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論 文 審 査 の 要 旨

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Academic year: 2021

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別紙1

論 文 審 査 の 要 旨

報告番号 3142 清原 秀一

論文審査担当者

主査 教授 上條 竜太郎 副査 教授 美島 健二

副査 准教授 鈴木 規元

(論文審査の要旨)

N-methyl-D-aspartate (NMDA)受容体は神経細胞に発現するイオンチャネル型受容体であり、

中枢神経活動の制御を担っている。これまで神経系と骨代謝の関係が報告されてきたが、NMDA 受容体と骨代謝の関係は不明である。本研究では、骨代謝や骨損傷治癒などの骨恒常性維持機 構におけるNMDA受容体の機能を解明するため、その拮抗薬である MK-801(別名ジゾシルピン) をマウスに投与し、その影響について解析した。その結果、MK-801投与群ではμCTで大腿骨 の有意な骨量減少が認められた。しかし、組織切片観察では破骨細胞の減少と骨芽細胞の増加 を示した。また、MK-801 は骨欠損治癒に対して影響を及ぼさなかった。骨髄由来マクロファ ージは NMDA受容体サブユニットの Grn3b を発現し、Mk-801 in vitro での破骨細胞分化を 抑制した。MK-801 がマウスの骨量を減少させた結果に相反して 、骨量増加を示唆する破骨細 胞の減少と骨芽細胞の増加が認められた原因として、MK-801 投与後の早い次期に骨量が減少 し、我々が観察した時期には骨量が回復傾向にあった可能性が考えられる。また、破骨前駆細 胞が NMDA 受容体サブユニットである Grin3b 遺伝子を発現し、MK-801 が破骨細胞分化を抑制 したことから、グルタミン酸などがNMDA受容体を介して破骨細胞分化を制御している可能性 が示唆された。

本論文の審査において、副査の美島委員および鈴木委員から多くの質問があり、その一部と それらに対する回答を以下に示す。

美島 委員の質問 とそれらに 対する回答 :

1.MK-801投与の濃度はどのように決定されたのか 説明せよ:過去の文献において MK-801 細胞毒性は 性差で効 果 に違いがあ ることが 報 告されてい る。10-20 (㎎/㎏)の 濃度で雄ラ ットに影響はないが雌ラットでの個体死を起こし、雌ラットでは3 (mg/kg)の濃度で大脳 皮質の神経細胞死が起こることが報告されている。本研究では以上の報告を基に、実際に 投与を行った結果、投与後の個体死の少ない最高濃度の濃度である2.5 (mg/kg)の濃度で 投与実験を行った。

2.NMDA受容体を介した細胞内シグナルについてはどのような経路が知られているか 説明せ

(主査が記載)

(2)

よ:破骨細胞前駆の Cell lineである Raw264.7cell NMDA受容体 subunitである Grin1 Grin2a, Grin2bが発現しており、MK-801存在下で培養実験を行ったところ破骨細胞分 化マーカーである NF-κB の発現が有意に減少したとの報告がある。また、骨芽細胞上で NMDA 受容体 subunitGrin1, Grin2d が発現しており、MK-801 存在下で培養実験を行う とマスター遺伝子である Runx2 の発現が有意に低下したという報告も存在 する。今回提示 していないが、骨芽細胞での NMDA受容体 subunit の発現に対して同様の結果を得た。し かし、破骨細胞前駆細胞で Grin1, Grin2a, Grin2bの発現に対し有意な上昇は見られず、

Grin3bの発現が有意に上昇し。破骨細胞での NMDA受容体の発現量は神経系に比べると非

常に少なく、破骨細胞での NMDA 受容体 subunit の発現と細胞内シグナルの変化について は今後の研究課題である。

鈴木 委員の質問 とそれらに 対する回答

1.神経系における NMDA受容体が骨代謝に影響を与えるメカニズムについて説明せよ:本研 究において使用した MK-801をはじめ、非競合型の NMDA受容体拮抗薬の二次的な作用とし て、脳内でのドパミン遊離促進作用があることが知られてい る。ドパミンは運動機能に関 与する神経伝達物質であり、パーキンソン病などのドパミンの低下により、骨量が低下す ることが知られている。脳内でのドパミン放出量と骨量の関 係について明らかにした報告 はないが、 ドパミ ン放 出の抑制に よって 骨量 が低下する ならば 、MK-801 のドパミ ン遊離 作用によって骨量が上昇することも考えられる。

2.本研究の臨床との関連性について 説明せよ:本研究において MK-801は骨形成を促進する 可能性を見出した。これは認知症やパーキンソン病などの NMDA 受容体が関与する疾患に 関連した骨 粗鬆症 の抑 制に繋がる 。MK-801 は 細胞毒性が 強いた め、 近似した作 用をもつ AmantadineMemantineなど NMDA受容体拮抗薬と骨関連細胞や骨代謝の関係について今 後も研究を重ねていく必要がある。

両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認した。

主査 上條委員 の質問とそ れらに対す る回答

1.神経伝達物質が破骨細胞分化を制御する機能について 説明せよ:神経軸索末端から放出さ れたノルアドレナリンは骨芽細胞の RANKL、IL6、IL-11、PGE2の発現を上昇させ、破骨細 胞分化を促進するが、同時に OPGの発現も誘導するため、破骨細胞の過剰な分化を抑制し ていると考えられる。

主査の上條委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張 をさらに確認するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。

以上の審査結果から、本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判断した。

(主査が記載)

参照

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