親子関係と子どもの自己活動(2)
子どもの遊びに対する子どもと親の意識
* ** ** **、 **
中原弘之・朝倉成子・ 鈴木彩子・長谷川純子・平山由美子
R崎八重子幣神永典良♂,高橋利崎ぴ石川和貝f㍉ll上鉄ギ*
酒寄洋≠,信田貴≠ 塚田貴更畔結城恭子**
(1980年10月20日受理)
The Effects of the Parent−Child Relationships on the Child s Self−Activity (2):The Consciousness of a Child and a Parent
toward the Child s Play
Hiroyuki NAKAHARノ・Shigeko AsAKuR産*・Saiko Suzu蓋『Junko HAsEGAw弐*
Yumiko H IRAYA詫渉Yaeko YAMAzA盗*・Norio KAMINA(i駅靴Toshiaki TAKAHAs醤 Kazunori I sHIKAw去*・Tetsuo KAwAKA孟*.Yoko SAKAYo苗*・Takako S HID菰*
.Takashl TsuKAD宜*・Kyoko Yu煮*
(Received Octover 20,1980)
Abstract
This paper aims to show that the conception of play is determined by two criteria of productivity and璽satisfactoriness . It is, furthermore,
indicated that the permissive tendency of a mother toward her child s be一 havior and her notion toward his play are closely tied together. The subjects were 741 primary school children, ranging from the 3rd to the 6th grade, and 843 mothers. This study is part of continuous re一 search into the correlations between the parents rearing behavior and the child s selfactivity.
1 問題の所在
1)2)3)
@ において,幼児から小学生までの子どもたちの日常行動について,われわれは,その先行研究
どのような行動が 遊び として判断されやすい行動であるかについて分析を試みてきた。その過程 において,子どもと母親との回答に驚くべき類似性が見出され,母親の遊びについての考え方で,子
*茨城大学教育学部教育心理学研究室(Department of Educational Psychology, Faculty of Education,Ibaraki University)
** 茨城大学教育学部 遊び ゼミナール( PIay Seminar,Faculty of Education, Ibaraki University)
9 一
どもの概念形成に少なからぬ影響を及ぼしていることが容易に推測された。とくに遊びの
「概念を形成している基準が,親子ともに単一基準ではない,という類似性について興味を
抱いた。
● ● ● ● ●
たとえば「いやいや働く」という場合,働くという言葉から仕事や労働の意識が生じるが,いやい
●や行えば不能率となり,よい成果を期待することはできそうにもない。このようなとき「遊び半分」
● ●
という言葉が使われることがあるように,「いやいや働く」という状態は,なかば遊びであると見る ことができる。
● o ● ●
では「いやいや休息する」という場合はどうであろうか。休息するのであるから仕事の合間であり,
o ● ● ● ● ●
遊びの時間である。しかしいやいや行うことは休息者の自発的行動ではなく,義務的に強制されてい
● ■
るので遊び意識は消失してしまう。したがって「いやいや休息する」という状態は,なかば仕事であ るといえよう。
・ ● ● ● ●
一方「よろこんで働く」という場合,よろこんで行うのであるから仕事の能率は促進されうるであ ろう。したがって遊び半分とは違って大いに真面目な態度が予想される。そこで「よろこんで働く」
● ● ● ● o
という状態は,まさに仕事や労働の状態である,と受けとめることができる。しかしよろこんでとい 4)
、状態は,R.カイヨワが遊びの定義で述べている「自由な活動」の状態である。したがって本人が自
● ●
発的に求めて快感情を得る状態は,まさに遊びであるともいえるわけで,「よろこんで働く」という
● ●
状態は,なかば遊びであることにもなろう。
このように従来から 遊び は,第1に 学び や 仕事 に対置され,無駄とか怠惰とかの非生 産的な行動として位置づけられ,せめてその遊びが 学び や 仕事 にとって多少とも準備的であ るとみなされるならば,好ましい遊びであるというように評価される側面を有している。このような 側面は生産性の基準による見方であり,生産一非生産の尺度によって 遊び かどうかが判断され 5)
トいることになる。第2として,遊びはJ.アソリナが指摘するように「遊ぶとは,すなわち,何かを することだ。人がおこなうものごとは,ふたつの斜面を見せる。ひとつは客観的あるいは外部的な面 であり,もうひとつは主観的あるいは内部的な面だ、」「遊ぶ意識こそ,遊ぶことの何よりの第1の構成要
● ■ ● ■
素ではないのか。」という問題がある。さきの例にもあるように,働くという客観的行動のほかによう
● o ●
こんでという主観的意識が伴う場合,その行為者には仕事意識よりも遊び意識が高まっているかもし
● o ■ ● ■ ●
れない。反対に休息という客観的には遊びの行動であるにもかかわらず,いやいやというお役目的な 仕事意識が働いていることさえありうるのである。このような遊びに対する考え方が,満足性の基準 による見方であり,満足一不満足の尺度によっても遊びであるかどうかが判断されているといえよ
う。
さて,ここでわれわれが 遊び をどのように考えているかについて述べておくことにしよう。遊 びの概念については,従勅ら多くの理謝ミある.われわれもJ.ホィジンガ?E.フ,ンク?R
9) 10) 8)カイヨワ,J.アンリオらの20世紀の理論をはじめ,18世紀のJ. J.ルソーの遊びに対する考え方に
ついても検討を加えながら,この課題のあまりの深遠さにしばしば自信を失いながらも,幾度か討論 を重ねてきた。今ここにそれらのすべてを開陳するゆとりがないので,幾つかの論拠のみを列挙して,
現在われわれが到達している遊びの定義を紹介しておきたいと思う。
ホイジンガは「遊戯とはあるはっきり定められた時間,空間の範囲内で行なわれる自発的な行為,
もしくは活動である。それは自発的に受け入れた規則に従っている。その規則は一旦受け入れられた 以上は絶対的拘束力を持っている。遊戯の目的は行為そのものの中にある。それは,緊張と歓びの感 情を伴い,またこれはく日常生活〉とはく別のものだ〉という意識に裏づけられている。」 と述べて
11)いる。しかし「日常生活とは別のもの」という規定以外は,いずれも遊び以外の日常行動にも該当す る条件であり,ことさら遊びの定義にそれらを取り上げる必要はないのではないか。またカイヨワは
「自由な活動,分離した活動,不確定の活動,非生産的な活動,ルールのある活動,虚構的活動」で あると遊びを定義しているが,このうち「非生産的な活動」「ルールのある活動」の2点には疑義が ある。遊びといえども結果的に思いもかけない所産をもたらすことがありうるし,ルールは遊び特有 の条件ではないからである.われわれはフ,ンクの「遊戯は生存の根本現象」であるとレ・う見轟,
アンリオの「自分髄んでいるということを知らずに,い。たいどうして遊ぶことができよう」14 い
う行為者の意識水準を重視する主張,さらにはルソーの「人々よ人間らしくあれ。これがあなたたち の第1の義務なのだ。どんな階級のものに対しても,どんな年代のものに対しても,人間に縁のある 15)
烽フなら誰に対してでも人間らしくあれ。」 と述べながら子ども時代を自然に直結させ,大人社会へ
の準備期としての考え方を否定する人間観に同意して,r遊びとは,解放感を伴い,行動それ自体に 目的意識を有する自己活動である』という定義を確認した。
しかし,このような定義は一般に考えられているような遊びの定義と比べて,かなり偏りを感じる ことであろう。それは満足性の基準のみで,生産性の基準が欠けているためである。おそらく先に述 べたように,一般的には生産性と満足性の少なくとも2つ,あるいはそれ以上の基準が遊びの概念を 方向づけたり決定したりするのではないかと思われる。この点について検討を加えるべく本研究が着 手されたのみである。
2 研 究 の 目 的
遊びの概念は,少なくとも生産性と満足性の2つの基準によって決定されており,一般には未来主 義的な立場から遊びを考える傾向が強く見られるのではないであろうか。また,子どもの行動に対し て親がそれを容認または禁止する場合の判断基準にも,生産性と満足性の2つの基準が用いられてい るのではないであろうか。調査を通してこれらの諸点を明らかにすることが,本研究の目的である。
3 研 究 の 方 法 3−1 調査の内容
調査の内容は①遊びについての子どもの概念,②遊びについての母親の概念,③子どもの行動に対 する母親の容認 の3つを質問紙法によって調査する。
①の子どもを対象とする内容は,先行研究によって 遊び 回答率の高かった上位10項目と,逆に 遊び 回答率の低かった下位10項目を選定し,一部表現についての修正を加えて20項目が準備され た。これらの20項目は,いずれも具体的な子どもの日常行動が客観的に記述されているものであり,
巻末の付表1にまとめられている。しかし,本研究では遊びの概念に主観的な次元での満足性の基準 が関係する点を問題としているので,この問題を解決するために満足度の程度を操作する修飾語を,
● ● ● ● ● o ● ●
さきの20項目に付加することにした。この修飾語は満足をあらわすものとして,楽しく,夢中になっ
● ● ■ ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
て,熱心に,元気よく,じっと の5つ,反対に不満足をあらわすものとして,しぶしぶ,しかたな
● ● ● ● ● ● ● ● o ● ● ● ● ■ ● ● ● ● o ● ● ●
しに,ぼんやりと,あくびをしながら,ただなんとなく の5つ,合計10語を準備し,それぞれ2回 ずつ使用することによって20項目すべてに満足と不満足を示す修飾語が付加された。満足をあらわす 修飾語(SA),不満足をあらわす修飾語(UnsA)の付加は,文章表現上自然さが保たれることを し 考慮し,巻末の付表2のような項目が作成された。
②の母親を対象とする調査用紙も,①の場合と同様にして作成され,修飾語のないものと修飾語の あるものが準備された。ただし文章表現はおとな向にしてある。なお,母親用の調査用紙には付表3 のような「依頼文」と「遊びについての態度尺度」が添えられているが,今回の報告には態度尺度に ついての分析は含まれていない。
③の容認についての調査用紙も,20の行動項目は①,②と同じように修飾語のあるものとないもの とに分かれている。ただ回答の仕方が,「やらせたい」 「やらせたくない」の2件法で反応を求めて いる点に違いがある。これらのうち修飾語のあるものが付表4に示されている。
3−2 調査の対象
幸いなことに茨城県日立市立水木小学校の全面的協力が得られたので,子どもについては第3学年 以上の741名,母親については全学年児童の母親843名を対象として調査が行われた。なお,兄弟姉 妹が2名以上在学している場合には,高学年の児童を対象児とした。
調査対象と調査内容との内訳は表3−1のように配当した。このために,それぞれの調査用紙に対 する回答者は,いずれも異なった児童 表3−1 調査対象の学級と調査の内容
であり,母親である。
親 子 ど も 3−3 調査の手続と期日
学 組 1 2 3 4 5 1 2 3 4
1
A
C B BD
らう担任への説明のために調査校を訪 2A A
C BD
れたのは1979年12月18日であった。3
A
C BD A A
B B 子どもに対しては学級ごとに担任の指 4A
C BD D A A
B B5
A
C BD A A
B B 校を通して家庭に配布し,回答しても 6A
C C BD A A A
B(注) A 修飾語の無い 遊びの概念 完了した。
B 修飾語の有る 遊びの概念 C 修飾語の無い 遊びの容認 D 修飾語の有る 遊びの容認
4 結果 と 考 察 4−1 遊び の概念について
4−1−1 遊び の概念の広さ
小学生までの子どもたちが,日常しばしば行っていると思われる20の行動項目について,「遊びで ある」と判断できる項目に○印(遊び回答)を記入してもらったので,各回答者ごとに遊び回答を合 計し,0〜20点の範囲に分布する合計得点(遊び概念の広さの指標として位置づけ,以下PC得点
と略記する)を算出した。
母親の回答,子どもの回答別にPC得点の分布状況を示すと表4−1のようになる。先行研究によ って,遊び応答の多かった項目と少なかった項目とを10項目ずっ選定した20項目であるために,
PC得点の平均値は,ほぼ10になるであろうことが予想された。表4−1から予想通りの結果である ことが知られよう。ただし子どもの回答については,t検定の結果から明らかなように男女間及び修
飾語の有無間ともに有意差は認められない。また母親の回答のうち,修飾語の無い場合には,男児の 「
表4−l PC得点の分布
調査対象 修飾語 性別 人数 平均 SD 分布の幅 t検定 男 196 9.51 2.26 4−16
無 女 168 9.78 2.38 2−16
全 364 9.64 2.32 2−16 **
子ども
男 161 9.08 2.84 2−17 有 女 146 9.10 2.68 3−17
全 307 9.09 2.76 2−17 **
無 婁 1:、1::罷:羅::1:了
全 138 10.12 3.00 3−20 母 親@ 有 髪 :::::警1:ll::};コ*
全 124 10.55 2.04 5−17
(注)子ども:小学校第3〜第6学年 母親:小学校第1〜第6学年までの母親
*5%水準 **10%水準
母親より女児の母親の方が,そして修飾語の有る場合には,女児の母親より男児の母親の方が,いず れも平均値において有意に高い値を示した。また修飾語の有無にかかわらず,子どもよりも母親の平 均値の方が高い値を示すことを見出した。
4−1−2 遊び 回答率
i)子どもの場合 まず男児196名,女児168名の回答に基づいて,20の行動項目ごとに 遊び 回答率を求め,高率の順に行動項目を配列しなおすと図4−1,図4−2のようになる。
さて図4−1は修飾語を伴わない行動項目についての 遊び 回答率である。先行研究で50%以上 の 遊び 回答率を示した10項目の行動項目(遊びと判断されやすい項目)には,その項目番号に○
印がつけられているが,このうち9項目は前回と同様に高い 遊び 回答率を得ている。「4 絵を かく」は,前回の「写生をする」「絵を習いに行く」がいずれも学習的な表現でありすぎ,日常的な 行動のイメージから離れているという反省から修正を加えたものである。このため 遊び 回答率が 高まり,20項目の中間にまで浮上した。「たこあげをする」「おにごっこをする」 「ブラソコにのる」
「トランプをする」「みんなでゲームをする」の5つの行動項目は,90%以上の高率で 遊び とみ なされており,「自転車にのる」 「ボートにのる」 「まんが本を見る」 「テレビのまんがを見る」な どの行動項目は, 遊び とみる回答率が急激に下降を示しはじめるけれども,なお50%以上の回答 率を保っている。反対に「ピアノの練習をする」「花のせわをする」「家の人と音楽会へ行く」「水 泳をならいに行く」 「動物や花の図かんをみる」などの行動項目は, 遊び としての回答率は10%
以下であり,これらの行動項目は学校での教科との関係が濃厚であったり,その行動それ自体が目的 であるというよりは,むしろ手段としての認識が強いという特色を有している。その点で「みんなで 歌をうたう」「家でこん虫をかう」「みんなで七夕のかざりをつくる」 「水族館で魚をみる」 「おし
やべりをする」 「絵をかく」などの20〜40%台の回答率を示す項目は,教科との関係の有無よりも,
その行動に対して子どもが熱中しやすいという意味で,その行動自体に目的意識を感じさせる行動項
%
50 100
⑩たこあげをする
⑪おにごっこをする
⑳ブランコにのる
⑮トランプをする
①みんなでゲームをする
⑭自転車にのる
⑧ボートにのる
③まんが本を見る
⑤テレビのまんがを見る 4 絵をかく
⑥おしゃべりをする 13水族館で魚をみる
7 みんなで七夕のかざりをつくる 18家でこん虫をかう
9 みんなで歌をうたう
19動物や花の図かんをみる 巨コ
16水泳をな艦行く 冒 E≡ヨ魏ll薯
2家の人と音楽会一行く 冒
12花のせわをする 』
・7ピア・の練習をする P
○印は先行研究で 遊び 回答の高い項目
図4−1 修飾語のない行動項目別 遊び 回答率(子ども)
ヒ
目であるといえる。
すでに述べたように,PC得点の平均値については男女間に有意差は見出せなかったが,個々の行 動項目をみると男児と女児の回答の間に差の大きいものがいくつかある。男児の方が高率として目に
とまる行動項目は「ボードにのる」「家でこん虫をかう」「動物や花の図かんをみる」「水泳をなら いに行く」などであり,女児の方が高率である行動項目は「まんが本を見る」 「テレビのまんがを見 る」「絵をかく」「みんなで七夕のかざりをつくる」「みんなで歌をうたう」などである。これらは いずれも男児と女児が,それぞれ性を異にしながら熱中している行動であることに気づく。
以上は修飾語を伴わない行動項目について,子どもの 遊び の概念の一端をみてきたのであるが ここに,すでに 遊び に対して複数の判断基準が顔をみせている。一つは生産性の基準であり,将 来その行動がどれだけ役に立つか,といった視点から非生産的行動を 遊び として認識する傾向が みられることである。今一つは満足性の基準である。生産性が外的基準であるのに対して,この満足 性は内的基準ともいえる。「家でこん虫をかう」 「みんなで歌をうたう」などの教科を連想しやすい 行動に対してさえ,男児なりにあるいは女児なりに,満足感や充実感を体験することによって,そこ に 遊び の認識がわずかではあるが漂っている。
次に図4−2をみることにしよう。行動項目の配列順序は図4−1と同じであるが,満足性の程度 を操作する修飾語を伴った項目に対する子どもの 遊び 回答率である。図4−1と比べると各行動 項目の回答率に大きな変化が生じている。かりに子どもの 遊び の概念が生産性の基準だけで形成 されているのであれば,図4−2は図4−1と大きな違いは生じない筈である。しかるに修飾語を伴 うことによって,遊びが遊びでなくなったり,遊びでないものが遊びになったりする。図4−2の○
印を付した行動項目は満足を表わす修飾語(SA)を伴ったものであり,他は不満足を表わす修飾語
(UnsA)を伴ったものである。PC得点の平均値については男女間に有意差は見出されていないが,
行動項目ごとにみると図4−1と同様に性差の認められる行動項目が少なくない。
図4−1と図4−2は同じ調査対象者による資料ではないことをも考慮して読み取る必要があるが,
全体的な特色として指摘できることは,SAを伴った行動項目群において図4−2の上位半分の項目 の 遊び 回答率がそれほど変動せず,下位半分の項目の回答率が増加を示していること。これに対 してUns Aを伴った行動項目群については,上位半分の項目の 遊び 回答率は減少し,下位半分 の項目のそれは,むしろ増加を示していることである。
このことを表にまとめてみると表4−2のようになる。かりに生産性という基準だけで遊びの概念 が形成されているのであれば,すべて 表4−2 修飾語が加えられたことによる変化 のセルの矢印の方向はセルaのように
なる筈である。したがって子どもの遊 満足性 満 足 不満足 びの概念形成において,満足性という 生産性 (S A) (Uns A)
@ 基準の存在を無視することは誤りであ
(
非生産
@ (無変化)
a↓藍 霧欝響;彦犠」「篠 一トにのる」などの非生産的な行動に
● ● ● ● ● ● ● ● ● o ●
生 産 b ヱ
@ 8
b
S 翌麗臨黙存嘉
され,遊びとしてのイメージが低下し たことを示すものであり,子どもにと
っての遊びは,やはり全力を発揮した自己活動の状態を意味すると考えられる。このことからセルb をみると,回答率の上昇が矛盾なく理解されうるのである。しかしセルb においても, 遊び 回答 率が上昇傾向を示しているところに注目する必要がある。ここでは「ピアノの練習をする」「水泳を
● o ■ ● ● ●
ならいに行く」 「動物や花の図かんをみる」といった生産性につながる行動に対して,あくびをしな
● ● ● ■ ● ● o ● ● ● o ●
がら,しかたなく,ぼんやりとというようなUns Aが付加され,未来主義的立場からすれば当然 遊 び 回答率は不変又は下降を示す筈であるが,得られた結果はこのように上昇を示している。この理 由として考えられることは,このようなUnsAの付加による非生産化への予想であり,遊びを「遊 び半分」とみるような,無駄なこと,怠けることといった価値基準で捉えているためではないかとい うことである。つまり子ども(学童)の遊びについての概念でさえ,満足性という基準と生産性とい う基準とが見事に独立して機能している様子がうかがえるのであり,これを「遊び概念の二重構造性」
と呼んでおくことにする。
ii)母親の場合 小学生を持つ母親の回答率を,修飾語の無い行動項目と有る行動項目とにっいて 図示したところ図4−3,図4−4が得られた。
まず図4−3から分析を試みよう。行動項目の配列順序は 遊び 回答率の高い順序であり,○印 は先行研究でも 遊び 回答率の高率であった項目である。PC得点の平均値では,女児の母親の方 が男児の母親より1%水準で有意に高かったが,図4−3からも特に図の下位半分の行動項目におい て顕著にみられる。上位半分の行動項目の場合は,逆に男児の母親の方が高率の 遊び 回答を行っ ている項目が目立つことも面白い特色である。
さて,上位10項目は,いずれも60%以上の 遊iび 回答率を示し,下位10項目との間に比較的明 瞭な段差を認めることができるが,特に男児の母親にこの傾向が強い。このことは男児の母親は女児 の母親よりも,子どもの行動に対する見方・考え方に未来主義的傾向が強いことを物語っているのか も知れない。また行動項目の配列順序が,子どものそれときわめて類似していることから,母子の遊 び概念を支えている基準の同質性を感じさせるものであるが,ここでは特に生産性の基準の方がより
ドミナソトに機能しているように思われる。
次に図4−4であるが,これは満足性の程度を操作するために修飾語が加えられている項目への回 答率である。口印の10項目にはSA,その他の10項目にはUns Aが付加されている。このような修 飾語の付加によって生じる変化の方向性は,さきに扱った子どもの場合と近似している。しかも,子 どもの場合に指摘した特色がより強められているのである。たとえば表4−2の4つのセルのうち,
セルa での下降が子どもの場合ほど激しくなく,セルb での上昇が子どもの場合より著しく大きい 点である。このことは,いずれの場合にも未来主義が先行して,子どもの行動を見るときに,それが 生産性につながりがあるかどうかによって遊びかどうかの判断を行う傾向が強いことを示唆するもの である。しかし図4−3と比べて,図4−4における回答率に変化が生じていること自体,満足性の 基準も少なからず関与していることがうかがわれ,母親の遊び概念も,生産性の基準と満足性の基準 とがその都度,判断の手がかりにされて,この場合においても「遊び概念の二重構造性」を認めうる といえよう。
%
50 100
10 ぼんやりとたこあげをする
⑪むちゅうにな・ておにごっこをする
⑳ブラソコに楽しくのる 15 しぶしぶトランプをする
①みんなで熱心にゲームをする
⑭元気よく自転車にのる 8 しかたなしにボートにのる 3 あくびをしながらまんが本をみる
⑤ テレビのまんがをじっとみる 噛
④ むちゅうになって絵をかく
6 ただなんとなくおしゃべりをする
⑬水族館でじっと魚をみる
⑦みんなで七夕のかざりを楽しくっくる
⑱ 家で昆虫を熱心に飼う
⑨ 元気よくみんなで歌をうたう
19動物や花の図かんをぼんやりとみる≡≡≡コ 16しかたなく水泳をならいに行く E≡≡コ
2家の人としぶ囎楽会へ行く 目 巨≡ヨ嬰鑑罐
12ただなんとなく花のせわをする 昌
17 あくびをしながらピアノの練習をする
○印は満足度を示す修飾語
図4−2 修飾語のある行動項目別 遊び 回答率(子ども)
%
0 50 100
⑳ブランコに乗る
⑪鬼ごっこをする
①みんなでゲームをする
⑩凧あげをする
⑮トランプをする
⑤テレビのまんがをみる
⑭自転車に乗る
⑧ボートに乗る
③まんが本をみる
⑥おしゃべりをする 9 みんなで歌をうたう 4 絵をかく
7 みんなで七夕の飾りをっくる
18家で昆虫を飼う 巨≡ヨ
13水族館で魚をみる Ei当 16水泳を習いに行く Ei≡ヨ
19動物や花の図鑑をみる 匡』・家の人と音楽会一行く Ei旨 巨≡ヨ翻器籠
12花の世話をする 旦ヨ
17ピァ・の練習をする 邑
○印は先行研究で 遊び 回答の高い項目
図4−3 修飾語のない行動項目別 遊び 回答率(母親)
%
0 50 100
團ブランコに楽しく乗る 回夢中になって鬼ごっこをする
【動みんなで熱心にゲームをする
⑩ぼんやりと凧あげをする
⑮しぶしぶトランプをする 囹テレビのまんがをじっとみる
回元気よく自転車に乗る
⑧しかたなしにボートに乗る
③あくびをしながらまんが本をみる
⑥ただなんとなくおしゃべりをする 匝]みんなで歌を元気よくうたう 巨]夢中になって絵をかく
匠]みんなで七夕の飾りを楽しくつくる
国家で昆虫を熱心に飼う 團水族館でじっと魚をみる
16 しかたなしに水泳を習いに行く
19動物や花の図鑑をぼんやりとみる
・家の人としぶしぶ音楽会一行くE≡看コ 巨ヨ婁鷲麗
12ただなんとなく花の世話をする 17 あくびをしながらピアノの練習をする
○印は先行研究で 遊び 回答の高い項目 口印は満足を示す修飾語のある項目
図4−4 修飾語のある行動項目別 遊び 回答率(母親)
4−2 遊び の容認について 4−2−1 容認度の広さ
これまで紹介してきた20項目の子どもの日常行動について,その生産性と満足性の2つの基準に よって遊びであるかどうかの判断が行われていることが指摘され,これを「遊び概念の二重構造性」
と呼ぶことにしたが,母親にとっては,子どもがその行動をそのまま続けることを容認するか,禁 止するか,いずれかの意志決定が伴う筈である。
そこで,20の行動項目それぞれについて「やらせたい」又は「やらせたくない」のいずれかの回答 をしてもらった。「やらせたい」という回答のあった項目の合計値を容認得点(P得点)として算出 し,その分布を求めた結果が表4−3である。全体の平均値から,20項目中,約11項目に対して
「やらせたい」
表4−3 P得点の分布 という容認回
調査対象修飾語産ど脇人数平均 SD分布の幅 答カミ寄せられ
ていることが 男 74 10.99 2.24 6〜18
知られよう。
母親 有 女 149 11.16 1.97 8〜15 このような容
全 223 11.07 2.10 6〜18 認回答のため に2つの基準 がどのように機能しているかを分析することが,ここでの作業内容である。
4−2−2 遊び概念と容認
20の行動項目について,図4−4と同じ124名の母親の回答に基づいて, 遊び 回答率の高い順 に項目を配列し,別の160名の母親が,これらの項目に対して回答した容認回答率を併記したものが 図4−5である。
図4−5において○印を付した行動項目は,先行研究で 遊び 回答率の高かった項目であり,そ れ以外は回答率の低かったものである。また口印の行動項目は,SAを伴う項目,それ以外はUnsA
を伴うものである。図によると容認率の高い行動項目は,いずれもSAを伴う項目であり, 遊び 回答率には無関係のように思われる。ただ例外として「テレビのまんがをじっとみる」という行動項 目からは高い容認率が得られなかったが,健康上の理由や非生産的な理由が原因であるのかも知れな い。一方Uns Aを伴う行動項目についても「ただなんとなくおしゃべりをする」 「動物や花の図鑑 をぼんやりとみる」「ただなんとなく花の世話をする」などの行動項目は,「ぼんやりと凧あげをす る」 「あくびをしながらまんが本をみる」 「しぶしぶトラソプをする」「しかたなしにボートに乗る」
「あくびをしながらピアノの練習をする」などの行動と比べて,それなりに生産性に結びつく内容で あり,これらは比較的容認率が高くなったものと思われる。
このように,子どもがその行動に対して十分に満足しながら自己発揮しているのならば,そのまま
「やらせたい」と考えるが,反対に不満足を感じながらやっているのならば,たとえその行動が生産 性に結びつくと思われたとしても「やらせたくない」という回答結果が得られていることから,容認 の場合には,遊び概念の場合にみられたような「二重構造性」は認められず,ほとんど満足性という 単一の基準で判断が行われていることが明らかにされた。これは母親たちが,子どもの行動を容認し たり禁止したりする場合に,二重構造性に基づく遊び概念の範疇に,その行動が入るかどうかという ことによってではなく,子どもの自己活動そのものを尊重する立場から導かれた結果であるのか,ある いはこの回答に,多少のタテマエ的心理機制が作用したためであるのかは,現段階ではつまびらかで
% O 50 100
團ブラソ・に楽しく乗る 回夢中になって鬼ごっこする 團元気よく自転車に乗る 国みんなで熱心にゲームをする
⑭ぼんやりと凧あげをする 匡]テレビのまんがをじっとみる
③あくびをしながらまんが本をみる
⑥ただなんとなくおしゃべりをする 回みんなで歌を元気よく歌う 匝]みんなで七夕の飾りを楽しくつくる
⑮しぶしぶトランプをする 巨]夢中になって絵を書く
19動物や花の図鑑をぼんやりとみる
⑧しかたなしにボートに乗る
17あくびをしながらピアノの練習をする 12ただなんとなく花の世話をする 国家で昆虫を熱心に飼う 国水族館でじっと魚をみる
16しかたなしに水泳を習いにいく E≡Fコ
2家の人としぶしぶ音紬行く E≡≡ヨ
≡ 子どもの行動を遊び と判断した割合(124名) 子どもの行動をやらせたい と回答した割合(160名)
○印は先行研究で 遊び 回答の高い項目 口印は満足度を示す修飾語のある項目
図4−5 子どもの行動に対する 遊び 回答率と容認回答率との関係(母親)
はない。
5 結 論
遊びの概念は,子どもも母親も共に,少なくとも生産性と満足性の2つの基準が独立に働いて形成 されている。しかし母親の方が,この2つの基準のうち生産性の基準に準拠する傾向が大である。
容認傾向については 遊び 即 禁止 , 勉強 即 容認 というような直線的関係ではなく,
子どもの満足性の程度が有力な基準として生かされていることが知られた。しかし現実に,遊びであ っても子どもがそれに熱中しているのなら容認する,というような寛大な配慮や理解がなされている ためなのか,あるいはタテマエ的回答によるためなのかは今後の問題として残されることになった。
[後記]
本研究は 遊び についての自主ゼミナールによって,従来から累積してきた資料の一一部を用いて まとめたものである。論文の執筆にあたってもゼミナールの諸君の資料整理や文案づくりなどの協力 があったことを記しておきたい。なお,本研究を行うにあたって,日立市立水木小学校の快い調査協 力があったからこそ得られた成果であり,六島田鶴校長はじめ同校の諸先生方に対し,厚く感謝申し 上げる次第である。
本研究のまとめを行っていた10月2日,木村俊夫名誉教授ご逝去の悲報に接した。悲しみの中で綴 られた論文となってしまった。方法論に関して先生から教えられたこと限りなく,ここに記して先生 の業績を讃えると共に,心からご冥福をお祈りするものである。
注
1)中原弘之 『子どもの学習意欲と親子関係一子どもの遊び観を中心に一」,茨城県精神衛生協議会,1978
(a).
2)中原弘之 「子どもの遊びと親子関係(1)」 「日本教育心理学会第20回総会発表論文集』,1978(b),pp・304〜305・
3)中原弘之 「子どもの遊びと親子関係(2)」 『日本心理学会第42回大会発表論文集J,1978(c),PP 906〜907.
4)R.カイヨワ(清水幾太郎,霧生和夫訳)『遊ぶと人間」(岩波書店,1970). o
5)J・アンリオ(佐藤信夫訳)『遊び一遊ぶ主体の現象学へつ(白水社,1976),PP.80〜8L 6)J.ホイジンガ(高橋英夫記)「ホモ・ルーデンス 人類文化と遊戯」 (中央公論社,1971)
7)E・フィンク(石原達二訳)『遊戯の存在論」(せりか書房,1976).
8)R.カイヨウ,前掲書.
9)J.アンリオ,前掲書.
10)J・J・ルソー(長尾十三二他訳) 『エミール1』(明治図書,1970).
11)J・ホイジンガ,前掲書,p.58,
12)R.カイヨワ,前掲書,PP.13〜14・
13)E.フィンク,前掲書,P.31.
14)J,アンリオ,前掲書,p.81.
15)J.J.ルソー,前掲書, p.95.
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