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1.軟性線維腫
soft fibroma類義語:アクロコルドン(acrochordon),スキンタッグ(skin tag),懸垂性線維腫(fibroma pendulum)
症状
頸部や腋窩,鼠径などに好発する.半球状〜有茎の,柔軟で 常色〜淡褐色調の腫瘍.表面に皺が多い(図21.52).頸部や 腋窩などに糸状の小腫瘍(長さ 2 〜 3 mm)が多発するものを アクロコルドンないしスキンタッグ,体幹に単発するやや大き なもの(直径約 1 cm)を軟性線維腫,これがさらに巨大にな り皮膚面から垂れ下がるようになったものを懸垂性線維腫と呼 び,それぞれ区別している.肥満者,女性に好発し,一種の加 齢変化と考えられている.
病理所見
膠原線維の増生が主体であり,細胞成分に乏しい.軟性線維 腫や懸垂性線維腫では,腫瘤の中に脂肪細胞を有する場合も多 い.
治療
必要があれば茎を切除ないし凍結療法.
2.皮膚線維腫
dermatofibroma同義語:線維性組織球腫(fibrous histiocytoma)
●線維芽細胞やマクロファージが真皮内で限局性に増殖した 良性の硬い腫瘍.虫ちゅう刺し症などの外傷に反応して発生する場合 がある.
●成人の四肢に好発し,直径数 mm 〜 2 cm 程度の褐色調の隆 起性結節を形成する.
症状・病因
“皮膚の浅い部分にボタンを入れた感じ”と表現される褐色 調の皮内結節で,四肢に好発する(図21.53).緩徐に発育し,
通常,ある大きさに達すると変化しない.まれに 5 cm 以上と なる巨大型(良性)が下腿に生じることもある.単発性である
H.線維組織系腫瘍 fibrous tumors
図21.52 軟性線維腫(soft fibroma)
図21.53① 皮膚線維腫(dermatofibroma)
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ことが多いが多発例も存在する.圧痛を伴うことがある.本症 は微小な外傷に対して反応性に結合組織要素が増殖してできた と考えられ,厳密な意味では腫瘍ではないとする考え方もあ る.
病理所見
真皮から皮下にかけて,膠原線維や線維芽細胞,組織球が 種々の割合で増殖(図21.54).腫瘍細胞は血液凝固第a 因子 陽性,CD34 陰性であり,隆起性皮膚線維肉腫(22 章 p.438 参照)
との鑑別点となる.また,基底層ではメラニンの増加を認める.
組織球の増殖が主であるものを cellulartype といい,やや赤み を帯び軟らかい.線維芽細胞や膠原線維の増殖が主であるもの を fibroustype といい,膠原線維の間に線維芽細胞が散在する.
鑑別疾患
硬くて黒色調が強いもの,成長が比較的速いものは,悪性黒 色腫との鑑別を要する.そのほか,隆起性皮膚線維肉腫,結節 性黄色腫,母斑細胞母斑,青色母斑など.
治療
外科的に切除する.悪性腫瘍ではないことが明らかであれば 放置してもよい.
3.肥厚性瘢痕およびケロイド
hypertrophic scar and keloid
●結合組織の増殖による,境界明瞭な紅色あるいは褐色の扁平 隆起.
●外傷や手術などに続発して発生するが,突然発生する場合も ある.
●とくにケロイドでは瘙痒感と側圧痛を伴う.
●治療はステロイド局注や ODT などがあるが難治性.
分類
線維芽細胞によるコラーゲン線維産生が過剰になり,創面に 一致して紅褐色の隆起性病変を生じる.数年以内に自然萎縮す るものを肥厚性瘢痕(hypertrophicscar)という.一方,増殖が 高度で,創面を越えて大きく盛り上がり,消退傾向を示さない ものがケロイド(keloid)である.最近は耳介に生じるピアス ケロイド(図21.55)が増加している.
図21.53② 皮膚線維腫(dermatofibroma)
図21.54 皮膚線維腫の病理組織像
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症状
外傷や手術などを契機に,通常 1 か月以内に発症する.耳介,
頸部,肩,体幹上部などはとくに生じやすい.境界明瞭な扁平 もしくは半球状隆起で,色調は鮮紅色から褐色を呈する(図 21.55).ケロイドに特徴的な所見としては,進行すると側方へ 徐々に拡大,中央部はしばしば退色扁平化し(餅を引き伸ばし たようにみえる),横から強くつまむと痛い(これを側圧痛と いう).これに対して肥厚性瘢痕では,増生が創面を越えて成 長することはなく,側圧痛もない.
治療
初期の病変に対しては,ステロイド外用薬 ODT,持続的圧迫,
ステロイド局注,トラニラスト内服が行われるが,難治である.
病変が高度な場合や機能障害を伴う場合は,外科的に切除した 後に上記治療および放射線照射を試みる.
4.手掌足底線維腫症
palmoplantar fibromatosis 手掌または足底の腱膜に硬い索状物が生じる,手掌腱膜,足 底腱膜の増生による深在性の線維腫症.手掌線維腫症(Dデュu- pピュイトランuytren 拘縮)では手指が屈曲拘縮する(図21.56).糖尿病に 合併することがある(17 章 p.312 参照).図21.55 肥厚性瘢痕およびケロイド(hypertrophic scar and keloid)
a〜c:体幹に生じた例.d,e:耳部のピアス後に生じた例.
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図21.56 手掌足底線維腫症(palmoplantar fibro- matosis)
本例は手掌線維腫症(Dupuytren拘縮)なので手指 が屈曲拘縮している.
21 5.真珠様陰茎小丘疹 pearly penile papule
陰茎の冠状溝に 1 〜 3 mm 大のドーム状で白色調の丘疹が列 序性に多発する.いわゆる血管線維腫で,生理的なものである ため病的意義はない.尖圭コンジローム(23 章 p.472)との鑑 別を要する.
6.鼻部線維性丘疹
fibrous papule of the nose顔面や頸部に単発する,正常皮膚色から褐色,紅色で直径 10 mm 以下の硬めのドーム状丘疹(図21.57).病理組織学的 に血管線維腫を呈する.
7.後天性指趾被角線維腫
acquired digital fibrokeratoma
正常皮膚色で弾性硬,表面に過角化を伴い,ドーム状あるいは 円筒状に突起した小結節(図21.58).指趾に好発し,まれに 手掌足底に生じる.結節性硬化症(20 章 p.372 参照)で爪囲に 生じたものを Koenen 腫瘍という.病理組織学的には過角化,ケネン 膠原線維と線維芽細胞の増殖,および豊富な小血管を認める.
8.弾性線維腫
elastofibroma主に肩甲骨下部に左右両側性にドーム状ないし扁平な盤状の 腫瘤を生じる.膠原線維に加え,弾性線維の増生を認める(図 21.59).
9.硬化性線維腫
sclerotic fibroma直径 2 cm 大までのドーム状小結節を呈し,病理組織学的に は,腫瘍内に硬化した膠原線維が,花むしろ様に密に存在する.
細胞成分がほとんどなく,真皮内で境界明瞭な腫瘍として認め られる.Cowden 症候群(p.389MEMO 参照)で多発すること がある.
10.結節性筋膜炎
nodular fasciitis30 歳代の前腕に好発する.外傷などが誘因となり,1 〜 2 週 間で急速に直径 2 〜 3 cm の皮下結節を形成し,圧痛や自発痛 を伴うことが多い(図21.60).病理組織学的には,筋膜付近 で幼若な線維芽細胞様細胞が不規則(束状,渦巻き状)に増殖
血管線維腫(angiofibroma)
図21.58 後天性指趾被角線維腫(acquired digital fibrokeratoma)
図21.57 鼻部線維性丘疹(fibrous papule of the nose)
図21.59 弾性線維腫(elastofibroma)
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しているさまを観察する.ムチンの沈着や核分裂像もみられ,
いわゆる肉腫(線維肉腫,悪性線維性組織球腫,平滑筋肉腫,
粘液型脂肪肉腫,隆起性皮膚線維肉腫)との鑑別を要する.本 症は自然治癒傾向を示す.
11.腱鞘巨細胞腫
giant cell tumor of tendon sheath
手指の関節近傍に好発する.直径数 mm 〜 4 cm の,硬い多 房性の皮内ないし皮下結節.正常皮膚色で単発性,痛みはない.
組織球様細胞や巨細胞の増殖を特徴とする.腱鞘あるいは滑膜 由来の腫瘍と考えられている.治療は外科的に全摘出する.
12.デスモイド腫瘍
desmoid tumor肩,胸壁,大腿などの筋,腱膜に好発する直径数〜 10 cm の 正常皮膚色の硬い深在性の腫瘤.病理組織学的に,分化した線 維芽細胞と膠原線維からなる良性の線維性腫瘍だが,ゆっくり と浸潤性に増大し,再発率が高い.
13.皮膚粘液腫
cutaneous myxoma数 cm 以下の軟らかい結節性の良性腫瘍.自覚症状はない.
病理組織学的には粘膜様組織内に星芒状あるいは紡錘形をした 腫瘍細胞が浮かぶように認められる.ムチン沈着症(17 章 p.299 参照)とは異なる,独立した疾患である.
14.指趾粘液囊腫/ガングリオン
digital mucous cyst / ganglion
指趾末節背面に生じた,ムチンを含んだ偽囊腫性病変(図 21.61).水疱あるいは疣贅のような外観を呈することがある.
myxomatoustype と gangliontype に大別され,前者は線維芽細 胞によるヒアルロン酸の過剰生産が原因で,本質的に限局性の ムチン沈着症である.後者は関節囊あるいは腱鞘のヘルニアで
乳児指趾線維腫症
(infantile digital fibromatosis)
図21.60 結節性筋膜炎(nodular fasciitis)
図21.61 指趾粘液囊腫,ガングリオン(digital
mucous cyst / ganglion)
a:臨床像.b:外科的切除.c:病理組織像.
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ある.不十分な切除は再発を招く.穿刺吸引,凍結療法,ステ ロイド局所注射なども行われる.
15.口腔粘膜粘液囊腫
mucous cyst of the oral mucosa
下口唇(まれに頬粘膜,舌)に現れる,ドーム状隆起を示す 直径 2 〜 10 mm の軟性腫瘤(図21.62).切開により黄色調で 透明な粘液を排出する.咬傷により唾液腺の排出管が破れ,唾 液が周囲組織に漏出し,肉芽腫を生じたものと考えられる.
1.黄色肉
に く芽
げ腫
xanthogranuloma同義語:若年性黄色肉芽腫(juvenile xanthogranuloma)
黄色〜暗赤色調で表面平滑な数 mm 〜 1 cm 大の丘疹および
結節で(図21.63),顔面部や四肢,体幹に好発する.多くは
生下時〜生後数か月以内に単発ないし多発し,通常は 5 〜 6 歳 までに自然退縮する.成人でも同様の皮疹を生じることがある.
血中脂質は正常.Langerhans 細胞組織球症(22 章 p.442 参照)ランゲルハンス で類似した皮疹をきたすことがあり,鑑別を要する.病理組織 学的には,組織球と黄色腫細胞,Tツートンouton 型巨細胞からなる反 応性肉芽腫である(図21.64).神経線維腫症 1 型(20 章 p.368)
I.組織球系腫瘍 histiocytic tumors
図21.62 口腔粘膜粘液囊腫(mucous cyst of the oral mucosa)
図21.63 黄色肉芽腫(xanthogranuloma)
図21.64 黄色肉芽腫の病理組織像
a:著明な腫瘍細胞の増生.b:脂肪を貪 食したTouton型巨細胞(矢印).
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