医 共 様 式 1 学 位 請 求 論 文 の 内 容 の 要 旨
論 文 提 出 者 氏 名 病 態 制 御 科 学 領 域 病 態 病 理 学 教 育 研 究 分 野 氏 名 羽 賀 理 恵
( 論 文 題 目 )
Clinical utility of skin biopsy in differentiating between Parkinson’s Disease and multiple system atrophy.
(パ ー キ ン ソ ン 病 と 多 系 統 萎 縮 症 の 鑑 別 に お け る 皮 膚 生 検 の 有 用 性)
は じ め に
パ ー キ ン ソ ン 病(
PD)と 多 系 統 萎 縮 症(MSA)の 鑑 別 診 断 は 臨 床 症 状 、画 像 診 断 、 L-dopaへ の 反 応 性 に 基 づ い て 行 わ れ る が 、 病 初 期 で は 両 者 の 鑑 別 が し ば し ば 困 難 で あ る た め 、 感 度 の 高 い 鑑 別 診 断 法 が 求 め ら れ て い る 。
PD患 者 の 剖 検 皮 膚 に お い て 、 免 疫 染色 で そ の
70% に α シ ヌ ク レ イ ン の 凝 集 が 見 出 さ れ( 特 異 度100% )、皮 膚 で の α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 の 検 出 が
PD診 断 に 有 用 で あ る 可 能 性 が 示 さ れ て い る 。 し か し 私 達 が 以前 行 っ た
PD患 者 の 生 検 皮 膚 を 用 い た 検 討 で は 、 α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 はPD患 者 の10%に し か 検 出 さ れ ず 、 通 常 の 生 検 皮 膚 の 免 疫 染 色 で は
PDの 病 理 診 断 が 困 難 で あ る こ とが わ か っ て い た 。一 方 、同 じ α シ ヌ ク レ イ ン が 蓄 積 す る 疾 患 で あ る
MSAの 皮 膚 で 、αシ ヌ ク レ イ ン の 検 討 は な さ れ て い な い 。 し か し 、 よ り 高 感 度 な α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 の 検 出 法 を 用 い れ ば 、 生 検 皮 膚 に お い て も α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 を よ り 高 頻 度 に 検 出 で き る 可 能 性 が あ る 。さ ら に は 高 感 度 な 検 出 法 な ら ば
PDとMSAの 鑑 別 に 有 用 で あ る 可能 性 が 高 い 。
PD患 者 の 皮 膚 で は 末 梢 神 経 密 度 が 減 少 す る が 、MSA皮 膚 で は 減 少 し な い と の 報 告 が
あ り 、最 近 標 準 化 さ れ た 表 皮 内 神 経 線 維 密 度 (
IENFD)の 定 量 法 を 用 い れ ば 、生 検 皮膚 を 用 い て
PDとMSAを 鑑 別 で き る 可 能 性 を 示 唆 す る 。し か し な が ら 、L-dopa治 療 が
PDに お け る
IENFDを 減 少 さ せ る と す る 報 告 が あ り 、L-dopa治 療 の 有 無 の
IENFDへ の 関 与を 考 慮 す る 必 要 が 出 て き た 。
以 上 か ら 、生 検 皮 膚 に お け る α シ ヌ ク レ イ ン 蓄 積 の よ り 高 感 度 の 検 出 と
IENFDの 検討 は
PDとMSAの 鑑 別 に 有 用 で あ る 可 能 性 が あ る 。目 的
1)生 検 皮 膚 の 神 経 線 維 上 の リ ン 酸 化 α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 体 を 、二 重 免 疫 蛍 光 染 色 と
共 焦 点 顕 微 鏡 を 用 い て 検 討 し 、
PD患 者 とMSA患 者 で の 検 出 率 の 違 い を 明 ら か に す る 。
2)IENFDのPD患 者 とMSA患 者 で の 差 違 を 明 ら か に す る 。 さ ら にPD患 者 に お け るL-dopa治 療 の 有 無 と
IENFDの 関 係 に つ い て も 明 ら か に す る 。方 法
United Kingdom PD Society Brain Bank Criteriaに よ り 診 断 し たPD患 者38例 ( 男 性 15例 、 女 性23例 、 平 均 年 齢64.7歳 ) 、 う ち26例 でL-dopa
投 与 歴 が あ り 、
12例 は 未 投与 、と
Second consensus statement on the diagnosis of MSAに よ り 診 断 し た
Probable MSA患 者13例( 男 性7例 、女 性6例 、平 均 年 齢
62.0歳 )、を 対 象 と し た 。ま た 、HbA1C 6.1%以 上 の 患 者 、 葉 酸
,ビ タ ミ ン
B1、
B1 2欠 乏 症 の 患 者 、 脛 骨 神 経 あ る い は 腓 腹 神 経 の 神
経 伝 導 検 査 で 異 常 を 有 す る 患 者 、 臨 床 上 明 ら か な 温 痛 覚 ・ 振 動 覚 障 害 が あ る 患 者 は
除 外 し た 。PD38例 と
MSA13例 の 下 腿 外 踝 上 方10cmあ る い は 胸 部 正 中 か ら 採 取 し た 皮 膚を ザ ン ボ ニ 液 で 固 定 し 、
20%シ ョ 糖 含 有PBSに 浸 透 、 凍 結 切 片 を 作 成 し た 。 α シ ヌ クレ イ ン 陽 性 構 成 物 の 有 無 に つ い て は 、抗 リ ン 酸 化 α シ ヌ ク レ イ ン 抗 体 と 抗
PGP-9.5抗体 を 用 い て 蛍 光 二 重 免 疫 染 色 を 行 い , 神 経 線 維 上 の α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 の 有 無 を 共 焦 点 顕 微 鏡 を 用 い 検 討 し た 。
IENFDの 定 量 は 抗PGP-9.5抗 体 と 抗IV 型 コ ラ ー ゲ ン 抗 体を 用 い 、 同 様 に 共 焦 点 顕 微 鏡 を 用 い 皮 膚 基 底 膜 を 貫 通 す る 神 経 線 維 数 を 計 測 す る こ と に よ っ て 定 量 し た 。
結 果
α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 体 の 検 出:神 経 線 維 上 の α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 は
PD患 者38例 中2例
(
5.3%)で 陽 性 だ っ た 。陽 性 と な っ た1人 の 患 者 は
71歳 女 性 、病 期4年 、Hoen-Yahr Stageは
3、 凝 集 体 は 下 肢 か ら の 皮 膚 に 認 め ら れ た 。 も う1人 の 患 者 は
70歳 男 性 、 病 期1年 、
Hoen-Yahr Stage2、 α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 は 前 胸 部 か ら の 生 検 皮 膚 に 認 め ら れ た 。 生検 皮 膚 に α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 体 が 認 め ら れ な か っ た
PD患 者 の 平 均 病 期 は4.8±3.2年で あ り 、病 期 と α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 体 陽 性 の 関 連 は 認 め ら れ な か っ た 。MSA患 者 で は 全 例 α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 体 は 陰 性 だ っ た 。
IENFD: 全PD患 者 の 平 均 は16.6±0.9/mm(mean±SEM)で あ り ,MSA患 者 の 平 均 は23.7±
8.7/mmで 、PD患 者 でMSA患 者 に 比 べ 有 意 に 低 か っ た 。ま たPD患 者 の う ちL-dopa
投 与 群 の 平 均 は
17.3±1.2/mm、非 投 与 群 の 平 均 は15.2±1.2/mmと 有 意 差 は な く 、L-dopa治 療 の
IENFDへ の 影 響 は 明 ら か で な か っ た 。考 察
今 回 得 ら れ た 結 果 と し て 以 下 に ま と め る 。
1) 神 経 線 維 上 の α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 はPD患 者 の5.6%で 認 め た
2)MSA患 者 で は 生 検 皮 膚 で 神 経 線 維 上 に α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 は 認 め な か っ た 3)IENFDはPD患 者 でMSA患 者 と 比 較 し 低 下 し て い た
4)IENFDはL-dopa治 療 の 有 無 で 差 が な か っ た
今 回 の 検 討 で 生 検 皮 膚 を 用 い た α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 の 検 出 率 が
PD患 者 で 低 か っ た 理由 と し て 、 剖 検 例 に 比 べ 皮 膚 深 部 の 神 経 叢 ま で 観 察 が 困 難 で あ っ た こ と 、 さ ら に 重 要 な 点 と し て 生 検 部 位 が あ る 。
PD患 者 の 背 部 か ら の 生 検 皮 膚 で は 通 常 の 免 疫 染 色 でα シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 の 検 出 率 が
51.6% で あ っ た 。 一 般 に 末 梢 神 経 障 害 は 遠 位 と な るほ ど 障 害 が 強 く な る 。 今 回 私 た ち は 神 経 密 度 定 量 の た め 標 準 と な っ て い る 下 腿 の 皮 膚 を 主 に 検 討 対 象 と し た が 、 末 梢 神 経 系 と し て 遠 位 部 で あ っ た た め 神 経 脱 落 が よ り 進 行 し て お り 、 検 出 率 が 低 く な っ た 可 能 性 が あ る 。 一 方 で 、
IENFDがPDに 比 べMSAで保 た れ て い た こ と は 、MSAで は 一 般 に 末 梢 神 経 系 は 障 害 さ れ な い と さ れ て き た 従 来 の 報 告 と 合 致 す る 。ま た
L-dopa未 使 用 例 で も 長 期 治 療 例 と 同 等 のIENFD低 下 が あ り 、病初 期 か ら の 鑑 別 診 断 に 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。
結 語
PD患 者 で は 皮 膚 内 に α シ ヌ ク レ イ ン 凝 集 体 を 認 め る が そ の 頻 度 は 低 く 、 末 梢 神 経 系