ないのである。ところがこれだけの支出がなされ当該期の需 要が供給を上廻り,pf-,より高い価格p`が定まると需要の総額は不変であ るがその構成部分の額は変化する。つまり

D`=K/+I{+C/=bfX/+I/+C/>X‘(2.5.1)

b`は今期の費用係数,X/は事後的供給総額であるからbfX/は消耗資本の 今期価格での補填額である。先述のように消耗した財の量は補填しなければ ならないので価格が変化しても現実の補填の素材量k'は事前的需要=消耗資 本の素材量当初予定よりkに一致する。他方投資と資本家個人消費の現実の 素材量は価格上昇のため減少する。つまり,

KJ=kfsf,K`=k(sf-l I/=i/s‘,L=i`s`_I C/=cJpd,Q=c`pj-I

iJ<L c{<c2

勿論これは一つの仮定であり,これ以外の条件を用いてもよい。例えば投資 部分については素材的にも変化「せず,減少は個人消費部分についてのみ見られ るとか,或いは全て数量的には維持され,追加的貨幣投入があるという想定 でも良い。それらの条件設定の下でも議論の結論は同じである。我々の設定

17-

(11)

金沢大学経済学部論集第3巻第1号1982.10

sは資本の単位当り価格,先に見たようにsは財と労働力の価格からなるの で物価pとは一致しない。

T-.‘,号=r1 IJ,

より

h",=告=`等!=`"}U,U

Ⅱ'は実現収益であり,α'`は蓄積率,r;は実現利潤率。

しかしここで注意しておかなければならない。(2.9.2)は供給(生 産)の実質成長率を示すがh`+】=I{/X/は決定式であるが,h`+,=α/rjは恒 等関係を示すものであっても決定=因果関係を示すものではない,というこ とである。つまり前者は前期に購入された資本の実質量が今期の生産量を規 定する関係を示す。他方後者の場合の実現利潤率は投資を決定するものでは ない,逆に投資需要したがって需給関係を通じて事後的に与えられるもので ある。規定関係を示せばr`-→I`-→Ij-→rlとIノー→htfloしかしこの 恒等式は供給成長率の大きさをわかり易く示す。

2)需要の変化率

D`=b`-lx`+Ⅱ`=b`X/十m=b`X/(1+rj)

Dt+j=bfX`+,+Ⅱ`÷】=b`十lxM+Ⅱ(〒(

ここで注意しなければならないのは次期事後的需要を持出すとそれはD`+,=

P`十lxtであり当然次期の価格が規定因に入いりこんでしまうことである。

しかし次期価格は次期の需給関係の結果として成立するものであるからわれ われは因果関係からして次期事後的需要を用いて次期価格,したがって次期 の需要の大きさを決定することはできない。次期需要の大きさを次期価格を 用いて求められるのは計算上のことでしかない。そこでわれわれは供給と同 じく需要についても当期事後的需要と次期事前的需要の概念を用いなければ ならない。かくて需要の増加分は

」D`+,=U+j-D`=(b`X`+,+Ⅱ`十J)-(b`XI+Ⅱ!)=Ⅱ`+l-Cl

t+1期事前的需要t期事後的需要(2.,,)

ここでⅡ‘÷lは次期予想収益,Clは当期資本家消費だから

-20-

(12)

Ⅱ峠,=b`X`÷】.r`+,

(期首資本)(予測利潤率)

c~m-Ii=(]-台)Ⅱ=(MMri

これより

』D`辿一b`X`+,.r`+,(1-αl)bfXfrj (2.12)

DtbfXX1+rl)b`Xl(1+r')

等=鶚と=竺一辮!+…=h時!+’だから

X#Xf

Xf+,/Xノー1+h,+l=1+αlrlを代入すると jDt十,一h`+,(1+rf+,)+(r`+l-rJ)

g`+'= ̄五F1+rj

-r`+11+α;r{)-(1-α{)rl (2.12.1)

1+r/

ここで予測利潤率が需要成長率の規定要因として入いり込むのはそれが資本 家の支出(ⅡしたがってⅡ')を規定するためである。また供給成長率が入い り込むのはそれが補填需要を規定するためである。したがって能動的に今期 の需要を規定するのは今期の資本家支出即ち予測利潤率ということになる。

したがってr`+,=rjのとき(2.12.1)より

96+,=hd+, (2.13)

となるが,r`+,=rlは(2.8)n=rl-]と同じことである。つまりいった ん需給一致が実現したのちも予測利潤率が常に前期実現利潤率に一致してい るならば与えられた条件下では供給と需要の増加率はそれぞれ一致し,需給 一致が連続するのである。したがってr{<r`+,の関係があれば需要の成長率 は供給の成長率を越えることになる。

rj菫、+,のとき h`+,三gf+,

3.上方不均衡累積の構造

しかしながら供給・需要の増加率が資本主義の下で毎期一致することはな

-21-

(13)

金沢大学経済学部論集第3巻第1号198210

い。実際(2.9.1),(2.12.1)でわかるようにそれぞれの増加率

h藍=命=α川訓

9世=r八1+αj-1r`-,)-(l-aj-1)r1-, 1+rl-,

であるから供給増加率は前期の投資したがって前期の蓄積率に規定されてい るのに対し,需要の増加率はそれ以外に今期の予測利潤率が規定要因として 入り込んでおり,両者の規定関係は同じではない。(われわれのケースは集計 一部門モデルとなっているから今期の需要の大きさを規定する要因として今 期の蓄積率atが入ってこないが二部門モデルの場合その大きさが両部門へ の需要配分を規定することになる。われわれの場合それは次期の生産力を規 定するだけで需要規定要因にならず投資と資本家個人消費の合計だけが規定 要因となる。)したがって供給増加率と需要増加率が一致するのは偶然的であ る。そこではひとたび需給不一致が生じたときこの不一致は速かに調整され るのかどうか。ここでは上方不均衡累積構造について検討を加えるので需要 超過の場合を考察しよう。前期需給が一致して価格変動がない場合資本家が より大きな利潤を求めて穂極的な支出を行なう可能性は充分にある。第一に 新生産方法の採用による費用低下とそれによる予想収益の増大が期待される 場合である。第二に品質の改良による売上増が期待される場合。第三にそれ らによってより急速な波及的需要増が予測される場合。いずれも生産性の変 化が関わるのであるが本稿では生産性の変化を捨象しているので生産性変化 がないにもかかわらず何らかの理由(今日では輸出や財政支出の増加などの 場合が具体的には挙げられるが)で需要が(事前的)供給を上廻った場合を 考える。

さて不均衡累積について考える場合われわれは予め資本家の投資・消費行 動について考慮しておかねばならない。それは資本家の投資行動によって需 給関係が規定されるからである。われわれは資本家の投資・消費行動を次の ように定義する。

(1)r`=/(rJ-j),f`-,>Orl-l<r‘,/>O (2)L=。!(r`),I{=j2(r`),‘>0

(3)α`=‘,(r`),at=’2(r`),‘>0

-22-

(14)

(1)は予測利潤率が前期実現利潤率に基いて決められること及び実現利潤率 が上昇する場合今期予測利潤率は前期実現利潤率よりも高く設定されること,

逆は逆であることを示す。(2)は予定された投資と実現した投資は予測利潤率 また前期実現利潤率に基いて決定されることを示す。(3)は予定された蓄穣率 と現実の蓄積率が予測利潤率また前期実現利潤率によって決定されることを 示す。つまり投資及び蓄欄率は予測利潤率が大きい程大であるという投資行 動が設定されているのである。勿論これ以外の定義の仕様があるがここでは

もっとも一般的妥当性があると考えられる投資行動を設定しておく。

さて以上の前提のもとに議論を進めよう。いま前期において需給が一致し たにもかかわらず今期需要の増加率が供給増加率をこえたとしよう。このと

Xt-,=DC-, (3.1)

h8<92 (3.2)

X`=X`-,(1十M<D`-,(1+9通)=Df(3.3)

r1-,<、 (3.4)

次期に需要の増加率が低下するか供給の増加率が上昇すれば需給乖離は調整 されるが,そのような運動が生じるであろうか。来期の需要は今期の実現利 潤率によって規定されるので今期の実現利潤率がどうなるかみてみよう。

(3.3)のように今期の需要が供給をこえ,物価上昇が生じる。市場価 格総額は商品全てが実現されようがされまいが需要総額に一致する。

価格上昇率血は

bf=」2=込二と=」LムニユムーD`-Xf

pオー【

Xォ

- ̄

Xt

_bu-lX`(1+、)

-1=ずL蜑芒T-1

b,_Ⅱ 1+、

故に

rノミr`+,のとき h‘+,≧92+【

血十,≧0

-23-

(15)

金沢大学経済学部論築第3巻第1号1982.10 (駐)

念の為に物価上昇率と需要,供給の上昇率との関係をみておこう。

X`-,(1+9,)=D-Xi X`(1+DJ=Xj X`=(1+hJX`-l x`-,(1+h`)(1+か)=Xj

したがって

(1+hj(1+b`)=(1+g`)より

、`=+芸if-1(3,5.1)

それでは利潤率はどうなるか。一般に利潤率は実現収益の補填資本額(期 首資本額を当期の価格水準で評価換えしたもの)に対する比率とすれば次の 様に表現される。

M-b`X;_」二L吉-1(3.6)

r`=btXl ̄b‘

前期の利潤率は

--1 1

bt-, (3.7)

rf-l-

であるからrlとrl-Iの比較を行なう。もしr1-,<rJとなると,rj<r`+,とな り,h`+,<gf+Lが生じ次期についても需要の成長率が供給の成長率をこえ,

不均衡が継続する。

さてrjを書きかえると次のようになる。

’1-bピー’-,

瓦=当宕'二=雨47丁-1=百万;年Tv77

8)

(3 apf-,(1+M+lw`-,(1+Wd)△、 ̄ ̄′ -1

但しWf=』w`/wt-,

『1-戸ZI57」+4T滿一(3.9)

だから(1+W`)が(1+P)より大か小かでrlとr1-,の大小が決まる。当然 p長Wfのとき

-24-

(16)

rイミrl-l

要するに貨幣賃金率の上昇率より物価上昇率が高ければ利潤率は上昇する。

このとき実質賃金率lw/pは下降する。労働生産性一定の条件下で需要超過 が生じたとき利潤率が上昇するのは物価上昇率が貨幣賃金率の上昇率をこえ,

実質賃金率が低下する場合であり,この条件が充される限り実現利潤率は上 昇を続け,需要成長率は供給成長率をこえ続け,不均衡は累積していく。実 質賃金率の低下が生じない,つまり貨幣賃金率が物価と同率で上昇する場合 は実現利潤率は上昇しない。

現実の好況過程においては追加投資部分の生産性が高く全体として生産性 が上昇する。稼動率についても我々はこれを捨象しているが好況期の稼動率 上昇が商品価格の固定資本コスト比を低める効果つまり生産性上昇をもたら す。したがって我々が設定した資本家の投資行動を前提すれば実質賃金率が 上昇してもそれが労働生産性の上昇率以下であれば実現利潤率は上昇を続け,

投資の増加率も累進的に上昇する。つまり実現利潤率の上昇率は周知の様に 次のように示されるのである。

f=pM-w (3.10)

利潤率上昇率=物価上昇率十生産性上昇率一貨幣貿金率上昇率

そこで生産性一定の条件下では今期の貨幣賃金の上昇率が物価上昇率を下廻 れば利潤率は増大する。我々の設定した資本家の行動様式からすれば

rJ-,<rj のとき

r』<、÷,,ついでにいえば 1J<11+,

α/<α;+I

そこで当期の実現利潤率が前期のそれを上廻れば h`+,=αJrj

g`+,=r`+,(1+αlrj)-(l-aDrj 1+rj

より

-25-

(17)

金沢大学経済学部鎗築第3巻第1号1982.10 hF+'<gt+,

仇十,>0

つまり来期も需要の成長率が供給の成長率を上廻り,物価が上昇する。物価 が上昇し利潤率が上昇すれば資本家は今期の供給能力の不足したこと,した がって前期の投資の不足したことを知り,より大きな投資を計画し,かつそ れを支えるより大きな収益を予想するのである。そしてその結果が次期の需 要超過という不均衡をまた生みだしていくことになる。そこで不均衡が連続 するということは需要の成長率が供給の成長率をこえ続けるということ,し たがってそれは利潤率の上昇が続く,つまり物価上昇率が貨幣賃金率の上昇 率をこえ続けるということである。好況過程とはこのように需要の成長率が 供給の成長率をこえ,物価が上昇し,実質賃金率が低下していく過程である。

生産性上昇がある場合は物価上昇率と生産性上昇率の合計が貨幣賃金率の上 昇率をこえている関係が維持されている状況である。

(駐)予測利潤率と実現利潤率の関係について

ここで予測利潤率について若干述べておこう。これまでの展開のように実現利潤率は 資本の補填費用即ち当期価格で評価換えされた資本価額b`Xlに対する実現利潤Ⅱlの比 として示されている。しかし実現利潤率を期首資本価額b`-lx`に対する実現利潤Ⅱ}の 比として表わすこともできる。この場合実現利潤率は本文で用いた利潤率よりも大きく なる。我々がrl=、/b`Xlを用いたのはその方が利潤率の表現が単純な形式をとるため であり,各期の利潤率の比較が容易であるためである。これをフローの利潤率とし,期首資 本に対する利潤率をストックの利潤率と呼んでおく。フローの利潤率は(3.8)で示

したように

『;=器=;f-1

であるがストックの利潤率は実現利潤の期首資本に対する比率であり,実現利潤は当期 の価格にも規定されるのでその表現式に物価上昇率と補楓部分の価額上昇率が入いり込 んでくる。即ちストックの利潤率rrは

『:=忘里rT=x臣筈i(毫当』塑鵜響璽)

_XA1+p)-b`-lx`(1+s)

bI-lXf

=-1±-2-(,+§)(sはコスト上昇率)

bU-l

r/とrl'の大小関係は分子が同じで分母が違うのであるからr/<Trである(b`-lx‘

-26-

(18)

<b`Xl)。予測利潤率についてもフローの利潤率とストックの利潤率の両方が概念とし て成立しうる。論理的にはどちらをとるにせよ実現利潤率と同じ次元の範蒋に統一して おかねばなるまい。しかし我々の場合既に見たように予測利潤率については期首資本額

に対する予想収益の比としており,費用価格の予想,物価の予想は考慮していない。

以上の様に前期実現利潤率が前々期実現利潤率より高く,利潤率の上昇が 予測されること,予測利潤率が高い程蓄祇の規模と割合を高める資本家の投 資行動,それを支える信用による通貨供給,貨幣賃金率上昇の遅れ=実質賃 金率の低下という要因があるとき上方不均衡は継続する。

4.逆転のメカニズム

上方不均衡=好況を支える条件が先の通りであるから論理的にはこの不均 衡過程の逆転はそれらの条件が消失するところに根拠を求めることができる。

逆転とはそれまでと異なり供給の増加率が需要の増加率を越える(ニュアン スを考慮すれば需要の増加率が供給の増加率を下廻る)ことである。そうな れば物価は下落する。その結果として利潤率が低下すれば投資は低下してい く。いったん投資=資本家支出が低下し,これがさらに逆転した需給関係の 維持・拡大を導き,物価下落と利潤率低下をひきおこせば経済は下方不均衡 過程に入ったといえる。そこで下方不均衡への転換の根拠を明らかにするた めには需給の増加率の逆転と利潤率低下が生じるかどうかを検討すれば良い

といえる。

既に見た通り需給各々の増加率は h`=αl-lriI-l

g`=、(1+α1-,rl-,)-(1-α1-1)r1-, 1+r`_(

である。そこでh,gを規定するα',r',の限度を検討しよう。、

蓄穣率α,の限度はα'=r/Ⅱで明らかなようにα*=1,つまり資本家が 個人消費をゼロにして見込支出全てを投資に向ける場合である。もちろん現 実には資本家自身の生活の再生産があるのでα・<1であるがα*=1とするこ とによってhとgの表現式が単純化するので我々はα・=1を仮定する。それ では実現利潤率,予測利潤率に上限はないか。

実現利潤率は既にみたように

昨烏=型=L迦llL apf+Iwf

-27-

(19)

金沢大学経済学部論築第3巻第1号1982.10

p`-,(1+川 -1 (4.1)

aい_,(1+b`)+1W`-,(1+Wi)

したがって物価上昇率pが貨幣賃金の上昇率を越える限り実質賃金率R(但 しR=wl/p=w`-1(1+W`)l/p`-,(1+、))が低下し,利潤率が上昇する。

箸=. (4.2)

として,(4.1)を書きかえると

p`-,(1+DJ -1 (4.1.1)

rt=

L「 ̄

apf-,(1+b`)+lw`-,(1+eP)

e=1のとき

rf-rf-1

e≧1のとき

rl≧r`_i,r`≧、-,

である。

p2Rd=lwt

であるから,これを(4.1)に代入すれば

『!=些孟}旱+鶉辿=ユilt;旱布寺L=--1 a+R#

(4.1.2)

つまり実質賃金率Rが低下すれば利潤率は上昇する。だから利潤率の限界は 社会的(個別資本においてではなく)には実質賃金率によって与えられるこ

とになる。実質賃金率の限界はあるか。

これまで見てきたように好況期の物価上昇に対し貨幣賃金率が遅れて上昇 することにより実質賃金率は低下し,利潤率は上昇する。しかし実質賃金率 は無限に低下しえない。労働力の価格は労働力の再生産を維持するものでな ければならず,実質賃金率がこれを下廻ることは労働力再生産の不可能を意 味し,必要な労働力の質と量の確保ができなくなるのである。したがってい ずれかの時点で実質賃金率はこの限界に達し,これを下廻ることにより反転

していく。

それでは実質賃金率の下限とはいかに規定されるか。考え方は二つある。

-28-

(20)

一つは実質賃金率の低下が限界を越えることにより労働力の再生産と供給が 停止し,このため再生産可能な水準に労働力市場の需給関係を媒介にして実 質賃金が上昇してくる,という考え方である。第二は労働力需要の増大によ って労働力市場が枯渇し,実質賃金率が反転・上昇するという考え方である。

第二の規定が第一の規定と異なるのは実質賃金率の運動を労働力市場の需給 関係からのみ説明する点である。しかし論理的にはこの両方の規定を考慮し なければならない。労働力の追加的供給は労働力人口の増加と相対的過剰人 口からの編入との両方で賄われる(他階級や外国からの流入は度外視)。した がって労働力の価格は長期的には労働力の世代的再生産を可能にするもので なければならず,短期的には失業者の生活水準を下廻ることができない。賃 金が失業者の消費水準を保証しなくなれば産業予備軍からの労働力供給(「

社会的供給」と呼んでおく)は止むし,現役労働者の離脱も生じる。労働力 の需要は増大を続けるのであるから当然労働力需給関係は緊張し,実質賃金 率は反騰する。逆にいえば利潤率はここで下降する。だから労働力の供給価 格(実質賃金率)の最低限は失業者の生活水準ということになる。しかし市 場を媒介にして成立する実質賃金率は事後的なものであり,それが事前的に 最低水準以上にとどまるという保証はない。そこで実質賃金率がこの段低価 格に達する,あるいはこえていくと労働力供給が急激に低下し,賃金率の反 騰が生じてくることになる。したがって実質賃金率の下方限界は理論的には 相対過剰人口の生活水準ということになる。他方労働力需要の拡大が続けば 有用的相対的過剰人口は消滅し,労働力の追加供給は労働者の子弟の成長,

「自然的供給」しかなくなる。したがってこれまで通りの労働力需要の拡大 は実質賃金率の上昇を招く。

労働力人口の増加率は急激には変化しないので労働力需給関係を主導的に 規定するのは当然労働力需要である。そこで需給関係如何で実質賃金率が失 業者の生活水準に低落する以前にその反騰が生じることはあり得る。また失 業者の生活水準並みの実質賃金率では正常労働力の世代的再生産は不可能に なり,長期的には労働力供給を低下させる。以上のように労働力需要の拡大 による実質賃金率の反騰の可能性は大きいが,労働生産性一定の条件下では 実質賃金率の下降が失業者の生活水準によって限界づけられ,それ以下に下 がる実質賃金率は反転上昇するという関係の存在が確認される。

そこでいま第n期に蓄横率,実現利潤率(実質賃金率)が限界に達したと しよう。もちろん蓄祇率と利潤率が同時期に限界に達する根拠はない。ただ どちらも同時期に上限に達したとする方が簡便だからそう仮定するに過ぎず,

-29-

(21)

金沢大学経済学部論菓第3巻第1号1982,10

その時期をずらしても議論に変りはない。すると,次のような事態が生じる。

(2.9.2)と(2.12.1)の式より次表の関係が成立する。

■■■■■■ ̄■■■

 ̄ ̄ ̄■■--肥、…

 ̄-1■--1■■■ ̄

■■-1■■ ̄= ̄ ̄

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ロロロ■■

ここで

(4.3) 1

r'"=r*r*=百〒て=-1※R・は限界実質

rh+,<r;、(4.4) 賃金率

r"+2<r;'十, r"+2<r"十, (4.5)

という関係が成立する。つまりn期に実現利潤率は上限に達し,次期は実質 賃金率の反騰を受け逆転下降する。、+1期の実現利潤率が低下するため資 本家は、+2期の予測利潤率をそれより低下させる。この結果需要供給の成、

長率は

h〃<g〃 (4.6)

h"+,<g"+, (4.7)

h"+2>g"+2 (4.8)

となり,n+2期において供給成長率が需要成長率を越える。つまり需給関 係が逆転するのである。利潤率が低下すれば予測利潤率も低下し,以後

h"十m>g"+、 成長率 (2図)

r、ローr*

r〃+1

rP2+l rjz+Z

が続いていく。つまり 下降過程への突入であ る。我々は上の表に おいて、+2期にも蓄 穂率が1を維持すると しているが,現実には

予測利潤率の低下に対

「1 -30-

家b

〃〃+178+2

時間

r〃

PP

α〃-1rn-1 9打

、+1 /

r〃+1 r〃+1 r〃+1

、+2 /

rPT+2 r〃+2 r〃+1 r冗十2

、+3

●●●●●●●●● ●●◆●●●●●● ロ●●c●●C●●

(22)

応して予定された蓄横率したがって現実の蓄稲率も投資の相対的抑制を反映 して低下すると考えられる。故に、+3期に入いるとα'とr’ともに低下する ことにより供給の成長率も急速に低下していくことになる。かくて均衡・不 均衡の基準となる事前的需給関係をみれば

X擁=Xh-l(1+h〃)<D卿=D"-1(1+g")

X"+,=Xh(1+h"+,)<D"+,=D"(1+g"+,)

X"+2=XA+I(1+h"+2)>D"+2=D"+,(1+g…)

但しXj=D〃

となる。

、+2期において物価は(3.5.1)より

p鬮雑=苦鵲-1=+圭器十-1<0Ⅱ,)

となり,物価は下落し,利潤率は

r"+,=p''十’-1(4.,0) ap"+,+lw"+,

p"+,(1+p,,+2)

ap"+,(,+P"+2)+,W"+,(,+W"+2)-1(4.11)

r〃+2=

であるから

血樒|>|…

p"+2<0,

であれば

r"+2<r汀+,

(4.12)

となり下落する。これまでの仮定のように一般に賃金は物価に較べより硬直 的・後追い的であるから一般的に物価下落に対応して利潤率は低下するといえ る。したがって需給関係の逆転によって実質賃金率は好況期と逆に上昇する。

以後実現利潤率の低下に対応して予測利潤率を低下させていけばこの過剰生 産状態は継続する。つまりg<hが一般的となる。但しg>0であれば現象 的には成長率が鈍化するのであり,生産が絶対的に縮少するのではない。し かしg<hが連続すると実現利潤率,予測利潤率,蓄積率の低下が続き,や がて予測利潤率ゼロの時点で支出の増大は止み,以後絶対的縮少再生産過程 に入いる。個別資本は利潤率の低下が継続的であれば予測利潤率がゼロに達

-31-

(23)

金沢大学経済学部論築第3巻第1号1982.10

する以前に投資を停止させることもあろう。これが共通した投資行動であれ ば生産高の逆転は激烈なものとなる。

以上の様に(1)予測利潤率が高い程投資を増加させる資本家の投資行動(逆 は逆),(2)それを支える信用の増大,(3)貨幣賃金率上昇の遅れ=実質賃金率 の低下,という要因によって上方不均衡は継続していくが,それは(1)供給増 加率は前期の投資に,需要増加率は今期の投資に規定されること,(2)実質賃 金率には下限があり,したがって利潤率の上昇には限度があること,のため に需給関係は逆転し,経済は下方不均衡過程へと導かれていく。

しかし利潤率が低落しても予測利潤率を低下させない場合はどうなるか。

論理的にはこの場合再び実質賃金率低下・実現利潤率上昇とその逆転をくり 返し,労働力需給関係をより緊張させ,より大きな利潤率低下をくり返すこ とになり,投資意欲を喪失させることになる。つまり逆転が延期されるだけ なのである。

さてここで実質賃金率の上昇(または搾取率の下落)は労働分配率の上昇 であることに注意しよう。労働分配率8は

’=(魔豊川”は単位当り利潤Ⅱ]3)

したがって

のび汀、〃

[Ⅸ

(4.14)

利潤率は

『=壱-1=_ ̄-1= ap+lw

これに(4.14)を代入すると

r=-1

コ+丁竺テ

-1=万-〒‐Ii-1 1

ap+Rp

(4.15)

つまり'が上昇するとr'は低下する。結局実質賃金率が上昇すると労働分配 率は増大し(搾取率は低下),利潤率は低落するのである。次でみるように 個別資本・部門の利潤率の低落は必しも実質賃金率の上昇に拠らない。しか し結果として利潤率の下落は必ず労働分配率を上昇させる。我々はこの労働 分配率の上昇が実質賃金率の反転上昇によって必ず生じる,という原理的な 究極的根拠を確認しておけばよい。現実の恐`慌はこの労働分配率の上昇を媒 介にして発生するのであるが,この限界的実質賃金率の成立を条件とするの

-32-

(24)

ではない。その点を次に検討しよう。

5.現実の恐慌

これまでの展開は資本主義経済の上方不均衡的拡大とその逆転メカニズム の原理であった。我々は実質賃金率の下降,利潤率の上昇が投資の拡大を導 き需要超過状態をもたらし,実質賃金率が下方限界に達した後逆転反騰し,

利潤率低下,需要過少状態をもたらすとした。しかしこれは資本主義が無限 に上方不均衡的拡大を続けられないことの究極の根拠であり,現実の恐'流が この通りの過程で生じるわけではない。資本主義が継続的に失業者を拡大さ せていけばいずれかの時点で資本主義は失業した労働者によって没落させら れる。したがって資本主義は必ず雇用を維持し,政治的安定がもたらされる 範囲内に失業者をとどめなければならない。雇用は労働力の自然増分と失業 者に対してなされ,その拡大はやがて労働力の社会的供給限界に達する。し たがって資本主義が資本主義として維持される限り実質賃金率の反転は与え られた条件下では必至といえる。しかし資本蓄積はその限界に達する以前に も反転してしまう。先に述べたように実質賃金率はこの究極の限界をこえる 前に反騰しうるし,また実質賃金率の反騰によらない労働分配率の低下,利 潤率の低下,投資の鈍化とその波及という事態の生じる可能性も大きいので ある。究極的限界到達以前の逆転とはどういう場合であろうか。

我々はあとで指摘するように幾つかの重要な範嬬を度外視して議論を進め ているのであるが,現実の恐慌の発生過程について若干検討を加えることに より「究極の恐慌」と「現実の恐慌」の関連を考察しよう。

さて我々は実質賃金率の反騰による利潤率の低下から景気の逆転を導いた のであるが先述の通り利潤率の低落は原因はともかく労働分配率が上昇する か生産性が低落(搾取率一定)すれば生じる。生産性の変化を度外視して考 えれば労働分配率の上昇(搾取率の低下)に注目すれば良いが,この労働分 配率の増加はいかにして生じるか。

第1に全社会的に分配率増加は実質賃金率の増大で生じるのはいうまでも ない。第2に個別資本毎にみれば分配率増加は不変資本価額の(製品価格に 対する)相対的増加によってももたらされる。

まず第1の場合について考えてみよう。いうまでもなく実質賃金率Rは R=工

-33-

(25)

金沢大学経済学部鎗築第3巻第1号1982.10

で示されるのであるからそれは貨幣賃金率と物価水準に規定されるといえる。

貨幣賃金率が物価以上の速度で上昇すれば実質賃金率は増大する。貨幣賃金 率は労働力市場の市場条件,つまり労働力の需給関係と労資の階級的力関係 に規定される。たとえ需給関係が不変でも労働者階級の売手間競争制限=賃 上げ闘争があれば賃金率はそれがない場合より高く設定され得る。景気上昇 が続き,失業の恐怖から解放された労働者階級が階級的結束を質的にも量的 にも強化し,実質賃金率の反転上昇を実現する可能性はある。つまり失業者 の生活水準以下への実質賃金率の低下や,労働力の絶対的不足の状態が発生 する以前に労資の階級的力関係の変化によって実質賃金率が反転上昇しうる のである。

次に個別資本・部門で生ずる不変資本価格の相対的上昇による分配率上昇.

利潤率低下を考えよう。

t期の実現利潤率を

『!=万百砦可Tl (5.1)

とする。p2は製品価格,p1は生産手段価格。t+1期の利潤率は

M1+p2) (5.2)

、+{=ap,(,+P,)+,w(,+W)-1

p1,p2,Wは生産手段,製品価格,貨幣賃金の上昇率。この差が正か負か調

べればよい。

p2(1+p2)

』r`=rl+l-rl=p2 apK1+P,)+lw(1+W)apl+lw

aP1P2(1+M+lwP2(1+P2)-ap1p2(1+P,)-lwp2(1+W)

apKl+P】)+lw(1+W)

(5.3)

分母は正と考えて(p,>0,両>0)分子を取出して整理し,正負を考え

る。

aplp2(P2-P,)+wlp2(Ph-前)≧0 aP1(P2-Pl)≧Wl(1ルーP2)

鶚雪:三零!(5`)

これが利潤率の増減の判定式である。左辺は資本の有機的構成である。

-34-

(26)

有機的構成を入,P,/b2=y,P2/W=zとすると(5.5)は

ハミ,+言) (5.5.1)

または

Zミハ(,とy)+, (5.5.2)

と書きかえられる。(5.5)に対応し

デミ0,8≧0(5.6)

となる。だから利潤率を低下させないためには(5.5)より貨幣賃金の上

昇率は

W<A(P2-Pl)+bz(5.7)

の範囲にとどめられねばならない。しかし労働力の需給状況と力関係はそれ を許すかどうか不確定である。

先に用いた我々のモデルでは財の価格は平均価格として-つだけしか与え られていないが現実に価格変動は一様でなく,相対価格はたえず変化する。

たとえば原材料として用いられる一次産品は土地面菰や土地生産性という自 然的制約と土地所有という社会的制約に規制され,加工工業製品の様な供給 弾力性をもたない。この分野への参入・供給開始は容易でなく,ストックの 減少に対応する価格上昇が一般に観察される。普遍的な原材料の相対価格の 上昇が他部門の分配率の上昇・利潤率の低下をもたらす。この分野への参入 により利潤率が平均化すれば加工品部門の利潤率低落は回避されるが,資本 移動による利潤分配は円滑ではなく,製造業部門の利潤率低下,原材料部門の 利潤率上昇が生じうる。製造業部門の蓄積鈍化・全体への波及という,先の 実質賃金率の増大・蓄積鈍化という一斉的逆転とは異なる過程が生じうる。

製造業部門の投資鈍化を相殺する投資が一次産品部門で行なわれれば逆転は 社会的には回避しうるが,既にストックの不足まで招く状態が生じていると き腱鉱産物生産部門の投資急増は期待できない。とくに鉱産物生産のための 投資は懐妊期間が長く(探鉱),景気循環とは相対的に独立して進められざ るを得ない。このケースは実質賃金率そのものが上昇したのではなく,実質 賃金率が利潤率低下を相殺するほど低下しない場合であり,前の場合と区別

される。

以上の様に労働分配率の上昇に利潤率の低下,投資鈍化,需要成長率の低

-35-

(27)

金沢大学経済学部論集第3巻第1号1982.10

下,需給成長率の逆転,これが現実の恐慌の一般的過程である。しかし注意 しておかなければならないのはそれらは可能性あるいは蓋然性として与えられ るのであり,必ずそれらの要因によって分配率が上昇し,景気の逆転が生じ るとはいえないことである。けれど前章でみたように労働力商品の供給特性 がある限り景気の無限上昇が阻止されるという資本主義のメカニズムの存在 は蓋然性の高い要因がたとえ生じなくとも恐慌・景気の逆転を必然化させる のである。したがって資本主義は景気の上昇と逆転・下降を究極的にもたら す要因と,それ以外に恐慌を現実化させる諸要因を内在させているといえる のである。

6.残された論点一おわりに

我々の分析はしかしある抽象的モデルをもとに展開したのであり,資本主 義恐慌の構造の解明にはなお多くの不充分さ残している。とりわけとりあげ なければならないのは第1に実質賃金率の低下を回避する生産性上昇である。

技術の革新は一方で生産手段の社会的磨損を急がせ,改良更新投資したがって 新投資を促す。他方では生産力と生産性を増大させる。その結果生産と消費 の増加率と実質賃金率を変化させる。資本主義は長期的には搾取率を増加さ せながらも実質賃金率を上昇きせ体制的安定性を維持してきた。近代経済学派 成長理論が技術革新をどう理論体系の内的因子として取り込むか苦慮してい るが,我々もこれをどのように体系に取り込むか未解決のままである。技術 革新は利潤率を増大させるものでなければ現実化せず,また生産体系の一大 革新ブームを呼ぶような革新は常にあったわけではない。そのような経験的 事実の総括が理論化にあたり必要になろう。

また我々は部門分割をしなかったために部門的連関の問題を欠落させた。

これは部門連関が恐慌の決定的問題ではないという我々の認識に拠るもので あるが部門連関が恐慌と無関係というわけではない。部門連関と我々の実質 賃金率の運動の相関如何及び具体的な恐慌発生過程の解明のためには部門分 割モデルに基く分析が必要である。たとえば二部門モデルにおいて全般的好 況がいえるのは生産財部門,消費財部門共に利潤率が上昇している場合であ る。利潤率増大に対応し薔薇率が増大すれば資本家の個人消費の比重が下が り生産財需要が増大するため相対的に生産財部門の利潤率が消費財部門のそ れより高くなり,相対価格(生産財価格対消費財価格)も上昇する。この場 合実質賃金率の反騰が生じればまず消費財部門の利潤率が低下し,投資拡大

-36-

(28)

が鈍化する。そこで消費財部門からの生産財需要が低下し,逆転が波及して いく。生産財需要がこの時増大する内的必然性はないから生産財価格上昇率 が貨幣賃金率の上昇率を越えることもない(輸出とか政府需要の作用はここ では考慮されない)。

さらに我々は固定資本の存在を拾象した。我々はそれが恐慌の構造の解明 にとって不可欠とは考えなかったからである。しかし固定資本には懐妊期間 の問題と価値流通・回転の特殊性の問題があり,それが需要・供給の運動を 複雑にする。とくに上記の二問題が恐慌のメカニズム解明にとって決定的重 要性を持つと主張する人がいることからもこの問題を論じる必要があろう。

最後に今後取上げたいと思うのは独占の問題である。移行期の恐慌と独占 形成の関連・独占体制下の投資行動,組織された労働者階級の対抗運動の作 用,独占段階の産業構造と恐慌の形態の関連,国家の財政・金融政策の作用 と反作用,これらの問題を取り上げることにより具体的な恐`慌の理論的研究

に立入って行きたい。

以上を今後の課題として設定するが本稿を補充するものとして「逆転」に ついて一定の抽象的次元で論じている諸賢の学説を取上げ,検討する作業を

次に行ないたい。

〔参考文献〕

〔1〕宇野弘蔵,『経済原論』,岩波全書,1964年.

〔2〕oelssner,F,,,DieWirtschaftsKrisen“,ErsterBand;DieKrisenim vormonopolistischenKapitalismus,DietzVerlag,Berlin,1953.邦訳r経 済恐慌小千葉秀雄訳,大月書店,1955年。

〔3〕Marx,K,”neoriemijberdenMehrwert“,Werke,Band26,Zweiter Teil,1967.邦訳「剰余価値学説史』Ⅱ,マルクス・エンゲルス全集26巻11,大 月書店,1970。

〔4〕二瓶敏「再生産論と恐'慌」,『マルクス経済学体系」所収,有斐閣,1966年。

〔5〕富塚良三『恐慌論研究」,未来社,1975年。

〔6〕滝田和夫,「景気循環における不均衡累穣と均衡化」,『経済経営論集』23巻1 号,桃山学院大学,1981年。

〔7〕由比敏範,「恥生産と消費の矛循`を基軸とする恐慌論について」,再生産論研究

会報告,1981年.

-37-

参照

関連したドキュメント

 27年7月置ら9月にかけて,一つには「国際金融協力」の要請に応えるた

他 の論文 も含めて,ハ イエ クの観察の焦点 は アメ リカの銀行制度 と,それ に伴 う貨幣量 コン トロールの問題点 の指摘 にあ った。 この当時の ハ イエ クは

それを賃金率増大(労働分配率上昇) に因る費用上

はそれ自体,不正確な表現であるが,ただ,マルクスはこ,の文章のすぐ前で「―循環の終点fin d'un

寧波銭荘会館の碑記によれば、 咸豊末年、 雲南からの銅輸送路が遮られ、 東南は銭荒に悩んだ が、 寧波が最も甚だしかった。

権力バブルの再生産メカニズム57

本家 の意向如何に

含 まれる恐慌の抽象的可能性の第二形態との説明であ るが,この恐慌の抽 象 的可能性がい かにして現実性となるかをあ きらかにす