茨城大学教育学部紀要(教育科学)31号(1982)169−184 169
親子関係と子どもの自己活動(3)
子どもの遊びに対する親の意織と子どもの行動
* ** ** ** **
中原弘之・神永典郎・高橋利明・石川和則・川上鉄夫
** ** ** ** **
酒寄洋子・信田貴子・塚田貴史・名田久美子・結城恭子
(1981年10月15日受理)
The Effects of the Parent−Child Relationships on the Children s SelfActivity(3):The Consciousness of the Parents toward the
Children s Play and Behavior of the Children.
**
giroyuki NAKAHARず・Norio KAMINAGλ㌔Toshiaki TAKAHAsHI Kazunori I sHrKAw饗 ・Tetsuo KAwAKA南i・マoko SAKAYo誼*
**
sakako SHID饗 ・Takashi TsuKAD饗 ・Kumiko NADA ・Kyoko YuKI **
(Received October 15,1981)
Abstraot
This report is a part of a series of research into correlations between parents rearing behavior and children s self−activity. Wb start with the problems of.the questionnaire to investigate both mothers and primary school children〜s consciousness toward play. Then We analyze the relationships between mothers consciousness and children s self−activity rated by their teacher& These works will be a great help in solving our problems
1. ま え が き
本研究は,昨年度の研究1)・2)の継続発展である。とくに遊びに関する概念及び容認傾向を調査する 項目内容に問題点が確認されたので,この点にっいての修正作業を通して,調査の項目内容の確 定から着手した。次に,これらの項目によって得られた,子どもの遊びに対する母親の意識を先 行変数とする場合,従属変数としての子どもの行動特性との間に,どのような因果関係を見出し うるかという問題が,われわれにとっての最大の関心事である。本研究では,この点について今 後分析を行うにあたって,まずその方向性を見出さんとする作業が試みられている。
. 磨@茨城大学教育学部教育心理学研究室(Department of Educational Psychology, Faculty of
Education, Ibaraki University)
**茨城大学教育学部 遊び ゼミナール( (Play Seminar, Faculty of Education, Ibaraki Uh重versity)
このような作業と平行して, 遊び の語義を収集・分類し,前回の論文に紹介した定義「遊 びとは,解放感を伴い,行動それ自体に目的意識を有する自己活動である」を,語義の面からも 確認しようと試みた。これによると,多くの 遊び に対する語義は,ほぼ次の6つのカテゴリ
一に分類しうる。①歪曲(酒色,とばくなど),②余分(すきま,ゆとりなど),③欠如(休業,
失業など),④流動(旅行する,学問をしに行くなど),⑤快楽(娯楽,気晴しなど),⑥演技
(劇,競技など)。しかも,これらの6つのカテゴリーのうち,①②③は生活の本番ではない,
という解放された状態によって特色づけられ,後半の④⑤⑥は,いずれも活動の状態によって特 色づけられている。漢字詳解助では 遊 は 汗 に同じとされ, 汗 は説文のによると「浮行水 上也」である。また 游 も 汗 であり,「施旗之流也」と説文による解説が示されている。の このように,定まるところなく,常に自在に動いている状態が 遊び であると考えられる。し たがって,われわれが遊びの定義に盛り込んだ 解放感 及び 行動それ自体に目的意識を有す る という表現は,遊びの定義に不可欠のものであり,語義の上からも定義として妥当性を確認
した。
2.研 究 の 目 的
本研究は,子どもの遊びに対する概念や,子どもの遊びの容認というような観点から,遊びに ついての子どもや母親の意識を明らかにするための調査項目を確定する。この調査項目を用いて 小学生及びその母親の意識内容を分析し,他方,教師によって評定された児童の学習意欲を,母 親の意識内容と関連づけ,今後の研究の方向性を見出そうとするものである。
3.研 究 の 方 法 3−1 調査の内容
3−1−1 調査項目の再検討
前回の研究で用いた修飾語を伴った行動項目の中に,われわれの予想に反した反応傾向を示す 項目があった。その項目は「テレビのまんがをじっとみる」と「ただなんとなくおしゃべりをす る」の2つである。前者の「じっと」は先行研究において,意欲的な修飾語として遊び項目に付 加され,遊び回答率は高くなるであろうと予想された。しかし,「じっと」が意欲的な修飾語と
して機能しなかったため,遊び回答率は減少した。後者の「ただなんとなく」は,先行研究にお いて無気力な修飾語として選定され,遊び項目に付加することによって,遊び回答率は低下する であろうと予想されたが,逆に遊び回答率は増加した。
以上の結果に対する考察を通して,修飾語に問題のあることが考えられたので調査項目の再検 討を行った。まず,一般的に意欲的と思われる修飾語を10の行動項目に対して5つずつ準備した。
合わせて非意欲的と思われる修飾語を別の10の行動項目に対して5つずつ準備した。次に,これ らの20項目を大学生を対象に,いかにも意欲的で,しかも文章表現が自然であると判断されるも のを5つの中から2つずつ選定してもらった。また,無気力性を表す修飾語も同様に選定しても
らった。この予備調査を通して,それぞれの行動項目に最も高い選定率を示した修飾語を原則と して選んだが,他の項目とのかねあいや文章表現の自然さをも考慮して調査項目を確定した。
中原他:親子関係と子どもの自己活動(3) 171
3−1−2 調査の内容
調査の内容は,①遊びについての子どもの概念,②遊びについての母親の概念,③子どもの行 動に対する母親の容認,の3種類が本研究の独立変数を求あるために準備され,また,従属変数
として子どもの学習意欲を教師評定によって求めることにした。
①の子どもを対象とする内容は,先行研究によって 遊び 回答率の高かった上位10項目と,
逆に 遊び 回答率の低かった下位10項目を選定し,20項目が準備された。これらの20項目は,
いずれも具体的な子どもの日常行動が客観的に記述されているものであり,巻末の付表1,2に まとめられている。しかし,本研究では遊びの概念に,主観的な次元での満足性の基本が関係す る点を問題としているので,この間題を解決するために満足度の程度を操作する修飾語を,さき の20項目に付加することにした。この修飾語は前述の予備調査によって,満足を表すものとし て,「夢中になって」,「いっしょうけんめい」,「おもしろそうに」,「はしゃぎながら」,「元気よく」,「目 をかがやかせて」,「楽しそうに」,「熱心に」の8語,反対に不満足を表すものとして,「しぶしぶ」,「た いくつそうに」,「つまらなそうに」,「いやいやながら」,「しかたなしに」,「だらだらと」の6語,合計14語 が選定された。このうち,「夢中になって」,「楽しそうに」,「しぶしぶ」,「たいくつそうに」,「つまらなぞ
うに」,「いやいやながら」の6語は2回ずつ使用することによって,20項目すべてに満足と不満足を示す修 飾語が付加された。満足を表す修飾語(SA),不満足を表す修飾語(Uns A)の付加は,文章表現上自然
さの保たれることが考慮された。
②の母親を対象とする調査用紙も,①の場合と同様に作成され,修飾語のないものと修飾語の あるものが準備された。ただし文章表現はおとな向きにしてある(付表3,4参照)。なお,こ れとは別に調査への依頼文を準備した。
③の容認についての調査用紙も,20の行動項目は①,②と同じように修飾語のあるものとない ものとに分かれている。ただ回答の仕方が,「やらせたい」「やらせたくない」の2件法で反応 を求めている点に違いがある。これらは巻末の付表5,6に示されている。
学習意欲については,全学年の担任に上・中・下の3段階評定を依頼した。この際,各段階の 人数はクラスの約3分の1ずつになるように分類してもらった。
3−2 調査の対象
幸いなことに茨城県高萩市立東小学校の全面的協力が得られたので,児童については第3学年 以上の629名,保護者については全学年児童の親748名を 表3−1 調査対象の学級と調査の
@ 内容 対象として調査が行われた。なお,兄弟姉妹が2名以上在
親 児 童 校している場合には,高学年の児童を対象児とした。調
組学年
1 2 3 4 1 2 3 4 査対象と調査内容との内訳は表3−1のようになる。した
1 A B C D がって,それぞれの調査用紙に対する回答者は,いずれも
2 A B C D 異っている。さらに教師評定は,全児童を対象に,各クラ
3 A B C D A A B B ス担任に実施してもらった。
4 A B C D A A B B
5 A B C D A A B
6 A B C D A A B B 本調査の実施は1981年7月である。児童に対しては,担
(油A 修飾語のない遊びの概念 任の教示によって学校で実施され,保護者に対しては自宅 B 修飾語のある遊びの概念 に配布して回答を求め,数日後に学校に回収した。
C 修飾語のない遊びの容認 なお,児童と保護者及び教師の回答を対応させるために,
D 修飾語のある遊びの容認 出席番号の記入を担任に依頼した。
4.結果と考察 表4−1 PC得点の分布
調査対象 修飾語 性別 人数 中央値 四分偏差 分布の幅 4−1 遊び の概念について 4−1−1 遊び の概念の広さ
男 147 9.52 1.43 3−−18
小学生までの子どもたちが,日常しば
無 女 122 9.6β 1.51 4−18 しば行っていると思われる20の行動項目
全 269 9.59 1.48 3_18 について,「遊びである」と判断できる
子ども 項目に○印(遊び回答)を記入してもら
男 141 9.08 1.00 3−17
ったので,各回答者ごとに遊び回答を合
有 女 130 9.25 1.35 3−15 計し,0〜20点の範囲に分布する合計得
全 271 9.16 1.49 3_17 点(遊びの概念の広さの指標とし,以下 PC得点と略記する)を算出した。子ど
無 全 106 9.71 1.69 3−20
もの回答,母親の回答別にPC得点の分
母 親
有 全 104 9.77 1.37 5−18 布状況を示すと表4−1のようになる。
先行研究によって,遊び回答の多かった 往)子ども:小学校第3〜6学年 項目と少なかった項目とを10項目ずつ選
母 親:小学校第1〜6学年までの母親 定してあるたあに,PC得点の中央値は,
ほぼ10になるであろうことが予想された が,表4−1に示したように,期待どおりの結果が得られた。また,子どもの回答のうち,修飾 語のある場合より,ない場合の方が中央値において高い値が示され,また,修飾語の有無にかか わらず,子どもよりも母親の中央値の方が高い値を示すことが見出された。
4−1−2 遊び 値1答率
D子どもの場合 修飾語のない20項目に対する子どもの 遊び 回答率を示すと図4−1の ようになる。先行研究で50%以上の 遊び 回答率を示した10項目は,今回も同じく回答率が高
い。
図4−2は満足の程度を操作する修飾語を伴った20項目に対する 遊び 回答率であるが図4 一1と比較してみると両者間に大きな違いが見出される。□印の項目は満足を表わす修飾語(S A)を伴ったものであり,外は不満足を表わす修飾語(Uns A)を伴ったものである。全体的 特色として指摘できることは,その行動の 遊び 回答率が修飾語のない場合に高率であったと
しても,行動項目にUns Aを伴うことによって回答率が減少し,一方, 遊び 回答率が低か
った項目の場合は,SA, Uns Aいず表4−2 修飾語が加えられたことによる変化
れの場合でも回答率は増加していること 満足性 満 足 不満 足 である。この傾向性をまとめてみると表 生産性 (SA) (Uns A) 4−2のようになる。すなわち,子ども
非 生 産
(無変化)
雫 の遊び齢の判断には満足性と生産性
怐@の2…韓立し嘲し葡,
前回の研究で仮称した「遊び概念の二重
( (
生 産 上 上 構造性」がここでも認められる。しかも,
昇 呂 前回の反省から今回は修飾語の再検討,
修正を行ったたあに,その傾向がより顕
9
中原他:親子関係と子どもの自己活動(3) 173
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著にみられたといえる。たとえば「たこあげをする」「おしゃべりをする」の項目に付ける修飾 語を前回の「ぼんやりと」「ただなんとなく」から,よりUns Aを示す「っまらなそうに」に 修正したことにより,前回に比べ, 遊び 回答率はさらに減少した。また,「水族館で魚をみ る」の項目に付ける修飾語を前回の「じっと」から,よりSAを示す「目をかがやかせて」に修 正したことにより,前回に比べ, 遊び 回答率は増加を示していることが見出される。これら のことは母親においても同じことがいえる。
iD母親の場合 母親の 遊び 回答率を,修飾語のない項目とある項目とについて図示する と図4−3,図4−4のようになる。
図4−3から上位10項目は,いずれも60%以上の 遊び 回答率を示し,下位10項目との間に 比較的明確な段差が認められる。また図4−3と図4−4との比較によっても,著しい変化が認 められ,その変化の方向性は,先に述べた子どもの場合と近似している。しかも,母親の場合は,
子どもの場合に指摘した特色(表4−2)がより顕著に表われ,母親の遊び概念の判断にも,満 足性と生産性の2つの基準が独立して作用していることがわかる。このように,子どもの遊びに 対する母親の判断基準も,一貫性を欠いており,2つの基準がその都度,判断の手がかりにされ ているといえよう。
4−2 遊び の容認について 4−2−1 容認度の広さ
20項目の子どもの日常行動について,「やらせたい」または「やらせたくない」の2件法で回 苔をしてもらった。 「やらせたい」という回答のあった項目の個人別合計値を容認得点(P得点)
として算出し,その分布を求めた結果が表4−3である。修飾語のない項目では,全体的に「や らせたい」と答えた親が多い。約半数の回答者が17項目以上に「やらせたい」と答えている。修
表4−3 容認得点(P得点)の分布 飾語のある項目では,Uns Aを伴う項 レの容認回答率は減少し,SAを伴う項
調査対象 修飾語 人数 中央値 四分偏差 分布の幅 母 親 なし 114
P07
17.70
P097
1.69
P.40 S〜17 は子どもの行動の容認については満足性 の基準によって判断していることがわか る。しかし,SAを伴っているにもかかわらず,「おもしろそうにテレビのまんがをみる」は外 と比較して回答率が低い。これはこの行動自体に対する価値判断によるものと思われる。修飾語 を伴った項目に対しては,回答者の約半数が11項目以上に「やらせたい」という容認回答を寄せ ている。
4−2−2 遊び の概念と容認
20の項目について,図4−3の106名の母親の回答に基づいて, 遊び 回答率の高い順に項 目を配列し,別の114名の母親が,これらの項目に対して回答した容認回答率を併記したものが 図4一7である。この図において○印を付した行動項目は,先行研究で・遊び 回答率の高かっ た項目であり,それ以外は回答率の低かったものである。また図4−8は,図4−4の104名の 母親の回答結果にあわせて・あらたに107名の母親から得た容認回答率を記したものである。□
印の行動項目は,SAを伴う項目,それ以外はUns Aを伴うものである。
図4−7によると先行研究と同様に遊びの回答率の高かった行動項目に対してもやはり容認の
回答率が高いが,「ボートに乗る」「自転車に乗る」「テレビのまんがをみる」は外と比べて回 噂
答率が低下している・これは・「ボートに乗る」も泊騨に乗る」もある程度危険があり∫テ
中原他:親子関係と子どもの自己活動(3) 175
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レビのまんがをみる」は,眼を悪くする,教育上好ましくないなどの理由で批判的に解釈されたた めではないだろうか・逆に「家で昆虫を飼う」や「花の世話をする」など危険性の少ない行動項 目に対して容認度が高い。さらに図4−8によると,容認度の高い行動項目は,いずれもSAを 伴う項目であり・ 遊び 回答率には無関係のように思われる。一方Uns Aを伴う行動項目に っいては・「いやいやながや水泳を習いに行く」 「しかたなしに花の世話をする」は,「しぶし ぶトランプをする」 「つまらなそうにたこあげをする」などに比べて,それなりに生産性に結び つく内容であり,これらは比較的容認度が高くなったものと思われる。
遊びを生産性だけで考えている親は,修飾語の有無にかかわらず, 遊び 回答率の低い項目 を やらせたい と答えるはずであり,また満足性だけで考えている親は,SAを伴う項目に や らせたい と答えるはずである。しかし結果はUnsAを伴う項目の回答率は減り,SAを伴う 項目は増加している。このことから修飾語をつけた場合は,親は満足性の立場で考えていること がわかる。
4−3 遊び の概念と教師評定
遊びの概念についてはすでに詳しく述べてきたが,はたしてこのような母親の遊び観が子ども の自己活動にどのような影響を与えているだろうか。次にわれわれは,子どもの学習意欲に対 する教師評定を1つの指標にして,これらの2つの関連性を考察してみることにした。
始めに,教師評定に基づいて,子どもをA(意欲的であると評定されている子ども)・B(普 通だと評定されている子ども)・C(意欲的でないと評定されている子ども)の3群に分け,各 群ごとにその子どもの母親について行動項目別にその遊び回答率を求めると表4−4,5のよう
になる。
まず表4−4(修飾語がない場合)についてみていくと,「まんが本をみる」「絵をかく」「お しゃべりをする」 「ボートに乗る」 「みんなで歌をうたう」 「たこあけをする」の6項目ではA
>B>Cの傾向がみられ,「鬼ごっこをする」「動物や花の図鑑をみる」の2項目ではA〈B〈
Cの傾向がみられる。ただし,ゴ検定により有意差が認められるのは「みんなで歌をうたう」の 1項目だけであった(5%水準)。これらの項目を図4−3に照らし合わせてみると,A>B>
Cの傾向がみられる項目はいずれも図の中ほどに集中していることがわかる。このことから,遊 びかどうか判断が2分される項目に対してはA群の母親の方が遊びとみなす場合が多く,C群の 母親との差が大きくなる傾向があるといえよう。さらに,遊び回答数の合計を求あて3群を比較 してみるとA>B>Cの傾向があり,A群の母親の遊び回答が最も多いことがわかる。以上の結 果から,一般に意欲的である子どもの母親ほど遊び観が広く,子どもに対して解放的であると考 えられる。
次に表4−5(修飾語がある場合)についてみていくと,「みんなで夢中になってゲームをす る」 「みんなで七夕の飾りをはしゃぎながらつくる」「夢中になって鬼ごっこをする」の3項目 ではA>B>Cの傾向がみられ,「家の人と音楽会にしぶしぶ行く」「たいくっそうにまんが本 をみる」 「いやいやながらボートに乗る」 「つまらなそうにたこあげをする」 「しかたなしに花 の世話をする」「しぶしぶトランプをする」 「いやいやながら水泳を習いに行く」「だらだらと ピアノの練習をする」の8項目ではA〈B〈Cの傾向がみられる。ただし,有意差が認められる のは「家の人と音楽会にしぶしぶ行く」の1項目だけであった(5%水準)。さらにこれらの項 目について詳しくみていくと,A<B〈Cの傾向がみられる項目はすべてUns Aを伴ったもの であることがわかる。このことから,一般に意欲的でないと評定されている子どもの母親は,遊
中原他:親子関係と子どもの自己活動(3) 179
びに対して生産性の立場をとっていると考えられる。一方A>B>Cの傾向がみられる項目につ いては,3項目ともSAを伴ったものであることがわかる。しかしこの場合においては,項目数 が少ないたあ確信をもった判断はくだせないが,一般に意欲的であると評定されている子どもの 母親は,遊びに対して満足性の立場をとる傾向のあることが予想される。
表4−4 教師評定と母親の回答との関係吻) 表4−5 教師評定と母親の回答との関係(%)
(修飾語なし 106名) (修飾語あり 101名)
教師評定 A B C 教師評定 A B C
行動項目 (N=34) (N冨42) (N−30) 行動項目 (N=29) (N望43) (N=29)
1 みんなでゲームをする 94ユ 92.9 ga3 1 みんなで夢中になってゲームをする 96.6 95.3 89!7 2 家の人と音楽会に行く 8.8 11.9 10.0 2 家の人と音楽会にしぶしぶ行く 6.9 11.6 31.0 3 まんが本をみる 85.3 73.8 66.6 3 たいくつそうにまんが本をみる 41.8 44.2 5a6
4 絵をかく 41.2 35.7 33.3 4 いっしょうけんめい絵をかく 345 46.5 37.9 5 テレビのまんがをみる 94.1 73B 7a7 5 おもしろそうにテレビのまんがをみる 79.3 88.4 62.1 6 おしゃべりをする 73.5 61.9 60.0 6 つまらなそうにおしゃべりする 哩 27.6 41.9 418
7 みんなで七夕の飾りをつくる 324 4α5 33.3 7 みんなで七夕の飾りをはしゃぎながらつくる 759 74.4 62.1
8 ボートに乗る 91.2 90.5 73.3 8 いやいやながらポートに乗る 31.0 34.9 448
9 みんなで歌をうたう 50」 45.2 20.0 9 みんなで元気よく歌をうたう 55.2 60.5 5ε2 10 たこあげをする 97.1 92.9 86。7 10 つまらなそうにたこあげをする 37.9 44.2 55.2 11 鬼ごっこをする 97.1 97.6 100.0 11夢中になって鬼ごっこをする 96β 95.3 89.7 12 花の世話をする 5.9 7.1 on 12 しかたなしに花の世話をする OO 11.6 13.8 13水族館で魚をみる 5.9 19.0 OP l3 目をかがやかせて水族館で魚をみる 44.8 41.9 44.8 14 自転車に乗る 88.2 76.2 8a7 14 楽しそうに自転車に乗る 93.1 95.3 89.7 15 トランプをする 97.1 92.9 93.3 15 しぶしぶトランプをする 37.9 46.5 483 16水泳を習いに行く 5.9 9.5 6.7 16 いやいやながら水泳を習いに行く 103 16.3 20.7 17 ピアノの練習をする 8B 2.4 0刀 17 だらだらとピアノの練習をする 27.6 27.9 34.5
18 家で毘虫を飼う・ 29.4 26.2 2&7「@ 18 家で熱心に昆虫を飼う 37.9 442 379
19動物や花の図鑑をみる 3.0 9.5 1α0 19たいくつそうに動物や花の図鑑をみる 31.0 39.5 34.5 20 ブランコに乗る 100.0 100.0 ga3 20 楽しそうにブランコに乗る 96.6 100つ 93.1
4−4 遊び の容認と教師の評定
子どもの学習に対する教師評定ごとに,母親の遊びに対する容認度を示したものが,表4−6 と表4−7である。表4−6は修飾語のない行動項目であり,表4−7は修飾語のある行動項目 であるがいずれの結果においてもA,B,Cの間に有意差は認められなかった。
しかし,表4−6において「テレビのまんがをみる」と「自転車に乗る」はともに遊び回答率 の高い行動項目であり,かつA,B,Cをあわせた母親全体としてみた場合の容認度もほぼ同じ でありながら,前者においてはC群の子どもを持つ母親の容認度が高く,後者においてはA群の 子どもを持つ母親の容認度の高いことが注目される。
表4−7においては「みんなで夢中になってゲームをする」 「おもしろそうにテレビのまんが をみる」「楽しそうに自転車に乗る」の3つの修飾語を伴った行動項目に対してA群の子どもを 持つ母親が高い容認度を示している。これら3つの行動項目はいずれも遊び回答率が高く,かつ
SAを伴った行動項目である。また「いっしょうけんめい絵をかく」「みんなで七夕の飾りをは しゃぎながらつくる」も遊び回答率は低いが,SAを伴った行動項目であり,やはりA群の子ど もを持つ母親に高い容認度がみられる。これらのことから,A群の子どもを持つ母親は満足性と いう立場に立って子どもの遊びを容認する傾向があるようだ。
表4−6 教師評定と母親の回答との関係(%) 表4−7 教師評定と母親の回答との関係(%)
(修飾語なし 113名) (修飾語あり 107名)
教師評定 A lB C 教師評定 A B C
行動項目 (N
VN吻 (N謹33) 行動項目 (N=32) (N富44) (N罵31)
1 みんなでゲームをする 8L61 71.4子 879 1 みんなで夢中になちてゲームをする 84.4 72.7 71.0 2 家の人と音楽会に行く 92.1 90.5 91.0 2 家の人と音楽会にしぶしぶ行く 12.5 3a6 19.4
3 まんが本をみる 73.7 7L4 7a8 3 たいくつそうにまんが本をみる 63 15.9 97 4 絵をかく 97.4 97.6 100,0 4 いっしょうけんめい絵をかく 100.0 97.7 96.8 5 テレビのまんがをみる 579 643 8L8 5 おもしろそうにテレビのまんがをみる 78」 77.3 58ユ 6 おしゃべりをする 947 88.1 8L8 6 つまらなそうにおしゃべりをする 63 6.8 129 7 みんなで七夕の飾りをつくる 100.0 97.6 10α0 7 みんなで七夕の飾りをはしゃぎながらつくる 10α0 97.7 93.5 8 ボートに乗る 5τ9 3LO 4a5 8 いやいやながらボートに乗る 12.5 6.8 9.7
9 みんなで歌をうたう 100.0 97.6 97つ 9 みんなで兀気よくボートに乗る 100.0 100.0 100.0 10 たこあげをする 94.7 88.1 gag 10 つまらなそうにたこあげをする 15.6 13.6 16.1
11鬼ごっこをする 94.7 85.7 91.0 11夢中になって鬼ごっこをする 87.5 81B 87.1 12花の世話をする 100.0 100.0 100.0 12 しかたなしに花の世話をする 50.0 545 51.6 13水族館で魚をみる 100.0 95.2 97D 13 目をかがやかせて水族館で魚をみる 96.9 97.7 ga5 14 自転車に乗る 868 643 57.6 14 楽しそうに自転車に乗る 93.8 93.2 77.4 15 トランプをする 94.7 97.6 9LO 15 しぶしぶトランプをする 6.3 11.4 6.5
16水泳を習いに行く 81.6 95.2 81.8 16 いやいやながら水泳を習いに行く 40β 22.7 32.3 17 ピアノの練習をする 65.8 76.2 66.7 17 だらだらとピアノの練習をする 0.0 11.4 3.2
18家で昆虫を飼う 92ユ 88.1 87.9 18 家で熱心に昆虫を飼う 93.8 81.8 ga5 19 動物や花の図鑑をみる 100.0 97.6 100.0 19 たいくつそうに動物や花の図鑑をみる 50.0 409 419
20 ブランコに乗る 86.8 81.0 81.8 20 楽しそうにブランコに乗る 93.8 97.7 83.9
翫 結 論
今回の研究によって,遊びについての概念,並びに容認について調査する項目内容が確定した。
今回の調査結果をみても,遊びに対する判断は,先行研究と同様に 生産性 の基準で行われる と同時に, 満足性 の基準も複雑にからみ込んで用いられており, 遊び という概念が,日常生 活において,いかに曖昧なままに受けとめられているかが明らかにされた。遊びの容認の場合に は,前回同様に,子どもが満足してやっているのならば容認する,という回答の一貫した傾向が 認められ,遊びに対する制限や禁止に結びつく日常的な養育行動と,かけへだたった結果が得られ ている。
また,今回は担任による子どもの学習意欲についての評定資料が求められ,これと親の 遊び 概念 及び 遊び容認 との関係が分析された。この結果,遊び概念については,その概念の広 い親の子どもに,学習意欲の高いものが多い傾向を読みとることができた。この点について は,方向性を得ることをねらいとする今回の研究にとって,今後の課題解決に有効な示唆を与え る結果であったといえよう。
注
1) 中原弘之他『親子関係と子どもの自己活動(2)一子どもの遊びに対する子どもと親の意識一』
『茨城大学教育学部紀要(教育科学)』,1981年,pp,107〜122
中原他:親子関係と子どもの自己活動(3) 181
2) 中原弘之「子どもの遊びと親子関係(3)」 『日本心理学会第45回大会発表論文集』,1981年,
p.433.
3) 高田忠周「漢字詳解 巻五」 (西東書房,1912年),P.1547・
4) 段注説文解字 十一篇上二,p.22.
5) 高田忠周「漢字詳解 巻三」 (西東書房,1910年),p.810.
〔後 記〕
本研究の資料は,茨城県高萩市立東小学校の深谷誠一校長はじめ,同校の諸先生方全員の積極的なご協力 によって入手できることができた。ここにまとめられた内容は,得られた多くの資料のうちの一部を用いた にすぎない。回答にご協力下さった児童とそのご父兄のご好意に報いるためにも,残る資料の分析に努力を 傾注することは勿論のことであるが,ここでひとまず中間的なまとめを行うにあたり,これらの方々に厚く 感謝申し上げる次第である。
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